【実施例1】
【0017】
図1(a)〜(d)は、本発明の実施例1に係る半導体発光素子の製造方法を説明する断面図である。なお、説明及び理解の容易さのため、半導体ウェハの隣接する2つの半導体発光素子10の部分について説明する。
【0018】
図1(a)は、貼り合わせ構造を有するGaN系の半導体発光素子を作製する工程を説明する断面図である。まず、結晶成長に用いられる成長用基板(図示せず)上に、Al
xIn
yGa
zN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)の組成を有するn型半導体層(第1の半導体層)11、活性層12及びp型半導体層(第2の半導体層)13を順次成長する。n型半導体層11、活性層12及びp型半導体層13の全体を半導体構造層14と称する。半導体構造層14の成長には、有機金属気相成長法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:MOCVD法)を用いた。
【0019】
本実施例においては、結晶の成長面がCマイナス(C
-)面であるサファイア基板上に、バッファ層(図示せず)、n−GaN層11、InGaN層/GaN層からなる量子井戸活性層12、p−AlGaNクラッド層(図示せず)及びp−GaN層13を順次成長した。
【0020】
次に、p型半導体層13上にp電極15を形成する。p電極15の形成には、例えばスパッタ法及び電子ビーム蒸着法を用いることができる。本実施例においては、p型半導体層13上に、パターニングを施したマスク(図示せず)を形成し、Ni層、Ag層及びNi層を電子ビーム蒸着法により順次形成した後、リフトオフ法によりマスクを除去することによってp電極15を形成した。
【0021】
続いて、p電極15の全体を覆うように金属層16を形成する。金属層16は、p電極15の材料のマイグレーションを防止するキャップ層(図示せず)及び後述する支持基板との貼り合わせに用いる接合層(図示せず)を含む。金属層16の材料としては、Ti、TiW、Pt、Ni、Au、AuSn、Cuなどの金属材料を用いることができる。金属層16の形成には、例えば、スパッタ法及び電子ビーム蒸着法を用いることができる。本実施例においては、p電極15の全体を覆うように、Ti層、Pt層及びAuSn層を形成した。
【0022】
次に、半導体構造層14を素子毎に分離した後、半導体構造層14の側部に保護膜17を形成する。保護膜17の形成には、スパッタ法を用いた。保護膜17の材料としては、絶縁材料、例えばSiO
2又はSiNを用いることができる。本実施例においては、SiO
2膜を半導体構造層14の側部に形成した。
【0023】
続いて、支持基板18を別個に準備し、金属層15を介して半導体構造層14に貼り合わせる。支持基板18の材料としては、例えば、表面にAuSn又はAuなどの金属層(図示せず)が形成されたSi基板又はメッキが施されたCu合金などの既知の材料を用いることができる。半導体構造層14と支持基板18との貼りあわせには、熱圧着を用いた。本実施例においては、AuSn層が形成されたSi基板18と、半導体構造層14側に形成された金属層15とを加熱及び圧着することによって接合した。
【0024】
続いて、半導体構造層14の成長に用いた成長用基板を半導体構造層14から除去する。成長用基板の除去にはレーザーリフトオフを用いた。本実施例においては、KrFエキシマレーザを用いて、サファイア基板を照射し、n−GaN層11からサファイア基板を剥離した。サファイア基板が除去されたことによってn−GaN層11のC
-面すなわち、GaNのN極性面が表出する。
【0025】
次に、
図1(b)に示すように、n型半導体層11の表面に、エッチング容易部を形成する。具体的には、まず、n型半導体層11上に、その表面の結晶方向に基づいて配列された複数のマスク部19Aからなるマスク層19を形成する。マスク層19の材料としては、例えばフォトレジストを用いることができる。本実施例においては、直径300nmの円形のマスク部19Aを有するマスク層19をn−GaN層11の表面に形成した。具体的には、まず、レジスト層をn−GaN層11の全面に塗布し、ホットプレートを用いてプリベークを行った。次に、UV光を用いてフォトレジストに上記のパターンを露光した。次いで、現像液にウェハを浸漬し、パターンの現像処理を行った。
【0026】
続いて、マスク層19から露出したn型半導体層11の表面11Aに、不活性ガスによるプラズマ照射を行った。不活性ガスの材料としては、例えばArガスを用いることができる。プラズマ照射には、例えばスパッタ装置及びドライエッチング装置などを用いることができる。本実施例においては、Arガスのプラズマを、スパッタ装置の逆スパッタ機能を用いて、約5分間n−GaN層11の露出した部分11Aに照射した。なお、本実施例においてはArガスのプラズマを用いたが、他の不活性ガス、例えば、He、Ne、Kr、Xe、Rnのガスのプラズマを用いても同様の効果を得ることができる。
【0027】
プラズマが照射された部分(以下、プラズマ照射部と称する)、すなわちn−GaN層11の表面におけるマスク層19から露出した部分11Aにおいては、後工程であるエッチング速度が相対的に小さい。一方、プラズマが照射されていない部分(以下、非プラズマ照射部と称する)、すなわちn−GaN層11の表面におけるマスク層19のマスク部19Aの形成位置に対応した部分においては、エッチング速度が相対的に大きい。換言すれば、非プラズマ照射部はエッチング容易部となり、プラズマ照射部はエッチング困難部となる。n型半導体層の表面及びマスク層の詳細については
図2を用いて後述する。
【0028】
次に、
図1(c)に示すように、有機溶媒を用いてマスク層19を除去した後、アルカリ溶液を用いてn型半導体層11の表面にウェットエッチングを行った。具体的には、例えば、TMAH(テトラメチルアンモニア溶液)及びKOH(水酸化カリウム溶液)などのアルカリ溶液中に半導体ウェハを浸漬した。本実施例においては、ウェハを約70℃のTMAHに浸漬した。この際、n型半導体層11の表面には、マスク層19のマスク部19A(エッチング容易部)の配置形態に従って配列され、かつn型半導体層の結晶構造に由来する六角錐状の突起すなわちマイクロコーン20が複数個形成された。このようにして、n型半導体層11の表面に複数の突起20からなる凹凸構造面21を形成する。
【0029】
続いて、
図1(d)に示すように、n型半導体層11の表面上に、保護層22を形成した。保護層22の材料としては、絶縁材料、例えば、SiO
2及びSiNを用いることができる。保護層22の形成には、スパッタ法を用いた。なお、後述するn電極23を形成する部分に保護層22を形成する必要はない。
【0030】
次に、n型半導体層11の表面にn電極23を形成する。n電極23の形成には、例えばスパッタ法及び電子ビーム蒸着法を用いることができる。本実施例においては、n型半導体層11の表面上に保護層22が形成されない部分を設けた上で、n型半導体層11上に、パターニングを施したマスク(図示せず)を形成し、Ti層、Al層、Ti層、Pt層及びAu層を電子ビーム蒸着法により順次形成した後、リフトオフ法によりマスクを除去することによってn電極23を形成した。その後、素子毎に支持基板18を分割して、半導体発光素子10を得る。
【0031】
図2(a)及び(b)を参照して、エッチング容易部及びエッチング困難部を形成するためのマスク層の詳細について説明する。
図2(a)及び
図2(b)は、n型半導体層11(半導体構造層14)の上面図であり、図中の破線はn型半導体層11の表面における結晶方向に平行な直線を示している。
【0032】
本実施例においては、マスク層19のマスク部19Aは、
図2(a)に示すようなドット状の配置形態をなすように形成した。すなわち、マスク部19Aの各々は、n型半導体層11の表面の結晶方向のうち、[11−20]方向に平行に且つ等間隔で配列された複数の直線からなる第1の区画線群(第1の直線群)L1と、[2−1−10]方向に平行に且つ第1の区画線群L1と同じ間隔で配列された複数の直線からなる第2の区画線群(第2の直線群)L2と、[1−210]方向に平行に且つ第1及び第2の区画線群L1及びL2と同じ間隔で配列された第3の区画線群(第3の直線群)L3とによってn型半導体層11の表面を正三角形の単位格子(単位グリッド又は単位セル、以下、単に格子と称する)GDからなるメッシュ状に区画したとき、その正三角形の格子GDの中心の各々上に形成される。
【0033】
具体的には、まず、n型半導体層11の表面において、n型半導体層11の表面の結晶方向のうち、[11−20]方向に平行に且つ等間隔で配列された直線を複数本決定し、これら直線の全体を第1の直線群L1とする。同様に、[2−1−10]方向及び[1−210]方向にそれぞれ平行に且つ第1の直線群L1と同じ間隔で配列された直線を複数本決定し、これら直線の全体をそれぞれ第2の直線群L2及び第3の直線群L3とする。この際、各直線群から1つの直線を選択したとき、その3つの直線が1点で(交点ISで)交わるように直線を決定する。これによって、n型半導体層11の表面が各直線群における各交点ISを頂点とする複数の正三角形の格子GDによってメッシュ状に区画される。また、n型半導体層11の表面は、同一形状を有する正三角形の単位格子GDによってメッシュ状に区画される。
【0034】
マスク部19Aは、この複数の正三角形の格子GDの中心の各々上に形成する。エッチング容易部は、マスク部19の形成位置に対応したプラズマが照射されない部分となる。本実施例においては、各直線群において直線間の間隔を約0.7〜約1.5μmの範囲内とし、これによってマスク部の配置場所を決定した。
【0035】
換言すれば、マスク層19のマスク部19Aの各々は、第1の直線群L1と、第2の直線群L2と、第3の直線群L3とによってn型半導体層11の表面を正三角形の格子GDからなるメッシュ状に区画したとき、当該格子GDの頂点(すなわち各直線群の交点IS)の各々を中心とする正六角形の頂点部分を構成するように形成される。
【0036】
なお、マスク層10のマスク部19Aは、
図2(b)に示すように、n型半導体層11の表面の結晶方向のうち、[1−100]方向に平行に且つ等間隔で配列された複数の直線からなる第1の直線群L1Aと、[10−10]方向に平行に且つ第1の直線群L1Aと同じ間隔で配列された複数の直線からなる第2の直線群L2Aと、[0−110]方向に平行に且つ第1の直線群L1A及び第2の直線群L2Aと同じ間隔で配列された複数の直線からなる第3の直線群L3Aとによってn型半導体層11の表面をメッシュ状に区画して設けられた単位格子の中心の各々上に形成されてもよい。
【0037】
なお、半導体構造層14(n型半導体層11)の表面の結晶方向は、例えば、成長用基板に通常形成されている結晶方向を示すオリエンテーションフラット(OF)と称される切り欠き部に基づいて把握することができる。また、
図2(b)に示すマスク部の配置形態は、
図2(a)のマスク部の配置形態を90度回転させた場合に相当する。
【0038】
図3(a)〜(d)及び
図4(a)〜(c)は、
図1(c)のウェットエッチング工程において突起20を形成し、凹凸構造面21を形成する過程を説明する図である。
図3(a)〜
図3(d)は、
図2(a)のV−V線に沿った断面図における突起20の形成過程を示している。また、
図4(a)〜(c)は、マイクロコーンの形成過程におけるn型半導体層11の表面を模式的に示す上面図である。
図4(a)〜(c)のV−V線は
図2(a)のV−V線に対応する。以下においては、エッチング困難部であるプラズマが照射されたn型半導体層11の表面部分をプラズマ照射部20Aと称し、エッチング容易部であるマスク部19Aの下の部分に対応するプラズマが照射されていないn型半導体層11の表面部分を非プラズマ照射部20Bと称する。
【0039】
図3(a)は、プラズマ照射工程後、マスク層19を除去したn型半導体層11の表面の断面を拡大した図である。プラズマ照射部20Aは、他の表面部分すなわち非プラズマ照射部20Bに比べて窪んでいる。当該窪みの底部は、C
-面である他の表面部分に平行な平坦面となっている。また、この窪みはごく浅く、例えば50nm未満、好ましくは30〜40nmの深さを有している。なお、プラズマ照射部は、エッチング困難部として形成されれば、窪んでいる必要はない。
【0040】
ウェットエッチングを開始すると、
図3(b)に示すように、非プラズマ照射部20Bの表面に小さなファセットが形成されていく。この時点では、プラズマ照射部20Aにはエッチングが進まない。この状態のn型半導体層11の表面を素子の上面から見たときの模式図を
図4(a)に示す。
【0041】
さらにエッチングを進めると、
図3(c)に示すように、非プラズマ照射部20Bについては継続的にエッチングが進む。さらに、非プラズマ照射部20Bからプラズマ照射部20Aの下にエッチング液が進入し、プラズマ照射部20Aの下に潜り込むように、エッチング(サイドエッチとも称する)が進む。この状態のn型半導体層11の表面を素子の上面から見たときの模式図を
図4(b)に示す。
【0042】
さらにエッチングを進めると、
図3(d)に示すように、各直線群の交点部分ISすなわちプラズマ照射部20Aから最も離れた部分を頂点20Cとする六角錐状の突起20が形成される。また、形成された突起20の底面は、非プラズマ照射部20Bに対応する部分を頂点20Dとする正六角形の形状を有している。突起20は、均一な形状を有し、n型半導体層11の表面に最密充填配列をなして形成される。この状態のn型半導体層11の表面すなわち凹凸構造面21を素子の上面から見たときの模式図を
図4(c)に示す。このようにして、半導体構造層の表面には六角錐状の突起20からなる凹凸構造面21が形成される。なお、最密充填配列とは、
図4(c)に示すように、平面上に正六角形の底面を有する複数のマイクロコーンが隙間なく並んだ配列のことをいい、いわゆるハニカム状の配列のことをいう。
【0043】
本実施例においては、n型半導体層の表面にドット状のエッチング容易部を形成し、他のn型半導体層の表面部分には相対的にエッチングが進みにくいエッチング困難部を形成し、その後エッチングを行う。従って、エッチングの際に安定してn型半導体層のC
-面に突起を形成することができる。従って、均一な形状を有し、最密充填配列をなしている突起からなる凹凸構造面を高い信頼性で形成することができる。これによってn型半導体層の表面すなわち光取り出し面から多くの光を取り出すことが可能となり、高輝度、高信頼性かつ高光取り出し効率な半導体発光素子を提供することができる。
【0044】
図5は、本実施例の変形例に係る半導体発光素子の製造方法におけるエッチング容易部の形成工程について説明する図である。
図5は、本変形例におけるエッチング容易部を形成するためのマスク層が形成された状態のn型半導体層11の上面図を示している。理解の容易さのため、マスク層のマスク部にはハッチングを施してある。
【0045】
本変形例の半導体発光素子の製造方法は、エッチング容易部の形成工程を除いては、実施例1の半導体発光素子の製造方法と同様の工程を有している。本変形例においては、エッチング容易部を形成する工程におけるマスク層19のマスク部19Bの形状、マスク部19Bから露出したn型半導体層11の表面部分11B及び形成されるエッチング容易部のパターンが異なる。
【0046】
図5に示すように、本変形例におけるマスク層19のマスク部19Bは、ハニカム状のパターンを有している。具体的には、マスク部19Bは、半導体構造層14の表面の結晶方向のうち、[11−20]方向に平行に且つ等間隔で配列された複数の直線からなる第1の直線群と、[2−1−10]方向に平行に且つ第1の直線群と同じ間隔で配列された複数の直線からなる第2の直線群と、[1−210]方向に平行に且つ第1及び第2の直線群と同じ間隔で配列された複数の直線からなる第3の直線群とによって表面を正三角形の格子からなるメッシュ状に区画したとき、その格子の頂点の各々を中心とする正六角形の辺部分を構成してハニカム状のパターンを有するように形成される。
【0047】
本変形例のマスク部19Bは、実施例1のマスク部19Aを隣接する(最も近い距離の)3つのマスク部19Aにそれぞれ直線で結んだ状態に相当する。すなわち、本変形例のマスク部19B(エッチング容易部)は、実施例1のマスク部19Aと最隣接するマスク部19Aの各々とを直線で結んだハニカム状のパターンを有している。
【0048】
なお、本実施例と同様に、本変形例においても、半導体構造層14の表面を、半導体構造層14の表面の結晶方向のうち、[1−100]方向に平行に且つ等間隔で配列された複数の直線からなる第1の直線群と、[10−10]方向に平行に且つ第1の直線群と同じ間隔で配列された複数の直線からなる第2の直線群と、[0−110]方向に平行に且つ第1及び第2の直線群と同じ間隔で配列された複数の直線からなる第3の直線群とによって表面を正三角形の格子からなるメッシュ状に区画し、これによってマスク部19Bを形成してもよい。
【0049】
図6(a)〜(c)は、本変形例のエッチング工程におけるマイクロコーンの形成過程を説明する図である。
図6(a)〜(c)は、エッチング工程におけるn型半導体層11の表面を時系列に従って模式的に示した上面図である。
【0050】
本変形例においては、エッチングを開始すると、
図6(a)に示すように、マスク部19Bに対応する非プラズマ照射部(エッチング容易部)20Eからエッチング困難部すなわちプラズマ照射部20Fの下に潜り込むようにエッチングが進む。非プラズマ照射部20Eはハニカム状に形成されているため、非プラズマ照射部20Eの屈曲部分すなわち隣接する非プラズマ照射部20Eとの交点部分から放射状にエッチングが進むとともに、非プラズマ照射部20Eの直線部分から線状にエッチングが進む。従って、本変形例においては、エッチングは非プラズマ照射部20Eから略円形状をなして進んでいく。
【0051】
エッチングが進むと、
図6(b)に示すように、マイクロコーンの側面部分20GすなわちC
-面以外の結晶面(ファセット)が形成されていく。なお、エッチングによってC
-面が存在しなくなると、エッチングが極端に進まなくなる。従って、エッチングが進んで一旦側面部分20Gが形成されると、それ以上エッチングが進むことはなくなる。
【0052】
最終的には、
図6(c)に示すように、非プラズマ照射部20Eを辺とする正六角形の形状を有する底面を有し、プラズマ照射部20Fの各中心部分である各直線群の交点部分を頭頂点20Hとする六角錐状の突起20が形成される。このようにして、半導体構造層の表面には六角錐状の突起20からなる凹凸構造面が形成される。
【0053】
本変形例においては、エッチング容易部がハニカム状に形成される。本変形例におけるエッチング容易部は、実施例1のドット状のエッチング容易部に比べて大きな面積を有している。従って、短いエッチング時間で突起すなわち凹凸構造面を形成することができる。
【0054】
図7(a)及び(b)は、本実施例の半導体発光素子の製造方法によって作製された半導体発光素子の光取り出し面(すなわち半導体構造層14のC
-面)に形成された突起20の詳細形状を説明する図である。
図7(a)は、突起20の上面視における拡大図である。また、
図7(b)は、
図7(a)のW−W線に沿った断面図である。
【0055】
前述したように、半導体構造層14の表面は、六角錐の形状を有する突起20からなる凹凸面構造を有している。また、突起20は、半導体構造層の表面を、各直線群L1〜L3によって正三角形の単位格子からなるメッシュ状に区画したとき、当該単位格子の頂点を中心とする正六角形の底辺を有する六角錐の形状を有している。具体的には、
図7(a)に示すように、当該六角錐形状の突起20の頭頂点20Cの位置は、上面視において各直線群の交点の位置、すなわち各単位格子GDの頂点の位置に対応する。また、突起20の底面はエッチング容易部に対応する部分を頂点20Dとする正六角形の形状を有している。
【0056】
図7(a)及び(b)に示すように、突起20の側辺部分(側稜部分)20Kは、凹部構造(谷構造)を有している。また、突起20の6つ側面部分(すなわち六角錐の角錐面部分)20Jは、二等辺三角形の形状を有しており、その頂点部分は共に突起20の頂点20Cとなる。突起20の側面部分20Jの等辺は、凹部構造を有する側辺部分20Kを介して、隣接する側面部分20Jの等辺に接している。また、
図7(b)に示すように、突起20の側辺部分20Kは、谷部(凹部)20Lが山部(凸部)20M及び20Nに挟まれた構造を有している。
【実施例2】
【0057】
図8は、実施例2の半導体発光素子の製造方法におけるエッチング容易部を形成する工程を説明する図である。実施例2の半導体発光素子の製造方法は、エッチング容易部を形成する工程を除いては、実施例1の半導体発光素子の製造方法と同様の工程を有している。
図8は、実施例1におけるエッチング容易部形成工程後を示す図である
図3(a)に対応した本実施例のエッチング容易部形成工程後のn型半導体層の表面を示す断面図である。
【0058】
本実施例においては、エッチング容易部を形成する工程において、n型半導体層11の表面(C
-面)に複数の開口部30Bからなる開口パターンを有する金属膜30を形成することを特徴としている。本実施例においては、金属膜30の材料として、Agを使用した。また、金属膜30の形成にはスパッタ法を用いた。金属膜30の開口部30Bは、実施例1における非プラズマ照射部20Bと同様の配置形態となるように、例えばフォトリソグラフィを用いて形成した。
【0059】
本実施例においては、エッチング困難部は金属膜30における金属材料が形成された部分30Aとなり、エッチング容易部は金属膜30の開口部である露出したn型半導体層11の部分30Bとなる。また、エッチング容易部はドット状のパターンを有するように形成される。
【0060】
本実施例においては、エッチング困難部の形成に金属材料を使用する。この場合、エッチング困難部においてはエッチングがほぼ完全に進まない。従って、本実施例においては、エッチング工程の際にはエッチング容易部(n型半導体層の露出した部分)のみからエッチングが進む。従って、実施例1に比べてエッチングの時間は長くなるが、安定した突起の形成という課題は実施例1と同様に解決することが可能である。
【0061】
なお、本実施例においては金属膜30の材料にAgを用いる場合について説明したが、金属膜30の材料はAgを用いる場合に限定されるものではない。例えば、Agの代わりにPt、Ti、Auなどの材料を金属膜の材料に使用してもよい。また、金属膜の形成にスパッタ法を用いる場合について説明したが、例えば、金属膜の形成に電子ビーム蒸着などの形成方法を用いても良い。
【0062】
また、本実施例においては金属材料を用いてエッチング困難部を形成する場合について説明したが、金属材料を用いることに限定されない。例えば、金属膜30の代わりに、SiO
2、SiNなどの絶縁材料からなる絶縁膜、又はポリイミドなどの樹脂膜を形成することによってエッチング困難部を形成してもよい。
【0063】
また、本実施例においては、ドット状の開口部(すなわちエッチング容易部)を有する金属膜を形成する場合について説明したが、実施例1の変形例と同様に、ハニカム状のパターンを有する金属膜を形成してもよい。
【0064】
上記した実施例においては、円形のエッチング容易部をドット状のパターンで形成する場合について説明したが、ドット状のエッチング容易部の形状は円形でなくてもよい。例えば、エッチング容易部は多角形状又は楕円形状を有していても良い。
【0065】
また、ドット状のエッチング容易部の直径が300nmである場合について説明したが、エッチング容易部の直径は300nmに限定されるものではない。エッチング容易部は、マイクロコーンの形状及び大きさの制御性を考慮すると、50〜1000nmの直径を有していることが好ましい。例えば、エッチング容易部の直径が50nmよりも小さい場合、エッチング速度が大幅に小さくなり、1000nmよりも大きい場合、マイクロコーンの形成が不安定になる可能性があるからである。
【0066】
また、上記実施例では、六方晶系の結晶構造を有するGaN系の半導体発光素子の場合について説明したが、他の結晶系の半導体発光素子の製造方法にも同様に適用可能である。
【0067】
上記したように、本実施例に係る半導体発光素子の製造方法は、半導体構造層の表面に、半導体構造層の表面の結晶方向に基づいて配置されたエッチング容易部を形成する工程と、半導体構造層の表面にウェットエッチングを行い、半導体構造層の表面に、半導体構造層の結晶構造に由来する複数の突起からなる凹凸構造面を形成する工程と、を含む。
【0068】
従って、規則正しく配列され、かつ大きさの揃った突起を均一かつ安定して形成し、光取り出し効率の高い高輝度な半導体発光素子を提供することができる。また、過度にエッチングが進むことやリーク電流の発生などによる信頼性の低下を防止し、高信頼性な半導体発光素子を提供することができる。