特許第6231796号(P6231796)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 6231796-ボルト・ナットの弛み止め構造 図000002
  • 6231796-ボルト・ナットの弛み止め構造 図000003
  • 6231796-ボルト・ナットの弛み止め構造 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231796
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】ボルト・ナットの弛み止め構造
(51)【国際特許分類】
   F16B 39/24 20060101AFI20171106BHJP
   F16B 39/282 20060101ALI20171106BHJP
   F16B 43/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   F16B39/24 M
   F16B39/282 A
   F16B43/00 Z
   F16B39/282 C
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-145105(P2013-145105)
(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公開番号】特開2015-17660(P2015-17660A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】591209246
【氏名又は名称】濱中ナット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】濱中 重信
【審査官】 保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−511671(JP,A)
【文献】 特開2002−031120(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3059901(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B23/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接合部材の挿通穴にボルト軸部を挿通し、ボルト軸部にナットを螺合し、ナットと被接合部材との間に座金を介在させて締め付けるようにしたボルト・ナットの締結構造において、
上記ナット(11)はナット(11)座面周縁に座金(12)が接する部分を残して座面のねじ穴を含む領域に凹所(11D)を有し、該凹所(11D)の表面にはボルト(10)の螺進方向への回転を許容する傾斜面(11B)及びボルト(10)の螺退方向の回転を阻止する回転阻止部(11C)を有する複数の噛合部(11A)が上記ナット(11)座面の円周方向に並列され、上記座金(12)はナット座面に対面する表面に嵌込み凹所(12B)を有し、該嵌込み凹所(12B)には平面矩形状で側面∠状をなす弾性変形可能な板ばね製の係止片部(12A)が嵌め込まれており、
該係止片部(12A)は、上記ボルト(10)の螺進方向への回転に対しては上記ナット(11)の噛合部(11A)の傾斜面(11B)によって案内され弾性変形することによって上記回転阻止部(11C)を乗り越えて上記ボルト(10)の螺進方向への回転を許容し、上記ボルト(10)の螺退方向の回転に対しては上記ナット(11)の噛合部(11A)の回転阻止部(11C)と当接して上記ボルト(10)の螺退方向への回転を阻止するようになっており、上記凹所(12B)は上記ナット(11)座面周縁部分と上記座金(12)とが接し始めたときに上記係止片部(12A)の側面∠状の上端縁が上記ナット(11)の噛合部(11A)の傾斜面(11B)に接し得る深さを有し、
上記ボルト軸部(10B)には係止凹溝(10C)が軸線方向に延び、上記座金(12)ボルト軸部挿通穴の内縁に係止突起(12D)を有し、係止突起(12D)は上記係止凹溝(10C)に嵌入して上記座金(12)をボルト軸部(10B)に対して廻り止めするようになっていることを特徴とするボルト・ナットの弛み止め構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボルト・ナットの弛み止め構造に関し、特に相互に螺合させたボルト・ナットの締結が簡単に弛まないようにした構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、部材を締結する場合、部材に挿通穴を形成し、挿通穴にボルトを挿通し、ボルトの雄ねじにナットの雌ねじを螺合させ、ボルト・ナットを締めつけて締結する方式が一般的である。
【0003】
このボルト・ナットによる締結では振動、熱膨張、経年変化などの原因によって締結が弛むおそれがあることから、種々な弛み止め方式が提案されている。例えば、ナットの頂面又は座面のねじ穴周縁に弛み止め板を固定し、弛み止め板を弾性変形させてボルトのねじ山フランクに押しつけ、これによってナットに回転抵抗を付与するようにした弛み止め構造が知られている(特許文献1)。
【0004】
また、先端側がナット中心に向けて偏向された円弧状のロック部をナットの頂面に一体的に形成する一方、ボルトの雄ねじに凹所を形成し、凹所にロック部の先端を嵌入させることによりナットの弛み方向への廻り止めを行う一方、ロック部が弾性変形してロック部の先端が凹所から抜け出させることによりナットの締付け方向への回転を許容するようにした弛み止め構造が提案されている(特許文献2)。
【0005】
また、ボルト・ナットの座面及び座面が接触する座金の表面の各々に、ボルトの螺進方向への回動を許容する傾斜面と、ボルトの螺退方向の回転を阻止する段部とを有する複数の噛合部を円周方向に並べて形成し、ボルトの弛み止めを行うようにした技術が提案されている(特許文献3)。
【0006】
この特許文献3記載の弛み止めの技術は特許文献1、2の技術に比較して、部品点数が少なく、製造のコストアップを招来することが少ないという利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−124043号公報
【特許文献2】特開2002−242921号公報
【特許文献3】実開昭52−13356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記特許文献3記載の弛み止め構造では弛み止め性能が座金と被接合部材との摩擦に依存し、座金が被接合部材に対して回転してしまうと、ボルト・ナットの締結を簡単に緩めることができてしまう。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑み、部品点数を増やすことなく、又製造のコストアップを招来することなく、弛み止めを確実に行うことができるようにしたボルト・ナットの弛み止め構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明に係るボルト・ナットの弛み止め構造は、被接合部材の挿通穴にボルト軸部を挿通し、ボルト軸部にナットを螺合し、ナットと被接合部材との間に座金を介在させて締め付けるようにしたボルト・ナットの締結構造において、上記ナットの座面にはねじ穴を含む領域に凹所が形成され、該凹所の表面にはボルトの螺進方向への回転を許容する傾斜面及びボルトの螺退方向の回転を阻止する回転阻止部を有する複数の噛合部が上記ナット座面の円周方向に並べて形成され、上記座金の表面には嵌込み凹所が形成され、該嵌込み凹所には側面∠状をなす弾性変形可能な係止片部が嵌め込まれており、該係止片部は、上記ボルトの螺進方向への回転に対しては上記ナットの噛合部の傾斜面によって案内され弾性変形することによって、上記回転阻止部を乗り越えて上記ボルトの螺進方向への回転を許容し、上記ボルトの螺退方向の回転に対しては上記ナットの噛合部の回転阻止部と当接して上記ボルトの螺退方向への回転を阻止する一方、上記ボルト軸部には係止凹溝が軸線方向に延びて形成され、上記座金のボルト軸部挿通穴の内縁には上記係止凹溝に嵌入して上記座金をボルト軸部に対して廻り止めする係止突起が形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の特徴の1つは座金表面の係止片部とナット座面の凹所の噛合部とによって、ボルトの螺進方向の回転を許容するがボルト螺退方向の回転を阻止する一方、ボルト軸部の係止凹溝と座金の係止突起とによって、座金をボルト軸部に対して廻り止めするようにした点にある。
【0012】
これにより、ボルト又はナットは、ボルトの螺進方向には座金の係止片部がナット噛合部の傾斜面によって案内され弾性変形することによってナットの噛合部の回転阻止部を軽く越えて円滑に回転させることができるが、ボルトの螺退方向には座金の係止片部がナットの噛合部の回転阻止部に当接して回転を阻止され、ボルト・ナットを弛み止めすることができる。
【0013】
しかも、ボルト軸部の係止凹溝と座金の係止突起とによって座金をボルト軸部に対して廻り止めするようにしたので、弛み止め性能が座金と被接合部材との摩擦に依存することはなく、座金をボルト軸部に対して確実に廻り止めできる結果、ボルト・ナットを確実に弛み止めすることができる。
【0014】
係止片部は座金の嵌込み凹所に嵌め込むようにしたので、ボルトの螺進方向への回転時に係止片部がナットの噛合部の傾斜面の頂上部分と干渉して過大な負荷が作用し、係止片部が損傷を受けるおそれがあるが、本発明ではナット座面に凹所を形成し、凹所表面に噛合部を形成するようにしているので、係止片部に過大な負荷が作用するおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明のボルト・ナットの弛み止め構造の好ましい実施形態を示す断面図である。
図2】上記実施形態における座金表面(A)及びナット座面(B)の噛合部を示す図である。
図3】上記実施形態における座金とナットの関係を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図3は本発明に係るボルト・ナットの弛み止め構造の好ましい実施形態を示す。図において、被接合部材14、15はボルト10、ナット11及び座金12、13によって締め付け接合されている。
【0017】
ボルト10は頭部10Aと軸部10Bとからなり、軸部10Bには雄ねじが形成されてナット11が螺合されるようになっている。
【0018】
ナット11の座面にはねじ穴を含む領域に凹所11Dが形成され、凹所11Dの表面には複数の噛合部11Aが円周方向に並べて形成され、複数の各噛合部11Aはボルト10の螺進方向への回転を許容する傾斜面11B及びボルト10の螺退方向の回転を阻止する段部(回転阻止部)11Cから構成されている。
【0019】
他方、座金12は金属板を用いて平円板状に形成され、座金12の表面には嵌込み凹所12Bが形成され、嵌込み凹所12Dには側面∠状をなす弾性変形可能な係止片部12Aが嵌め込まれ、ボルト10の螺進方向への回転に対して係止片部12Aがナット11の噛合部11Aの傾斜面11Bによって案内され弾性変形することによって、ナット11の噛合部11Aの段部11Cを乗り越え、ボルト10の螺退方向への回転に対して係止片部12Aがナット11の噛合部11Aの段部11Cと当接するようになっている。
【0020】
また、ボルト軸部10Bには一対の係止凹溝10Cが相互に180°の角度間隔をあけ、軸線方向に延びて形成され、座金12のボルト挿通穴の内縁には一対の係止突起12Cが相互に180°の角度間隔をあけて形成され、係止突起12Cが係止凹溝11Cに嵌まり込むことによって座金12がボルト軸部10Bに対して廻り止めされるようになっている。
【0021】
被接合部材14、15を接合する場合、図1に示されるように、被接合部材14、15の挿通穴及び座金12、13にボルト10の軸部10Bを挿通してナット11に螺合させ、座金12の係止突起12Cをボルト軸部10Bの係止凹溝10Cに嵌まり込ませ、座金12をボルト軸部10Bに対して廻り止めする。
【0022】
こうして準備ができると、ナット11を適当な工具で固定して、ボルト10を回転させて螺進させる。ナット11の座面周縁が座金12に接するようになると、座金12の係止片部12Aがナット11の噛合部11Aに接するようになる。
【0023】
すると、座金12の係止片部12Aはナット11の噛合部11Aの傾斜面12Bに摺接し案内され弾性変形することによって、噛合部11Aの段部11Cを乗り越えるので、ボルト軸部10Bがナット11に対して螺進してナット11を締め付け、座金12の下面とナット11の座面周縁とが密着する。
【0024】
この状態でボルト10又はナット11が締結の弛む方向に回転しようとすると、座金12の係止片部12Aがナット11の噛合部11Aの段部11Cと当接し、しかも座金12はボルト軸部10Bに対して廻り止めされているので、ボルト10・ナット11は締結の弛む方向に回転することはできず、確実に弛み止めされる。
【0025】
以上のように、本例の弛み止め構造によれば、部品点数が増えることはなく、又ナット11座面に噛合部11Aを、座金12の表面に係止片部12Aを加工すればよく、製造のコストアップを招来することがなく、ボルト10・ナット11の締結が弛むのを確実に阻止することができる。
【符号の説明】
【0026】
10 ボルト
10A 頭部
10B 軸部
10C 係止凹溝
11 ナット
11A 噛合部
11B 傾斜面
11C 段部
11D 凹所
12 座金
12A 係止片部
12C 係止突起
14、15 被接合部材
図1
図2
図3