(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231815
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】つらら防止装置
(51)【国際特許分類】
E04D 13/076 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
E04D13/076 B
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-170286(P2013-170286)
(22)【出願日】2013年8月20日
(65)【公開番号】特開2015-40375(P2015-40375A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年7月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】505128289
【氏名又は名称】株式会社シティ企画
(74)【代理人】
【識別番号】100106105
【弁理士】
【氏名又は名称】打揚 洋次
(72)【発明者】
【氏名】戸村 繁博
(72)【発明者】
【氏名】戸村 和博
【審査官】
津熊 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭63−169663(JP,U)
【文献】
特開2005−155222(JP,A)
【文献】
特開平09−004152(JP,A)
【文献】
実開平01−083832(JP,U)
【文献】
特開昭63−236872(JP,A)
【文献】
特開2012−122283(JP,A)
【文献】
実開昭54−175022(JP,U)
【文献】
実開昭62−166925(JP,U)
【文献】
実開昭62−133813(JP,U)
【文献】
特開2008−175047(JP,A)
【文献】
特開2008−291495(JP,A)
【文献】
特開2007−292412(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/076
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軒下に略水平に設置された雨樋の外底面につららが形成されることを防止するつらら防止装置において、金属製のパイプ状のケーシングとこのケーシングに収納されてケーシングを温める電気ヒータとを備え、このケーシングの外部の一部に、上記雨樋の内底面に接する脚部を、ケーシングの長手方向に沿って連続して形成したものであって、上記電気ヒータは、上記脚部が形成されている部分に内面からケーシングに接するようにケーシング内に収納され、上記電気ヒータは、発泡性であり保温材として機能し、上記ケーシング内の空間を占める保持部材によって上記ケーシングの内周面に押し付けられるように保持されていることを特徴とするつらら防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨樋の外底面でのつららの発生を防止するつらら防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軒先につららが形成されると、成長したつららが落下して危険であるなどの不具合が生じる。そのため、従来より多数のつらら防止装置が提案されてきた。
【0003】
それら従来のつらら防止装置として、例えば、屋根から軒下の雨樋に至る部分を板材で覆い、屋根から流れてきた雪解け水などを外気で冷やされることなく雨樋内に流れ落ちるようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このものではその板材で覆われた空間内の空気を暖めるために、雨樋の内底面上にヒータを設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−169629号公報(段落0009、
図1、
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の装置では、雨樋が設置されていない屋根の軒先につららが形成されないようにするための装置で有り、そのため、上記装置を設置する際には雨樋を含めた装置全体を新たに設置しなければならいので、費用が高くなる。また、すでに雨樋が設置されている家屋ではその雨樋を撤去したあとに上記装置を設置する必要があり、更に費用が高くなる。また、上記従来の装置では、屋根から雨樋へ流れる水が凍ってつららにならないようにすることを目的としているので、雨樋の外面を伝って流れた水によって雨樋の外底面に形成されるつららについては何ら考慮されていない。
【0006】
なお、上記従来の装置では、雨樋の内側にヒータを設置しているものの、このヒータは雨樋内の空気を暖めることを目的としているので、雨樋そのものを十分に温めることができず、従って、ヒータに通電したとしても雨樋の外底面に形成されるつららを有効に防止することができない。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、既存の雨樋の外底面に形成されるつららを安価に防止することのできるつらら防止装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明によるつらら防止装置は、軒下に略水平に設置された雨樋の外底面につららが形成されることを防止するつらら防止装置において、金属製のパイプ状のケーシングとこのケーシングに収納されてケーシングを温める
電気ヒータとを備え、このケーシングの外部
の一部に、上記雨樋の内底面に接する脚部を、ケーシングの長手方向に沿って連続して形成した
ものであって、上記電気ヒータは、上記脚部が形成されている部分に内面からケーシングに接するようにケーシング内に収納され、上記電気ヒータは、発泡性であり保温材として機能し、上記ケーシング内の空間を占める保持部材によって上記ケーシングの内周面に押し付けられるように保持されていることを特徴とする。
【0009】
ケーシングに収納されたヒータをそのまま雨樋内に設置しても、ケーシングと雨樋の内底面とが接触しづらく、そのため、ヒータによって加熱されたケーシングから雨樋の内底面に対して十分に熱を伝達できないが、上記構成ではケーシングに脚部を設けたので、その脚部を介してケーシングから雨戸に熱を伝達することができる。
【0010】
なお、上記ケーシングの少なくとも一方の端部には、その端部に螺合して端部を閉鎖するキャップ状の蓋部材が設けられている場合には、キャップが雨樋の内底面に接すると、ケーシングの他の部分が雨樋の内底面から浮き、熱を伝達できなくなる。そこで、上記脚部はこの蓋部材が雨樋の内底面に接しない脚長に形成されていることが望ましい。
【0011】
また、上記ヒータは、上記脚部が形成されている部分に内面からケーシングに接するように、ケーシング内に収納されていれば、熱がケーシング全体に伝導されて放熱される前に脚部に伝導することができるので、ヒータで発生した熱を効率よく脚部から雨樋へと伝達することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上の説明から明らかなように、本発明は、既存の雨樋の内部に上記ケーシングに収納されたヒータを設置するだけで、雨樋の外底面でのつららの発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図4】角形の雨樋にヒータ部を設置した状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1を参照して、1は本発明が適用される雨樋である。この雨樋は家屋の屋根Rの軒下にほぼ水平状態に設置されており、屋根Rの上面を伝って流れ落ちてくる雨水などを受けて、下方の排水口へと導くものである。冬季には屋根R上には雪が積もり、その積もった雪が下方に滑って雨樋1に受けられる。すると、雨樋1内が雪で塞がれ、溶けた水が下方へと導かれずに雨樋1から溢れる場合が生じる。すると、その溢れた水が雨樋1の外周面を伝って流れ、雨樋1の外底面につららが形成される場合が生じる。
【0015】
このような雨樋1の外底面につららが形成されることを防止するため、雨樋1内に本発明によるつらら防止装置の要部であるヒータ部2を設置することとした。
【0016】
図2及び
図3を参照して、このヒータ部2はステンレス製のパイプ状のケーシング3の中に1対のヒータ4を挿入している。ケーシング3の両端部にはネジ部が形成されており、それらネジ部には先端キャップ31と基端キャップ32とが螺合されている。先端キャップ31は袋状で有り、ケーシング3の先端に先端キャップ31を螺合させることにより、ケーシング3の先端は水密状態に閉鎖されることになる。一方、基端キャップ32には電力を供給するためのコード40が水密性を確保した状態で挿通されている。
【0017】
このコード40は内部の1対のヒータ4に接続されており、コード40を介して供給される電力によってヒータ4が発熱するように構成されている。ただし、コード40とヒータ4との間には、76℃で溶断する温度ヒューズ42と10℃でオフになるサーモスタット43とを直列に接続した。そのため、コード40を常に電源に接続していても、外気温が10℃近くまで上昇してくると、自動的にサーモスタット43がオフになってヒータ4への電力供給が遮断される。また、仮にサーモスタット43が故障したとしても、ヒータ4の温度が76℃まで上昇すると温度ヒューズ42が溶断してヒータ4への電力供給が遮断されるようにした。なお、温度ヒューズ42の溶断温度を76℃に設定したことにより、ヒータ部2を雨樋1内に設置すれば、そのまま夏場を越えて設置したままでも温度ヒューズ42が夏場の高温の気温によって意図せず溶断することを防止できる。
【0018】
ケーシング3には1対の脚部33が設けられている。一方、ヒータ4は発泡性であり保温材として機能する保持部材41によってケーシング3の内周面に押し付けられるように保持されているが、その保持されている位置は、
図3に示すように、脚部33が形成されている位置に一致するように設定されている。このため、ヒータ4で発生した熱は主にケーシング3に伝達されるが、伝達された熱の多くが脚部33へと伝導されるようにした。
【0019】
脚部33の端部34は雨樋1の内周面に沿うように内側に向かって湾曲している。このように湾曲させることにより、脚部33の端部34が広い面積で雨樋1の内底面に接触し、その結果、端部34から雨樋1に均一に熱が伝達されるようにした。なお、端部34が雨樋1の内底面に接触する状態で、先端キャップ31及び基端キャップ32の双方共に、雨樋1の内底面から浮き上がるように、脚部33の脚長を設定した。
【0020】
なお、端部34は内側に向かって曲がっているので、両脚部33に囲まれた空間Sが形成される。この空間Sは外部に対して両端を除いて閉塞されるので、空間S内の空気が暖められても外部に流れ出ることが少なく、雨樋1の底部を加熱する補助となるようにした。また、落ち葉などのゴミが空間S内に入り込まないようにする効果も期待できる。
【0021】
ところで、ヒータ部2が雨樋1の内底面から浮き上がらないように押さえ金具5を設けて脚部33の端部34が長手方向全域にわたって雨樋1に密着するようにした。この押さえ金具5はネジ51を右方向に回すと押さえ部52が下降してヒータ部2を押し下げるが、押さえ部52とケーシング3との間に保温性を有する発泡シート53を挟み、ケーシング3の上面の保温を行って、ケーシング3から空気中への放熱を防止するようにした。
【0022】
なお、雨樋1は
図3に示したような半円筒形状のほか、
図4に示す角形のものも存在する。このような角形の雨樋1にヒータ部2を設置する際には、脚部33の端部34を角形の雨樋1に対応させてフラットに形成したヒータ部2を別途用意してもよいが、
図4に示すように、半円状の雨樋1に合わせて形成した脚部33に長尺のアダプタプレート6を取り付けて対応するようにしてもよい。このようにアダプタプレート6を用いればヒータ部2の形状は1種類で良いので、量産効果によりヒータ部2の製造コストを下げることができる。なお、
図4では押さえ金具の描画を省略しているが、
図3に示したものと同様に、
図4に示す場合も適宜押さえ金具を用いることが望ましい。
【0023】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0024】
1 雨樋
2 ヒータ部
3 ケーシング
4 ヒータ
33 脚部
34 端部
41 保持部材
R 屋根