特許第6231744号(P6231744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6231744-圧入ファスナーおよびその取付け構造 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231744
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】圧入ファスナーおよびその取付け構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 35/04 20060101AFI20171106BHJP
   F16B 37/04 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   F16B35/04 E
   F16B37/04 E
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-284381(P2012-284381)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-126164(P2014-126164A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年11月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227467
【氏名又は名称】日東精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】松尾 靖
(72)【発明者】
【氏名】片山 直人
(72)【発明者】
【氏名】國松 正智
【審査官】 熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−255893(JP,A)
【文献】 特表2005−528560(JP,A)
【文献】 特開昭59−029809(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3171082(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 35/04
F16B 37/04
F16B 17/00−19/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部と、この頭部に連設された圧入係止部と、この圧入係止部に連設された軸状のシャンクとを有する圧入ファスナーであって、
前記圧入係止部は、外周に頭部側からシャンク側に延びて一体成形された複数の突起を有し、これら突起の頂部はシャンク側に向かうに従ってシャンクの軸心方向に傾斜するとともに、当該頂部の幅がシャンク側に向かうに従って広くなる構成であり、これによって圧入係止部はシャンク側が小径となった略円錐台形の概観形状を成しており、しかも前記突起の頂部と突起間に形成される谷部の谷底とを結ぶ斜面は頭部側からシャンク側まで一様な傾斜角であることを特徴とする圧入ファスナー。
【請求項2】
頭部と、この頭部に連設された圧入係止部と、この圧入係止部に連設された軸状のシャンクとを有する圧入ファスナーを被圧入部材に圧入した圧入ファスナーの取付け構造であって、
圧入ファスナーの圧入係止部は、外周に頭部側からシャンク側に延びて一体成形された複数の突起を有し、これら突起の頂部がシャンク側に向かうに従ってシャンクの軸心方向に傾斜するとともに、当該頂部の幅がシャンク側に向かうに従って広くなる構成であり、これによって圧入係止部はシャンク側が小径となった略円錐台形の概観形状を成しており、しかも前記突起の頂部と突起間に形成される谷部の谷底とを結ぶ斜面は頭部側からシャンク側まで一様な傾斜角であり、
一方、前記被圧入部材には前記圧入係止部の小径端部が進入可能かつ大径端部が進入不可能な直径の下穴が予め成形され、
被圧入部材の下穴に圧入ファスナーの圧入係止部を圧入して成ることを特徴とする圧入ファスナーの取付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被圧入部材に圧入して固定する圧入ファスナーおよびその取付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧入ファスナーとしては、特許文献1に示された締付け固着具が知られている。この締付け固着具は、ヘッド部と、このヘッド部に連設されたシャンクを有し、シャンクにはおねじが成形されている。また、ヘッド部の下部は半径方向に配置された6つのローブ状の突起を備え、ヘッド部の着座に伴って前記突起がシート材料に埋め込まれるように構成されている。これにより、固着具の相対的回転が阻害されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公昭57−28003号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の締付け固着具においては、ヘッド部の下面をシート材料表面に押し付けて埋没させるものであるため、シート材料がヘッド部の下部の形状に押されてシャンク側に盛り上がり、固着具を取り付けた後のシート材料表面の美観が損なわれる問題が生じていた。小型薄型化によりシャンク側に空間的余裕が少なくなってきている近年の組立部品の構造においては、前述のようなシート材料の変形代を確保できない等の問題も発生していた。また、シート材料に圧入されるヘッド部の下部は、上記のような圧入形態をとることに加え、ローブ状の突起を有するデザインであることから、圧入後の突起とシート材料との間に多くの隙間が生じてしまい、十分な回り止め効果を得ることができない等の問題も発生していた。さらに、ヘッド部の下部の形状故、固着具の抜け止め効果は低いという問題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて創成されたものであり、ワークの美観を損ねることなく高い回り止め効果と抜け止め効果を得ることが可能な圧入ファスナーおよびその取付け構造の提供を目的とする。この目的を達成するために本発明は、頭部と、この頭部に連設された圧入係止部と、この圧入係止部に連設された軸状のシャンクとを有する圧入ファスナーであって、前記圧入係止部は、外周に頭部側からシャンク側に延びて一体成形された複数の突起を有し、これら突起の頂部はシャンク側に向かうに従ってシャンクの軸心方向に傾斜するとともに、当該頂部の幅がシャンク側に向かうに従って広くなる構成であり、これによって圧入係止部はシャンク側が小径となった略円錐台形の概観形状を成しており、しかも前記突起の頂部と突起間に形成される谷部の谷底とを結ぶ斜面は頭部側からシャンク側まで一様な傾斜角であることを特徴とするものである。
【0006】
また本発明は、頭部と、この頭部に連設された圧入係止部と、この圧入係止部に連設された軸状のシャンクとを有する圧入ファスナーを被圧入部材に圧入した圧入ファスナーの取付け構造に係るものであって、圧入ファスナーの圧入係止部は、外周に頭部側からシャンク側に延びて一体成形された複数の突起を有し、これら突起の頂部がシャンク側に向かうに従ってシャンクの軸心方向に傾斜するとともに、当該頂部の幅がシャンク側に向かうに従って広くなる構成であり、これによって圧入係止部はシャンク側が小径となった略円錐台形の概観形状を成しており、しかも前記突起の頂部と突起間に形成される谷部の谷底とを結ぶ斜面は頭部側からシャンク側まで一様な傾斜角であり、一方、前記被圧入部材には前記圧入係止部の小径端部が進入可能かつ大径端部が進入不可能な直径の下穴が予め成形され、この被圧入部材の下穴に圧入ファスナーの圧入係止部を圧入して成ることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の圧入ファスナーによれば、突起の頂部がシャンク側に向かうに従ってシャンクの軸心方向に傾斜するとともに、当該頂部の幅がシャンク側に向かうに従って広くなる構成であるため、被圧入部材に圧入した時のくさび効果が大きくなり、抜け止め効果を高めることができる。また、変形した被圧入部材の突起間への流動、すなわち肉回りもよくなり、圧入後の圧入ファスナーの軸線回りの回り止め効果を高めることができる等の利点もある。さらに、圧入係止部の小径端部が進入可能で大径端部が進入不可能な直径の下穴に本圧入ファスナーを圧入することにより、被圧入部材が圧入方向に変形するのを最小限に抑え、圧入ファスナーを圧入した後の被圧入部材の美観を向上することができる等の利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に係る圧入ファスナーの要部拡大斜視図である。
図2図1におけるA部拡大図である。
図3】本発明に係る圧入ファスナーの正面図である。
図4】本発明に係る圧入ファスナーの低面図である。
図5】本発明に係る圧入ファスナーを被圧入部材に圧入する場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る圧入ファスナーの実施形態を図面を用いて説明する。図1ないし図5において、1は圧入ファスナーであり、所定の厚みを有する円形の頭部2と、この頭部2の首下に連設した圧入係止部3と、この圧入係止部3に連設したシャンク4とを有している。これら頭部2、圧入係止部3およびシャンク4は、同軸線上に一体成形されており、シャンク4の外周面にはナット等に成形されためねじと螺合可能なおねじ4aが一体成形されている。
【0010】
前記圧入係止部3は、図3に示すように概観形状がシャンク4側を小径と成した略円錐台形を成しており、その外周面には頭部2側からシャンク4側に延びて複数の突起5・・・が一体成形されている。これら突起5・・・は、圧入ファスナー1の軸線と直交する面による断面形状が、その全長に渡って略台形状を成しており、これら突起5・・・の頂部5a、すなわち圧入係止部3の外周に相当する端面は、シャンク4側に向かうに従ってシャンク4の軸心方向に傾斜するように構成されている。また、このように傾斜した構成の突起5の頂部5aの幅は、頭部2側が狭く、シャンク4側に向かうほど広くなった扇状に構成されている。
【0011】
一方、前記突起5同士の間に生じる谷部6は、その谷底6aを結んだ仮想円の直径がおねじ4aの外径よりも大きく、かつ当該仮想円の直径が頭部2側とシャンク4側とでほぼ同じ直径になるように構成されている。つまり、谷部6の谷底6aは、本圧入ファスナー1の軸線とほぼ平行に延びるよう構成されている。また、谷部6の谷底6aと突起5の頂部5aとを結ぶ斜面5bは、頭部2側からシャンク4側まで一様な傾斜角で延びるように構成されている。
【0012】
次に本圧入ファスナー1を被圧入部材8に圧入する例を述べる。被圧入部材8には、アルミニウム合金製の板材を用いる。図5(a)に示すように、この被圧入部材8には、予め圧入係止部3のシャンク4側の小径端部が進入可能で、頭部2側の大径端部は進入不可能な直径の下穴8aを貫通成形してある。圧入係止部3は概観形状が略円錐台形となっていることから、下穴8aに圧入係止部3の小径端部を嵌め込むことで調心作用が働き、下穴8aの中心に本圧入ファスナー1の軸心を一致させることが可能である。
【0013】
前述のように下穴8aに圧入係止部3の小径端部を嵌め込んだ状態から頭部2を油圧プレス(図示せず)で押圧すると、図5(b)に示すように、圧入係止部3が被圧入部材8に圧入され、被圧入部材8に圧入ファスナー1を固定することができる。すなわち、圧入係止部3の被圧入部材8への圧入に伴い、下穴8aの周縁部は突起5に沿って変形し、その余肉が谷部6に回り込む。この時、突起5の頂部5aが傾斜し、その断面形状が台形状であり、かつ頂部5aの幅がシャンク4側ほど広くなっているため、突起5は、圧入に伴って下穴8aの壁面から周縁部に徐々に深く尖鋭に入り込み、この周縁部を変形させる。これにより、谷部6への良好な肉回りを得ることができる。このようにして被圧入部材8が圧入係止部3の突起5および谷部6に沿うことにより、圧入ファスナー1は軸線回りの回転を阻止される。また、圧入係止部3は略円錐台形状を成す(突起5の頂部5aが傾斜した構成である)ことから、下穴8aへの圧入が比較的容易に行え、かつ圧入後はくさび効果を生じて圧入ファスナー1が頭部2側へ抜け出ることを阻止できる。この時、突起5の頂部5aの幅はシャンク4側ほど広くなっているため、突起5と被圧入部材8との接触面積を大きくしてくさび効果を高めることが可能であり、被圧入部材8に圧入ファスナー1をより強固に固着させて抜け止めすることが可能である。このため、例えばシャンク4のおねじ4aにナット(図示せず)を螺合する際、シャンク4を頭部2側に押す力が作用した場合でも、圧入ファスナー1が被圧入部材8から抜け落ちるのを防止し、シャンク4にナットを確実に締付けることが可能となる。
【0014】
また、圧入ファスナー1の圧入によって変形するのは被圧入部材8の下穴8aの周縁部であり、しかも、この変形は、前述のように突起5が下穴8aの壁面から周縁部に徐々に深く尖鋭に入り込むことによって進行する。このため、下穴8aの周縁部が圧入ファスナー1の圧入方向へ変形するのを抑制し、圧入ファスナー1を圧入した後の下穴8aの周縁部の美観を向上することができる。
【0015】
なお、以上の説明では断面形状が全長に渡って台形である突起5について述べたが、これ以外にも、例えば頭部2側の断面形状は三角形状で、シャンク4側に向かうに従って台形状の断面形状となるような突起であっても得られる効果は同じである。また、シャンク4にはおねじ4aを成形せずともよい。シャンク4をおねじ4aのないピンやリベットとして機能する構成としても、得られる効果は同じである。
【符号の説明】
【0016】
1 圧入ファスナー
2 頭部
3 圧入係止部
4 シャンク
4a おねじ
5 突起
5a 頂部
5b 斜面
6 谷部
6a 谷底
8 被圧入部材
8a 下穴
図1
図2
図3
図4
図5