特許第6231781号(P6231781)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6231781シリンダライナ用の厚さの異なるコーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231781
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】シリンダライナ用の厚さの異なるコーティング
(51)【国際特許分類】
   F02F 1/00 20060101AFI20171106BHJP
   C23C 4/12 20160101ALI20171106BHJP
【FI】
   F02F1/00 G
   F02F1/00 R
   C23C4/12
【請求項の数】17
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-126218(P2013-126218)
(22)【出願日】2013年6月17日
(65)【公開番号】特開2014-1732(P2014-1732A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2016年6月8日
(31)【優先権主張番号】13/527,699
(32)【優先日】2012年6月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ジョン・ドナヒュー
【審査官】 堀内 亮吾
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第03620137(US,A)
【文献】 特開2008−240560(JP,A)
【文献】 特開平03−125079(JP,A)
【文献】 特開2010−190200(JP,A)
【文献】 特開昭61−194187(JP,A)
【文献】 特表2011−522115(JP,A)
【文献】 特開昭62−261649(JP,A)
【文献】 実開昭59−35661(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00−1/42、 7/00
C23C 4/00−6/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライナ本体とコーティングとを備える内燃エンジン用シリンダライナであって、
前記ライナ本体は、前記ライナ本体の長手方向軸に沿って第1の変動幅を有する環状壁を備え、
前記環状壁は、第1の終端、第2の終端および中間部分を有し、
前記コーティングは、前記環状壁の内面に配置され、前記長手方向軸に沿って第2の変動幅を有し、
前記環状壁と前記コーティングの組み合わせにより、前記長手方向軸に垂直な方向の前記シリンダライナ幅を画定し、
前記シリンダライナ幅は、前記第1の変動幅と前記第2の変動幅の双方により画定され、
前記シリンダライナ幅は、前記長手方向軸に沿って均一であり、
前記環状壁上の前記コーティングの前記第2の変動幅は、前記第1の終端から前記中間部分まで漸減し、かつ、前記中間部分から前記第2の終端まで漸増する、
シリンダライナ。
【請求項2】
前記コーティングが、前記第1の終端の近くの前記内面および前記第2の終端の近くの前記内面でより厚く、
前記中間部分の前記内面がコーティングされない、
請求項1に記載のシリンダライナ。
【請求項3】
前記コーティングが、セラミック、セラミックと金属の混合物、合金、および金属化合物から成る群から選択されるコーティング材料を含む、請求項1または2に記載のシリンダライナ。
【請求項4】
前記内面の前記コーティングが、ピストンの上死点に対応する内面の領域でより厚い、請求項1から3のいずれかに記載のシリンダライナ。
【請求項5】
前記内面の前記コーティングが、ピストンの下死点に対応する内面の領域でより厚い、請求項1から4のいずれかに記載のシリンダライナ。
【請求項6】
ピストンとライナとコーティングとを備える内燃エンジン組立体であって、
前記ライナは、前記ライナ本体を備え、
前記ライナ本体は、前記ライナ本体の長手方向軸に沿って第1の変動幅を有する環状壁を備え、
前記コーティングは、前記環状壁の内面に配置され、前記長手方向軸に沿って第2の変動幅を有し、
前記環状壁と前記コーティングの組み合わせにより、前記長手方向軸に垂直な方向の前記シリンダライナ幅を画定し、
前記シリンダライナ幅は、前記第1の変動幅と前記第2の変動幅の双方により画定され、
前記シリンダライナ幅は、前記長手方向軸に沿って均一であり、
前記コーティングの前記第2の変動幅は、前記ライナの第1の終端から中間部分まで漸減し、かつ、前記中間部分から前記ライナの第2の終端まで漸増する、
内燃エンジン組立体。
【請求項7】
前記コーティングは、前記ライナ本体の少なくとも1つの長手軸方向端部に隣接する前記コーティングよりも、前記ピストンの中間行程部分の方が小さな寸法を有する、請求項6に記載の内燃エンジン組立体。
【請求項8】
前記コーティングは、前記ライナ本体の前記長手方向軸に沿って直線的に変化する、請求項6または7に記載の内燃エンジン組立体。
【請求項9】
前記コーティングが、セラミック、セラミックと金属の混合物、合金、および金属化合物から成る群から選択されるコーティング材料を含む、請求項6から8のいずれかに記載の内燃エンジン組立体。
【請求項10】
前記内面の前記コーティングが、ピストンの上死点に対応する内面の領域でより厚い、請求項6から9のいずれかに記載の内燃エンジン組立体。
【請求項11】
前記内面の前記コーティングが、ピストンの下死点に対応する内面の領域でより厚い、請求項6から10のいずれかに記載の内燃エンジン組立体。
【請求項12】
ピストンとライナ本体とコーティングとを備える内燃エンジン組立体であって、
前記ライナ本体は、前記ライナ本体の長手方向軸に沿って第1の変動幅を有する環状壁を備え、
前記環状壁は、第1の終端、第2の終端および中間部分を有し、
前記コーティングは、前記環状壁の内面に配置され、前記長手方向軸に沿って第2の変動幅を有し、
前記環状壁と前記コーティングの組み合わせにより、前記長手方向軸に垂直な方向の前記シリンダライナ幅を画定し、
前記シリンダライナ幅は、前記第1の変動幅と前記第2の変動幅の双方により画定され、
前記シリンダライナ幅は、前記長手方向軸に沿って均一であり、
前記環状壁の前記コーティングの前記第2の変動幅は、前記第1の終端から前記中間部分まで直線的に減少し、かつ、前記中間部分から前記第2の終端まで直線的に増加する、
内燃エンジン組立体。
【請求項13】
前記コーティングが、セラミック、セラミックと金属の混合物、合金、および金属化合物から成る群から選択されるコーティング材料を含む、請求項12に記載の内燃エンジン組立体。
【請求項14】
前記コーティングの前記第2の変動幅は、前記中間部分に対応する内面の領域のコーティングよりも、前記ピストンの上死点に対応する内面の領域の方がより厚い、請求項12または13に記載の内燃エンジン組立体。
【請求項15】
前記コーティングの前記第2の変動幅は、前記中間部分に対応する内面の領域のコーティングよりも、前記ピストンの下死点に対応する内面の領域の方がより厚い、請求項12から14のいずれかに記載の内燃エンジン組立体。
【請求項16】
前記ピストンが、接続ロッドに結合されるように構成され、
前記ピストンが、圧縮リングと、前記ピストンの周縁部に配置されたオイル制御リングとを備える、
請求項12から15のいずれかに記載の内燃エンジン組立体。
【請求項17】
前記第2の変動幅は、前記ライナ本体を熱および接触損傷からの保護を保証するように予め確立されている、請求項12から16のいずれかに記載の内燃エンジン組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される主題は、一般に内燃エンジンのシリンダライナに関し、より具体的には、このようなシリンダライナ用の厚さの異なるコーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な内燃エンジンは、1つまたは複数のピストンと、シリンダブロックと、1つまたは複数のシリンダライナとを含む。シリンダライナまたはスリーブは、シリンダブロックの中に入れられてシリンダを形成する円筒状部品である。シリンダライナはエンジンの重要な構成要素である。シリンダライナは、ピストンに対して滑動する表面として機能する一方で、潤滑油を留める。シリンダライナは、低摩擦および高い摩耗防止性を有するのが望ましい。摩耗は、滑動する固体間に生じる固着摩耗の表面損傷の形態であり、表面歪みの生成において、微細で、通常は局所的な荒れをもたらす。シリンダライナは、高温および高圧の下にあり、ピストンとピストンリングが高速で滑動する。したがって、かなりの耐熱性および耐磨耗性を有するように、シリンダライナには低摩擦係数が望ましい。
【0003】
シリンダライナに、望ましい低摩擦係数ならびに耐熱性および耐磨耗性を与えるように、コーティングが開発されている。コーティングを施すための複数の技術が存在し、さまざまなコーティング材料を使用することができる。使用することができるコーティング技術には、とりわけ、プラズマ溶射、高速酸素燃料溶射、レーザコーティングおよび化学的気相成長法、ならびに電気化学的コーティングがある。コーティングに用いられる材料には、とりわけ、セラミック、セラミックと金属の混合物(サーメット)、合金、金属化合物(例えば酸化チタン)が含まれ得る。シリンダライナのコーティングに用いられる材料は高価であり、エンジンの製造コストがかなり増加する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
例示の限定的でない一実施形態によれば、本発明が関するのは、前後軸を画定し、第1の終端および第2の終端、中間部分を有するライナ本体と、内面と、前後軸に沿って厚さが変化する内面コーティングとを含む、内燃エンジン用のシリンダライナである。
【0005】
別の実施形態では、本発明は、ピストンと、内面および潤滑油を有するライナとを含む内燃エンジン組立体に関する。この内燃エンジンは、ライナの領域においてより薄いコーティングを有する、ライナの内面コーティングも含み、潤滑剤が、少なくとも部分的な動圧潤滑をもたらす。
【0006】
別の実施形態では、本発明は、内燃エンジンのためにシリンダライナをコーティングする方法に関する。この方法は、ライナの第1の内面を、所定の厚さの第1の層でコーティングするステップと、第2の内面を、所定の厚さの第2の層でコーティングするステップと、中間の内面を、コーティングせずに残しておくステップとを含む。
【0007】
別の実施形態では、この方法は、中間部分を、第1の層および第2の層より薄い第3の層でコーティングするステップを含む。
【0008】
本発明の他の特徴および利点が、好ましい実施形態の以下のより詳細な説明から、本発明の原理を一例として示す添付図面とともに解釈されて明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態によるライナを有する限定的でないピストン組立体の断面図である。
図2】一実施形態によるライナを有する限定的でないピストン組立体の断面図である。
図3】一実施形態によるシリンダ内径を有する限定的でないピストン組立体の断面図である。
図4】一実施形態によるライナの限定的でない断面図である。
図5】一実施形態によるライナの限定的でない断面図である。
図6】一実施形態によるライナの限定的でない断面図である。
図7】一実施形態によるライナの限定的でない断面図である。
図8】一実施形態によるライナの限定的でない断面図である。
図9】一実施形態によるライナの限定的でない断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
内燃エンジン組立体11の実施形態の代表的な実例が、図1に示されている。内燃エンジン組立体11は、シリンダヘッド15を有し、吸気口17および排気口19も有する、シリンダブロック13を含むことができる。シリンダブロック13には、シリンダライナ21およびピストン23が配置されている。いくつかの実施形態では、シリンダライナ21は、ブロック13の中に設置されるシリンダブロック13の個別の構成要素とすることができる。他の実施形態では、シリンダライナ21は、ブロック13の一体化している部分とすることができ、ブロック13の、ピストン23が配置される部分だけを説明する。ピストン23は、接続ロッド25に結合されてもよく、圧縮リング27および29、ならびにピストン23の周縁部上に配置されたオイル制御リング30も含むことができる。シリンダライナ21は、ライナ本体XXに施されたコーティング31を含むことができる。図1の実施形態に示されるように、コーティング31は、上死点におけるより厚いコーティング(TDCコーティング33)および下死点におけるより厚いコーティング(BDCコーティング35)を有する、変化する厚さを有することができる。中間行程部分37におけるコーティングは、TDCコーティング33およびBDCコーティング35より薄くてもよい。いくつかの実施形態では、中間行程部分37のいくらかまたはすべてにおいて、コーティングがなくてもよい。シリンダライナ21の内面39に、コーティング31が施される。図1は下死点のピストンを示し、図2は中間行程のピストン23を示す。いくつかの実施形態では、シリンダライナ21は、コーティング31が施された後に、シリンダライナ21および/またはコーティング31に沿った一定の内部穴径(または半径)を形成するように、穴を空けられる、または研磨される。他の実施形態では、シリンダライナ21は、コーティング31が施された後に、穴を空けられる、または研磨されるが、内部穴径は、シリンダライナ21および/またはコーティング31に沿って一定でないままである。さらに他の実施形態では、シリンダライナ21および/またはコーティング31は、コーティング31が施された後、穴を空けられる、または研磨されることがない。エンジン組立体には、ピストン23と、シリンダライナ21またはコーティング31との間の摩擦を低減するのに役立つ潤滑剤(図示せず)が備わっていてもよい。
【0011】
原則として、シリンダライナ21のコーティング31は、耐磨耗性ならびに低摩擦の特性をもたらさなければならない。摩擦は、表面のタイプによって影響を受ける。潤滑された表面の摩擦は、(実質的に動圧潤滑がない領域の)境界摩擦、(動圧潤滑がある領域の)流体摩擦、および(少なくとも部分的な動圧潤滑がある領域の)混合摩擦として分類されてもよい。境界摩擦は、完全に乾燥して、表面凹凸の接触しかない表面間の摩擦に関する。流体摩擦は、潤滑剤によって完全に分離された、表面凹凸の接触がない表面間の摩擦に関する。境界摩擦と流体摩擦が組み合わさったとき、混合摩擦が生じる。流体摩擦は動圧潤滑に関連しており、境界摩擦は潤滑の境界条件に関連している。潤滑は、動圧潤滑から境界潤滑へと移行する。動圧潤滑は、ピストンの滑動速度が高い中間行程の近傍で促進される。ピストン行程の上死点および下死点ならびにその近くでは、滑動速度は、可動潤滑が動圧潤滑から境界潤滑へと移行するものであった。境界潤滑では、オイル膜が壊れ、表面凹凸の接触となって磨耗する。上死点(TDC)では、有効なオイルがより少なく、圧力がより高く、高温のために粘度がよりより低いので、磨耗条件は最も厳しいものである。磨耗は、ピストン中間行程で最小になる。したがって、シリンダライナ21の上死点および下死点の領域は、コーティングをより多くするのが望ましい。中間行程領域は、必要とするコーティングがより少ない。ピストンの中間行程領域で、より薄いコーティングを用いることにより、コーティング材料の使用量が顕著に低減され得る。
【0012】
図3は、個別のシリンダライナ構成要素のない内燃エンジン組立体11の実施形態(この実施形態のライナは、シリンダブロック13の一体化された部分である)の代表的な実例である。この内燃エンジン組立体は、シリンダヘッド15を有し、吸気口17および排気口19も有する、シリンダブロック13を含むことができる。シリンダブロック13には、ピストン23が配置されている。ピストン23は、接続ロッド25に結合されてもよく、圧縮リング27および29、ならびにピストン23の周縁部上に配置されたオイル制御リング30も含むことができる。シリンダブロック13は、コーティング31を含むことができる。図3の実施形態に示されるように、コーティング31は、上死点におけるより厚いコーティング(TDCコーティング33)および下死点におけるより厚いコーティング(BDCコーティング35)を有する、変化する厚さを有することができる。中間行程37におけるコーティングは、TDCコーティング33およびBDCコーティング35より薄くてもよい。シリンダブロック13の内面39に、コーティング31が施される。
【0013】
図4図9は、シリンダライナ21に必要なコーティング材料の量を低減するのに使用することができる、コーティング塗布のさまざまな実施形態を示す。図4は、シリンダライナ21の縦軸に沿った部分断面図を示す。図4に示されるように、シリンダライナ21の本体は、概念的に3つの部分に分割され得る。第1の終端部分41は、ピストン23の上死点位置に対応し得る。シリンダライナ21は、第1の内面43を有してもよく、これに対して第1の終端部分コーティング44が施されてもよい。第2の終端部分45は、ピストン23の下死点位置に対応し得る。シリンダライナ21は、第2の内面47を有してもよく、これに対して第2の終端部分コーティング48が施されてもよい。中間部分49は、中間部分コーティング52が施され得る中間の内面51に関連してもよく、第1の終端部分コーティング44、第2の終端部分コーティング48、および中間部分コーティング52は、同一の材料とすることができ、またはコーティング31用の別の材料から成るものでもよい。図4に示された実施形態では、第1の終端部分コーティング44および第2の終端部分コーティング48は中間部分コーティング52より厚く、肉厚部分から中心部分へと直線的にテーパ化してもよい。図5は、中間部分コーティング52が施されていない実施形態を示す。図6は、第1の終端部分コーティング44のみが施されている実施形態を示す。図4図6の実施形態では、コーティングの厚さは、シリンダライナ21の前後軸に沿って直線的に変化するが、コーティングの断面は、直線以外に曲線を包含してもよいことが当業者には明らかであろう。図7図9は、コーティング31の厚さがステップ関数で変化する実施形態を示す。図6では、第1の内面43および第2の内面47にコーティングが施される。この実例では、第1の終端部分コーティング44および第2の終端部分コーティング48の厚さは、シリンダライナ21の前後軸に沿って変化しない。中間部分コーティング52は、第1の終端部分コーティング44および第2の終端部分コーティング48より薄い。図8は、中間の内面51にはコーティングが施されない実施形態を示す。図9は、第1の終端部分コーティング44のみが施されている実施形態を示す。
【0014】
一実施形態では、シリンダライナ21のコーティングは、とりわけ、プラズマ溶射、高速酸素燃料溶射、レーザコーティングおよび化学的気相成長法、ならびに電気化学的コーティングなど、コーティングの利用可能な方法のうち任意のものによって達成されてもよい。コーティングプロセスは、第1の内面43を所定の厚さの第1の層でコーティングするステップと、第2の内面47を所定の厚さの第2の層でコーティングするステップと、中間の内面51を、コーティングせずに残しておくステップとを含むことができる。別の実施形態では、第1の終端部分コーティング44より薄い、中間の内面51のコーティングを施すことにより、コーティングが達成されてもよい。別の実施形態では、コーティングは、第1の内面43にのみ施される。
【0015】
本明細書に用いられるとき、「1つの(a)」、「1つの(an)」、「この(the)」、「少なくとも1つの」、および、「1つまたは複数の」は、互換性があるように用いられる。本明細書に用いられるとき、用語「近く」は、領域、位置、または対象の近傍に配置されていることを意味する。本明細書に用いられるとき、用語「直線的に」は、実質的に直線である方向を説明するのに用いられ、小さな度合いの曲率を有する方向を包含し得る。本明細書に用いられる、コーティングの「厚さ」は、半径方向に沿ったコーティングの寸法である。また、本明細書に用いられるとき、用語「より薄い」は、以前に明示されたコーティングの寸法より小さい寸法を有するコーティングの厚さに関する。本明細書に用いられるとき、用語「所定の厚さ」は、熱および接触損傷からシリンダライナの保護を保証するために前もって確立された厚さを指す。
【0016】
当業者には理解されるように、いくつかの例示的実施形態に関して上記で説明された多くの多種多様な特徴および構成が、本発明の別の可能な実施形態を形成するためにさらに選択的に適用され得る。簡単にするために、また当業者の能力に配慮して、すべての可能な繰返しが提供されている、または詳細に議論されているわけではないが、すべての組合せ、および以下のいくつかの請求項によって、または別様に包含された可能な実施形態が本出願の一部分であることが意図されている。さらに、本発明のいくつかの例示的実施形態の上記説明から、当業者なら、改良形態、変更形態および修正形態に気付くであろう。当業者の能力範囲内の、そのような改良形態、変更形態および修正形態も、添付の特許請求の範囲によって包含されることが意図されている。さらに、前述のものが、本出願の説明された実施形態にのみ関連し、多数の変更形態および修正形態が、本明細書の以下の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される本出願の趣旨および範囲から逸脱することなく行われ得ることが明らかであろう。
【符号の説明】
【0017】
11 内燃エンジン組立体
13 シリンダブロック
15 シリンダヘッド
17 吸気口
19 排気口
21 シリンダライナ
23 ピストン
25 接続ロッド
27 圧縮リング
29 圧縮リング
30 オイル制御リング
31 コーティング
33 TDCにおけるコーティング
35 BDCにおけるコーティング
37 中間行程におけるコーティング
39 内面
41 第1の終端部分
43 第1の内面
44 第1の終端部分コーティング
45 第2の終端部分
47 第2の内面
48 第2の終端部分コーティング
49 中間部分
51 中間の内面
52 中間部分コーティング
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9