(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、円筒形部材の任意の回転角度での固定、及び、固定からの解放を簡単かつ確実に行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために本発明による円筒形部材固定装置は、
円筒形部材を固定する円筒形部材固定装置において、
前記円筒形部材の中心軸を中心として該円筒形部材と相対的な角度が変化する回転部と、前記円筒形部材と前記回転部との間に配置される
複数の転動体と、前記回転部を付勢する付勢部と、を備え、
前記回転部は
環状の押圧リングによって構成され、該押圧リングは、前記円筒形部材との相対的な角度が変化するにしたがって、前記転動体が配置される箇所における前記
押圧リングと前記円筒形部材との距離が徐々に変化し、一の方向に相対的に回転したときに前記
押圧リングと前記円筒形部材との間に前記転動体を噛み込み、他の方向に相対的に回転したときに前記転動体の噛み込みを解除
する複数のテーパ部を有し、前記付勢部は、前記転動体が噛み込む方向に前記
押圧リングを付勢する。
【0009】
そうすると、
押圧リングが、一の方向に相対的に回転して
テーパ部が転動体を噛み込んだときに円筒形部材を固定し、他の方向に相対的に回転して転動体の噛み込みが解消されたとき円筒形部材が解放される。また、付勢部により円筒形部材が固定される方向に回転部が付勢されているので、外部から操作しなくても、円筒形部材が固定される。さらに、付勢部による付勢力を操作することで、円筒形部材を解放することができる。そして、付勢部による付勢力を調整することで、
テーパ部が転動体を押す力を調整することができる。これにより、許容される最大荷重を超える回転力が加えられた場合に、転動体が円筒形部材の表面を滑るように、該転動体を押す力を調整できる。このため、円筒形部材固定装置の破損、または、円筒形部材固定装置が取り付けられている部材の破損を抑制できる。また、付勢力が大きくなるように調整すれば、より確実なロックが可能となる。このようにして、円筒形部材の任意の回転角度での固定、及び、固定からの解放を簡単かつ確実に行うことができる。また、円筒形部材の中心軸方向への移動を制限することもできる。
【0010】
なお、
テーパ部は、前記円筒形部材との相対的な角度が変化するにしたがって、前記転動体が配置される箇所における前記円筒形部材との距離が徐々に変化
し、押圧リングが前記円筒形部材に対して相対的に回転したときに、前記転動体が配置される箇所において、前記テーパ部と前記円筒形部材との距離の最小値が、前記転動体の直径よりも小さく、前記テーパ部と前記円筒形部材との距離の最大値が、前記転動体の直径よりも大きくなるように前記テーパ部が形成され、前記付勢部は、前記転動体が配置される箇所における前記
テーパ部と前記円筒形部材との距離が小さくなる方向に前記回転部を付勢してもよい。
【0011】
本発明においては、前記転動体を回転可能に保持しつつ、前記円筒形部材の中心軸周りの移動を制限する保持具を備え、
前記付勢部は、前記保持具を基点にして、前記保持具から前記
押圧リングを前記転動体が噛み込む方向に付勢する構成とし、前記転動体の噛み込みを解除するときには、前記保持具を基点にして、前記転動体が配置される箇所における前記
押圧リングのテーパ部と前記円筒形部材との距離が大きくなる方向に、前記
押圧リングを、前記付勢部の付勢力に抗して回転させるように構成することができる。
【0012】
保持具を備えることにより、転動体を介して円筒形部材に均一に力を加えることができる。そして、円筒形部材と
押圧リングのテーパ部との間に転動体が噛み込むとき、及び、噛み込みが解除されるときには、円筒形部材に対する保持具の位置や角度は変化しない。すなわち、円筒形部材と
押圧リングのテーパ部との間に転動体が噛み込むとき、及び、噛み込みが解除されるときには、円筒形部材に対して、
押圧リングが相対的に回転する。ところで、
押圧リングのテーパ部と円筒形部材との距離が大きくなる方向に転動体を相対的に移動させれば、転動体の噛み込みを解除することができる。この場合、例えば、保持具を回転させて転動体を移動させることも考えられる。すなわち、保持具により転動体を押して、該転動体を移動させることも考えられる。しかし、保持具により転動体を押して噛み込みを解除するためには、円筒形部材の表面及び
押圧リングのテーパ部の表面において転動体を滑らす必要があるため、
押圧リングのテーパ部が転動体を円筒形部材に押し付ける力が大きくなると、転動体を滑らすために大きな力が必要となる。一方、
押圧リングを回転させることによっても、転動体が配置される箇所における
押圧リングのテーパ部と円筒形部材との距離を大きくすることができる。そして、
押圧リングを回転させることにより、転動体が
押圧リングのテーパ部の内面を転がって相対的に移動するため、噛み込みを容易に解除することができる。すなわち、滑り摩擦よりも転がり摩擦のほうが遥かに小さいため、転動体を滑らすよりも、転がすほうが、小さな力で噛み込みを解消することができる。なお、保持具は、例えばハウジング等に固定してもよい。
【0013】
本発明においては、前記
押圧リングを前記円筒形部材の中心軸方向に2つ備え、夫々の回転部は、前記転動体を噛み込む回転方向が逆であってもよい。そうすると、円筒形部材の両方向への回転を制限することができる。
【0014】
本発明においては、前記転動体を少なくとも3つ備えることができる。そうすると、円筒形部材を転動体で支えることができるので、
押圧リングが相対的に回転するときの摩擦を小さくすることができる。
【0015】
本発明においては、前記転動体の前記円筒形部材の中心軸方向の移動を制限する制限部
を備えることができる。そうすると、円筒形部材と
押圧リングとの中心軸方向の相対的な移動を制限できる。
なお、保持具については、保持具を介して、外部負荷を受ける構成とすることができる。たとえば、上記保持具に固定されるハウジングを介して外部負荷を受けるように構成することができる。
【0016】
本発明においては、前記
押圧リングは、前記円筒形部材の外側に配置され、
前記転動体は前記円筒形部材の外面と前記押圧リングの内面との間に配置され、
前記
押圧リングは、前記円筒形部材との相対的な角度が変化するにしたがって、前記転動体が配置される箇所における前記
押圧リングのテーパ部と前記円筒形部材との距離が徐々に変化するように、前記角度が変化するに応じて、前記
押圧リングのテーパ部の内面から前記円筒形部材の外面までの距離が変化してもよい。
【0017】
本発明においては、前記
押圧リングは、前記円筒形部材の内側に配置され、
前記転動体は前記円筒形部材の内面と前記
押圧リングの外面との間に配置され、
前記
押圧リングのテーパ部は、前記円筒形部材との相対的な角度が変化するにしたがって、前記転動体が配置される箇所における前記
押圧リングのテーパ部と前記円筒形部材との距離が徐々に変化するように、前記角度が変化するに応じて、
前記押圧リングのテーパ部の外面から前記円筒形部材の内面までの距離が変化してもよい。
【0018】
円筒形部材の外側または内側の一方から円筒形部材を固定することにより、円筒形部材の外側または内側の他方に取り付けスペースが無い場合であっても、円筒
形部材を固定することができる。
本発明に用いる転動体は、転動体の中心軸からの距離が全周にわたって均一の外周形状を有する円形断面の転動体を用いることができるし、転動体の中心軸からの距離が不均一の外周形状を有する非円形断面の転動体を用いることもできる。
非円形断面の転動体として、円筒形部材との接触面部と
押圧リングのテーパ部との接触面部との2つの接触面部のうちの少なくとも一方の接触部の曲率半径が、前記2つの接触面部に内接する仮想円の半径よりも大径に設定することができる。このようにすれば、転動体の接触面積が大きくなり、保持力が増大するという利点がある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、円筒形部材の任意の回転角度での固定、及び、固定からの解放を簡単かつ確実に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る円筒形部材固定装置(以下、単に固定装置という。)の具体的な実施態様について図面に基づいて説明する。
【0022】
(実施例1)
図1は、本実施例に係る固定装置1の正面図である。また、
図2は、本実施例に係る固定装置1の側面図である。また、
図3は、
図1における切断線Yにより固定装置1を切断したときの断面図である。また、
図4は、
図2における切断線Zにより固定装置1を切断したときの断面図である。
【0023】
固定装置1は、第一ハウジング2、第二ハウジング3、第三ハウジング4を備えて構成されている。第二ハウジング3は、第一ハウジング2と、第三ハウジング4と、に挟持されている。そして、第一ハウジング2、第二ハウジング3、第三ハウジング4は、共通の中心軸Aを有している。すなわち、第一ハウジング2、第二ハウジング3、第三ハウジング4は、中心軸Aの方向に、順に配置されている。
【0024】
第一ハウジング2、第二ハウジング3、第三ハウジング4は、中心軸Aと平行に、中心軸Aを中心として等角度に配置される6本のボルト100により締結されている。第一ハウジング2側から第三ハウジング4側に向かって3本のボルト100が締め込まれる。この場合、第三ハウジング4側に雌ねじが形成される。一方、第三ハウジング4側から第一ハウジング2側に向かって3本のボルト100が締め込まれる。この場合、第一ハウジング2側に雌ねじが形成される。なお、第一ハウジング2、第二ハウジング3、第三ハウジング4を締結するボルト100の数は6本に限らず、5本以下であってもよく、7本以上であってもよい。また、第一ハウジング2、第二ハウジング3、第三ハウジング4の形状は、後述する保持具5を固定可能な形状であればよい。また、第一ハウジング2、第二ハウジング3、第三ハウジング4は、必ずしも必要ではなく、後述する保持具5を直接他の部材に固定する構造としてもよい。また、円筒形部材50を保持する部材の形状を後述する保持具5と同形状にすれば、第一ハウジング2、第二ハウジング3、第三ハウジング4は必要ない。
【0025】
第一ハウジング2、第二ハウジング3、第三ハウジング4の中心軸Aの周りには、パイプ状の保持具5を通すための孔が開けられている。保持具5の中心軸は、第一ハウジング2、第二ハウジング3、第三ハウジング4の中心軸Aと同じである。
【0026】
保持具5は、第一ハウジング2から第三ハウジング4まで貫通しており、該保持具5の両端側の外周面が、第一ハウジング2及び第三ハウジング4に開けられた孔の内周面と接している。また、保持具5は、中心軸A方向の両端側の肉厚よりも中央側のほうの肉厚が薄い。すなわち、第一ハウジング2側、及び、第三ハウジング4側で肉厚が比較的厚く、第二ハウジング3側で肉厚が比較的薄い。保持具5の外径は一定であるため、保持具5の内径は、両端側で比較的小さく、中央側で比較的大きくなっている。そして、保持具5の内径は、保持対象である円筒形部材50の外径よりも若干大きくなるように形成される。なお、保持具5の内径は、一定であってもよい。
【0027】
保持具5は、ボルト101により、第一ハウジング2及び第三ハウジング4に固定されている。ボルト101は、第一ハウジング2及び第三ハウジング4の外周側から中心軸A側に向かって貫通している。このボルト101は、中心軸Aを中心として等角度に3箇所ずつ設けられている。そして、ボルト101の先端が、保持具5の外面と内面との間まで到達している。このボルト101を締め付けることにより、保持具5が、第一ハウジング2及び第三ハウジング4に固定される。なお、ボルト101は等角度に配置しなくてもよく、また、ボルト101の数は3より多くても、また少なくてもよい。また、ボルト101以外の手段(例えば、溶接、接着、リベット等)を用いて、保持具5を第一ハウジング2及び第三ハウジング4に固定してもよい。
【0028】
保持具5の中央側においては、該保持具5の外面と、第一ハウジング2、第二ハウジング3、第三ハウジング4の内面とで囲まれ、中心軸Aを中心とする円筒状の空間8が形成されている。このため、第一ハウジング2及び第三ハウジング4は、保持具5の両端側において該保持具5と接しているが、保持具5の中央側においては該保持具5と離れている。すなわち、保持具5の中央側における第一ハウジング2及び第三ハウジング4の内径は、保持具5の両端側における第一ハウジング2及び第三ハウジング4の内径よりも大きい。この保持具5の中央側における第一ハウジング2及び第三ハウジング4の内径と、第二ハウジング3の内径と、は略等しい。
【0029】
空間8には、中心軸Aの方向に、第一ハウジング2側から順に、第一固定機構80及び第二固定機構90が配置されている。なお、第一固定機構80を中心軸Aと直交する線を中心として180度回転させたものが第二固定機構90に相当する。そして、第一固定機構80と第二固定機構90とは、許容する回転方向及び制限する回転方向が逆になるだけなので、主に第一固定機構80について説明する。
【0030】
第一固定機構80は、押圧リング6、ローラー9、スペーサ61及び止め輪62を備えて構成されている。なお、保持具5も第一固定機構80の一部を構成している。
【0031】
押圧リング6は、保持具5の周りの空間8に設けられている。また、保持具5と押圧リング6との間には、ローラー9が中心軸Aを中心として等角度に3つ設けられている。ローラー9の中心軸は、保持具5の中心軸Aと平行である。なお、ローラー9の数は、4つ以上であってもよい。そして、本実施例においてはローラー9が、本発明における転動体に相当し、ローラー9の中心軸と直交方向の断面形状が、中心軸からの距離が全周にわたって均一の円形断面形状となっている。円形断面形状の転動体には、その他に球体等を用いることもできる。
【0032】
そして、保持具5には、ローラー9を保持するための長穴10が設けられている。長穴10の長手方向は、中心軸Aと平行である。長穴10は、中心軸Aに対するローラー9の角度が変化しないように、保持具5の周方向におけるローラー9の移動を制限する。また、長穴10は、保持具5の外面側から内面側に向かって徐々に内径が小さくなるように形成されている。
【0033】
そして、保持具5の内面に開口する長穴10の短手方向の長さは、ローラー9の直径よりも小さい。このように、長穴10を形成することにより、ローラー9が保持具5の内側に落下することを防止する。また、ローラー9を保持具5の外面側から長穴10内に配置したときに、ローラー9の外面の一部が保持具5の内周面から中心軸A側に突出するように、長穴10が形成される。そして、保持具5から突出したローラー9が、円筒形部材50まで届くように、長穴10が形成される。また、保持具5の外面よりも外側にローラー9が突出するように長穴10が形成される。
【0034】
押圧リング6は、中心軸Aを中心として、
図4の右回りに角度が増すに従って、内面が中心軸A側に徐々に近付くテーパ部6Aを3箇所備えている。このテーパ部6Aでは、押圧リング6の厚さが変化しているともいえる。なお、テーパ部6Aにおいては、中心軸Aの周りの角度が増すに従って所定の割合で厚さが増してもよい。また、厚さの増す割合の最適値を実験により求めたり、シミュレーションにより求めたりしてもよい。
【0035】
テーパ部6Aは、ローラー9の数に応じて形成される。このため、本実施例では、中心軸Aから見て120度毎にテーパ部6A形成される。そして、隣り合うテーパ部6Aとの間では、中心軸Aから押圧リング6の内面までの距離が急変する。
【0036】
すなわち、中心軸Aを中心とした角度が120度の範囲で徐々に厚さが増した後、元の厚さに戻る。これが中心軸Aの周りで3回繰り返される。なお、中心軸Aを中心とする押圧リング6の外径は一定である。本実施例では、中心軸Aを中心としてローラー9を3つ設けているため、120度毎に押圧リング6の厚さが元に戻るが、ローラー9の個数に応じて、この角度を変更する。
【0037】
このように形成される押圧リング6により、該押圧リング6の内面と、保持具5との隙間が、徐々に狭くなる。そして、押圧リング6と保持具5との隙間に、該保持具5の長穴10からローラー9が突出している。ローラー9の保持具5からの突出量(ローラー9の外面から、保持具5の最も遠い箇所までの距離)は、保持具5の外面と押圧リング6の内面との距離の最小値よりも大きく、最大値よりも小さい。また、ローラー9の直径は、円筒形部材50の外面と押圧リング6の内面との距離の最小値よりも大きく、最大値よりも小さい。
【0038】
押圧リング6は、中心軸Aを中心として回転可能に備わる。一方、ローラー9は、中心軸Aを中心とする回転が制限されている。すなわち、押圧リング6が回転することにより、ローラー9が設けられている箇所における保持具5の外面と押圧リング6の内面との距離が変化する。同様に、ローラー9が設けられている箇所における押圧リング6の内面と、円筒形部材50の外面との距離が変化する。そして、押圧リング6が中心軸Aを中心として回転すると、ローラー9がテーパ部6Aの内面に沿って転がる。
【0039】
また、保持具5の外面と押圧リング6の内面との間には、スペーサ61及び止め輪62が設けられている。止め輪62は、C型の止め輪であり、押圧リング6の内周面に設けられる溝にはめられている。スペーサ61は、ローラー9と止め輪62との間に設けられ、両部材の隙間を埋めている。スペーサ61は、中心軸Aの周りを一周している。スペーサ61及び止め輪62を設ける箇所においては、押圧リング6の内径を一定としてもよい。このスペーサ61及び止め輪62により、ローラー9の中心軸A方向の移動を制限している。
【0040】
なお、長穴10の中心軸A方向の長さが大きいと、円筒形部材50に対して中心軸A方向に力が加えられたときに、ローラー9が押圧リング6ごと中心軸A方向に移動する虞がある。これに対して本実施例では、押圧リング6と第一ハウジング2との中心軸A方向の距離を短くしている。これにより、押圧リング6に対して中心軸A方向の力が加わったとしても、押圧リング6が第一ハウジング2に当たり、移動が制限される。逆方向の力に対しては、第二固定機構90に備わる押圧リング6が第三ハウジング4に当たることにより、移動が制限される。
【0041】
なお、本実施例においては押圧リング6が、本発明における回転部に相当する。また、本実施例においてはスペーサ61及び止め輪62が、本発明における制限部に相当する。
【0042】
押圧リング6の外面には、レバー11が取り付けられている。レバー11は、押圧リング6の外周方向に沿って形成される固定部11Aと、該固定部11Aから直立して第一ハウジング2、第二ハウジング3、第三ハウジング4の外側まで延びる直立部11Bとを備えて構成される。固定部11Aは、該固定部11Aの周方向に配置される2本のボルト11Cにより押圧リング6に固定される。また、レバー11を第一ハウジング2、第二ハウジング3、第三ハウジング4の外側まで延ばすために、第二ハウジング3の一部を切り取っている。直立部11Bには、中心軸Aを中心として
図4の左周りの方向に付勢するスプリング12の一端が取り付けられている。このスプリング12の他端は、第二固定機構90のレバー13に取り付けられている。
【0043】
スプリング12は、押圧リング6がローラー9を押す力が大きくなる方向に、該押圧リング6を付勢している。すなわち、スプリング12は、押圧リング6と円筒形部材50との間にローラー9を噛み込む方向に、押圧リング6を付勢している。なお、本実施例では、第一固定機構80のレバー11と第二固定機構90のレバー13とを、1つのスプリング12で両レバー11,13が離れる方向に付勢している。これに対し、夫々の固定機構80,90において、夫々にスプリングを備えてもよい。また、第一ハウジング2、第二ハウジング3、第三ハウジング4の何れかに、夫々の固定機構80,90に対応するスプリング12を取り付けるようにしてもよい。また、第一ハウジング2、第二ハウジング3、第三ハウジング4の何れかにスプリング12を固定するための器具を備え、該器具にスプリング12を取り付けるようにしてもよい。
【0044】
なお、本実施例においてはスプリング12が、本発明における付勢部に相当する。付勢部には、他の種類の弾性体(例えば、ばね又はゴム)などを用いることもできる。
【0045】
このように構成された固定装置1では、スプリング12の付勢力により、押圧リング6が、
図4の左回りの力を受けて回転する。一方、保持具5は、第一ハウジング2及び第三ハウジング4に固定されているので、押圧リング6が回転したとしても、該保持具5は回転しない。押圧リング6が左方向に回転することにより、ローラー9が設けられている箇所では、押圧リング6と円筒形部材50との距離が小さくなり、ローラー9がテーパ部6Aに沿って転がる。そして、ローラー9が、円筒形部材50と押圧リング6との間に噛み込む。このときには、押圧リング6により、ローラー9が円筒形部材50の外面に押し付けられる。すなわち、スプリング12は、保持具5を基点にして、保持具5から回転部としての押圧リング6をローラー9が噛み込む方向に付勢する構成となっている。
【0046】
ローラー9は等角度に3箇所設けられており、夫々のローラー9が中心軸A側に向かって円筒形部材50を押し付けるので、該円筒形部材50を保持することができる。すなわち、中心軸Aを中心とする円筒形部材50の回転を停止させることができる。また、中心軸A方向の円筒形部材50の移動を停止させることもできる。このときの円筒形部材50を保持する力は、スプリング12の付勢力に応じて変わる。すなわち、スプリング12の付勢力を大きくするほど、押圧リング6を回転させる力が大きくなるので、テーパ部6Aを介してローラー9を円筒形部材50に押し付ける力が大きくなる。そして、スプリング12の付勢力により、円筒形部材50と押圧リング6との間にローラー9を噛み込んだ状態が維持される。
【0047】
また、スプリング12の付勢力に反してレバー11の直立部11Bをスプリング12が縮む方向(
図4の右方向)に移動させると、押圧リング6が中心軸Aを中心として、右方向に回転する。これにより、テーパ部6Aに沿ってローラー9が転がって、ローラー9の噛み込みが解消される。すなわち、ローラー9の噛み込みを解除するときには、保持具5を基点にして、ローラー9が配置される箇所における押圧リング6と円筒形部材50との
距離が大きくなる方向に、押圧リング6を、スプリング12の付勢力に抗して回転させる構成となる。また、ローラー9が備わる箇所における円筒形部材50と押圧リング6との隙間が大きくなるので、該ローラー9を中心軸A側に押し付ける力が弱まったり、押し付ける力が無くなったりする。そうすると、ローラー9により円筒形部材50を保持することができなくなるので、該円筒形部材50が自由に進退または回転することができる。
【0048】
なお、第一固定機構80だけでは、円筒形部材50の一方向への回転を止めることはできるが、他方向(逆方向)への回転を止めることはできない。すなわち、
図4において、円筒形部材50に中心軸Aを中心とする右方向に回転する力を加えた場合には、円筒形部材50に接するローラー9には、該ローラー9の中心軸を中心として左方向に回転させる力が加わる。そして、ローラー9が左方向に回転すると、押圧リング6には左方向に回転する力が加わるため、ローラー9が円筒形部材50を押す力が大きくなる。これにより、円筒形部材50の右方向への回転が止められる。
【0049】
一方、円筒形部材50に中心軸Aを中心とする左方向に回転する力を加えた場合には、円筒形部材50に接するローラー9には、該ローラー9の中心軸を中心として右方向に回転させる力が加わる。ローラー9が右方向に回転すると、押圧リング6には右方向に回転する力が加わるため、ローラー9が円筒形部材50を押す力が小さくなる。これにより、円筒形部材50の左方向への回転が許容される。
【0050】
これに対し、本実施例では、第二固定機構90を設けている。第二固定機構90は、第一固定機構80と逆向きに取り付けられている。このため、円筒形部材50の回転方向であって、押圧リング6がローラー9を押し付ける力が増加する回転方向及び減少する回転方向が、第一固定機構80と第二固定機構90とで逆になる。すなわち、第一固定機構80だけでは、円筒形部材50が中心軸Aを中心として
図4の左方向に回転し得るが、第二固定機構90により、この回転が止められる。同様に、第二固定機構90だけでは、円筒形部材50が中心軸Aを中心として
図4の右方向に回転し得るが、第一固定機構80により、この回転が止められる。このように、第一固定機構80及び第二固定機構90を設けることにより、円筒形部材50の両方向への回転を止めることができる。また、円筒形部材50の中心軸A方向の移動も止めることができる。
【0051】
ここで、ローラー9は、該ローラー9の中心軸を中心として回転可能に保持具5に保持されている。このため、押圧リング6が回転するときに、押圧リング6と接しているローラー9が、該ローラー9の中心軸を中心として回転する。このため、押圧リング6とローラー9との間の摩擦は比較的小さい。ここで、例えば、円筒形部材50のアンロック時に、保持具5を回転させてローラー9の噛み込みを解消することも考えられる。しかし、保持具5によりローラー9を押して噛み込みを解除するためには、円筒形部材50の表面及び押圧リング6の表面においてローラー9を滑らす必要がある。滑り摩擦は、転がり摩擦よりも大きいため、押圧リング6がローラー9を円筒形部材50に押し付ける力が大きくなると、噛み込みを解除するためにより大きな力が必要となる。一方、本実施例のように、保持具5を第一ハウジング2及び第三ハウジング4に固定し、押圧リング6を回転させることによりアンロックを行う場合には、押圧リング6を回転させることによりローラー9がテーパ部6Aを転がって相対的に移動するため、ローラー9の噛み込みを容易に解除することができる。すなわち、滑り摩擦よりも転がり摩擦のほうが小さいため、ローラー9を押して滑らすよりも、ローラー9を転がすほうが、小さな力で噛み込みを解消することができる。このため、本実施例では、転がり摩擦を超える力を加えるだけで、円筒形部材50を解放することができる。また、円筒形部材50を固定するときに要する力も小さくてよい。このように、本実施例によれば、円筒形部材50のロック及びアンロックが容易である。
【0052】
以上説明したように、本実施例によれば、円筒形部材50の回転及び進退をより確実に止めることができる。また、固定された円筒形部材50を解放するために要する力が少なくて済む。
【0053】
さらに、ローラー9を用いることにより、円筒形部材50には、点ではなく線で接触することができるので、円筒形部材50の変形を抑制できる。また、ローラー9を円筒形部材50に押し付けることにより円筒形部材50を固定しているので、円筒形部材には特別な形状や構造が必要でない。
【0054】
また、スプリング12による付勢力を調整することで、押圧リング6がローラー9を円筒形部材50へ向かって押す力を調整することができる。そうすると、許容される最大荷重を超える回転力が加えられた場合に、ローラー9が円筒形部材50の表面を滑るように調整することができるため、固定装置1の破損、または、固定装置1が取り付けられている部材の破損を抑制できる。ここで、一般的なワンウェイクラッチは、押圧リングがハウジングに固定されていて、保持具5またはローラーをくさび形の隙間にスプリング等で押し込むことで、円筒形部材50の回転を止めている。このような構造では、円筒形部材50を固定する力は強いものの、許容される最大荷重を超えても円筒形部材50を保持するため、何れかの部品が破損するまで円筒形部材50を保持してしまう。これに対し、本実施例に係る固定装置1では、スプリング12の付勢力を調整することができるので、許容される最大荷重を超える前に、ローラー9が滑ることで前記破損を抑制できる。また、スプリング12による付勢力を大きくすることで、円筒形部材50を保持する力を大きくすることができる。
【0055】
そして、本実施例によれば、例えば、固定装置1を扉の蝶番に用いる場合には、扉を任意の角度で止めることができる。この場合、蝶番の回転軸が円筒形部材に相当し、固定装置1は上記第1、第2、第3ハウジング2,3,4を利用して外部部材に固定され、ロック時に作用する固定反力等の外部負荷はハウジングを介して保持具5で受けられることになる。また、椅子のヘッドレストやバックレスト等に用いる場合には、これらを任意の角度で固定することができる。この場合、ヘッドレストやバックレストの軸が円筒形部材に相当し、固定反力等の外部負荷はハウジングを介して保持具5で受けられる。さらに、車輪の軸に用いる場合には、車輪のロック機構として用いることができる。この場合、車軸が円筒形部材に相当し、固定反力等の外部負荷はハウジングを介して保持具5で受けられる。
本実施例に係る固定装置1の適用範囲は、これらに限らず、軸の固定及び回転が要求されるものであれば適用可能であり、外部負荷を保持具5で負荷するように構成することができる。
【0056】
なお、本実施例係る各部材の材料は金属であるが、これに限らない。例えば、一部または全部の材料を樹脂としてもよい。
【0057】
また、本実施例では、第一固定機構80と第二固定機構90とを用いて、円筒形部材50の両方向への回転を制限しているが、第一固定機構80または第二固定機構90の一方のみを用いることにより、一方向への回転は許容し、逆方向への回転を制限することができる。この場合、例えば、スプリング12の一端をレバー11に取り付け、スプリング12の他端を、第一ハウジング2、第二ハウジング3、第三ハウジング4、又はこれらに固定された部材に取り付ける。このようにすることで、円筒形部材50を一方向に回転させるときにはレバー11を操作しなくてもよい。
【0058】
このような固定装置1を、例えば扉の蝶番に用いる場合には、扉が開くことを許容し、閉じることを制限することができる。また、椅子のヘッドレストやバックレストに用いる
場合には、これらを最も倒した位置から起こす方向への移動を許容し、倒れる方向への移動を制限することができる。すなわち、ヘッドレストやバックレストを手で起こす途中において、この手を離した時点で、ヘッドレスト又はバックレストの位置を固定することができる。また、車輪の軸に用いる場合には、車輪の一方向への回転を許容し、逆方向への回転を制限することができる。なお、これらに限らず、軸の固定及び回転が要求されるものであれば適用可能である。
【0059】
(実施例2)
本実施例は、円筒形部材50の内側(すなわち、中心軸A側)に押圧リング70が備わる点で実施例1と相違する。
【0060】
図5は、本実施例に係る固定装置200の断面図である。
図5は、円筒形部材50の中心軸Aと直交する面で切断したときの断面図である。円筒形部材50の内側に押圧リング70が備わる。押圧リング70の内径は一定である。一方、中心軸Aから押圧リング70の外面までの距離は、中心軸Aから見た角度に応じて変化する。
【0061】
押圧リング70の外側には、ローラー9が中心軸Aと平行に設けられている。ローラー9は、中心軸Aを中心として等角度に8つ設けられている。なお、ローラー9の数は、8つに限らない。中心軸Aを中心とするローラー9の移動は、保持具71により制限される。保持具71は、ローラー9に対し、ローラー9の中心軸を中心とする回転は許容している。保持具71は、例えばハウジング等に固定される。
【0062】
押圧リング70は、中心軸Aを中心として、
図5の右回りに角度が増すに従って、外面が中心軸Aから徐々に離れるテーパ部70Aを複数設けている。このテーパ部70Aにおいて、押圧リング70の厚さが変化しているともいえる。なお、テーパ部70Aにおいては、中心軸Aを中心とする角度が増すに従って所定の割合で押圧リング70の厚さが増してもよい。また、押圧リング70の厚さの増す割合の最適値を実験により求めたり、シミュレーションにより求めたりしてもよい。テーパ部70Aは、ローラー9の数に応じて形成されるので、本実施例では、中心軸Aから見て45度毎に形成される。隣り合うテーパ部70Aとの間では、中心軸Aから押圧リング70の外面までの距離が急変する。
【0063】
したがって、押圧リング70の外面と、円筒形部材50の内面との距離は、中心軸A周りの角度によって変わる。
図5では、中心軸Aを中心として右回りに角度が進むに従い、押圧リング70の外面と、円筒形部材50の内面との距離が小さくなる。そして、ローラー9の直径は、押圧リング70の外面と、円筒形部材50の内面との距離の最小値よりも大きく且つ最大値よりも小さい。
【0064】
このように構成された固定装置200では、押圧リング70に対して中心軸Aを中心として左回転する方向に力が加わると、ローラー9が設けられている箇所において、押圧リング70の外面と、円筒形部材50の内面との距離が次第に小さくなる。そして、押圧リング70の外面がローラー9に接すると、テーパ部70Aに沿ってローラー9が転がり、円筒形部材50と押圧リング70との間にローラー9が噛み込む。このときに、押圧リング70がローラー9を円筒形部材50の内面に押し付ける。これにより、円筒形部材50が固定される。ローラー9を円筒形部材50に押し付ける力は、押圧リング70の回転方向に加わる力に応じて決まる。このため、ローラー9が噛み込む方向(
図5において左回転の方向)に、押圧リング70を付勢するスプリング(図示省略)を備える。
【0065】
一方、押圧リング70に対して中心軸Aを中心として右回転する方向に力がかかると、ローラー9がテーパ部70Aを転がって、該ローラー9の噛み込みが解消される。また、ローラー9が設けられている箇所において、押圧リング70の外面と、円筒形部材50の
内面との距離が次第に大きくなる。このため、押圧リング70の外面がローラー9を円筒形部材50の内面に押し付ける力が弱まるので、円筒形部材50が回転及び進退可能となる。
【0066】
そして、実施例1と同様に、固定装置200の取り付け方向を逆にして2つ設けることにより、両方向への回転を制限することができる。
【0067】
以上説明したように、本実施例によれば、円筒形部材50の内側から該円筒形部材50の回転を制限することができる。また、ローラー9の転がりを利用してロック及びアンロックを行うことができるので、ロック及びアンロックが容易になる。そして、押圧リング70をスプリング等で付勢する力を調整することで、押圧リング70がローラー9を円筒形部材50へ向かって押す力を調整することができる。そうすると、許容される最大荷重を超える回転力が加えられた場合に、ローラー9が円筒形部材50の表面を滑るように調整可能なため、固定装置1の破損、または、固定装置1が取り付けられている部材の破損を抑制できる。すなわち、本実施例に係る固定装置200では、押圧リング70を付勢する力を調整することができるので、許容される最大荷重を超える前に、ローラー9を滑らすことで前記破損を抑制できる。
【0068】
また、保持具71をハウジング等に固定しており、押圧リング70を回転させることによりアンロックを行うので、ローラー9がテーパ部70Aを転がって押圧リング70に対して相対的に移動するため、ローラー9の噛み込みを容易に解除することができる。すなわち、滑り摩擦よりも転がり摩擦のほうが小さいため、保持具71でローラー9を押して滑らすよりも、押圧リング70によりローラー9を転がすほうが、小さな力で噛み込みを解消することができる。このように、本実施例によれば、円筒形部材50のロック及びアンロックが容易になる。
【0069】
[他の実施例]
以上、上記各実施例では、転動体として転動体の中心軸(回転軸)からの距離が全周にわたって均一の円形断面のローラー9が用いられているが、これに限定されるものではなく、非円形の異形断面形状の転動体も適用可能である。
図6(A),(B)は、実施例1及び実施例2の固定装置に、転動体として非円形の樽
形断面のローラー29を組み込んだ状態を部分的に示している。ローラー29以外は実施例1、実施例2の構成と同一であり、同一の構成部分については、同一の符号を付している。
【0070】
ローラー29は、
図7(C)に示すように、中心軸Nと直交方向の断面形状が樽形形状で、中心軸Nを挟んで互いに反対側に位置する一対の接触面部としての第1及び第2円弧面部291,292と、第1及び第2円弧面部291,292の両側縁を結ぶ一対の側面
部293,293とを備えている。ここで、ローラー29の中心軸Nは転動する際の回転中心の意味である。図示例では断面形状の図心に一致しているが、断面形状によっては、必ずしも図心に一致しない。
そして、
図6(A),(B)に示すように、第1円弧面部291と第2円弧面部292
の曲率半径R1,R2は同一で、第1円弧面部291と第2円弧面部292に内接する内接円9Aの半径R0よりも大径に設定されている。側面部293の形状としては、図示例では平坦面であるが、平坦面に限らず、全体として楕円形状となるような円弧形状でもよいし、逆に窪んだ凹面形状となっていてもよい。
【0071】
図6(A)では、ローラー29の一方の第1円弧面部291が円筒形部材50の外周面に接触し、他方の第2円弧面部292が押圧リング6内周面のテーパ部6Aに接触している。
図6(B)では、ローラー29の第1円弧面部291が押圧リング70外周面のテー
パ部70Aに接触し、第2円弧面部292が円筒形部材50の内周面に接触している。
【0072】
次に、この樽形のローラー29の挙動について、
図7(A)を参照して説明する。
図7(A)は、
図6(B)の固定装置を例にとって示したものである。すなわち、自由状態では不図示のスプリングのバネ力によって押圧リング70のテーパ部70Aにローラー29が噛みこむ方向に付勢されており(図中、実線矢印方向)、ローラー29の第1円弧面部291及び第2円弧面部292が僅かに転動、すなわち揺動変位し、テーパ部70Aと円筒形部材50内周面間に噛みこまれている。
【0073】
本実施例の樽形のローラー29の場合、第1円弧面部291と第2円弧面部292の曲率半径R1,R2が内接円9Aの半径R0よりも大きいので、この内接円9Aに対応する円筒形状のローラーと比較すると、第1円弧面部291と円筒形部材との接触部及び第2円弧面部292と押圧リング70のテーパ部70Aとの接触部における接触面積が増大し、固定保持力を高めることができる。特に、凹面となる円筒部材50内周面に接触する第1円弧面部291側について、接触面積増大効果が高く有効である。
【0074】
クランプを解除する場合には、押圧リング70と保持具5を、ローラー29の噛みこみを解除する方向(図中、破線矢印方向)に相対回転することにより、ローラー29が解除方向に揺動するとともに滑り、アンクランプ状態となる。
なお、図示例では、ローラー29の中心軸方向の長さが第1円弧面部291と第2円弧面部292間の最大径より長くなっているが、上記樽形断面形状に限らず、
図7(C)に示すように、中心軸方向の長さが第1円弧面部291と第2円弧面部292との最大径より短くてもよい。
【0075】
また、上記実施例では、第1円弧面部291と第2円弧面部292の曲率半径R1、R2の、いずれについても、内接円9Aの半径Rよりも大きく設定しているが、一方の曲率半径を仮想円9Aの半径よりも大きくし、他方の曲率半径を仮想円9Aの半径と同等あるいは小さく設定してもよい。その場合には、ローラー29が接触する部材が凹面となる側、
図6(A)ではテーパ部6A側の第2円弧面部292、
図6(B)では円筒形部材50側の第1円弧面部291の曲率半径を大きくしておけば、接触面積増大効果を高くできる。
図7(D)には、一方の円弧面部、図示例では第1円弧面部291の曲率半径が第2円弧面部292の曲率半径よりも大きい形態の一例を示している。この場合、曲率半径が大きい側の第1円弧面部291の円弧長が、曲率半径の小さい側の円弧面部292の円弧長より長い涙滴形状となる。
【0076】
このように接触面積増大のためには、第1円弧面部291と第2円弧面部292のいずれか一方を、内接円9Eの半径よりも大径とすることが有効であるが、このような構成に限定されるものでなく、第1円弧面部291と第2円弧面部292の曲率半径を内接円9Eの半径と同一にしてもよいし、さらに、第1円弧面部291と第2円弧面部292の曲率半径の少なくともいずれか一方を、内接円9Eの半径より小さく設定してもよい。この場合、接触面積増大の効果は無いが、ローラー自体を小さくできる利点がある。また、曲率半径を小さくした場合、接触面積が小さくなるものの、軽い力でアンクランプできる効果も期待できる。
【0077】
さらにまた、転動体としては、
図7(E)に示すような、繭形形状のスプラグ49を用いることもできる。スプラグ49は、回転位相によって径が異なり、回転部にテーパ部が無くても、変位によって回転部と円筒形部材の接触部に噛み込む構成なので、テーパ部への噛み込み構成と相乗的に噛み込み代を大きくでき、大きな保持力を得ることができるという効果がある。また、アンクランプについても、径が小さい方向に転動させることで、
アンクランプを迅速できる。
以上、要するに、本発明の固定装置に適用可能な転動体としては、転動体の中心軸と直交方向断面形状が、円形のものから非円形の異形断面形状のものまで含まれ、回転部及び円筒形部材に接触する部分の形状についても、転動体の回転中心となる中心軸からの距離が周方向に均一なものから不均一なものまで含まれる。