(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記紫外線吸収剤が、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、マロン酸ビスエチルヘキシルヒドロキシジメトキシベンジル、マロン酸ジエチルヘキシルシリンギンデン、サリチル酸ブチルオクチル、サリチル酸エチルヘキシルからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項2に記載の油性固形化粧料。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
デキストリン脂肪酸エステルや種々のポリマーなどのゲル化剤等を用いて油性固形化粧料の透明性を向上させる場合、使用感を向上させようとすると、必要な強度や安定性が得難い。すなわち、ゲル化剤等を用いた場合には、透明性以外の油性固形化粧料として求められる品質が得難くなる。いっぽう、特定のワックスを用いると、使用できるワックスが限られてしまい、透明性以外の油性固形化粧料として求められる品質を得難くなる。透明性以外の油性固形化粧料として求められる品質、例えば、使用感や硬度を保持するためには、ワックスを含有させ、かつ透明性を有する油性固形化粧料が望ましい。
【0006】
すなわち、本発明の課題は、固化を主にワックスで行いながら油性固形化粧料の透明性を向上する処方を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、ワックスとともに、フェニル基含有ポリオルガノシロキサンを所定量混合する処方とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の油性固形化粧料によれば、3〜20質量%の常温で固形のワックスと、20〜97質量%のフェニル基含有ポリオルガノシロキサンとを含んでなることにより、主にワックスで固化を行う処方でも透明性を向上できる。
【0009】
また、本発明の油性固形化粧料において、前記フェニル基含有ポリオルガノシロキサンが、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、またはフェニルプロピルジメチルシロキシシリケートの少なくとも一方であることにより、より確実に透明性を向上できる。
【0010】
さらに、本発明の油性固形化粧料において、前記フェニル基含有ポリオルガノシロキサンが、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンであることにより、多くの種類のワックスにおいてより透明性を向上できる。
【0011】
さらにまた、本発明の油性固形化粧料において、前記ワックスが、融点が70℃以上の炭化水素ワックスであることにより、油性固形化粧料の安定性を向上できる。
【0012】
前記油性固形化粧料において、フェニル基含有ポリオルガノシロキサンが、50〜97質量%であることにより、ワックスを白濁させることなく、化粧料の透明性を確保することができる。
【0013】
さらにまた、本発明の油性固形化粧料において、紫外線吸収剤をさらに含むことにより、一般的には白濁の原因となる紫外線吸収剤を含有させても透明性を向上できる。
【0014】
本発明の油性固形化粧料において、前記紫外線吸収剤が、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、マロン酸ビスエチルヘキシルヒドロキシジメトキシベンジル、マロン酸ジエチルヘキシルシリンギンデン、サリチル酸ブチルオクチル、サリチル酸エチルヘキシルからなる群から選択される少なくとも1つを含むことにより、紫外線吸収剤の含有量に関係なく透明性を向上できる
【0015】
本発明の油性固形化粧料において、前記紫外線吸収剤が、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルであることにより、多くの種類のワックスにおいて含有量に関係なく透明性を向上できる。
【0016】
前記紫外線吸収剤を含む油性固形化粧料において、フェニル基含有ポリオルガノシロキサンが、20〜70質量%であることにより、ワックスを白濁させることなく、化粧料の透明性を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る油性固形化粧料によれば、ワックスを用いて固形性を保持しつつ、透明性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を、実施の形態を挙げて詳細に説明する。しかし、以下の実施の形態は本発明を限定するものではない。
【0019】
本発明は、一実施形態においては、油性固形化粧料であって、(A)3〜20質量%の常温で固形のワックスと、(B)20〜97質量%のフェニル基含有ポリオルガノシロキサンとを含んでなる。
【0020】
(A)ワックス
常温で固形のワックスは、必須の構成成分として本実施形態による油性固形化粧料に含まれる。「常温で固形」とは、通常、融点が40℃程度以上であることをいう。ワックスは、化粧料に通常用いられる、常温で固形の任意のワックスであってよい。ワックスは、一種類のみからなるものでもよいし、二種類以上を混合したものであってもよい。
【0021】
具体的なワックスの例としては、合成炭化水素ワックス(たとえば、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス)、セレシンワックス、パラフィン、カルナバロウ、キャンデリラロウ、マイクロクリスタリンワックス、エチレンプロピレンコポリマーから選択される少なくとも1つの炭化水素ワックス、水素添加ホホバエステル、ミツロウ、モクロウ、チュウハクロウ、硬化ヒマシ油、コメヌカロウが挙げられるが、これらには限定されない。
【0022】
これらの中でも、安定性の観点から、融点が70℃以上の合成炭化水素ワックスが好ましい。具体的には、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックスを挙げることができる。
ワックスは、油性固形化粧料全体の質量を100%としたときに、3〜20質量%の量で含まれる。3質量%未満だと、強度や安定性が低下し、20質量%より多いと、透明性が低下するからである。なお、二種類以上のワックスを含む場合は、複数のワックスの合計の質量が上記範囲にあるものとする。
【0023】
(B)フェニル基含有ポリオルガノシロキサン
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンは、必須の構成成分として本実施形態による油性固形化粧料に含まれる。フェニル基含有オルガノポリシロキサンとは、すなわちオルガノポリシロキサンのSiに結合したアルキル基の一部がフェニル基であるフェニル変性シリコーンである。フェニル基含有オルガノポリシロキサンは、不揮発性の油分である。前記フェニル基含有オルガノポリシロキサンは1種又は2種以上を用いることができる。
【0024】
前記フェニル基含有オルガノポリシロキサンとしては、例えば、ジメチルポリシロキサンであるジメチコンのメチル基の一部がフェニル基で置換されたメチルフェニルシリコーンオイルが挙げられる。該メチルフェニルシリコーンオイルの具体例としては、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンが挙げられる。ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンの粘度は、10〜30mm
2/s(25℃)であることが好ましい。フェニル基含有オルガノポリシロキサン(フェニル変性シリコーン)は、市販品を用いることが可能であり、市販品の例としては、例えば、KF56A(粘度10〜20mm
2/s(25℃)信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0025】
また、フェニル基含有オルガノポリシロキサンの別の例としては、フェニルプロピルジメチルシロキシシリケートが挙げられる。
【0026】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンとしては、より確実に透明性を向上させる観点からは、上記ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、またはフェニルプロピルジメチルシロキシシリケートの少なくとも一方を用いることが好ましい。また、より多くのワックスとの混合特性が良好であるという観点から、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンを用いることが好ましい。
【0027】
フェニル基含有ポリオルガノシロキサンは、油性固形化粧料全体の質量を100%としたときに、20〜97質量%の量で含まれる。20質量%未満だと、透明性が低下し、97質量%より多いと、硬度が低くなり、安定性が低下するからである。フェニル基含有ポリオルガノシロキサンの好ましい含有量は、上記ワックスの含有量や、任意成分の含有量との関係によっても変動し得る。本実施形態において、フェニル基含有ポリオルガノシロキサンは、油性固形化粧料全体の質量を100%としたときに、50〜97質量%の量で含まれることが好ましく、50〜80質量%の量で含まれることがより好ましい。
【0028】
本実施形態に係る油性固形化粧料は、上記(A)ワックスと、(B)フェニル基含有ポリオルガノシロキサンとからなり、その他の成分を含まないものであっても良い。(A)ワックスと、(B)フェニル基含有ポリオルガノシロキサンとは、それらをあわせて本実施形態の油性固形化粧料の基材と指称することがある。本実施形態に係る油性固形化粧料は、上記(A)ワックスと、(B)フェニル基含有ポリオルガノシロキサンとを含み、他の成分をさらに含むものであってもよい。いずれの形態であっても、所定量のワックスと、フェニル基含有ポリオルガノシロキサンとを含んでなる本実施形態による油性固形化粧料は、ワックスにより固形性を保持しつつ、透明性を向上させることができる。すなわち、従来のようなワックスによる濁りの問題を生じることなく、半透明の美しい外観を呈し、油性固形化粧料として要求される硬度、成型性、形状安定性を有する。
【0029】
本実施形態に係る油性固形化粧料において、任意成分としては、以下のものを含むことができる。
【0030】
(C)顔料
ある実施形態においては、油性固形化粧料は、任意成分として顔料を含んでも良い。顔料としては、化粧料に通常使用される任意の顔料を用いることができる。具体的な顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄(ベンガラ等)、群青、紺青、パール顔料(雲母チタン、合成金雲母パール、ホウケイ酸(Ca/Al)パール等)、アルミニウムパウダー、合成マイカ、赤色104号、赤色201号、赤色202号、赤色226号、黄色4号、黄色5号、橙色204号、青色404号、青色1号等の有機色素及びそのレーキ等が挙げられるが、これらには限定されない。
【0031】
顔料を含む油性固形化粧料においては、顔料は、油性固形化粧料全体の質量を100%としたときに、0.001〜20質量%の量で含まれることが好ましく、0.01〜10質量%の量で含まれることがさらに好ましい。しかし、顔料の含有量は、上記範囲には限定されず、他の成分との関係で適宜、当業者が決定することができる。
【0032】
本実施形態に係る顔料を含む油性固形化粧料においては、基材の透明性が向上しているため、顔料本来の色や、パール光沢感が充分に生きて、発色の向上した油性固形化粧料とすることができる。従来技術によるスティック等の油性固形化粧料においては、本来単独で不透明であるワックスの白色あるいは淡黄色の影響を受けて全体が濁り、顔料本来の色、パール顔料の光沢感が失われた外観となっていたところ、本実施形態においては、基材の透明性が向上したことで、顔料の特性が生かされるようになっている。
【0033】
(D)フェニル基含有ポリオルガノシロキサン以外の油剤
別の実施形態においては、油性固形化粧料は、任意成分として油剤を含んでも良い。油剤としては、化粧料に通常使用される、フェニル基含有ポリオルガノシロキサン以外の常温で液体の油剤を用いることができる。油剤としては、植物油を使用することもできるし、植物油以外の液状油を使用することもできる。
【0034】
植物油の例としては、例えば、サフラワー油、大豆油、ブドウ種子油、ゴマ油、小麦胚芽油、アボガド油、オリーブ油、オリーブスクワラン、ヒマシ油、マカデミアナッツ油、メドフォーム油、ヒマワリ油、パーム油、アルモンド油、ローズヒップ油、アプリコット油、サザンカ油、ツバキ油、月見草油等の他、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル等の植物由来のトリグリセライド、ダイマージオールまたはダイマー酸のエステルが挙げられる。
【0035】
植物油は一種であってもよく、または二種以上が任意に選択されて配合されてもよい。植物油は、そのまま用いることもできるが、植物油中に含まれる多価の脂肪酸が除去された精製植物油を用いることが酸化安定性の上で好ましい。
【0036】
植物油以外の液状油としては、例えば、ミンク油、タートル油、液状ラノリン等の動物性油、水添ポリイソブテン、流動パラフィン、スクワラン、重質流動イソパラフィン、ポリブテン等の炭化水素類、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、ラノリン脂肪酸イソプロピル等の低級アルコールの脂肪酸エステル、イソノナン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、2-エチルヘキサン酸セチル、2−エチルヘキサン酸イソセチル、イソステアリン酸イソステアリル等の高級アルコールの脂肪酸エステル、リンゴ酸ジイソステアリル、乳酸セチル等の高級アルコールのオキシ酸エステル、トリカプリル酸グリセリル、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリル、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジ(カプリル・カプリン酸)プロピレングリコール、ジイソステアリン酸プロピレングリコール、ジ−2−エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2などの多価アルコールの脂肪酸エステル、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール類、ジメチルポリシロキサン、鎖状ポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ポリシロキサン、アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロカーボン等のフッ素油等が挙げられる。
植物油以外の液状油も、一種であってもよく、または二種以上が任意に選択されて配合されてもよい。
【0037】
油剤を含む油性固形化粧料においては、油剤は、油性固形化粧料全体の質量を100%としたときに、30質量%未満の量で含まれることが好ましく、20質量%未満の量で含まれることがさらに好ましい。これらの油剤は、かかる少量であれば、基材の透明性を維持することができる。
【0038】
顔料や油剤のほかにも、油性固形化粧料の用途に応じた任意成分として、化粧料に通常用いられる保湿剤、美白成分、消炎成分、殺菌剤等を含有することもできる。これらの任意成分を用いる場合、任意成分の含有量は、油性固形化粧料全体の質量を100%としたときに、通常、1質量%未満程度とすることができる。しかし、これらの任意成分の含有量は、この値に限定されることはなく、各任意成分の特性に応じて、当業者が適宜決定することができる。
【0039】
ワックスと、フェニル基含有ポリオルガノシロキサンとを含み、任意選択的に(C)顔料、及び/または(D)油剤、及び/またはそのほかの任意成分を含む本実施形態に係る油性固形化粧料は、常温で固体であり、容器等に入れなくても特定の形状を保持するものである。上記成分を、上記配合比にて混合した油性固形化粧料であれば、常温で固体であり、単独で特定の形状を保持することができる。具体的な形状については、典型的には、スティック状、平板状、球状、粒状、石鹸のような形状が挙げられるが、これらには限定されない。なお、かかる形状についての説明は、容器に収容された状態にある油性固形化粧料を除外するものではない。単独で特定の形状を保持することができるものであっても、容器に収容されたものである場合もある。
【0040】
本実施形態に係る油性固形化粧料の具体的な製品としては、サンスクリーンスティック、口紅、スティックチーク、アイシャドースティック、ラメアイシャドー、美容(保湿)スティック、ホワイトニングスティック、リップクリーム等が挙げられるが、これらには限定されない。
【0041】
次に、本実施形態に係る油性固形化粧料の製造方法について説明する。本実施形態に係る油性固形化粧料は、(A)ワックスと、(B)フェニル基含有ポリオルガノシロキサンと、任意選択的に(C)顔料及び/または(D)油剤、及び/またはそのほかの任意成分を、常法にしたがって、上記所定の量で混合する工程により製造することができる。
【0042】
本実施形態による油性固形化粧料によれば、ワックスで固化を行う処方でも透明性を向上させることができる。
【0043】
本発明は、また別の実施形態によれば、油性固形化粧料であって、(A)3〜20質量%の常温で固形のワックスと、(B)20〜96質量%のフェニル基含有ポリオルガノシロキサンと、(E)紫外線吸収剤とを含んでなる。
【0044】
(A)ワックス、(B)フェニル基含有ポリオルガノシロキサンの選択については、先の実施形態において述べたとおりである。ただし、(E)紫外線吸収剤を含むこととの関係で、(B)フェニル基含有ポリオルガノシロキサンの含有量を減らすことができる。例えば、油性固形化粧料全体の質量を100%としたときに、紫外線吸収剤の含有量を1〜45質量%とする場合、(B)フェニル基含有ポリオルガノシロキサンは、20〜96質量%とすることができ、20〜70質量%とすることが好ましく、45〜70質量%とすることがより好ましい。
【0045】
(E)紫外線吸収剤
紫外線吸収剤は、化粧料に通常用いられる、任意の紫外線吸収剤を用いることができる。任意の紫外線吸収剤を含有させても、上記特定量の(A)ワックス、及び(B)フェニル基含有ポリオルガノシロキサンを含有する処方においては、白濁することなく、透明性を向上することができる。
【0046】
紫外線吸収剤は、好ましくは、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、マロン酸ビスエチルヘキシルヒドロキシジメトキシベンジル、マロン酸ジエチルヘキシルシリンギンデン、サリチル酸ブチルオクチル、サリチル酸エチルヘキシルから選択される一以上の成分である。これらの紫外線吸収剤は、油性固形化粧料全体の質量を100%としたときに、最大で45質量%まで含んでも良い。紫外線吸収剤の含有量は、通常は、油性固形化粧料全体の質量を100%としたときに、1〜45質量%とすることが好ましく、3〜30質量%とすることがさらに好ましい。本発明者らは、これらの特定の紫外線吸収剤が、元来白濁しているワックスと混合したとき、その混合物を透明化させることができることを見出し、本実施形態に想到したものである。したがって、油性固形化粧料において、これらの特定の紫外線吸収剤の含有によりフェニル基含有ポリオルガノシロキサンの含有量を減ずることができる。ゆえに、これらの特定の紫外線吸収剤は、上記のような高い含有量で含まれている場合であっても白濁することなく、透明性を向上することができる。特には、フェニル基含有ポリオルガノシロキサンを、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコンとした場合に、これらの特定の紫外線吸収剤と組み合わせると、透明性がより向上する。
【0047】
最も好ましくは、紫外線吸収剤は、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルである。メトキシケイヒ酸エチルヘキシルは、高い含有量で含まれている場合であっても白濁することなく、多くの種類のワックスと混合しても、油性固形化粧料の透明性をより向上させることができる。
【0048】
紫外線吸収剤をさらに含む油性固形化粧料に関する本実施形態においても、(C)顔料、(D)その他の油剤といった付加的成分を同様に含んでも良い。また、紫外線吸収剤をさらに含む油性固形化粧料も、常温で固体であり、単独で特定の形状を保持することができスティック状、棒状、石鹸のような形状をとることができる。そして具体的な製品としては、特に紫外線吸収の目的で使用される、サンスクリーンスティック、口紅、ホワイトニングスティック、リップクリーム等であってよい。さらに、製造方法についても、常法で混合することにより、実施することができる。
【0049】
本実施形態による紫外線吸収剤を含む油性固形化粧料によれば、一般的には白濁の原因となる紫外線吸収剤を含有させても油性固形化粧料の透明性を向上できるという利点がある。
【実施例】
【0050】
以下の表1、表2、表3にしたがって、成分を通常の方法で混合し、実施例及び比較例の油性固形化粧料を調製した。実施例及び比較例で使用した各成分の入手先は以下の通りである。
【0051】
ポリエチレンワックス[分子量675](日本ナチュラルプロダクツ製)、フィッシャートロプシュワックス(サゾール製)、マイクロクリスタリンワックス(WITCO社製)、セレシン(日興リカ製)、パラフィン(日本精蝋製)、ポリエチレンワックス[分子量400](NEW PHASE Technologies製)、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン(信越化学工業製)、ジフェニルジメチコン(信越化学工業製)、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(日清オイリオグループ製)、トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2(日清オイリオグループ製)、リンゴ酸ジイソステアリル(日清オイリオグループ製)、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール(日清オイリオグループ製)、イソノナン酸イソトリデシル(日清オイリオグループ製)、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(日清オイリオグループ製)、水添ポリイソブテン(日油製)、ミネラルオイル(カネダ製)。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
実施例、比較例の各化粧料について、感触、硬度、透明性及び安定性について評価した。
【0056】
[感触]
感触は、以下の官能試験評価により評価した。
各試験品について、10名の女性パネルに、唇に塗布した時の塗布の滑らかさ、試験品の唇上でののびのよさ等の使用感、塗布後の唇の乾燥感のなさ等の化粧仕上がり感を以下の基準に従って評価してもらった。
【0057】
(評価基準)
塗布の滑らかさについて、非常に悪い場合は0、比較的悪い場合は1、どちらとも言えない場合は2、比較的滑らかで良い場合は3、非常に滑らかで良い場合は4とした。また、のびのよさについて、非常にのびが悪い場合は0、比較的のびが悪い場合は1、どちらとも言えない場合は2、比較的のびが良い場合は3、非常にのびが良い場合は4とした。
【0058】
(判断基準)
評価の結果は、以下の判断基準に基づいて3ランクに分けた。
○:10名の評価の平均値が3以上4以下
△:10名の評価の平均値が1以上3未満
×:10名の評価の平均値が0以上1未満
【0059】
[硬度]
(測定方法)
レオメーター(サン科学社製 COMPAC−100II)を用いた測定、進入荷重値2mmφアダプター3cm/min.のスピードで試料中に8mm進入させたときの応力ピーク値(単位g)を測定した。
【0060】
(判断基準)
測定値を、以下の判断基準に基づいて3ランクに分けた。
○:50以上200未満
△:30以上50未満、200以上300未満
×:30未満、300以上
なお、30未満は、折れやすく、300以上はのびが悪いため「×」とした。感触の点(なめらかな使用感でのびが良い)、折れにくさの点で、30以上の300未満の範囲が好ましい。
【0061】
[安定性]
(測定方法)
試験試料を、40℃(湿度85%)に保持された恒温槽、50℃に保持された恒温槽、−5℃で8時間保持した後に、20℃(湿度85%)で4時間保持し、次いで40℃(湿度85%)で8時間保持し、さらに20℃(湿度85%)で4時間保持するというサイクルで内部の雰囲気が変化する恒温槽(サイクルの恒温槽)の3つの恒温槽それぞれに1ヶ月保存された試験試料につき、状態の変化の有無を下記の基準に従って評価した。
【0062】
(評価基準)
○:いずれの恒温槽に保存された試験試料も変化がみられなかった。
△:40℃、50℃、サイクルの恒温槽のいずれか1つで変化が見られた。
×:40℃、50℃、サイクルの恒温槽のいずれか2つ以上で変化が見られた。
【0063】
[透明性評価試験]
(試験方法)
透明なプラスチックセルに3mmの深さで試料を流し込み、翌日、組成物を介して下に置いた紙に書いた12ポイントの文字の読み取りやすさによって評価した。
【0064】
(判断基準)
○:少しぼやけて、読み取れる
△:ぼやけて、かすかに読み取れる
×:読み取れない
【0065】
表1、2の実施例の固形油性化粧料においては、感触、硬度、透明性、安定性のすべての側面で、比較例の油性化粧料と比較して性能が高かったが、特に透明性の点で、比較例の各油性化粧料と比較して優れるものであった。
【0066】
次に、より具体的な製品の処方を決定し、油性固形化粧料を調製して、実施例12〜19とした。感触、強度、透明性並びに安定性については、上記と同様の方法により評価した。処方及び評価結果を、以下の表4〜11に示す。
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
【表7】
【0071】
【表8】
【0072】
【表9】
【0073】
【表10】
【0074】
【表11】