(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一の膜を成膜するための成膜材料を噴出する蒸着源が成膜室または成膜領域ごとに設けられる連続成膜装置を用いて積層する膜の数を増やすには、その装置に設ける成膜室または成膜領域の数を増やす必要がある。その結果、積層できる膜の数が多い成膜装置ほど大型化し、その占有面積も大きくなる。
【0011】
大規模な高額な装置であるほど高い稼働率が望まれる。多数の成膜室または成膜領域が設けられた成膜装置を用いて、少数の膜を積層する場合がある。このような方法で一部の成膜室のみを使って当該成膜装置の稼働率を高めても、成膜室または成膜領域ごとにみると、その稼働率は低く、結果として非経済的である。
【0012】
また、プラズマを照射してシャドーマスクに付着した成膜材料を気化させる場合、その除去速度が遅いと、作業効率や経済効率が低下してしまう。例えば、成膜装置の成膜速度より成膜材料を除去する速度が遅い場合、使用済みのシャドーマスクが累積していく速度が、使用されたシャドーマスクを再生する速度を上回ってしまう。その結果、使用済みのシャドーマスクの管理が煩雑になってしまう。また、製造工程において予備のシャドーマスクを多数準備しておく必要等が生じてしまう。
【0013】
本発明の一態様は、このような技術的背景のもとでなされたものである。したがって、成膜装置に設けられた成膜室または成膜領域の稼働率の低下を抑制しながらも、連続して積層する膜の数を柔軟に変えることができる成膜装置を提供することを課題の一とする。または、連続して積層する膜の数を柔軟に変えることができる積層膜の作製方法を提供することを課題の一とする。または、発光素子の作製方法を提供することを課題の一とする。
【0014】
また、シャドーマスクを用いた成膜と、当該シャドーマスクに付着した成膜材料を除去できる成膜装置を提供することを課題の一とする。または、シャドーマスクを用いた成膜方法と、当該シャドーマスクに付着した成膜材料を除去する方法を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、連続して多数の膜を成膜できる成膜装置に設けられる複数の成膜室に着目して創作されたものである。そして、本明細書に例示される構成を備える成膜装置に想到した。
【0016】
本発明の一態様の成膜装置は、連結室と、連結室に被成膜体を供給する搬入室と、連結室に一方の開口部が接続される成膜室と、成膜室の他方の開口部が接続される受渡室と、受渡室から被成膜体を回収する搬出室と、受渡室に一方の開口部が接続される除去室と、を備える処理ユニットを、複数有するものである。そして、一の処理ユニットの連結室は、他の処理ユニットの除去室の他方の開口部と接続されている。
【0017】
また、本発明の一態様は、プラズマを用いてシャドーマスクから成膜材料を除去する際の、プラズマ源に対するシャドーマスクの位置に着目して創作されたものである。
【0018】
本発明の一態様の成膜装置は、成膜室、除去室、成膜室と除去室の間に互いに離れて設けられた2つの仕切り弁並びにシャドーマスク搬送機構を有する。成膜室は蒸着源を、除去室は平行平板型のプラズマ源および当該プラズマ源の上部電極と下部電極の間に設けられたシャドーマスク・ステージを備える。そして、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを、シャドーマスク搬送機構が移動して、被成膜体に成膜する成膜モードと、シャドーマスク・ステージが、シャドーマスクを上部電極と下部電極の間に支持した状態で、プラズマ源がシャドーマスクにプラズマを照射するクリーニングモードと、を有するものである。
【0019】
すなわち、本発明の一態様は、除去室と、除去室に互いに離れて接続される第1の仕切り弁と第2の仕切り弁と、第1の仕切り弁と第2の仕切り弁と接続される成膜室と、成膜室内に設けられた蒸着源と、除去室内に設けられた平行平板型のプラズマ源と、プラズマ源の上部電極と下部電極の間に設けられたシャドーマスク・ステージと、被成膜体と被成膜体の一部を覆うシャドーマスクを重ね合わせた状態で、前記蒸着源から成膜材料が噴出する領域を移動するシャドーマスク搬送機構と、を有する成膜装置である。加えて、当該成膜装置は、シャドーマスク搬送機構が、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを移動して、蒸着源が噴出する成膜材料を被成膜体に成膜する成膜モードと、シャドーマスク・ステージが、上部電極側にシャドーマスクを支持した状態で、プラズマ源がシャドーマスクにプラズマを照射するクリーニングモードと、を有する。
【0020】
この成膜装置を用いると、シャドーマスクを用いて、成膜モードで被成膜体に成膜し、使用済みのシャドーマスクを第1の仕切り弁を通って成膜室から除去室に搬出して、クリーニングモードでシャドーマスクに付着した成膜材料を除去できる。さらに、成膜材料が除去されたシャドーマスク(再生されたシャドーマスクともいう)を第2の仕切り弁を通って除去室から成膜室に搬入して、再度使用することができる。その結果、成膜装置からシャドーマスクを取り出すことなく成膜とクリーニングを繰り返すことができ、成膜装置の外でシャドーマスクにゴミ等が付着することがない。また、シャドーマスクに付着した成膜材料から膜状や粉状の物質が発生するのを防ぐことができる。そして、シャドーマスクを用いた成膜と、当該シャドーマスクに付着した成膜材料を除去できる成膜装置を提供できる。
【0021】
また、本発明の一態様は、除去室と、除去室に互いに離れて接続される第1の仕切り弁と第2の仕切り弁と、第1の仕切り弁と第2の仕切り弁と接続される成膜室と、成膜室内に設けられた蒸着源と、除去室内に設けられたプラズマ源と、プラズマ源が照射するプラズマが照射されるようにシャドーマスクを支持するシャドーマスク・ステージと、被成膜体と被成膜体の一部を覆うシャドーマスクを重ね合わせた状態で、蒸着源から成膜材料が噴出する領域を移動するシャドーマスク搬送機構と、を有する成膜装置である。加えて、当該成膜装置は、シャドーマスク搬送機構が、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを移動して、蒸着源が噴出する成膜材料を被成膜体に成膜する成膜モードと、シャドーマスク・ステージが、上部電極側にシャドーマスクを支持した状態で、プラズマ源がシャドーマスクにプラズマを照射するクリーニングモードと、を有する。さらに、シャドーマスクが除去室内を搬送される距離が、当該シャドーマスクが成膜室内を搬送される距離に比べて短い。
【0022】
上記本発明の一態様の成膜装置は、シャドーマスクが除去室内を搬送される距離が、シャドーマスクが成膜室内を搬送される距離に比べて短い。例えば、成膜室がコの字型、U字型、V字型またはS字型等であって、シャドーマスクが屈曲した経路を搬送される。除去室は、互いに離れて設けられ、いずれも成膜室と接続される2つの仕切り弁を備え、成膜室に比べて短いシャドーマスクの搬送経路を有するものである。これにより、成膜装置の占有面積(フットプリントともいう)を抑制することができる。
【0023】
また、本発明の一態様は、シャドーマスク・ステージが、上部電極側に絶縁性の支持部材を備える。そして、当該支持部材がシャドーマスクを上部電極に接するように支持し、その状態で、プラズマ源が前記シャドーマスクにプラズマを照射するクリーニングモードを有する上記の成膜装置である。
【0024】
上記本発明の一態様の成膜装置は、絶縁性の支持部材がシャドーマスクを平行平板型プラズマ源の上部電極に接するように支持した状態で、プラズマ源がプラズマを当該シャドーマスクに照射するクリーニングモードを含んで構成される。これにより、自己バイアス電圧によってイオンが大きく加速される領域にシャドーマスクが配置され、シャドーマスクに付着した成膜材料を除去する速度を高めることができる。
【0025】
また、本発明の一態様は、プラズマを照射している状態で、上部電極とシャドーマスク・ステージが電気的に絶縁され、且つ上部電極から前記下部電極までの距離D1に比べて、前記上部電極と電位が等しい部分から接地されたシャドーマスク・ステージまでの距離D2が短く、D2がD1の0.5倍以下である上記の成膜装置である。
【0026】
上記本発明の一態様の成膜装置は、絶縁性の支持部材がシャドーマスクを平行平板型プラズマ源の上部電極に接するように支持した状態で、プラズマ源がプラズマを当該シャドーマスクに照射するクリーニングモードを含んで構成される。そして、上部電極とシャドーマスク・ステージは電気的に絶縁され、且つ上部電極から下部電極までの距離D1に比べて、上部電極と電位が等しい部分から、接地されたシャドーマスク・ステージまでの距離D2が短い。これにより、上部電極と電位が等しい部分とシャドーマスク・ステージの間での異常放電の発生が抑制され、安定してプラズマを生成できる。
【0027】
また、本発明の一態様は、上部電極が、温度調節機構を備える上記の成膜装置である。
【0028】
上記本発明の一態様の成膜装置は、シャドーマスク・ステージに支持されたシャドーマスクが接する上部電極に、温度調節機構が設けられている。シャドーマスクと上部電極とが接する部分で、互いに熱が伝導するため、温度調節機構を用いてプラズマが照射されるシャドーマスクの温度を管理できる。これにより、温度上昇に伴う寸法の変化など、シャドーマスクの損傷を防ぐことができる。
【0029】
また、本発明の一態様は、複数の除去室を有し、それぞれがシャドーマスク・ステージ、プラズマ源を、独立して備える上記の成膜装置である。
【0030】
上記本発明の一態様の成膜装置は、独立してクリーニングモードを実施できる除去室を複数備える。これにより、複数の除去室において並行してシャドーマスクにプラズマを照射することが可能となる。その結果、複数のシャドーマスクから成膜材料を並行して除去できる。また、被成膜体への連続成膜を中断することなく、プラズマをシャドーマスクに照射する時間を長くできる。
【0031】
また、本発明の一態様は、以下の4つのステップを有する上記の成膜装置を用いた成膜方法である。すなわち、シャドーマスクの開口部に被成膜体を重ね合わせる第1のステップを有する。続いて、シャドーマスク搬送機構を用いて、被成膜体が開口部に重ね合わされた状態のシャドーマスクを移動して、蒸着源が噴出する成膜材料を被成膜体に成膜する第2のステップを有する。続いて、第1の仕切り弁を通してシャドーマスクを除去室に搬出し、シャドーマスク・ステージが、上部電極側にシャドーマスクを支持した状態で、プラズマ源がシャドーマスクにプラズマを照射する第3のステップを有する。続いて、第2の仕切り弁を通してシャドーマスクを成膜室に搬入する第4のステップを有する。
【0032】
上記本発明の一態様の成膜方法は、シャドーマスクを使用して被成膜体に成膜する工程、当該シャドーマスクに付着した蒸着材料を除去して再生する工程を含む。これにより、第2のステップでシャドーマスクに付着した成膜材料を、第3のステップで除去できる。そして、第3のステップで再生されたシャドーマスクを再び第1のステップに適用することで、シャドーマスクを繰り返して利用できる。その結果、シャドーマスクを用いた成膜方法と、当該シャドーマスクに付着した成膜材料を除去する方法を提供できる。
【0033】
また、本発明の一態様は、連結室と、連結室に被成膜体を供給する搬入室と、連結室に一方の開口部が接続される成膜室と、成膜室の他方の開口部が接続される受渡室と、受渡室から被成膜体を回収する搬出室と、受渡室に一方の開口部が接続される除去室と、シャドーマスク搬送機構と、を備える処理ユニットを、複数有する成膜装置である。
【0034】
そして、一の処理ユニットの連結室は、環状に他の処理ユニットの除去室の他方の開口部と接続されている。また、連結室は、搬入室から供給される被成膜体を、他の処理ユニットの除去室の他方の開口部から供給されるシャドーマスクに重ね合わせて成膜室に供給する第1のモードと、他の処理ユニットの除去室の他方の開口部から供給される、被成膜体が重ね合わされたシャドーマスクを成膜室に供給する第2のモードと、を備える。
【0035】
そして、成膜室は、蒸着源を備える。また、シャドーマスク搬送機構は、蒸着源から成膜材料が噴出する領域を、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを搬送する。
【0036】
そして、受渡室は、被成膜体を搬出室に、シャドーマスクを除去室に、それぞれ供給する第1のモードと、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを除去室に供給する第2のモードと、を備える。
【0037】
そして、除去室は、洗浄機構、洗浄機構がシャドーマスクを洗浄し、シャドーマスクを一の処理ユニットの連結室に供給する第1のモードおよび被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを一の処理ユニットの連結室に供給する第2のモードと、を備える。
【0038】
上記本発明の一態様の成膜装置は、連結室と、連結室に被成膜体を供給する搬入室と、連結室に一方の開口部が接続される成膜室と、成膜室の他方の開口部が接続される受渡室と、受渡室から被成膜体を回収する搬出室と、受渡室に一方の開口部が接続される除去室と、を備える処理ユニットを、複数有するものである。そして、一の処理ユニットの連結室は、環状に他の処理ユニットの除去室の他方の開口部と接続されている。
【0039】
そして、一の処理ユニットの連結室と、当該連結室に除去室が接続される他の処理ユニットの受渡室を第1のモードで運転し、それ以外の連結室並びに受渡室を全て第2のモードで運転することができる。これにより、当該成膜装置に設けられた全ての成膜室を用いて、成膜材料を第1のモードの連結室に供給される一の被成膜体に積層して成膜し、他の処理ユニットの第1のモードの受渡室に接続される搬出室が、被成膜体を回収できる。
【0040】
また、当該連結室に接続される他の処理ユニットの除去室を第1のモードで運転することができる。これにより、シャドーマスクに付着した成膜材料を除去できる。
【0041】
また、全ての処理ユニットの連結室、受渡室並びに除去室を第1のモードで運転できる。これにより、当該成膜装置に設けられた複数の成膜室において、並行して成膜材料を複数の被成膜体に成膜できる。また、複数の除去室において、並行してシャドーマスクに付着した成膜材料を除去できる。その結果、連続して多数の膜を積層することができるように設けられた成膜室の稼働率の低下を抑制しながらも、連続して成膜可能な膜の数を柔軟に変えることができる成膜装置を提供できる。
【0042】
また、本発明の一態様は、第1の処理ユニットと第2の処理ユニットと、を有する成膜装置である。
【0043】
そして、第1の処理ユニットは、第1の連結室と、第1の連結室に被成膜体を供給する第1の搬入室と、第1の連結室に一方の開口部が接続される第1の成膜室と、第1の成膜室の他方の開口部が接続される第1の受渡室と、第1の受渡室から被成膜体を回収する第1の搬出室と、第1の受渡室に一方の開口部が接続される第1の除去室と、第1のシャドーマスク搬送機構と、を備える。
【0044】
そして、第2の処理ユニットは、第2の連結室と、第2の連結室に被成膜体を供給する第2の搬入室と、第2の連結室に一方の開口部が接続される第2の成膜室と、第2の成膜室の他方の開口部が接続される第2の受渡室と、第2の受渡室から被成膜体を回収する第2の搬出室と、第2の受渡室に一方の開口部が接続される第2の除去室と、第2のシャドーマスク搬送機構と、を備える。
【0045】
そして、第1の処理ユニットの第1の連結室は、第2の処理ユニットの第2の除去室の他方の開口部と接続され、第2の処理ユニットの第2の連結室は、第1の処理ユニットの第1の除去室の他方の開口部と接続される。
【0046】
そして、第1の連結室は、第1の搬入室から供給される被成膜体を第2の除去室の他方の開口部から供給されるシャドーマスクに重ね合わせて第1の成膜室に供給する第1のモードと、第2の除去室の他方の開口部から供給される、被成膜体が重ね合わされたシャドーマスクを第1の成膜室に供給する第2のモードと、を備える。
【0047】
そして、第2の連結室は、第2の搬入室から供給される被成膜体を第1の除去室の他方の開口部から供給されるシャドーマスクに重ね合わせて第2の成膜室に供給する第1のモードと、第1の除去室の他方の開口部から供給される、被成膜体が重ね合わされたシャドーマスクを第2の成膜室に供給する第2のモードと、を備える。
【0048】
そして、第1の成膜室は、第1の蒸着源を備え、第2の成膜室は、第2の蒸着源を備える。また、第1のシャドーマスク搬送機構は、第1の蒸着源から成膜材料が噴出する領域を、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを搬送し、第2のシャドーマスク搬送機構は、第2の蒸着源から成膜材料が噴出する領域を、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを搬送する。
【0049】
そして、第1の受渡室は、被成膜体を第1の搬出室に、シャドーマスクを第1の除去室に、それぞれ供給する第1のモードと、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを第1の除去室に供給する第2のモードと、を備える。
【0050】
そして、第2の受渡室は、被成膜体を第2の搬出室に、シャドーマスクを第2の除去室に、それぞれ供給する第1のモードと、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを第2の除去室に供給する第2のモードと、を備える。
【0051】
そして、第1の除去室は、第1の洗浄機構並びにシャドーマスクを洗浄し、シャドーマスクを第2の処理ユニットの第2の連結室に供給する第1のモードおよび被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを第2の処理ユニットの第2の連結室に供給する第2のモードと、を備える。
【0052】
そして、第2の除去室は、第2の洗浄機構並びにシャドーマスクを洗浄し、シャドーマスクを第1の処理ユニットの第1の連結室に供給する第1のモードおよび被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを第1の処理ユニットの第1の連結室に供給する第2のモードと、を備える。
【0053】
上記本発明の一態様の成膜装置は、第1の処理ユニットの第1の連結室は、第2の処理ユニットの第2の除去室の他方の開口部と接続されており、第2の処理ユニットの第2の連結室は、第1の処理ユニットの第1の除去室の他方の開口部と接続されている。
【0054】
そして、第1の処理ユニットの第1の連結室と、第2の処理ユニットの第2の受渡室を第1のモードで運転し、第1の受渡室および第2の連結室を第2のモードで運転することができる。これにより、当該成膜装置に設けられた第1の成膜室と第2の成膜室を用いて、第1の蒸着源の成膜材料に重ねて第2の蒸着源の成膜材料を、第1のモードの第1の連結室に搬入される一の被成膜体に成膜できる。そして、第2の処理ユニットの第1のモードの第2の受渡室に接続される第2の搬出室が、当該被成膜体を回収できる。且つ第1のモードの第2の受渡室に接続される第1のモードの第2の除去室において、シャドーマスクに付着した成膜材料を除去できる。
【0055】
また、第1の処理ユニットに設けられた第1の連結室および第1の受渡室並びに第2の処理ユニットに設けられた第2の連結室および第2の受渡室を、全て第1のモードで運転できる。これにより、第1の成膜室と第2の成膜室を用いて、並行して成膜材料を2つの被成膜体に成膜できる。その結果、連続して多数の膜を積層することができるように設けられた成膜室の稼働率の低下を抑制しながらも、連続して成膜可能な膜の数を柔軟に変えることができる成膜装置を提供できる。
【0056】
また、本発明の一態様は、上記の成膜装置を用いて、以下の7つのステップを含む積層膜の作製方法である。
【0057】
なお、上記の成膜装置の第1の処理ユニットが、第1の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、第2の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、第3の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、第4の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、が一方の開口部側から他方の開口部側に向かって順番に設けられる第1の成膜室を備える。
【0058】
また、上記の成膜装置の第2の処理ユニットが、第5の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、第6の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、第7の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、が一方の開口部から他方の開口部に向かって順番に設けられる第2の成膜室を備える。
【0059】
そして、このような成膜装置を用いて、第1のステップにおいて、第1の搬入室から供給される被成膜体を第2の除去室の他方の開口部から供給されるシャドーマスクに重ね合わせて第1の成膜室に供給する。
【0060】
そして、第2のステップにおいて、第1の成膜室を用いて、第1の層、第2の層、第3の層および第4の層をシャドーマスクの開口部に露出する被成膜体にこの順に成膜し、被成膜体を第1の受渡室に供給する。
【0061】
そして、第3のステップにおいて、第2のモードの第1の受渡室が、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを第1の除去室に供給し、第2のモードの第1の除去室が、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを第2の処理ユニットの第2の連結室に供給する。
【0062】
そして、第4のステップにおいて、第2のモードの第2の連結室が、被成膜体が重ね合わされたシャドーマスクを第2の成膜室に供給する。
【0063】
そして、第5のステップにおいて、第2の成膜室を用いて、第5の層、第6の層および第7の層をシャドーマスクの開口部に露出する被成膜体に成膜された第4の層に重ねてこの順に成膜し、被成膜体を第2の受渡室に供給する。
【0064】
そして、第6のステップにおいて、第1のモードの第2の受渡室が、被成膜体を第2の搬出室に、シャドーマスクを第2の除去室に、それぞれ供給する。
【0065】
そして、第7のステップにおいて、第1のモードの第2の除去室が、シャドーマスクを洗浄し、シャドーマスクを第1の処理ユニットの第1の連結室に供給する。
【0066】
上記本発明の一態様の積層膜の作製方法によれば、第1のモードの第1の連結室に供給される一の被成膜体に、当該成膜装置に設けられた第1の成膜室で4つの層を積層し、第2の成膜室を用いて3つの層を積層し、第1のモードの第2の受渡室に接続される第2の搬出室に供給できる。且つ第1のモードの第2の除去室において、シャドーマスクに付着した成膜材料を除去できる。その結果、連続して多数の膜を積層することができる。
【0067】
また、本発明の一態様は、上記の成膜装置を用いて、以下の4つのステップを含む積層膜の作製方法である。
【0068】
なお、上記の成膜装置の第1の処理ユニットが、第1の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、第2の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、第3の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、が一方の開口部側から他方の開口部側に向かって順番に設けられる第1の成膜室を備える。
【0069】
また、上記の成膜装置の第2の処理ユニットが、第1の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、第2の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、第3の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、が一方の開口部から他方の開口部に向かって順番に設けられる第2の成膜室を備える。
【0070】
そして、このような成膜装置を用いて、第1のステップにおいて、第1の搬入室から供給される第1の被成膜体を、第2の除去室の他方の開口部から供給される第1のシャドーマスクに重ね合わせて第1の成膜室に供給する。且つ第2の搬入室から供給される第2の被成膜体を第1の除去室の他方の開口部から供給される第2のシャドーマスクに重ね合わせて第2の成膜室に供給する。
【0071】
そして、第2のステップにおいて、第1の成膜室を用いて、第1の層、第2の層並びに第3の層を第1のシャドーマスクの開口部に露出する第1の被成膜体にこの順に成膜し、第1の受渡室に供給する。且つ第2の成膜室を用いて、第1の層、第2の層並びに第3の層を第2のシャドーマスクの開口部に露出する第2の被成膜体にこの順に成膜し、第2の受渡室に供給する。
【0072】
そして、第3のステップにおいて、第1のモードの第1の受渡室が、第1の被成膜体を第1の搬出室に、第1のシャドーマスクを第1の除去室に、それぞれ供給する。且つ第1のモードの第2の受渡室が、第2の被成膜体を第2の搬出室に、第2のシャドーマスクを第2の除去室に、それぞれ供給する。
【0073】
そして、第4のステップにおいて、第1のモードの第1の除去室が第1のシャドーマスクを洗浄し、第1のシャドーマスクを第2の処理ユニットの第2の連結室に供給する。且つ第1のモードの第2の除去室が第2のシャドーマスクを洗浄し、第2のシャドーマスクを第1の処理ユニットの第1の連結室に供給する。
【0074】
上記本発明の一態様の積層膜の作製方法によれば、当該成膜装置に設けられた第1の成膜室と第2の成膜室を用いて、並行して成膜材料を2つの被成膜体に成膜できる。その結果、連続して多数の膜を積層することができるように設けられた成膜室の稼働率の低下を抑制しながらも、連続して成膜可能な膜の数を柔軟に変えることができる成膜装置を提供できる。
【0075】
また、本発明の一態様は、上記の成膜装置を用いて、以下の10のステップを含む発光素子の作製方法である。
【0076】
なお、上記の成膜装置の第1の処理ユニットが、第1の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、第2の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、第3の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、第4の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、が一方の開口部側から他方の開口部側に向かって順番に設けられる第1の成膜室を備える。
【0077】
また、上記の成膜装置の第2の処理ユニットが、第2の搬出室と接続される第2の導電膜形成室、第2の導電膜形成室と接続される第2の封止室、第2の封止室と接続される第2の取り出し室並びに第5の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、第6の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、第7の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、が一方の開口部から他方の開口部に向かって順番に設けられる第2の成膜室を備える。
【0078】
また、第1の層および第5の層は、正孔輸送性の層または電子輸送性の層の一方であって、第3の層および第7の層は、正孔輸送性の層または電子輸送性の層の他方であって、第2の層および第6の層は、発光性の有機化合物を含む層であって、第4の層は中間層である。
【0079】
そして、このような成膜装置を用いて、第1のステップにおいて、第1の搬入室から供給される、第1の電極を備える被成膜体を第2の除去室の他方の開口部から供給されるシャドーマスクに重ね合わせて第1の成膜室に供給する。
【0080】
そして、第2のステップにおいて、第1の成膜室を用いて、第1の層、第2の層、第3の層および第4の層をシャドーマスクの開口部に露出する被成膜体の第1の電極に重ねてこの順に成膜し、第1の受渡室に供給する。
【0081】
そして、第3のステップにおいて、第2のモードの第1の受渡室が、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを第1の除去室に供給し、第2のモードの第1の除去室が、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを第2の処理ユニットの第2の連結室に供給する。
【0082】
そして、第4のステップにおいて、第2のモードの第2の連結室が、被成膜体が重ね合わされたシャドーマスクを第2の成膜室に供給する。
【0083】
そして、第5のステップにおいて、第2の成膜室を用いて、第5の層、第6の層および第7の層をシャドーマスクの開口部に露出する被成膜体に成膜された第4の層に重ねてこの順に成膜し、被成膜体を第2の受渡室に供給する。
【0084】
そして、第6のステップにおいて、第1のモードの第2の受渡室が、被成膜体を第2の搬出室に、シャドーマスクを第2の除去室に、それぞれ供給する。
【0085】
そして、第7のステップにおいて、第1のモードの第2の除去室が、シャドーマスクを洗浄し、シャドーマスクを第1の処理ユニットの第1の連結室に供給する。
【0086】
そして、第8のステップにおいて、第2の搬出室が、被成膜体を第2の導電膜形成室に供給する。
【0087】
そして、第9のステップにおいて、第2の導電膜形成室を用いて、第2の電極を第7の層に重ねて形成し、被成膜体を第2の導電膜形成室から第2の封止室に供給する。
【0088】
そして、第10のステップにおいて、第2の封止室を用いて、第1の層、第2の層、第3の層、第4の層、第5の層、第6の層、第7の層および第2の電極がこの順に積層された積層膜を被成膜体と封止材の間に封止する。
【0089】
上記本発明の一態様の発光素子の作製方法によれば、第1の成膜室を用いて4つの層を、被成膜体に設けられた第1の電極に重ねて成膜できる。例えば、第1の層として第1の正孔輸送層を、第2の層として第1の発光層を、第3の層として第1の電子輸送層を、第4の層として中間層を、成膜できる。そして、第2の成膜室を用いて3つの層を、第4の層に重ねて成膜できる。例えば、第5の層として第2の正孔輸送層を、第6の層として第2の発光層を、第7の層として第2の電子輸送層を、成膜できる。そして、第1のモードの第2の受渡室が当該被成膜体を第2の搬出室に供給できる。
【0090】
そして、第2の搬出室に接続された第2の導電膜形成室を用いて、第7の層に重ねて第2の電極を形成して発光素子を作製し、第2の導電膜形成室に接続された第2の封止室を用いて、被成膜体と封止材の間に当該発光素子を封止できる。
【0091】
且つ第1のモードの第2の除去室において、シャドーマスクに付着した成膜材料を除去できる。その結果、連続して多数の膜が積層された発光素子の作製方法を提供できる。
【0092】
また、本発明の一態様は、上記の成膜装置を用いて、以下の7つのステップを含む発光素子の作製方法である。
【0093】
なお、上記の成膜装置の第1の処理ユニットが、第1の搬出室と接続される第1の導電膜形成室、第1の導電膜形成室と接続される第1の封止室、第1の封止室と接続される第1の取り出し室並びに第1の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、第2の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、第3の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、が一方の開口部側から他方の開口部側に向かって順番に設けられている、第1の成膜室を備える。
【0094】
また、上記の成膜装置の第2の処理ユニットが、第2の搬出室と接続される第2の導電膜形成室、第2の導電膜形成室と接続される第2の封止室、第2の封止室と接続される第2の取り出し室並びに第1の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、第2の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、第3の層を成膜するための材料を含む蒸着源と、が一方の開口部側から他方の開口部側に向かって順番に設けられる第2の成膜室を備える。
【0095】
また、第1の層は、正孔輸送性の層または電子輸送性の層の一方であって、第3の層は、正孔輸送性の層または電子輸送性の層の他方であって、第2の層は、発光性の有機化合物を含む層である。
【0096】
そして、このような成膜装置を用いて、第1のステップにおいて、第1の搬入室から供給される第1の電極を備える第1の被成膜体を、第2の除去室の他方の開口部から供給される第1のシャドーマスクに重ね合わせて第1の成膜室に供給する。且つ第2の搬入室から供給される第1の電極を備える第2の被成膜体を第1の除去室の他方の開口部から供給される第2のシャドーマスクに重ね合わせて第2の成膜室に供給する。
【0097】
そして、第2のステップにおいて、第1の成膜室において、第1の層、第2の層並びに第3の層を第1のシャドーマスクの開口部に露出する第1の被成膜体の第1の電極にこの順に成膜し、第1の受渡室に供給する。且つ第2の成膜室において、第1の層、第2の層並びに第3の層を第2のシャドーマスクの開口部に露出する第2の被成膜体の第1の電極にこの順に成膜し、第2の受渡室に供給する。
【0098】
そして、第3のステップにおいて、第1のモードの第1の受渡室が、第1の被成膜体を第1の搬出室に、第1のシャドーマスクを第1の除去室に、それぞれ供給する。且つ第1のモードの第2の受渡室が、第2の被成膜体を第2の搬出室に、第2のシャドーマスクを第2の除去室に、それぞれ供給する。
【0099】
そして、第4のステップにおいて、第1のモードの第1の除去室が、第1のシャドーマスクを洗浄し、第1のシャドーマスクを第2の処理ユニットの第2の連結室に供給する。且つ第1のモードの第2の除去室が、第2のシャドーマスクを洗浄し、第2のシャドーマスクを第1の処理ユニットの第1の連結室に供給する。
【0100】
そして、第5のステップにおいて、第1の搬出室が、第1の被成膜体を第1の導電膜形成室に供給し、第2の搬出室が、第2の被成膜体を第2の導電膜形成室に供給する。
【0101】
そして、第6のステップにおいて、第1の導電膜形成室を用いて、第2の電極を第1の被成膜体の第3の層に重ねて形成し、第1の被成膜体を第1の導電膜形成室から第1の封止室に供給する。且つ第2の導電膜形成室を用いて、第2の電極を第2の被成膜体の第3の層に重ねて形成し、第2の被成膜体を第2の導電膜形成室から第2の封止室に供給する。
【0102】
そして、第7のステップにおいて、第1の封止室を用いて、第1の層、第2の層、第3の層、および第2の電極がこの順に積層された積層膜を第1の被成膜体と封止材の間に封止し、且つ第2の封止室を用いて、第1の層、第2の層、第3の層、および第2の電極がこの順に積層された積層膜を第2の被成膜体と封止材の間に封止する。
【0103】
上記本発明の一態様の発光素子の作製方法によれば、第1の成膜室と第2の成膜室において、並行して3つの層を、被成膜体に設けられた第1の電極に重ねて成膜できる。例えば、第1の層として正孔輸送層、第2の層として発光層、第3の層として電子輸送層を成膜できる。そして、第1のモードの受渡室が当該被成膜体をそれぞれに接続された搬出室に供給できる。
【0104】
そして、搬出室に接続された導電膜形成室を用いて、第3の層に重ねて第2の電極を形成して発光素子を作製し、導電膜形成室に接続された封止室を用いて発光素子を作製し、導電膜形成室に接続された封止室を用いて、被成膜体と封止材の間に当該発光素子を封止できる。
【0105】
且つ第1のモードの除去室において、シャドーマスクに付着した成膜材料を除去できる。その結果、連続して多数の膜を積層することができるように設けられた成膜室の稼働率の低下を抑制しながらも、連続して膜が積層された発光素子の作製方法を提供できる。
【0106】
なお、本明細書において、EL層とは発光素子の一対の電極間に設けられた層を示すものとする。従って、電極間に挟まれた発光物質である有機化合物を含む発光層はEL層の一態様である。
【0107】
また、本明細書において、物質Aを他の物質Bからなるマトリクス中に分散する場合、マトリクスを構成する物質Bをホスト材料と呼び、マトリクス中に分散される物質Aをゲスト材料と呼ぶものとする。なお、物質A並びに物質Bは、それぞれ単一の物質であっても良いし、2種類以上の物質の混合物であっても良いものとする。
【0108】
なお、本明細書中において、発光装置とは画像表示デバイスもしくは光源(照明装置含む)を指す。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(Flexible printed circuit)もしくはTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュールやTCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、または発光素子が形成された基板にCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含むものとする。
【発明の効果】
【0109】
本発明の一態様によれば、シャドーマスクを用いた成膜と、当該シャドーマスクに付着した成膜材料を除去できる成膜装置を提供できる。または、シャドーマスクを用いた成膜方法と、当該シャドーマスクに付着した成膜材料を除去する方法を提供できる。
【0110】
本発明の一態様によれば、成膜装置に設けられた成膜室または成膜領域の稼働率の低下を抑制しながらも、連続して積層する膜の数を柔軟に変えることができる成膜装置を提供できる。または、連続して積層する膜の数を柔軟に変えることができる積層膜の作製方法を提供できる。または、発光素子の作製方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0112】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。
【0113】
(実施の形態1)
本実施の形態では、本発明の一態様の成膜装置の構成について、
図1および
図2を参照して説明する。
図1は本発明の一態様の成膜装置の構造の上面図であり、
図2は
図1の切断線A−Bにおける断面を含む成膜装置の構造の側面図である。
【0114】
本実施の形態で例示して説明する成膜装置200は、除去室250と成膜室203を有する。除去室250と成膜室203の間には、第1の仕切り弁221と第2の仕切り弁222が互いに離れて設けられ、いずれも除去室250と成膜室203を接続している。その結果、除去室250と成膜室203の一方から他方にシャドーマスクの搬入と搬出を可能にしている。
【0115】
成膜装置200は、シャドーマスク搬送機構を備える。シャドーマスク搬送機構は、成膜室203と除去室250でシャドーマスクを搬送する。本実施の形態で例示するシャドーマスク搬送機構は、ロボット41a(41b〜41d)を含む。
【0116】
成膜室203内は、蒸着源31a(31b〜31h)を備える。本実施の形態で例示する蒸着源31aは、いずれも線状に成膜材料を噴出するリニアソース型の蒸着源であり、その上方を横切る被成膜体に成膜できる。
【0117】
除去室250内には、平行平板型のプラズマ源52が設けられている。プラズマ源52は、上部電極52bと下部電極52aを備え、その間にはシャドーマスク・ステージ45が設けられている(
図2(A)参照)。なお、シャドーマスク・ステージ45が、金属等の導電性の支持部材45aを含む場合、絶縁性の支持部材45bを上部電極52b側に設ける(
図2(B)参照)。
【0118】
本実施の形態では、基板を被成膜体11aとする(
図1参照)。図中の矢印Fは、シャドーマスク搬送機構が、成膜室203の中を被成膜体11aと被成膜体11aの一部を覆うシャドーマスク15aを重ね合わせた状態で搬送する軌跡を示すものであり、矢印Rは、シャドーマスク搬送機構が、除去室250の中を成膜材料が付着したシャドーマスク15bを搬送する軌跡を示すものである。なお、ロボット41cおよびロボット41dが、それぞれ成膜材料が付着したシャドーマスク15bと成膜材料が除去されたシャドーマスク15cを搬送する。
【0119】
また、成膜装置200は、シャドーマスク搬送機構が、被成膜体11aが重ね合わされた状態のシャドーマスク15aを移動して、蒸着源31a等が噴出する成膜材料を被成膜体11aに成膜する成膜モードを有する。なお、被成膜体11bは蒸着源31a乃至蒸着源31dが噴出する成膜材料が成膜された被成膜体11aであり、被成膜体11cは蒸着源31e乃至蒸着源31hが噴出する成膜材料が成膜された被成膜体11bである。
【0120】
また、成膜装置200は、シャドーマスク・ステージが、上部電極52b側にシャドーマスクを支持した状態で、プラズマ源52がシャドーマスクにプラズマを照射するクリーニングモードを有する。
【0121】
なお、成膜室は複数の部分に分かれていても良い。遮蔽板等を用いて、成膜室を複数の部分に分けると、隣接する蒸着源から噴出する成膜材料が意図せず混合してしまう現象を防ぐことができる。遮蔽板は、仕切り弁であってもよいが、隣接する蒸着源から噴出する成膜材料から被成膜体を遮蔽するものであればよい。また、成膜室を複数の部分に分ける場合、機能が異なる膜をそれぞれの部分で成膜するように、成膜室を分けるとよい。例えば、発光性の有機化合物を含む層を成膜する場合、発光色が異なる発光性の有機化合物を含む層毎に成膜室を分けると、それぞれの発光性の有機化合物を意図した強度で発光させることができる。または、キャリア(電子または正孔)の輸送性が異なる層毎に成膜室を分けると、それぞれの層のキャリアの移動度を意図した程度に調整できる。
【0122】
また、成膜室203に、シャドーマスクを待機させる部分を設けると、成膜モードからクリーニングモードへの移行またはクリーニングモードから成膜モードへの移行が容易になる。具体的には、再生されたシャドーマスクを除去室250から成膜室203の待機させる部分に搬出しておくと、次の使用済みのシャドーマスクを直ちに除去室250に搬入できる。本実施の形態で例示する成膜装置200のロボット41cおよびロボット41dが、シャドーマスクの待機場所として機能する。
【0123】
本実施の形態で例示する成膜装置200は、被成膜体に成膜する部分として、蒸着源31a〜31dが設けられた部分と、蒸着源31e〜31hが設けられた部分と、を有する。また、当該2つの部分を接続する部分として、ロボット41aと41bが設けられた部分を有する。そして、ロボット41cが設けられた部分と、ロボット41dが設けられた部分は、成膜室203と除去室250を接続する。
【0124】
成膜室203は排気機構55を備える。本実施の形態で例示する成膜装置200は、複数の部分に分かれているため、それぞれの部分に排気機構55が設けられている。
【0125】
なお、除去室250には、排気機構55、ガス導入機構54並びに高周波電源53が接続されている(
図2参照)。
【0126】
高周波電源53は上部電極52bと電気的に接続されている。絶縁部材52cは、除去室250の壁から上部電極52bを電気的に絶縁している。シャドーマスク15は、マスクフレーム15fに固定されている。マスクフレーム15fは、シャドーマスク・ステージ45に設置されている。
【0127】
排気機構55は、除去室250の内部を排気し、プラズマを発生する際の除去室250内部の圧力を調整するものである。
【0128】
ガス導入機構54は、特定のガスを、流量を調整しながら除去室250に導入するものである。除去室250内にガスを均一に導入するために、シャワー板を用いてもよい。なお、本実施の形態では、平行平板型のプラズマ源52の下部電極52aが、ガスの導入のためのシャワー板を兼ねている。
【0129】
本実施の形態で例示する成膜装置200を用いると、成膜室203に搬入されたシャドーマスク15aに重ね合わせた被成膜体11aに、成膜モードで成膜できる。そして、使用済みのシャドーマスク15bを、第2の仕切り弁222を通して成膜室203から除去室250に搬出して、シャドーマスク15bに付着した成膜材料を、クリーニングモードで除去できる。その結果、シャドーマスクを成膜装置から取り出すことなく成膜とクリーニングを繰り返すことができ、シャドーマスクへの膜状や粉状の物質の付着を防ぐことができる。そして、再生されたシャドーマスクを用いた成膜と、使用済みのシャドーマスクに付着した成膜材料を除去できる成膜装置を提供できる。
【0130】
本実施の形態で例示する成膜装置200は、シャドーマスクが除去室250内を搬送される距離が、シャドーマスクが成膜室203内を搬送される距離に比べて短い。成膜室203がコの字型(U字型ともいえる)であり、シャドーマスクが屈曲した経路を搬送される。除去室250は、互いに離れて設けられた第1の仕切り弁221と第2の仕切り弁222を備え、成膜室203に比べてシャドーマスクの搬送経路が短い。これにより、成膜装置の占有面積(フットプリントともいう)を抑制することができる。
【0131】
本発明の一態様の成膜装置の構成はこれに限定されず、
図3に例示するさまざまな構成が考えられる。なお、シャドーマスクが成膜室203内を搬送される経路を実線で、除去室250内を搬送される経路を破線で示す。いずれの構成も、成膜装置の占有面積を抑制する効果を奏する。
【0132】
図3(A)に示す成膜装置は、U字型の成膜室203と除去室250を有する。この構成によれば、成膜室203で使用されたシャドーマスクを除去室250で再生し、再び成膜室203で使用できる。
【0133】
図3(B)に示す成膜装置は、W字型の成膜室203と除去室250を有する。この構成によれば、成膜室203で使用されたシャドーマスクを除去室250で再生し、再び成膜室203で使用できる。
【0134】
図3(C)および
図3(D)に示す成膜装置は、U字型の第1の成膜室203aと第1の除去室250aが接続され、U字型の第2の成膜室203bと第2の除去室250bが接続され、第1の成膜室203aと第2の成膜室203bが接続されている。この構成によれば、第1の成膜室203aで使用された第1のシャドーマスクを第1の除去室250aで再生し、再び第1の成膜室203aで使用できる。さらに、第1の成膜室203aで成膜された膜に重ねて、第2の成膜室203bで第2のシャドーマスクを用いて成膜できる。そして、第2の成膜室203bで使用された第2のシャドーマスクを第2の除去室250bで再生し、再び第2の成膜室203bで使用できる。
【0135】
<変形例>
本実施の形態で例示して説明する成膜装置200の除去室の構成の変形例について、
図2(B)を用いて説明する。
【0136】
本実施の形態の変形例で説明する成膜装置のシャドーマスク・ステージ45は、接地された支持部材45aと、上部電極52b側に絶縁性の支持部材45bを備える。そして、支持部材45bが、シャドーマスク15を上部電極52bに接するように支持した状態で、プラズマ源がシャドーマスクにプラズマを照射するクリーニングモードを有する成膜装置である。
【0137】
これにより、自己バイアス電圧によってイオンが大きく加速される領域にシャドーマスク15が配置され、シャドーマスク15に付着した成膜材料を除去する速度を高めることができる。
【0138】
また、プラズマを照射している状態で、上部電極52bとシャドーマスク・ステージ45が電気的に絶縁され、且つ上部電極52bから下部電極52aまでの距離D1に比べて、上部電極52bと電位が等しい部分から接地されたシャドーマスク・ステージ45までの距離D2が短い。特に、D2がD1の0.5倍以下、0より大きいと好ましい(
図2(B)左側参照)。
【0139】
これにより、上部電極52bと電位が等しい部分とシャドーマスク・ステージ45の間での異常放電の発生が抑制され、安定してプラズマを生成できる。
【0140】
また、上部電極52bとシャドーマスク・ステージ45の間に空間が形成される場合、当該空間に絶縁性の部材を配置すると、異常放電を防ぐことができる。例えば、絶縁性の支持部材45bを当該空間に延在するように配置してもよい(
図2(B)右側参照)。
【0141】
なお、シャドーマスク15が接する上部電極52bに、温度調節機構を設けてもよい。シャドーマスク15と上部電極52bとが接する部分で、熱が伝導する。温度調節機構を用いて温度が調整された上部電極52bを、プラズマが照射されるシャドーマスク15に接することで、シャドーマスク15の温度を管理できる。これにより、温度上昇に伴う寸法の変化など、シャドーマスク15の損傷を防ぐことができる。
【0142】
以下に、本発明の一態様の成膜装置を構成する個々の要素について説明する。
【0143】
<排気機構・ガス導入機構>
本実施の形態で例示する成膜装置200は、成膜室203の内部の圧力を制御する排気機構55と、除去室250の内部の圧力を制御する排気機構55と、除去室250の内部の雰囲気を調整するガス導入機構54を備える。
【0144】
各排気機構55には、例えばターボポンプ、クライオポンプ等を適用できる。除去室250の排気機構55は、除去室250の圧力を調整する自動圧力制御機器を備える。
【0145】
ガス導入機構54にはマスフローメータ等を適用できる。なお、除去室250に導入するガスは高純度であることが好ましく、意図しない不純物の含有量が1ppm以下であると好ましい。
【0146】
<シャドーマスク搬送機構>
シャドーマスク搬送機構は、成膜に用いられる前のシャドーマスク15aを、成膜室203の内部で搬送する第1の搬送動作(矢印F)と、成膜に用いられた後のシャドーマスク15bを、除去室250の内部で搬送する第2の搬送動作(矢印R)を行う。
【0147】
シャドーマスク搬送機構は、例えば、蒸着源を挟んで並行して進行するように一対の無限軌道を設け、シャドーマスクの支持部材を当該無限軌道に固定して、シャドーマスクを蒸着源の上方を通過するように搬送する方法など、さまざまな方法を適用できる。
【0148】
シャドーマスク搬送機構は、第1の搬送動作において、蒸着源が成膜材料を噴出する方向にシャドーマスクをかざしながら、シャドーマスクと蒸着源の距離を一定に保って、シャドーマスクを搬送する。
【0149】
シャドーマスク搬送機構は、第2の搬送動作において、第1の仕切り弁221を通って、成膜室203から除去室250のシャドーマスク・ステージにシャドーマスクを搬送し、第2の仕切り弁222を通って、除去室250のシャドーマスク・ステージから成膜室203にシャドーマスクを搬送する。
【0150】
<仕切り弁>
第1の仕切り弁221と第2の仕切り弁222は、プラズマ源52がプラズマを照射している間、プラズマ源52から成膜室203を隔離するものであればよい。プラズマを用いてシャドーマスクに付着した成膜材料を除去する間、成膜室203の圧力が上昇するのを防ぐ構成、または、成膜室203がプラズマに曝されて気化した物質によって汚染されるのを防ぐ構成であればよい。
【0151】
<蒸着源>
蒸着源31a(31b〜31h)は、成膜材料を噴出するものであればよく、噴出する方向に指向性があるものが、材料を効率よく利用できるため好ましい。
【0152】
蒸着源31a(31b〜31h)としては、リニアソース型の蒸着源の他、例えばポイントソース型の蒸着源や、ポイントソースを直線状、またはマトリクス状に並べた蒸着源、スリット状の間隙から気化した成膜材料を噴出するもの等をその例に挙げることができる。
【0153】
また、蒸着源31a(31b〜31h)を移動可能とし、走査しながら成膜する方法を組み合わせても良い。
【0154】
<プラズマ源>
プラズマ源52は、平行平板型のプラズマ源である。
【0155】
プラズマに用いるガスは、成膜材料とシャドーマスクの材質に応じて選択すればよく、例えば希ガス(アルゴン、キセノン、ヘリウム等)、還元性ガス(水素等)、酸化性ガス(酸素等)、ハロゲン化物ガス(四フッ化炭素等)またはこれらを適宜混合したガスを用いることができる。
【0156】
また、プラズマとは別に線状レーザをアシスト的に用いて、シャドーマスクに付着した有機物を燃焼させ、それによってシャドーマスクより分離された有機物をプラズマにより除去する方式をとってもよい。
【0157】
なお、離れた位置で生成されたプラズマを、プラズマの照射領域に供給する構成(リモートプラズマソース)を適用することもできる。この場合、例えばホローカソード型とすることもできる。
【0158】
<シャドーマスク>
本発明の一態様の成膜装置には、さまざまなシャドーマスクを用いることができる。例えば、開口部が設けられた薄板または箔を、剛直な枠(マスクフレームともいう)に張ったものが用いることができる。
【0159】
剛直な枠には、熱膨張率の小さい金属、セラミックス等が用いられ、例えばニッケル合金やステンレスなどを用いることができる。また、開口部が設けられた薄板または箔には、熱膨張率の小さい金属が用いられ、例えばエッチング法を用いて開口部が設けられたニッケルを含む金属板や、電鋳法を用いて形成された金属箔などをその例に挙げることができる。
【0160】
本発明の一態様の成膜装置が備える除去室は、シャドーマスクに付着した成膜材料を除去できる。特に、精細な開口部(例えば、直径または一辺が1μm以上500μm以下)が設けられたシャドーマスクを損傷することなく、付着した成膜材料を除去できる。
【0161】
次に、上記の成膜装置を用いた成膜方法およびシャドーマスクに付着した成膜材料を除去する方法について説明する。
【0162】
<成膜装置を用いた成膜方法およびシャドーマスクに付着した成膜材料を除去する方法>
本実施の形態で例示して説明する成膜方法およびシャドーマスクに付着した成膜材料を除去する方法は、4つのステップを有する。
【0163】
第1のステップは、シャドーマスク15aの開口部に被成膜体11aを重ね合わせる(
図1参照)。シャドーマスク15aと、被成膜体11aにアライメントマーカを設けると、シャドーマスク15aの上に被成膜体11aを重ね合わせる位置を調整することができる。
【0164】
第2のステップは、シャドーマスク搬送機構を用いて、被成膜体11aが開口部に重ね合わされた状態のシャドーマスク15aを移動して、蒸着源31a(31b〜31h)が上方に向けて噴出する成膜材料を、下方から被成膜体11aに成膜する。
【0165】
第3のステップは、第2のステップで使用されたシャドーマスクを、第1の仕切り弁221を通して除去室250に搬出する。そして、シャドーマスク・ステージ45が上部電極52b側に支持する使用済みのシャドーマスクに、プラズマ源52を用いてプラズマを照射する(
図2参照)。
【0166】
第4のステップは、第2の仕切り弁222を通して、第3のステップで成膜材料が除去されたシャドーマスクを成膜室203に搬入する。
【0167】
上記の方法は、シャドーマスクを使用して被成膜体に成膜する工程、当該シャドーマスクに付着した蒸着材料を除去して再生する工程を含む。これにより、第2のステップでシャドーマスクに付着した成膜材料を、第3のステップで除去できる。そして、第3のステップで再生されたシャドーマスクを再び第1のステップに適用することで、シャドーマスクを繰り返して利用できる。その結果、シャドーマスクを用いた成膜方法と、当該シャドーマスクに付着した成膜材料を除去する方法を提供できる。
【0168】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0169】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の成膜装置の構成について、
図4を参照して説明する。
図4(A)は本発明の一態様の成膜装置の構成を模式的に示すブロック図であり、
図4(B)は
図4(A)の成膜装置とシャドーマスクを用いて、複数の被成膜体を連続して成膜し、使用されたシャドーマスクを連続して再生する方法について説明する図である。
【0170】
本実施の形態で説明する成膜装置は、第1の除去室250_1と、第2の除去室250_2を備える(
図4(A)参照)。それぞれの除去室は、図示されていないシャドーマスク・ステージ、プラズマ源を独立して備える。
【0171】
これにより、複数の除去室は並行してシャドーマスクにプラズマを照射することが可能となるため、複数のシャドーマスクから成膜材料を並行して除去できる。また、被成膜体への連続成膜を中断することなく、プラズマをシャドーマスクに照射する時間を長くできる。
【0172】
例えば、1つの成膜室と1つの除去室を備える成膜装置において、中断することなく複数の被成膜体を連続して成膜するには、成膜時間以内に除去を終える必要がある。従って、除去速度は成膜速度以上であることを要する。
【0173】
一方、1つの成膜室とn(nは自然数)個の除去室を備える成膜装置において、被成膜体への連続成膜を中断することなく行うには、成膜時間のn倍以内に除去を終えればよい。従って、除去速度は成膜速度の1/n以上であればよい。なお、除去室へのガスの導入、圧力調整並びに排気に時間を要する場合は、さらに短時間に除去を終える必要がある。その場合は、除去室を増設すればよい。
【0174】
なお、
図4(A)には、第1のシャドーマスク15_1、第2のシャドーマスク15_2および第3のシャドーマスク15_3並びに連続して成膜する被成膜体の一の被成膜体1が図示されている。
【0175】
複数の除去室を備える成膜装置を用いる連続成膜方法について説明する。具体的には、1つの成膜室および2つの除去室を備える成膜装置並びに3つのシャドーマスクを用いて、被成膜体を連続成膜する方法について
図4(B)を用いて説明する。なお、
図4(B)に記した1〜8の符号は、成膜装置で順番に成膜される被成膜体を指し示す。
【0176】
<被成膜体の連続成膜方法>
本実施の形態で例示して説明する成膜方法およびシャドーマスクに付着した成膜材料を除去する方法は、7つのステップを有する。被成膜体として基板を用いる場合を
図4に示す。なお、図中の第1の基板は第1の成膜体、第2の基板は第2の成膜体、第3の基板は第3の成膜体、と読み替えることができる
【0177】
第1のステップは、第1のシャドーマスク15_1を用いて、成膜室203で第1の被成膜体に成膜する。
【0178】
第2のステップは、再生されたシャドーマスクを除去室から成膜室203に搬入し、それを用いて被成膜体に成膜する。例えば、第2のシャドーマスク15_2を第1の除去室250_1から搬入し、第2のシャドーマスク15_2を用いて、第2の被成膜体に成膜する。
【0179】
第3のステップは、使用済みの第1のシャドーマスク15_1を除去室に搬出し、成膜材料を除去する。例えば、第1の除去室250_1に搬出して、再生を行う。
【0180】
第4のステップは、再生されたシャドーマスクを除去室から成膜室203に搬入し、それを用いて被成膜体に成膜する。例えば、第3のシャドーマスク15_3を第2の除去室250_2から搬入し、第3のシャドーマスク15_3を用いて、第3の被成膜体に成膜する。
【0181】
第5のステップは、使用済みの第2のシャドーマスク15_2を除去室に搬出し、成膜材料を除去する。例えば、第2の除去室250_2に搬出して、再生を行う。
【0182】
第6のステップは、再生されたシャドーマスクを除去室から成膜室203に搬入する。
【0183】
第7のステップは、使用済みの第3のシャドーマスク15_3を除去室に搬出し、成膜材料を除去する。例えば、第1の除去室250_1に搬出して、再生を行う。ここで、連続して成膜を続ける場合は、第6のステップで成膜室203に搬入したシャドーマスクを用いて再び第1のステップに進み、被成膜体に成膜する。例えば、第1のシャドーマスク15_1を第1の除去室250_1から搬入し、第1のシャドーマスク15_1を用いて、第4の被成膜体に成膜する。
【0184】
以上の工程を繰り返すことで、被成膜体への連続成膜を中断することなく、プラズマをシャドーマスクに照射する時間を長くできる。
【0185】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0186】
(実施の形態3)
本実施の形態では、表示パネルの作製に適用可能な本発明の一態様の成膜装置の構成の一例について説明する。本実施の形態で例示して説明する成膜装置の構成を
図5に示す。なお、シャドーマスクが成膜室内を搬送される経路を実線で、除去室内を搬送される経路を破線で示す。
【0187】
<成膜装置の構成例1.>
図5(A)に示す成膜装置200Wは、発光素子の作製に適用可能な成膜装置である。
【0188】
成膜装置200Wは、第1の成膜室203W、第1の除去室250W、第2の成膜室203C、第2の除去室250C、被成膜体の搬入室211並びに搬出室212を有する。搬入室211は、被成膜体を成膜装置200Wに搬入するためのものであり、搬出室212は成膜材料が成膜された被成膜体を、成膜装置200Wから搬出するためのものである。
【0189】
なお、搬出室212に封止部を設けても良く、成膜材料層が封止された状態の被成膜体が、成膜装置から取り出されるように構成してもよい。
【0190】
また、アライメント部204Wは、被成膜体と第1のシャドーマスクの位置あわせを行う部分であり、アライメント部204Cは、被成膜体と第2のシャドーマスクの位置あわせを行う部分である。
【0191】
成膜装置200Wを用いて、白色を呈する光を発する発光素子を作製する方法について説明する。白色を呈する発光素子としては、実施の形態10で説明する発光素子の構成例3.をその例に挙げることができる。
【0192】
被成膜体として、第1の電極と、第1の電極と電気的に接続される第1の端子と、後に形成される第2の電極と電気的に接続される第2の端子が形成された基板を使用できる。例えば、第1の電極がマトリクス状に設けられていてもよく、それぞれの第1の電極がトランジスタと電気的に接続されたアクティブマトリクス基板であってもよい。
【0193】
第1のシャドーマスクを用いて第1の成膜室203Wにおいて、第1の電極上に発光性の有機化合物を含む層を形成する。第1の成膜室203Wは、複数の領域または複数の部屋に分かれていても良く、それぞれの領域または部屋で成膜された膜を重ねて、発光性の有機化合物を含む層を形成する。なお、使用後の第1のシャドーマスクには、発光性の有機化合物を含む層に用いた成膜材料が付着する。
【0194】
使用後の第1のシャドーマスクに付着した成膜材料は、第1の除去室250Wで除去される。
【0195】
第1のシャドーマスクを搬送する距離を比較すると、搬送しながら成膜を行う第1の成膜室203Wの内部を搬送する距離より、第1の除去室250Wの内部を搬送する距離が短くなる。その結果、第1のシャドーマスクを屈曲して搬送する構成とすることで、成膜装置の占有面積を抑制する効果を奏する。
【0196】
第2のシャドーマスクを用いて第2の成膜室203Cにおいて、発光性の有機化合物を含む層に重ねて第2の電極を成膜する。第2の成膜室203Cは、1または2以上の領域に分かれていてもよく、単層または積層された構造を有する第2の電極を形成する。なお、第2のシャドーマスクは発光素子の第2の電極を形成するための開口部が設けられている。なお、第2の電極をその形状で形成することにより、第2の電極は第2の端子と電気的に接続される。
【0197】
使用後の第2のシャドーマスクに付着した成膜材料は、第2の除去室250Cで除去される。ここで、第2の電極に用いる材料を除去するプラズマが、シャドーマスクをエッチングしてしまうと、シャドーマスクを損傷する。シャドーマスクの材料をエッチングし難いガスを選択して用いる。
【0198】
本実施の形態で例示する成膜装置200Wを用いると、例えば実施の形態12に例示する表示パネルを作製できる。具体的には、白色を呈する光を発する発光素子に重ねて、カラーフィルタが設けられた表示パネルを作製できる。なお、カラーフィルタを設ける位置は、被成膜体の第1の電極より基板側であっても、第2の電極より封止基板側であってもよい。
【0199】
<成膜装置の構成例2.>
図5(B)に示す成膜装置200RGBは、発光素子の作製に適用可能な成膜装置である。
【0200】
成膜装置200RGBは、第1の成膜室203H、第1の除去室250H、第2の成膜室203B、第2の除去室250B、第3の成膜室203G、第3の除去室250G、第4の成膜室203R、第4の除去室250R、第5の成膜室203E、第5の除去室250E、第6の成膜室203C、第6の除去室250C、被成膜体の搬入室211並びに搬出室212を有する。搬入室211は、被成膜体を成膜装置200RGBに搬入するためのものであり、搬出室212は成膜材料が成膜された被成膜体を、成膜装置200RGBから搬出するためのものである。
【0201】
なお、搬出室212に封止部を設けても良く、成膜材料層が封止された状態の被成膜体が、成膜装置から取り出されるように構成してもよい。
【0202】
なお、アライメント部204Hは被成膜体と第1のシャドーマスクの位置あわせを行う部分である。アライメント部204Bは被成膜体と第2のシャドーマスクの位置あわせを行う部分である。アライメント部204Gは被成膜体と第3のシャドーマスクの位置あわせを行う部分である。アライメント部204Rは被成膜体と第4のシャドーマスクの位置あわせを行う部分である。アライメント部204Eは被成膜体と第5のシャドーマスクの位置あわせを行う部分である。アライメント部204Cは被成膜体と第6のシャドーマスクの位置あわせを行う部分である。
【0203】
成膜装置200RGBを用いて、発光色が異なる発光素子を同一基板上に形成する方法について説明する。発光素子の構成の一例としては、実施の形態10で説明する発光素子の構成例1.をその例に挙げることができる。
【0204】
具体的には、同一の被成膜体上に青色を呈する光を発する発光素子と、緑色を呈する光を発する発光素子と、赤色を呈する光を発する発光素子を含む三種類の発光素子を作製する方法について説明する。
【0205】
被成膜体として、青色を呈する光を発する発光素子の第1の電極、緑色を呈する光を発する発光素子の第1の電極および赤色を呈する光を発する発光素子の第1の電極並びにそれぞれの第1の電極と電気的に接続する第1の端子並びに後に形成される第2の電極と電気的に接続される第2の端子が形成された基板を使用できる。例えば、第1の電極がマトリクス状に設けられていてもよく、それぞれの第1の電極がトランジスタと電気的に接続されたアクティブマトリクス基板であってもよい。
【0206】
第1のシャドーマスクを用いて第1の成膜室203Hにおいて、第1の電極上に一方のキャリア(例えば正孔)を輸送する有機化合物を含む層を形成する。第1の成膜室203Hは、複数の領域または複数の部屋に分かれていても良く、それぞれの領域または部屋で成膜された膜を重ねて、一方のキャリアを輸送する有機化合物を含む層を形成する。なお、使用後の第1のシャドーマスクには、一方のキャリアを輸送する有機化合物を含む層に用いた成膜材料が付着する。
【0207】
使用後の第1のシャドーマスクに付着した成膜材料は、第1の除去室250Hで除去される。
【0208】
第1のシャドーマスクを搬送する距離を比較すると、搬送しながら成膜を行う第1の成膜室203Hの内部を搬送する距離より、第1の除去室250Hの内部を搬送する距離が短くなる。その結果、第1のシャドーマスクを屈曲して搬送する構成とすることで、成膜装置の占有面積を抑制する効果を奏する。
【0209】
アライメント部204Bで、第2のシャドーマスクの開口部が、被成膜体の青色を呈する発光素子の第1の電極に重なるように互いを重ねる。次いで、第2のシャドーマスクを用いて第2の成膜室203Bにおいて、一方のキャリアを輸送する有機化合物を含む層の上に青色を呈する光を発する発光性の有機化合物を含む層を形成する。なお、使用後の第2のシャドーマスクには、青色を呈する光を発する発光性の有機化合物を含む層に用いた成膜材料が付着する。
【0210】
使用後の第2のシャドーマスクに付着した成膜材料は、第2の除去室250Bで除去される。
【0211】
アライメント部204Gで、第3のシャドーマスクの開口部が、被成膜体の緑色を呈する発光素子の第1の電極に重なるように互いを重ねる。次いで、第3のシャドーマスクを用いて第3の成膜室203Gにおいて、一方のキャリアを輸送する有機化合物を含む層の上に緑色を呈する光を発する発光性の有機化合物を含む層を形成する。なお、使用後の第3のシャドーマスクには、緑色を呈する光を発する発光性の有機化合物を含む層に用いた成膜材料が付着する。
【0212】
使用後の第3のシャドーマスクに付着した成膜材料は、第3の除去室250Gで除去される。
【0213】
アライメント部204Rで、第4のシャドーマスクの開口部が、被成膜体の赤色を呈する発光素子の第1の電極に重なるように互いを重ねる。次いで、第4のシャドーマスクを用いて第4の成膜室203Rにおいて、一方のキャリアを輸送する有機化合物を含む層の上に赤色を呈する光を発する発光性の有機化合物を含む層を形成する。なお、使用後の第4のシャドーマスクには、赤色を呈する光を発する発光性の有機化合物を含む層に用いた成膜材料が付着する。
【0214】
使用後の第4のシャドーマスクに付着した成膜材料は、第4の除去室250Rで除去される。
【0215】
なお、第2の成膜室203B、第3の成膜室203Gおよび第4の成膜室203Rは、いずれも複数の領域または複数の部屋に分かれていても良い。
【0216】
第5のシャドーマスクを用いて第5の成膜室203Eにおいて、青色を呈する光を発する発光性の有機化合物を含む層、緑色を呈する光を発する発光性の有機化合物を含む層、赤色を呈する光を発する発光性の有機化合物を含む層に重ねて、他方のキャリアを輸送する有機化合物を含む層を形成する。第5の成膜室203Eは、複数の領域または複数の部屋に分かれていても良く、それぞれの領域または部屋で成膜された膜を重ねて、他方のキャリアを輸送する有機化合物を含む層を形成する。なお、使用後の第5のシャドーマスクには、他方のキャリアを輸送する有機化合物を含む層に用いた成膜材料が付着する。
【0217】
使用後の第5のシャドーマスクに付着した成膜材料は、第5の除去室250Eで除去される。
【0218】
第5のシャドーマスクを搬送する距離を比較すると、搬送しながら成膜を行う第5の成膜室203Eの内部を搬送する距離より、第5の除去室250Eの内部を搬送する距離が短くなる。その結果、第5のシャドーマスクを屈曲して搬送する構成とすることで、成膜装置の占有面積を抑制する効果を奏する。
【0219】
第6のシャドーマスクを用いて第6の成膜室203Cにおいて、他方のキャリアを輸送する有機化合物を含む層に重ねて第2の電極を成膜する。第6の成膜室203Cは、1または2以上の領域に分かれていてもよく、単層または積層構造を有する第2の電極を形成する。なお、第6のシャドーマスクは発光素子の第2の電極を形成するための開口部が設けられている。なお、第2の電極をその形状で形成することにより、第2の電極は第2の端子と電気的に接続される。
【0220】
使用後の第6のシャドーマスクに付着した成膜材料は、第6の除去室250Cで除去される。ここで、第2の電極に用いる材料を除去するプラズマが、シャドーマスクをエッチングしてしまうと、シャドーマスクを損傷する。シャドーマスクの材料をエッチングし難いガスを選択して用いる。
【0221】
本実施の形態で例示する成膜装置の構成例2を用いると、例えば実施の形態12に例示する表示パネルを作製できる。具体的には、アクティブマトリクス基板上に青色を呈する光を発する画素と、緑色を呈する光を発する画素と、赤色を呈する光を発する画素を含む表示パネルを作製できる。なお、表示パネルは表示を第1の電極側にするものであっても、第2の電極側にするものであってもよい。
【0222】
また、本実施の形態で例示した成膜装置は、表示パネルだけでなく、照明装置などに適用可能な発光装置の作製にも適用できる。
【0223】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0224】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の成膜装置の構成について、
図6および
図7を参照して説明する。
図6(A)および
図6(B)は本発明の一態様の成膜装置を構成する第1の処理ユニット110の上面図であり、
図7(A)および
図7(B)は、本発明の一態様の成膜装置100の上面図である。
【0225】
本実施の形態に例示して説明する成膜装置100は、連結室111Aおよび受渡室111Bを備える第1の処理ユニット110、連結室121Aおよび受渡室121Bを備える第2の処理ユニット120および連結室131Aおよび受渡室131Bを備える第3の処理ユニット130を有する(
図7参照)。
【0226】
第1の処理ユニット110は、連結室111Aと、連結室111Aに被成膜体を供給する搬入室112と、連結室111Aに一方の開口部が接続される成膜室114と、成膜室114の他方の開口部が接続される受渡室111Bと、受渡室111Bから被成膜体を回収する搬出室113と、受渡室111Bに一方の開口部が接続される除去室115と、図示されていないシャドーマスク搬送機構と、を備える(
図6参照)。
【0227】
第2の処理ユニット120および第3の処理ユニット130は、いずれも第1の処理ユニット110と同様の構成を備える。
【0228】
第1の処理ユニット110の連結室111Aは、第3の処理ユニット130の除去室135の他方の開口部と接続され、第2の処理ユニット120の連結室121Aは、第1の処理ユニット110の除去室115の他方の開口部と接続され、第3の処理ユニット130の連結室131Aは、第2の処理ユニット120の除去室125の他方の開口部と接続される(
図7参照)。
【0229】
連結室は、第1のモードと第2のモードを備える。
図6(A)に示す連結室111Aの第1のモード(図にM1と記す)は、搬入室112から供給される被成膜体(実線の矢印で示す)を、他の処理ユニットの除去室(例えば第3の処理ユニット130の除去室135)の他方の開口部から供給されるシャドーマスク(破線の矢印で示す)に重ね合わせて成膜室114に供給するモードである。
【0230】
図6(B)に示す連結室111Aの第2のモード(図にM2と記す)は、他の処理ユニットの除去室の他方の開口部から供給される、被成膜体が重ね合わされたシャドーマスク(実線と破線の矢印で示す)を成膜室114に供給するモードである。
【0231】
成膜室は、図示されていない蒸着源を備える。
【0232】
図示されていないシャドーマスク搬送機構は、蒸着源が成膜材料を噴出する領域を通るように、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを搬送し、蒸着源は、シャドーマスクの開口部に露出する被成膜体に成膜材料を成膜する。
【0233】
受渡室は、第1のモードと第2のモードを備える。
図6(A)に示す受渡室111Bの第1のモード(図にM1と記す)は、被成膜体(実線の矢印で示す)を搬出室113に、シャドーマスク(破線の矢印で示す)を除去室115に、それぞれ供給するモードである。
【0234】
図6(B)に示す受渡室111Bの第2のモード(図にM2と記す)は、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスク(実線と破線の矢印で示す)を除去室115に供給するモードである。
【0235】
除去室は、洗浄機構並びに第1のモードおよび第2のモードを備える。第1のモードは、洗浄機構がシャドーマスクを洗浄し、シャドーマスクを他の処理ユニットの連結室に供給するモードである。除去室の第2のモードは、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを他の処理ユニットの連結室に供給するモードである。
【0236】
例えば、本実施の形態で例示する成膜装置100は、第1の処理ユニット110の連結室111Aと、第3の処理ユニット130の受渡室131Bを第1のモードで運転し、それ以外の連結室並びに受渡室を全て第2のモードで運転することができる(
図7(A)参照)。
【0237】
これにより、被成膜体を搬入室112から第1の処理ユニット110に供給し、成膜装置100に設けられた全ての成膜室を経由して、第3の処理ユニット130の搬出室133に供給できる。そして、成膜装置100に設けられた全ての成膜室を用いて、被成膜体に連続して成膜できる。(被成膜体の軌跡を
図7(A)に実線の矢印で示す。)
【0238】
なお、連結室111Aに接続される第3の処理ユニット130の除去室135を第1のモードで運転することができる。これにより、シャドーマスクに付着した成膜材料を除去できる。(シャドーマスクの軌跡を
図7(A)に破線の矢印で示す。)
【0239】
また、例えば、本実施の形態で例示する成膜装置100は、全ての処理ユニットの連結室、受渡室並びに除去室を第1のモードで運転できる(
図7(B)参照)。
【0240】
これにより、成膜装置100に設けられた複数の成膜室において、並行して成膜材料を複数の被成膜体に成膜できる。
【0241】
なお、成膜装置100に設けられた複数の除去室において、並行してシャドーマスクに付着した成膜材料を除去できる。
【0242】
以上のように、連続して多数の膜を積層することができるように設けられた成膜室の稼働率の低下を抑制しながらも、連続して成膜可能な膜の数を柔軟に変えることができる成膜装置を提供できる。
【0243】
<変形例1.>
本実施の形態で例示する成膜装置の変形例について、
図8を参照して説明する。
図8(A)は本発明の一態様の成膜装置を構成する第1の処理ユニット110の構成を模式的に示す図であり、
図8(B)および
図8(C)は処理ユニットを2つ接続して、成膜装置を構成した例である。また、
図8(D)は処理ユニットを4つ接続して、成膜装置を構成した例である。このように、接続する処理ユニットの数は、積層する膜の数に応じて変えることができる。
【0244】
本実施の形態の変形例に例示して説明する成膜装置は(
図8(B)、
図8(C)および
図8(D)参照)、いずれも連結室と、連結室に被成膜体を供給する搬入室と、連結室に一方の開口部が接続される成膜室と、成膜室の他方の開口部が接続される受渡室と、受渡室から被成膜体を回収する搬出室と、受渡室に一方の開口部が接続される除去室と、を備える処理ユニットを、複数有するものである。そして、一の処理ユニットの連結室は、環状に他の処理ユニットの除去室の他方の開口部と接続されている。
【0245】
そして、一の処理ユニットの連結室と、当該連結室に除去室が接続される他の処理ユニットの受渡室を第1のモードで運転し、それ以外の連結室並びに受渡室を全て第2のモードで運転することができる(
図8(B)参照)。これにより、当該成膜装置に設けられた全ての成膜室を用いて、成膜材料を一の被成膜体に積層して成膜し、他の処理ユニットの第1のモードの受渡室に接続される搬出室が、被成膜体を回収できる。
【0246】
また、当該連結室に接続される他の処理ユニットの除去室を第1のモードで運転することができる。これにより、シャドーマスクに付着した成膜材料を除去できる。
【0247】
また、全ての処理ユニットの連結室、受渡室並びに除去室を第1のモードで運転できる(
図8(C)参照)。これにより、当該成膜装置に設けられた複数の成膜室を用いて、並行して成膜材料を複数の被成膜体に成膜できる。また、複数の除去室において、並行してシャドーマスクに付着した成膜材料を除去できる。その結果、連続して多数の膜を積層することができるように設けられた成膜室の稼働率の低下を抑制しながらも、連続して成膜可能な膜の数を柔軟に変えることができる成膜装置を提供できる。
【0248】
以下に、本発明の一態様の成膜装置を構成する個々の要素について説明する。
【0249】
《連結室、受渡室》
連結室は、搬入室と、成膜室と、他の処理ユニットの除去室と、を接続し、その間における被成膜体とシャドーマスクの移動を可能にする。また、搬入室から供給される被成膜体を、他の処理ユニットから供給されるシャドーマスクに重ねる。連結室は、被成膜体とシャドーマスクの位置あわせ機構を備えるとよい。
【0250】
受渡室は、搬出室と、成膜室と、除去室と、を接続し、その間における被成膜体とシャドーマスクの移動を可能にする。
【0251】
《蒸着源》
蒸着源は、成膜材料を噴出するものであればよく、噴出する方向に指向性があるものが材料を効率よく利用できるため好ましい。
【0252】
蒸着源としては、リニアソース型の蒸着源の他、例えばポイントソース型の蒸着源や、ポイントソースを直線状、またはマトリクス状に並べた蒸着源、スリット状の間隙から気化した成膜材料を噴出するもの等をその例に挙げることができる。
【0253】
また、蒸着源を移動可能とし、走査しながら成膜する方法を組み合わせても良い。
【0254】
《シャドーマスク》
本発明の一態様の成膜装置には、さまざまなシャドーマスクを用いることができる。例えば、開口部が設けられた薄板または箔を、剛直な枠(マスクフレームともいう)に張ったものが用いることができる。
【0255】
剛直な枠には、熱膨張率の小さい金属、セラミックス等が用いられ、例えばニッケル合金やステンレスなどを用いることができる。また、開口部が設けられた薄板または箔には、熱膨張率の小さい金属が用いられ、例えばエッチング法を用いて開口部が設けられたニッケルを含む金属板や、電鋳法を用いて形成された金属箔などをその例に挙げることができる。
【0256】
《シャドーマスク搬送機構》
シャドーマスク搬送機構は、シャドーマスクを、処理ユニットの内部で搬送する。
【0257】
シャドーマスク搬送機構は、例えば、蒸着源を挟んで並行して進行するように一対の無限軌道を設け、シャドーマスクの支持部材を当該無限軌道に固定して、シャドーマスクを蒸着源の上方を通過するように搬送する方法など、さまざまな方法を適用できる。
【0258】
シャドーマスク搬送機構は、一方の面に被成膜体が重ねられたシャドーマスクの他方の面を、蒸着源が成膜材料を噴出する方向にかざしながら、シャドーマスクと蒸着源の距離を一定に保って、当該シャドーマスクを搬送する。
【0259】
《除去室》
除去室は洗浄機構を備え、シャドーマスクに付着した成膜材料を除去できる。特に、精細な開口部(例えば、直径または一辺が1μm以上500μm以下)が設けられたシャドーマスクを損傷することなく、付着した成膜材料を除去できる。
【0260】
洗浄機構としては、例えばプラズマ源を用いることができる。プラズマ源から、プラズマをシャドーマスクに付着した成膜材料に照射して、当該成膜材料を除去できる。成膜材料はプラズマと反応し、気化されて、除去室から排気される。
【0261】
《プラズマ源》
洗浄機構に用いるプラズマ源は、平行平板型のプラズマ源の他、さまざまなプラズマ源を適用できる。
【0262】
なお、離れた位置で生成されたプラズマを、プラズマの照射領域に供給する構成(リモートプラズマソース)を適用することもできる。この場合、例えばホローカソード型とすることもできる。
【0263】
プラズマに用いるガスは、成膜材料とシャドーマスクの材質に応じて選択すればよく、例えば希ガス(アルゴン、キセノン、ヘリウム等)、還元性ガス(水素等)、酸化性ガス(酸素等)、ハロゲン化物ガス(四フッ化炭素等)またはこれらを適宜混合したガスを用いることができる。
【0264】
また、プラズマとは別に線状レーザをアシスト的に用いて、シャドーマスクに付着した有機物を燃焼させ、それによってシャドーマスクより分離された有機物をプラズマにより除去する方式をとってもよい。
【0265】
《排気機構・ガス導入機構》
除去室の洗浄機構がプラズマ源を用いる場合は、除去室は、内部の圧力を制御する排気機構と、内部の雰囲気を調整するガス導入機構を備える。
【0266】
排気機構には、例えばターボポンプ、クライオポンプ等を適用できる。除去室の圧力を調整する自動圧力制御機器を設けることができる。
【0267】
ガス導入機構にはマスフローメータ等を適用できる。なお、除去室に導入するガスは高純度であることが好ましく、意図しない不純物の含有量が1ppm以下であると好ましい。
【0268】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0269】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の成膜装置の構成について、
図9を参照して説明する。
図9(A)および
図9(B)は本発明の一態様の成膜装置を構成する第1の処理ユニット110の上面図であり、
図9(C)および
図9(D)は、本発明の一態様の成膜装置100Bの上面図である。
【0270】
本実施の形態で例示して説明する成膜装置100Bは、第1の処理ユニット110および第2の処理ユニット120を有する(
図9(C)参照)。
【0271】
第1の処理ユニット110は、第1の連結室111Aと、第1の連結室111Aに被成膜体を供給する第1の搬入室112と、第1の連結室111Aに一方の開口部が接続される第1の成膜室114と、第1の成膜室114の他方の開口部が接続される第1の受渡室111Bと、第1の受渡室111Bから被成膜体を回収する第1の搬出室113と、第1の受渡室111Bに一方の開口部が接続される第1の除去室115と、図示されていない第1のシャドーマスク搬送機構とを備える。
【0272】
第2の処理ユニット120は、第2の連結室121Aと、第2の連結室121Aに被成膜体を供給する第2の搬入室122と、第2の連結室121Aに一方の開口部が接続される第2の成膜室124と、第2の成膜室124の他方の開口部が接続される第2の受渡室121Bと、第2の受渡室121Bから被成膜体を回収する第2の搬出室123と、第2の受渡室121Bに一方の開口部が接続される第2の除去室125と、図示されていない第2のシャドーマスク搬送機構とを備える。
【0273】
第1の処理ユニット110の第1の連結室111Aは、第2の処理ユニット120の第2の除去室125の他方の開口部と接続される。
【0274】
第2の処理ユニット120の第2の連結室121Aは、第1の処理ユニット110の第1の除去室115の他方の開口部と接続される。
【0275】
第1の連結室111Aは、第1の搬入室112から供給される被成膜体を第2の除去室125の他方の開口部から供給されるシャドーマスクに重ね合わせて第1の成膜室114に供給する第1のモードと、第2の除去室125の他方の開口部から供給される、被成膜体が重ね合わされたシャドーマスクを第1の成膜室114に供給する第2のモードと、を備える。
【0276】
第2の連結室121Aは、第2の搬入室122から供給される被成膜体を第1の除去室115の他方の開口部から供給されるシャドーマスクに重ね合わせて第2の成膜室124に供給する第1のモードと、第1の除去室115の他方の開口部から供給される、被成膜体が重ね合わされたシャドーマスクを第2の成膜室124に供給する第2のモードと、を備える。
【0277】
第1の成膜室114は、図示されていない第1の蒸着源を備える。
【0278】
第2の成膜室124は、図示されていない第2の蒸着源を備える。
【0279】
図示されていない第1のシャドーマスク搬送機構は、第1の蒸着源から成膜材料が噴出する領域を、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを搬送し、同様に図示されていない第2のシャドーマスク搬送機構は、第2の蒸着源から成膜材料が噴出する領域を、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを搬送する。
【0280】
第1の受渡室111Bは、被成膜体を第1の搬出室113に、シャドーマスクを第1の除去室115に、それぞれ供給する第1のモードと、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを第1の除去室115に供給する第2のモードと、を備える。
【0281】
第2の受渡室121Bは、被成膜体を第2の搬出室123に、シャドーマスクを第2の除去室125に、それぞれ供給する第1のモードと、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを第2の除去室125に供給する第2のモードと、を備える。
【0282】
第1の除去室115は、第1の洗浄機構と、シャドーマスクを洗浄し、シャドーマスクを第2の処理ユニット120の第2の連結室121Aに供給する第1のモードと、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを第2の処理ユニット120の第2の連結室121Aに供給する第2のモードと、を備える。
【0283】
第2の除去室125は、第2の洗浄機構と、シャドーマスクを洗浄し、シャドーマスクを第1の処理ユニット110の第1の連結室111Aに供給する第1のモードと、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを第1の処理ユニット110の第1の連結室111Aに供給する第2のモードと、を備える。
【0284】
次に、本発明の一態様の成膜装置の動作について説明する。
【0285】
上記本発明の一態様の成膜装置100Bは、第1の処理ユニット110の第1の連結室111Aは、第2の処理ユニット120の第2の除去室125の他方の開口部と接続されており、第2の処理ユニット120の第2の連結室121Aは、第1の処理ユニット110の第1の除去室115の他方の開口部と接続されている。
【0286】
<動作例1>
第1の処理ユニット110の第1の連結室111Aと、第2の処理ユニット120の第2の受渡室121Bを第1のモードで運転し、第1の受渡室111Bおよび第2の連結室121Aを第2のモードで運転することができる(
図9(C)参照)。
【0287】
これにより、成膜装置100Bに設けられた第1の成膜室114と第2の成膜室124を用いて、第1の蒸着源の成膜材料に重ねて第2の蒸着源の成膜材料を、第1のモードの第1の連結室111Aに搬入される一の被成膜体に成膜できる。そして、第2の処理ユニット120の第1のモードの第2の受渡室121Bに接続される第2の搬出室123が、当該被成膜体を回収できる。且つ第1のモードの第2の受渡室121Bに接続される第1のモードの第2の除去室125において、シャドーマスクに付着した成膜材料を除去できる。
【0288】
<動作例2>
また、第1の処理ユニット110に設けられた第1の連結室111Aおよび第1の受渡室111B並びに第2の処理ユニット120に設けられた第2の連結室121Aおよび第2の受渡室121Bを、全て第1のモードで運転できる(
図9(D)参照)。
【0289】
これにより、第1の成膜室114と、第2の成膜室124を用いて、並行して成膜材料を2つの被成膜体に成膜できる。その結果、連続して多数の膜を積層することができるように設けられた成膜室の稼働率の低下を抑制しながらも、連続して成膜可能な膜の数を柔軟に変えることができる成膜装置を提供できる。
【0290】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0291】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態5において説明する本発明の一態様の成膜装置を用いた積層膜の作製方法について、
図10(A)を参照して説明する。
【0292】
具体的には、2つの処理ユニットを備える成膜装置を用いて、一方の処理ユニットに設けられた成膜室で成膜する成膜材料の層に重ねて、他方の処理ユニットに設けられた成膜室で成膜する成膜材料の層を成膜する方法について、説明する。
【0293】
本発明の一態様の成膜装置100Cを
図10(A)に示す。成膜装置100Cは、実施の形態5において例示して説明する成膜装置と同様に、第1の処理ユニット110と第2の処理ユニット120を有する。
【0294】
第1の処理ユニット110には、第1の層を成膜するための材料を含む蒸着源31と、第2の層を成膜するための材料を含む蒸着源32と、第3の層を成膜するための材料を含む蒸着源33と、第4の層を成膜するための材料を含む蒸着源34と、が一方の開口部側から他方の開口部側に向かって順番に、第1の成膜室114に設けられている。
【0295】
前記第2の処理ユニット120には、第5の層を成膜するための材料を含む蒸着源35と、第6の層を成膜するための材料を含む蒸着源36と、第7の層を成膜するための材料を含む蒸着源37と、が一方の開口部から他方の開口部に向かって順番に、第2の成膜室124に設けられている。
【0296】
成膜装置100Cを用いて、一の被成膜体に7つの層を、7つのステップで積層する成膜方法について、以下に説明する。なお、被成膜体が搬送される軌跡を実線の矢印で、シャドーマスクが搬送される軌跡を破線の矢印で図中に示す。
【0297】
<第1のステップ>
上記の構成を備える成膜装置100Cを用いて、第1の搬入室112から供給される被成膜体を、第2の除去室125の他方の開口部から供給されるシャドーマスクに重ね合わせて、第1の成膜室114に供給する。
【0298】
<第2のステップ>
第1の成膜室114を用いて、被成膜体上に蒸着源31から噴出する成膜材料を含む第1の層、蒸着源32から噴出する成膜材料を含む第2の層、蒸着源33から噴出する成膜材料を含む第3の層および蒸着源34から噴出する成膜材料を含む第4の層をシャドーマスクの開口部に露出する被成膜体にこの順に成膜し、被成膜体を前記第1の受渡室111Bに供給する。
【0299】
<第3のステップ>
第2のモードの第1の受渡室111Bが、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを第1の除去室115に供給し、第2のモードの第1の除去室115が、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを前記第2の処理ユニット120の第2の連結室121Aに供給する。
【0300】
<第4のステップ>
第2のモードの第2の連結室121Aが、被成膜体が重ね合わされたシャドーマスクを第2の成膜室124に供給する。
【0301】
<第5のステップ>
第2の成膜室124を用いて、蒸着源35から噴出する成膜材料を含む第5の層、蒸着源36から噴出する成膜材料を含む第6の層および蒸着源37から噴出する成膜材料を含む第7の層を、シャドーマスクの開口部に露出する被成膜体に成膜された第4の層に重ねてこの順に成膜し、被成膜体を第2の受渡室121Bに供給する。
【0302】
<第6のステップ>
第1のモードの第2の受渡室121Bが、被成膜体を第2の搬出室123に、シャドーマスクを第2の除去室125に、それぞれ供給する。
【0303】
<第7のステップ>
第1のモードの第2の除去室125が、シャドーマスクを洗浄し、シャドーマスクを第1の処理ユニット110の第1の連結室111Aに供給する。
【0304】
上記本発明の一態様の積層膜の作製方法によれば、第1のモードの第1の連結室111Aに供給される一の被成膜体に、成膜装置100Cに設けられた第1の成膜室114で4つの層を積層できる。そして、4つの層に重ねて、第2の成膜室124を用いて3つの層を成膜できる。そして、第1のモードの第2の受渡室121Bに接続される第2の搬出室123に供給できる。且つ第1のモードの第2の除去室125を用いて、シャドーマスクに付着した成膜材料を除去できる。その結果、連続して多数の膜を積層することができる。
【0305】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0306】
(実施の形態7)
本実施の形態では、実施の形態5において説明する本発明の一態様の成膜装置を用いた積層膜の作製方法について、
図10(B)を参照して説明する。
【0307】
具体的には、2つの処理ユニットを備える成膜装置を用いて、一方の処理ユニットに設けられた成膜室で成膜材料を一の被成膜体に成膜する。またこれに並行して、他方の処理ユニットに設けられた成膜室で成膜材料を他の被成膜体に成膜する方法について、説明する。
【0308】
本発明の一態様の成膜装置100Dを
図10(B)に示す。成膜装置100Dは、実施の形態5において例示して説明する成膜装置と同様に、第1の処理ユニット110と第2の処理ユニット120を有する。
【0309】
第1の処理ユニット110には、第1の層を成膜するための材料を含む蒸着源31と、第2の層を成膜するための材料を含む蒸着源32と、第3の層を成膜するための材料を含む蒸着源33と、が一方の開口部側から他方の開口部側に向かって順番に、第1の成膜室114に設けられている。
【0310】
第2の処理ユニット120には、第1の層を成膜するための材料を含む蒸着源31と、第2の層を成膜するための材料を含む蒸着源32と、第3の層を成膜するための材料を含む蒸着源33と、が前記一方の開口部から前記他方の開口部に向かって順番に、第2の成膜室124に設けられている。
【0311】
<第1のステップ>
上記の構成を備える成膜装置の第1のモードの第1の連結室111Aが、第1の搬入室112から供給される第1の被成膜体を、第2の除去室125の他方の開口部から供給される第1のシャドーマスクに重ね合わせて第1の成膜室114に供給する。また、第1のモードの第2の連結室121Aが、第2の搬入室122から供給される第2の被成膜体を第1の除去室115の他方の開口部から供給される第2のシャドーマスクに重ね合わせて第2の成膜室124に供給する。
【0312】
<第2のステップ>
第1の成膜室114を用いて、被成膜体上に蒸着源31から噴出する成膜材料を含む第1の層、蒸着源32から噴出する成膜材料を含む第2の層並びに蒸着源33から噴出する成膜材料を含む前記第3の層を第1のシャドーマスクの開口部に露出する第1の被成膜体にこの順に成膜し、第1の受渡室111Bに供給する。
【0313】
また、第2の成膜室124を用いて、被成膜体上に蒸着源31から噴出する成膜材料を含む第1の層、蒸着源32から噴出する成膜材料を含む第2の層並びに蒸着源33から噴出する成膜材料を含む前記第3の層を第2のシャドーマスクの開口部に露出する第2の被成膜体にこの順に成膜し、第2の受渡室121Bに供給する。
【0314】
<第3のステップ>
第1のモードの第1の受渡室111Bが、第1の被成膜体を第1の搬出室113に、第1のシャドーマスクを第1の除去室115に、それぞれ供給する。また、第1のモードの第2の受渡室121Bが、第2の被成膜体を第2の搬出室123に、第2のシャドーマスクを第2の除去室125に、それぞれ供給する。
【0315】
<第4のステップ>
第1のモードの第1の除去室115が、第1のシャドーマスクを洗浄し、第1のシャドーマスクを第2の処理ユニット120の第2の連結室121Aに供給する。また、第1のモードの第2の除去室125が、第2のシャドーマスクを洗浄し、第2のシャドーマスクを第1の処理ユニット110の第1の連結室111Aに供給する。
【0316】
上記本発明の一態様の積層膜の作製方法によれば、成膜装置100Dに設けられた第1の成膜室114と第2の成膜室124を用いて、並行して成膜材料を2つの被成膜体に成膜できる。その結果、連続して多数の膜を積層することができるように設けられた成膜室の稼働率の低下を抑制しながらも、連続して成膜可能な膜の数を柔軟に変えることができる成膜装置を提供できる。
【0317】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0318】
(実施の形態8)
本実施の形態では、実施の形態5において説明する本発明の一態様の成膜装置を用いた発光素子の作製方法について、
図11(A)および
図12を参照して説明する。
【0319】
具体的には、2つの処理ユニットを備える成膜装置を用いて、一方の処理ユニットに設けられた成膜室で成膜する成膜材料の層に重ねて、他方の処理ユニットに設けられた成膜室で成膜する成膜材料の層を成膜して、実施の形態10の発光素子の構成例3に例示される構成の発光素子を作製する方法について、説明する。
【0320】
<成膜装置の構成>
はじめに、本実施の形態で例示する発光素子の作製方法に適用できる成膜装置100Eの構成ついて、
図11(A)を参照して説明する。
【0321】
本発明の一態様の成膜装置100Eを
図11(A)に示す。成膜装置100Eは、実施の形態5において例示して説明する成膜装置と同様に、第1の処理ユニット110と第2の処理ユニット120を有する。
【0322】
第1の処理ユニット110は、第1の連結室111Aと、第1の連結室111Aに被成膜体を供給する第1の搬入室112と、第1の連結室111Aに一方の開口部が接続される第1の成膜室114と、第1の成膜室114の他方の開口部が接続される第1の受渡室111Bと、第1の受渡室111Bから被成膜体を回収する第1の搬出室113と、第1の受渡室111Bに一方の開口部が接続される第1の除去室115と、を有する。
【0323】
また、第1の処理ユニット110は、第1の層を成膜するための材料を含む蒸着源31と、第2の層を成膜するための材料を含む蒸着源32と、第3の層を成膜するための材料を含む蒸着源33と、第4の層を成膜するための材料を含む蒸着源34と、が一方の開口部側から他方の開口部側に向かって順番に、設けられる第1の成膜室114を備える。
【0324】
第2の処理ユニット120は、第2の連結室121Aと、第2の連結室121Aに被成膜体を供給する第2の搬入室122と、第2の連結室121Aに一方の開口部が接続される第2の成膜室124と、第2の成膜室124の他方の開口部が接続される第2の受渡室121Bと、第2の受渡室121Bから被成膜体を回収する第2の搬出室123と、第2の受渡室121Bに一方の開口部が接続される第2の除去室125と、を有する。
【0325】
また、第2の処理ユニット120は、第2の搬出室123と接続される第2の導電膜形成室126、第2の導電膜形成室126と接続される第2の封止室127、第2の封止室127と接続される第2の取り出し室128を備える。
【0326】
また、第2の処理ユニット120は、第5の層を成膜するための材料を含む蒸着源35と、第6の層を成膜するための材料を含む蒸着源36と、第7の層を成膜するための材料を含む蒸着源37と、が一方の開口部から他方の開口部に向かって順番に設けられる第2の成膜室124を備える。
【0327】
第2の導電膜形成室126は、発光素子の第2の電極を形成するための材料を含む蒸着源を備え、第2の搬出室123に接続される。
【0328】
第2の封止室127は、第1の成膜室114、第2の成膜室124および第2の導電膜形成室126で成膜された膜を被成膜体と封止材の間に封止する。
【0329】
第2の取り出し室128は、発光素子を成膜装置から取り出すためにある。
【0330】
なお、第1の層および第5の層は、正孔輸送性の層または電子輸送性の層の一方であって、第3の層および第7の層は、正孔輸送性の層または電子輸送性の層の他方である。第2の層および第6の層は、発光性の有機化合物を含む層である。第4の層は中間層である。
【0331】
以下に、本実施の形態で例示する成膜装置100Eの詳細な構成を、
図12を参照して説明する。
図12は、成膜装置100Eの一部の詳細を説明するための上面図であり、第1の処理ユニット110の一部と、第2の処理ユニット120の一部が図示されている。
【0332】
《第1の成膜室》
第1の成膜室114は、第1の層を成膜するための材料を含む蒸着源31と、第2の層を成膜するための材料を含む蒸着源32と、第3の層を成膜するための材料を含む蒸着源33と、第4の層を成膜するための材料を含む蒸着源34と、が一方の開口部側から他方の開口部側に向かって順番に、設けられている。なお、排気機構38が、第1の成膜室114に接続されている。排気機構38には、例えばターボポンプ、クライオポンプ等を適用できる。
【0333】
なお、第1の成膜室114は、成膜領域21、成膜領域22、成膜領域23、成膜領域24に分かれている。また、成膜領域22は、成膜領域22a、成膜領域22bおよび成膜領域22cに分かれている。各成膜領域において、そこに設けられた蒸着源が噴出する成膜材料が、被成膜体に成膜される。一方の成膜領域に設けられた蒸着源から噴出する成膜材料が、他方の成膜領域おいて被成膜体に成膜されないように、隣接する成膜領域の間には隔壁が設けられている。なお、被成膜体11aが重ねられた状態のシャドーマスク15aが、図示されている。
【0334】
また、同一の成膜領域に設けられた複数の蒸着源に、異なる材料を用いることにより、当該異なる材料が混合された層を成膜できる。
【0335】
《第2の成膜室》
第2の成膜室124は、第5の層を成膜するための材料を含む蒸着源35と、第6の層を成膜するための材料を含む蒸着源36と、第7の層を成膜するための材料を含む蒸着源37と、が一方の開口部側から他方の開口部側に向かって順番に、設けられている。なお、排気機構38が、第2の成膜室124に接続されている。
【0336】
なお、第2の成膜室124は、成膜領域25、成膜領域26、成膜領域27に分かれている。また、成膜領域26は、成膜領域26a、成膜領域26bおよび成膜領域26cに分かれている。各成膜領域において、そこに設けられた蒸着源が噴出する成膜材料が、被成膜体に成膜される。一方の成膜領域に設けられた蒸着源から噴出する成膜材料が、他方の成膜領域おいて被成膜体に成膜されないように、隣接する成膜領域の間には隔壁が設けられている。
【0337】
《成膜装置に適用可能な成膜材料の例》
本実施の形態で例示する発光素子の作製方法によれば、2つの処理ユニットを備える成膜装置を用いて、一方の処理ユニットに設けられた成膜室で成膜する成膜材料の層に重ねて、他方の処理ユニットに設けられた成膜室で成膜する成膜材料の層を成膜できる。従って、本実施の形態で例示する発光素子の作製方法は、実施の形態10の発光素子の構成例3に例示される構成の発光素子に好適である。
【0338】
例えば、被成膜体に設けられた第1の電極に重ねて、第1の層を第1の正孔輸送性の層、第2の層を第1の発光層、第3の層を第1の電子輸送性の層、第4の層を中間層、第5の層を第2の正孔輸送性の層、第6の層を第2の発光層および第7の層を第2の電子輸送層とし、これらの層を連続して形成できる。また、第7の層に重ねて第2の電極を形成できる。
【0339】
また、第1の発光層が青色の蛍光を発する発光性の有機化合物を含み、第2の発光層が緑色の燐光を発する発光性の有機化合物を含む層と赤色の燐光を発する発光性の有機化合物が積層された層とし、第1の電極を陽極に、第2の電極を陰極にすることができる。そして、このような構成とすることで駆動電圧が低減され、消費電力が低減された白色を呈する光を効率よく発する、発光素子を提供できる。
【0340】
《除去室》
除去室は、プラズマ源52、ガス導入機構54、排気機構55を備える。プラズマ源52は、平行平板型のプラズマ源であり、下部電極52aと上部電極52bを備える。
【0341】
排気機構55には、例えばターボポンプ、クライオポンプ等を適用できる。排気機構55は、除去室の圧力を調整する自動圧力制御機器を備える。
【0342】
ガス導入機構54にはマスフローメータ等を適用できる。なお、除去室に導入するガスは高純度であることが好ましく、意図しない不純物の含有量が1ppm以下であると好ましい。
【0343】
<発光素子の作製方法>
以下に、成膜装置100Eを用いる発光素子の作製方法について、
図11(A)を参照して説明する。
【0344】
<第1のステップ>
上記の構成を備える成膜装置を用いて、第1の搬入室112から供給される、第1の電極を備える被成膜体を第2の除去室125の他方の開口部から供給されるシャドーマスクに重ね合わせて第1の成膜室114に供給する。
【0345】
<第2のステップ>
第1の成膜室114を用いて、蒸着源31から噴出する成膜材料を含む第1の層、蒸着源32から噴出する成膜材料を含む第2の層、蒸着源33から噴出する成膜材料を含む第3の層および蒸着源34から噴出する成膜材料を含む第4の層をシャドーマスクの開口部に露出する被成膜体の第1の電極に重ねてこの順に成膜し、第1の受渡室111Bに供給する。
【0346】
<第3のステップ>
第2のモードの第1の受渡室111Bが、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを第1の除去室115に供給し、第2のモードの第1の除去室115が、被成膜体が重ね合わされた状態のシャドーマスクを前記第2の処理ユニット120の第2の連結室121Aに供給する。
【0347】
<第4のステップ>
第2のモードの第2の連結室121Aが、被成膜体が重ね合わされたシャドーマスクを第2の成膜室124に供給する。
【0348】
<第5のステップ>
第2の成膜室124を用いて、蒸着源35から噴出する成膜材料を含む第5の層、蒸着源36から噴出する成膜材料を含む第6の層および蒸着源37から噴出する成膜材料を含む第7の層をシャドーマスクの開口部に露出する被成膜体に成膜された第4の層に重ねてこの順に成膜し、被成膜体を第2の受渡室121Bに供給する。
【0349】
<第6のステップ>
第1のモードの第2の受渡室121Bが、被成膜体を第2の搬出室123に、シャドーマスクを第2の除去室125に、それぞれ供給する。
【0350】
<第7のステップ>
第1のモードの第2の除去室125が、シャドーマスクを洗浄し、シャドーマスクを第1の処理ユニット110の第1の連結室111Aに供給する。
【0351】
<第8のステップ>
第2の搬出室123が、被成膜体を第2の導電膜形成室126に供給する。
【0352】
<第9のステップ>
第2の導電膜形成室126を用いて、第2の電極を第7の層に重ねて形成し、被成膜体を第2の導電膜形成室126から第2の封止室127に供給する。
【0353】
<第10のステップ>
第2の封止室127を用いて、第1の層、第2の層、第3の層、第4の層、第5の層、第6の層、第7の層および第2の電極がこの順に積層された積層膜を被成膜体と封止材の間に封止する。
【0354】
本実施の形態で例示する発光素子の作製方法によれば、第1の成膜室114を用いて4つの層を、被成膜体に設けられた第1の電極に重ねて成膜できる。例えば、第1の層として第1の正孔輸送層を、第2の層として第1の発光層を、第3の層として第1の電子輸送層を、第4の層として中間層を、成膜できる。そして、第2の成膜室124を用いて3つの層を、第4の層に重ねて成膜できる。例えば、第5の層として第2の正孔輸送層を、第6の層として第2の発光層を、第7の層として第2の電子輸送層を、成膜できる。そして、第1のモードの第2の受渡室121Bが被成膜体を第2の搬出室123に供給できる。
【0355】
そして、第2の搬出室123に接続された第2の導電膜形成室126を用いて、第7の層に重ねて第2の電極を形成して発光素子を作製し、第2の導電膜形成室126に接続された第2の封止室127を用いて、被成膜体と封止材の間に当該発光素子を封止できる。
【0356】
且つ第1のモードの第2の除去室125において、シャドーマスクに付着した成膜材料を除去できる。その結果、連続して多数の膜が積層された発光素子の作製方法を提供できる。
【0357】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0358】
(実施の形態9)
本実施の形態では、実施の形態5において説明する本発明の一態様の成膜装置を用いた発光素子の作製方法について、
図11(B)および
図13を参照して説明する。
【0359】
具体的には、2つの処理ユニットを備える成膜装置を用いて、双方の処理ユニットに設けられた成膜室で並行して成膜を行い、実施の形態10の発光素子の構成例1に例示される構成の発光素子を作製する方法について、説明する。
【0360】
<成膜装置の構成>
はじめに、本実施の形態で例示する発光素子の作製方法に適用できる成膜装置100Fの構成ついて、
図11(B)を参照して説明する。
【0361】
本発明の一態様の成膜装置100Fを
図11(B)に示す。成膜装置100Fは、実施の形態5において例示して説明する成膜装置と同様に、第1の処理ユニット110と第2の処理ユニット120を有する。
【0362】
第1の処理ユニット110は、第1の連結室111Aと、第1の連結室111Aに被成膜体を供給する第1の搬入室112と、第1の連結室111Aに一方の開口部が接続される第1の成膜室114と、第1の成膜室114の他方の開口部が接続される第1の受渡室111Bと、第1の受渡室111Bから被成膜体を回収する第1の搬出室113と、第1の受渡室111Bに一方の開口部が接続される第1の除去室115と、を有する。
【0363】
また、第1の処理ユニット110は、第1の搬出室113と接続される第1の導電膜形成室116、第1の導電膜形成室116と接続される第1の封止室117、第1の封止室117と接続される第1の取り出し室118を備える。なお、第1の取り出し室118は、作製した発光素子を成膜装置から取り出すためにある。
【0364】
また、第1の処理ユニット110は、第1の層を成膜するための材料を含む蒸着源31と、第2の層を成膜するための材料を含む蒸着源32と、第3の層を成膜するための材料を含む蒸着源33と、が一方の開口部側から他方の開口部側に向かって順番に設けられる第1の成膜室114を備える。
【0365】
第2の処理ユニット120は、第2の連結室121Aと、第2の連結室121Aに被成膜体を供給する第2の搬入室122と、第2の連結室121Aに一方の開口部が接続される第2の成膜室124と、第2の成膜室124の他方の開口部が接続される第2の受渡室121Bと、第2の受渡室121Bから被成膜体を回収する第2の搬出室123と、第2の受渡室121Bに一方の開口部が接続される第2の除去室125と、を有する。
【0366】
また、第2の処理ユニット120は、第2の搬出室123と接続される第2の導電膜形成室126、第2の導電膜形成室126と接続される第2の封止室127、第2の封止室127と接続される第2の取り出し室128を備える。なお、第2の取り出し室128は、作製した発光素子を成膜装置から取り出すためにある。
【0367】
また、第2の処理ユニット120は、第1の層を成膜するための材料を含む蒸着源31と、第2の層を成膜するための材料を含む蒸着源32と、第3の層を成膜するための材料を含む蒸着源33と、が一方の開口部側から他方の開口部側に向かって順番に設けられる第2の成膜室124を備える。
【0368】
なお、第1の層は、正孔輸送性の層または電子輸送性の層の一方であって、第3の層は、正孔輸送性の層または電子輸送性の層の他方である。第2の層は、発光性の有機化合物を含む層である。
【0369】
以下に、本実施の形態で例示する成膜装置100Fの詳細な構成を、
図13を参照して説明する。なお、
図13は成膜装置100Fの一部の詳細を説明するための上面図であり、第1の処理ユニット110の一部と、第2の処理ユニット120の一部が図示されている。
【0370】
《第1の成膜室および第2の成膜室》
第1の成膜室114および第2の成膜室124は、いずれも第1の層を成膜するための材料を含む蒸着源31と、第2の層を成膜するための材料を含む蒸着源32と、第3の層を成膜するための材料を含む蒸着源33と、が一方の開口部側から他方の開口部側に向かって順番に、設けられている。
【0371】
なお、第1の成膜室114および第2の成膜室124は、成膜領域21、成膜領域22、成膜領域23に分かれている。また、成膜領域22は、成膜領域22a、成膜領域22bおよび成膜領域22cに分かれている。各成膜領域において、そこに設けられた蒸着源が噴出する成膜材料が、被成膜体に成膜される。一方の成膜領域に設けられた蒸着源から噴出する成膜材料が、他方の成膜領域おいて被成膜体に成膜されないように、隣接する成膜領域の間には隔壁が設けられている。
【0372】
また、同一の成膜領域に設けられた複数の蒸着源に、異なる材料を用いることにより、当該異なる材料が混合された層を成膜できる。
【0373】
《成膜材料の組み合わせ例》
本実施の形態で例示する発光素子の作製方法によれば、2つの処理ユニットを備える成膜装置を用いて、並行して発光素子を作製できる。従って、本実施の形態で例示する発光素子の作製方法は、実施の形態10の発光素子の構成例1に例示される構成の発光素子に好適である。
【0374】
例えば、被成膜体に設けられた第1の電極に重ねて、第1の層を正孔輸送性の層、第2の層を発光層、第3の層を電子輸送性の層とし、これらの層を連続して形成できる。また、第3の層に重ねて第2の電極を形成できる。
【0375】
また、発光層が第1の層の側から、青色を呈する光を発する層、緑色を呈する光を発する層、赤色を呈する光を発する層の順番に設けられた構成とし、第1の電極を陽極に、第2の電極を陰極にすることができる。そして、このような構成とすることで積層数が少なく作製し易い、白色を呈する光を効率よく発する、発光素子を提供できる。
【0376】
<発光素子の作製方法>
以下に、成膜装置100Fをもちいる発光素子の作製方法について、
図11(B)を参照して説明する。
【0377】
<第1のステップ>
第1の搬入室112から供給される第1の被成膜体を、第2の除去室125の他方の開口部から供給される第1のシャドーマスクに重ね合わせて第1の成膜室114に供給する。
【0378】
また、第2の搬入室122から供給される第2の被成膜体を第1の除去室115の他方の開口部から供給される第2のシャドーマスクに重ね合わせて第2の成膜室124に供給する。
【0379】
<第2のステップ>
第1の成膜室114において、蒸着源31から噴出する成膜材料を含む第1の層、蒸着源32から噴出する成膜材料を含む第2の層並びに蒸着源33から噴出する成膜材料を含む第3の層を第1のシャドーマスクの開口部に露出する第1の被成膜体にこの順に成膜し、第1の受渡室111Bに供給する。
【0380】
また、第2の成膜室124において、蒸着源31から噴出する成膜材料を含む第1の層、蒸着源32から噴出する成膜材料を含む第2の層並びに蒸着源33から噴出する成膜材料を含む第3の層を第2のシャドーマスクの開口部に露出する第2の被成膜体にこの順に成膜し、第2の受渡室121Bに供給する。
【0381】
<第3のステップ>
第1のモードの第1の受渡室111Bが、第1の被成膜体を第1の搬出室113に、第1のシャドーマスクを第1の除去室115に、それぞれ供給する。
【0382】
また、第1のモードの第2の受渡室121Bが、第2の被成膜体を第2の搬出室123に、第2のシャドーマスクを第2の除去室125に、それぞれ供給する。
【0383】
<第4のステップ>
第1のモードの第1の除去室115が、第1のシャドーマスクを洗浄し、第1のシャドーマスクを第2の処理ユニット120の第2の連結室121Aに供給する。
【0384】
また、第1のモードの第2の除去室125が、第2のシャドーマスクを洗浄し、第2のシャドーマスクを第1の処理ユニット110の第1の連結室111Aに供給する。
【0385】
<第5のステップ>
第1の搬出室113が、第1の被成膜体を第1の導電膜形成室116に供給し、第2の搬出室123が、第2の被成膜体を第2の導電膜形成室126に供給する。
【0386】
<第6のステップ>
第1の導電膜形成室116を用いて、第2の電極を第1の被成膜体の第3の層に重ねて形成し、第1の被成膜体を第1の導電膜形成室116から第1の封止室117に供給する。
【0387】
第2の導電膜形成室126を用いて、第2の電極を第2の被成膜体の第3の層に重ねて形成し、第2の被成膜体を第2の導電膜形成室126から第2の封止室127に供給する。
【0388】
<第7のステップ>
第1の封止室117を用いて、第1の層、第2の層、第3の層、および第2の電極がこの順に積層された積層膜を、第1の被成膜体と封止材の間に封止する。
【0389】
第2の封止室127を用いて、第1の層、第2の層、第3の層、および第2の電極がこの順に積層された積層膜を、第2の被成膜体と封止材の間に封止する。
【0390】
上記本実施の形態で例示する発光素子の作製方法によれば、第1の成膜室114と第2の成膜室124において、並行して3つの層を、被成膜体に設けられた第1の電極に重ねて成膜できる。例えば、第1の層として正孔輸送層、第2の層として発光層、第3の層として電子輸送層を成膜できる。そして、第1のモードの受渡室(第1の受渡室111Bおよび第2の受渡室121B)が当該被成膜体をそれぞれに接続された搬出室(第1の搬出室113および第2の搬出室123)に供給できる。
【0391】
そして、搬出室に接続された導電膜形成室を用いて、第3の層に重ねて第2の電極を形成して発光素子を作製し、導電膜形成室に接続された封止室を用いて発光素子を作製し、導電膜形成室に接続された封止室を用いて、被成膜体と封止材の間に当該発光素子を封止できる。
【0392】
且つ第1のモードの除去室(第1の除去室115および第2の除去室125)において、シャドーマスクに付着した成膜材料を除去できる。その結果、連続して多数の膜を積層することができるように設けられた成膜室の稼働率の低下を抑制しながらも、連続して膜が積層された発光素子の作製方法を提供できる。
【0393】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0394】
(実施の形態10)
本実施の形態では、本発明の一態様の成膜装置および成膜、積層膜若しくは発光素子の作製方法を適用できる発光素子の構成の一例について、
図14を参照して説明する。
【0395】
例えば、実施の形態8または実施の形態9で説明した発光素子の作製方法を用いると、以下に例示して説明する発光素子を作製できる。
【0396】
本実施の形態で例示する発光素子は、第1の電極、第2の電極及び第1の電極と第2の電極の間に発光性の有機化合物を含む層(以下EL層という)を備える。第1の電極または第2の電極のいずれか一方は陽極、他方が陰極として機能する。EL層は第1の電極と第2の電極の間に設けられ、該EL層の構成は第1の電極と第2の電極の材質に合わせて適宜選択すればよい。以下に発光素子の構成の一例を例示するが、発光素子の構成がこれに限定されないことはいうまでもない。
【0397】
<発光素子の構成例1.>
発光素子の構成の一例を
図14(A)に示す。
図14(A)に示す発光素子は、陽極1101と陰極1102の間にEL層が挟まれている。
【0398】
陽極1101と陰極1102の間に、発光素子の閾値電圧より高い電圧を印加すると、EL層に陽極1101の側から正孔が注入され、陰極1102の側から電子が注入される。注入された電子と正孔はEL層において再結合し、EL層に含まれる発光物質が発光する。
【0399】
本明細書においては、両端から注入された電子と正孔が再結合する領域を1つ有する層または積層体を発光ユニットという。よって、当該発光素子の構成例1は発光ユニットを1つ備えるということができる。
【0400】
発光ユニット1103は、少なくとも発光物質を含む発光層を1つ以上備えていればよく、発光層以外の層と積層された構造であっても良い。発光層以外の層としては、例えば正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、正孔輸送性に乏しい(ブロッキングする)物質、電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、並びにバイポーラ性(電子及び正孔の輸送性の高い)の物質等を含む層が挙げられる。
【0401】
発光ユニット1103の具体的な構成の一例を
図14(B)に示す。
図14(B)に示す発光ユニット1103は、正孔注入層1113、正孔輸送層1114、発光層1115、電子輸送層1116、並びに電子注入層1117が陽極1101側からこの順に積層されている。
【0402】
<発光素子の構成例2.>
発光素子の構成の他の一例を
図14(C)に示す。
図14(C)に例示する発光素子は、陽極1101と陰極1102の間に発光ユニット1103を含むEL層が挟まれている。さらに、陰極1102と発光ユニット1103との間には中間層1104が設けられている。なお、当該発光素子の構成例2の発光ユニット1103には、上述の発光素子の構成例1が備える発光ユニットと同様の構成が適用可能であり、詳細については、発光素子の構成例1の記載を参酌できる。
【0403】
中間層1104は少なくとも電荷発生領域を含んで形成されていればよく、電荷発生領域以外の層と積層された構成であってもよい。例えば、第1の電荷発生領域1104c、電子リレー層1104b、及び電子注入バッファー1104aが陰極1102側から順次積層された構造を適用することができる。
【0404】
中間層1104における電子と正孔の挙動について説明する。陽極1101と陰極1102の間に、発光素子の閾値電圧より高い電圧を印加すると、第1の電荷発生領域1104cにおいて、正孔と電子が発生し、正孔は陰極1102へ移動し、電子は電子リレー層1104bへ移動する。電子リレー層1104bは電子輸送性が高く、第1の電荷発生領域1104cで生じた電子を電子注入バッファー1104aに速やかに受け渡す。電子注入バッファー1104aは発光ユニット1103に電子を注入する障壁を緩和し、発光ユニット1103への電子注入効率を高める。従って、第1の電荷発生領域1104cで発生した電子は、電子リレー層1104bと電子注入バッファー1104aを経て、発光ユニット1103のLUMO準位に注入される。
【0405】
また、電子リレー層1104bは、第1の電荷発生領域1104cを構成する物質と電子注入バッファー1104aを構成する物質が界面で反応し、互いの機能が損なわれてしまう等の相互作用を防ぐことができる。
【0406】
当該発光素子の構成例2の陰極に用いることができる材料の選択の幅は、構成例1の陰極に用いることができる材料の選択の幅に比べて、広い。なぜなら、構成例2の陰極は中間層が発生する正孔を受け取ればよく、仕事関数が比較的大きな材料を適用できるからである。
【0407】
<発光素子の構成例3.>
発光素子の構成の他の一例を
図14(D)に示す。
図14(D)に例示する発光素子は、陽極1101と陰極1102の間に2つの発光ユニットが設けられたEL層を備えている。さらに、第1の発光ユニット1103aと、第2の発光ユニット1103bとの間には中間層1104が設けられている。
【0408】
なお、陽極と陰極の間に設ける発光ユニットの数は2つに限定されない。
図14(E)に例示する発光素子は、発光ユニット1103が複数積層された構造、所謂、タンデム型の発光素子の構成を備える。但し、例えば陽極と陰極の間にn(nは2以上の自然数)層の発光ユニット1103を設ける場合には、m(mは自然数、1以上(n−1)以下)番目の発光ユニットと、(m+1)番目の発光ユニットとの間に、それぞれ中間層1104を設ける構成とする。
【0409】
また、当該発光素子の構成例3の発光ユニット1103には、上述の発光素子の構成例1と同様の構成を適用することが可能であり、また当該発光素子の構成例3の中間層1104には、上述の発光素子の構成例2と同様の構成が適用可能である。よって、詳細については、発光素子の構成例1、または発光素子の構成例2の記載を参酌できる。
【0410】
発光ユニットの間に設けられた中間層1104における電子と正孔の挙動について説明する。陽極1101と陰極1102の間に、発光素子の閾値電圧より高い電圧を印加すると、中間層1104において正孔と電子が発生し、正孔は陰極1102側に設けられた発光ユニットへ移動し、電子は陽極1101側に設けられた発光ユニットへ移動する。陰極側に設けられた発光ユニットに注入された正孔は、陰極側から注入された電子と再結合し、当該発光ユニットに含まれる発光物質が発光する。また、陽極側に設けられた発光ユニットに注入された電子は、陽極側から注入された正孔と再結合し、当該発光ユニットに含まれる発光物質が発光する。よって、中間層1104において発生した正孔と電子は、それぞれ異なる発光ユニットにおいて発光に至る。
【0411】
なお、発光ユニット同士を接して設けることで、両者の間に中間層と同じ構成が形成される場合は、発光ユニット同士を接して設けることができる。具体的には、発光ユニットの一方の面に電荷発生領域が形成されていると、当該電荷発生領域は中間層の第1の電荷発生領域として機能するため、発光ユニット同士を接して設けることができる。
【0412】
発光素子の構成例1乃至構成例3は、互いに組み合わせて用いることができる。例えば、発光素子の構成例3の陰極と発光ユニットの間に中間層を設けることもできる。
【0413】
また、発光色の異なる複数の発光物質を用いることにより、発光スペクトルの幅を拡げて、例えば白色発光を得ることもできる。白色発光を得る場合には、例えば、発光物質を含む層を少なくとも2つ備える構成とし、それぞれの層を互いに補色の関係にある色を呈する光を発するように構成すればよい。具体的な補色の関係としては、例えば青色と黄色、あるいは青緑色と赤色等が挙げられる。
【0414】
さらに、演色性の良い白色発光を得る場合には、発光スペクトルが可視光全域に拡がるものが好ましく、例えば、一つの発光素子が、青色を呈する光を発する層、緑色を呈する光を発する層、赤色を呈する光を発する層を備える構成とすればよい。
【0415】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0416】
(実施の形態11)
本実施の形態では、本発明の一態様の成膜装置および発光素子の作製方法を適用できる発光素子の構成の一例について、説明する。
【0417】
例えば、実施の形態9で説明する発光素子の作製方法を用いると、以下に例示して説明する発光素子を作製できる。
【0418】
具体的には、第1の燐光性化合物と、該第1の燐光性化合物よりも長波長の発光を呈する第2の燐光性化合物を用いた多色発光素子において、効率良く発光が得られる構成について説明する。
【0419】
多色発光素子を得る手法として、異なる発光色の発光ユニットを直列に積層する、いわゆるタンデム構造(実施の形態10で説明する発光素子の構成例3)がある。例えば、青色を呈する光を発する第1の発光ユニットと、緑色を呈する光を発する第2の発光ユニットと、赤色を呈する第3の発光ユニットと、を直列に積層して同時に発光させれば、容易に多色光(この場合白色光)が得られる。素子構造も、青、緑、赤色の各発光ユニットに最適化すればよいので、その設計・制御は比較的容易である。しかしながら、3つの発光ユニットを積層するため、層数は増大し、作製は煩雑となる。また、各発光ユニットの接続部(いわゆる中間層)での電気的接触に問題が生じると、駆動電圧の増大、すなわち電力ロスを招いてしまう場合がある。
【0420】
一方、以下で説明する発光素子は、一対の電極間に、第1の燐光性化合物が第1のホスト材料に分散された第1の発光層と、第1の燐光性化合物よりも長波長の発光を呈する第2の燐光性化合物が第2のホスト材料に分散された第2の発光層とが積層された発光素子である。この時、第1の発光層及び第2の発光層は、タンデム構造とは異なり、互いに接して設けられるため、積層される層数がタンデム構造と比較すると大幅に削減できる。この場合、各燐光性化合物(第1及び第2の燐光性化合物)はホスト材料中に分散されているため、各燐光性化合物は各ホスト材料によって互いに隔離されている。
【0421】
このような構成では、各燐光性化合物間において、電子交換相互作用(いわゆるデクスター機構)によるエネルギー移動は抑制される。したがって、最も長波長の発光を示す第2の燐光性化合物が主として発光してしまう現象を抑制することができる。なお、第2の発光層にて直接励起子が生成すると、第2の燐光性化合物が主として発光してしまうため、キャリアの再結合領域は、第1の発光層内とする(すなわち、第1の燐光性化合物を主として励起する)ことが好ましい。
【0422】
ただし、第1の燐光性化合物からのエネルギー移動が完全に抑制されてしまうと、今度は第2の燐光性化合物の発光が得られないことになる。そこで本構成では、第1の燐光性化合物の励起エネルギーが、部分的に第2の燐光性化合物へ移動するような素子設計を行っている。このような隔離された分子間でのエネルギー移動は、双極子−双極子相互作用(フェルスター機構)を利用することによって可能となる。
【0423】
ここで、フェルスター機構について説明する。以下では、励起エネルギーを与える側の分子をエネルギードナー、励起エネルギーを受け取る側の分子をエネルギーアクセプターと記す。すなわち、本発明の一態様においては、エネルギードナー、エネルギーアクセプターのいずれも燐光性化合物であり、ホスト材料によって互いに隔離されている。
【0424】
フェルスター機構は、エネルギー移動に、分子間の直接的接触を必要としない。エネルギードナー及びエネルギーアクセプター間の双極子振動の共鳴現象を通じてエネルギー移動が起こる。双極子振動の共鳴現象によってエネルギードナーがエネルギーアクセプターにエネルギーを受け渡し、励起状態のエネルギードナーが基底状態になり、基底状態のエネルギーアクセプターが励起状態になる。フェルスター機構によるエネルギー移動の速度定数k
Fを数式(1)に示す。
【0426】
数式(1)において、νは、振動数を表し、F(ν)は、エネルギードナーの規格化された発光スペクトル(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光スペクトル、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光スペクトル)を表し、ε(ν)は、エネルギーアクセプターのモル吸光係数を表し、Nは、アボガドロ数を表し、nは、媒体の屈折率を表し、Rは、エネルギードナーとエネルギーアクセプターの分子間距離を表し、τは、実測される励起状態の寿命(蛍光寿命や燐光寿命)を表し、cは、光速を表し、φは、発光量子収率(一重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は蛍光量子収率、三重項励起状態からのエネルギー移動を論じる場合は燐光量子収率)を表し、K
2は、エネルギードナーとエネルギーアクセプターの遷移双極子モーメントの配向を表す係数(0〜4)である。なお、ランダム配向の場合はK
2=2/3である。
【0427】
式(1)からわかるように、フェルスター機構によるエネルギー移動(フェルスター移動)の条件は、1.エネルギードナーとエネルギーアクセプターが離れすぎないこと(距離Rに関連)、2.エネルギードナーが発光すること(発光量子収率φに関連)、3.エネルギードナーの発光スペクトルとエネルギーアクセプターの吸収スペクトルが重なりを有すること(積分項に関連)、が挙げられる。
【0428】
ここで、上述したように、各燐光性化合物(第1及び第2の燐光性化合物)は各ホスト材料中に分散されており、各燐光性化合物は各ホスト材料によって互いに隔離されているため、距離Rは少なくとも一分子以上(1nm以上)の距離を有している。したがって、第1の燐光性化合物で生じた励起エネルギーの全てが、フェルスター機構によって第2の燐光性化合物にエネルギー移動してしまうことはない。一方で、Rが10nm〜20nm程度までであれば、フェルスター移動は可能である。第1及び第2の燐光性化合物間に、少なくとも1分子以上の距離Rを確保するためには、ホスト材料中に分散させる各燐光性化合物の体積を一定以下にすることが好ましい。これに対応する各燐光性化合物の発光層内における濃度は、10wt%以下である。燐光性化合物の濃度があまり薄すぎても良好な特性は得にくいため、本素子構造における燐光性化合物の濃度は0.1wt%以上10wt%以下であることが好ましい。特に、第1の燐光性化合物は、0.1wt%以上5wt%以下の濃度で第1の発光層に含まれることがより好ましい。
【0429】
第1の燐光性化合物と、第1の燐光性化合物よりも長波長の発光を呈する第2の燐光性化合物を用いた本構成の発光素子ではまず第1の燐光性化合物で生じた一重項励起状態(S
a)は、項間交差により三重項励起状態(T
a)に変換される。すなわち、第1の発光層における励起子は、基本的にT
aに集約される。
【0430】
次に、このT
a状態の励起子のエネルギーは、一部はそのまま発光に変換されるが、フェルスター機構を利用することにより、一部は第2の燐光性化合物の三重項励起状態(T
b)に移動することができる。これは、第1の燐光性化合物が発光性である(燐光量子収率φが高い)ことと、第2の燐光性化合物が一重項基底状態から三重項励起状態への電子遷移に相当する直接吸収を有している(三重項励起状態の吸収スペクトルが存在する)ことに起因している。これらの条件を満たせば、T
aからT
bへの三重項−三重項フェルスター移動が可能となる。
【0431】
なお、上述のフェルスター移動を効率よく、ドーパントである燐光性化合物間で発生させ、ホスト材料にはエネルギー移動しないように設計するためには、第1及び第2のホスト材料は、第1の燐光性化合物の発光領域に吸収スペクトルを有さないことが好ましい。このように、ホスト材料(具体的には第2のホスト材料)を介することなく、ドーパント間で直接エネルギー移動を行わせることにより、余分なエネルギー移動の経路の発生を抑制し、高い発光効率に結びつけることができる。
【0432】
また、第1のホスト材料は、第1の燐光性化合物を消光させないよう、該第1の燐光性化合物よりも高い三重項励起エネルギーを有していることが好ましい。
【0433】
しかし、ここで本構成においてさらに重要な点は、そのエネルギー移動を考慮した材料の選択および素子構造である。
【0434】
材料の選択について、具体的には、式(1)の積分項を大きくする、すなわち、エネルギードナーの発光スペクトルF(ν)とエネルギーアクセプターのモル吸光係数ε(ν)をうまくオーバーラップさせるような材料を選択する。
【0435】
一般には、エネルギーアクセプターのモル吸光係数ε(ν)が大きい波長領域で、エネルギードナーの発光スペクトルF(ν)を重ねればよい(つまり、F(ν)ε(ν)の積を大きくすればよい)と考えられている。しかし、これはフェルスター機構においては必ずしも真ではない。なぜならば、式(1)の積分項は、振動数νの4乗に反比例しており、波長依存性が存在するためである。
【0436】
より分かりやすくするために、まず式(1)を変形する。光の波長をλとすると、ν=c/λであるから、式(1)は下記式(2)の通り書き換えることができる。
【0438】
つまり、積分項は波長λが大きいほど大きくなることがわかる。端的には、長波長側ほどエネルギー移動は起こりやすくなることを意味している。つまり、モル吸光係数ε(λ)が大きい波長領域でF(λ)が重なればよいという単純なものではなく、ε(λ)λ
4が大きい領域においてF(λ)が重なるようにしなければならない。
【0439】
したがって、本発明の一態様の発光素子における第2の燐光性化合物としては、第1の燐光性化合物からのエネルギー移動効率を高めるために、第1の燐光性化合物の発光スペクトルの最大値が存在するスペクトルの山と、第2の燐光性化合物のε(λ)λ
4で表される関数の最も長波長側に位置する極大値が存在する山が重なるような燐光性化合物を用いる。
【0440】
以上のような構成を有する発光素子は、発光効率が高く、且つ、バランスよく各々の燐光性化合物から発光を得ることが可能な発光素子とすることができる。
【0441】
以上のことから、第2の燐光性化合物は、吸収スペクトルの最も長波長側に、一重項基底状態から三重項励起状態への電子遷移に相当する直接吸収(例えば、三重項MLCT吸収)を有していることが好ましい。このような構成とすることで、三重項−三重項のエネルギー移動が効率よく生じることになる。
【0442】
また、上述した再結合領域を得るために、第1の発光層が陽極側に位置する場合、少なくとも第2の発光層は電子輸送性であることが好ましく、第1の発光層及び第2の発光層の双方が電子輸送性であってもよい。また第1の発光層が陰極側に位置する場合、少なくとも第2の発光層は正孔輸送性であることが好ましく、第1の発光層及び第2の発光層の双方が正孔輸送性であってもよい。
【0443】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0444】
(実施の形態12)
本実施の形態では、本発明の一態様の成膜装置を用いて作製することができる表示パネルの構成の一例について説明する。
【0445】
<表示パネルの構成>
本実施の形態で例示する表示パネルの構成を
図15に示す。
図15(A)は本実施の形態で例示する表示パネルの構造の上面図であり、
図15(B)は
図15(A)の切断線A−BおよびC−Dにおける断面を含む構造の側面図であり、
図15(C)は
図15(A)の切断線E−Fにおける断面を含む画素の構造の側面図である。
【0446】
本実施の形態で例示して説明する表示パネル400は、第1の基板410上に表示部401を有し、そこには画素402が複数設けられている。また、画素402には複数(例えば3つ)の副画素が設けられている(
図15(A))。また、第1の基板410上には表示部401と共に当該表示部401を駆動するソース側の駆動回路部403s、ゲート側の駆動回路部403gが設けられている。なお、駆動回路部を第1の基板410上ではなく外部に形成することもできる。
【0447】
表示パネル400は外部入力端子を備え、FPC(フレキシブルプリントサーキット)409を介して、ビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、FPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における表示パネルには、表示パネル本体だけでなく、それにFPCまたはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0448】
シール材405は、第1の基板410と第2の基板440を貼り合わせ、その間に形成された空間431に表示部401が封止されている(
図15(B)参照)。
【0449】
表示パネル400の断面を含む構造を
図15(B)参照して説明する。表示パネル400は、ソース側の駆動回路部403sと、画素402に含まれる副画素402Gと、引き回し配線408を備える。なお、本実施の形態で例示する表示パネル400の表示部401は、図中に示す矢印の方向に光を射出して、画像を表示する。
【0450】
ソース側の駆動回路部403sはnチャネル型トランジスタ413と、pチャネル型トランジスタ414とを組み合わせたCMOS回路を含む。なお、駆動回路はこの構成に限定されず、種々のCMOS回路、PMOS回路またはNMOS回路で構成しても良い。
【0451】
引き回し配線408は外部入力端子から入力される信号をソース側の駆動回路部403sおよびゲート側の駆動回路部403gに伝送する。
【0452】
副画素402Gは、スイッチング用のトランジスタ411と電流制御用のトランジスタ412と発光モジュール450Gとを有する。なお、トランジスタ411等の上には、絶縁層416と隔壁418とが形成されている。発光モジュール450Gは、反射膜と半透過・半反射膜と、反射膜と半透過・半反射膜の間に発光素子420Gとを有し、発光素子420Gが発する光を射出する半透過・半反射膜の側にカラーフィルタ441Gが設けられている。本実施の形態で例示する発光モジュール450Gは、発光素子420Gの第1の電極421Gが反射膜を、第2の電極422が半透過・半反射膜を兼ねる構成となっている。なお、表示部401が画像を表示する方向は、発光素子420Gが発する光が取り出される方向により決定される。
【0453】
また、カラーフィルタ441Gを囲むように遮光性の膜442が形成されている。遮光性の膜442は表示パネル400が外光を反射する現象を防ぐ膜であり、表示部401が表示する画像のコントラストを高める効果を奏する。なお、カラーフィルタ441Gと遮光性の膜442は、第2の基板440に形成されている。
【0454】
絶縁層416は、トランジスタ411等の構造に由来して生じる段差を平坦化、または、トランジスタ411等への不純物の拡散を抑制するための、絶縁性の層であり、単一の層であっても複数の層の積層体であってもよい。隔壁418は開口部を有する絶縁性の層であり、発光素子420Gは隔壁418の開口部に形成される。
【0455】
発光素子420Gは第1の電極421Gと、第2の電極422と、発光性の有機化合物を含む層423とを含む。
【0456】
<トランジスタの構成>
図15(A)に例示する表示パネル400には、トップゲート型のトランジスタが適用されている。ソース側の駆動回路部403s、ゲート側の駆動回路部403g並びに副画素にはさまざまな構造のトランジスタを適用できる。また、これらのトランジスタのチャネルが形成される領域には、さまざまな半導体を用いることができる。具体的には、アモルファスシリコン、ポリシリコン、単結晶シリコンの他、酸化物半導体などを用いることができる。
【0457】
トランジスタのチャネルが形成される領域に単結晶半導体を用いると、トランジスタサイズを微細化することが可能となるため、表示部において画素をさらに高精細化することができる。
【0458】
半導体層を構成する単結晶半導体としては、代表的には、単結晶シリコン基板、単結晶ゲルマニウム基板、単結晶シリコンゲルマニウム基板など、第14族元素でなる単結晶半導体基板、化合物半導体基板(SiC基板、GaN基板等)などの半導体基板を用いることができる。好適には、絶縁表面上に単結晶半導体層が設けられたSOI(Silicon On Insulator)基板を用いることができる。
【0459】
SOI基板の作製方法としては、鏡面研磨ウェハーに酸素イオンを注入した後、高温加熱することにより、表面から一定の深さに酸化層を形成させるとともに、表面層に生じた欠陥を消滅させて作る方法、水素イオン照射により形成された微小ボイドの熱処理による成長を利用して半導体基板を劈開する方法や、絶縁表面上に結晶成長により単結晶半導体層を形成する方法等を用いることができる。
【0460】
本実施の形態では、単結晶半導体基板の一つの面からイオンを添加して、単結晶半導体基板の一つの面から一定の深さに脆弱化層を形成し、単結晶半導体基板の一つの面上、または第1の基板410上のどちらか一方に絶縁層を形成する。単結晶半導体基板と第1の基板410を、絶縁層を挟んで重ね合わせた状態で、脆弱化層に亀裂を生じさせ、単結晶半導体基板を脆弱化層で分離する熱処理を行い、単結晶半導体基板より半導体層として単結晶半導体層を第1の基板410上に形成する。なお、第1の基板410としては、ガラス基板を用いることができる。
【0461】
また、半導体基板に絶縁分離領域を形成し、絶縁分離された半導体領域を用いてトランジスタ411、トランジスタ412を形成してもよい。
【0462】
単結晶半導体をチャネル形成領域として用いることで、結晶粒界における結合の欠陥に起因する、トランジスタのしきい値電圧等の電気的特性のばらつきを軽減できるため、本発明の一態様のパネルは、各画素にしきい値電圧補償用の回路を配置しなくても正常に発光素子を動作させることができる。したがって、一画素における回路要素を削減することが可能となるため、レイアウトの自由度が向上する。よって、表示パネルの高精細化を図ることができる。例えば、マトリクス状に配置された複数の画素を一インチあたり300以上含む(水平解像度が300ppi(pixels per inch)以上である)、さらに好ましくは400以上含む(水平解像度が400ppi以上である)構成とすることが可能となる。
【0463】
さらに、単結晶半導体をチャネル形成領域として用いたトランジスタは、高い電流駆動能力を維持したまま、微細化が可能である。該微細なトランジスタを用いることで表示に寄与しない回路部の面積を縮小することができるため、表示部においては表示面積が拡大し、かつ表示パネルの狭額縁化が達成できる。
【0464】
<画素の構成>
表示部401に設けられた画素402の構成について、
図15(C)を参照して説明する。
【0465】
本実施の形態で例示する画素402は副画素402Gを含み、副画素402Gは、反射膜を兼ねる第1の電極421G、半透過・半反射膜を兼ねる第2の電極422、発光性の有機化合物を含む層423a、発光性の有機化合物を含む層423b並びに中間層424を備える発光素子420Gを備える。また、発光素子420Gと重なるように第2の電極422の側にカラーフィルタ441Gと、を具備する。
【0466】
また、画素402は、青色を呈する光Bを射出する副画素402B、緑色を呈する光Gを射出する副画素402G、赤色を呈する光Rを射出する副画素402Rを有する。それぞれの副画素は、駆動用トランジスタと発光モジュールとを備える。発光モジュールは、それぞれ反射膜と半透過・半反射膜と、反射膜と半透過・半反射膜の間に発光素子とを備える。
【0467】
反射膜と半透過・半反射膜を重ねて微小共振器を構成し、その間に発光素子を設けると、半透過・半反射膜から特定の波長の光を効率良く取り出せる。具体的には、取り出す光の波長のn/2倍(nは自然数)になるように微小共振器の光学距離を設けると、光を取り出す効率を高められる。取り出す光の波長は、反射膜と半透過・半反射膜の間の距離に依存し、その距離は、その間に光学調整層を形成して調整できる。
【0468】
光学調整層に用いることができる材料としては、可視光に対して透光性を有する導電膜の他、発光性の有機化合物を含む層を適用できる。例えば、電荷発生領域を用いて、その厚さを調整してもよい。または、正孔輸送性の高い物質とアクセプター性物質を含む領域を光学調整層に用いると、光学調整層が厚い構成であっても駆動電圧の上昇を抑制できるため好ましい。
【0469】
発光素子の構成としては、反射膜を兼ねる第1の電極421Gと半透過・半反射膜を兼ねる第2の電極422の間に、発光性の有機化合物を含む層423a、発光性の有機化合物を含む層423b並びに中間層424を備える発光素子420Gを備える。
【0470】
なお、発光素子の構成例については、実施の形態10に記載した構成を適用できる。
【0471】
本実施の形態で例示する発光モジュールは、それぞれの発光モジュールに設けられた発光素子の第2の電極422が、半透過・半反射膜を兼ねる構成となっている。具体的には、発光素子420Bと発光素子420Gと発光素子420Rとに共通して設けられた第2の電極422が、発光モジュール450Bと発光モジュール450Gと発光モジュール450Rの半透過・半反射膜を兼ねる。
【0472】
また、それぞれの発光モジュールに電気的に独立して設けられた発光素子の第1の電極が反射膜を兼ねる構成となっている。具体的には、発光素子420Bに設けられた第1の電極421Bが発光モジュール450Bの反射膜を、発光素子420Gに設けられた第1の電極421Gが発光モジュール450Gの反射膜を、発光素子420Rに設けられた第1の電極421Rが発光モジュール450Rの反射膜を兼ねる。
【0473】
発光モジュールの反射膜を兼ねる第1の電極は、反射膜上に光学調整層が積層された構成を有する。光学調整層は可視光に対する透光性を有する導電膜で形成され、反射膜は可視光に対する反射率が高く、導電性を有する金属膜が好ましい。
【0474】
光学調整層の厚さは、発光モジュールから取り出す光の波長の長さに応じて調整する。
【0475】
例えば、第1の発光モジュール450Bを、青色を呈する光を透過するカラーフィルタ441Bと、光学距離が400nm以上500nm未満のi/2倍(iは自然数)に調整された反射膜を兼ねる第1の電極421Bと半透過・半反射膜を兼ねる第2の電極422を備える構成とする。
【0476】
また、第2の発光モジュール450Gを、緑色を呈する光を透過するカラーフィルタ441Gと、光学距離が500nm以上600nm未満のj/2倍(jは自然数)に調整された反射膜と半透過・半反射膜を備える構成とする。
【0477】
また、第3の発光モジュール450Rを、赤色を呈する光を透過するカラーフィルタ441Rと、光学距離が600nm以上800nm未満のk/2倍(kは自然数)に調整された反射膜と半透過・半反射膜を備える構成とする。
【0478】
このような構成の発光モジュールは、反射膜と半透過・半反射膜の間で発光素子が発する光が干渉し合い、400nm以上800nm未満の波長を有する光のうち特定の光が強め合い、さらにカラーフィルタが不要な光を吸収する。
【0479】
なお、第1の発光モジュール450B、第2の発光モジュール450Gおよび第3の発光モジュール450Rは、いずれも発光性の有機化合物を含む層423a、発光性の有機化合物を含む層423b並びに中間層424を含む。また、発光素子の一対の前記電極の一方が反射膜を兼ね、他方が半透過・半反射膜を兼ねている。
【0480】
このような構成の発光モジュールは、発光性の有機化合物を含む層を同一の工程で形成できる。または、反射膜および半透過・半反射膜を一対の電極が兼ねる。
【0481】
<隔壁の構成>
隔壁418は第1の電極421B、第1の電極421Gおよび第1の電極421Rの端部を覆って形成されている。
【0482】
隔壁418の下端部には、曲率を有する曲面が形成されるようにする。隔壁418の材料としては、ポジ型やネガ型の感光性樹脂を用いることができる。
【0483】
なお、隔壁に可視光を吸収する材料を適用すると、隣接する発光素子一方から他方へ光が漏れる現象(クロストーク現象ともいう)を抑制する効果を奏する。
【0484】
また、半透過・半反射膜を第1の基板410側に設けて、発光モジュールが発する光を第1の基板410側に取り出して、画像を表示する構成においては、隔壁に可視光を吸収する材料を適用すると、当該隔壁が、第1の基板410に設けた反射性の膜が反射する外光を吸収し、その反射を抑制できる。
【0485】
<封止構造>
本実施の形態で例示する表示パネル400は、第1の基板410、第2の基板440、およびシール材405で囲まれた空間に、発光素子を封止する構造を備える。
【0486】
空間は、不活性気体(窒素やアルゴン等)で充填される場合の他、樹脂で充填される場合もある。また、不純物(代表的には水および/または酸素)の吸着材(例えば、乾燥剤など)を設けても良い。
【0487】
シール材405および第2の基板440は、大気中の不純物(代表的には水および/または酸素)をできるだけ透過しない材料であることが望ましい。シール材405にはエポキシ系樹脂や、ガラスフリット等を用いることができる。
【0488】
第2の基板440に用いることができる材料としては、ガラス基板や石英基板の他、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル等からなるプラスチック基板や、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)等をその例に挙げることができる。
【0489】
<変形例>
本実施の形態の変形例を
図16に示す。
図16(A)は
図15(A)の切断線A−BおよびC−Dにおける断面を含む構造の側面図であり、
図16(B)は
図15(A)の切断線E−Fにおける断面を含む画素の構造の側面図である。
【0490】
図16に示す表示パネルは、
図15に示す表示パネルの変形例であり、
図15に示す表示パネルとは画素の構成が異なる。具体的には、カラーフィルタが設けられていない点と、発光色が異なる副画素が、それぞれ異なる発光性の有機化合物を含む層を備える点が、異なる。表示部401に設けられた画素402の構成の変形例について、
図16(B)を参照して説明する。
【0491】
本実施の形態の変形例で例示する画素402は、青色を呈する光Bを射出する副画素402B、緑色を呈する光Gを射出する副画素402G、赤色を呈する光Rを射出する副画素402Rを有する。それぞれの副画素は、駆動用トランジスタと発光モジュールとを備える。発光モジュールは、それぞれ反射膜と半透過・半反射膜と、反射膜と半透過・半反射膜の間に発光素子とを備える。
【0492】
副画素402Bは、反射膜を兼ねる第1の電極421B、半透過・半反射膜を兼ねる第2の電極422、青色を呈する光を含む光を発光する発光性の有機化合物を含む層423Bと、を備え、スペクトルの半値幅が60nm以下の青色の光を発するように、微小共振器の光学距離が調整されている。
【0493】
副画素402Gは、反射膜を兼ねる第1の電極421G、半透過・半反射膜を兼ねる第2の電極422、緑色を呈する光を含む光を発光する発光性の有機化合物を含む層423Gと、を備え、スペクトルの半値幅が60nm以下の緑色の光を発するように、微小共振器の光学距離が調整されている。
【0494】
副画素402Rは、反射膜を兼ねる第1の電極421R、半透過・半反射膜を兼ねる第2の電極422、赤色を呈する光を含む光を発光する発光性の有機化合物を含む層423Rと、を備え、スペクトルの半値幅が60nm以下の赤色の光を発するように、微小共振器の光学距離が調整されている。
【0495】
なお、それぞれの発光性の有機化合物を含む層に用いることができる材料は実施の形態10に記載した構成を適用できる。
【0496】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0497】
(実施の形態13)
本実施の形態では、本発明の一態様の成膜装置を用いて作製できる表示パネルの構成の一例について説明する。
【0498】
図17(A)は
図15(A)の切断線A−BおよびC−Dにおける断面を含む構造の側面図であり、
図17(B)は
図15(A)の切断線A−BおよびC−Dにおける断面を含む構造の側面図である。
【0499】
図17(A)または
図17(B)に例示する表示パネルは、その上面の構造が実施の形態12で例示した表示パネルのものと同じであるが、側面の構造が実施の形態12で例示した表示パネルのものとは異なる。なお、実施の形態12で説明した構成と同じ構成を有する部分には同じ符号を適用して、実施の形態12の説明を援用する。
【0500】
<表示パネルの構成例1.>
図17(A)に例示する表示パネルは、副画素402Gを含む表示部と、ソース側の駆動回路部403sとが、第1の基板410上に設けられている。副画素402Gにはトランジスタ471が設けられ、ソース側の駆動回路部403sにはトランジスタ472が設けられており、いずれもボトムゲート型のトランジスタである。
【0501】
なお、トランジスタのチャネルが形成される領域の半導体に重ねて、第2のゲート電極(バックゲートともいう)を設けてもよい。第2のゲート電極が設けられたトランジスタの特性(例えば、閾値電圧)は、第2のゲート電極に印加する電位により、制御できる。
【0502】
また、隔壁418上に一対のスペーサ445が設けられ、第1の基板410と第2の基板440の間隔が制御されている。第1の基板410と第2の基板440の間でおきる光学的な干渉現象に由来する模様(ニュートンリングともいう)が観察されて、外観が損なわれる不具合を防止できる。また、隣接する副画素からの光漏れを防ぐように設けて、光学的なクロストーク現象を抑制することができる。
【0503】
本実施の形態で例示して説明するトランジスタのチャネルが形成される領域に好適に用いることができる半導体の一例について、以下に説明する。
【0504】
酸化物半導体は、エネルギーギャップが3.0eV以上と大きく、酸化物半導体を適切な条件で加工し、そのキャリア密度を十分に低減して得られた酸化物半導体層が適用されたトランジスタにおいては、オフ状態でのソースとドレイン間のリーク電流(オフ電流)を、従来のシリコンを用いたトランジスタと比較して極めて低いものとすることができる。
【0505】
適用可能な酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタノイド(例えば、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、ガドリニウム(Gd))から選ばれた一種、または複数種が含まれていることが好ましい。
【0506】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−Zr−Zn系酸化物、In−Ti−Zn系酸化物、In−Sc−Zn系酸化物、In−Y−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0507】
ここで、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。
【0508】
また、酸化物半導体として、InMO
3(ZnO)
m(m>0、且つ、mは整数でない)で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、Mn及びCoから選ばれた一の金属元素または複数の金属元素、若しくは上記のスタビライザーとしての元素を示す。また、酸化物半導体として、In
2SnO
5(ZnO)
n(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
【0509】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1、In:Ga:Zn=3:1:2、あるいはIn:Ga:Zn=2:1:3の原子数比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0510】
以下では、酸化物半導体膜の構造について説明する。
【0511】
酸化物半導体膜は、単結晶酸化物半導体膜と非単結晶酸化物半導体膜とに大別される。非単結晶酸化物半導体膜とは、非晶質酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、多結晶酸化物半導体膜、CAAC−OS(C Axis Aligned Crystalline Oxide Semiconductor)膜などをいう。
【0512】
非晶質酸化物半導体膜は、膜中における原子配列が不規則であり、結晶成分を有さない酸化物半導体膜である。微小領域においても結晶部を有さず、膜全体が完全な非晶質構造の酸化物半導体膜が典型である。
【0513】
微結晶酸化物半導体膜は、例えば、1nm以上10nm未満の大きさの微結晶(ナノ結晶ともいう。)を含む。従って、微結晶酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも原子配列の規則性が高い。そのため、微結晶酸化物半導体膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低いという特徴がある。
【0514】
CAAC−OS膜は、複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つであり、ほとんどの結晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさである。従って、CAAC−OS膜に含まれる結晶部は、一辺が10nm未満、5nm未満または3nm未満の立方体内に収まる大きさの場合も含まれる。CAAC−OS膜は、微結晶酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低いという特徴がある。以下、CAAC−OS膜について詳細な説明を行う。
【0515】
CAAC−OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)によって観察すると、結晶部同士の明確な境界、即ち結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CAAC−OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0516】
CAAC−OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観察)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は、CAAC−OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映した形状であり、CAAC−OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
【0517】
一方、CAAC−OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面TEM観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
【0518】
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC−OS膜の結晶部は配向性を有していることがわかる。
【0519】
CAAC−OS膜に対し、X線回折(XRD:X−Ray Diffraction)装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO
4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO
4の結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC−OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0520】
一方、CAAC−OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin−plane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZnO
4の結晶の(110)面に帰属される。InGaZnO
4の単結晶酸化物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面に帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC−OS膜の場合は、2θを56°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
【0521】
以上のことから、CAAC−OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は不規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平行な方向を向いていることがわかる。従って、前述の断面TEM観察で確認された層状に配列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
【0522】
なお、結晶部は、CAAC−OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を行った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC−OS膜の被形成面または上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC−OS膜の形状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC−OS膜の被形成面または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
【0523】
また、CAAC−OS膜中の結晶化度が均一でなくてもよい。例えば、CAAC−OS膜の結晶部が、CAAC−OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上面近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりも結晶化度が高くなることがある。また、CAAC−OS膜に不純物を添加する場合、不純物が添加された領域の結晶化度が変化し、部分的に結晶化度の異なる領域が形成されることもある。
【0524】
なお、InGaZnO
4の結晶を有するCAAC−OS膜のout−of−plane法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC−OS膜中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC−OS膜は、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0525】
CAAC−OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動が小さい。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0526】
なお、酸化物半導体膜は、例えば、非晶質酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、CAAC−OS膜のうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
【0527】
本明細書において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0528】
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す。
【0530】
酸化物半導体膜の形成後において、脱水化処理(脱水素化処理)を行い酸化物半導体膜から、水素、または水分を除去して不純物が極力含まれないように高純度化し、脱水化処理(脱水素化処理)によって増加した酸素欠損を補填するため酸素を酸化物半導体膜に加える処理を行うことが好ましい。また、本明細書等において、酸化物半導体膜に酸素を供給する場合を、加酸素化処理と記す場合がある、または酸化物半導体膜に含まれる酸素を化学量論的組成よりも多くする場合を過酸素化処理と記す場合がある。
【0531】
このように、酸化物半導体膜は、脱水化処理(脱水素化処理)により、水素または水分が除去され、加酸素化処理により酸素欠損を補填することによって、i型(真性)化またはi型に限りなく近い酸化物半導体膜とすることができる。このような酸化物半導体膜中には、ドナーに由来するキャリアが極めて少なく(ゼロに近く)、キャリア濃度は1×10
14/cm
3未満、好ましくは1×10
12/cm
3未満、さらに好ましくは1×10
11/cm
3未満、より好ましくは1.45×10
10/cm
3未満となる。
【0532】
またこのように、水素濃度が十分に低減されて高純度化され、十分な酸素の供給により酸素欠損に起因するエネルギーギャップ中の欠陥準位が低減された酸化物半導体層を備えるトランジスタは、極めて優れたオフ電流特性を実現できる。例えば、室温(25℃)でのオフ電流(ここでは、単位チャネル幅(1μm)あたりの値)は、100zA(1zA(ゼプトアンペア)は1×10
−21A)以下、望ましくは、10zA以下となる。また、85℃では、100zA(1×10
−19A)以下、望ましくは10zA(1×10
−20A)以下となる。このように、i型(真性)化または実質的にi型化された酸化物半導体層を用いることで、極めて優れたオフ電流特性のトランジスタを得ることができる。
【0533】
<表示パネルの構成例2.>
図17(B)に例示する表示パネルには、ボトムゲート型のトランジスタが適用されている。また、表示部の画素に設けられた発光モジュールは、第1の基板410側に光を発する構成となっている。
【0534】
具体的には、発光モジュール450Gが備える発光素子420Gの第1の電極421Gが半透過・半反射膜を兼ね、第2の電極422が反射膜を兼ねる構成となっている。その結果、発光素子420Gが発する光は、第1の電極421Gと第1の基板410の間に設けられたカラーフィルタ428Gを介して、第1の基板410から取り出される。言い換えると、発光モジュール450Gの発光素子420Gは、下面射出(ボトムエミッションともいう)型の発光素子ということができる。
【0535】
また、カラーフィルタ428Gは、トランジスタ481が設けられた第1の基板410上に形成される。なお、遮光性の膜429がカラーフィルタ428Gを囲むように形成されている。
【0536】
なお、本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【実施例】
【0537】
本発明の一態様の成膜装置に適用可能な除去室を用いて、成膜材料を除去した結果を、
図18および
図19を用いて以下に説明する。
【0538】
<除去室の構成>
本実施例では、上部電極と下部電極を有する平行平板型のプラズマ源を備える除去室を用いた。13.56MHzの高周波電源を、マッチングボックスを介して上部電極に接続した。下部電極は接地され、ガス導入のためのシャワー板を兼ねる。シャドーマスク・ステージは上部電極と下部電極の間に配置された。
【0539】
上部電極と下部電極の距離は50mmとした。上部電極から試料までの距離はシャドーマスク・ステージの高さを変えて調整できる。本実施例においては、上部電極から試料までの距離を30mmまたは0mmとした。シャドーマスク・ステージはアルミナ製を用いた。
【0540】
<試料および測定>
除去速度を測定する試料として、9−[4−(10−フェニル−9−アントラセニル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)を140nm蒸着したシリコン基板をアルミ板に固定して用いた。なお、CzPAは発光素子に適用できる成膜材料である。
【0541】
プラズマを照射した前後のCzPAの厚みを、エリプソメータ(フィリップス社製、型番PZ2000)を用いて測定した。プラズマを照射した時間でその差を除して、除去速度を算出した。なお、5インチ角の範囲について、その対角線上の3箇所を測定した。
【0542】
<結果1>
除去速度(エッチングレートともいう)の、処理に用いたガスの種類に対する依存性と、高周波電源の出力に対する依存性を、
図18に示す。なお、除去の条件は、ガスの流量を200sccm、圧力を5Pa、上部電極から試料までの距離を30mmとした。
【0543】
水素を用いた場合、高周波電源の出力が300Wのときの除去速度の中央値は6.6nm/min、450Wのときの除去速度の中央値は6.9nm/min、600Wのときの除去速度の中央値は7.4nm/minであった。
【0544】
酸素を用いた場合、高周波電源の出力が300Wのときの除去速度の中央値は35.6nm/min、450Wのときの除去速度の中央値は51.3nm/min、600Wのときの除去速度の中央値は88.0nm/minであった。
【0545】
アルゴンを用いた場合、高周波電源の出力が600Wのときの除去速度の中央値は4.4nm/minであった。
【0546】
除去速度について、酸素が他のガスより優れていた。
【0547】
<結果2>
除去速度の、処理に用いたガスに対する依存性と、上部電極から試料までの距離に対する依存性を、
図19に示す。上部電極から試料までの距離は、30mmまたは0mmとした。なお、除去の条件は、ガスの流量を200sccm(2種類のガスを混合する場合はそれぞれを100sccm)、圧力を5Pa、高周波電源の出力を600Wとした。
【0548】
水素を用いた場合、上部電極から試料までの距離が30mmのときの除去速度の中央値は7.4nm/min、0mmのときの除去速度の中央値は17.3nm/minであった。
【0549】
水素とアルゴンの混合ガスを用いた場合、上部電極から試料までの距離が30mmのときの除去速度の中央値は7.8nm/min、0mmのときの除去速度の中央値は26.2nm/minであった。
【0550】
酸素を用いた場合、上部電極から試料までの距離が30mmのときの除去速度の中央値は88.0nm/min、0mmのときの除去速度の中央値は142.4nm/minであった。
【0551】
酸素とアルゴンの混合ガスを用いた場合、上部電極から試料までの距離が30mmのときの除去速度の中央値は60.7nm/min、0mmのときの除去速度の中央値は124.7nm/minであった。
【0552】
アルゴンを用いた場合、上部電極から試料までの距離が30mmのときの除去速度の中央値は4.4nm/min、0mmのときの除去速度の中央値は17.5nm/minであった。
【0553】
除去速度について、水素とアルゴンの混合ガスが水素よりも優れていた。
【0554】
水素を用いる場合、除去速度について、上部電極から試料までの距離が0mmであると、30mmよりも優れていた。自己バイアス電圧によってイオンが大きく加速される領域にシャドーマスクを配置することで、シャドーマスクに付着した成膜材料を除去する速度を高めることができることが示された。