特許第6231802号(P6231802)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231802
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】走行伝動装置
(51)【国際特許分類】
   F16H 63/30 20060101AFI20171106BHJP
   F16H 61/34 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   F16H63/30
   F16H61/34
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-155593(P2013-155593)
(22)【出願日】2013年7月26日
(65)【公開番号】特開2015-25512(P2015-25512A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】592058315
【氏名又は名称】アイシン・エーアイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114720
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100128749
【弁理士】
【氏名又は名称】海田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】丸山 哲也
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−245679(JP,A)
【文献】 特開昭58−191353(JP,A)
【文献】 特開2000−88096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/30
F16H 61/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニュートラル検出スイッチによって変速機構のニュートラルを検出する走行伝動装置であって、
変速機構の変速作動に伴って回動されるカム状部材と、
検出体の進退によるオン・オフ作動によって変速機構のニュートラル検出を行う押しボタン式のニュートラル検出スイッチとを備え、
前記カム状部材には、該カム状部材の回動によって上記検出体が進退作動されるように該検出体と接当する接当縁が形成され、
該接当縁は、上記変速機構がニュートラルに切換られた際に、前記ニュートラル検出スイッチの検出体が進出作動して接当するように、該進出側に楔状に凹設された進出作動部を有し、
カム状部材は、自身の回動軸から径方向外側に突出する板状に成形され、
該板状のカム状部材を、径方向内側部分より径方向外側部分の幅が拡大された形状に成形した
ことを特徴とする走行伝動装置。
【請求項2】
前記接当縁における進出作動部以外の部分を、ニュートラル検出スイッチの検出体が退避状態で接当するように、カム状部材の回動支点を中心とする円弧状に形成した退避作動部とした
請求項1に記載の走行伝動装置。
【請求項3】
退避作動部と進出作動部との接続部を、R状に成形した
請求項2に記載の走行伝動装置。
【請求項4】
前記ニュートラル検出スイッチの検出体の先端側を、楔状の進出作動部に嵌り込む半球状に成形した
請求項1からのうちのいずれかに記載の走行伝動装置。
【請求項5】
カム状部材の回動軸は、自身の軸回り回動によって変速機構を変速作動させるとともに軸方向への移動によって係合するシフトフォークが選択されるセレクト作動を行う
セレクトアンドシフト軸である
請求項1からのうちのいずれかに記載の走行伝動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ニュートラル検出スイッチによって変速機構のニュートラルを検出する走行伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ニュートラル検出スイッチによって変速機構のニュートラルを検出する走行伝動装置であって、変速機構の変速作動に伴って回動されるカム状部材と、検出体の進退によるオン・オフ作動によって変速機構のニュートラル検出を行う押しボタン式のニュートラル検出スイッチとを備え、前記カム状部材には、該カム状部材の回動によって上記検出体が進退作動されるように該検出体と接当する接当縁が形成され、該接当縁は、上記変速機構がニュートラルに切換られた際に、前記ニュートラル検出スイッチの検出体を検出作動させる形状に成形された走行伝動装置が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−138345号公報(図2,4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献の走行伝動装置では、接当縁が検出体の退避側に凸状に突出した緩やかな円弧状に形成され、上記変速機構がニュートラルに切換られた際に、ニュートラル検出スイッチの検出体を退避作動させ、これによって変速機構のニュートラル検出を行うが、接当縁における最も退避側に突出した部分以外の箇所に検出体が接当している状態でも、該検出体が検出作動することがあり、検出精度が低く、正確なニュートラル検出ができない場合がある。
【0005】
本発明は、ニュートラル検出スイッチによって変速機構のニュートラルを検出する走行伝動装置において、ニュートラル検出スイッチによるニュートラル検出の精度を向上させた走行伝動装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の走行伝動装置は、ニュートラル検出スイッチによって変速機構のニュートラルを検出する走行伝動装置であって、変速機構の変速作動に伴って回動されるカム状部材と、検出体の進退によるオン・オフ作動によって変速機構のニュートラル検出を行う押しボタン式のニュートラル検出スイッチとを備え、前記カム状部材には、該カム状部材の回動によって上記検出体が進退作動されるように該検出体と接当する接当縁が形成され、該接当縁は、上記変速機構がニュートラルに切換られた際に、前記ニュートラル検出スイッチの検出体が進出作動して接当するように、該進出側に楔状に凹設された進出作動部を有することを特徴とする。
【0007】
上記構成としたことで、検出体の進出側に楔状に凹設された進出作動部によって、検出体を正確に検出作動させることが可能になるため、ニュートラル検出スイッチによるニュートラル検出の精度が向上する。
【0008】
前記接当縁における進出作動部以外の部分を、ニュートラル検出スイッチの検出体が退避状態で接当するように、カム状部材の回動支点を中心とする円弧状に形成した退避作動部としたものとしてもよい。
【0009】
退避作動部と進出作動部との接続部を、R状に成形したものとしてもよい。
【0010】
カム状部材は、自身の回動軸から径方向外側に突出する板状に成形され、該板状のカム状部材を、径方向内側部分より径方向外側部分の幅が拡大された形状に成形したものとしてもよい。
【0011】
前記ニュートラル検出スイッチの検出体の先端側を、楔状の進出作動部に嵌り込む半球状に成形したものとしてもよい。
【0012】
カム状部材の回動軸は、自身の軸回り回動によって変速機構を変速作動させるとともに軸方向への移動によって係合するシフトフォークが選択されるセレクト作動を行うセレクトアンドシフト軸であるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
検出体の進出側に楔状に凹設された進出作動部によって、検出体を正確に検出作動させることが可能になるため、ニュートラル検出スイッチによるニュートラル検出の精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を適用した走行伝動装置の動力伝動系統図である。
図2】各シフト部材の斜視図である。
図3】シフトレバーの構成を示す平面図である。
図4】シフト方向からみた変速切換機構の構成を示す部分断面図である。
図5】シフト方向に対して真横側からみた変速切換機構の構成を示す部分断面図である。
図6】ニュートラル検出スイッチの構成を示す説明図である。
図7図6の要部構成図面である。
図8】本発明を適用したカム部材を用いた場合と、従来公知の凸状のカム部材を用いた場合とのを比較した特性グラフである。
図9図9(A)は本発明を適用した四輪車に搭載された制御部のブロック図であり、図9(B)は制御部の処理フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明を適用した走行伝動装置の動力伝動系統図である。同図に示す走行伝動装置1は、エンジン2で発生した動力を、左右一対の駆動輪3,3に変速して伝動する。左右一対の駆動輪3,3は、同図に示す例では、四輪車の左右一対の前輪となる。
【0016】
この走行伝動装置1は、エンジン2の動力が出力されるエンジン出力軸であるクランク軸6の動力が主クラッチ7を介して断続可能に伝動され且つクランク軸6と同一軸心となる入力軸である主軸8と、主軸8と平行に配置された出力軸であるカウンタ軸9と、該カウンタ軸9と前記主軸8との間に設けられ且つ主軸8の動力をカウンタ軸9に変速して伝動する走行変速機構(変速機構)11とを備えている。
【0017】
カウンタ軸9には、該カウンタ軸9と同調回転(具体的には一体回転)する駆動ギ12が設けられ、駆動ギヤ12の回転動力が差動装置13のリングギヤ13aに伝動され、リングギヤ13aに伝動された動力は、差動装置13を介して、左右の駆動輪3,3に伝動される。
【0018】
また、主クラッチ7は、接続時にはクランク軸6から主軸8に動力が伝動する一方で、切断時には、クランク軸6から主軸8への動力伝動を遮断する。
【0019】
上記走行変速機構11は、主軸8に同調回転(具体的には一体回転)するように設けられた第1入力ギヤ16A及び第2入力ギヤ16Bと、図示しないベアリング等を介して主軸8に相対回転可能(具体的には遊転自在)に支持された第3入力ギヤ16C及び第4入力ギヤ16Dと、図示しないベアリング等を介して主軸8に相対回転可能(具体的には遊転自在)に支持された第5入力ギヤ16E及び第6入力ギヤ16Fと、図示しないベアリング等を介してカウンタ軸9に相対回転可能(具体的には遊転自在)に支持された第1出力ギヤ17A及び第2出力ギヤ17Bと、カウンタ軸9に同調回転(具体的には一体回転)するように設けられた第3出力ギヤ17C及び第4出力ギヤ17Dと、カウンタ軸9に同調回転(具体的には一体回転)するように設けられた第5出力ギヤ17E及び第6出力ギヤ17Fとを備えている。
【0020】
第1〜6の入力ギヤ16A,16B,16C,16D,16E,16Fは、主軸8の軸方向(シフト方向)の一方側(図1における右方向で、以下「高速側」)に向かって、この順序で配置され、且つ高速側に位置する入力ギヤ16A,16B,16C,16D,16E,16F程、その径が大きく歯数も多くなっている。ちなみに、図1における右側が上記した通り高速側になる。
【0021】
これに対して、第1〜6の出力ギヤ17A,17B,17C,17D,17E,17Fは、シフト方向の高速側に向かって、この順序で配置され、且つ高速側に位置する出力ギヤ17A,17B,17C,17D,17E,17F程、その径が小さく歯数も少なくなっている。
【0022】
第1入力ギヤ16Aと第1出力ギヤ17Aは互いがシフト方向位置で一致して常時噛合い、第2入力ギヤ16Bと第2出力ギヤ17Bは互いがシフト方向位置で一致して常時噛合い、第3入力ギヤ16Cと第3出力ギヤ17Cは互いがシフト方向位置で一致して常時噛合い、第4入力ギヤ16Dと第4出力ギヤ17Dは互いがシフト方向位置で一致して常時噛合い、第5入力ギヤ16Eと第5出力ギヤ17Eは互いがシフト方向位置で一致して常時噛合い、第6入力ギヤ16Fと第6出力ギヤ17Fは互いがシフト方向位置で一致して常時噛合っている。
【0023】
また、この走行変速機構11には、第1出力ギヤ17Aと第2出力ギヤ17Bとの間に位置するようにカウンタ軸9上に配置された同期噛合式のクラッチである低速側スリーブ19と、第3入力ギヤ16Cと第4入力ギヤ16Dとの間に位置するように主軸8上に配置された同期噛合式のクラッチである中速側スリーブ21と、第5入力ギヤ16Eと第6入力ギヤ16Fとの間に位置するように主軸8上に配置された同期噛合式のクラッチである高速側スリーブ22とがそれぞれ設けられている。
【0024】
上記低速側スリーブ19は、上記シフト方向であるカウンタ軸9の軸方向にスライド自在且つカウンタ軸9と同調回転(具体的には一体回転)するように構成されている。
【0025】
この低速側スリーブ19を、シフト方向の低速側にスライド作動させると、第1出力ギヤ17Aと低速側スリーブ19とが、互いの間に設けられた同期手段19aにより同期しながら噛合い、完全に噛合った状態では、第1出力ギヤ17Aが低速側スリーブ19と共にカウンタ軸9と同調回転(具体的には一体回転)する状態(第1状態)になる。
【0026】
一方、低速側スリーブ19を、シフト方向の高速側にスライド作動させると、第2出力ギヤ17Bと低速側スリーブ19とが、互いの間に設けられた同期手段19bにより同期しながら噛合い、完全に噛合った状態では、第2出力ギヤ17Bが低速側スリーブ19と共にカウンタ軸9と同調回転(具体的には一体回転)する状態(第2状態)になる。
【0027】
上記中速側スリーブ21は、上記シフト方向である主軸8の軸方向にスライド自在且つ主軸8と同調回転(具体的には一体回転)するように構成されている。
【0028】
この中速側スリーブ21を、シフト方向の低速側にスライド作動させると、第3入力ギヤ16Cと中速側スリーブ21とが、互いの間に設けられた同期手段21aにより同期しながら噛合い、完全に噛合った状態では、第3入力ギヤ16Cが中速側スリーブ21と共に主軸8と同調回転(具体的には一体回転)する状態(第3状態)になる。
【0029】
一方、中速側スリーブ21を、シフト方向の高速側にスライド作動させると、第4入力ギヤ1Dと中速側スリーブ21とが、互いの間に設けられた同期手段21bにより同期しながら噛合い、完全に噛合った状態では、第4入力ギヤ16Dが中速側スリーブ21と共に主軸8と同調回転(具体的には一体回転)する状態(第4状態)になる。
【0030】
上記高速側スリーブ22は、上記シフト方向である主軸8の軸方向にスライド自在且つ主軸8と同調回転(具体的には一体回転)するように構成されている。
【0031】
この高速側スリーブ22を、シフト方向の低速側にスライド作動させると、第5入力ギヤ16Eと高速側スリーブ22とが、互いの間に設けられた同期手段22aにより同期しながら噛合い、完全に噛合った状態では、第5入力ギヤ16Eが高速側スリーブ22と共に主軸8と同調回転(具体的には一体回転)する状態(第5状態)になる。
【0032】
一方、高速側スリーブ22を、シフト方向の高速側にスライド作動させると、第6入力ギヤ1Fと高速側スリーブ22とが、互いの間に設けられた同期手段22bにより同期しながら噛合い、完全に噛合った状態では、第6入力ギヤ16Fが高速側スリーブ22と共に主軸8と同調回転(具体的には一体回転)する状態(第6状態)になる。
【0033】
ちなみに、第1〜第6の入力ギヤ16A,16B,16C,16D,16E,17F及び第1〜第6の出力ギヤ17A,17B,17C,17D,17E,17Fの歯数の多少及び径の大小の関係で、第1状態→第2状態→第3状態→第4状態→第5状態→第6状態の順に主軸8からカウンタ軸9に伝動される動力の回転速度が高速に設定され、これによって、この走行伝動装置1は、前進走行側で計6段の走行変速切換が可能に構成され、このようにして走行変速された前進走行用の動力が駆動輪3伝動される。ちなみに、図面には省略しているが、この走行伝動装置1には、後進走行用の逆転動力を、主軸8からカウンタ軸9を介して駆動輪3に伝動する逆転伝動機構も設けられている。
【0034】
言換えると、この走行伝動装置1において、3つのスリーブ19,21,22の全てが中立位置に位置してカウンタ軸9(駆動輪3)に動力が伝動されないニュートラル状態となるか、3つスリーブ19,21,22の何れか1つのみが高速側又は低速側に作動されて動力を伝動する状態になり且つ残りの2つが中立位置に位置した動力伝動状態になる。ちなみに、この走行伝動装置1の変速切換を行う際には、変速切換前に主クラッチ7を切断させて動力が主軸8に伝動されない状態にするとともに、変速切換後に再び主クラッチ7を接続状態とする。
【0035】
上記3つのスリーブ19,21,22には、該スリーブ19,21,22をシフト方向にスライドさせるシフト部材23,24,26が個別に設けられている。
【0036】
図2は、各シフト部材の斜視図である。各シフト部材23,24,26は、シフト方向に形成され且つ走行変速機構11を内装する伝動ケース1a(図5参照)に自身の軸方向にスライド自在に支持されたフォークシャフト23a,24a,26aと、フォークシャフト23a,24a,26a上に設けられ且つスライド操作させる対象となるスリーブ19,21,22の周面に凹凸係合するようにフォークシャフト23a,24a,26aの軸方向視で円弧状に形成されたシフトフォーク23b,24b,26bと、フォークシャフト23a,24a,26a上に設けられ且つフォークシャフト23a,24a,26aの径方向外側に突出する操作プレート23c,24c,26cとを一体的に有している。各操作プレー23c,24c,26cの径方向への突出端側(先端側)には、基端側に向かってコの字状に窪んだ凹状の係合部27が形成されている。
【0037】
この走行伝動装置1には、シフト部材23,24,26の何れか1つと係合させるセレクト作動を行うとともに、係合させたシフト部材23,24,26を介して、該シフト部材23,24,26に係合したスリーブ19,21,22をシフト方向にスライドさせるシフト作動を行う変速切換機構28(図3乃至図5参照)が設けられている。
【0038】
図3は、シフトレバーの構成を示す平面図であり、図4は、シフト方向からみた変速切換機構の構成を示す部分断面図であり、図5は、シフト方向に対して真横側からみた変速切換機構の構成を示す部分断面図である。
【0039】
走行伝動装置1の第1状態〜第6状態(1速〜6速)までの変速切換操作は、シフトレバー(変速操作具)29の揺動操作によって行われる。シフトレバー29は、上端部に把持部となるシフトノブ29aを有し、中途部がガイド孔31に挿通され、このガイド孔31によって、シフトレバー29が揺動案内される。
【0040】
具体的には、前後中立位置からの左右揺動操作(セレクト操作)が可能である。
【0041】
このセレクト操作によって、左右一方側端部に揺動させた場合、シフトレバー29は、前後揺動操作(シフト操作)可能なり、このシフト操作は、低速側スリーブ19及びこれに係合するシフト部材である低速側シフト部材23を介して、走行伝動装置1を、第1状態(1速)、ニュートラル又は第2状態(2速)の何れに切換る低速側シフト操作になる。
【0042】
また、上記セレクト操作によって、左右中立位置に揺動させた場合、シフトレバー29は、前後揺動操作(シフト操作)可能なり、このシフト操作は、中速側スリーブ21及びこれに係合するシフト部材である中速側シフト部材24を介して、走行伝動装置1を、第3状態(3速)、ニュートラル又は第4状態(4速)の何れかに切換る中速側シフト操作になる。
【0043】
さらに、上記セレクト操作によって、左右他方側端部に揺動させた場合、シフトレバー29は、前後揺動操作(シフト操作)可能なり、このシフト操作は、高速側スリーブ22及びこれに係合するシフト部材である高速側シフト部材26を介して、走行伝動装置1を、第5状態(5速)、ニュートラル又は第6状態(6速)の何れかに切換る高速側シフト操作になる。
【0044】
すなわち、前後中立位置でセレクト操作している最中は、走行伝動装置1は、ニュートラル状態で保持され、このセレクト操作時のシフトレバー29の左右揺動範囲がニュートラル領域Nになる。
【0045】
上述した変速切換機構28は、シフト方向に対して直交する水平軸であって且つ上記セレクト操作によって自身の軸回りに回動(シフト作動)するとともに上記シフト操作によって自身の軸方向(セレクト方向)に移動(セレクト作動)するセレクトアンドシフト軸32と、セレクトアンドシフト軸32に外装されて該セレクトアンドシフト軸32と一体で軸方向に移動するとともに軸回りに回動するインナーレバー33と、インナーレバー33のセレクト方向両側を挟むように設置されたインタロックプレート34と、ロックボール機構36とを有している。
【0046】
上記セレクトアンドシフト軸32は、自身の軸回りに回動可能且つ軸心の軸方向にスライド可能に伝動ケース1a側に支持されている。
【0047】
上記インナーレバー33は、セレクトアンドシフト軸32に外装される筒状部33aと、筒状部33aからシフト部材23,24,27の操作プレート23c,24c,26cにおける係合部27側(具体的には下方側)に延出されるレバー部33bと、筒状部33aにおけるレバー部33bの反対側に窪み形成された係合凹部33cとを有している。
【0048】
上記インタロックプレート34は、セレクトアンドシフト軸32と一体で、該セレクトアンドシフト軸32の軸方向に移動するが、セレクトアンドシフト軸32の軸回り回動は、上述するロックボール機構36によって阻止される。
【0049】
このインタロックプレート34のロックボール機構36側である上面側には、貫通孔36aが穿設されるとともに、その反対側には、インナーレバー33のレバー部33bを、セレクト方向両側から挟むように曲げ形成された一対の係止爪37,38が一体的に形成されている。
【0050】
ロックボール機構36は、貫通孔36aに挿通され且つセレクトアンドシフト軸32に対して離間・近接方向に移動自在に伝動ケース1a側に支持された移動部材39と、移動部材39におけるセレクトアンドシフト軸32側端部(先端部)に嵌入され且つ係合凹部33cにも凹凸嵌合させることが可能なロックボール41と、移動部材39をセレクトアンドシフト軸32側に付勢する圧縮スプリング等の弾性部材42とを備えている。
【0051】
貫通孔36aへの移動部材39の挿通によって、インタロックプレート3におけるセレクトアンドシフト軸32の軸回り回動が阻止される他、走行伝動装置1のニュートラル状態時に、係合凹部33cがロックボール41と凹凸嵌合する位置にインナーレバー33が回動するように、両部材が配置構成されている。
【0052】
このため、弾性部材42の付勢力によって、インナーレバー33は、係合凹部33cとロックボール41が凹凸嵌合する側に回動案内(回動作動)される。一方、ニュートラル以外の変速段に走行変速する際には、この弾性部材42の付勢力に抗して、ロックボール41と係合凹部33cとの凹凸嵌合が解除される程度の力を、セレクトアンドシフト軸32の軸回り方向に加える必要がある。
【0053】
そして、該構成の変速切換機構28では、上記セレクト操作によって、低速側シフト操作が可能な状態とした場合、レバー部33bが低速側シフト部材23の係合部27と係合し、レバー部33bのシフト方向両側への揺動によって低速側スリーブ19をシフト方向両側にスライド操作可能な状態になる一方で、他のシフト部材24,26は、係合部27に係止爪38がセレクト方向から挿入されて、シフト方向への移動が規制(具体的には阻止)される。
【0054】
また、上記セレクト操作によって、中速側シフト操作が可能な状態とした場合、レバー部33bが中速側シフト部材24の係合部27と係合し、レバー部33bのシフト方向両側への揺動によって中速側スリーブ21をシフト方向両側にスライド操作可能な状態になる一方で、他のシフト部材23,26は、係合部27に係止爪37,38がセレクト方向から挿入されて、シフト方向への移動が規制(具体的には阻止)される。
【0055】
さらに、上記セレクト操作によって、高速側シフト操作が可能な状態とした場合、レバー部33bが高速側シフト部材26の係合部27と係合し、レバー部33bのシフト方向両側への揺動によって高速側スリーブ22をシフト方向両側にスライド操作可能な状態になる一方で、他のシフト部材23,24は、係合部27に係止爪37がセレクト方向から挿入されて、シフト方向への移動が規制(具体的には阻止)される。
【0056】
ところで、以上のように構成される走行伝動装置1では、ニュートラルを検出することにより、エンジン始動制御などの各種制御を行う。このため、走行変速機構11のニュートラルを検出するニュートラル検出スイッチ43が設けられている(図6,7参照)。
【0057】
図6は、ニュートラル検出スイッチの構成を示す説明図であり、図7は、図6の要部構成図面である。走行伝動装置1には、変速切換機構28を介した走行変速機構11の1速〜6速の間の変速作動に伴って回動作動するカム部材(カム状部材)44と、カム部材44との接当によって進退作動される検出体43aを有する押しボタン式の上記ニュートラル検出スイッチ43とが設けられている。
【0058】
上記カム部材44は、上述したセレクトアンドシフト軸32に外装されて該セレクトアンドシフト軸32と一体で軸回り回動されるとともに軸方向に移動される筒状部46と、筒状部46から径方向の伝動ケース1a側に突出するカム部47とを一体的(図示する例では完全に一体)で有している。すなわち、セレクトアンドシフト軸32がカム部材44の回動軸となる。
【0059】
カム部47は、シフト方向が厚み方向となる板状に成形され、シフト作動によって、シフト方向に回動される。このカム部47の突出端部(先端部)がニュートラル検出スイッチ43の検出体43aと接当する接当縁48となり、この接当縁48側の端部は、カム部材44の回動方向両側に延設された拡大部49を形成している。この拡大部49によって、カム部材44はセレクトアンドシフト軸32の軸方向視でT字状をなす他、カム部材44の回動時における検出体43aとの接当範囲を拡大することができる。
【0060】
また、セレクトアンドシフト軸32は、セレクト作動時には、軸方向に移動し、これに伴って、カム部材44もセレクト方向に移動するため、この際、ニュートラル検出スイッチ43との接当が解除されない程度には、カム部4の板厚を設定する。なお、カム部材44を、セレクトアンドシフト軸32に対して、軸方向に相対的にスライド可能に支持して、セレクト作動時にカム部材44がセレクト方向に移動しないようにしてもよい。
【0061】
この接当縁48における回動方向中央部には、カム部材44の回動支点S側に向かって楔状に凹んだ進出作動部48aが形成され、接当縁48における進出作動部48a以外の部分は、上記回動支点Sを中心とした円弧状をなす退避作動部48bとなる。ちなみに、この退避作動部48bは、上記構成によって、進出作動部48aの回動方向両側にそれぞれ配置形成されることになり、この各退避作動部48bと、進出作動部48aとの接続部48cは、丸みを帯びたR状に形成され、両者は滑らかに連接されている。
【0062】
さらに、進出作動部4aの楔状の底側を、丸みを帯びたR状に形成してもよいが、図示する例では鈍角状に形成されている。
【0063】
上記ニュートラル検出スイッチ43は、カム部材44の円弧状の移動軌跡Dにおける径方向に全方向が向けられ、検出体43aがカム部材44側を向くようにして、該ニュートラル検出スイッチ43のスイッチ本体43bは、伝動ケース1a側に固定されている。これによって検出体43aの往復作動方向が上記円弧状の移動軌跡Dの径方向を向き、この往復作動方向は、カム部材44に対して進退する方向となる。
【0064】
また、この検出体43aは、進退方向に延びる円柱状に成形され且つカム部材44側端部(先端部)が、上記進出作動部48aの楔状の凹状部分に収容又は略収容されて嵌り込む半球状に成形され、この半球部分がカム部材44との接当部分になる。
【0065】
このような構成によって、進出作動部48aは、逆に、検出体43aの進出側に楔状に凹設されることになり、この進出作動部48aへの接当によって、検出体43aは進出作動される一方で、退避作動部48bは、この進出作動部48aに比べて、検出体43aの退避側に位置した状態になるため、この退避作動部48bへの接当によって、検出体43aは退避作動される
【0066】
そして、セレクト操作可能なニュートラル状態時において、検出体43aの半球部分がカム部材44の楔状に窪んだ進出作動部48aの底部分にまで最大限進出して接当した状態となる一方で、ニュートラル状態以外の状態にシフト作動した場合には、検出体43aの半球部分が、進出作動部48aの底側以外の中途部分に接当して途中まで退避作動するか、或いは、該検出体43aの半球部分が、退避作動部48bに接当して最大限退避作動した状態になるように、カム部材44及びニュートラル検出スイッチ43は互いに配置構成されている。
【0067】
ちなみに、本例では、検出体43aの進出作動によって、ニュートラル検出スイッチ43は、ON作動する一方で、検出体43aの退避作動によって、ニュートラル検出スイッチ43は、OFF作動され、このON・OFFを確認することによって、走行変速機構11がニュートラル状態であるか否かを確認することが可能になる。
【0068】
図8は、本発明を適用したカム部材を用いた場合と、従来公知の凸状のカム部材を用いた場合とのを比較した特性グラフである。同図に示す比較例では、他の構成は同一で、カム部材の接当縁を、円弧状に突出した形状に成形している。そして、同図に特性グラフは、本発明と、比較例とのそれぞれについて、シフト作動時におけるカム部材の回動量(シフトストローク)に対する検出体の進退方向への移動量(スイッチストローク)を示している。
【0069】
同図に示す通り、本発明は、比較例と比べて、ニュートラル検出スイッチ43が走行変速機構11のニュートラル状態を検出している範囲である検出範囲が、狭いため、バラツキが少なく、高い精度で、該ニュートラル状態を検出することが可能である。
【0070】
図9(A)は本発明を適用した四輪車に搭載された制御部のブロック図であり、(B)は制御部の処理フロー図である。上述したニュートラル検出スイッチ43及びカム部材44を利用して、アイドリングストップ時のエンジン始動制御を実行することが可能である。マイコン等から構成された制御部51の入力側には、上述したニュートラル検出スイッチ43の他、エンジン2の駆動時における発電状態を検出するオルタネータ状態検出手段52と、主クラッチ7の断続操作を行うクラッチペダルの該断続操作を検出するクラッチペダル操作検出手段53とが接続される一方で、制御部51の出力側には、エンジン2を始動する点火プラグ等からなるエンジン始動手段54が接続されている。
【0071】
制御部51は処理が開始されると、ステップS1に進む。ステップS1では、オルタネータ状態検出手段52によって、エンジン動力によって発電状態であるか否かを確認し、発電されていない状態であれば、エンジン2が駆動停止している状態であると考えられるため、ステップS2に進む一方で、そうでない場合には、ステップS1の処理を再び実行する。
【0072】
ステップS2では、ニュートラル検出スイッチ43によって、走行変速機構11がニュートラル状態であるか否かを確認し、ニュートラル状態でない場合には、エンジン2を始動すると、不測に動力が駆動輪3に伝動される可能性があるため、ステップS1に処理を戻す一方で、ニュートラル状態である場合には、エンジン2を始動できる可能性があるため、ステップS3に進む。
【0073】
ステップS3では、クラッチペダル操作検出手段53によるクラッチペダルの操作検出によって、主クラッチ7が走行変速機構11側にエンジン動力を伝動しない切断状態であるか否かを確認し、切断状態であれば、エンジン2を始動させてもよい状態であると判断してステップS4に進む一方で、そうでない場合には、エンジン2を始動することは好ましくない状態であるものとして、ステップS1に処理を戻す。ステップS4では、エンジン始動手段54によって、エンジン2を始動させ、処理を終了させる。
【0074】
このようなエンジン始動制御も、ニュートラル検出の精度が高いため、スムーズ且つ確実に実行可能となる。
【符号の説明】
【0075】
1 走行伝動装置
11 走行変速機構(変速機構)
32 セレクトアンドシフト軸(回動軸)
43 ニュートラル検出スイッチ
43a 検出
44 カム状部材
48 接当縁
48a 進出作動部
48b 退避作動部
48c 接続部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9