特許第6231755号(P6231755)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231755
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】鞍乗り型車両の後部車体カバー構造
(51)【国際特許分類】
   B62J 23/00 20060101AFI20171106BHJP
   B62J 1/28 20060101ALI20171106BHJP
   B62J 1/12 20060101ALI20171106BHJP
   B62J 25/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   B62J23/00 D
   B62J1/28 C
   B62J1/12 Z
   B62J25/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-39339(P2013-39339)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-166803(P2014-166803A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2015年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松岡 庸介
【審査官】 前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】 意匠登録第1378599(JP,S)
【文献】 意匠登録第1272494(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 23/00
B62J 1/12
B62J 1/28
B62J 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライダー用シート(17A)と、このライダー用シート(17A)に着座したライダーが足を置くライダー用足置き(64)と、前記ライダー用シート(17A)の後方に配置されたパセンジャー用シート(17B)と、このパセンジャー用シート(17B)に着座したパセンジャーが足を置くパセンジャー用足置き(68)とを備え、側面視で前記パセンジャー用シート(17B)の下方且つ前記パセンジャー用足置き(68)の上方であって、表面に稜線(47g,47j)が形成されたリアサイドカバー(47)を備える鞍乗り型車両の後部車体カバー構造において、
前記稜線は、前記リアサイドカバー(47)の前部側と後部側とで連続しない複数の稜線(47g,47j)から構成され、
前記稜線(47g,47j)は、前後方向にオーバーラップするオーバーラップ部(47C)の直ぐ後側で車幅方向外側への膨出量が最も大きくなることを特徴とする鞍乗り型車両の後部車体カバー構造。
【請求項2】
前記複数の稜線(47g,47j)は、前記リヤサイドカバー(47)の長手方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1に記載の鞍乗り型車両の後部車体カバー構造。
【請求項3】
前記リアサイドカバー(47)の後部側の前記稜線(47j)から車幅方向内側へ延びる面(47A)が形成され、この平坦な面(47A)の上方にグラブレール(66)が配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の鞍乗り型車両の後部車体カバー構造。
【請求項4】
前記パセンジャー用足置き(68)及び前記リアサイドカバー(47)は、それぞれ左右一対設けられ、
右一対の前記オーバーラップ部(47C,47C)の間であって、前記複数の稜線(47g,47j)のうち、下側に配置された左右一対の前記稜線(47g,47g)を通る直線(85,87)と、前記下側の前記稜線(47g,47g)の上側に配置された左右一対の前記稜線(47j,47j)を通る直線(86,88)との間に、車体フレーム(11)の一部を構成して車体後部を車両前後方向に延びる左右一対のリヤフレーム(75,75)のそれぞれの一部が位置することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の鞍乗り型車両の後部車体カバー構造。
【請求項5】
前記複数の稜線(47g,47j)は、前後方向にオーバーラップし、上下に離間していることを特徴とする請求項1乃至4に記載の鞍乗り型車両の後部車体カバー構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、側面に稜線が設けられた鞍乗り型車両の後部車体カバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
鞍乗り型車両の後部車体カバー構造として、ボディカバーの側面に稜線が形成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3842119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、明確な稜線が前後方向に連続して延びているため、パセンジャー用シートにパセンジャーが乗車した際に、パセンジャーの足に対する稜線の足当り性を考慮して、ボディカバーに別に凹み等を設けることが必要になり、設計自由度に制約を受けていた。
本発明は、上述した事情を鑑みてなされたものであり、設計自由度を増しながらパセンジャーの足当たりを良好にすることが可能な鞍乗り型車両の後部車体カバー構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するため、本発明は、ライダー用シート(17A)と、このライダー用シート(17A)に着座したライダーが足を置くライダー用足置き(64)と、前記ライダー用シート(17A)の後方に配置されたパセンジャー用シート(17B)と、このパセンジャー用シート(17B)に着座したパセンジャーが足を置くパセンジャー用足置き(68)とを備え、側面視で前記パセンジャー用シート(17B)の下方且つ前記パセンジャー用足置き(68)の上方であって、表面に稜線(47g,47j)が形成されたリアサイドカバー(47)を備える鞍乗り型車両の後部車体カバー構造において、前記稜線は、前記リアサイドカバー(47)の前部側と後部側とで連続しない複数の稜線(47g,47j)から構成され、前記稜線(47g,47j)は、前後方向にオーバーラップするオーバーラップ部(47C)の直ぐ後側で車幅方向外側への膨出量が最も大きくなることを特徴とする。
この構成によれば、稜線を連続しないようにすることで、リアサイドカバーの表面の稜線間に、山形の部分を形成しないようにすることができ、ほぼ平坦な部分が形成されるため、特別に凹部等を形成することなく設計自由度を増しながら足当り性をより良好にすることができる。また、乗員の足をオーバーラップ部の直ぐ後側の最大膨出部で支えることができる。
【0006】
記構成において、前記複数の稜線(47g,47j)は、前記リヤサイドカバー(47)の長手方向に沿って形成されていても良い。この構成によれば、連続する稜線と同様に、リアサイドカバーの外観性をシャープに見せることができる。
【0007】
また、上記構成において、前記リアサイドカバー(47)の後部側の前記稜線(47j)から車幅方向内側へ延びる面(47A)が形成され、この平坦な面(47A)の上方にグラブレール(66)が配置されていても良い。この構成によれば、手をリアサイドカバーの平坦な面に沿って車幅方向内側に移動させることができ、グラブレールを掴みやすくすることができる。
また、前記パセンジャー用足置き(68)及び前記リアサイドカバー(47)は、それぞれ左右一対設けられ、左右一対のオーバーラップ部(47C,47C)の間であって、前記複数の稜線(47g,47j)のうち、下側に配置された左右一対の前記稜線(47g,47g)を通る直線(85,87)と、前記下側の前記稜線(47g,47g)の上側に配置された左右一対の前記稜線(47j,47j)を通る直線(86,88)との間に、車体フレーム(11)の一部を構成して車体後部を車両前後方向に延びる左右一対のリヤフレーム(75,75)のそれぞれの一部が位置することを特徴とする。
また、上記構成において、前記複数の稜線(47g,47j)は、前後方向にオーバーラップし、上下に離間していても良い。この構成によれば、前後方向にオーバーラップしている稜線間の部分は上下にほぼ平坦になり、足当り性をより良好にすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、稜線は、リアサイドカバーの前部側と後部側とで連続しない複数の稜線から構成されるので、稜線を連続しないようにすることで、リアサイドカバーの表面の稜線間に、山形の部分を形成しないようにすることができ、ほぼ平坦な部分が形成されるため、特別に凹部等を形成することなく設計自由度を増しながら足当り性をより良好にすることができる。
【0009】
また、複数の稜線は、前後方向にオーバーラップし、上下に離間しているので、前後方向にオーバーラップしている稜線間の部分は上下にほぼ平坦になり、足当り性をより良好にすることができる。
また、複数の稜線は、ほぼ平行に形成されているので、連続する稜線と同様に、リアサイドカバーの外観性をシャープに見せることができる。
【0010】
また、稜線は、前後方向にオーバーラップするオーバーラップ部の直ぐ後側で車幅方向外側への膨出量が最も大きくなるので、乗員の足をオーバーラップ部の直ぐ後側の最大膨出部で支えることができる。
また、リアサイドカバーの後部側の稜線から車幅方向内側は、ほぼ平坦な面に形成され、この平坦な面の上方にグラブレールが配置されているので、手をリアサイドカバーの平坦な面に沿って車幅方向内側に移動させることができ、グラブレールを掴みやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の後部車体カバー構造を有する自動二輪車の右側面図である。
図2】自動二輪車の後部車体カバー構造を示す斜視図である。
図3】自動二輪車の車体後部を示す要部平面図である。
図4】自動二輪車の後部を示す要部右側面図である。
図5図4のV−V線断面図である。
図6図4のVI−VI線断面図である。
図7図4のVII−VII線断面図である。
図8図4のVIII−VIII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態について説明する。なお、説明中、前後左右および上下といった方向の記載は、特に記載がなければ車体に対する方向と同一とする。また、各図に示す符号FRは車体前方を示し、符号UPは車体上方を示し、符号LEは車体左方を示している。
図1は、本発明の後部車体カバー構造を有する自動二輪車10の右側面図である。
自動二輪車(鞍乗り型車両)10は、車体フレーム11の前端部を構成するヘッドパイプ12に操舵可能にフロントフォーク13が支持され、車体フレーム11の下部にエンジン14が取付けられ、車体フレーム11の上部に、燃料タンク16と、この燃料タンク16の後方に配置されたタンデム型のシート17とが取付けられ、車体フレーム11の下部に設けられたピボット軸18に上下揺動可能にスイングアーム21が支持されている。
フロントフォーク13は、上端部にバーハンドル24が取付けられ、下端部に車軸25を介して前輪26が支持されている。
【0013】
エンジン14は、クランク軸が収容されたクランクケース31と、このクランクケース31の前部から起立したシリンダ部32と、クランクケース31の後部に付設された変速機33とを備える。シリンダ部32は、シリンダヘッド35を備え、このシリンダヘッド35の後部にエアクリーナ等からなる吸気装置36が接続され、シリンダヘッド35の前部に排気装置37が接続されている。排気装置37は、シリンダヘッド35に取付けられた排気管41と、この排気管41の後端部に接続されたマフラ42とからなる。
【0014】
燃料タンク16及びシート17の下方であって吸気装置36の側方は、フロントサイドカバー44で覆われている。シート17は、ライダー(運転者)が座るライダー用シート17Aと、このライダー用シート17Aの後方に一体に設けられてパセンジャー(同乗者)が座るパセンジャー用シート17Bとからなる。シート17の両側面の下方にはシート17の下方を覆う左右一対のリアサイドカバー47,47(手前側のリアサイドカバー47のみ図示)が配置されている。リアサイドカバー47の後端部から後方にテールランプ51が突出している。リアサイドカバー47の後部と、テールランプ51の上方・後方とは、リアセンタカバー52で覆われている。
上記のフロントサイドカバー44、リアサイドカバー47、リアサイドエンドカバー48及びリアセンタカバー52は、車体カバー53を構成している。
【0015】
スイングアーム21は、後端部に車軸55を介して後輪56が支持されている。
ここで、図中の符号61は、フロントフォーク13の上部に取付けられたヘッドライト、62はヘッドライト61の周囲を覆うフロントカウル、63は前輪26を上方から覆うフロントフェンダ、64はライダー用ステップ、66はパセンジャーが掴むグラブレール、67はステップホルダ、68はステップホルダ67に取付けられたパセンジャー用ステップ、71はマフラ42を覆う遮熱カバー、72は後輪56を上方から覆うリアフェンダ、73はリアフェンダ72に取付けられた反射鏡である。
【0016】
図2は、自動二輪車10の後部車体カバー構造を示す斜視図である。
シート17の下方を側方から覆うようにリアサイドカバー47が配置されている。リアサイドカバー47は、シート17の側面17cよりも車幅方向外側に膨出し、上面47Aと、側面47Bと、これらの上面47A及び側面47Bに囲まれるように配置されたほぼ平坦な面を有する平坦部47Cとが形成されている。平坦部47Cを設けることで、パセンジャー用シート17Bに座ったパセンジャーの足当りを良好にしている。
左右一対のリアサイドカバー47,47(手前側のリアサイドカバー47のみ図示)の上面47Aの後部には、パセンジャー用シート17Bを挟むようにグラブレール66が配置されている。
【0017】
図3は、自動二輪車10の車体後部を示す要部平面図である。
左右のリアサイドカバー47,47は、シート17に対して車幅方向外側に膨出し、リアサイドカバー47,47の最も車幅方向外側に突出している左右の最大膨出部47d,47dの車幅方向の幅はWである。最大膨出部47d,47dは、その車両前後方向の位置が、左右一対のリアフレーム75,75の後部間に渡されたクロスフレーム76の前縁76aとほぼ一致し、且つリアサイドカバー47,47の平坦部47C,47Cの直ぐ後側に位置している。リアフレーム75,75及びクロスフレーム76は、車体フレーム11の一部を構成している。上記したように、平坦部47Cの直ぐ後側に最大膨出部47dを設けることで、最大膨出部47dでパセンジャーの脚部を後方から支えることができ、脚部を安定させることができる。
【0018】
左側の平坦部47C及び最大膨出部47dよりも側方には、パセンジャーの衣服等の巻き込みを防止するガード部材78が配置されている。ガード部材78は、前端がステップホルダ67の後端部に取付けられ、後端が車体フレーム11の後端部に取付けられている。右側の平坦部47C及び最大膨出部47dよりも側方には、マフラ42及び遮熱カバー71が配置されている。
左右のリアサイドカバー47,47の後端部間には後すぼまり形状のリアセンタカバー52が配置されている。グラブレール66は、左右のリアサイドカバー47,47及びリアセンタカバー52の上方に亘ってパセンジャー用シート17Bの後部を囲むように配置された平面視U字形状の部品であり、U字の左右の前端部66a,66aがステー81,81を介してシート17の下方のクロスフレーム76の左右に取付けられ、U字の側部後部66b,66b及び後部66cは幅広に形成されて、リアサイドカバー47,47及びリアセンタカバー52の一部を上方から覆っている。
リアセンタカバー52の下方にはテールランプ51が配置され、上方からテールランプ51の左端部51a及び右端部51bが視認可能である。テールランプ51よりも左右側方に、リアフェンダ72(図1参照)に取付けられた左右のリアウインカ82,82が突出している。
【0019】
図4は、自動二輪車10の後部を示す要部右側面図である。
リアサイドカバー47は、鋭角形状の前端部47eから後方斜め上方に延びる前側稜線47gと、鋭角形状の後端部47hから前方斜め下方に延びる後側稜線47jとを側面に備える。これらの前側稜線47gと後側稜線47jとは、リアサイドカバー47の表面において車体側方に突出した部分が連なったものであり、山の尾根に相当し、それぞれ互い違いにほぼ平行に延びてリアサイドカバー47の長手方向の中央部で前後にオーバーラップしている。符号47mは前側稜線47gの後端、47nは後側稜線47jの前端である。前側稜線47gと後側稜線47jとが車両前後方向にオーバーラップする部分の内側、即ち前側稜線47g、後側稜線47j間は、平坦部47Cとなっている。従って、リアサイドカバー47の表面の平坦部47Cを除く部分は、車体側方に突出した前側稜線47g、後側稜線47jを境に、前側稜線47g、後側稜線47jから車幅方向内側へ傾斜しつつ延びる上面47A及び側面47Bを形成している。
【0020】
上記したように、前側稜線47gと後側稜線47jとは、ほぼ平行に後上りに傾斜するように延びるので、例えば、リアサイドカバーの前端から後端まで1本の稜線を後上りに傾斜するのと同様に側面視でシャープな印象を与えることができ、外観性を向上させることができる。これに加えて、本実施形態では平坦部47Cを設けることで足当たりを良好にすることができるため、パセンジャーが心地良く乗車することができる。
また、グラブレール66の側部前部66dは、後側稜線47jとほぼ平行に配置されているため、リアサイドカバー47とグラブレール66との一体感を得ることができ、車両後部の外観性を向上させることができる。
【0021】
図5は、図4のV−V線断面図である。
リアサイドカバー47の断面は、ほぼくの字形状に形成され、上面47Aは、前側稜線47gから車幅方向内側にいくにつれて次第に斜め上方に延び、側面47Bは、前側稜線47gから車幅方向内側にいくにつれて次第に斜め下方に延びている。
左右のリアサイドカバー47,47の上面47A,47Aの車幅方向内側には左右一対のリアフレーム75,75が配置され、更にこれらのリアフレーム75,75の車幅方向内側にはリアフェンダ72が配置されている。
左右のリアサイドカバー47,47間の上側の開口はシート17で覆われ、リアサイドカバー47,47間の下側の開口は、リアフェンダ72の下部から外側方に突出する側方延出壁72a,72aで覆われている。
【0022】
図6は、図4のVI−VI線断面図である。
リアサイドカバー47の断面では、前側稜線47gと後側稜線47jとの間は、ほぼ平坦な上下方向に延びる平坦部47Cに形成されている。側面47Bは、前側稜線47gから車幅方向内側にいくにつれて次第に斜め下方に延び、上面47Aは、後側稜線47jから車幅方向内側にいくにつれて次第に斜め上方へ延び、更に斜め上方からほぼ水平に延びが変化している。
平坦部47Cは、詳細には、前側稜線47gから上方斜め内方(車幅方向内方)に延びて斜め上方に向く上向き面47pと、後側稜線47jから下方斜め内方(車幅方向内方)に延びて斜め下方に向く下向き面47qとからなる。従って、前側稜線47gとは、上向き面47pと、斜め下方に向く側面47Bとが車幅方向外方に突状に交わる線である。また、後側稜線47jとは、下向き面47qと、斜め上方に向く上面47Aとが車幅方向外方に突状に交わる線である。
【0023】
平坦部47Cは、リアフレーム75に対して高さ位置が重なっている。即ち、左右のリアサイドカバー47,47のそれぞれの前側稜線47g及び後側稜線47jを通る直線85,86の間に、リアフレーム75の断面の一部が位置する。特に、後側稜線47jの車幅方向内側にリアフレーム75が位置する。
このように、車体後部の主要構成部であるリアフレーム75の車幅方向外側にリアサイドカバー47の後側稜線47jを設けることで、リアフレーム75とリアサイドカバー47との間の必要なスペースを確保することができる。
【0024】
図7は、図4のVII−VII線断面図である。
リアサイドカバー47の断面では、前側稜線47gと後側稜線47jとの間は、ほぼ平坦で且つ後側稜線47jが前側稜線47gより車幅方向外側に位置するように傾斜して延びる平坦部47Cに形成されている。平坦部47Cは、図6及び図7に示したように、前後方向はややねじれた形状に形成されている。
リアサイドカバー47の側面47Bは、平坦部47Cに連続するように前側稜線47gから車幅方向内側にいくにつれて次第に斜め下方に延び、上面47Aは、後側稜線47jから車幅方向内側にほぼ水平に延びている。
左右のリアサイドカバー47,47のそれぞれの前側稜線47g及び後側稜線47jを通る直線87,88の間に、リアフレーム75の断面の一部が位置する。
【0025】
図8は、図4のVIII−VIII線断面図であり、グラブレール66の前端部66aを通る断面を示している。
リアサイドカバー47の断面は、横向きのほぼV字形状に形成され、上面47Aは、後側稜線47jから車幅方向内側へほぼ水平に延び、側面47Bは、後側稜線47jから車幅方向内側にいくにつれて次第に斜め下方に延びている。
上面47Aとグラブレール66との間には距離Cだけ隔てた隙間91が形成され、この隙間91にパセンジャーが手を入れてグラブレール66を握る。従って、グラブレール66の下方にほぼ水平な上面47Aをリアサイドカバー47で形成することで、グラブレール66を掴むときに上面47Aがガイドとなり、グラブレール66を掴みやすくすることができる。
【0026】
以上の図1及び図4に示したように、ライダー用シート17Aと、このライダー用シート17Aに着座したライダーが足を置くライダー用足置きとしてのライダー用ステップ64と、ライダー用シート17Aの後方に配置されたパセンジャー用シート17Bと、このパセンジャー用シート17Bに着座したパセンジャーが足を置くパセンジャー用足置きとしてのパセンジャー用ステップ68とを備え、側面視でパセンジャー用シート17Bの下方且つパセンジャー用ステップ68の上方であって、表面に前側稜線47g及び後側稜線47jが形成されたリアサイドカバー47を備える鞍乗り型車両としての自動二輪車10の後部車体カバー構造において、稜線は、リアサイドカバー47の前部側と後部側とで連続しない複数の前側稜線47g及び後側稜線47jから構成される。この構成によれば、前側稜線47g及び後側稜線47jを連続しないようにすることで、リアサイドカバー47の表面の前側稜線47g、後側稜線47j間に、山形の部分を形成しないようにすることができ、ほぼ平坦な平坦部47Cが形成されるため、特別に凹部等を形成することなく、設計自由度を増しながらパセンジャーの足当り性をより良好にすることができる。
【0027】
また、複数の前側稜線47g及び後側稜線47jは、前後方向にオーバーラップし、上下に離間しているので、前後方向にオーバーラップしている前側稜線47g、後側稜線47j間の部分は上下にほぼ平坦になり、パセンジャーの足当り性をより良好にすることができる。
また、複数の前側稜線47g及び後側稜線47jは、ほぼ平行に形成されているので、連続する1本の稜線と同様に、リアサイドカバー47の外観性をシャープに見せることができる。
【0028】
また、図3及び図4に示したように、前側稜線47g及び後側稜線47jは、前後方向にオーバーラップするオーバーラップ部としての平坦部47Cの直ぐ後側で車幅方向外側への膨出量が最も大きくなるので、パセンジャーの足を平坦部47Cの直ぐ後側の最大膨出部47dで支えることができ、パセンジャーの乗車姿勢を安定させることができる。
また、図4及び図8に示したように、リアサイドカバー47の後部側の後側稜線47jから車幅方向内側は、ほぼ平坦な面(上面47A)に形成され、この上面47Aの上方に隙間91を介してグラブレール66が配置されているので、手をリアサイドカバー47の上面47Aに沿って車幅方向内側に移動させることができ、グラブレール66を掴みやすくすることができる。従って、自動二輪車10の使い勝手を向上させることができる。
【0029】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を示すものであり、本発明の主旨を逸脱しない範囲で任意に変形及び応用が可能である。
例えば、上記実施形態において、図4に示したように、前側稜線47gは、リアサイドカバー47の前端部47eから後方斜め上方に延び、後側稜線47jは、リアサイドカバー47の後端部47hから前方斜め下方に延びるようにしたが、これに限らず、それぞれ前端部47e又は後端部47hに繋がるものでなくても良い。要は、前側稜線47gと後側稜線47jとは、連続するものではなく、前後にオーバーラップするものであれば良い。
【符号の説明】
【0030】
10 自動二輪車(鞍乗り型車両)
17A ライダー用シート
17B パセンジャー用シート
47 リアサイドカバー
47A 上面(平坦な面)
47B 側面
47C 平坦部(オーバーラップ部)
47g 前側稜線(稜線)
47j 後側稜線(稜線)
64 ライダー用ステップ(ライダー用足置き)
68 パセンジャー用ステップ(パセンジャー用足置き)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8