【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明者は、鋭意研究を行った結果、不動産登記規則所定の「受付帳」に着目し、受付帳に記録される公的な情報を、受付日もしくは受付期間を指定して取得し、取得した情報をデータ化し、担保台帳で管理しているデータと有機的に結合して活用する、という着想を得て、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明に係る担保権付物件の管理支援方法は、不動産を対象とする担保権の管理を支援する情報を生成するコンピュータの動作方法であって、前記コンピュータは、演算手段と記憶手段と入力手段と出力手段を有し、前記演算手段は、
管理対象としている担保権付物件について、不動産登記法所定の登記事項のうち少なくとも抵当権の債務者名および債権額、または根抵当権の債務者名および極度額を含む担保権付物件データを、不動産ごとに記録した、第1の担保権付物件情報ファイルを生成し、前記記憶手段に格納するステップと、
不動産登記規則所定の受付帳に記録される公的な情報であって受付日もしくは受付期間を指定して取得した情報を、受付帳データとして、入力手段に入力するステップと、
入力された前記受付帳データのうち、少なくとも登記受付の発生種別を含む受付データを、不動産ごとに記録した、受付情報ファイルを生成し、前記記憶手段に格納するステップと、
前記第1の担保権付物件情報ファイルと前記受付情報ファイルを前記記憶手段から読み出して不動産ごとに照合し、前記担保権付物件データと前記受付データを合成した合成データを、不動産ごとに記録した、第2の担保権付物件情報ファイルを生成し、前記記憶手段に格納するステップと、
前記受付データのうち少なくとも前記登記受付の発生種別について、特定の種別を指示する指示入力を受けて、前記第2の担保権付物件情報ファイルから、前記特定の種別を前記受付データにもつ合成データを検出するステップと、
検出された前記合成データについて、出力情報を生成し、前記出力手段に出力するステップと、
を実行することを特徴とする。
【0010】
本発明において、不動産登記規則所定の「受付帳」とは、不動産登記規則第18条第1号に従い法務省法務局の管轄登記所に備え付けられる「受付帳」をいう。また、受付帳に記録される公的な情報とは、同規則第56条第1項に定められた事項であり、登記の目的、申請の受付の年月日、および受付番号、ならびに不動産所在事項(具体的には、土地にあっては、所在と地番、建物もしくは区分建物にあっては、所在と家屋番号)を含む。本発明において、受付帳に記録される登記の目的は、後述する受付情報ファイルに不動産ごとに記録される受付データに含まれる「登記受付の発生種別」として扱われる。
【0011】
現行法の下では、同規則に従い受付帳に記録される公的な情報は、行政機関の保有する情報の公開に関する法律第4条第1項に基づいて取得することができる。すなわち、行政機関の長である地方法務局長に対し、受付日もしくは受付期間、種別(不動産)、および法務局管轄を指定して開示請求を行うことにより、同法第9条第1項の規定に基づき、不動産登記受付帳の開示を受けることができる。
【0012】
現行法の下での運用では、実際には、受付帳の開示内容を用紙に出力したものが請求人に交付されるため、交付された受付帳の開示内容を例えばOCR処理等の処理によりテキスト変換し、データ化すると良い。本明細書では、受付帳に記録される公的な情報を、公知の方法でデータ化したものを、受付帳データと呼ぶ。ただし、これは現行法の下での一例を述べたまでのことであり、将来の法改正等の事由により、受付帳の開示内容を全てデータ化した電子ファイルが、請求人に直接交付されるようになったとき等の場合には、上記のようなデータ化を省略できることはいうまでもない。
【0013】
受付帳データを入力するために、所定のインタフェース仕様に従いコンピュータに接続されたスキャナを使用しても良い。また、代替的に、別途OCR処理を経てテキスト処理した受付帳データを、各種の記憶媒体(例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ等のUSBストレージ、または書き込み可能なCD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)もしくはBD(Blu−ray(登録商標) Disc))に保存し、所定のインタフェース仕様に従いコンピュータに接続されたキーボードおよびマウス等のポインティングデバイス、もしくはタッチスクリーン等の入力装置による指示操作により、各種記憶媒体からコンピュータに取り込んでも良い。受付帳データを入力するためのスキャナ、あるいは各種記憶媒体から受付帳データを取り込むために操作するキーボード、ポインティングデバイス、もしくはタッチスクリーン、および周辺装置(CDドライブ、DVDドライブ、BDドライブ)は、本発明の入力手段に相当する。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態において、前記検出ステップにおいて指示入力される特定の種別は、抵当権の設定、根抵当権の設定、売買による所有権移転、所有権移転仮登記、相続、贈与、保全処分、もしくは処分の制限等のいずれか1つ、または2つ以上であると良い。保全処分、処分の制限の登記受付は、裁判につながる直接的な危険信号であり、いち早く知っておく必要がある危険情報といえる。また、所有権移転、相続、もしくは贈与の登記受付は、将来の債権劣化につながりうることを知らせる、予備的な危険情報といえる。他方、抵当権の設定の登記受付は、主に住宅ローン、根抵当権の設定の登記受付は、他の金融機関からの最新の債務の存在を知らせる有力な借換情報として利用することができる。
【0015】
また、本発明の好ましい実施の形態において、前記コンピュータはさらに通信手段を有し、前記演算手段は、前記第1の担保権付物件情報ファイルを生成する際に、前記通信手段により接続している登記情報提供者の情報処理装置から通信回線を介して公的な不動産登記情報を取得し、前記第1の担保権付物件情報ファイルに記録すべき担保権付物件データを検証するステップをさらに実行すると良い。かかる検証ステップを実行する主たる利点は、管理対象としている担保権付物件について、現在効力を有するかを確認できること、および不動産登記法所定の登記事項と一致しない担保権付物件データが、不一致のままで第1の担保権付物件情報ファイルに記録されるのを防ぐことができることにあるが、他方で、検証ステップの実行は、担保権の登記に錯誤または遺漏がないことを事前確認するのに役立つという利点もある。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態において、公的な不動産登記情報を、通信回線を介して取得するために、例えば、一般財団法人民事法務協会(当該協会は、本発明における「登記情報提供者」に相当する一具体例である)の「インターネット登記情報提供サービス」サイト(http://www1.touki.or.jp/gateway.html)を利用することができる。同サイトには、登記所で保管する不動産登記情報(共同担保目録を含めて、不動産登記法所定の登記の全部事項)が、アップデートされて蓄積されている。インターネット等の通信回線を介して、同サイトに、不動産の特定に必要な識別情報(具体的には、土地であれば不動産番号、または所在および地番、建物であれば、不動産番号、または所在および家屋番号、さらに管轄登記所の情報)を転送し、請求時点の最新の不動産登記情報を、リアルタイムで取得することが可能である。
【0017】
登記情報提供者から通信回線を介して取得される公的な不動産登記情報は、一般には不動産登記簿と呼ばれている「登記事項証明書」の体裁を有している。本発明においては、公的な不動産登記情報を取得する度に、登記事項証明書の体裁を保つ電子ファイルとして、第2の担保権付物件情報ファイルと関連付けて、記憶手段に格納しても良い。なお、登記事項証明書の体裁を保つ電子ファイルのフォーマットは、好ましくはPDF(Portable Document Format)で良く、TIFF(Tagged Image File Format)、HTML(HyperText Markup Language)等の他のフォーマットであっても良い。
【0018】
また、本発明に従い出力される出力情報は、所定のインタフェース仕様に従いコンピュータに接続された表示装置もしくはプリンタ、またはコンピュータの筐体に直接設けられた表示装置に出力されても良く、これら表示装置またはプリンタは本発明の出力手段に相当する。なお、出力情報は、所定のインタフェース仕様に従いコンピュータに接続された外部記憶装置に別途格納されても良く、あるいはコンピュータから通信回線を介して外部システムに向けて転送されても良い。
【0019】
本発明の担保権付物件の管理支援装置は、不動産を対象とする担保権付物件の管理を支援する情報を生成する装置であって、演算手段と記憶手段と入力手段と出力手段を有し、
前記演算手段は、
管理対象としている担保権付物件について、不動産登記法所定の登記事項のうち少なくとも抵当権の債務者名および債権額、または根抵当権の債務者名および極度額を含む担保権付物件データを、不動産ごとに記録した、第1の担保権付物件情報ファイルを生成し、
不動産登記規則所定の受付帳に記録される公的な情報であって受付日もしくは受付期間を指定して取得した情報を、受付帳データとして、前記入力手段に入力し、
前記入力手段により入力された、不動産登記規則所定の受付帳に記録される公的な情報であって受付日もしくは受付期間を指定して取得した情報からなる受付帳データのうち、少なくとも登記受付の発生種別を含む受付データを、不動産ごとに記録した、受付情報ファイルを生成し、
前記第1の担保権付物件情報ファイルと前記受付情報ファイルを読み出して不動産ごとに照合し、前記担保権付物件データと前記受付データを合成した合成データを、不動産ごとに記録した、第2の担保権付物件情報ファイルを生成し、
前記記憶手段は、前記第1の担保権付物件情報ファイル、前記受付情報ファイル、および前記第2の担保権付物件情報ファイルを格納し、
前記演算手段は、前記受付データのうち少なくとも前記登記受付の発生種別について、特定の種別を指示する指示入力を受けて、前記第2の担保権付物件情報ファイルから、前記特定の種別を前記受付データにもつ合成データを検出し、
前記演算手段は、検出された前記合成データについて、出力情報を生成し、前記出力手段に出力すること、
を特徴とする。
【0020】
さらに、本発明のプログラムは、不動産を対象とする担保権付物件の管理を支援する情報を生成する処理を、コンピュータに行わせるためのプログラムであって、前記コンピュータは、演算手段と記憶手段と入力手段と出力手段を有し、前記プログラムは、前記演算手段に、
管理対象としている担保権付物件について、不動産登記法所定の登記事項のうち少なくとも抵当権の債務者名および債権額、または根抵当権の債務者名および極度額を含む担保権付物件データを、不動産ごとに記録した、第1の担保権付物件情報ファイルを生成し、前記記憶手段に格納し、
不動産登記規則所定の受付帳に記録される公的な情報であって受付日もしくは受付期間を指定して取得した情報を、受付帳データとして、前記入力手段に入力し、
入力された前記受付帳データのうち、少なくとも登記受付の発生種別を含む受付データを、不動産ごとに記録した、受付情報ファイルを生成し、前記記憶手段に格納し、
前記第1の担保権付物件情報ファイルと前記受付情報ファイルを前記記憶手段から読み出して不動産ごとに照合し、前記担保権付物件データと前記受付データを合成した合成データを、不動産ごとに記録した、第2の担保権付物件情報ファイルを生成し、前記記憶手段に格納し、
前記受付データのうち少なくとも前記登記受付の発生種別について、特定の種別を指示する指示入力を受けて、前記第2の担保権付物件情報ファイルから、前記特定の種別を前記受付データにもつ合成データを検出し、
検出された前記合成データについて、出力情報を生成し、前記出力手段に出力する、
処理を実行させることを特徴とする。