【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1にて提案されている「プラスチック製寿司桶」は、
図11に示すように、「プラスチック製の寿司桶の内側に、盛り付ける寿司を仕切るための複数本の直線状の突条が所定の間隔をおいて突設されている」ものである。この特許文献1の「プラスチック製寿司桶」は、
図11からすると外形が円形であるから、見た目では全体の方向性はないが、盛り付ける寿司を仕切るための突条を利用して寿司を綺麗に盛り付けようとすると、俄然、方向性が出てきて、当該「プラスチック製寿司桶」を突条が利用できるように設置しなければならない。
【0009】
まして、この特許文献1の「プラスチック製寿司桶」によって、寿司を流し盛りしようとすると、「寿司を仕切るための複数本の直線状の突条」が却って盛り付け作業を困難にすると考えられる。何故なら、盛り付け作業者の熟練度や癖によって、「プラスチック製寿司桶」自体の設置方向が異なり、この設置方向と「複数本の直線状の突条」の方向とは異なることもあって、「プラスチック製寿司桶」自体の設置方向を修正する作業が必要になるからである。
【0010】
また、特許文献2の「包装用容器およびその製造方法」は、「寿司やみたらし団子など醤油やタレ等の液状物を必要とするものを収納するのに好適な包装用容器とその製造方法を提供すること」を目的としてなされたもので、
図12にも示すように、「四角形の板状体の四隅を切り落し、且つ足刳り部を形成した四隅間の側壁13を起上して側壁端部13′どうしを融着接合した容器であって、側壁上端から少し下げた中央位置を底面とする収納用凹部を形成し、この収納用凹部11には小区画12を形成する凹部または凸部を一体に形成」したものである。
【0011】
この特許文献2の「包装用容器」は、小区画12を利用して醤油やタレ等の液状物を収納することはできるかもしれないが、寿司の「流し盛り」を考慮していないため、流し盛り作業を短時間内で大量に行うには熟練を要すると思われる。
【0012】
いずれにしても、寿司製造装置から大量に出てくる寿司を、規定の包装用容器に短時間内で流し盛りしようとすると、まず、作業がし易いように容器全体の位置を決めてから、容器の底面上に順に寿司を並べていかなくてはならないが、従来の容器では、当該容器の位置決めに時間が掛かると考えられるのである。
【0013】
特に、スーパーマーケットのような大型店舗で寿司を大量に販売しようとする場合、規定の容器に収納されるべき寿司の貫数(通常、握り寿司2個で一貫であるが、以下では、握り寿司1個が一貫であるとして説明する)は当然に決められているのであるから、貫数自体に間違いがあってはならないし、容器毎に見栄えが異なっていてもよくない。そして、重要なことは、スーパーマーケットのような大型店舗等のバックヤードで寿司を流し盛りする作業者は、専門の寿司職人ではないことが多い実状にあるため、このような熟練されていない人でも、貫数の間違いがなくて綺麗な流し盛りが短時間内で行えるような容器が求められているのである。
【0014】
そこで、本発明者等は、熟練されていない人でも、寿司の流し盛りが簡単にかつ綺麗に行えるような容器とするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0015】
すなわち、本発明の目的とするところは、どのような向きに置いても、流し盛りすべき寿司の配置位置の目安が常に同じ位置に現れて、熟練されていない人でも、寿司の流し盛りを、短時間内で簡単に、しかも貫数の間違いがなく綺麗に行える寿司用の包装用容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「平面視正方形状の底面10aに、複数の寿司20を流し盛りするための包装用容器10において、
前記底面10aの各辺近傍
それぞれに、各辺に対して同じ角度θで傾斜し、最初の寿司20aを盛り付けるための目安になる第1リブ11を形成し、
さらに、前記第1リブ11を目安にして盛り付けた最初の寿司20aの右隣に次の寿司20bを盛り付けるために、前記底面10aに、第1リブ11に対して平行または直角で傾斜する第2リブ12を形成し、
前記辺に対して角度θで傾斜する第1リブ11は、当該辺との間に、他の第1リブ11又は第2リブ12が形成されていないものである
と共に、隣接する辺に対する第1リブ11とは互いに直交する方向へ延びていることを特徴とする寿司用の包装用容器10」
である。
【0017】
本発明に係る包装用容器10は、合成樹脂シートから熱成形によって形成したものであり、
図1〜
図5に示すように、寿司20が載置されるべき底面10aの全周囲に立ち上げ壁16が連続していて、この寿司20によって寿司20の収納部が形成されている。また、寿司20の上端全周にはフランジ17が一体化されていて、このフランジ17によって当該包装用容器10が必要としている剛性の一部を確保するとともに、当該包装用容器10に対して嵌合される蓋体30の載置場所が確保されている。
【0018】
また、本発明に係る包装用容器10は、その底面10aが正多角形をなしていることを前提とするものであるが、この場合の正多角形とは、
図6の(a)及び(b)に示すように、例えば正四角形の角となっている部分について、弧や直線で「角取り」されたものも含むものである。勿論、底面10aが正多角形をなしているということは、この底面10aの周囲に、正多角形の角数に応じた数の「辺」があるということであり、これらの辺が正多角形を形成しているということである。
【0019】
さらに、底面10aが正多角形をなしているという前提は、包装用容器10自体の外形を形作っているフランジ17、及びこのフランジ17と底面10aとの間にある立ち上げ壁16がどのような形状になっているか、つまり、包装用容器10自体の外形がどのようになっているかを問わない、という意味でもある。例えば、底面10aが正三角形や正四角形であって、包装用容器10の外形が円や楕円である場合も、本発明の対象となるものである。
【0020】
この請求項1に係る包装用容器10においては、例えば
図1及び
図2に示すように、底面10aの各辺近傍に、各辺に対して同じ角度θで傾斜し、最初の寿司20を盛り付けるための目安になる第1リブ11が形成してある。この第1リブ11は、盛り付け作業者が寿司20を盛り付ける場合に利用する目安となるものであるから、底面10aに対して凸になっていても凹になっていてもよく、また、幅や長さは制限されないが、方向性をも示す意味でできるだけ直線状になっていた方が好ましい。
【0021】
なお、この第1リブ11の表面に細かい凹凸を形成して光を乱反射させるようにすると、底面10a内面の他の部分が光ったときに、この光の中に当該第1リブ11が浮き上がるということになるから、目安とし易いことになる。
【0022】
以上のように構成した包装用容器10について、その底面10a上に寿司20を流し盛りして行く作業を、底面10aが正四角形である場合について順を追って説明すると、次の通りである。まず、多数の寿司20が順次送り出されてくる、例えば寿司製造装置の排出口、あるいはコンベアベルトの近くに、多数積み重ねられた包装用容器10が置かれているから、作業者はその内の一つを取って作業台上の作業し易い箇所に置く。
【0023】
この包装用容器10を作業台上に置く場合に、一般的に「右利き」である作業者は、底面10aの一つの辺が、作業者から見て上側で水平になるようにする。何故なら、複数の寿司20を順に並べるには、一番上の列の左奥から始め、この一番上の列が終われば、直ぐ下側の列に移ってまた左奥から始めるのが自然だからである。底面10aの一つの辺が作業者から見て上側で水平になるように包装用容器10を配置すると、この辺の近傍に、当該辺に対して角度θで傾斜した状態の第1リブ11が必ず現れる。この第1リブ11の出現位置と傾斜角度θは、底面10aの一つの辺が上側で水平になるようにするという条件を満たせば、包装用容器10をどの辺を上側にして作業台上に置こうと、常に同じである。
【0024】
換言すると、作業者が盛り付けし易いように、底面10aの一つの辺が上側で水平になるように包装用容器10を配置すると、盛り付け作業を始める位置に必ず第1リブ11が出現する。この第1リブ11は、これの近傍にある辺に対して同じ角度θで傾斜しているから、この第1リブ11に沿って、つまり第1リブ11を目安にして寿司20を配置すれば、最初の寿司20aは必ず「流し盛り」に必要な角度で斜め載置がなされることになる。
【0025】
最初の寿司20aが必ず「流し盛り」に必要な角度で斜め載置されれば、
図2にも示すように、この最初の寿司20aの載置状態自体や、上側で水平にした辺を、次の寿司20bを流し盛りするための「目安」とすることで、作業者は、この最初の寿司20aを目安としてその右隣に次の寿司20bを流し盛りに合った状態に載置することが簡単にできる。勿論、下側の列に載置作業が移れば、最初の寿司20a等の載置状態やこれらが形成している列状態自体が、次の列での寿司20を流し盛りするための「目安」となることは言うまでもない。
【0026】
そして、第1リブ11を目安として流し盛りをして行けば、各寿司20が寿司製造装置で略同じ大きさに形成されていることもあって、流し盛り完了後の寿司20の総数は常に一定となり、当該包装用容器10に収納すべき寿司20の貫数に間違いが発生することはない。
【0027】
以上の結果、底面10aの一つの辺が上側で水平になるようにするという条件(これは自然な作業である)さえ満たせば、包装用容器10の配置がどのようであっても、また、正多角形である底面10aの角数がどのようであっても、最初の寿司20aを載置すべき位置が常に同じ位置に現れる第1リブ11によって示されることになり、熟練を有しない作業者であっても、寿司20の流し盛りが綺麗に行えることになるのである。
【0028】
従って、この請求項1に係る包装用容器10は、どのような向きに置いても、流し盛りすべき寿司20の配置位置の目安が常に同じ位置に現れて、熟練されていない人でも、寿司20の流し盛りを、短時間内で簡単に、しかも貫数の間違いがなく綺麗に行えるものとなっているのである。
【0029】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明の採った手段は、上記の寿司20用の包装用容器10について、
「第1リブ11を目安にして盛り付けた最初の寿司20aの右隣に次の寿司20bを盛り付けるために、底面10aに、第1リブ11に対して平行または直角で傾斜する第2リブ12を形成したこと」
である。
【0030】
この請求項1に係る包装用容器10では、
図3に示すように、底面10aに、第1リブ11に対して平行または直角で傾斜する第2リブ12を形成したものであるが、この第2リブ12は、第1リブ11を目安にして盛り付けた最初の寿司20aの右隣に、次の寿司20bを盛り付ける際の目安となるものである。
【0031】
まず、
図3に示す例では、底面10aが正四角形であり、横1列について3貫の寿司20を載置し、この横列を上下3つにするもので、合計9貫の寿司20を収納するものであるが、この場合を中心に以下の説明をすすめて行く。勿論、この包装用容器10において、底面10aの各辺近傍に、各辺に対して同じ角度θで傾斜し、最初の寿司20aを盛り付けるための目安になる第1リブ11が形成されていることは言うまでもない。
【0032】
各第2リブ12は、第1リブ11に対して平行または直角で傾斜する必要があるが、その理由は各寿司20の形状にある。各寿司20は、「寿司飯」の上に種々な形状の「ネタ」を載せて形成されるものであり、「寿司飯」の方は、略長方形状の一定の形状に形成されるが、「ネタ」の方は、「寿司飯」からはみ出るような大きさで、形も一定しないものが多い。従って、各第2リブ12を目安にして底面10a上に載置する場合、寿司20側のどの部分を第2リブ12に合わせればよいか迷う場合がある。
【0033】
前述したように、複数の寿司20を流し盛りするには、最初に
図3の図示上側で左奥となっている第1リブ11を目安として最初の寿司20aが載置されるが、次の寿司20bは、この最初の寿司20aの図示右隣にこれと平行に配置されるべきである。そこで、第2リブ12が第1リブ11と平行に形成されていて、これが「ネタ」に邪魔されることなく見えるであれば、この第2リブ12が次の寿司20bを最初の寿司20aと平行に載置するための目安となるのである。
【0034】
一方、
図7に示す例のように、次の寿司20bを最初の寿司20aと平行に載置するにあたって、寿司20のネタは複雑形状であるが寿司飯の方は「長方形」であることがはっきり分かる場合であって、その載置すべき位置を示す目安としての第2リブ12が第1リブ11に対して直角になっていれば、これに次の寿司20bを構成している寿司飯の下側短辺を合わせれば、次の寿司20bを最初の寿司20aと平行に載置することが容易に行えることになる。これが、第1リブ11に対して直角で傾斜する第2リブ12を形成する場合の理由である。勿論、これらの第2リブ12は、寿司20bの寿司飯のみを目安とするものに限定されるのではなく、例えば、ネタの切り口が直線状である場合、このネタの直線の部分を第2リブ12による目安と合わせればよい。寿司飯とネタのどちらを目安に合わせるかは、作業者がその都度適宜選択すればよい。
【0035】
なお、底面10aが正四角形で、寿司20が3行3列になる上記の例では、第1リブ11に平行に隣接する第2リブ12の数は「1」であったが、横一列における寿司20の数が、4、5、6…と増加していけば、第2リブ12の数も、2、3、4…と増加可能なことは言うまでもない。
【0036】
従って、この請求項1に係る包装用容器10は、最初の寿司20aの隣に次の寿司20bを流し盛りするための目安を第2リブ12によって得ることができるものとなっているのである。
【0037】
また、請求項1に係る発明の採った手段は、上記の寿司20用の包装用容器10について、
「底面10aが、平面視正方形であること」
である。
【0038】
この請求項1の包装用容器10では、
図1〜
図5に示すように、底面10aの形状を平面視正方形、つまり正四角形にしたものであるが、このようにすれば、請求項1の説明で述べた、底面10aの一つの辺が上側で水平になるように包装用容器10を配置する、という条件をさらに簡単にクリアできる。
【0039】
何故なら、例えば作業台上に包装用容器10を当接させるための桟を作業者に対して平行となるようにしておき、この桟に当接させるように包装用容器10を作業台上に載置すれば、当然に、底面10aの一つの辺が上側で水平になるからである。
【0040】
従って、この請求項1に係る包装用容器10は、底面10aの一つの辺を上側で簡単に水平し得るものとなっている。
【0041】
さらに、上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、上記請求項1に記載の寿司20用の包装用容器10について、
「底面10aに、その各辺と平行で、各寿司20の配置範囲を画定する第3リブ13を形成したこと」
である。
【0042】
この請求項2の包装用容器10では、
図4及び
図5に示すように、底面10aに、その各辺と平行な第3リブ13を形成したものであるが、この第3リブ13によって各寿司20の配置範囲が画定されることになって、この第3リブ13を流し盛り作業時に利用すれば、作業が捗ることになる。つまり、どの包装用容器10を取っても、均質で綺麗な流し盛りができることになるのである。
【0043】
この第3リブ13は、各寿司20の配置範囲を画定するものであるから、形状や大きさ、あるいは凹にするか凸にするかについて、殆ど制限がないものである。勿論、これらの第3リブ13については、上述した第1リブ11のように、直線状にするのが最も好ましいものであり、また、光を乱反射させる加工をして実施してもよい。
【0044】
従って、この請求項2に係る包装用容器10は、上記請求項1の寿司20用の包装用容器10と同様な機能を発揮する他、寿司20の載置をより一層綺麗にかつ正確に行えるものとなっているのである。