(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、被測定流体の圧力を受けて撓むダイアフラムの変化を静電容量の変化として検出する静電容量型圧力センサは広く知られている。例えば、半導体製造装置などにおける薄膜形成プロセス中の真空状態の圧力を計測するために静電容量型圧力センサが利用されており、この真空状態の圧力を計測するための静電容量型圧力センサを隔膜真空計と呼んでいる。
【0003】
この隔膜真空計は、被測定流体の導入部を有するハウジングを有し、このハウジングの導入部を通して導かれてくる被測定流体の圧力を受けて撓むダイアフラムの変化を静電容量の変化として検出する。
【0004】
この隔膜真空計は、基本的に、そのダイアフラムにプロセス対象の薄膜と同じ物質やその副生成物等が堆積する。以下、この堆積する物質を汚染物質と呼ぶ。この汚染物質がダイアフラムに堆積すると、それらによる応力によりダイアフラムの撓みが生じて、センサの出力信号にシフト(零点ドリフト)を生じる。また、堆積した汚染物質により見かけ上ダイアフラムが厚くなるので、ダイアフラムが撓みにくくなり、圧力印加に伴う出力信号の変化幅(スパン)も本来の出力信号の変化幅よりも小さくなってしまう。
【0005】
そこで、隔膜真空計には、導入部とダイアフラムとの間に、被測定流体の通過方向にその板面を直交させて、被測定流体に含まれる汚染物質のダイアフラムへの堆積を防止するバッフルが設けられている。
【0006】
図16に従来の隔膜真空計におけるバッフルの取付構造を示す。同図において、100はハウジング、100Aはハウジング100に設けられた被測定流体の導入部であり、この導入部100Aとダイアフラム(図示せず)との間に被測定流体の通過方向Fにその板面を直交させて円板状の1枚のバッフル101を設けている。
【0007】
バッフル101には、その外周部に所定の角度間隔でタブ101aが形成されており、このタブ101a間の隙間101bを被測定流体が通過して、ダイアフラムへと送られる。すなわち、導入部100Aを通して導かれてくる被測定流体がバッフル101の中央の板面に当たって迂回し、バッフル101のタブ101a間の隙間101bを通過して、ダイアフラムへと送られる。これにより、ダイアフラムに被測定流体が直接当たることがなく、被測定流体に含まれる汚染物質のダイアフラムへの堆積が防止される。
【0008】
しかしながら、ALD(atomic layer deposition;原子層堆積)といわれる成膜プロセスでは、CVD,PVD(スパッタ、蒸着等)等の気相成膜と異なり、表面反応をその成膜原理としているので、
図16に示したような隙間が広い1枚のバッフル(標準型のバッフル)では、汚染物質のダイアフラムへの堆積を防ぎきれない。
【0009】
そこで、近年、被測定流体の導入部からダイアフラムまでに至るまでの経路を狭く、複雑にすることにより、途中で汚染物質を付着させ、ダイアフラムへの付着を低減する方法が提案されている。
【0010】
例えば、特許文献1では、
図17に示されるように、ダイアフラム201の前段に第1のバッフル202と第2のバッフル203とを配置し、この第1のバッフル202と第2のバッフル203との間に高縦横比(少なくとも1:10)の径方向通路204を創ることによって被測定流体(気体)の流れを分子流とし、汚染物質の経路内での付着を促進するような構造を取っている。
【0011】
なお、
図17はセンサの半体の縦断面図であり、200はハウジング、200Aはハウジング200に設けられた被測定流体の導入部である。導入部200Aからの被測定流体は、第1のバッフル202の周縁の開口部202a、第1のバッフル202と第2のバッフル203との間の径方向通路204、第2のバッフル203の外周とハウジング200との間の隙間(環状セクタ)205を通り、ダイアフラム201に到達する。
【0012】
また、特許文献1では、径方向通路204を流れる被測定流体(気体)の流れを分子流とするが、「分子流」とは真空技術に関する用語で、対象となる気体分子の平均自由工程がその気体の流れる場の代表的長さよりも大きいような気体の流れであり、このような場合、気体分子同士の衝突よりも構造体の壁面に衝突する頻度が大きくなり、経路内での汚染物質の付着が促進される。
【0013】
逆に対象となる気体分子の平均自由工程がその気体の流れる場の代表的長さよりも小さいような気体の流れを「粘性流」という。粘性流領域では気体分子は構造体壁面には殆ど衝突しない。また、その中間の気体の流れを「中間流」といい、代表長さをL、平均自由工程をλとすれば文献にもよるが一般に下記のように分類される。
粘性流;λ/L<0.01
中間流;0.01<λ/L<0.3
分子流;0.3<λ/L
【0014】
λ/Lはクヌーセン数といい、気体の流れにおいて分子間衝突が支配的なのか、それとも流れ場の壁面に衝突するのが支配的なのかの目安である。例えば、窒素の150℃における平均自由工程は133Paで70um程度であるから、経路の代表的大きさ(径や幅、高さ等)がそれ以下ならば、汚染物質の付着効率は飛躍的に高まる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、汚染物質の付着を促進するために、導入部からダイアフラムまでに至るまでの経路を狭くかつ複雑にすると、狭く複雑にした経路奥のダイアフラム近傍の空間に気体が出入りしづらくなるので、センサの応答速度が遅くなってしまい、これが設計上の制約となってしまう。すなわち、本来ならば経路をより狭くて長くすれば汚染物質の付着効率が上がるが、センサの応答速度も低下してしまうので、応答速度の迅速性を損なわないように、経路の狭さや長さに制限を加える必要があり、これが設計上の制約となる。
【0017】
また、特許文献1では、第1のバッフルと第2のバッフルとの間に高縦横比の径方向通を創ることによって、ダイアフラムの受圧面に直交する方向に分子流になる条件の大きさを規定しているが、ダイアフラム面に平行な方向には規定がなく、その場合、被測定流体の分子がダイアフラム面に平行な方向に自由に動けるように設計されるであろうから、結果的に分子流になる条件が十分に満たされない形状になり、従って十分な効果が得られない。言い換えると、被測定流体の分子の速度ベクトルの向きがダイアフラム面に平行もしくは平行に近いとき、その分子は壁に衝突することなくバッフルを通過してしまうことになる。
【0018】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、設計上の制約を緩和し、より狭くかつ複雑な経路として、センサの応答速度の迅速性を損なうことなく、汚染物質の経路内での付着を促進することが可能な静電容量型圧力センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
このような目的を達成するために、本発明の静電容量型圧力センサは、被測定流体の導入部を有するハウジングと、導入部を通して導かれてくる被測定流体の圧力を受けて撓むダイアフラムの変化を静電容量の変化として検出するセンサチップと、導入部とダイアフラムとの間の被測定流体の通過経路の途中に設けられ被測定流体に含まれる汚染物質のダイアフラムへの堆積を防止するバッフル構造体とを備え、バッフル構造体は、ダイアフラムの受圧面に直交する方向を軸方向として配置された一端が閉塞された筒状の構造体とされ、筒状の構造体の内周面と外周面との間を貫通する被測定流体が流れる複数の経路が、軸方向に多数層設けられて
おり、軸方向に多数層設けられた複数の経路は、ダイアフラムの受圧面に平行で、かつ筒状の構造体の軸心から放射状に延びていることを特徴とする。
【0020】
この発明において、バッフル構造体は、一端が閉塞された筒状の構造体とされている。バッフル構造体には、その筒状の構造体の内周面と外周面との間を貫通する複数の経路が軸方向に多数層設けられており、この軸方向に多数層設けられた複数の経路を被測定流体が流れる。このバッフル構造体において、1つの経路のコンダクタンスは非常に小さなものとなるが、この経路が複数設けられ、さらにこの複数の経路が軸方向に多数層設けられることにより、全体のコンダクタンスが大きくなる。これにより、設計上の制約を緩和し、より狭くかつ複雑な経路として、センサの応答速度の迅速性を損なうことなく、汚染物質の経路内での付着を促進することが可能となる。
【0021】
本発明において、バッフル構造体に設ける経路の径もしくは幅及び高さは、通過する被測定流体が分子流となるような幅および高さ(例えば、10〜200μm)とすることが望ましい。狭すぎると、汚染物質が付着した際に流路が狭くなり、センサ応答速度が遅くなってしまうことがあり、また広すぎると、分子流ではなくなって期待する効果が得られなくなってしまう。また、バッフル構造体に設ける経路の長さは、並列に設置する個数にもよるが、少なくとも3〜20mm程度が望ましい。
【0022】
バッフル構造体に設ける経路の径もしくは幅及び高さを通過する被測定流体が分子流となるような幅および高さとすることにより、ダイアフラムの受圧面に直交する方向に分子流になる条件の大きさだけではなく、ダイアフラム面に平行な方向に分子流になる条件の大きさも規定されるものとなり、十分な効果を得ることが可能となる。
【0023】
また、本発明では、導入部とダイアフラムとの間の被測定流体の通過経路の途中にバッフル構造体を設置するが、このバッフル構造体の設置方式として次のような方式が考えられる。
【0024】
〔第1の方式:バッフル構造体の内周面側から外周面側へ被測定流体を通過させる方式〕
第1の方式では、被測定流体が内周面側に導入され、この内周面側に導入された被測定流体が軸方向に設けられた各層の経路を通って外周面側に流出し、この外周面側に流出した被測定流体が合流してダイアフラムに送られるように、バッフル構造体を設置する。
【0025】
〔第2の方式:バッフル構造体の外周面側から内周面側へ被測定流体を通過させる方式〕
第2の方式では、被測定流体が外周面側に導入され、この外周面側に導入された被測定流体が軸方向に設けられた各層の経路を通って内周面側に流出し、この内周面側に流出した被測定流体が合流してダイアフラムに送られるように、バッフル構造体を設置する。
【0026】
また、本発明において、バッフル構造体の軸方向に多数層設ける複数の経路は、ダイアフラムの受圧面に平行で、かつ筒状の構造体の軸心から放射状に延びた形と
する。この場合、その経路の幅を外周から内周に向かうにつれ次第に狭くなるようにしたり、ダイアフラムの受圧面に平行な面内の形状を直線としたり、ダイアフラムの受圧面に平行な面内の形状を非直線(例えば、鋸波状(稲妻型、ジグザグ型)、渦巻状など)としたりすることが考えられる。
【0027】
バッフル構造体をの設置方式を上述した第2の方式とした場合、放射状に延びた経路の幅を外周から内周に向かうにつれ次第に狭くなるようにすると、活性で付着し易い分子の密度の高い入口側の経路が広くなり、徐々に分子の密度が低くなる出口側に行くほど経路が狭くなるようになり、分子の壁面付着が均等化されるように作用し、経路の詰まりに対応するメンテナンス間隔を長くすることが可能となる。
【0028】
また、本発明において、バッフル構造体の軸方向に多数層設ける複数の経路は、ダイアフラムの受圧面と平行に設けられたスリット及び、このスリットの中に配置された障害物との間隙により形成されているものとしてもよい。すなわち、本発明において、バッフル構造体の軸方向に多数層設ける複数の経路は、それぞれ一本の独立した経路だけではなく、途中で合流・分岐を繰り返すような迷路のような経路なども含まれる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、バッフル構造体を一端が閉塞された筒状の構造体とし、この筒状の構造体の内周面と外周面との間を貫通する複数の経路を軸方向に多数層設け、この軸方向に多数層設けられた複数の経路を被測定流体が流れるようにしたので、全体のコンダクタンスを大きくして、設計上の制約を緩和し、より狭くかつ複雑な経路として、センサの応答速度の迅速性を損なうことなく、汚染物質の経路内での付着を促進することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を図面に基づいて詳細に説明する。
〔実施の形態1:第1の方式(バッフル構造体の内周面側から外周面側へ被測定流体を通過させる方式)〕
図1はこの発明に係る静電容量型圧力センサの第1の実施の形態(実施の形態1)の要部を示す縦断面図である。
【0032】
この静電容量型圧力センサ(隔膜真空計)1(1A)は、パッケージ10と、パッケージ10内に収容された台座プレート20と、同じくパッケージ10内に収容され台座プレート20に接合されたセンサチップ30と、パッケージ10に直接取付けられパッケージ10内外を導通接続する電極リード部40とを備えている。また、台座プレート20は、第1の台座プレート21と第2の台座プレート22とから構成され、パッケージ10に対して隔間しており、支持ダイアフラム50のみを介してパッケージ10に支持されている。
【0033】
パッケージ10は、アッパーハウジング11、ロアハウジング12、及びカバー13から構成されている。なお、アッパーハウジング11、ロアハウジング12、及びカバー13は、耐食性の金属であるインコネルからなり、それぞれ溶接により接合されている。
【0034】
アッパーハウジング11は、径の異なる円筒体を連結した形状を備え、その大径部11aは支持ダイアフラム50との接合部を有し、その小径部11bは被測定流体が流入する導入部10Aをなしている。
【0035】
ロアハウジング12は略円筒体形状を有し、カバー13、支持ダイアフラム50、台座プレート20、及びセンサチップ30を介してパッケージ10内に独立した真空の基準真空室10Bを形成している。なお、基準真空室10Bにはいわゆるゲッター(図示せず)と呼ばれる気体吸着物質が備わり、真空度を維持している。
【0036】
また、カバー13は円形のプレートからなり、カバー13の所定位置には電極リード挿通孔13aが形成されており、ハーメチックシール60を介して電極リード部40が埋め込まれ、この部分のシール性が確保されている。
【0037】
一方、支持ダイアフラム50はパッケージ10の形状に合わせた外形形状を有するインコネルの薄板からなり、第1の台座プレート21と第2の台座プレート22との間に挟まれた状態で、その外周部(周囲縁部)が上述したアッパーハウジング11とロアハウジング12の縁部に挟まれて溶接等により接合されている。
【0038】
なお、支持ダイアフラム50の厚さは、例えば本実施形態の場合数十ミクロンであって、各台座プレート21,22より充分薄い厚さとなっている。また、支持ダイアフラム50の中央部には、第1の台座プレート21と第2の台座プレート21との間にスリット状の空間(キャビティ)20Aを作る大径の孔50aが形成されている。
【0039】
第1の台座プレート21および第2の台座プレート22は、酸化アルミニウムの単結晶体であるサファイアからなり、第1の台座プレート21はパッケージ10の内面から離間させた状態で支持ダイアフラム50の上面に接合され、第2の台座プレート22はパッケージ10の内面から離間させた状態で支持ダイアフラム50の下面に接合されている。
【0040】
また、第1の台座プレート21には、スリット状の空間(キャビティ)20Aに連通する被測定流体の導入孔21aがその中央部に形成されており、第2の台座プレート22には、スリット状の空間(キャビティ)20Aに連通するとともにセンサチップ30のセンサダイアフラム31aへの導出孔22aが複数(この例では、4つ)形成されている。
【0041】
図2に第1の台座プレート21に形成された導入孔21aと第2の台座プレート22に形成された導出孔22aとの位置関係を示す。
図2(a)は
図1中の要部を抜き出して示した図(縦断面図)、
図2(b)は
図2(a)を矢印A方向から見た平面図である。
【0042】
図2に示されているように、第1の台座プレート21の導入孔21aと第2の台座プレート22の導出孔22aとは、第1の台座プレート21および第2の台座プレート22の厚み方向において重ならない位置に設けられている。
【0043】
この例では、第1の台座プレート21の中央部に導入孔21aが1つ設けられ、第2の台座プレート22にこの第2の台座プレート22の中心から径方向に等距離、かつ周方向に等間隔隔てた周辺部に導出孔22aが4つ設けられている。
【0044】
なお、各台座プレート21,22は、支持ダイアフラム50の厚さに対して上述の通り十分に厚くなっており、かつ支持ダイアフラム50を両台座プレート21,22でいわゆるサンドイッチ状に挟み込む構造を有している。これによって、支持ダイアフラム50と台座プレート20の熱膨張率の違いによって発生する熱応力でこの部分が反るのを防止している。
【0045】
また、第2の台座プレート22には酸化アルミニウムの単結晶体であるサファイアでできた上面視矩形状のセンサチップ30が酸化アルミニウムベースの接合材を介して接合されている。なお、このセンサチップ30の接合方法については、特許文献2に詳しく記載されているのでここでの説明は省略する。
【0046】
センサチップ30は上面視で1cm角以下の大きさを有し、四角角型の薄板からなるセンサプレート31と、センサプレート31に接合して真空の容量室(リファレンス室)30Aを形成するセンサ台座32を有している。センサプレート31の中央部は薄膜状とされ、この薄膜状とされたセンサプレート31の中央部が、圧力の印加に応じてひずみが生じるセンサダイアフラム31aとされている。また、真空の容量室30Aと基準真空室10Bとはセンサ台座32の適所に穿設された図示しない連通孔を介して共に同一の真空度を保っている。
【0047】
なお、センサプレート31とセンサ台座32とはいわゆる直接接合によって互いに接合され、一体化したセンサチップ30を構成している。このセンサチップ30の構成要素とされるセンサダイアフラム31aが本発明でいうダイアフラムに相当する。
【0048】
また、センサチップ30の容量室30Aには、センサ台座32の凹部に金又は白金等の導体でできた固定電極が形成されているとともに、これと対向するセンサダイアフラム31aの表面上に金又は白金等の導体でできた可動電極が形成されている。また、センサチップ30の上面には金又は白金からなるコンタクトパッド35,36が形成され、センサチップ30内の固定電極と可動電極はコンタクトパッド35,36と図示しない配線によって接続されている。
【0049】
一方、電極リード部40は電極リードピン41と金属製のシールド42とを備え、電極リードピン41は金属製のシールド42にガラスなどの絶縁性材料からなるハーメチックシール43によってその中央部分が埋設され、電極リードピン41の両端部間で気密状態を保っている。そして、電極リードピン41の一端はパッケージ10の外部に露出して図示しない配線によって隔膜真空計1の出力を外部の信号処理部に伝達するようになっている。なお、シールド42とカバー13との間にも上述の通りハーメチックシール60が介在している。また、電極リードピン41の他方の端部には導電性を有するコンタクトバネ45,46が接続されている。
【0050】
コンタクトバネ45,46は、導入部10Aから被測定流体が急に流れ込むことで発生する急激な圧力上昇により支持ダイアフラム50が若干変移しても、コンタクトバネ45,46の付勢力がセンサチップ30の測定精度に影響を与えない程度の十分な柔らかさを有している。
【0051】
この隔膜真空計1において、アッパーハウジング10の導入部10Aと台座プレート20との間には、センサダイアフラム31aの受圧面に直交する方向を軸方向として、一端(下端)が閉塞された円筒状のバッフル構造体70が配置されている。
【0052】
図3にバッフル構造体70の基本構造を示す。このバッフル構造体70は、アッパーハウジング11の導入部10Aから送られてくる被測定流体を導く導入孔71aをその板面の中央部に有するトッププレート71と、トッププレート71の導入孔71aを通って送られてくる被測定流体を導く導入孔72aをその板面の中央部に有する流路形成プレート72と、流路形成プレート72のセンサダイアフラム31a側の端面を閉塞する板面を有するベースプレート73とを備え、トッププレート71とベースプレート73との間に流路形成プレート72が多数枚積層され、トッププレート71と流路形成プレート72とベースプレート73とが各板面を合わせて接合(加熱・加圧)されている。
【0053】
このバッフル構造体70において、トッププレート71,流路形成プレート72,ベースプレート73はインコネルからなり、その外径が同一とされている。
図4に
図1の隔膜真空計1(1A)の縦断面図を斜め上方向から見た図を示す。トッププレート71の導入孔71aの開口部は複数の子孔(丸孔)71bに分割されている。
【0054】
流路形成プレート72の導入孔72aは、トッププレート71の導入孔71aに対応して、この導入孔71aと同径の丸孔とされている。
図5(a)に流路形成プレート72のトッププレート71側から見た平面図を示す。
【0055】
流路形成プレート72には、トッププレート71側の板面に、センサダイアフラム31aの受圧面に平行で、かつバッフル構造体(円筒状の構造体)70の軸心から放射状に延びた複数の流路溝72bが形成されている。この流路溝72bは、
図5(b)にその1つの流路溝72bの両壁を黒く塗り潰して示すように、その幅Wが外周から内周に向かうにつれ次第に狭くなっている。また、この流路溝72bのセンサダイアフラム31aの受圧面に平行な面内の形状は直線とされている。
【0056】
ベースプレート73にも、流路形成プレート72と同様に、トッププレート71側の板面に、バッフル構造体(円筒状の構造体)70の軸心から放射状に延びた複数の流路溝73bが形成されている。但し、ベースプレート73の中央部73aは導入孔とはされておらず、被測定流体が貫通しないように閉塞されている。
【0057】
このバッフル構造体70を導入部10Aと台座プレート20との間に設置した状態において、トッププレート71の導入孔71aは導入部10Aに面し、導入孔71aの外周縁面71dはリング状の仕切板90を介してアッパーハウジング11の内段面11cに密接している。この状態において、導入部10Aからの被測定流体は、導入孔71aのみを通過し、導入孔71aの外周縁面71dとアッパーハウジング11の内段面11cとの間を通過することはない。
【0058】
また、このバッフル構造体70を導入部10Aと台座プレート20との間に設置した状態において、トッププレート71,流路形成プレート72,ベースプレート73の外周縁端面は、すなわちバッフル構造体70の外周面は、アッパーハウジング11と支持ダイアフラム50とで囲まれた密閉空間14に位置している。また、ベースプレート73のセンサダイアフラム31a側の板面と台座プレート20(第1の台座プレート21)との間には、被測定流体が流れる隙間が設けられている。
【0059】
また、本実施の形態において、流路形成プレート72に設けられた流路溝72bおよびベースプレート73に設けられた流路溝73bの幅および高さは、被測定流体の流れが分子流となるような幅および高さとされている。この例において、流路溝72bおよび73bの幅および高さは、10〜200μm程度とされている。また、流路溝72bおよび73bの長さ(被測定流体の流れ方向の長さ)は、3〜20mm程度とされている。また、流路溝72bおよび73bはハーフエッチングにて形成されている。
【0060】
次に、この実施の形態1の隔膜真空計1(1A)の動作について説明する。なお、この実施の形態1において、隔膜真空計1(1A)はALDの成膜プロセスにおける必要な場所に取付けられているものとする。
【0061】
〔被測定流体の圧力測定〕
この隔膜真空計1(1A)では、導入部10Aからの被測定流体(気体)がセンサダイアフラム31aに到達し、この被測定流体の圧力と真空の容量室30Aとの差圧によってセンサダイアフラム31aが撓み、センサダイアフラム31aの裏面とセンサ台座32の内面との間に設けられている固定電極と可動電極との間隔が変化し、この固定電極と可動電極とで構成されるコンデンサの容量値(静電容量)が変化する。この静電容量の変化を隔膜真空計1の外部に取り出すことで、被測定流体の圧力が測定される。
【0062】
〔汚染物質の堆積防止〕
この圧力の測定に際し、導入部10Aからの被測定流体(気体)は、バッフル構造体70を通過する。この場合、導入部10Aからの被測定流体(気体)は、バッフル構造体70の内周面側から外周面側へ通過し、合流してセンサダイアフラム31aへ送られる。
【0063】
すなわち、導入部10Aからの被測定流体は、トッププレート71の導入孔71aの分割された複数の子孔71bを通って、バッフル構造体70の内周面側に導入される。この内周面側に導入された被測定流体は、バッフル構造体70の軸方向に積層された各流路形成プレート72の流路溝72bおよびベースプレート73の流路溝73bに入り、この流路溝72bおよび73bを通って、バッフル構造体70の外周面側に流出する。
【0064】
そして、このバッフル構造体70の外周面側に流出した被測定流体が合流して、ベースプレート73と第1の台座プレート21との間の隙間を通り、第1の台座プレート21の導入孔21aより第1の台座プレート21と第2の台座プレート22との間のスリット状の空間(キャビティ)20Aに流入し、第2の台座プレート22の導出孔22aを抜けて、センサチップ30のセンサダイアフラム31aへ到達する。
【0065】
バッフル構造体70において、流路溝72bおよび73bは、センサダイアフラム31aの受圧面に平行で、かつバッフル構造体(円筒状の構造体)70の軸心から放射状に延びた経路(バッフル構造体70の内周面側と外周面側との間を貫通する経路)として設けられており、この放射状に延びた経路がバッフル構造体70の軸方向に多数積層された形とされている。このバッフル構造体70の軸方向に多数積層された放射状の経路を被測定流体が流れる。
【0066】
このバッフル構造体70において、流路溝72bおよび73bの幅および高さは10〜200μm程度とされており、1つの経路のコンダクタンスは非常に小さい。すなわち、被測定流体の流れが分子流となるように1つの経路の幅や高さを小さくし、汚染物質の付着を促進するようにしている。このため、1つの経路のコンダクタンスは非常に小さいものとなる。しかし、本実施の形態では、この経路が複数設けられ、さらにこの複数の経路が軸方向に多数層設けられることにより、全体のコンダクタンスが大きくなる。これにより、設計上の制約を緩和し、より狭くかつ複雑な経路として、センサの応答速度の迅速性を損なうことなく、汚染物質の経路内での付着を促進することができる。
【0067】
図6にバッフル構造体70を用いた場合のセンサの応答速度の遅れ検証結果を示す。
図6中に示した特性Iは
図15に示した標準型のバッフル(標準バッフル)を用いた場合のセンサの出力応答特性であり、特性IIはバッフル構造体70(改善バッフル)を用いた場合のセンサの出力応答特性である。標準型のバッフルを用いた場合のセンサの出力応答特性Iに対し、バッフル構造体70を用いた場合のセンサの出力応答特性IIの遅れは小さい。この場合、トッププレート71とベースプレート73との間の流路形成プレート72の枚数を増やすほど、すなわち汚染物質の経路内での付着効率を高めるほど、標準型のバッフルを用いた場合のセンサの出力応答特性Iに近づくものとなる。
【0068】
なお、この実施の形態では、ベースプレート73に流路溝73bを設けるようにしたが(
図3)、
図7に示すように、トッププレート71に流路溝71cを設けるようにしてもよい。この場合、トッププレート71の流路溝71cは、ベースプレート73側の板面に設けるようにする。また、流路形成プレート72の流路溝72bも、ベースプレート73側の板面に設けるようにする。
【0069】
図3に示した構成の場合、流路形成プレート72の流路溝72bにベースプレート73の流路溝73bが加わって多層の流路溝となるので、また、
図7に示した構成の場合、流路形成プレート72の流路溝72bにトッププレート71の流路溝71cが加わって多層の流路溝となるので、トッププレート71とベースプレート73との間に流路形成プレート72を1枚挟んだものがバッフル構造体70の基本構成(複数の経路が多数層設けられた構成)となる。
【0070】
なお、トッププレート71やベースプレート73に流路溝を形成しなくてもよく、トッププレート71にもベースプレート73にも流路溝を形成しない場合、トッププレート71とベースプレート73との間に流路形成プレート72を2枚挟んだ構成がバッフル構造体70の基本構成となる。
【0071】
この実施の形態1では、上述したバッフル構造体70の基本構成を最小限の構成とし、トッププレート71とベースプレート73との間の流路形成プレート72の数を適切に定めることにより、センサの応答速度の迅速性が損なわれず、汚染物質の経路内での付着効率の高い所望のバッフル構造体70を得るようにする。この場合、流路形成プレート72は共通部品であるので、この流路形成プレート72の枚数の調整だけで、必要とされるバッフル構造体70を得ることができる。
【0072】
〔実施の形態2:第2の方式(バッフル構造体の外周面側から内周面側へ被測定流体を通過させる方式)〕
図8はこの発明に係る静電容量型圧力センサの第2の実施の形態(実施の形態2)の要部を示す縦断面図である。同図において、
図1と同一符号は
図1を参照して説明した構成要素と同一或いは同等の構成要素を示し、その説明は省略する。
【0073】
この静電容量型圧力センサ(隔膜真空計)1(1B)では、アッパーハウジング10の導入部10Aと台座プレート20との間に、センサダイアフラム31aの受圧面に直交する方向を軸方向として、一端(上端)が閉塞された円筒状のバッフル構造体80を配置している。
【0074】
図9にバッフル構造体80の基本構造を示す。このバッフル構造体80は、アッパーハウジング11の導入部10Aから送られてくる被測定流体がその板面を貫通しないように閉塞された板面を有するトッププレート81と、被測定流体の導入孔82aをその板面の中央部に有する流路形成プレート82と、流路形成プレート82の導入孔82aを通って送られてくる被測定流体をセンサダイアフラム31a側へと導く導入孔83aをその板面に有するベースプレート83とを備え、トッププレート81とベースプレート83との間に流路形成プレート82が多数枚積層され、トッププレート81と流路形成プレート82とベースプレート83とが各板面を合わせて接合(加熱・加圧)されている。
【0075】
このバッフル構造体80において、トッププレート81,流路形成プレート82,ベースプレート83はインコネルからなり、その外径が同一とされている。
図10に
図8の隔膜真空計1(1B)の縦断面図を斜め上方向から見た図を示す。トッププレート81の上面(閉塞面)は導入部10Aに面している。
【0076】
流路形成プレート82の導入孔82aは、導入部10Aの開口に対応し、この開口と同径の丸孔とされている。
図11(a)に流路形成プレート82のベースプレート83側から見た平面図を示す。流路形成プレート82には、ベースプレート83側の板面に、センサダイアフラム31aの受圧面に平行で、かつバッフル構造体(円筒状の構造体)80の軸心から放射状に延びた複数の流路溝82bが形成されている。この流路溝82bは、
図11(b)にその1つの流路溝82bの両壁を黒く塗り潰して示すように、その幅Wが外周から内周に向かうにつれ次第に狭くなっている。また、この流路溝82bのセンサダイアフラム31aの受圧面に平行な面内の形状は直線とされている。
【0077】
トッププレート81にも、流路形成プレート82と同様に、ベースプレート83側の板面に、バッフル構造体(円筒状の構造体)80の軸心から放射状に延びた複数の流路溝81bが形成されている。但し、トッププレート81の中央部81aは導入孔とはされておらず、被測定流体が貫通しないように閉塞されている。
【0078】
ベースプレート83には、流路形成プレート82の導入孔82aに対応する面内の周縁部に導入孔83aが複数形成されており、この導入孔83aは円弧状の長丸孔とされている。
【0079】
このバッフル構造体80を導入部10Aと台座プレート20との間に設置した状態において、トッププレート81の外周縁面81cとアッパーハウジング11の内段面11cとの間には被測定流体が通過する隙間が設けられている。
【0080】
また、ベースプレート83はリング状の仕切板91を介して台座プレート20(第1の台座プレート21)に密接しており、この状態において、トッププレート81の外周縁面81cとアッパーハウジング11の内段面11cとの間の隙間を通過してバッフル構造体80の外周面側に流入した被測定流体は、ベースプレート83と台座プレート20(第1の台座プレート21)との間を通過することはない。
【0081】
また、本実施の形態において、トッププレート81に設けられた流路溝81bおよび流路形成プレート82に設けられた流路溝82bの幅および高さは、被測定流体の流れが分子流となるような幅および高さとされている。この例において、流路溝81bおよび82bの幅および高さは、10〜200μm程度とされている。また、流路溝81bおよび82bの長さ(被測定流体の流れ方向の長さ)は、3〜20mm程度とされている。また、流路溝81bおよび82bはハーフエッチングにて形成されている。
【0082】
〔汚染物質の堆積防止〕
この実施の形態1の隔膜真空計1(1B)においても、圧力の測定に際し、導入部10Aからの被測定流体(気体)は、バッフル構造体80を通過する。この場合、導入部10Aからの被測定流体(気体)は、バッフル構造体80の外周面側から内周面側へ通過し、合流してセンサダイアフラム31aへ送られる。
【0083】
すなわち、導入部10Aからの被測定流体は、トッププレート81の閉塞された板面に当たり、この閉塞された板面にガイドされてトッププレート81の外周縁面81cとアッパーハウジング11の内段面11cとの隙間を通過し、バッフル構造体80の外周面側に導入される。
【0084】
この外周面側に導入された被測定流体は、バッフル構造体80の軸方向に積層されたトッププレート81の流路溝81bおよび各流路形成プレート82の流路溝82bに入り、この流路溝81bおよび82bを通って、バッフル構造体80の内周面側に流出する。
【0085】
そして、このバッフル構造体80の内周面側に流出した被測定流体が合流して、ベースプレート83の導入孔83aを通り、第1の台座プレート21の導入孔21aより第1の台座プレート21と第2の台座プレート22との間のスリット状の空間(キャビティ)20Aに流入し、第2の台座プレート22の導出孔22aを抜けて、センサチップ30のセンサダイアフラム31aへ到達する。
【0086】
バッフル構造体80において、流路溝81bおよび82bは、センサダイアフラム31aの受圧面に平行で、かつバッフル構造体(円筒状の構造体)80の軸心から放射状に延びた経路(バッフル構造体80の内周面側と外周面側との間を貫通する経路)として設けられており、この放射状に延びた経路がバッフル構造体80の軸方向に多数積層された形とされている。このバッフル構造体80の軸方向に多数積層された放射状の経路を被測定流体が流れる。
【0087】
このバッフル構造体80において、流路溝82bおよび83bの幅および高さは10〜200μm程度とされており、1つの経路のコンダクタンスは非常に小さい。このため、実施の形態1のバッフル構造体70と同様に、1つの経路のコンダクタンスは非常に小さなものとなるが、この経路が複数設けられ、さらにこの複数の経路が軸方向に多数層設けられることにより、全体のコンダクタンスが大きくなる。これにより、設計上の制約を緩和し、より狭くかつ複雑な経路として、センサの応答速度の迅速性を損なうことなく、汚染物質の経路内での付着を促進することができる。
【0088】
特に、このバッフル構造体80では、放射状に延びた経路の幅が外周から内周に向かうにつれ次第に狭くなっているので、活性で付着し易い分子の密度の高い入口側の経路が広くなり、徐々に分子の密度が低くなる出口側に行くほど経路が狭くなるようになり、分子の壁面付着が均等化されるように作用し、経路の詰まりに対応するメンテナンス間隔を長くすることが可能となる。この実施の形態2のバッフル構造体80では、放射状に延びた経路の幅が外周から内周に向かうにつれ次第に狭くなっていることが有利に作用していると言える。
【0089】
なお、この実施の形態では、トッププレート81に流路溝81bを設けるようにしたが(
図9)、
図12に示すようにベースプレート83に流路溝83bを設けるようにしてもよい。この場合、ベースプレート83の流路溝83bは、トッププレート81側の板面に設けるようにする。また、流路形成プレート82の流路溝82bも、トッププレート81側の板面に設けるようにする。
【0090】
図9に示した構成の場合、流路形成プレート82の流路溝82bにトッププレート81の流路溝81bが加わって多層の流路溝となるので、また、
図12に示した構成の場合、流路形成プレート82の流路溝82bにベースプレート83の流路溝83bが加わって多層の流路溝となるので、トッププレート81とベースプレート83との間に流路形成プレート82を1枚挟んだ構成がバッフル構造体80の基本構成(複数の経路が多数層設けられた構成)となる。
【0091】
なお、トッププレート81やベースプレート83に流路溝を形成しなくてもよく、トッププレート81にもベースプレート83にも流路溝を形成しない場合には、トッププレート81とベースプレート83との間に流路形成プレート82を2枚挟んだものがバッフル構造体80の基本構成となる。
【0092】
この実施の形態2では、上述したバッフル構造体80の基本構成を最小限の構成として、トッププレート81とベースプレート83との間の流路形成プレート82の数を適切に定めることにより、センサの応答速度の迅速性が損なわれず、汚染物質の経路内での付着効率の高い所望のバッフル構造体70を得るようにする。この場合、流路形成プレート82は共通部品であるので、この流路形成プレート82の枚数の調整だけで、必要とされるバッフル構造体80を得ることができる。
【0093】
なお、上述した実施の形態1,2では、バッフル構造体70,80の軸心から放射状に延ばした経路の形状(センサダイアフラム31aの受圧面に平行な面内の形状)を直線状としたが、非直線状としてもよい。例えば、非直線状とする例として、渦巻状に湾曲させたパターン(
図13参照)、鋸波状(稲妻型、ジグザグ型など)に屈曲させたパターン(
図14参照)など、種々のパターンが考えられる。また、バッフル構造体70,80の軸心から放射状に延ばす経路の幅は、必ずしも外周から内周に向かうにつれ次第に狭くなるにしなくてもよく、同一の幅であっても構わない。
【0094】
また、バッフル構造体70,80の軸方向に多数層設ける複数の経路は、センサダイアフラム31aの受圧面と平行に設けられたスリット及び、このスリットの中に配置された障害物との間隙により形成されているものとしてもよい。例えば、
図15に示すように、流路形成プレート72(82)に円柱状の突起72c(82c)を障害物として多数設け、この流路形成プレート72(82)と隣接するプレートとの間のスリットの中に、被測定流体の流れ方向が障害物によって変えられる複数の経路が形成されるようにしてもよい。
【0095】
なお、スリットの中に配置する障害物は、円柱状の突起に限られるものではなく、バッフル構造体の軸心を中心とする流路の経線に対して斜めとされた構造物であればよい。例えば、楔状としたり、「く」の状としたり、丸状としたり、扇型としたりするなど、種々の形状のものが考えられる。すなわち、バッフル構造体70,80の軸方向に多数層設ける複数の経路は、それぞれ一本の独立した経路だけではなく、途中で合流・分岐を繰り返すような迷路のような経路としてもよい。
【0096】
また、実施の形態1,2では、バッフル構造体をトッププレートと流路形成プレートとベースプレートとで構成したが、必ずしもこのようなプレートの積層構造としなくてもよい。例えば、一端が閉塞された円筒状の構造体を一体物とし、この一体物とした構造体中に、その内周面と外周面との間を貫通する複数の横孔を軸方向に多数層設けるようにしてもよい。また、バッフル構造体は筒状であればよく、円筒状に限られるものでもない。
【0097】
参考として、以下に経路の層数の設定例を示す。
(1)センサの応答速度を定める。真空計の場合、まずセンサ受圧部を真空に引いてセンサ出力をゼロとし、次に測定レンジのフルスケール圧力(P0)の気体をセンサ取り付け部から導入してからセンサ出力がフルスケールP0の63%まで応答する時間で与えられる。一般的に要求されるこの応答速度は計測回路の応答を加味した上で凡そ30〜100msecである。
(2)センサ受圧部のバッフル、即ち経路の出口からセンサダイアフラムまでの空間の体積Vを計算、若しくは実測して求める。
(3)スリットまたは細い穴1箇所あたりのコンダクダンスCを計算によって見積もる。
(4)初期圧力0の体積Vの空間にコンダクタンスCの複数の経路を並列にn本介してP0の圧力の気体を供給すると、容器内の圧力は時間t後にP=P0{1−exp(−nC/V)t}で与えられる。63%応答に要する時間は時定数V/nCに等しく、この値と回路の応答速度の和が1の要求されるセンサの応答速度よりも小さくなるようnを設定する。
【0098】
なお、上述した実施の形態1,2の「汚染物質の堆積防止」の項では説明しなかったが、バッフル構造体70,80を通過した後も、第1の台座プレート21の導入孔21a、スリット状の空間(キャビティ)20A、第2の台座プレート22の導出孔22aを被測定流体が通過することから、センサダイアフラム31aへの汚染物質の堆積が防止される。
【0099】
すなわち、導入部10Aからの被測定流体(気体)は、バッフル構造体70,80を通過した後、第1の台座プレート21の導入孔21aより第1の台座プレート21と第2の台座プレート22との間のスリット状の空間(キャビティ)20Aに流入する。
【0100】
このスリット状の空間(キャビティ)20Aに流入した被測定流体は、第1の台座プレート21の導入孔21aと第2の台座プレート22の導出孔22aとが第1の台座プレート21および第2の台座プレート22の厚み方向において重ならない位置に設けられているので、スリット状の空間(キャビティ)20Aを横方向に進まざるを得ない。
【0101】
このスリット状の空間(キャビティ)20Aを横方向に進むとき、被測定流体に気体の状態で混入している汚染物質が第1の台座プレート21又は第2の台座プレート22の内側表面に堆積する機会が生じる。これにより、最終的に第2の台座プレート22の導出孔22aを抜けて、気体の状態でセンサダイアフラム31aへ到達する汚染物質の量が少なくなり、センサダイアフラム31a上に堆積する汚染物質の量が低減されるものとなる。
【0102】
また、第1の台座プレート21の中央部に導入孔21aが設けられ、第2の台座プレート22にこの第2の台座プレート22の中心から径方向に等距離、かつ周方向に等間隔隔てた周辺部に導出孔22aが複数設けられているので、第2の台座プレート22の導出孔22aを抜けて最終的にセンサダイアフラム31aへ到達する汚染物質は、最も感度の高いセンサダイアフラム31aの表面の中央部を外れて周辺部にバランスよく堆積するものとなる。これにより、センサダイアフラム31aの表面の中央部への汚染物質の堆積を避け、センサダイアフラム31aへの汚染物質の堆積による零点シフトの影響を大きく緩和することができるようになる。
【0103】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。