(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下では、本明細書に開示する発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。但し、本明細書に開示する発明は以下の説明に限定されず、その形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本明細書に開示する発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する本発明の構成において、同一部分または同様の機能を有する部分には、同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を有する部分を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0035】
なお、本明細書における「第1」、「第2」等の序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、数的に限定するものではないことを付記する。
【0036】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を、
図1及び
図2を用いて説明する。本実施の形態では、半導体装置の一例として酸化物半導体層を有するトランジスタを示す。
【0037】
図1にトランジスタ420の構成例を示す。
図1(A)は、トランジスタ420の平面図であり、
図1(B)は、
図1(A)のX1−Y1における断面図であり、
図1(C)は、
図1(A)のV1−W1における断面図である。なお、
図1(A)では煩雑になることを避けるため、トランジスタ420の構成要素の一部(例えば、金属酸化物膜417等)を省略して図示している。
【0038】
図1に示すトランジスタ420は、基板400上に設けられたゲート電極層401と、ゲート電極層401上に設けられたゲート絶縁層402と、ゲート絶縁層402を介してゲート電極層401と重畳する酸化物半導体層403と、酸化物半導体層403と電気的に接続するソース電極層405a及びドレイン電極層405bと、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bを覆い、酸化物半導体層403と接する絶縁層416と、絶縁層416上に設けられた金属酸化物膜417を含んで構成される。
【0039】
金属酸化物膜417としては、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い、バリア性を有する膜を適用する。例えば、金属酸化物膜として酸化アルミニウム膜、マグネシウムを添加した酸化アルミニウム膜、チタンを添加した酸化アルミニウム膜を適用することができる。また、金属酸化物膜は、積層構造としてもよく、例えば、酸化アルミニウム膜と酸化チタン膜との積層構造、酸化アルミニウム膜と酸化マグネシウム膜との積層構造、酸化アルミニウム膜と酸化ニッケル膜との積層構造、酸化アルミニウム膜と酸化モリブデン膜との積層構造、又は酸化アルミニウム膜と酸化タングステン膜との積層構造等を適用することができる。なお、金属酸化物膜として酸化アルミニウム膜を含む積層構造を設け場合、その積層順は特に問わない。
【0040】
酸化物半導体層上にバリア性を有する金属酸化物膜417を設けることで、トランジスタの作製工程中及び作製後において、変動要因となる水素、水分などの不純物の酸化物半導体層への混入、及び酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素の酸化物半導体層からの放出(脱離)を防止することができる。よって、トランジスタの信頼性を向上させることができる。また、トランジスタ420において、酸化物半導体層403の側壁は、導電層で形成されたソース電極層405a又はドレイン電極層405b、若しくは、酸素過剰領域を有する絶縁層416と金属酸化物膜417の積層膜で覆われている。よって、酸化物半導体層403の側壁においても酸素の脱離を防止することができる。
【0041】
また、金属酸化物膜417は、1×10
10Ωm以上1×10
19Ωm以下、好ましくは1×10
10Ωm以上1×10
18Ωm以下、より好ましくは1×10
11Ωm以上1×10
15Ωm以下の抵抗率ρを有することが好ましい。金属酸化物膜417が上述の範囲の抵抗率を有することで、トランジスタ420の静電破壊を防止することができる。特に、酸化物半導体層を用いるトランジスタは、静電気の影響によりトランジスタの電気的な特性が著しく変動して設計範囲を逸脱する恐れがある。よって、トランジスタ420において、上述の範囲の抵抗率ρを有する金属酸化物膜を設けることは効果的である。
【0042】
本実施の形態では、金属酸化物膜417として、酸化アルミニウム膜を含む場合を例に説明する。
【0043】
なお、金属酸化物膜417上に設けられる絶縁層422及び絶縁層422上に設けられる平坦化絶縁層424をトランジスタ420の構成要素として含めてもよい。
【0044】
本実施の形態で示すトランジスタ420は、基板400側から順に、ゲート電極層401a、ゲート電極層401b及びゲート電極層401cが積層されたゲート電極層401を含む。但し、本発明の実施の形態はこれに限られず、ゲート電極層を単層構造としてもよいし、3層以外の積層構造としてもよい。
【0045】
また、本実施の形態で示すトランジスタ420は、ゲート電極層401側から順に、ゲート絶縁層402a及びゲート絶縁層402bが積層されたゲート絶縁層402を含む。但し、本発明の実施の形態はこれに限られず、ゲート絶縁層を単層構造としてもよいし、3層以上の積層構造としてもよい。
【0046】
本実施の形態で示すトランジスタ420において、酸化物半導体層403と接する絶縁層416は、酸素ドープ処理を施されることによって、化学量論的組成よりも過剰に酸素を含む領域を有する単層または積層構造の絶縁層である。
【0047】
また、本実施の形態において、絶縁層416上に接して設けられる金属酸化物膜である、酸化アルミニウム膜は、金属膜(本実施の形態ではアルミニウム膜)を酸化させることによって形成された膜である。金属膜の酸化によって、金属酸化物膜417を形成することで、スパッタリング法によって金属酸化物膜417を成膜する場合と比較して生産性を向上させることができる。また、金属膜の酸化は、絶縁層416への酸素ドープ処理と同一工程によって行うことができるため、金属膜の酸化を目的とした工程を追加する必要がなく、工程の簡略化を図ることができる。よって、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0048】
酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断(ブロッキング)効果が高い。したがって、トランジスタを覆う絶縁層として酸化アルミニウム膜を含む金属酸化物膜を用いることで、酸化物半導体層403及びそれに接する絶縁層416からの酸素の脱離を防止するとともに、酸化物半導体層403への水及び水素の混入を防止することができる。
【0049】
なお、酸化アルミニウム膜を高密度(膜密度3.2g/cm
3以上、好ましくは3.6g/cm
3以上)とすると、トランジスタ420に安定な電気特性を付与することができるため、より好ましい。膜密度はラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)や、X線反射率測定法(XRR:X−Ray Reflection)によって測定することができる。
【0050】
また、酸化物半導体層403において、銅、アルミニウム、塩素などの不純物がほとんど含まれない高純度化されたものであることが望ましい。トランジスタの製造工程において、これらの不純物が混入または酸化物半導体層表面に付着する恐れのない工程を適宜選択することが好ましく、酸化物半導体層表面に付着した場合には、シュウ酸や希フッ酸などに曝す、またはプラズマ処理(N
2Oプラズマ処理など)を行うことにより、酸化物半導体層表面の不純物を除去することが好ましい。具体的には、酸化物半導体層の銅濃度は1×10
18atoms/cm
3以下、好ましくは1×10
17atoms/cm
3以下とする。また、酸化物半導体層のアルミニウム濃度は1×10
18atoms/cm
3以下とする。また、酸化物半導体層の塩素濃度は2×10
18atoms/cm
3以下とする。
【0051】
また、酸化物半導体層403は、水や水素などの不純物が可能な限り除去されたものであることが望ましい。例えば、トランジスタ420において、酸化物半導体層403に含まれる水素濃度を、2×10
19atoms/cm
3以下、好ましくは5×10
18atoms/cm
3以下、さらに好ましくは2×10
18atoms/cm
3以下とすることが好ましい。
【0052】
以下、
図2を用いて
図1に示すトランジスタ420の作製方法の一例を説明する。
【0053】
まず、絶縁表面を有する基板400上にゲート電極層401を形成した後、ゲート電極層401上にゲート絶縁層402a及びゲート絶縁層402bを順に積層してゲート絶縁層402を形成する(
図2(A)参照)。
【0054】
絶縁表面を有する基板400に使用することができる基板に大きな制限はないが、少なくとも、後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板などの電子工業用に使われる各種ガラス基板を用いることが出来る。なお、基板としては、熱膨張係数が25×10
−7/℃以上50×10
−7/℃以下(好ましくは、30×10
−7/℃以上40×10
−7/℃以下)であり、歪み点が650℃以上750℃以下(好ましくは、700℃以上740℃以下)である基板を用いることが好ましい。
【0055】
第5世代(1000mm×1200mmまたは1300mm×1500mm)、第6世代(1500mm×1800mm)、第7世代(1870mm×2200mm)、第8世代(2200mm×2500mm)、第9世代(2400mm×2800mm)、第10世代(2880×3130mm)などの大型ガラス基板を用いる場合、半導体装置の作製工程における加熱処理などで生じる基板の縮みによって、微細な加工が困難になる場合ある。そのため、前述したような大型ガラス基板を基板として用いる場合、縮みの少ないものを用いることが好ましい。例えば、基板として、好ましくは450℃、より好ましくは500℃の温度で1時間加熱処理を行った後の縮み量が20ppm以下、好ましくは10ppm以下、さらに好ましくは5ppm以下である大型ガラス基板を用いればよい。
【0056】
または、基板400として、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを用いることができる。また、シリコンや炭化シリコンなどの単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどの化合物半導体基板、SOI基板などを適用することもできる。これらの基板上に半導体素子が設けられたものを用いてもよい。
【0057】
また、基板400として、可撓性基板を用いて半導体装置を作製してもよい。可撓性を有する半導体装置を作製するには、可撓性基板上に酸化物半導体層403を含むトランジスタ420を直接作製してもよいし、他の作製基板に酸化物半導体層403を含むトランジスタ420を作製し、その後可撓性基板に剥離、転置してもよい。なお、作製基板から可撓性基板に剥離、転置するために、作製基板と酸化物半導体層を含むトランジスタ420との間に剥離層を設けるとよい。
【0058】
基板400上に下地絶縁層を設けてもよい。下地絶縁層としては、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムなどの酸化物絶縁膜、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウムなどの窒化物絶縁膜、又はこれらの混合材料を用いて形成することができる。
【0059】
基板400(又は基板400及び下地絶縁層)に熱処理を行ってもよい。例えば、高温のガスを用いて熱処理を行うGRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置により、650℃、1分〜5分間、熱処理を行えばよい。なお、GRTAにおける高温のガスには、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。また、電気炉により、500℃、30分〜1時間、熱処理を行ってもよい。
【0060】
ゲート電極層401の材料は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウム等の金属材料またはこれらを主成分とする合金材料を用いて形成することができる。また、ゲート電極層401としてリン等の不純物元素をドーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜、ニッケルシリサイドなどのシリサイド膜を用いてもよい。ゲート電極層401は、単層構造としてもよいし、積層構造としてもよい。
【0061】
また、ゲート電極層401の材料は、酸化インジウム酸化スズ、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、酸化インジウム酸化亜鉛、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。また、上記導電性材料と、上記金属材料の積層構造とすることもできる。例えば、基板400側から窒化チタン膜、銅薄膜、及びモリブデン膜の積層構造、又はチタン膜と銅薄膜との積層構造とすることができる。
【0062】
また、ゲート電極層401として、窒素を含む金属酸化物、具体的には、窒素を含むIn−Ga−Zn−O膜や、窒素を含むIn−Sn−O膜や、窒素を含むIn−Ga−O膜や、窒素を含むIn−Zn−O膜や、窒素を含むSn−O膜や、窒素を含むIn−O膜や、金属窒化膜(InN、SnNなど)を用いることができる。これらの膜は5eV(電子ボルト)、好ましくは5.5eV(電子ボルト)以上の仕事関数を有し、ゲート電極層として用いた場合、トランジスタの電気特性のしきい値電圧をプラスにすることができ、所謂ノーマリオフのスイッチング素子を実現できる。
【0063】
本実施の形態では、ゲート電極層401bとして、膜厚100nm以上400nm以下の銅層を形成する。また、ゲート電極層401bの上層または下層に接して、銅の拡散を防止するバリアメタルとして機能するゲート電極層401a及びゲート電極層401cを形成する。ゲート電極層401aとしては、例えば、膜厚20nm以上50nm以下の窒化タンタル層を形成することができる。また、ゲート電極層401cとしては、例えば、膜厚50nm以上200nm以下のモリブデン層を形成することができる。
【0064】
また、ゲート電極層401形成後に、基板400、及びゲート電極層401に熱処理を行ってもよい。例えば、GRTA装置により、650℃、1分〜5分間、熱処理を行えばよい。また、電気炉により、500℃、30分〜1時間、熱処理を行ってもよい。
【0065】
なお、ゲート絶縁層402の被覆性を向上させるために、ゲート電極層401表面に平坦化処理を行ってもよい。特にゲート絶縁層402として膜厚の薄い絶縁層を用いる場合、ゲート電極層401表面の平坦性が良好であることが好ましい。
【0066】
ゲート絶縁層402aには、プラズマCVD法又はスパッタリング法等により形成する、膜厚10nm以上100nm以下、代表的には膜厚20nm以上50nm以下の窒化物絶縁層を好ましく用いることができる。例えば、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜などが挙げられる。ゲート電極層401及び基板400と接するゲート絶縁層402aとして窒化物絶縁層を適用することで、ゲート電極層401又は基板400からの不純物拡散を防止する効果を奏する。
【0067】
または、ゲート絶縁層402aとして、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、ランタン(La)、ジルコニウム(Zr)、ニッケル(Ni)、マグネシウム(Mg)、又はバリウム(Ba)の金属元素のいずれかから選択される一以上を含む金属酸化物絶縁膜(例えば、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜、酸化マグネシウム膜、酸化ジルコニウム膜、酸化ランタン膜、酸化バリウム膜)、又は金属窒化物絶縁膜(窒化アルミニウム膜、窒化酸化アルミニウム膜)を用いることができる。また、ゲート絶縁層402aには、酸化ガリウム膜、In−Zr−Zn系酸化物膜、In−Fe−Zn系酸化物膜、In−Ce−Zn系酸化物膜なども用いることができる。
【0068】
本実施の形態ではゲート絶縁層402aとしてプラズマCVD法を用いて形成する膜厚30nmの窒化シリコン膜を用いる。窒化シリコン膜の成膜ガスとしては、例えば、シラン(SiH
4)と窒素の混合ガス、又は、シラン、窒素及びアンモニア(NH
3)の混合ガス等を用いることができる。
【0069】
ゲート絶縁層402bの材料としては、酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、または窒化酸化シリコン膜を用いて形成することができる。また、ゲート絶縁層402bの膜厚は、100nm以上350nm以下とすることができる。
【0070】
また、ゲート絶縁層402bの材料として酸化ハフニウム、酸化イットリウム、ハフニウムシリケート(HfSi
xO
y(x>0、y>0))、窒素が添加されたハフニウムシリケート(HfSiO
xN
y(x>0、y>0))、ハフニウムアルミネート(HfAl
xO
y(x>0、y>0))、酸化ランタンなどのhigh−k材料を用いることでゲートリーク電流を低減できる。
【0071】
本実施の形態では、プラズマCVD法により膜厚200nmの酸化窒化シリコン膜を形成する。CVD法は、スパッタリング法と比較して、成膜タクトを縮小することができる。また、CVD法は、スパッタリング法よりも成膜した面内における膜質のバラツキが小さく、パーティクルの混入も起こりにくい。このため、特に基板が大面積化される場合に、CVD法を用いてゲート絶縁層402を成膜することは効果的である。
【0072】
なお、ゲート絶縁層402bは、酸化物半導体層403と接する絶縁層であるため、酸素を含む絶縁層とすることが好ましく、可能な限り水、水素などの不純物が含まれないことが好ましい。しかしながら、プラズマCVD法では、スパッタリング法と比較して膜中の水素濃度を低減させることが困難である。したがって、本実施の形態においては、成膜後のゲート絶縁層402に対して、水素原子の低減、より好ましくは除去を目的とした熱処理(脱水化又は脱水素化処理)を行う。
【0073】
熱処理の温度は、250℃以上650℃以下、好ましくは450℃以上600℃以下、または基板の歪み点未満とする。例えば、加熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、ゲート絶縁層402に対して真空(減圧)雰囲気下650℃において1時間の加熱処理を行う。
【0074】
なお、熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を用いてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて熱処理を行う装置である。高温のガスには、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。なお、熱処理装置としてGRTA装置を用いる場合には、その処理時間が短いため、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中で基板を加熱してもよい。
【0075】
熱処理は、窒素、酸素、超乾燥空気(水の含有量が20ppm以下、好ましくは1ppm以下、好ましくは10ppb以下の空気)、または希ガス(アルゴン、ヘリウムなど)の雰囲気下で行えばよいが、上記窒素、酸素、超乾燥空気、または希ガス等の雰囲気に水、水素などが含まれないことが好ましい。また、加熱処理装置に導入する窒素、酸素、または希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0076】
熱処理によって、ゲート絶縁層402の脱水化または脱水素化を行うことができ、トランジスタの特性変動を引き起こす水素、又は水などの不純物が排除されたゲート絶縁層402を形成することができる。
【0077】
脱水化又は脱水素化処理を行う熱処理において、ゲート絶縁層402表面は水素又は水等の放出を妨害するような状態(例えば、水素又は水等を通過させない(ブロックする)膜などを設ける等)とせず、ゲート絶縁層402は表面を露出した状態とすることが好ましい。
【0078】
また、脱水化又は脱水素化のための熱処理は、複数回行ってもよく、他の熱処理と兼ねてもよい。
【0079】
次いで、ゲート絶縁層402上に、酸化物半導体層を成膜し、島状に加工して酸化物半導体層403を形成する(
図2(B)参照)。
【0080】
なお、ゲート絶縁層402を大気に開放せずにゲート絶縁層402と酸化物半導体層を連続的に形成することが好ましい。ゲート絶縁層402を大気に曝露せずにゲート絶縁層402と酸化物半導体層を連続して形成すると、ゲート絶縁層402表面に水素や水分などの不純物が吸着することを防止することができる。
【0081】
また、酸化物半導体層を成膜後、当該酸化物半導体層に含まれる過剰な水素(水や水酸基を含む)を低減又は除去(脱水化又は脱水素化)するための熱処理を行うことが好ましい。熱処理の温度は、300℃以上700℃以下、又は基板の歪み点未満とする。熱処理は減圧下又は窒素雰囲気下などで行うことができる。
【0082】
この熱処理によって、n型の導電性を付与する不純物である水素を酸化物半導体層から低減より好ましくは除去することができる。また、ゲート絶縁層402として酸素を含む絶縁層を適用した場合、この熱処理によってゲート絶縁層402に含まれる酸素が酸化物半導体層へと供給されうる。酸化物半導体層の脱水化又は脱水素化処理によって同時に脱離する酸素をゲート絶縁層402から供給することによって、酸化物半導体層の酸素欠損を補填することが可能である。
【0083】
なお、ゲート絶縁層402として酸素を含む絶縁層を適用した場合、酸化物半導体層の脱水化又は脱水素化のための熱処理を、島状の酸化物半導体層403への加工前に行うと、ゲート絶縁層402に含まれる酸素が熱処理によって放出されるのを防止することができるため好ましい。
【0084】
脱水化又は脱水素化のための熱処理は、トランジスタ420の作製工程の他の加熱処理と兼ねてもよい。
【0085】
熱処理においては、窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。又は、熱処理装置に導入する窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。
【0086】
また、熱処理で酸化物半導体層を加熱した後、加熱温度を維持、又はその加熱温度から徐冷しながら同じ炉に高純度の酸素ガス、高純度の一酸化二窒素ガス、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下の空気)を導入してもよい。酸素ガス又は一酸化二窒素ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。又は、熱処理装置に導入する酸素ガス又は一酸化二窒素ガスの純度を、6N以上好ましくは7N以上(即ち、酸素ガス又は一酸化二窒素ガス中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。酸素ガス又は一酸化二窒素ガスの作用により、脱水化又は脱水素化処理による不純物の排除工程によって同時に減少してしまった酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素を供給することによって、酸化物半導体層を高純度化及びi型(真性)化することができる。
【0087】
酸化物半導体層403は、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。また、非晶質構造であってもよいし、結晶性であってもよい。酸化物半導体層403を非晶質構造とする場合には、後の作製工程において、酸化物半導体層403に熱処理を行うことによって、結晶性酸化物半導体層としてもよい。非晶質酸化物半導体層を結晶化させる熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは、400℃以上、より好ましくは500℃以上、さらに好ましくは550℃以上とする。なお、当該熱処理は、作製工程における他の熱処理を兼ねることも可能である。
【0088】
酸化物半導体層の成膜方法は、スパッタリング法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD(Atomic Layer Deposition)法等を適宜用いることができる。また、酸化物半導体層は、スパッタリングターゲット表面に対し、概略垂直に複数の基板表面がセットされた状態で成膜を行うスパッタリング装置を用いて成膜してもよい。
【0089】
酸化物半導体層を成膜する際、できる限り酸化物半導体層に含まれる水素濃度を低減させることが好ましい。水素濃度を低減させるには、例えば、スパッタリング法を用いて成膜を行う場合には、スパッタリング装置の成膜室内に供給する雰囲気ガスとして、水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度の希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、及び希ガスと酸素との混合ガスを適宜用いる。
【0090】
また、成膜室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入して成膜を行うことで、成膜された酸化物半導体層の水素濃度を低減させることができる。成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ、例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、ターボ分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて排気した成膜室は、例えば、水素分子、水(H
2O)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化合物も)等の排気能力が高いため、当該成膜室で成膜した酸化物半導体層に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0091】
また、酸化物半導体層をスパッタリング法で成膜する場合、成膜に用いる金属酸化物ターゲットの相対密度(充填率)は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下とする。相対密度の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、成膜した酸化物半導体層を緻密な膜とすることができる。
【0092】
また、基板400を高温に保持した状態で酸化物半導体層を形成することも、酸化物半導体層中に含まれうる不純物濃度を低減するのに有効である。基板400を加熱する温度としては、150℃以上450℃以下とすればよく、好ましくは基板温度が200℃以上350℃以下とすればよい。また、成膜時に基板を高温で加熱することで、結晶性酸化物半導体層を形成することができる。
【0093】
酸化物半導体層403に用いる酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnの双方を含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてジルコニウム(Zr)を有することが好ましい。
【0094】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0095】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0096】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0097】
また、酸化物半導体として、InMO
3(ZnO)
m(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、In
2SnO
5(ZnO)
n(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
【0098】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)、あるいはIn:Ga:Zn=3:1:2(=1/2:1/6:1/3)の原子数比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子数比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0099】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア濃度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0100】
例えば、In−Sn−Zn系酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn系酸化物でも、バルク内欠陥密度を低くすることにより移動度を上げることができる。
【0101】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、(a−A)
2+(b−B)
2+(c−C)
2≦r
2を満たすことをいう。rとしては、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
【0102】
また酸化物半導体層を、成膜する際に用いるスパッタリングガスは水素、水、水酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度ガスを用いることが好ましい。
【0103】
また、酸化物半導体層403は、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜であることが好ましい。
【0104】
CAAC−OS膜は、完全な単結晶ではなく、完全な非晶質でもない。CAAC−OS膜は、非晶質相に結晶部及び非晶質部を有する結晶−非晶質混相構造の酸化物半導体層である。なお、当該結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさであることが多い。また、透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)による観察像では、CAAC−OS膜に含まれる非晶質部と結晶部との境界は明確ではない。また、TEMによってCAAC−OS膜には粒界(グレインバウンダリーともいう)は確認できない。そのため、CAAC−OS膜は、粒界に起因する電子移動度の低下が抑制される。
【0105】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、c軸がCAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃い、かつab面に垂直な方向から見て三角形状または六角形状の原子配列を有し、c軸に垂直な方向から見て金属原子が層状または金属原子と酸素原子とが層状に配列している。なお、異なる結晶部間で、それぞれa軸およびb軸の向きが異なっていてもよい。本明細書において、単に垂直と記載する場合、85°以上95°以下の範囲も含まれることとする。また、単に平行と記載する場合、−5°以上5°以下の範囲も含まれることとする。
【0106】
なお、CAAC−OS膜において、結晶部の分布が一様でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の形成過程において、酸化物半導体膜の表面側から結晶成長させる場合、被形成面の近傍に対し表面の近傍では結晶部の占める割合が高くなることがある。また、CAAC−OS膜へ不純物を添加することにより、当該不純物添加領域において結晶部が非晶質化することもある。
【0107】
CAAC−OS膜に含まれる結晶部のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向に揃うため、CAAC−OS膜の形状(被形成面の断面形状または表面の断面形状)によっては互いに異なる方向を向くことがある。なお、結晶部のc軸の方向は、CAAC−OS膜が形成されたときの被形成面の法線ベクトルまたは表面の法線ベクトルに平行な方向となる。結晶部は、成膜することにより、または成膜後に加熱処理などの結晶化処理を行うことにより形成される。
【0108】
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0109】
酸化物半導体層403としてCAAC−OS膜を適用する場合、該CAAC−OS膜を得る方法としては、例えば、成膜温度を200℃以上450℃以下として酸化物半導体層の成膜を行い、表面に概略垂直にc軸配向させる方法がある。または、酸化物半導体層を薄い膜厚で成膜した後、200℃以上700℃以下の熱処理を行い、表面に概略垂直にc軸配向させることもできる。または、一層目として薄い膜厚で成膜した後、200℃以上700℃以下の熱処理を行い、二層目の成膜を行い、表面に概略垂直にc軸配向させることもできる。
【0110】
また、CAAC−OS膜は、例えば、多結晶である酸化物半導体スパッタリング用ターゲットを用い、スパッタリング法によって成膜する。当該スパッタリング用ターゲットにイオンが衝突すると、スパッタリング用ターゲットに含まれる結晶領域がa−b面から劈開し、a−b面に平行な面を有する平板状またはペレット状のスパッタリング粒子として剥離することがある。この場合、当該平板状のスパッタリング粒子が、結晶状態を維持したまま基板に到達することで、CAAC−OS膜を成膜することができる。
【0111】
また、CAAC−OS膜を成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
【0112】
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制できる。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素および窒素など)を低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点が−80℃以下、好ましくは−100℃以下である成膜ガスを用いる。
【0113】
また、成膜時の基板加熱温度を高めることで、基板到達後にスパッタリング粒子のマイグレーションが起こる。具体的には、基板加熱温度を100℃以上740℃以下、好ましくは200℃以上500℃以下として成膜する。成膜時の基板加熱温度を高めることで、平板状のスパッタリング粒子が基板に到達した場合、基板上でマイグレーションが起こり、スパッタリング粒子の平らな面が基板に付着する。
【0114】
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメージを軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、好ましくは100体積%とする。
【0115】
スパッタリング用ターゲットの一例として、In−Ga−Zn−O化合物ターゲットについて以下に示す。
【0116】
InO
X粉末、GaO
Y粉末およびZnO
Z粉末を所定のmol数比で混合し、加圧処理後、1000℃以上1500℃以下の温度で加熱処理をすることで多結晶であるIn−Ga−Zn−O化合物ターゲットとする。なお、X、YおよびZは任意の正数である。ここで、所定のmol数比は、例えば、InO
X粉末、GaO
Y粉末およびZnO
Z粉末が、2:2:1、8:4:3、3:1:1、1:1:1、4:2:3または3:1:2である。なお、粉末の種類、およびその混合するmol数比は、作製するスパッタリング用ターゲットによって適宜変更すればよい。
【0117】
酸化物半導体層の成膜前に、酸化物半導体層の被成膜面に平坦化処理を行ってもよい。平坦化処理としては、特に限定されないが、研磨処理(例えば、化学的機械研磨(Chemical Mechanical Polishing:CMP)法)、ドライエッチング処理、プラズマ処理を用いることができる。
【0118】
プラズマ処理としては、例えば、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタリングを行うことができる。逆スパッタリングとは、アルゴン雰囲気下で基板側にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法をいう。なお、アルゴンに代えて窒素、ヘリウム、酸素などを用いてもよい。逆スパッタリングを行うと、酸化物半導体層の被成膜面に付着している粉状物質(パーティクル、ごみともいう)を除去することができる。
【0119】
平坦化処理として、研磨処理、ドライエッチング処理、プラズマ処理は複数回行ってもよく、それらを組み合わせて行ってもよい。また、組み合わせて行う場合、工程順も特に限定されず、酸化物半導体層の被成膜面の凹凸状態に合わせて適宜設定すればよい。
【0120】
次いで、ゲート電極層401、ゲート絶縁層402、及び酸化物半導体層403上に、ソース電極層及びドレイン電極層(これと同じ層で形成される配線を含む)となる導電膜を形成する。導電膜の膜厚は、例えば、20nm以上50nm以下とすることができる。
【0121】
導電膜は後の熱処理に耐えられる材料を用い、単層又は積層構造とすることができる。ソース電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、Al、Cuなどの金属膜の下側又は上側の一方または双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としても良い。また、ソース電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In
2O
3)、酸化スズ(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ(In
2O
3−SnO
2、ITOと略記する)、酸化インジウム酸化亜鉛(In
2O
3−ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0122】
フォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成する。
【0123】
なお、導電膜のエッチング工程の際に、酸化物半導体層403がエッチングされ、分断することのないようエッチング条件を最適化することが望まれる。しかしながら、導電膜のみをエッチングし、酸化物半導体層403を全くエッチングしないという条件を得ることは難しく、導電膜のエッチングの際に酸化物半導体層403は一部のみがエッチングされ、溝部(凹部)を有する酸化物半導体層となることもある。
【0124】
次いで、ソース電極層405a及びドレイン電極層405b上に、酸化物半導体層403と接する絶縁層426を成膜する。
【0125】
酸化物半導体層403と接する絶縁層426としては、プラズマCVD法、スパッタリング法により形成することができ、酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、または窒化酸化シリコン膜を用いることができる。絶縁層426の膜厚は50nm以上100nm以下とすることが好ましい。
【0126】
なお、絶縁層426として、窒素を含む酸化物絶縁膜(例えば、窒素を含む酸化シリコン膜、窒素を含む酸化アルミニウム膜)などを用いることができる。酸化物絶縁膜に含まれる窒素の濃度は0.01原子%以上含まれていればよく、好ましくは0.1原子%以上50原子%以下、より好ましくは0.5原子%以上15原子%以下であればよい。酸化シリコン膜に上記のような濃度で窒素が含まれるものは酸化窒化シリコン膜と呼ばれることもある。酸化物絶縁膜に窒素を適量含ませることにより、酸素を化学量論組成よりも多く膜中に含ませることができる。
【0127】
本実施の形態では、酸化物半導体層403上に接して、絶縁層426として、プラズマCVD法により酸化窒化シリコン膜を形成する。絶縁層426の成膜条件は、例えば、SiH
4とN
2Oのガス流量比をSiH
4:N
2O=30sccm:4000sccmとし、圧力を200Paとし、RF電源電力(電源出力)を150Wとし、基板温度を220℃±15℃とすればよい。
【0128】
なお、絶縁層426は、酸化物半導体層403と接する絶縁層であるため、ゲート絶縁層402bと同様に可能な限り水、水素などの不純物が含まれないことが好ましい。したがって、本実施の形態においては、成膜後の絶縁層426に対して、水素原子の除去を目的とした熱処理(脱水化又は脱水素化処理)を行う。なお、酸化アルミニウム膜は、水素又は水等を通過させないブロッキング機能を有するため、絶縁層426の脱水化又は脱水素化のための熱処理は、絶縁層426の形成後であって、アルミニウム膜の成膜前に行うことが好ましい。
【0129】
熱処理の温度は、250℃以上650℃以下、好ましくは450℃以上600℃以下、または基板の歪み点未満とする。脱水化又は脱水素化処理のための熱処理の詳細は、ゲート絶縁層402bと同様に行うことができる。
【0130】
次いで、絶縁層426上に金属膜427を成膜する。本実施の形態では、金属膜427として、アルミニウム膜を成膜する(
図2(C)参照)。
【0131】
金属膜427は、スパッタリング法、蒸着法、CVD法等によって形成することが好ましい。また、金属膜427の膜厚は3nm以上10nm以下とすることが好ましい。本実施の形態では、膜厚5nmのアルミニウム膜を形成する。
【0132】
なお、絶縁層426上に形成される金属膜427は、後に酸素ドープ処理を施されることによって金属酸化物膜417となり、トランジスタのバリア膜として機能する膜である。該金属酸化物膜417としては、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を通過させない遮断効果(ブロック効果)が高い、バリア性を有する膜を適用することができる。また、金属酸化物膜となる金属膜427としては、アルミニウム膜の他に、マグネシウムを添加したアルミニウム膜、チタンを添加したアルミニウム膜、アルミニウム膜とマグネシウム膜の積層膜、アルミニウム膜とチタン膜の積層膜、アルミニウム膜とニッケル膜の積層膜、アルミニウム膜とモリブデン膜の積層膜、アルミニウム膜とタングステン膜の積層膜等を用いることができる。
【0133】
次いで、脱水化又は脱水素化処理を行った絶縁層426及び金属膜427に対して、酸素454を導入する処理(酸素ドープ処理や、酸素注入処理ともいう)を行う。これによって、酸素過剰領域を有する絶縁層416と、金属膜427の酸化物である、金属酸化物膜417が形成される(
図2(D)参照)。
【0134】
なお、酸素ドープ処理によって形成された金属酸化物膜417は、化学量論的組成に一致した酸素を含有する必要はなく、多少の導電性を有していてもよい。例えば、組成がAl
2O
xで表される酸化アルミニウム膜の場合、xは1以上3.5以下とすることが好ましい。また、金属酸化物膜417が導電性を有する場合、その抵抗率ρを、1×10
10Ωm以上1×10
19Ωm以下、好ましくは1×10
10Ωm以上1×10
18Ωm以下、より好ましくは1×10
11Ωm以上1×10
15Ωm以下とすることが好ましい。金属酸化物膜417が上述の範囲の抵抗率を有することで、トランジスタ420の静電破壊を防止することが可能となる。
【0135】
また、絶縁層416は、膜厚方向の全面にわたって酸素過剰領域を有していなくてもよい。
図2(D)における領域200の拡大図を
図2(E)に示す。
図2(E)に示す酸素過剰領域を有する絶縁層416は、金属酸化物膜417との界面近傍に酸素454が導入された領域416aを有する。絶縁層416の少なくとも一部に酸素過剰領域を有することで、トランジスタ作製工程中の熱処理に起因する固相拡散によって、酸化物半導体層へ酸素を供給することが可能である。
【0136】
酸素454には、少なくとも、酸素ラジカル、オゾン、酸素原子、酸素イオン(分子イオン、クラスタイオンを含む)、のいずれかが含まれている。脱水化又は脱水素化処理を行った絶縁層に酸素ドープ処理を行うことにより、絶縁層中に酸素を含有させることができ、先の熱処理によって脱離することのある酸素を補填するとともに、酸素過剰領域を形成することができる。
【0137】
絶縁層426及び金属膜427への酸素454の導入は、例えば、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法、プラズマ処理等を用いることができる。なお、イオン注入法として、ガスクラスタイオンビームを用いてもよい。また、酸素454の導入は、基板400の全面を一度に処理してもよいし、例えば、線状のイオンビームを用いてもよい。線状のイオンビームを用いる場合には、基板又はイオンビームを相対的に移動(スキャン)させることで、絶縁層426及び金属膜427の全面に酸素454を導入することができる。
【0138】
酸素454の供給ガスとしては、Oを含有するガスを用いればよく、例えば、O
2ガス、N
2Oガス、CO
2ガス、COガス、NO
2ガス等を用いることができる。なお、酸素の供給ガスに希ガス(例えばAr)を含有させてもよい。
【0139】
また、例えば、イオン注入法で酸素の導入を行う場合、酸素454のドーズ量は1×10
13ions/cm
2以上5×10
16ions/cm
2以下とするのが好ましく、酸素ドープ処理後の絶縁層416中の酸素の含有量は、絶縁層416の化学量論的組成を超える程度とするのが好ましい。また、金属酸化物膜417においても化学量論的組成を超える酸素を含む領域が形成されうる。なお、このような化学量論的組成よりも酸素を過剰に含む領域は、絶縁層416の一部に存在していればよい。なお、酸素の注入深さは、注入条件により適宜制御すればよい。
【0140】
なお、絶縁層416として酸化物絶縁層(例えば、酸化シリコン膜又は酸化窒化シリコン膜)を用いる場合、該酸化物絶縁層において、酸素は主たる成分材料の一つである。このため、酸化物絶縁層中の酸素濃度を、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)などの方法を用いて、正確に見積もることは難しい。つまり、酸化物絶縁層に酸素が意図的に添加されたか否かを判別することは困難であるといえる。また、絶縁層416に含まれる過剰な酸素が後の工程で酸化物半導体層へと供給される場合においても同様のことがいえる。
【0141】
ところで、酸素には
17Oや
18Oといった同位体が存在し、自然界におけるこれらの存在比率はそれぞれ酸素原子全体の0.038%、0.2%程度であることが知られている。つまり、酸化物半導体層と接する絶縁層中または酸化物半導体層中におけるこれら同位体の濃度は、SIMSなどの方法によって見積もることができる程度になるから、これらの濃度を測定することで、酸化物半導体層と接する絶縁層中、または酸化物半導体層中の酸素濃度をより正確に見積もることが可能な場合がある。よって、これらの濃度を測定することで、酸化物半導体層と接する絶縁層に意図的に酸素が添加されたか否かを判別しても良い。
【0142】
なお、酸素454を絶縁層426及び金属膜427に添加した後、加熱処理を行ってもよい。当該加熱処理によって、絶縁層416に含まれる酸素を酸化物半導体層403へと供給し、酸化物半導体層403の酸素欠損を補填してもよい。加熱処理の温度は、例えば250℃以上600℃以下、好ましくは300℃以上600℃以下とすることができる。
【0143】
以上の工程によって、本実施の形態のトランジスタ420が形成される(
図2(F)参照)。
【0144】
なお、トランジスタ420上に、保護絶縁層として、絶縁層422及び平坦化絶縁層424を形成してもよい。本実施の形態で示すトランジスタ420は、薄膜の金属酸化物膜を含むため、該金属酸化物膜上に保護絶縁層を形成することで、金属酸化物膜への応力を緩和することが可能である。よって、トランジスタ420において、金属酸化物膜417の破損又は変形を抑制することができるため、トランジスタ420の信頼性を向上させることができる。
【0145】
絶縁層422は、絶縁層416と同様の材料を用いて作製することができる。また、平坦化絶縁層424としては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリイミドアミド樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等の耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また、上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁層を複数積層させることで平坦化絶縁層を形成してもよい。
【0146】
酸化物半導体を用いたトランジスタの場合、絶縁層から酸化物半導体層に酸素が供給されることで、酸化物半導体層と絶縁層との界面準位密度を低減できる。この結果、トランジスタの動作などに起因して、酸化物半導体層と絶縁層との界面にキャリアが捕獲されることを抑制することができ、信頼性の高いトランジスタを得ることができる。
【0147】
さらに、酸化物半導体層の酸素欠損に起因して電荷が生じる場合がある。一般に酸化物半導体層の酸素欠損は、一部がドナーとなりキャリアである電子を放出する。この結果、トランジスタのしきい値電圧がマイナス方向にシフトしてしまう。そこで、絶縁層から酸化物半導体層に酸素が十分に供給され、好ましくは酸化物半導体層に酸素が過剰に含まれていることにより、しきい値電圧がマイナス方向へシフトする要因である、酸化物半導体層の酸素欠損密度を低減することができる。
【0148】
絶縁層416に含まれる過剰な酸素は、トランジスタの作製工程における熱処理によって、絶縁層416に接する酸化物半導体層403へと供給される。したがって、トランジスタ420において、絶縁層416と酸化物半導体層403との界面、又は酸化物半導体層403中(バルク中)の少なくとも一部において、酸素過剰領域が形成される。なお、絶縁層416から酸化物半導体層403への酸素の供給を目的とした熱処理工程を設けてもよい。
【0149】
また、絶縁層への、脱水化又は脱水素化処理及び/又は酸素ドープ処理は、複数回行ってもよい。
【0150】
また、絶縁層416上に接して設けられる金属酸化物膜417は、金属膜を酸化させることによって形成された膜である。金属膜427の酸化によって、金属酸化物膜417を形成することで、スパッタリング法によって金属酸化物膜を成膜する場合と比較して生産性を向上させることができる。また、金属膜の酸化は、絶縁層416への酸素ドープ処理と同一工程によって行うことができるため、工程の簡略化を図ることができる。よって、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0151】
また、トランジスタ420を形成後、さらに大気中で、100℃以上400℃以下の熱処理を行ってもよい。この熱処理は、一定の加熱温度を保持して加熱してもよいし、室温から、100℃以上400℃以下の加熱温度への昇温と、加熱温度から室温までの降温を複数回繰り返して行ってもよい。また、この熱処理を、減圧下で行ってもよい。減圧下で熱処理を行うと、加熱時間を短縮することができる。この熱処理よって、絶縁層416含まれる酸素を酸化物半導体層403へ供給しうるため、半導体装置の信頼性を向上することができる。
【0152】
図13に、トランジスタ420のゲート配線と、ソース配線(又はドレイン配線)との接続部(又はこれらと同じ層に設けられた配線の接続部)を図示する。
図13において、ゲート電極層401と同じ層に形成された電極層491(電極層491a、電極層491b、及び電極層491cを含む)と、ソース電極層405a又はドレイン電極層405bと同じ層に形成された電極層405cとは、ゲート絶縁層402に形成されたコンタクトホールを介して電気的に接続される。このコンタクトホールは、酸化物半導体層403を形成後であって、ソース電極層405aまたはドレイン電極層405bとなる導電膜の形成前に形成すればよい。
【0153】
また、
図3に、本実施の形態のトランジスタの他の構成例を示す。
【0154】
図3(A)は、トランジスタ440の平面図であり、
図3(B)は、
図3(A)のX2−Y2における断面図であり、
図3(C)は、
図3(A)のV2−W2における断面図である。なお、
図3(A)では煩雑になることを避けるため、トランジスタ440の構成要素の一部(例えば、金属酸化物膜417等)を省略して図示している。
【0155】
図3に示すトランジスタ440は、基板400上に設けられたゲート電極層401と、ゲート電極層401上に設けられたゲート絶縁層412と、ゲート絶縁層412を介してゲート電極層401と重畳する酸化物半導体層403と、酸化物半導体層403と電気的に接続するソース電極層405a及びドレイン電極層405bと、ソース電極層405a及びドレイン電極層405bを覆い、酸化物半導体層403と接する絶縁層416と、絶縁層416上に設けられた金属酸化物膜417を含んで構成される。
【0156】
トランジスタ440において、酸化物半導体層403と接するゲート絶縁層412は、酸素ドープ処理によって化学量論的組成よりも過剰に酸素を含む領域を有する絶縁層である。より具体的には、ゲート絶縁層412を形成する積層構造のうち、少なくとも酸化物半導体層403と接するゲート絶縁層412bは、化学量論的組成よりも過剰に酸素を含む領域を有する絶縁層とする。なお、ゲート絶縁層412aは必ずしも酸素過剰領域を有さなくてもよい。但し、ゲート絶縁層412bへの酸素ドープ処理によってゲート絶縁層412aも同様に酸素過剰領域を有する膜となり得る。又は、ゲート絶縁層412aへの酸素ドープ処理を目的とした工程を別途設けてもよい。
【0157】
ゲート絶縁層412への酸素ドープ処理の詳細は、先に示した酸素454の導入工程と同様に行うことができる。なお、ゲート絶縁層412への酸素ドープ処理は、ゲート絶縁層412の水素原子の除去を目的とした熱処理の後に行うことが好ましい。熱処理後に酸素の導入を行うことで、熱処理によって同時に膜中から脱離しうる酸素を補填することが可能となる。
【0158】
なお、ゲート絶縁層412への熱処理及び/又は酸素ドープ処理は、複数回行ってもよい。
【0159】
ゲート絶縁層412に含まれる過剰な酸素は、トランジスタの作製工程における熱処理(例えば、酸化物半導体層成膜時の基板400の加熱や、絶縁層成膜時の成膜温度等)によって、ゲート絶縁層412に接する酸化物半導体層403へと供給される。したがって、トランジスタ440において、ゲート絶縁層412と酸化物半導体層403との界面、又は酸化物半導体層403中(バルク中)の少なくとも一部において、酸素過剰領域が形成される。なお、ゲート絶縁層412から酸化物半導体層403への酸素の供給を目的とした熱処理工程を設けてもよい。
【0160】
なお、トランジスタ440のその他の構成及び作製方法の詳細は、トランジスタ420を参酌することができる。
【0161】
本実施の形態で示す半導体装置は、酸化物半導体層403の上層、又は、上層及び下層に接して設けられる絶縁層として、酸素ドープ処理を施されることにより酸素過剰領域を有する絶縁層を含む。また、該絶縁層は、脱水化又は脱水素化処理によって、不純物である水又は水素を可能な限り除去した膜である。酸化物半導体層403に接して水及び水素の含有量を低減し、且つ酸素の含有量を増加させた絶縁層を形成することで、酸化物半導体層403への水及び水素の混入を抑制しつつ、酸化物半導体層403へ酸素を供給することが可能となる。
【0162】
よって、酸化物半導体層403中及び/又は酸化物半導体層403と絶縁層との界面において酸素過剰領域を形成することが可能となる。これによって、しきい値電圧がマイナス方向へシフトする要因である、酸化物半導体層の酸素欠損密度を低減することができるため、トランジスタのしきい値電圧のバラツキを低減することができるとともに、ノーマリオフ型のトランジスタを実現することができる。また、トランジスタのサブスレッショルド値(S値)を低減させることができる。
【0163】
また、本実施の形態で示す半導体装置は、酸素ドープ処理を酸化物半導体層403に接する絶縁層に対して行うため、酸化物半導体層403へ直接酸素ドープ処理を行う場合と比較して、酸化物半導体層403の膜質及び/又は結晶性を向上させることができる。特に、酸化物半導体層403がCAAC−OS膜である場合に、該CAAC−OS膜へ酸素ドープ処理を行うと結晶性が損なわれる場合があるため、本実施の形態で示す半導体装置の作製方法を適用することは有効である。
【0164】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0165】
(実施の形態2)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の他の一形態を、
図10乃至
図12を用いて説明する。本実施の形態では、半導体装置の一例として酸化物半導体層を有するトランジスタを示す。
【0166】
図10にトランジスタ460の構成例を示す。
図10(A)は、トランジスタ460の平面図であり、
図10(B)は、
図10(A)のX3−Y3における断面図であり、
図10(C)は、
図10(A)のV3−W3における断面図である。なお、
図10(A)では煩雑になることを避けるため、トランジスタ460の構成要素の一部を省略して図示している。
【0167】
図10に示すトランジスタ460は、チャネル保護型(チャネルストップ型ともいう)と呼ばれるボトムゲート構造の一つであり逆スタガ型トランジスタともいうトランジスタの一例である。
【0168】
チャネル長方向の断面図である
図10(B)に示すように、トランジスタ460を含む半導体装置は、基板400上に、ゲート電極層401と、ゲート電極層401上にゲート絶縁層402a、402b、酸化物半導体層403、絶縁層413、金属酸化物膜447、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bを有する。
【0169】
本実施の形態で示すトランジスタ460は、ゲート電極層401側から順に、ゲート絶縁層402a及びゲート絶縁層402bが積層されたゲート絶縁層402を含む。但し、本発明の実施の形態はこれに限られず、ゲート絶縁層を単層構造としてもよいし、3層以上の積層構造としてもよい。
【0170】
絶縁層413及び金属酸化物膜447は、少なくともゲート電極層401と重畳し且つチャネル形成領域を含む酸化物半導体層403の領域上に設けられており、チャネル保護膜として機能する。さらに、絶縁層413及び金属酸化物膜447は、酸化物半導体層403に達し、かつソース電極層405a又はドレイン電極層405bが内壁を覆うように設けられた開口425a、425bを有している。従って、酸化物半導体層403の周縁部は、絶縁層413及び金属酸化物膜447で覆われており、層間絶縁層としても機能している。ゲート配線とソース配線の交差部において、ゲート絶縁層402だけでなく、絶縁層413及び金属酸化物膜447も層間絶縁層として配置することで寄生容量を低減できる。
【0171】
絶縁層413はプラズマCVD法、スパッタリング法により成膜した絶縁膜をエッチングにより加工して形成することができる。また、絶縁層413の開口425a、425bの内壁は、テーパ形状を有している。
【0172】
チャネル形成領域上に重なる絶縁層413の断面形状、具体的には端部の断面形状(テーパ角や膜厚など)を工夫することにより、ドレイン電極層405bの端部近傍に生じる恐れのある電界集中を緩和し、トランジスタ460のスイッチング特性の劣化を抑えることができる。
【0173】
具体的には、チャネル形成領域上に重なる絶縁層413の断面形状は、台形または三角形状とし、断面形状の下端部のテーパ角を60°以下、好ましくは45°以下、さらに好ましくは30°以下とする。このような角度範囲とすることで、高いゲート電圧がゲート電極層401に印加される場合、ドレイン電極層405bの端部近傍に生じる恐れのある電界集中を緩和することができる。
【0174】
また、チャネル形成領域上に重なる絶縁層413の膜厚は、0.3μm以下、好ましくは5nm以上0.1μm以下とするとよい。このような膜厚範囲とすることで、電界強度のピークを小さくできる、或いは電界集中が分散されて電界の集中する箇所が複数となり、結果的にドレイン電極層405bの端部近傍に生じる恐れのある電界集中を緩和することができる。
【0175】
本実施の形態で示すトランジスタ460において、酸化物半導体層403と接する絶縁層413は、酸素ドープ処理を施されることによって、化学量論的組成よりも過剰に酸素を含む領域を有する単層または積層構造の絶縁層である。絶縁層413を積層構造とする場合には、少なくとも酸化物半導体層403と接する領域において、酸素を過剰に含む領域を有する構成とすることが好ましい。
【0176】
本実施の形態では、絶縁層413として、酸素過剰領域を有する酸化窒化シリコン膜を用いるものとする。また、金属酸化物膜447として酸化アルミニウム膜を用いるものとする。
【0177】
絶縁層413上に接して設けられる金属酸化物膜447は、金属膜(本実施の形態ではアルミニウム膜)を酸化させることによって形成された膜である。金属膜の酸化によって、金属酸化物膜447を形成することで、スパッタリング法によって金属酸化物膜を成膜する場合と比較して生産性を向上させることができる。また、金属膜の酸化は、絶縁層413への酸素ドープ処理と同一工程によって行うことができるため、工程の簡略化を図ることができる。よって、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0178】
酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断(ブロッキング)効果が高い。したがって、トランジスタを覆って酸化アルミニウム膜を設けることで、酸化物半導体層403及びそれに接する絶縁層413からの酸素の脱離を防止するとともに、酸化物半導体層403への水及び水素の混入を防止することができる。
【0179】
特に、トランジスタ460において、酸化物半導体層403は、該周縁部を絶縁層413及び金属酸化物膜447である酸化アルミニウム膜に覆われる構成となっている。酸素過剰領域を有する絶縁層413及びバリア性の高い酸化アルミニウム膜によって酸化物半導体層403の周縁部を覆うことで、酸素過剰領域を有する絶縁層413から酸素が供給され、酸化アルミニウム膜により該供給された酸素が酸化物半導体層403周縁部から脱離することを防止できる。
【0180】
また、金属酸化物膜447の抵抗率を1×10
10Ωm以上1×10
19Ωm以下(好ましくは、1×10
10Ωm以上1×10
18Ωm以下、より好ましくは1×10
11Ωm以上1×10
15Ωm以下)とすることが好ましい。または、酸化アルミニウム膜上に酸化チタン膜、酸化マグネシウム膜、酸化ニッケル膜、酸化モリブデン膜又は酸化タングステン膜を積層し、該酸化チタン膜、酸化マグネシウム膜、酸化ニッケル膜、酸化モリブデン膜、又は酸化タングステン膜の抵抗率を1×10
10Ωm以上1×10
19Ωm以下(好ましくは、1×10
10Ωm以上1×10
18Ωm以下、より好ましくは1×10
11Ωm以上1×10
15Ωm以下)とすることが好ましい。又は積層順を入れ替えてもよい。金属酸化物膜447として、上記抵抗率の導電性を有する膜を設けることで、半導体装置の静電破壊を防止することができる。
【0181】
なお、酸化アルミニウム膜を高密度(膜密度3.2g/cm
3以上、好ましくは3.6g/cm
3以上)とすると、トランジスタ460に安定な電気特性を付与することができるため、より好ましい。
【0182】
酸化アルミニウム膜は、該組成がAl
2O
xで表現される場合、xは1以上3.5以下の酸化アルミニウム膜を用いることが好ましい。
【0183】
以下、
図11を用いて
図10に示すトランジスタ460の作製方法の一例を説明する。
【0184】
まず、実施の形態1で示した工程と同様に、絶縁表面を有する基板400上にゲート電極層401を形成した後、ゲート電極層401上にゲート絶縁層402a及びゲート絶縁層402bを順に積層してゲート絶縁層402を形成する。
【0185】
本実施の形態では、スパッタリング法により膜厚100nmのタングステン膜を成膜し、ゲート電極層401を形成する。
【0186】
また、本実施の形態ではゲート絶縁層402aとしてプラズマCVD法を用いて形成する膜厚10nm以上100nm以下(好ましくは20nm以上60nm以下)の窒化シリコン膜を用いる。また、成膜ガスとしてはSiH
4及びN
2を含むガス、又はSiH
4、N
2、及びNH
3を含むガスを用いることができる。
【0187】
ゲート絶縁層402bの膜厚は、100nm以上350nm以下とし、スパッタリング法、MBE法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD法等を適宜用いて形成することができる。また、ゲート絶縁層402bは、スパッタリングターゲット表面に対し、概略垂直に複数の基板表面がセットされた状態で成膜を行うスパッタ装置を用いて成膜してもよい。
【0188】
また、本実施の形態では、ゲート絶縁層402bとして、プラズマCVD法により膜厚200nmの酸化窒化シリコン膜を成膜し、成膜後のゲート絶縁層402に対して、水素原子の低減、より好ましくは除去を目的とした熱処理(脱水化又は脱水素化処理)を行う。
【0189】
なお、脱水化又は脱水素化のための熱処理は、複数回行ってもよく、他の熱処理と兼ねてもよい。
【0190】
次いで、ゲート絶縁層402上に、酸化物半導体層を成膜し、島状に加工して酸化物半導体層403を形成する(
図11(A)参照)。詳細は、実施の形態1を参酌することができる。
【0191】
なお、ゲート絶縁層402を大気に開放せずにゲート絶縁層402と酸化物半導体層を連続的に形成することが好ましい。また、酸化物半導体層を成膜後、当該酸化物半導体層に含まれる過剰な水素(水や水酸基を含む)を低減又は除去(脱水化又は脱水素化)するための熱処理を行うことが好ましい。
【0192】
なお、本実施の形態において、酸化物半導体層403として、AC電源装置を有するスパッタリング装置を用いたスパッタリング法を用い、膜厚35nmのIn−Ga−Zn系酸化物膜(IGZO膜)を成膜する。
【0193】
次いで、ゲート電極層401、ゲート絶縁層402、及び酸化物半導体層403上に、絶縁層423を形成する。
【0194】
絶縁層423はプラズマCVD法、スパッタリング法により形成することができる。絶縁層423として、代表的には酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、または窒化酸化シリコン膜を用いて形成することができる。
【0195】
なお、絶縁層423として、窒素を含む酸化物絶縁膜(例えば、窒素を含む酸化シリコン膜、窒素を含む酸化アルミニウム膜)などを用いることができる。酸化物絶縁膜に含まれる窒素の濃度は0.01原子%以上含まれていればよく、好ましくは0.1原子%以上50原子%以下、より好ましくは0.5原子%以上15原子%以下であればよい。酸化シリコン膜に上記のような濃度で窒素が含まれるものは酸化窒化シリコン膜と呼ばれることもある。酸化物絶縁膜に窒素を適量含ませることにより、酸素を化学量論的組成よりも多く膜中に含ませることができる。
【0196】
本実施の形態では、酸化物半導体層403上に、酸化物半導体層403と接して、絶縁層423として、プラズマCVD法により酸化窒化シリコン膜を形成する。絶縁層423の成膜条件は、例えば、SiH
4とN
2Oのガス流量比をSiH
4:N
2O=30sccm:4000sccm、圧力200Pa、RF電源電力(電源出力)150W、基板温度220℃±15℃とすればよい。また、絶縁層423の膜厚は50nm以上100nm以下とすればよい。
【0197】
絶縁層423に熱処理による脱水化又は脱水素化処理を行うことが好ましい。
【0198】
本実施の形態では、絶縁層423の成膜ガスとして、水素を含むガスを用いても、絶縁層423に脱水素化処理を行うため、絶縁層423中の水素を除去することができる。よって、プラズマCVD法を好適に用いることができる。プラズマCVD法は、成膜時に膜へごみなどが付着、混入しにくい上、比較的速い成膜速度で成膜することができるので、厚膜化が可能であり、生産性に有利である。
【0199】
熱処理の温度は、300℃以上700℃以下、または基板の歪み点未満とする。熱処理の温度は、絶縁層423の成膜温度より高い方が、脱水化または脱水素化の効果が高いため好ましい。例えば、熱処理装置の一つである電気炉に基板を導入し、絶縁層423に対して窒素雰囲気下450℃において1時間の熱処理を行う。
【0200】
熱処理によって、絶縁層423の脱水化または脱水素化を行うことができ、水素、又は水などの不純物が排除された絶縁膜を形成することができる。
【0201】
脱水素化又は脱水素化のための熱処理を行うことにより、絶縁層423に含まれる、水、水素等の不純物を除去し、低減させることができる。絶縁層423をできるだけ水素を含まない膜とすることで、トランジスタ460の特性変動を抑制し、安定した電気特性を付与することができる。
【0202】
なお、金属酸化物膜は、水素又は水等を通過させないブロッキング機能を有するため、絶縁層423の脱水化又は脱水素化処理を目的とした熱処理は、絶縁層423の形成後であって、金属膜457の成膜前に行うことが好ましい。
【0203】
次いで、絶縁層423上に金属膜457を成膜する(
図11(B)参照)。
【0204】
金属膜457は、スパッタリング法、蒸着法、CVD法等によって形成することが好ましい。また、金属膜457の膜厚は3nm以上20nm以下(好ましくは3nm以上10nm以下、より好ましくは4nm以上5nm以下)とすることが好ましい。
【0205】
本実施の形態では、金属膜457として、アルミニウム膜を形成する。なお、アルミニウム膜として、チタン、又はマグネシウムが添加されたアルミニウム膜を用いてもよい。また、金属膜457として、アルミニウム膜と、チタン膜、マグネシウム膜、ニッケル膜、モリブデン膜、又はタングステン膜の積層を用いてもよい。
【0206】
次いで、絶縁層423及び金属膜457に対して、酸素454を導入する処理(酸素ドープ処理や、酸素注入処理ともいう)を行う。これによって、酸素過剰領域を有する絶縁層413と、金属膜457(本実施の形態ではアルミニウム膜)の酸化物である、金属酸化物膜447(本実施の形態では酸化アルミニウム膜)が形成される(
図11(C)参照)。
【0207】
酸素454を導入する処理は実施の形態1と同様に行うことができる。詳細は、実施の形態1を参酌することができる。
【0208】
本実施の形態では、絶縁層413には酸素ドープ処理によって酸素が導入され、金属酸化物膜447と接する領域413bが酸化物半導体層403と接する領域413aより酸素過剰領域となっている例である。領域413bに導入された酸素は、酸化物半導体層403へ固相拡散することで、酸化物半導体層403へ供給される。このように、酸化物半導体層403への酸素供給を絶縁層413からの固相拡散によって行うと、露出された酸化物半導体層403へ直接酸素ドープを行うプラズマ処理などの方法と比較して、酸化物半導体層403へのプラズマによるダメージを与えないという効果がある。
【0209】
なお、酸素454を絶縁層423及び金属酸化物膜447に添加した後、加熱処理を行ってもよい。本実施の形態では、当該加熱処理によって、絶縁層413に含まれる酸素を酸化物半導体層403へと供給し、酸化物半導体層403の酸素欠損を補填する。該加熱処理は工程中の他の加熱処理と兼ねることができる。加熱処理は250℃以上600℃以下、例えば300℃で行えばよい。加熱処理により絶縁層413から酸化物半導体層403に酸素をドープして、酸化物半導体層403中の酸素欠損を補償することができる。
【0210】
酸化物半導体を用いたトランジスタの場合、絶縁層から酸化物半導体層に酸素が供給されることで、酸化物半導体層と絶縁層との界面準位密度を低減できる。この結果、トランジスタの動作などに起因して、酸化物半導体層と絶縁層との界面にキャリアが捕獲されることを抑制することができ、信頼性の高いトランジスタを得ることができる。
【0211】
さらに、酸化物半導体層の酸素欠損に起因して電荷が生じる場合がある。一般に酸化物半導体層の酸素欠損は、一部がドナーとなりキャリアである電子を放出する。この結果、トランジスタのしきい値電圧がマイナス方向にシフトしてしまう。そこで、絶縁層から酸化物半導体層に酸素が十分に供給され、好ましくは酸化物半導体層に酸素が過剰に含まれていることにより、しきい値電圧がマイナス方向へシフトする要因である、酸化物半導体層の酸素欠損密度を低減することができる。
【0212】
絶縁層413に含まれる過剰な酸素は、トランジスタの作製工程における熱処理によって、絶縁層413に接する酸化物半導体層403へと供給される。したがって、トランジスタ460において、絶縁層413と酸化物半導体層403との界面、又は酸化物半導体層403中(バルク中)の少なくとも一部において、酸素過剰領域が形成される。
【0213】
また、絶縁層への、脱水化又は脱水素化処理及び/又は酸素ドープ処理は、複数回行ってもよい。
【0214】
また、絶縁層413上に接して設けられる金属酸化物膜447は、金属膜を酸化させることによって形成された膜である。金属膜の酸化によって、金属酸化物膜447を形成することで、スパッタリング法によって金属酸化物膜を成膜する場合と比較して生産性を向上させることができる。また、金属膜の酸化は、絶縁層413への酸素ドープ処理と同一工程によって行うことができるため、工程の簡略化を図ることができる。よって、半導体装置の製造コストを低減することができる。
【0215】
次に、絶縁層413及び金属酸化物膜447を、選択的にエッチングして、酸化物半導体層403へ達する開口425a、425bを形成する(
図11(D)参照)。
【0216】
次いで、ゲート電極層401、ゲート絶縁層402a、402b、酸化物半導体層403、絶縁層413、及び金属酸化物膜447上に、ソース電極層及びドレイン電極層となる導電膜を形成する。
【0217】
導電膜は後の熱処理に耐えられる材料を用いる。ソース電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、例えば、Al、Cr、Cu、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。また、Al、Cuなどの金属膜の下側又は上側の一方または双方にTi、Mo、Wなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としても良い。また、ソース電極層、及びドレイン電極層に用いる導電膜としては、導電性の金属酸化物で形成しても良い。導電性の金属酸化物としては酸化インジウム(In
2O
3)、酸化スズ(SnO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム酸化スズ(In
2O
3−SnO
2)、酸化インジウム酸化亜鉛(In
2O
3−ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いることができる。
【0218】
フォトリソグラフィ工程により導電膜上にレジストマスクを形成し、選択的にエッチングを行ってソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成する。ソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成した後、レジストマスクを除去する。
【0219】
レジストマスク形成時の露光には、紫外線やKrFレーザ光やArFレーザ光を用いるとよい。酸化物半導体層403上で隣り合うソース電極層405aの下端部とドレイン電極層405bの下端部との間隔幅によって後に形成されるトランジスタ460のチャネル長Lが決定される。なお、チャネル長L=25nm未満の露光を行う場合には、数nm〜数10nmと極めて波長が短い超紫外線(Extreme Ultraviolet)を用いてレジストマスク形成時の露光を行うとよい。超紫外線による露光は、解像度が高く焦点深度も大きい。従って、後に形成されるトランジスタのチャネル長Lを10nm以上1000nm以下とすることも可能であり、回路の動作速度を高速化できる。
【0220】
また、フォトリソグラフィ工程で用いるフォトマスク数及び工程数を削減するため、透過した光が複数の強度となる露光マスクである多階調マスクによって形成されたレジストマスクを用いてエッチング工程を行ってもよい。多階調マスクを用いて形成したレジストマスクは複数の膜厚を有する形状となり、エッチングを行うことでさらに形状を変形することができるため、異なるパターンに加工する複数のエッチング工程に用いることができる。よって、一枚の多階調マスクによって、少なくとも二種類以上の異なるパターンに対応するレジストマスクを形成することができる。よって露光マスク数を削減することができ、対応するフォトリソグラフィ工程も削減できるため、工程の簡略化が可能となる。
【0221】
本実施の形態では、導電膜のエッチングには、塩素を含むガス、例えば、塩素(Cl
2)、三塩化硼素(BCl
3)、四塩化珪素(SiCl
4)、四塩化炭素(CCl
4)などを含むガスを用いることができる。また、フッ素を含むガス、例えば、四弗化炭素(CF
4)、六弗化硫黄(SF
6)、三弗化窒素(NF
3)、トリフルオロメタン(CHF
3)などを含むガスを用いることができる。また、これらのガスにヘリウム(He)やアルゴン(Ar)などの希ガスを添加したガス、などを用いることができる。
【0222】
エッチング法としては、平行平板型RIE(Reactive Ion Etching)法や、ICP(Inductively Coupled Plasma:誘導結合型プラズマ)エッチング法を用いることができる。所望の加工形状にエッチングできるように、エッチング条件(コイル型の電極に印加される電力量、基板側の電極に印加される電力量、基板側の電極温度等)を適宜調節する。
【0223】
本実施の形態では、導電膜としてスパッタリング法により膜厚20nm以上50nm以下のタングステン膜を用いる。導電膜のエッチングは、ドライエッチング法により、タングステン膜をエッチングして、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bを形成する。
【0224】
以上の工程で、本実施の形態のトランジスタ460が作製される(
図11(E)参照)。
【0225】
ソース電極層405a、ドレイン電極層405b上に層間絶縁層(保護絶縁膜、平坦化絶縁膜)となる絶縁膜を形成してもよい。層間絶縁層(保護絶縁膜、平坦化絶縁膜)を設けることで薄膜の金属酸化物膜447に対する応力を緩和することができる。よって、金属酸化物膜447の破損を防止することができる。
【0226】
保護絶縁膜は、絶縁層413と同様な材料及び方法を用いて形成することができる。例えば、スパッタリング法により形成した酸化シリコン膜を400nm形成する。また、保護絶縁膜の形成後、加熱処理を行ってもよい。例えば、窒素雰囲気下300℃で1時間加熱処理を行う。
【0227】
また、トランジスタ460起因の表面凹凸を低減するために平坦化絶縁膜を形成してもよい。平坦化絶縁膜としては、ポリイミド、アクリル、ベンゾシクロブテン系樹脂等の有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁膜を複数積層させることで、平坦化絶縁膜を形成してもよい。
【0228】
例えば、平坦化絶縁膜として、膜厚1500nmのアクリル樹脂膜を形成すればよい。アクリル樹脂膜は塗布法による塗布後、焼成(例えば窒素雰囲気下250℃1時間)して形成することができる。
【0229】
平坦化絶縁膜を形成後、加熱処理を行ってもよい。例えば、窒素雰囲気下250℃で1時間加熱処理を行う。
【0230】
このように、トランジスタ460形成後、加熱処理を行ってもよい。また、加熱処理は複数回行ってもよい。
【0231】
図14に、トランジスタ460のゲート配線と、ソース配線(又はドレイン配線)との接続部(又はこれらと同じ層に設けられた配線の接続部)を図示する。
図14において、ゲート電極層401と同じ層に形成された電極層491と、ソース電極層405a又はドレイン電極層405bと同じ層に形成された電極層405cとは、ゲート絶縁層402、絶縁層413、及び金属酸化物膜447に形成されたコンタクトホールを介して電気的に接続される。
【0232】
ここで、電極層491と電極層405cを接続させるためのコンタクトホールの形成を、金属膜457の成膜後であって酸素ドープ処理前に行う場合、ゲート配線及び金属膜457の導電率が高いためコンタクトホールの形成時に静電破壊が起こる恐れがある。よって、当該コンタクトホールは、金属膜457への酸素ドープ処理後(すなわち、金属酸化物膜447の形成後)であって、ソース電極層405aまたはドレイン電極層405bとなる導電膜の形成前に形成する必要がある。また、ソース電極層405aまたはドレイン電極層405bとなる導電膜に酸素が導入されることを防ぐために、酸素ドープ処理は、当該導電膜の成膜前に行う必要がある。
【0233】
図12に、本実施の形態のトランジスタの他の構成例を示す。
【0234】
図12(A)は、トランジスタ480の平面図であり、
図12(B)は、
図12(A)のX4−Y4における断面図である。なお、
図12(A)では煩雑になることを避けるため、トランジスタ480の構成要素の一部を省略して図示している。
【0235】
図12に示すトランジスタ480も、チャネル保護型(チャネルストップ型ともいう)と呼ばれるボトムゲート構造の一つであり逆スタガ型トランジスタともいうトランジスタの一例である。
【0236】
チャネル長方向の断面図である
図12(B)に示すように、トランジスタ480を含む半導体装置は、基板400上に、ゲート電極層401と、ゲート電極層401上にゲート絶縁層402a、402b、酸化物半導体層403、絶縁層433、金属酸化物膜437、ソース電極層405a、ドレイン電極層405bを有する。
【0237】
島状の絶縁層433及び金属酸化物膜437は、少なくともゲート電極層401と重畳し且つチャネル形成領域を含む酸化物半導体層403の領域上に設けられており、チャネル保護膜として機能する。トランジスタ480における絶縁層433及び金属酸化物膜437は、島状に加工されており、酸化物半導体層403の周縁部を覆わない形状の例である。
【0238】
なお、トランジスタ480のその他の構成及び作製方法の詳細は、トランジスタ460を参酌することができる。
【0239】
本実施の形態で示す半導体装置は、酸化物半導体層403に接して設けられる絶縁層として、酸素ドープ処理を施された膜であり、酸素過剰領域を有する。また、該絶縁層は、脱水化又は脱水素化処理によって、不純物である水又は水素を可能な限り除去した膜である。酸化物半導体層403に接して水及び水素の含有量を低減し、且つ酸素の含有量を増加させた絶縁層を形成することで、酸化物半導体層403への水及び水素の混入を抑制しつつ、酸化物半導体層403へ酸素を供給することが可能となる。
【0240】
よって、酸化物半導体層403中及び/又は酸化物半導体層403と絶縁層との界面において酸素過剰領域を形成することが可能となる。これによって、しきい値電圧がマイナス方向へシフトする要因である、酸化物半導体層の酸素欠損密度を低減することができるため、トランジスタのしきい値電圧のバラツキを低減することができるとともに、ノーマリオフ型のトランジスタを実現することができる。また、トランジスタのサブスレッショルド値(S値)を低減させることができる。
【0241】
また、本実施の形態で示す半導体装置は、酸素ドープ処理を酸化物半導体層403に接する絶縁層に対して行うため、酸化物半導体層403へ直接酸素ドープ処理を行う場合と比較して、酸化物半導体層403の膜質及び/又は結晶性を向上させることができる。特に、酸化物半導体層403がCAAC−OS膜である場合に、該CAAC−OS膜へ酸素ドープ処理を行うと結晶性が損なわれる場合があるため、本実施の形態で示す半導体装置の作製方法を適用することは有効である。
【0242】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0243】
(実施の形態3)
実施の形態1又は2に示したトランジスタを用いて表示機能を有する半導体装置(表示装置ともいう)を作製することができる。また、トランジスタを含む駆動回路の一部又は全体を、画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0244】
図4(A)において、基板4001上に設けられた画素部4002を囲むようにして、シール材4005が設けられ、基板4006によって封止されている。
図4(A)においては、基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、ICチップ、又は別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された走査線駆動回路4004、信号線駆動回路4003が実装されている。また別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004又は画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC(Flexible printed circuit)4018a及び4018bから供給されている。
【0245】
図4(B)及び
図4(C)において、基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また画素部4002と、走査線駆動回路4004の上に基板4006が設けられている。よって画素部4002と、走査線駆動回路4004とは、基板4001とシール材4005と基板4006とによって、表示素子と共に封止されている。
図4(B)及び(C)においては、基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、ICチップ、又は別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された信号線駆動回路4003が実装されている。
図4(B)及び
図4(C)においては、別途形成された信号線駆動回路4003と、走査線駆動回路4004又は画素部4002に与えられる各種信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
【0246】
また
図4(B)及び
図4(C)においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、基板4001に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装してもよいし、信号線駆動回路の一部又は走査線駆動回路の一部のみを別途形成して実装してもよい。
【0247】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Chip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTCP(Tape Carrier Package)法などを用いることができる。
図4(A)は、COG方法により信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004を実装する例であり、
図4(B)は、COG方法により信号線駆動回路4003を実装する例であり、
図4(C)は、TCP方法により信号線駆動回路4003を実装する例である。
【0248】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。
【0249】
なお、本明細書中における表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指す。また、コネクター、例えばFPCもしくはTCPが取り付けられたモジュール、TCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、又は表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て表示装置に含むものとする。
【0250】
また基板上に設けられた画素部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有しており、実施の形態1又は2に示したトランジスタを適用することができる。
【0251】
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光素子(発光表示素子ともいう)を用いることができる。発光素子は、電流又は電圧によって輝度が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Luminescence)、有機EL等が含まれる。また、電子インクなど、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる。
【0252】
また、半導体装置の一形態について、
図4乃至
図6を用いて説明する。
図6は、
図4(B)のM−Nにおける断面図に相当する。
【0253】
図4及び
図6で示すように、半導体装置は接続端子電極4015及び端子電極4016を有しており、接続端子電極4015及び端子電極4016はFPC4018が有する端子と異方性導電層4019を介して、電気的に接続されている。
【0254】
接続端子電極4015は、第1の電極層4034と同じ導電層から形成され、端子電極4016は、トランジスタ4010、4011のソース電極層及びドレイン電極層と同じ導電層で形成されている。
【0255】
また基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004は、トランジスタを複数有しており、
図6では、画素部4002に含まれるトランジスタ4010と、走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011とを例示している。
図6(A)では、トランジスタ4010、4011上には絶縁層4030、4032が設けられ、
図6(B)では、さらに、絶縁層4021が設けられている。
【0256】
トランジスタ4010、4011としては、実施の形態1又は2に示したトランジスタを適用することができる。本実施の形態では、実施の形態1で示したトランジスタ420と同様な構造を有するトランジスタを適用する例を示す。トランジスタ4010、4011は、ボトムゲート構造のトランジスタである。
【0257】
トランジスタ4010、4011は、酸化物半導体層と接する絶縁層である、絶縁層4030として、酸素ドープ処理によって酸素過剰領域を形成された絶縁層を適用し、且つ、絶縁層4030上に接して設けられた絶縁層4032として金属膜を、上述の酸素ドープ処理によって酸化して形成された金属酸化物膜を有するトランジスタである。よって、酸化物半導体層には、トランジスタ4010、4011の特性変動を引き起こす水素、又は水などの不純物が混入せず、かつ酸素欠損を補填する酸素が供給される。よって、トランジスタ4010、4011は、電気特性変動が抑制されている。また、トランジスタ4010、4011は、金属酸化物膜を金属膜の成膜後の酸素ドープ処理によって形成しているため、生産性よく作製されたトランジスタである。
【0258】
従って、
図4及び
図6で示す本実施の形態の酸化物半導体層を用いた安定した電気特性を有するトランジスタ4010、4011を含む半導体装置として信頼性の高い半導体装置を提供することができる。
【0259】
また、駆動回路用のトランジスタ4011の酸化物半導体層のチャネル形成領域と重なる位置にさらに導電層を設けてもよい。導電層を酸化物半導体層のチャネル形成領域と重なる位置に設けることによって、バイアス−熱ストレス試験(BT試験)前後におけるトランジスタ4011のしきい値電圧の変化量をさらに低減することができる。また、導電層は、電位がトランジスタ4011のゲート電極層と同じでもよいし、異なっていても良く、第2のゲート電極層として機能させることもできる。
【0260】
また、該導電層は外部の電場を遮蔽する、すなわち外部の電場が内部(トランジスタを含む回路部)に作用しないようにする機能(特に静電気に対する静電遮蔽機能)も有する。導電層の遮蔽機能により、静電気などの外部の電場の影響によりトランジスタの電気的な特性が変動することを防止することができる。
【0261】
画素部4002に設けられたトランジスタ4010は表示素子と電気的に接続し、表示パネルを構成する。表示素子は表示を行うことができれば特に限定されず、様々な表示素子を用いることができる。
【0262】
図6(A)に表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の例を示す。
図6(A)において、表示素子である液晶素子4013は、第1の電極層4034、第2の電極層4031、及び液晶層4008を含む。なお、液晶層4008を挟持するように配向膜として機能する絶縁層4038、4033が設けられている。第2の電極層4031は基板4006側に設けられ、第1の電極層4034と第2の電極層4031とは液晶層4008を介して積層する構成となっている。
【0263】
またスペーサ4035は絶縁層を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、液晶層4008の膜厚(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお球状のスペーサを用いていてもよい。
【0264】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料(液晶組成物)は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0265】
また、液晶層4008に、配向膜を用いないブルー相を発現する液晶組成物を用いてもよい。この場合、液晶層4008と、第1の電極層4034及び第2の電極層4031とは接する構造となる。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は、液晶及びカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて発現させることができる。また、ブルー相が発現する温度範囲を広げるために、ブルー相を発現する液晶組成物に重合性モノマー及び重合開始剤などを添加し、高分子安定化させる処理を行って液晶層を形成することもできる。ブルー相を発現する液晶組成物は、応答速度が短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させることが可能となる。酸化物半導体層を用いるトランジスタは、静電気の影響によりトランジスタの電気的な特性が著しく変動して設計範囲を逸脱する恐れがある。よって酸化物半導体層を用いるトランジスタを有する液晶表示装置にブルー相を発現する液晶組成物を用いることはより効果的である。
【0266】
また、液晶材料の固有抵抗は、1×10
9Ωcm以上であり、好ましくは1×10
11Ωcm以上であり、さらに好ましくは1×10
12Ωcm以上である。なお、本明細書における固有抵抗の値は、20℃で測定した値とする。
【0267】
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。保持容量の大きさは、トランジスタのオフ電流等を考慮して設定すればよい。本明細書に開示する酸化物半導体層を有するトランジスタを用いることにより、各画素における液晶容量に対して1/3以下、好ましくは1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分である。
【0268】
本明細書に開示する酸化物半導体層を用いたトランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低く制御することができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0269】
また、本明細書に開示する酸化物半導体層を用いたトランジスタは、比較的高い電界効果移動度が得られるため、高速駆動が可能である。例えば、このような高速駆動が可能なトランジスタを液晶表示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用するドライバートランジスタを同一基板上に形成することができる。すなわち、別途駆動回路として、シリコンウェハ等により形成された半導体装置を用いる必要がないため、半導体装置の部品点数を削減することができる。また、画素部においても、高速駆動が可能なトランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0270】
液晶表示装置には、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In−Plane−Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned Micro−cell)モード、OCB(Optical Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0271】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、例えば、MVA(Multi−Domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、ASV(Advanced Super View)モードなどを用いることができる。また、VA型の液晶表示装置にも適用することができる。VA型の液晶表示装置とは、液晶表示パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種である。VA型の液晶表示装置は、電圧が印加されていないときにパネル面に対して液晶分子が垂直方向を向く方式である。また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれる方法を用いることができる。
【0272】
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板及び位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0273】
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いることができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)、又はRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがある。なお、色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、開示する発明はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用することもできる。
【0274】
また、表示装置に含まれる表示素子として、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子を適用することができる。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0275】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。本実施の形態では、発光素子として有機EL素子を用いる例を示す。
【0276】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー−アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明する。
【0277】
発光素子は発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透光性であればよい。そして、基板上にトランジスタ及び発光素子を形成し、基板とは逆側の面から発光を取り出す上面射出や、基板側の面から発光を取り出す下面射出や、基板側及び基板とは反対側の面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用することができる。
【0278】
図5(A)(B)及び
図6(B)に表示素子として発光素子を用いた発光装置の例を示す。
【0279】
図5(A)は発光装置の平面図であり、
図5(A)中の一点鎖線S1−T1、S2−T2、及びS3−T3で切断した断面が
図5(B)に相当する。なお、
図5(A)の平面図においては、電界発光層542及び第2の電極層543は省略してあり図示していない。
【0280】
図5に示す発光装置は、基板500上に、トランジスタ510、容量素子520、配線層交差部530を有しており、トランジスタ510は発光素子540と電気的に接続している。なお、
図5は基板500を通過して発光素子540からの光を取り出す、下面射出型構造の発光装置である。
【0281】
トランジスタ510としては、実施の形態1又は2に示したトランジスタを適用することができる。本実施の形態では、実施の形態1で示したトランジスタ420と同様な構造を有するトランジスタを適用する例を示す。トランジスタ510は、ボトムゲート構造のトランジスタである。
【0282】
トランジスタ510はゲート電極層511a、511b、ゲート絶縁層502、酸化物半導体層512、ソース電極層又はドレイン電極層として機能する導電層513a、513bを含む。
【0283】
トランジスタ510は酸化物半導体層512と接する絶縁層である、絶縁層524として、酸素ドープ処理によって酸素過剰領域を形成された絶縁層を適用し、且つ、絶縁層524上に接して設けられた絶縁層525としてアルミニウム膜を、上述の酸素ドープ処理によって酸化して形成された酸化アルミニウム膜を有するトランジスタである。よって、酸化物半導体層512には、トランジスタ510の特性変動を引き起こす水素、又は水などの不純物が混入せず、かつ酸素欠損を補填する酸素が供給される。よって、トランジスタ510は、電気特性変動が抑制されている。また、トランジスタ510は、酸化アルミニウム膜をアルミニウム膜の成膜後の酸素ドープ処理によって形成しているため、生産性よく作製されたトランジスタである。
【0284】
従って、
図5で示す本実施の形態の酸化物半導体層512を用いた安定した電気特性を有するトランジスタ510を含む半導体装置として信頼性の高い半導体装置を提供することができる。また、そのような信頼性の高い半導体装置を歩留まりよく作製し、高生産化を達成することができる。
【0285】
容量素子520は、導電層521a、521b、ゲート絶縁層502、酸化物半導体層522、導電層523を含み、導電層521a、521bと導電層523とで、ゲート絶縁層502及び酸化物半導体層522を挟む構成とすることで容量を形成する。
【0286】
配線層交差部530は、ゲート電極層511a、511bと、導電層533との交差部であり、ゲート電極層511a、511bと、導電層533とは、間にゲート絶縁層502を介して交差する。
【0287】
本実施の形態においては、ゲート電極層511a及び導電層521aとして膜厚30nmのチタン膜を用い、ゲート電極層511b及び導電層521bとして膜厚200nmの銅薄膜を用いる。よって、ゲート電極層はチタン膜と銅薄膜との積層構造となる。
【0288】
酸化物半導体層512、522としては膜厚25nmのIGZO膜を用いる。
【0289】
トランジスタ510、容量素子520、及び配線層交差部530上には層間絶縁層504が形成され、層間絶縁層504上において発光素子540と重畳する領域にカラーフィルタ層505が設けられている。層間絶縁層504及びカラーフィルタ層505上には平坦化絶縁層として機能する絶縁層506が設けられている。
【0290】
絶縁層506上に第1の電極層541、電界発光層542、第2の電極層543の順に積層した積層構造を含む発光素子540が設けられている。発光素子540とトランジスタ510とは、導電層513aに達する絶縁層506及び層間絶縁層504に形成された開口において、第1の電極層541及び導電層513aが接することによって電気的に接続されている。なお、第1の電極層541の一部及び該開口を覆うように隔壁507が設けられている。
【0291】
絶縁層506には膜厚1500nmの感光性のアクリル膜、隔壁507には膜厚1500nmの感光性のポリイミド膜を用いることができる。
【0292】
カラーフィルタ層505としては、例えば有彩色の透光性樹脂を用いることができる。有彩色の透光性樹脂としては、感光性、非感光性の有機樹脂を用いることができるが、感光性の有機樹脂層を用いるとレジストマスク数を削減することができるため、工程が簡略化し好ましい。
【0293】
有彩色は、黒、灰、白などの無彩色を除く色であり、カラーフィルタ層は、着色された有彩色の光のみを透過する材料で形成される。有彩色としては、赤色、緑色、青色などを用いることができる。また、シアン、マゼンダ、イエロー(黄)などを用いてもよい。着色された有彩色の光のみを透過するとは、カラーフィルタ層における透過光は、その有彩色の光の波長にピークを有するということである。カラーフィルタ層は、含ませる着色材料の濃度と光の透過率の関係に考慮して、最適な膜厚を適宜制御するとよい。例えば、カラーフィルタ層505の膜厚は1500nm以上2000nm以下とすればよい。
【0294】
図6(B)に示す発光装置においては、表示素子である発光素子4513は、画素部4002に設けられたトランジスタ4010と電気的に接続している。なお発光素子4513の構成は、第1の電極層4034、電界発光層4511、第2の電極層4031の積層構造であるが、示した構成に限定されない。発光素子4513から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子4513の構成は適宜変えることができる。
【0295】
隔壁4510、507は、有機絶縁材料、又は無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂材料を用い、第1の電極層4034、541上に開口部を形成し、その開口部の側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0296】
電界発光層4511、542は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでもよい。
【0297】
発光素子4513、540に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層4031、543及び隔壁4510、507上に保護膜を形成してもよい。保護膜としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、DLC膜等を形成することができる。
【0298】
また、発光素子4513、540に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、発光素子4513、540を覆う有機化合物を含む層を蒸着法により形成してもよい。
【0299】
また、基板4001、基板4006、及びシール材4005によって封止された空間には充填材4514が設けられ密封されている。このように外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0300】
充填材4514としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂又は熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)又はEVA(エチレンビニルアセテート)を用いることができる。例えば充填材として窒素を用いればよい。
【0301】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0302】
また、表示装置として、電子インクを駆動させる電子ペーパーを提供することも可能である。電子ペーパーは、電気泳動表示装置(電気泳動ディスプレイ)とも呼ばれており、紙と同じ読みやすさ、他の表示装置に比べ低消費電力、薄くて軽い形状とすることが可能という利点を有している。
【0303】
電気泳動表示装置は、様々な形態が考えられ得るが、プラスの電荷を有する第1の粒子と、マイナスの電荷を有する第2の粒子とを含むマイクロカプセルが溶媒又は溶質に複数分散されたものであり、マイクロカプセルに電界を印加することによって、マイクロカプセル中の粒子を互いに反対方向に移動させて一方側に集合した粒子の色のみを表示するものである。なお、第1の粒子又は第2の粒子は染料を含み、電界がない場合において移動しないものである。また、第1の粒子の色と第2の粒子の色は異なるもの(無色を含む)とする。
【0304】
このように、電気泳動表示装置は、誘電定数の高い物質が高い電界領域に移動する、いわゆる誘電泳動的効果を利用したディスプレイである。
【0305】
上記マイクロカプセルを溶媒中に分散させたものが電子インクと呼ばれるものであり、この電子インクはガラス、プラスチック、布、紙などの表面に印刷することができる。また、カラーフィルタや色素を有する粒子を用いることによってカラー表示も可能である。
【0306】
なお、マイクロカプセル中の第1の粒子および第2の粒子は、導電体材料、絶縁体材料、半導体材料、磁性材料、液晶材料、強誘電性材料、エレクトロルミネセント材料、エレクトロクロミック材料、磁気泳動材料から選ばれた一種の材料、又はこれらの複合材料を用いればよい。
【0307】
また、電子ペーパーとして、ツイストボール表示方式を用いる表示装置も適用することができる。ツイストボール表示方式とは、白と黒に塗り分けられた球形粒子を、表示素子に用いる電極層である第1の電極層及び第2の電極層の間に配置し、第1の電極層及び第2の電極層に電位差を生じさせて球形粒子の向きを制御することにより、表示を行う方法である。
【0308】
なお、
図4乃至
図6において、基板4001、500、基板4006としては、ガラス基板の他、可撓性を有する基板も用いることができ、例えば透光性を有するプラスチック基板などを用いることができる。プラスチックとしては、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフルオライド)フィルム、ポリエステルフィルム又はアクリル樹脂フィルムを用いることができる。また、透光性が必要でなければ、アルミニウムやステンレスなどの金属基板(金属フィルム)を用いてもよい。例えば、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステルフィルムで挟んだ構造のシートを用いることもできる。
【0309】
本実施の形態では、ゲート絶縁層4020aとして窒化シリコン膜を用いる。また、酸化物半導体層と接するゲート絶縁層4020b及び絶縁層4030としてプラズマCVD法によって形成する酸化窒化シリコン膜を用い、脱水化又は脱水素化のための熱処理及び酸素ドープ処理を行う。また、絶縁層4030上に絶縁層4032を有する。本実施の形態では、絶縁層4032としてアルミニウム膜を酸素ドープ処理によって酸化することによって得られた酸化アルミニウム膜を用いる。
【0310】
酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0311】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、脱水化又は脱水素化のための熱処理及び酸素ドープ処理を行った酸化窒化シリコン膜への変動要因となる水素、水分などの不純物の混入、及び酸素の放出を防止する保護膜として機能する。
【0312】
また、平坦化絶縁層として機能する絶縁層4021、506は、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁層を複数積層させることで、絶縁層を形成してもよい。
【0313】
絶縁層4021、506の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタリング法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法)、スクリーン印刷、オフセット印刷等の方法、ドクターナイフ、ロールコーター、カーテンコーター、ナイフコーター等のツール(設備)を用いることができる。
【0314】
表示装置は光源又は表示素子からの光を透過させて表示を行う。よって光が透過する画素部に設けられる基板、絶縁層、導電層などの薄膜はすべて可視光の波長領域の光に対して透光性とする。
【0315】
表示素子に電圧を印加する第1の電極層及び第2の電極層(画素電極層、共通電極層、対向電極層などともいう)においては、取り出す光の方向、電極層が設けられる場所、及び電極層のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0316】
第1の電極層4034、541、第2の電極層4031、543は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物、グラフェンなどの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0317】
また、第1の電極層4034、541、第2の電極層4031、543はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の金属、又はその合金、若しくはその金属窒化物から一つ、又は複数種を用いて形成することができる。
【0318】
本実施の形態においては、
図5に示す発光装置は下面射出型なので、第1の電極層541は透光性、第2の電極層543は反射性を有する。よって、第1の電極層541に金属膜を用いる場合は透光性を保てる程度膜厚を薄く、第2の電極層543に透光性を有する導電層を用いる場合は、反射性を有する導電層を積層するとよい。
【0319】
また、第1の電極層4034、541、第2の電極層4031、543として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子が用いることができる。例えば、ポリアニリン又はその誘導体、ポリピロール又はその誘導体、ポリチオフェン又はその誘導体、若しくはアニリン、ピロールおよびチオフェンの2種以上からなる共重合体若しくはその誘導体などがあげられる。
【0320】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0321】
以上のように実施の形態1又は2で示したトランジスタを適用することで、様々な機能を有する半導体装置を提供することができる。
【0322】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0323】
(実施の形態4)
実施の形態1又は2に示したトランジスタを用いて、対象物の情報を読み取るイメージセンサ機能を有する半導体装置を作製することができる。
【0324】
図7(A)に、イメージセンサ機能を有する半導体装置の一例を示す。
図7(A)はフォトセンサの等価回路であり、
図7(B)はフォトセンサの一部を示す断面図である。
【0325】
フォトダイオード602は、一方の電極がフォトダイオードリセット信号線658に、他方の電極がトランジスタ640のゲートに電気的に接続されている。トランジスタ640は、ソース又はドレインの一方がフォトセンサ基準信号線672に、ソース又はドレインの他方がトランジスタ656のソース又はドレインの一方に電気的に接続されている。トランジスタ656は、ゲートがゲート信号線659に、ソース又はドレインの他方がフォトセンサ出力信号線671に電気的に接続されている。
【0326】
なお、本明細書における回路図において、酸化物半導体層を用いるトランジスタと明確に判明できるように、酸化物半導体層を用いるトランジスタの記号には「OS」と記載している。
図7(A)において、トランジスタ640、トランジスタ656は実施の形態1又は2に示したトランジスタが適用でき、酸化物半導体層を用いるトランジスタである。本実施の形態では、実施の形態1で示したトランジスタ420と同様な構造を有するトランジスタを適用する例を示す。トランジスタ640は、ボトムゲート構造のトランジスタである。
【0327】
図7(B)は、フォトセンサにおけるフォトダイオード602及びトランジスタ640に示す断面図であり、絶縁表面を有する基板601(素子基板)上に、センサとして機能するフォトダイオード602及びトランジスタ640が設けられている。フォトダイオード602、トランジスタ640の上には接着層608を用いて基板613が設けられている。
【0328】
トランジスタ640上には絶縁層631、絶縁層632、層間絶縁層633、層間絶縁層634が設けられている。フォトダイオード602は、層間絶縁層633上に形成された電極層641bと、電極層641b上に順に積層された第1半導体膜606a、第2半導体膜606b、及び第3半導体膜606cと、層間絶縁層634上に設けられ、第1乃至第3の半導体膜を介して電極層641bと電気的に接続する電極層642と、電極層641bと同じ層に設けられ、電極層642と電気的に接続する電極層641aと、を有している。
【0329】
電極層641bは、層間絶縁層634に形成された導電層643と電気的に接続し、電極層642は電極層641aを介して導電層645と電気的に接続している。導電層645は、トランジスタ640のゲート電極層と電気的に接続しており、フォトダイオード602はトランジスタ640と電気的に接続している。
【0330】
ここでは、第1半導体膜606aとしてp型の導電型を有する半導体膜と、第2半導体膜606bとして高抵抗な半導体膜(I型半導体膜)、第3半導体膜606cとしてn型の導電型を有する半導体膜を積層するpin型のフォトダイオードを例示している。
【0331】
第1半導体膜606aはp型半導体膜であり、p型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコン膜により形成することができる。第1半導体膜606aの形成には13族の不純物元素(例えばボロン(B))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH
4)を用いればよい。または、Si
2H
6、SiH
2Cl
2、SiHCl
3、SiCl
4、SiF
4等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第1半導体膜606aの膜厚は10nm以上50nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0332】
第2半導体膜606bは、I型半導体膜(真性半導体膜)であり、アモルファスシリコン膜により形成する。第2半導体膜606bの形成には、半導体材料ガスを用いて、アモルファスシリコン膜をプラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしては、シラン(SiH
4)を用いればよい。または、Si
2H
6、SiH
2Cl
2、SiHCl
3、SiCl
4、SiF
4等を用いてもよい。第2半導体膜606bの形成は、LPCVD法、気相成長法、スパッタリング法等により行ってもよい。第2半導体膜606bの膜厚は200nm以上1000nm以下となるように形成することが好ましい。
【0333】
第3半導体膜606cは、n型半導体膜であり、n型を付与する不純物元素を含むアモルファスシリコン膜により形成する。第3半導体膜606cの形成には、15族の不純物元素(例えばリン(P))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH
4)を用いればよい。または、Si
2H
6、SiH
2Cl
2、SiHCl
3、SiCl
4、SiF
4等を用いてもよい。また、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッタリング法等を用いればよい。第3半導体膜606cの膜厚は20nm以上200nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0334】
また、第1半導体膜606a、第2半導体膜606b、及び第3半導体膜606cは、アモルファス半導体ではなく、多結晶半導体を用いて形成してもよいし、微結晶(セミアモルファス(Semi Amorphous Semiconductor:SAS))半導体を用いて形成してもよい。
【0335】
また、光電効果で発生した正孔の移動度は電子の移動度に比べて小さいため、pin型のフォトダイオードはp型の半導体膜側を受光面とする方がよい特性を示す。ここでは、pin型のフォトダイオードが形成されている基板601の面からフォトダイオード602が受ける光を電気信号に変換する例を示す。また、受光面とした半導体膜側とは逆の導電型を有する半導体膜側からの光は外乱光となるため、電極層は遮光性を有する導電層を用いるとよい。また、n型の半導体膜側を受光面として用いることもできる。
【0336】
絶縁層631、絶縁層632、層間絶縁層633、層間絶縁層634としては、絶縁性材料を用いて、その材料に応じて、スパッタリング法、プラズマCVD法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法)、スクリーン印刷、オフセット印刷等を用いて形成することができる。
【0337】
絶縁層631としては、無機絶縁材料としては、例えば、酸化窒化シリコン層、又は窒化酸化シリコン層等の単層、又は積層を用いることができる。
【0338】
本実施の形態では、絶縁層631としてプラズマCVD法によって形成する酸化窒化シリコン膜を用い、脱水化又は脱水素化のための熱処理を行う。
【0339】
さらに、脱水化又は脱水素化のための熱処理を行った酸化窒化シリコン膜上に金属膜を形成し、酸化窒化シリコン膜及び金属膜に対して酸素ドープ処理を行う。この酸素ドープ処理によって、酸素過剰領域を有する酸化シリコン膜と、金属膜が酸化された金属酸化物膜と、が形成される。本実施の形態では、絶縁層631上に絶縁層632を設け、該絶縁層632として酸化アルミニウム膜を適用する。
【0340】
酸化アルミニウム膜は、水素、水分などの不純物、及び酸素の両方に対して膜を透過させない遮断効果(ブロック効果)が高い。
【0341】
従って、酸化アルミニウム膜は、作製工程中及び作製後において、脱水化又は脱水素化のための熱処理及び酸素ドープ処理を行った酸化窒化シリコン膜への変動要因となる水素、水分などの不純物の混入、及び酸素の放出を防止する保護膜として機能する。
【0342】
層間絶縁層633、634としては、表面凹凸を低減するため平坦化絶縁層として機能する絶縁層が好ましい。層間絶縁層633、634としては、例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機絶縁材料を用いることができる。また上記有機絶縁材料の他に、低誘電率材料(low−k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等の単層、又は積層を用いることができる。
【0343】
フォトダイオード602に入射する光を検出することによって、被検出物の情報を読み取ることができる。なお、被検出物の情報を読み取る際にバックライトなどの光源を用いることができる。
【0344】
トランジスタ640は、酸化物半導体層に接する絶縁層631として、酸素ドープ処理を施されることにより酸素過剰領域を有する絶縁層を含んで構成されたトランジスタである。よって、酸化物半導体層には、トランジスタ640の酸素欠損を補填する酸素が供給される。よって、トランジスタ640は、電気特性変動が抑制されている。
【0345】
従って、本実施の形態の酸化物半導体層を用いた安定した電気特性を有するトランジスタ640を含む信頼性の高い半導体装置を提供することができる。また、信頼性の高い半導体装置を歩留まりよく作製し、高生産化を達成することができる。
【0346】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0347】
(実施の形態5)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用することができる。電子機器としては、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、遊技機(パチンコ機、スロットマシン等)、ゲーム筐体が挙げられる。これらの電子機器の具体例を
図8及び
図9に示す。
【0348】
図8(A)は、表示部を有するテーブル9000を示している。テーブル9000は、筐体9001に表示部9003が組み込まれており、表示部9003により映像を表示することが可能である。なお、4本の脚部9002により筐体9001を支持した構成を示している。また、電力供給のための電源コード9005を筐体9001に有している。
【0349】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9003に用いることが可能であり、電子機器に高い信頼性を付与することができる。
【0350】
表示部9003は、タッチ入力機能を有しており、テーブル9000の表示部9003に表示された表示ボタン9004を指などで触れることで、画面操作や、情報を入力することができ、また他の家電製品との通信を可能とする、又は制御を可能とすることで、画面操作により他の家電製品をコントロールする制御装置としてもよい。例えば、実施の形態4に示したイメージセンサ機能を有する半導体装置を用いれば、表示部9003にタッチ入力機能を持たせることができる。
【0351】
また、筐体9001に設けられたヒンジによって、表示部9003の画面を床に対して垂直に立てることもでき、テレビジョン装置としても利用できる。狭い部屋においては、大きな画面のテレビジョン装置は設置すると自由な空間が狭くなってしまうが、テーブルに表示部が内蔵されていれば、部屋の空間を有効に利用することができる。
【0352】
図8(B)は、テレビジョン装置9100を示している。テレビジョン装置9100は、筐体9101に表示部9103が組み込まれており、表示部9103により映像を表示することが可能である。なお、ここではスタンド9105により筐体9101を支持した構成を示している。
【0353】
テレビジョン装置9100の操作は、筐体9101が備える操作スイッチや、別体のリモコン操作機9110により行うことができる。リモコン操作機9110が備える操作キー9109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部9103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機9110に、当該リモコン操作機9110から出力する情報を表示する表示部9107を設ける構成としてもよい。
【0354】
図8(B)に示すテレビジョン装置9100は、受信機やモデムなどを備えている。テレビジョン装置9100は、受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線又は無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)又は双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報通信を行うことも可能である。
【0355】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9103、9107に用いることが可能であり、テレビジョン装置、及びリモコン操作機に高い信頼性を付与することができる。
【0356】
図8(C)はコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部9203、キーボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングデバイス9206等を含む。
【0357】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9203に用いることが可能であり、コンピュータに高い信頼性を付与することができる。
【0358】
図9(A)及び
図9(B)は2つ折り可能なタブレット型端末である。
図9(A)は、開いた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、表示部9631a、表示部9631b、表示モード切り替えスイッチ9034、電源スイッチ9035、省電力モード切り替えスイッチ9036、留め具9033、操作スイッチ9038、を有する。
【0359】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9631a、表示部9631bに用いることが可能であり、信頼性の高いタブレット型端末とすることが可能となる。
【0360】
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示された操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部9631aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部9631aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部9631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示画面として用いることができる。
【0361】
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
【0362】
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時にタッチ入力することもできる。
【0363】
また、表示モード切り替えスイッチ9034は、縦表示又は横表示などの表示の向きを切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイッチ9036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内蔵させてもよい。
【0364】
また、
図9(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルとしてもよい。
【0365】
図9(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9633、充放電制御回路9634を有する。なお、
図9(B)では充放電制御回路9634の一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する構成について示している。
【0366】
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630を閉じた状態にすることができる。従って、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、耐久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
【0367】
また、この他にも
図9(A)及び
図9(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することができる。
【0368】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、表示部、又は映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐体9630の片面又は両面に設けることができ、バッテリー9635の充電を効率的に行う構成とすることができるため好適である。なおバッテリー9635としては、リチウムイオン電池を用いると、小型化を図れる等の利点がある。
【0369】
また、
図9(B)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について
図9(C)にブロック図を示し説明する。
図9(C)には、太陽電池9633、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表示部9631について示しており、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、
図9(B)に示す充放電制御回路9634に対応する箇所となる。
【0370】
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。太陽電池9633で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようDCDCコンバータ9636で昇圧又は降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ9637で表示部9631に必要な電圧に昇圧又は降圧をすることとなる。また、表示部9631での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバッテリー9635の充電を行う構成とすればよい。
【0371】
なお太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段によるバッテリー9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成としてもよい。
【0372】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。