特許第6231805号(P6231805)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231805
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】人工土壌粒子、及び植物育成培地
(51)【国際特許分類】
   A01G 1/00 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
   A01G1/00 303Z
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-159904(P2013-159904)
(22)【出願日】2013年7月31日
(65)【公開番号】特開2015-29449(P2015-29449A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】東洋ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100144750
【弁理士】
【氏名又は名称】▲濱▼野 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100165685
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 信治
(72)【発明者】
【氏名】石坂 信吉
【審査官】 坂田 誠
(56)【参考文献】
【文献】 実開平6−33942(JP,U)
【文献】 特開2002−335747(JP,A)
【文献】 特開平5−176643(JP,A)
【文献】 特開2003−158918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素イオン濃度に応じて変色するpH指示薬を含有する人工土壌粒子であって、
前記pH指示薬は、複数種のpH指示薬を含み、夫々のpH指示薬は、水素イオン濃度が5〜7.5の領域で同じ色相を呈するように組み合わされる人工土壌粒子。
【請求項2】
前記複数種のpH指示薬は、コンゴーレッドとニュートラルレッドとの組み合わせ、メチルレッドとブロモチモールブルーとの組み合わせ、又はメチルレッドとクレゾールレッドとの組み合わせの中から選択される少なくとも一つである請求項1に記載の人工土壌粒子。
【請求項3】
細孔を有するフィラーを当該フィラーの間に連通孔が形成されるように複数集合してなる基部を備え、少なくとも前記連通孔の内部から前記基部の表面に亘る領域に前記pH指示薬を担持させてある請求項1又は2に記載の人工土壌粒子。
【請求項4】
前記細孔にイオン交換能を付与してある請求項3に記載の人工土壌粒子。
【請求項5】
繊維を集合した基部と、前記基部を被覆する被覆層とを備え、少なくとも前記被覆層に前記pH指示薬を担持させてある請求項1又は2に記載の人工土壌粒子。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の人工土壌粒子を使用した植物育成培地。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物育成用の人工土壌粒子、及び当該人工土壌粒子を用いた植物育成培地に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生育条件がコントロールされた環境下で野菜等の植物を栽培する植物工場が増加している。これまでの植物工場は、レタス等の葉物野菜の水耕栽培が中心であったが、最近では水耕栽培には向かない根菜類についても栽培が試みられている。
【0003】
植物工場において天然土壌を用いた根菜類の栽培を行う場合、植物工場への病害虫の持ち込みが問題となるため、人工土壌を用いた根菜類等の栽培を実施する動きがある。根菜類の栽培では、土壌を根菜類の成長にとって最適な水素イオン濃度(pH)領域に維持することが必要になる。しかし、人工土壌は、天然土壌と比較すると一般にpHの緩衝作用が少ないため、植物が分泌する根酸等により人工土壌のpHが変化することがある。その結果、土壌中に保持されている肥料成分が流出したり、植物の成長に障害が現れたりすることがある。このため、人工土壌を用いて植物を栽培する場合、土壌中のpHを適切に管理する必要がある。
【0004】
これまで開発された人工土壌のpH調整に関連する技術としては、pH調整剤を含有する土壌改良資材を用いた培養土が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−38027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の土壌のpHを調整する技術は、天然土壌を含む培養土にpH調整剤を添加して、土壌のpH緩衝能を高めるものである。ところが、この技術を、人工土壌を用いた植物体の栽培にそのまま適用したとしても、人工土壌のpHを十分維持できるとは限らない。また、特許文献1は、あくまで土壌のpH緩衝能を高めるだけのものであり、人工土壌のpHを適切に管理するためには、人工土壌のpHを経時的にモニタリングする必要がある。
【0007】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、植物を栽培する植物育成培地のpHの変化を容易に判断し、管理することができる人工土壌粒子、及び当該人工土壌粒子を用いた植物育成培地を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための本発明に係る人工土壌粒子の特徴構成は、
水素イオン濃度に応じて変色するpH指示薬を含有する人工土壌粒子であって、
前記pH指示薬は、複数種のpH指示薬を含み、夫々のpH指示薬は、水素イオン濃度が5〜7.5の領域で同じ色相を呈するように組み合わされることにある。
【0009】
本構成の人工土壌粒子によれば、水素イオン濃度に応じて変色するpH指示薬を含有することから、人工土壌粒子から構成される植物育成培地のpHの変化を目視で判断することができる。従って、植物育成培地のpHを適切に管理することができるとともに、目視で確認しながら植物育成培地のpHを、栽培植物の成長にとって最適なpHに容易に調整することも可能となる。さらに、観葉植物等を屋内で栽培する場合、植物育成培地を透明の鉢などに入れると、人工土壌粒子の色がpHの変化に応じて変化することから、インテリア性にも優れた植物育成培地とすることができる。
ここで、pH指示薬は、複数種のpH指示薬を含み、夫々のpH指示薬は、水素イオン濃度が5〜7.5の領域で同じ色相を呈するように組み合わされるため、pH5〜7.5の領域における色相が強調される。従って、pHが5〜7.5の領域とそれ以外のpH領域との色相の違いが明確になるため、特に植物の育成に重要な中性付近の植物育成培地のpHの変化をより確実に目視で判断することができる。その結果、植物育成培地のpHの管理や調整をより確実に行うことができる。
【0014】
本発明に係る人工土壌粒子において、
前記複数種のpH指示薬は、コンゴーレッドとニュートラルレッドとの組み合わせ、メチルレッドとブロモチモールブルーとの組み合わせ、又はメチルレッドとクレゾールレッドとの組み合わせの中から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0015】
本構成の人工土壌粒子によれば、複数種のpH指示薬として、コンゴーレッドとニュートラルレッドとの組み合わせ、メチルレッドとブロモチモールブルーとの組み合わせ、又はメチルレッドとクレゾールレッドとの組み合わせの中から選択される少なくとも一つであるため、中性付近のpHが6〜7の領域において赤色又は黄色が強調される。従って、pHが6〜7の領域とそれ以外のpH領域との色相の違いがさらに明確になるため、植物育成培地のpHの変化をさらに確実に目視で判断することができる。その結果、植物育成培地のpHをさらに適切に管理し、調整することができる。
【0016】
本発明に係る人工土壌粒子において、
細孔を有するフィラーを当該フィラーの間に連通孔が形成されるように複数集合してなる基部を備え、少なくとも前記連通孔の内部から前記基部の表面に亘る領域に前記pH指示薬を担持させてあることが好ましい。
【0017】
本構成の人工土壌粒子によれば、上記構造を備えるため、水分が連通孔に保持されると、連通孔内部から基部の表面に亘る領域に坦持されたpH指示薬が水分に溶解し、植物育成培地のpHの変化に伴う色の変化が反映される。その結果、植物育成培地のpHを適切に管理することができるとともに、目視で確認しながら植物育成培地のpHを、栽培植物の成長にとって最適な状態に調整することができる。
【0018】
本発明に係る人工土壌粒子において、
前記細孔にイオン交換能を付与してあることが好ましい。
【0019】
本構成の人工土壌粒子によれば、細孔にイオン交換能が付与されていることから、人工土壌粒子に肥料を坦持させることができる。イオン交換能が付与された人工土壌粒子は、植物育成培地のpHの変化により、肥料成分を坦持したり、放出したりすることができる。本構成の人工土壌粒子は、色の変化で植物育成培地のpHを認識することができるため、目視で植物育成培地のpHを確認しながら、pH調整を行うことにより、人工土壌粒子に坦持された肥料を栽培植物の成長にとって最適な時期に効果的に放出させることが可能となる。
【0020】
本発明に係る人工土壌粒子において、
繊維を集合した基部と、前記基部を被覆する被覆層とを備え、少なくとも前記被覆層に前記pH指示薬を担持させてあることが好ましい。
【0021】
本構成の人工土壌粒子によれば、上記構造を備えるため、植物育成培地の水分が基部に吸収される際に、被覆層を通過する水分にpH指示薬が溶解し、植物育成培地のpHの変化に伴う色の変化が反映される。その結果、植物育成培地のpHを適切に管理することができるとともに、目視で確認しながら植物育成培地のpHを、栽培植物の成長にとって最適な状態に調整することができる。
【0022】
上記課題を解決するための本発明に係る植物育成培地の特徴構成は、
上記何れか一つの人工土壌粒子を使用したことにある。
【0023】
本構成の人工土壌粒子を使用した植物育成培地によれば、水素イオン濃度に応じて変色するpH指示薬を含有する人工土壌粒子により構成されていることから、植物育成培地のpHの変化に応じて人工土壌粒子の色が変化する。このため、植物育成培地のpHの変化を目視で判断することができる。その結果、植物育成培地のpHを適切に管理することができるとともに、目視で確認しながら植物育成培地のpHを、栽培植物の成長にとって最適なpHに調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、二種類の人工土壌粒子を概念的に示した説明図である。
図2図2は、フィラーを集合してなる人工土壌粒子を概念的に示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る人工土壌粒子、及び当該人工土壌粒子を用いた植物育成培地に関する実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0026】
<人工土壌粒子>
図1は、本発明の実施形態である二種類の人工土壌粒子50を概念的に示した説明図である。図1(a)は、複数のフィラー1を集合して粒状物(基部)を構成し、フィラー1同士の間にpH指示薬2を坦持させた人工土壌粒子50aを例示したものである。図1(b)は、繊維3が集合した繊維塊状体10(基部)を構成し、当該繊維塊状体10の外表にpH指示薬2を含有させた被覆層20を形成した人工土壌粒子50bを例示したものである。これら人工土壌粒子50に担持されたpH指示薬2は、人工土壌粒子50内に侵入した水の水素イオン濃度に反応して変色するため、当該人工土壌粒子50を用いた植物育成培地のpHを目視により容易に判断することができる。従って、植物育成培地にpH調整剤等を添加すると、目視で確認しながら、植物育成培地のpHを、栽培植物の成長にとって最適なpHに調整することができる。また、本発明の人工土壌粒子50を透明の鉢等に入れて屋内で観葉植物等を栽培すると、人工土壌粒子50の色がpHの変化に応じて変化し、インテリア性にも優れた植物育成培地となる。植物育成培地は、人工土壌粒子50を用いて植物を栽培できる形態であればよい。例えば、人工土壌粒子50を単に天然土壌の代わりに使用したものでもよく、人工土壌粒子50をバインダー等で固めてシート状に形成したものでもよく、人工土壌粒子50をバインダー等で固めてブロック状に形成したものでもよい。
【0027】
本発明で用いるpH指示薬2は、栽培する植物の生育可能なpH領域と植物の生育に悪影響を及ぼす虞があるpH領域とを区別できるものであればよい。pH指示薬2は、コチニールレッド、ラック色素、アントシアニン系赤色色素、コンゴーレッド、リトマス、フェノールレッド、ニュートラルレッド、ナフトールレッド、メチルレッド、クレゾールレッド、ブロモクレゾールパープル、ブロモクレゾールグリーン、メチルオレンジ、メチルイエロー、チモールブルー、ナフトールフタレイン、フェノールフタレイン、チモールフタレイン、ブロモチモールブルー等が挙げられ、好ましくはコチニールレッド、ラック色素、アントシアニン系赤色色素、コンゴーレッド、ニュートラルレッド、メチルレッド、クレゾールレッド、ブロモクレゾールパープル、ブロモチモールブルーである。
【0028】
コチニールレッドの変色範囲は、pH4以下で橙色、pH5〜7.5程度で赤色、pH8以上で赤紫色である。ラック色素の変色範囲は、pH4以下で橙色、pH5〜7.5程度で赤橙色、pH8以上で赤紫色である。アントシアニン系赤色色素の変色範囲は、pH4以下で赤〜赤紫色、pH5.5〜7程度で薄紫色、pH8以上で青紫色である。コンゴーレッドの変色範囲は、pH3以下で紫色、pH5以上で赤色である。ニュートラルレッドの変色範囲は、pH7以下で赤色、pH8以上で黄色である。メチルレッドの変色範囲は、pH4.4以下で赤色、pH6.2以上で黄色である。クレゾールレッドの変色範囲は、pH7.2以下で黄色、pH8.8以上で赤紫色である。ブロモクレゾールパープルの変色範囲は、pH5以下で黄色、pH7以上で紫色である。ブロモチモールブルーの変色範囲は、pH6以下で黄色、pH7.6以上で青色である。
【0029】
人工土壌粒子50に対するpH指示薬2の含有量は、0.1〜75重量%が好ましい。pH指示薬2の含有量が0.1重量%未満の場合、人工土壌粒子50が十分に着色せず植物育成培地のpHの変化を確認することができない虞がある。また、人工土壌粒子50に75重量%を超えてpH指示薬2を含有させても、人工土壌粒子50の色の変化に大きな違いが認められず、経済的にも不利である。
【0030】
pH指示薬2は、単独で人工土壌粒子50に含有させてもよいが、複数のpH指示薬2を組み合わせて人工土壌粒子50に含有させてもよい。複数のpH指示薬2を人工土壌粒子50に含有させると、植物育成培地のpHの変化に応じて人工土壌粒子50の色を明確に変化させることが可能になる。これにより、植物育成培地のpHを目視で確実に判断することができる。pH指示薬2の組み合わせは、多くの植物の栽培にとって最適なpH5〜7.5の領域で同じ色相を呈するように組み合わせることが好ましい。pH5〜7.5の領域で同じ色相を呈する複数のpH指示薬2を組み合わせることにより、pH5〜7.5における人工土壌粒子50の色相が強調されることになる。その結果、pH5〜7.5以外のpH領域との色相の違いが明確になり、植物育成培地のpHの変化をさらに確実に目視で判断することが可能となる。
【0031】
具体的なpH指示薬2の組み合わせとしては、例えば、コンゴーレッドとニュートラルレッドとの組み合わせ、メチルレッドとブロモチモールブルーとの組み合わせ、又はメチルレッドとクレゾールレッドとの組み合わせ等が挙げられる。コンゴーレッドとニュートラルレッドとの組み合わせは、pH5〜7の領域で赤色が強調され、メチルレッドとブロモチモールブルーとの組み合わせは、pH5〜7の領域で黄色が強調され、メチルレッドとクレゾールレッドとの組み合わせは、pH6〜7の領域で黄色が強調される。コンゴーレッドとニュートラルレッドとの組み合わせによる植物育成培地の色の変化は、pH3以下で紫色、pH5〜7の領域で赤色、pH8以上で黄色に変色し、メチルレッドとブロモチモールブルーとの組み合わせによる植物育成培地の色の変化は、pH4以下で赤色、pH5〜7の領域で黄色、pH8以上で青緑色に変色し、メチルレッドとクレゾールレッドとの組み合わせによる植物育成培地の色の変化は、pH4以下で赤色、pH6〜7の領域で黄色、pH9以上で赤紫色に変色する。このような組み合わせにより、特定のpH領域の色相が強調され、他のpH領域の色相と明確に区別することができる。
【0032】
複数のpH指示薬2の組み合わせは、特定の植物の成長に最適なpH領域において同じ色相を呈するpH指示薬2を組み合わせてもよい。栽培する植物が野菜の場合、例えば、ニンジン、キュウリ、タマネギ、サツマイモ、カボチャ等はpH5.5〜7の領域において同じ色相を呈するpH指示薬2を組み合わせればよく(例えば、コンゴーレッドとニュートラルレッドとの組み合わせ)、大根、ホウレンソウ、アスパラ等はpH6〜7.5の領域において同じ色相を呈するpH指示薬2を組み合わせればよい(例えば、メチルレッドとクレゾールレッドとの組み合わせ)。栽培する植物が花卉の場合、例えば、バラ、アジサイ(赤)、チューリップ、マリーゴールド、カーネーション等はpH6〜7の領域において同じ色相を呈するpH指示薬2を組み合わせればよく、ラン、ベゴニア等はpH5〜6の領域において同じ色相を呈するpH指示薬2を組み合わせればよい。栽培する植物が観葉植物の場合、例えば、アイビー、アロエ、ドラセナ、ベンジャミン、ポトス等はpH5.5〜6.5の領域において同じ色相を呈するpH指示薬2を組み合わせればよく、アンスリューム、テーブルヤシ、ペペロミア等はpH5〜6.5の領域において同じ色相を呈するpH指示薬2を組み合わせればよい。
【0033】
<粒状物の構造>
図2は、フィラー1を集合してなる人工土壌粒子50aを概念的に示した説明図である。人工土壌粒子50aは、複数のフィラー1を集合させて粒状物(基部)にしたものである。図2(a)は、フィラー1として、多孔質天然鉱物であるゼオライト1aを使用した人工土壌粒子50aを例示したものである。図2(b)は、フィラー1として、層状天然鉱物であるハイドロタルサイト1bを使用した人工土壌粒子50aを例示したものである。
【0034】
人工土壌粒子50a中の複数のフィラー1は、それらが互いに接触していることは必須ではなく、一粒子内でバインダー等を介して一定範囲内の相対的な位置関係を維持していれば、複数のフィラー1が集合して粒状に構成したものと考えることができる。人工土壌粒子50aを構成するフィラー1は、表面から内部にかけて多数の細孔4を有する。細孔4は、種々の形態を含む。例えば、フィラー1が、図2(a)に示すゼオライト1aの場合、当該ゼオライト1aの結晶構造中に存在する空隙が細孔4aであり、図2(b)に示すハイドロタルサイト1bの場合、当該ハイドロタルサイト1bの層構造中に存在する層間が細孔4bである。つまり、本発明において「細孔」とは、フィラー1の構造中に存在する空隙部、層間部、空間部等を意図し、これらは「孔状」の形態に限定されるものではない。ゼオライト1a及びハイドロタルサイト1bは、イオン交換性鉱物であるため、細孔4に肥料成分を保持することができる。
【0035】
人工土壌粒子50aは、複数のフィラー1の間に連通孔5が形成されている。pH指示薬2は、当該連通孔5の内部から基部の表面に亘る領域に坦持されている。連通孔5は、主に水分を保持することができ、植物育成培地に含まれる水分を効率よく取り込むことができる。これにより、植物育成培地中のpHの変化に応じて人工土壌粒子50aに含まれているpH指示薬2を効率よく変色させることができる。その結果、植物育成培地のpHの変化を目視で確実に判断することができる。
【0036】
本発明の人工土壌粒子50aで用いるフィラー1は、例えば、パーライト、タルク、珪藻土、カオリン、ロックウール、イオン交換性鉱物等の無機鉱物、ピートモス、ウレタンフォーム、ヤシ殻、クリプトモス(登録商標)、セルロースファイバー等の有機素材等が挙げられる。この中でもイオン交換性鉱物は、人工土壌粒子50aに十分な保肥性を与えるため好適に用いられる。イオン交換性鉱物としては、陽イオン交換性鉱物、陰イオン交換性鉱物、及び腐植等が挙げられる。また、人工土壌粒子50aに保肥性を与えるために、イオン交換能を有さない多孔質材料(例えば、高分子発泡体、ガラス発泡体等)を別に用意し、当該多孔質材料の細孔にイオン交換能が付与された材料を圧入や含浸等によって導入し、これをフィラー1として使用することも可能である。また、イオン交換性樹脂を導入することも可能である。
【0037】
上記イオン交換性鉱物等を用いた人工土壌粒子50aの保肥性は、植物育成培地のpHの変化により大きく影響を受ける。植物育成培地のpHが変化すると、イオン交換体に吸着していた肥料成分が流出し、人工土壌粒子50aが肥料成分を保持できなくなる虞がある。これを避けるために、人工土壌粒子50aの肥料を保持可能なpH領域に、植物育成培地のpHを維持する必要がある。人工土壌粒子50aは、pH指示薬2を含有していることから、目視で植物育成培地のpHを容易に判断することができる。従って、pH調整剤等を植物育成培地に添加することにより、目視で確認しながら植物育成培地のpHを、肥料を保持可能なpHに確実に調整することができる。また、植物育成培地に根酸の主成分であるクエン酸等を添加して目視で植物育成培地のpHを調整することにより、栽培している植物の成長に合わせて、植物の成長に必要な肥料成分を所定の時期に溶出させることも可能である。
【0038】
陽イオン交換性鉱物は、例えば、モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト等のスメクタイト系鉱物、雲母系鉱物、バーミキュライト、ゼオライト等が挙げられる。陽イオン交換樹脂は、例えば、弱酸性陽イオン交換樹脂、強酸性陽イオン交換樹脂が挙げられる。これらのうち、ゼオライト、又はベントナイトが好ましい。陽イオン交換性鉱物及び陽イオン交換樹脂は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。陽イオン交換性鉱物及び陽イオン交換樹脂における陽イオン交換容量は、10〜700meq/100gに設定され、好ましくは20〜700meq/100gに設定され、より好ましくは30〜700meq/100gに設定される。陽イオン交換容量が10meq/100g未満の場合、十分に養分を取り込むことができず、取り込まれた養分も灌水等により早期に流失する虞がある。一方、陽イオン交換容量が700meq/100gを超えるように保肥力を過剰に大きくしても、効果は大きく向上せず、経済的ではない。
【0039】
陰イオン交換性鉱物は、例えば、ハイドロタルサイト、マナセアイト、パイロオーライト、シェーグレン石、緑青等の主骨格として複水酸化物を有する天然層状複水酸化物、合成ハイドロタルサイト及びハイドロタルサイト様物質、アロフェン、イモゴライト、カオリン等の粘土鉱物が挙げられる。陰イオン交換樹脂は、例えば、弱塩基性陰イオン交換樹脂、強塩基性陰イオン交換樹脂が挙げられる。これらのうち、ハイドロタルサイトが好ましい。陰イオン交換性鉱物及び陰イオン交換樹脂は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。陰イオン交換性鉱物及び陰イオン交換樹脂における陰イオン交換容量は、5〜500meq/100gに設定され、好ましくは20〜500meq/100gに設定され、より好ましくは30〜500meq/100gに設定される。陰イオン交換容量が5meq/100g未満の場合、十分に養分を取り込むことができず、取り込まれた養分も灌水等により早期に流失する虞がある。一方、陰イオン交換容量が500meq/100gを超えるように保肥力を過剰に大きくしても、効果は大きく向上せず、経済的ではない。
【0040】
<フィラーの粒状化法>
人工土壌粒子50aの形成にあたっては、複数のフィラー1を集合して粒状物(人工土壌粒子50a)を構成するために、バインダーを用いて粒状化を行うことができる。バインダーを用いた人工土壌粒子50aの形成は、フィラー1及びpH指示薬2にバインダーや溶媒等を加えて混合し、混合物を造粒機に導入し、転動造粒、流動層造粒、攪拌造粒、圧縮造粒、押出造粒、破砕造粒、溶融造粒、噴霧造粒等の公知の造粒法により行うことができる。得られた粒状物は、必要に応じて乾燥及び分級が行われ、人工土壌粒子50aが完成する。これにより、フィラー1及びpH指示薬2が均一に分散した人工土壌粒子50aを得ることができる。また、フィラー1及びpH指示薬2にバインダーを加え、さらに必要に応じて溶媒等を加えて混練し、これを乾燥してブロック状にしたものを、乳鉢及び乳棒、ハンマーミル、ロールクラッシャー等の粉砕手段で適宜粉砕して粒状物とすることも可能である。この粒状物は、そのまま人工土壌粒子50aとして用いることもできるが、篩にかけて所望の粒径に調整することが好ましい。人工土壌粒子50aは、pH指示薬を含有することから、使用するフィラー1やバインダー等の材料のpHは、中性のもの又は中性に調整したものを使用することが好ましい。これにより、pH変化による人工土壌粒子50aの色の変化が明確になる。人工土壌粒子50aは、後述する被覆層を設けてもよい。これにより、人工土壌粒子50aの保水性及び保肥性をさらに制御することが可能となる。
【0041】
人工土壌粒子50aを造粒するためのバインダーとしては、有機バインダー又は無機バインダーの何れも使用可能である。有機バインダーは、例えば、ポリオレフィン系バインダー、ポリビニルアルコール系バインダー、ポリウレタン系バインダー、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル等の酢酸ビニル系バインダー、ウレタン樹脂、ビニルウレタン樹脂等のウレタン樹脂系バインダー、アクリル樹脂系バインダー、シリコーン樹脂系バインダー等の合成樹脂系バインダー;デンプン、カラギーナン、キサンタンガム、ジェランガム、アルギン酸塩等の多糖類、ポリアミノ酸、膠等のたんぱく質等の天然物系バインダーが挙げられる。無機バインダーは、例えば、水ガラス等のケイ酸塩系バインダー、リン酸アルミニウム等のリン酸塩系バインダー、ホウ酸アルミニウム等のホウ酸塩系バインダー、セメント等の水硬性バインダーが挙げられる。有機バインダー及び無機バインダーは、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。人工土壌粒子50aは、水素イオン濃度に応じて変色するpH指示薬を含有することから、使用されるバインダーは、無色又は白色系のバインダーが好ましい。これにより、pH変化による人工土壌粒子50aの色の変化が明確になる。
【0042】
人工土壌粒子50aの形成にあたっては、高分子ゲル化剤のゲル化反応を利用して粒状化させることができる。高分子ゲル化剤のゲル化反応として、例えば、アルギン酸塩と多価金属イオンとのゲル化反応、カルボキシメチルセルロース(CMC)のゲル化反応、カラギーナン等の多糖類の二重らせん構造化反応によるゲル化反応が挙げられる。このうち、アルギン酸塩と多価金属イオンとのゲル化反応について説明する。アルギン酸塩の一つであるアルギン酸ナトリウムは、アルギン酸のカルボキシル基がNaイオンと結合した形態の中性塩である。アルギン酸は水に不要であるが、アルギン酸ナトリウムは水溶性である。アルギン酸ナトリウム水溶液を多価金属イオン(例えば、Caイオン)の水溶液中に添加すると、アルギン酸ナトリウムの分子間でイオン架橋が起こりゲル化する。本実施形態の場合、ゲル化反応は、以下の工程により行うことができる。初めに、アルギン酸塩を水に溶解させてアルギン酸塩水溶液を調製し、アルギン酸塩水溶液にフィラー1及びpH指示薬2を添加し、これを十分攪拌して、アルギン酸塩水溶液中にフィラー1及びpH指示薬2が分散した混合液を形成する。次に、混合液を多価金属イオン水溶液中に滴下し、混合液に含まれるアルギン酸塩を粒状にゲル化させる。フィラー1及びpH指示薬2は、このゲル中に取り込まれる。その後、ゲル化した粒子を回収して水洗し、十分に乾燥させる。これにより、アルギン酸塩及び多価金属イオンから形成されるアルギン酸ゲル中にフィラー1及びpH指示薬2が分散した粒状物が得られる。粒状物は、必要に応じて乾燥及び分級が行われ、人工土壌粒子50aとされる。人工土壌粒子50aの好ましい粒径は、0.2〜10mmの範囲である。
【0043】
ゲル化反応に使用可能なアルギン酸塩は、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウムが挙げられる。これらのアルギン酸塩は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。アルギン酸塩水溶液の濃度は、0.1〜5重量%とし、好ましくは0.2〜5重量%とし、より好ましくは0.2〜3重量%とする。アルギン酸塩水溶液の濃度が0.1重量%未満の場合、ゲル化反応が起こり難くなり、5重量%を超えると、アルギン酸塩水溶液の粘度が大きくなり過ぎるため、フィラー1及びpH指示薬2を添加した混合液の攪拌や、当該混合液を多価金属イオン水溶液中に滴下することが困難になる。
【0044】
アルギン酸塩水溶液を滴下する多価金属イオン水溶液は、アルギン酸塩と反応してゲル化する2価以上の金属イオン水溶液であればよい。そのような多価金属イオン水溶液の例として、塩化カルシウム、塩化バリウム、塩化ストロンチウム、塩化ニッケル、塩化アルミニウム、塩化鉄、塩化コバルト等の多価金属の塩化物水溶液、硝酸カルシウム、硝酸バリウム、硝酸アルミニウム、硝酸鉄、硝酸銅、硝酸コバルト等の多価金属の硝酸塩水溶液、乳酸カルシウム、乳酸バリウム、乳酸アルミニウム、乳酸亜鉛等の多価金属の乳酸塩水溶液、硫酸アルミニウム、硫酸亜鉛、硫酸コバルト等の多価金属の硫酸塩水溶液が挙げられる。これらの多価金属イオン水溶液は、二種以上を組み合わせて使用することも可能である。多価金属イオン水溶液の濃度は、1〜20重量%とし、好ましくは2〜15重量%とし、より好ましくは3〜10重量%とする。多価金属イオン水溶液の濃度が1重量%未満の場合、ゲル化反応が起こり難くなり、20重量%を超えると、金属塩の溶解に時間が掛かるとともに、過剰の材料を使用することになるため、経済的でない。
【0045】
<繊維塊状体の構造>
人工土壌粒子50bは、繊維3を集合した繊維塊状体10(基部)を人工土壌粒子50bとしてもよいし、図1(b)に示すように、繊維塊状体10に被覆層20を形成してもよい。被覆層20を設けることにより、繊維塊状体10の水分の吸収及び放出をより精密にコントロールすることが可能となる。
【0046】
繊維塊状体10は、繊維3の集合体として構成される。繊維塊状体10を構成する繊維3の間には、空隙6が形成されている。繊維塊状体10は、空隙6に水分を保持することができる。従って、空隙6の状態は、繊維塊状体10の保水性に関係する。空隙6の状態は、繊維塊状体10を形成する際の繊維3の使用量(密度)、繊維3の種類、太さ、長さ等を変更することにより調整可能である。なお、繊維3のサイズは、太さが5〜100μmのものが好ましく、長さが0.5〜10mmのものが好ましい。
【0047】
繊維塊状体10は、その内部に水分を保持できるように構成するため、繊維3として親水性の繊維を使用することが好ましい。繊維3の種類は天然繊維又は合成繊維の何れでもよく、人工土壌粒子50bの種類に応じて、適宜選択される。好ましい親水性の繊維として、例えば、天然繊維として綿、羊毛、レーヨンが挙げられ、合成繊維として、例えば、ビニロン、ウレタン、ナイロン、アセテートが挙げられ、これらのうち、綿及びビニロンがより好ましい。天然繊維と合成繊維とを混繊したものでも構わない。人工土壌粒子50bは、水素イオン濃度に応じて変色するpH指示薬を含有することから、使用される繊維は、無色又は白色系の繊維が好ましい。これにより、pH変化による人工土壌粒子50bの色の変化が明確になる。
【0048】
<繊維塊状体の形成方法>
繊維塊状体10は、公知の造粒法により形成される。例えば、繊維3をカーディング装置等で引揃え、3〜10mm程度の長さに切断し、切断した繊維3を転動造粒、流動層造粒、攪拌造粒、圧縮造粒、押出造粒等の方法で造粒することにより形成することができる。造粒の際、繊維3に樹脂や糊等のバインダーを混合して造粒を行ってもよいが、繊維3は互いに絡まり合って固着化し易いため、バインダーを使用しなくても繊維3を塊状に加工することが可能である。pH指示薬2は、繊維塊状体10を造粒する際に混合してもよいし、繊維塊状体10の外表部に被覆層20を形成する場合においては、被覆層20に含有させて繊維塊状体10に混合しなくてもよい。人工土壌粒子50bは、pH指示薬を含有することから、使用する繊維3等の材料のpHは、中性のもの又は中性に調整したものを使用することが好ましい。これにより、pH変化による人工土壌粒子50bの色の変化が明確になる。
【0049】
繊維塊状体10を造粒するにあたり、繊維3として短繊維を使用することも可能である。この場合、短繊維を撹拌混合造粒装置で撹拌しながら樹脂エマルジョンを少量ずつ投入して造粒する。これにより、繊維塊状体10を形成する短繊維同士が一部で固定化され、強固な繊維塊状体10を形成することができる。
【0050】
<被覆層の形成方法>
図1(b)に示すように、繊維塊状体10の外表部には、被覆層20を形成することができる。被覆層20は、水浸透性の良好な材質で形成することが好ましい。被覆層20にpH指示薬2を含有させると、植物育成培地に存在する水のpHの変化に応じて人工土壌粒子50の色を確実に変化させることができる。また、被覆層20は、その材質を選択することにより、pH指示薬2の応答性だけでなく、人工土壌粒子50に坦持した肥料成分の放出も制御することができる。
【0051】
被覆層20の形成方法としては、例えば、以下に説明する含浸法が挙げられる。上述の「繊維塊状体の形成方法」の項目で例示した繊維塊状体10を容器に投入し、繊維塊状体10の体積(占有容積)の半分程度の水を加え、繊維塊状体10に水を浸み込ませる。次に、水を浸み込ませた繊維塊状体10を、繊維塊状体10の体積の1/3〜1/2のpH指示薬2を含んだ被覆用の樹脂エマルジョンを添加する。次に、繊維塊状体10の外表部に樹脂エマルジョンが均一に付着するように転動させながら、繊維塊状体10の外表部から樹脂エマルジョンを含浸させる。このとき、繊維塊状体10の中心部には水が浸み込んでいるため、樹脂エマルジョンは繊維塊状体10の外表部付近で留まる。その後、樹脂エマルジョンが付着した繊維塊状体10をオーブンで乾燥させ、次いで、樹脂を溶融させ、繊維塊状体10の外表部付近の繊維3に樹脂を融着させて被覆層20としての樹脂被膜を形成する。これにより、繊維塊状体10の外表がpH指示薬2を含有する被覆層20で被覆された人工土壌粒子50bが完成する。被覆層20は、繊維塊状体10を構成する繊維3の絡み合い部分(繊維3同士が接触する部分)を補強するように、繊維塊状体10の外表部から若干内側に浸透した状態にまで厚みを形成してもよい。これにより、人工土壌粒子50bの強度及び耐久性を向上させることができる。被覆層20の膜厚は、1〜200μmに設定され、好ましくは10〜100μmに設定され、より好ましくは20〜60μmに設定される。この方法では、含浸させる樹脂溶液中の樹脂の種類及び濃度を調整することにより、繊維塊状体10の外表に形成される被覆層20の特性を変更することができる。
【0052】
被覆層20の材質は、水に不溶性で酸化され難いものが好ましく、例えば、樹脂材料が挙げられる。そのような樹脂材料として、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン等のスチロール系樹脂が挙げられる。これらのうち、ポリエチレンが好ましい。また、樹脂材料に代えて、ポリエチレングリコール等の合成高分子系のゲル化剤、又はアルギン酸ナトリウム等の天然ゲル化剤を使用することも可能である。人工土壌粒子50は、水素イオン濃度に応じて変色するpH指示薬を含有することから、使用される被覆層20の材質は、無色又は白色系のものが好ましい。これにより、pH変化による人工土壌粒子50の色の変化が明確になる。
【0053】
<人工土壌団粒体>
本発明の人工土壌粒子50は、さらに団粒化して人工土壌団粒体の形態で植物育成培地として利用することも可能である。
【0054】
人工土壌団粒体は、複数の人工土壌粒子50が連なったクラスター構造を有している。クラスター構造は、複数の人工土壌粒子50を二次バインダーで接着することにより得られる。pH指示薬2は、人工土壌粒子50内に含ませてもよいが、二次バインダーで人工土壌団粒体を形成する際に添加してもよい。人工土壌粒子50の団粒化に使用する二次バインダーは、人工土壌粒子50の形成で用いたバインダーと同じものを使用できるが、異なる種類のバインダーであっても構わない。人工土壌団粒体のサイズは、0.4〜20mmであり、好ましくは0.5〜18mmであり、より好ましくは1〜15mmであり、最も好ましくは2〜4mmである。人工土壌団粒体100のサイズが0.4mm未満の場合、人工土壌団粒体を構成する人工土壌粒子50間の間隙が小さくなって排水性が低下することにより、栽培する植物が根から酸素を吸収し難くなる虞がある。一方、人工土壌団粒体のサイズが20mmを超えると、排水性が過剰になり過ぎることにより植物が水分を吸収し難くなったり、人工土壌団粒体が疎になって植物が横倒れする虞がある。
【実施例】
【0055】
本発明の人工土壌粒子を用いた植物育成培地について、pHによる変色性を評価する試験を実施した。
【0056】
<人工土壌粒子及び人工土壌団粒体の作製>
下記の表1及び表2に記載される配合(重量部)に従って、フィラーとしてタルク(SW、日本タルク株式会社製)、セルロースファイバー(アボセルB800、昭和化学工業株式会社製)、珪藻土(ラヂオライト(登録商標)F、昭和化学工業株式会社製)、ビニロンファイバー(VF1203−2、株式会社クラレ製)、陽イオン交換性鉱物であるゼオライト(琉球ライトCEC600、株式会社エコウェル製)、及び陰イオン交換性鉱物であるハイドロタルサイト(和光純薬工業株式会社製)のうちの少なくとも一つと、pH指示薬とを混合し、混合物をバインダーにより固めて実施例1〜22、並びに比較例1及び2の人工土壌粒子を作製した。バインダーには、アルギン酸ナトリウム(和光純薬工業株式会社製)又はポリエチレン混合エマルジョン溶液(セポルジョン(登録商標)G315、住友精化株式会社製)を使用した。アルギン酸ナトリウムを使用する場合、アルギン酸ナトリウム0.5%水溶液にフィラー及びpH指示薬を添加し、ミキサー(SM−L57:三洋電機(株)製)を用いて3分間撹拌し、得られた混合液を、多価金属イオン水溶液である5%塩化カルシウム水溶液に滴下してゲル化物を生成した。生成したゲル化物を液から回収し、洗浄した後、55℃の乾燥機中で24時間乾燥させて人工土壌粒子を作製した。ポリエチレン混合エマルジョン溶液を使用する場合、ポリエチレン混合エマルジョン20%液にフィラー及びpH指示薬を攪拌しながら混合し、造粒したものを篩にかけて分級して人工土壌粒子を作製した。実施例7、実施例8、実施例12、実施例13、実施例14、実施例20、実施例21、及び実施例22については、得られた人工土壌粒子の単粒体100重量部と、二次バインダーとしてコニシ株式会社製の酢酸ビニル樹脂系接着剤「ボンド(登録商標)木工用」5重量部とを混合し、混合物を造粒機に導入して団粒化し、人工土壌団粒体を作製した。
【0057】
pH指示薬としては、コチニールレッド(カルミンレッドMK−40、キリヤ化学株式会社製)、ラック色素(ラッカインレッドR、キリヤ化学株式会社製)、アントシアニン系赤色色素(キリヤスレッドRC−Y、キリヤ化学株式会社製)、コンゴーレッド(和光純薬工業株式会社製)、ニュートラルレッド(和光純薬工業株式会社製)、メチルレッド(和光純薬工業株式会社製)、クレゾールレッド(和光純薬工業株式会社製)、ブロモクレゾールパープル(和光純薬工業株式会社製)、及びブロモチモールブルー(和光純薬工業株式会社製)を使用した。比較例1及び2については、食品の着色等に用いられるベニコウジ色素(モナスコレッドAL、キリヤ化学株式会社製)を人工土壌粒子に含有させたものを使用した。
【0058】
<試験内容>
(1)植物育成培地のpHによる変色性:上記作製した各人工土壌粒子(実施例1〜22、比較例1及び2)を、pHを調整した水溶液に夫々含浸させた。各人工土壌粒子のpHによる変色性を目視で観察した。pHによる変色性をマンセル色票に基づく色相の範囲で示した。マンセル色票について以下に説明する。
pH指示薬による人工土壌粒子の色相は、マンセル色票に基づく表色系で表すことができる。マンセル表色系とは、色の3属性に基づいた色彩を表現する体系(表色系)の一種である。なおマンセル表色系は、JIS Z 8721(3属性による色の表示方法)として規格化されている。ここで3属性とは、色相、明度および彩度の3つを意味し、3属性のうち「色相」とは、色の種類を表すものである。色相は、赤(R)、黄(Y)、緑(G)、青(B)、紫(P)の5色の基本色、そしてそれぞれの中間色である黄赤(YR)、黄緑(GY)、青緑(BG)、青紫(PB)、赤紫(RP)を加えた合計10色に分割される。そしてこれらの色をさらに10で分割し、計100色の種類を色相環で表現し、これを色相判定の基準とした。色相環は、この100色に分割した色(1〜100)を、時計の進行方向に順番に並べたものである。ここで基本色に中間色を加えた10色相の夫々の色の範囲は、以下の通りである。
赤色(R) :1〜10
黄赤色(YR):11〜20
黄色(Y) :21〜30
黄緑色(GY):31〜40
緑色(G) :41〜50
青緑色(BG):51〜60
青色(B) :61〜70
青紫色(PB):71〜80
紫色(P) :81〜90
赤紫色(RP):91〜100
(2)保水性:クロマト管に試験対象の土壌を充填し、土壌の全てが水没するように水を注入し、1時間静置後、クロマト管の下部より水を抜き、3分間クロマト管から落水しなくなった時の保水量を測定し、試験対象の土壌100ccに対する保水量に換算して保水性とした。なお、保水量は、クロマト管に試験対象の土壌を140cc充填し、上部から水を加えて所定時間後の重量を測定し、予め測定しておいた試験対象の土壌の重量を差し引くことにより測定した。
(3)保肥性:富士平工業株式会社製の汎用抽出・ろ過装置「CEC−10Ver.2」を用いて各人工土壌粒子を使用した植物育成培地の抽出液を作製し、これを陽イオン交換容量測定用の試料とした。そして、富士平工業株式会社製の土壌・作物体総合分析装置「SFP−3」を用いて、各植物育成用培地の陽イオン交換容量(meq/100g)を測定した。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
実施例1〜22のpH指示薬を含ませた人工土壌粒子及び人工土壌団粒体は、その種類に関係なく、植物育成培地のpHの変化を目視で容易に判断することができた。実施例17におけるコンゴーレッドとニュートラルレッドとの組み合わせでは、中性領域(pH5〜7)における赤色が強調され、植物育成培地のpHの変化を目視で確実に判断することができた。実施例18〜21におけるメチルレッドとブロモチモールブルーとの組み合わせでは、人工土壌粒子の形状やpH指示薬の濃度に関係なく中性領域(pH5〜7)における黄色が強調され、植物育成培地のpHの変化を目視で確実に判断することができた。実施例22におけるメチルレッドとクレゾールレッドとの組み合わせでは、中性領域(pH6〜7)における黄色が強調され、植物育成培地のpHの変化を目視で確実に判断することができた。さらに、実施例17〜22の複数のpH指示薬の組み合わせでは、植物育成培地の色の変化が強調されており、インテリア商品としても好まれるものとなった。なお、保水性及び保肥性については、pH指示薬の添加による影響は認められず、良好な値を示した。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の人工土壌粒子及び植物育成培地は、植物工場等で行われる植物の栽培に利用可能であるが、その他の用途として、施設園芸用土壌培地、緑化用土壌培地、成型土壌培地、土壌改良剤等にも利用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 フィラー
2 pH指示薬
3 繊維
4 細孔
5 連通孔
10 繊維塊状体(基部)
20 被覆層
50(50a,50b) 人工土壌粒子
図1
図2