特許第6231819号(P6231819)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6231819情報媒体読取装置および情報媒体読取方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231819
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】情報媒体読取装置および情報媒体読取方法
(51)【国際特許分類】
   G11B 5/09 20060101AFI20171106BHJP
   G11B 20/10 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   G11B5/09 361Z
   G11B5/09 321Z
   G11B20/10 321Z
【請求項の数】14
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2013-179674(P2013-179674)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2015-49914(P2015-49914A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年7月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002233
【氏名又は名称】日本電産サンキョー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094053
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 隆久
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】曽根原 英司
【審査官】 斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−264815(JP,A)
【文献】 特開2003−338005(JP,A)
【文献】 特開2011−070746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 5/00−5/024
G11B 5/09
G11B 20/10−20/16
G06K 7/00−7/14
G06K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報媒体に記録された磁気データを読み取る磁気ヘッドと、
前記磁気ヘッドで読み取られた磁気データから疑似データを作成する疑似データ作成部と、を有し、
前記疑似データ作成部は、
前記磁気ヘッドで読み取られた磁気データをアナログ信号からデジタル信号に変換するアナログ/デジタル(A/D)変換部と、
前記A/D変換部でA/D変換された磁気データをデジタル値として時系列に読み取り可能に格納する記憶部と、
前記記憶部に格納されている磁気データを読み取り、前記磁気ヘッドの出力波形を出力するとき、障害解析のために可能な限り元の出力波形を残しつつ、1キャラクタを構成する数のビットのうち、元のデータが残るように、パリティビットで補正できるビット数より多い数の複数ビットのデジタル値を、疑似のデジタル値に書き換える疑似データ書き換え処理部と、を含む
情報媒体読取装置。
【請求項2】
前記疑似データ書き換え処理部は、
1キャラクタを構成するビット数からスキャン方向に同じ位置ではなく異なる位置となるような数を減じたビット数ごとに、少なくとも2ビットのデジタル値を疑似のデジタル値に書き換える
請求項1記載の情報媒体読取装置。
【請求項3】
前記疑似データ書き換え処理部は、
1キャラクタを構成するビット数から1を減じたビット数ごとに、少なくとも2ビットのデジタル値を疑似のデジタル値に書き換える
請求項1または2記載の情報媒体読取装置。
【請求項4】
前記疑似データ書き換え処理部は、
1キャラクタで特定のビットのみ消去されてしまう書き換えパターンおよび1キャラクタ内で、パリティビットで補正できる数のビットしか消去できない箇所が発生する書き換えパターンを除いた書き換えパターンで、書き換え処理を行う
請求項1から3のいずれか一に記載の情報媒体読取装置。
【請求項5】
前記疑似データ書き換え処理部は、
前記元のデータがキャラクタデータとして復調はできないように書き換え処理を行う
請求項1から4のいずれか一に記載の情報媒体読取装置。
【請求項6】
1キャラクタは、パリティビットを含めて、8ビット、7ビット、5ビットのうちのいずれかである
請求項1から5のいずれか一に記載の情報媒体読取装置。
【請求項7】
前記磁気ヘッドで読み取られた磁気データを復調する処理を行う読取処理部と、
前記A/D変換部、前記記憶部、および前記疑似データ書き換え処理部を含み、前記磁気ヘッドで読み取られた磁気データをデジタル値として前記記憶部に蓄積する前記疑似データ作成部と、を有し、
前記疑似データ作成部は、
データ提供要求を受けると、前記疑似データ書き換え処理部が、前記記憶部の対応する蓄積データの一部を疑似データに書き換えて要求先に提供する
請求項1から6のいずれか一に記載の情報媒体読取装置。
【請求項8】
前記情報媒体を前記磁気ヘッドに対して相対的に移動させる搬送部を有する
請求項1から7のいずれか一に記載の情報媒体読取装置。
【請求項9】
情報媒体に記録された磁気データを磁気ヘッドで読み取る読取ステップと、
前記磁気ヘッドで読み取られた磁気データから疑似データを作成する疑似データ作成ステップと、を有し、
前記疑似データ作成ステップは、
前記磁気ヘッドで読み取られた磁気データをアナログ信号からデジタル信号に変換するアナログ/デジタル(A/D)変換ステップと、
前記A/D変換ステップでA/D変換された磁気データをデジタル値として時系列に読み取り可能に記憶部に格納する格納ステップと、
前記記憶部に格納されている磁気データを読み取り、前記磁気ヘッドの出力波形を出力するとき、障害解析のために可能な限り元の出力波形を残しつつ、1キャラクタを構成する数のビットのうち、元のデータが残るように、パリティビットで補正できるビット数より多い数の複数ビットのデジタル値を、疑似のデジタル値に書き換える疑似データ書き換え処理ステップと、を含む
情報媒体読取方法。
【請求項10】
前記疑似データ書き換え処理ステップは、
1キャラクタを構成するビット数からスキャン方向に同じ位置ではなく異なる位置となるような数を減じたビット数ごとに、少なくとも2ビットのデジタル値を疑似のデジタル値に書き換える
請求項9記載の情報媒体読取方法。
【請求項11】
前記疑似データ書き換え処理ステップは、
1キャラクタを構成するビット数から1を減じたビット数ごとに、少なくとも2ビットのデジタル値を疑似のデジタル値に書き換える
請求項9または10記載の情報媒体読取方法。
【請求項12】
前記疑似データ書き換え処理ステップは、
1キャラクタで特定のビットのみ消去されてしまう書き換えパターンおよび1キャラクタ内で、パリティビットで補正できる数のビットしか消去できない箇所が発生する書き換えパターンを除いた書き換えパターンで、書き換え処理を行う
請求項9から11のいずれか一に記載の情報媒体読取方法。
【請求項13】
前記疑似データ書き換え処理ステップは、
前記元のデータがキャラクタデータとして復調はできないように書き換え処理を行う
請求項9から12のいずれか一に記載の情報媒体読取方法。
【請求項14】
1キャラクタは、パリティビットを含めて、8ビット、7ビット、5ビットのうちのいずれかである
請求項9から13のいずれか一に記載の情報媒体読取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードや通帳等の情報媒体に形成される磁気ストライプから磁気データを読み取る情報媒体読取装置および情報媒体読取方法に関するものある。
【背景技術】
【0002】
カードや通帳等の情報媒体に形成される磁気ストライプには、たとえばF2F変調方式でデータが磁気記録される。
特許文献1には、周波数変調方式で磁気記録された“0”および“1”信号に対するFおよび2F信号を読み取るカードリーダ等に適用される情報媒体読取装置としての磁気再生回路が記載されている。
【0003】
この磁気再生回路においては、搬送路を搬送ローラ等により搬送されるカードに記録されたFおよび2F信号(磁気データ)が磁気ヘッドでアナログ信号として再生され、増幅回路で増幅される。
増幅回路で増幅されたアナログ信号は、アナログ回路であるピーク検出回路でピーク点が検出され、ピーク点で出力信号を反転して矩形波信号に波形整形される。
この矩形波信号は、周波数変調(F2F変調)された信号であり、F2F復調回路に入力され復調される。
【0004】
ところで、上述したような情報媒体読取装置においては、たとえば媒体側の磁気ストライプが摩耗等していて、読み取った磁気データのアナログ信号が規定値よりも減衰している場合がある。この場合、磁気データを迅速かつ正確に復調できない場合がある。
特許文献2には、磁気ストライプの磨耗等によって磁気データのアナログ信号が規定値よりも減衰している場合でも磁気データを迅速かつ正確に復調できるように構成された磁気データ読取装置が提案されている。
【0005】
また、上述したような情報媒体読取装置においては、たとえばカードや通帳等の情報媒体の搬送速度が急変したり、搬送が停止したりする等の場合がある。この場合も、磁気データを迅速かつ正確に復調できない場合がある。
特許文献3には、情報媒体の搬送速度が急変したり、搬送が停止したりした場合でも磁気データを迅速かつ正確に復調できるように構成された磁気データ読取の復調方法が提案されている。
【0006】
このような提案されている装置や方法によれば、読み取った磁気データに部分的な欠損やエラーが発生しても、復調方法の工夫により本来の磁気データの復元を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6−52003号
【特許文献2】特開2001−273605号公報
【特許文献3】特開2003−77231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、磁気データの読み取り失敗時に情報媒体読取装置(磁気データ読取装置)内のメモリに蓄えてある磁気ヘッドの出力波形(アナログ信号)を調査することは障害解析において有用な手段である。
【0009】
一方、障害解析で磁気ヘッドの出力波形を開示した場合、出力波形より具体的な磁気データを解析することが可能である。
しかし、実際に障害が発生した部分以外の箇所に顧客の個人データ等の重要なデータが含まれていた場合、これを復調することが可能になってしまう。
よって、障害解析時に磁気ヘッドの出力波形を開示するときは既知の復調方法やデータ復元方法では磁気データの復調を不可能にする方法が必要となる。
【0010】
本発明の目的は、障害解析等で磁気ヘッドの出力波形を出力するとき、障害解析のために可能な限り元の出力波形を残しつつ、既知の方法では確実な磁気データの復調を困難とすることが可能な情報媒体読取装置および情報媒体読取方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の観点の情報媒体読取装置は、情報媒体に記録された磁気データを読み取る磁気ヘッドと、前記磁気ヘッドで読み取られた磁気データから疑似データを作成する疑似データ作成部と、を有し、前記疑似データ作成部は、前記磁気ヘッドで読み取られた磁気データをアナログ信号からデジタル信号に変換するアナログ/デジタル(A/D)変換部と、前記A/D変換部でA/D変換された磁気データをデジタル値として時系列に読み取り可能に格納する記憶部と、前記記憶部に格納されている磁気データを読み取り、前記磁気ヘッドの出力波形を出力するとき、障害解析のために可能な限り元の出力波形を残しつつ、1キャラクタを構成する数のビットのうち、元のデータが残るように、パリティビットで補正できるビット数より多い数の複数ビットのデジタル値を、疑似のデジタル値に書き換える疑似データ書き換え処理部と、を含む。
これにより、障害解析等で磁気ヘッドの出力波形を出力するとき、障害解析のために可能な限り元の出力波形(アナログ信号)を残しつつ、既知の方法では確実な磁気データの復調を困難とすることが可能となる。
【0012】
好適には、前記疑似データ書き換え処理部は、1キャラクタを構成するビット数からスキャン方向に同じ位置ではなく異なる位置となるような数を減じたビット数ごとに、少なくとも2ビットのデジタル値を疑似のデジタル値に書き換える。
これにより、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内でパリティビットで補正できる数のビット(1ビット)しか消去できない箇所が発生することはなく、さらに、全ての文字(キャラクタ)が2ビット以上消去できる。これにより、磁気ヘッドで読み取られた元の出力波形(アナログ信号)は障害解析等ができる程度に残すことができ、さらに、既知の方法では真の磁気データを一部であっても復調することを防止することができる。
【0013】
好適には、前記疑似データ書き換え処理部は、1キャラクタを構成するビット数から1を減じたビット数ごとに、少なくとも2ビットのデジタル値を疑似のデジタル値に書き換える。
この場合も、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはなく、さらに、全ての文字(キャラクタ)が2ビット以上消去できて元の出力波形(アナログ信号)が障害解析等ができる程度に残ることから、最適な出力波形(アナログ信号)を作成することができる。
【0014】
また、好適には、前記疑似データ書き換え処理部は、1キャラクタで特定のビットのみ消去されてしまう書き換えパターンおよび1キャラクタ内でパリティビットで補正できる数のビットしか消去できない箇所が発生する書き換えパターンを除いた書き換えパターンで、書き換え処理を行う。
これにより、磁気ヘッドから読み出された真の磁気データ内容が予測されることを防止でき、真の磁気データを一部であっても復調することを防止することができる。
【0015】
また、前記疑似データ書き換え処理部は、前記元の磁気データがキャラクタデータとして復調はできないように書き換え処理を行う。
【0016】
好適には、1キャラクタは、パリティビットを含めて、8ビット、7ビット、5ビットのうちのいずれかである。
JIS規格に沿った磁気データに対応可能である。
【0017】
また、前記磁気ヘッドで読み取られた磁気データを復調する処理を行う読取処理部と、前記A/D変換部、前記記憶部、および前記疑似データ書き換え処理部を含み、前記磁気ヘッドで読み取られた磁気データをデジタル値として前記記憶部に蓄積する疑似データ作成部と、を有し、前記疑似データ作成部は、データ提供要求を受けると、前記疑似データ書き換え処理部が、前記記憶部の対応する蓄積データの一部を疑似データに書き換えて要求先に提供するように構成することも可能である。
【0018】
また、前記情報媒体を前記磁気ヘッドに対して相対的に移動させる搬送部を有するように構成してもよい。
【0019】
本発明の第2の観点の情報媒体読取方法は、情報媒体に記録された磁気データを磁気ヘッドで読み取る読取ステップと、前記磁気ヘッドで読み取られた磁気データから疑似データを作成する疑似データ作成ステップと、を有し、前記疑似データ作成ステップは、前記磁気ヘッドで読み取られた磁気データをアナログ信号からデジタル信号に変換するアナログ/デジタル(A/D)変換ステップと、前記A/D変換ステップでA/D変換された磁気データをデジタル値として時系列に読み取り可能に記憶部に格納する格納ステップと、前記記憶部に格納されている磁気データを読み取り、前記磁気ヘッドの出力波形を出力するとき、障害解析のために可能な限り元の出力波形を残しつつ、1キャラクタを構成する数のビットのうち、元のデータが残るように、パリティビットで補正できるビット数より多い数の複数ビットのデジタル値を、疑似のデジタル値に書き換える疑似データ書き換え処理ステップと、を含む。
これにより、障害解析等で磁気ヘッドの出力波形を出力するとき、障害解析のために可能な限り元の出力波形(アナログ波形)を残しつつ、既知の方法では確実な磁気データの復調を困難とする情報媒体読取装置を実現できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、障害解析等で磁気ヘッドの出力波形を出力するとき、障害解析のために可能な限り元の出力波形(アナログ波形)を残しつつ、既知の方法では確実な磁気データの復調を困難とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係る情報媒体読取装置の構成例を示す図である。
図2】カードの規格およびその仕様について説明するための図である。
図3図1の情報媒体読取装置の要部の信号処理波形を示す図である。
図4】本実施形態に係る疑似データ書き換え処理部の1キャラクタ(文字)における2ビットを疑似データで書き換える処理概要を示す図である。
図5】本実施形態に係る疑似データ作成部における疑似データ書き換え処理部の構成例を示す図である。
図6】本実施形態に係る疑似データ作成部における具体的な処理例を説明するためのフローチャートである。
図7】本実施形態に係る疑似データ作成部におけるデジタル値の置換ルールについて説明するための図である。
図8】磁気データがJIS−II仕様に対応している場合の書き換え(消去)前後のデータサンプル例を示す図である。
図9】磁気データがJIS規格に対応している場合の書き換え(消去)前後の読取障害解析の一例を示す図である。
図10】本実施形態に係る疑似データ書き換え処理部の1文字8ビットのときの消去パターンを考察するための図である。
図11】本実施形態に係る疑似データ書き換え処理部の1文字7ビットのときの消去パターンを考察するための図である。
図12】本実施形態に係る疑似データ書き換え処理部の1文字5ビットのときの消去パターンを考察するための図である。
図13】本実施形態に係る情報媒体読取装置の全体的な動作概要を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る情報媒体読取装置の構成例を示す図である。
【0024】
本実施形態においては、記録媒体であるカード等(以下、カードとする)に記録された磁気データを再生する情報媒体読取装置(以下、カードリーダとする)を例に説明する。
また、本実施形態においては、周波数変調方式で磁気記録された“0”および“1”信号に対するFおよび2F信号を読み取り再生する場合を例に説明する。
ただし、本技術はF2F方式に限らず、F3F方式、NRZI方式、MFM方式等、種々の方式が適用可能である。
【0025】
カードリーダ10は、図1に示すように、カード処理部20、読取処理部30、および疑似データ作成部40を有す


【0026】
また、図1において、読取処理部30および疑似データ作成部40は、通信線を介してホスト装置(上位装置)50と接続され、ホスト装置50からの指令に従って処理を実行し、処理後の磁気データをホスト装置50に転送するように構成される。
ホスト装置50とカードリーダ(下位装置)との通信を確立するためには、RS232C方式、パラレルポート方式、USB(Universal Serial Bus)接続方式など種々の通信方式が採用可能である。
【0027】
本実施形態において、読取処理部30は、基本的に、磁気ヘッド23で読み取られたFおよび2F信号(磁気データ)を復調する処理を行う。
そして、疑似データ作成部40は、磁気ヘッドで読み取られたFおよび2F信号(磁気データ)をデジタル値として蓄積(格納)しており、読取処理部30による磁気データの読み取り処理で、障害等が発生した場合に、ホスト装置50等からの出力波形(アナログ信号)の提供要求に応じて、蓄積した磁気データの一部を疑似データに書き換えてホスト装置50に提供する。
本実施形態の疑似データ作成部40が、蓄積した磁気データの一部を疑似データに書き換えてホスト装置50に提供する理由は、障害解析等で磁気ヘッドの出力波形(アナログ信号)を出力するとき、障害解析のために可能な限り元の出力波形(アナログ波形)を残しつつ、既知の方法では確実な磁気データの復調を困難とすることが可能となるようにするためである。
読取処理部30および疑似データ作成部40の具体的な構成および機能は後で詳述する。
【0028】
[カード処理部の構成]
カード処理部20は、カード搬送路21、および図示しない駆動モータにより駆動される搬送ローラ22−1等によりカードMCをカード搬送路21に沿って搬送するカード搬送部22を有する。カードMCをカード搬送部22により、あるいは手動により、磁気ヘッド23に対して相対的に移動させることにより磁気データを読み取ることができる。
カード処理部20は、カード搬送路21に沿って、カードMCの磁気ストライプmpの磁気データを読み取る磁気ヘッド23が配置されている。
なお、図1の例では、磁気ヘッド23がカード搬送路21の上部側に配置された例を示しているが、磁気ヘッド23がカード搬送路21の下部側に配置される場合もある。
【0029】
また、カード搬送路21には、搬送対象であるカードMCの有無や搬送位置を検出する図示しないセンサが複数配置されており、これらセンサの検出結果に応じて、カードMCの搬送動作(速度等)制御、磁気ヘッド23による磁気データの読み取り動作制御が、読取処理部30側あるいはホスト装置50により行われる。
【0030】
磁気ヘッド23は、情報媒体(磁気記録媒体)であるカードMCに、たとえば図3(A)に示ように、F2F変調方式により記録された磁気データ(磁気記録情報)MRDを、アナログ信号S23として読み出す。
磁気ヘッド23で読み取られた磁気データのアナログ信号S23は読取処理部30に供給される。
【0031】
ここで、カード(本例では磁気ストライプカード)MCの規格について説明する。
図2は、カードの規格およびその仕様について説明するための図である。
日本国内において使用されているカードはJISで規格されたものが使用されている。
規格として、JIS−I(ISO)のトラック1、JIS−I(ISO)のトラック2、JIS−I(ISO)のトラック3、およびJIS−IIが存在する。
ISOとJIS−Iは同じ仕様である。JIS−IIは日本独自の使用であり、日本国内のキャッシュカード等に使用されている。
【0032】
JIS−I(ISO)のトラック1は、仕様が7ビットでそのうち1ビットがパリティビットであり、文字種は英数字で、最大文字数は72/79文字であり、磁気面はカードMCの裏面側に形成される。
JIS−I(ISO)のトラック2は、仕様が5ビットでそのうち1ビットがパリティビットであり、文字種は数字で、最大文字数は40文字であり、磁気面はカードMCの裏面側に形成される。
JIS−I(ISO)のトラック3は、仕様が5ビットでそのうち1ビットがパリティビットであり、文字種は数字で、最大文字数は107文字あり、磁気面はカードMCの裏面側に形成される。
JIS−IIは、仕様が8ビットでそのうち1ビットがパリティビットであり、文字種は英数字で、最大文字数は72文字であり、磁気面はカードMCの表側に形成される。
【0033】
たとえば、JIS−I(ISO)のトラック1、JIS−I(ISO)のトラック2、JIS−I(ISO)のトラック3は、カードMCの裏面側において、一つの磁気ストライプ内に形成される。
【0034】
[読取処理部30の構成および機能]
読取処理部30は、基本的に、磁気ヘッド23で読み取られた磁気データを復調する処理を行う。
読取処理部30は、磁気ヘッド23で読み取られた磁気データのアナログ信号S23を増幅して疑似データ作成部40に供給する。
【0035】
図1の読取処理部30は、第1の増幅器31、第2の増幅器32、ピーク検出部33、第1のコンパレータ34、第2のコンパレータ35、タイミング発生部36、および復調部37を含んで構成されている。
【0036】
第1の増幅器31は、磁気ヘッド23により読み出され再生されたアナログ信号(磁気データ)S23を適正なレベルに増幅して、増幅後の磁気データを信号S31としてピーク検出部33に出力する。
【0037】
第2の増幅器32は、磁気ヘッド23により読み出され再生されたアナログ信号(磁気データ)S23を適正なレベルに増幅して、増幅後の磁気データを信号S32として第2のコンパレータ35および疑似データ作成部40に出力する。
【0038】
ピーク検出部33は、微分回路や積分回路等を含んで構成され、第1の増幅器31による磁気データのアナログ信号S31の磁気反転位置に生じているピーク位置を検出し、検出結果を信号S33として第1のコンパレータ34に出力する。
【0039】
第1のコンパレータ34は、ピーク検出部33による信号S33を波形成形して2値化し、2値化した結果を、ピーク間隔(インターバル)信号S34としてタイミング発生部36に出力する。
【0040】
第2のコンパレータ35は、第2の増幅器32による磁気データのアナログ信号S32を波形成形して2値化データを得、これを信号S35としてタイミング発生部36に出力する。
【0041】
タイミング発生部36は、第1のコンパレータ34で波形成形して2値化したピーク間隔(インターバル)信号S34および第2のコンパレータ35による信号S35に従って、アナログ信号のピーク出力に対応したタイミング信号S36を発生し、タイミング信号S36を復調部37に出力する。
【0042】
復調部37は、タイミング発生部36で発生されたタイミング信号S36に応じて、隣接するピーク位置同士の間の時間間隔を計時し、それによって得た間隔データに基づいて磁気データの復調を行う。
【0043】
[読取処理部30の動作]
ここで、読取処理部30の基本的な動作を図3に関連付けて説明する。
図3は、図1の情報媒体読取装置の要部の信号処理波形を示す図である。
図3(A)は磁気カードに記録された磁気信号(磁気データ)MRDを、図3(B)は磁気ヘッドで読み出し増幅したアナログ信号(磁気データ)S31(S32)を、図3(C)はピーク位置検出信号S33を、図3(D)は第1のコンパレータのピーク間隔(インターバル)信号S34を、図3(E)は第2のコンパレータ35の出力信号S35を、図3(F)はタイミング発生部36によるタイミング信号S36を、それぞれ示している。
【0044】
本実施形態の情報媒体読取装置10において、読取対象の情報媒体であるカードMCに書き込まれた、たとえば図3(A)に示すような2種類の周波数(F,2F)の組合せからなる磁気データが、磁気ヘッド23によりアナログ信号S23として読み取られ(再生され)、読取処理部30に供給される。
読取処理部30では、磁気データのアナログ信号S23が2系統の第1の増幅器31および第2の増幅器32により増幅作用を受け、増幅作用を受けたアナログ信号は図3(B)に示すような波形となる。
そして、第1の増幅器31で増幅された磁気データは信号S31としてピーク検出部33に供給され、第2の増幅器32で増幅された磁気データは信号32として、第2のコンパレータ35に供給される。
ピーク検出部33においては、図3(C)に示すように、アナログ信号S31の磁気反転位置に生じているピーク位置が検出され、検出結果が信号S33として第1のコンパレータ34に供給される。
【0045】
第1のコンパレータ34においては、ピーク位置検出を示す信号S33に応じて、図3(D)に示すように、波形成形されて2値化したピーク間隔(インターバル)信号S34が形成され、タイミング発生部36に供給される。
また、第2のコンパレータ35においては、第2の増幅器32による磁気データのアナログ信号S32が、図3(E)に示すように、波形成形されて2値化データが得られ、信号S35としてタイミング発生部36に供給される。
タイミング発生部36において、第1のコンパレータ34によるピーク間隔(インターバル)信号S34および第2のコンパレータ35による信号S35に従って、アナログ信号S31、S32のピーク出力に対応したタイミング信号S36が発生され、タイミング信号S36が復調部37に供給される。
そして、復調部37においては、タイミング発生部36で発生されたタイミング信号S36に応じて、隣接するピーク位置同士の間の時間間隔が計時され、それによって得た間隔データに基づいて磁気データの復調が行われる。
【0046】
[疑似データ作成部40の構成および機能]
疑似データ作成部40は、磁気ヘッド23で読み取られ、読取処理部30の第2の増幅器32で増幅された磁気データをデジタル値として蓄積(格納)しており、たとえば読取処理部30による磁気データの読み取り処理で、障害等が発生した場合に、ホスト装置50等からのデータ提供要求に応じて、蓄積した磁気データの一部を疑似データに書き換えて要求先であるホスト装置50等に提供する。
本実施形態の疑似データ作成部40が、蓄積した磁気データの一部を疑似データに書き換えてホスト装置50に提供する理由は、前述したように、障害解析等で磁気ヘッドの出力波形(アナログ信号)を出力するとき、障害解析のために可能な限り元の出力波形(アナログ信号)を残しつつ、既知の方法では確実な磁気データの復調を困難とすることが可能となるようにするためである。
【0047】
疑似データ作成部40は、図1に示すように、アナログ/デジタル(A/D)変換部41、記憶部としてのメモリ42、および疑似データ書き換え処理部43を含んで構成されている。
なお、本実施形態おいて、疑似データによる書き換えは、1キャラクタ(以下、文字という場合もある)を構成する数のビットのうち、垂直パリティビットで補正できるビット数より多い数の複数ビットのデジタル値を、疑似のデジタル値に書き換えること、換言すれば置換する、あるいは消去することを意味する。
以下の説明では、説明や図面等によって、書き換え、消去、または置換という場合がある。
【0048】
A/D変換部41は、読取処理部30の第2の増幅器32で増幅された磁気データをアナログ信号からデジタル信号に変換する。
A/D変換部41は、増幅器32で増幅されたアナログ信号S32を所定の周波数、たとえば300kHzでサンプリングしてデジタル信号に変換し、信号S41としてメモリ42に供給する。
換言すれば、A/D変換部41は、磁気ヘッド23で再生したアナログ信号をサンプリングすることによって所定時間毎にデジタル信号に変換する。
したがって、A/D変換後の磁気データは、等間隔となっている。これにより、メモリ42にデジタルデータを格納するとき、メモリ42の一定アドレスを一定時間として扱うことが可能であり、アドレスすなわち時間として扱うことが可能となる。
【0049】
メモリ42は、不揮発性メモリ等により構成することが可能で、A/D変換部41でA/D変換された磁気データをデジタル値として時系列に格納する。
【0050】
疑似データ書き換え処理部43は、たとえば読取処理部30による磁気データの読み取り処理で、障害等が発生した場合に、ホスト装置50等からの出力波形(アナログ信号)の提供要求に応じて、蓄積した磁気データの一部を疑似データに書き換えてホスト装置50に提供する。
疑似データ書き換え処理部43は、ホスト装置50からの出力波形(アナログ信号)の提供要求を受けると、メモリ42に格納されているデジタル値(磁気データ)を読み取り、1キャラクタ(1文字)を構成する数のビットのうち、垂直パリティビットで補正できるビット数より多い数のビットのデジタル値を疑似のデジタル値に書き換える。
【0051】
換言すれば、疑似データ書き換え処理部43は、1キャラクタ(1文字)を構成する数のビットのうち、垂直パリティビットで補正できるビット数より多い数の連続するまたは非連続の複数ビット(2ビット以上)のデジタル値を、真のデータ値と異なる値である疑似のデジタル値、たとえば値“00h”に書き換えて、真のデータ値を消去する処理を行う。
疑似データ書き換え処理部43は、疑似のデータPSDで書き換えた磁気データを、力波形(アナログ信号)の提供要求を発行したホスト装置50等に送信し、提供する。
磁気データはデジタルからアナログにDA変換され、元の出力波形(アナログ信号)のは一部残っているが、障害解析は可能であるが、判読は不可能に疑似データにより書き換えられている磁気データを出力波形(アナログ信号)として表示部等に表出される。
【0052】
本実施形態の疑似データ書き換え処理部43は、1キャラクタを構成するビット数(8、7または5)からスキャン方向(水平方向)に同じ位置ではなく異なる位置となるような数を減じたビット数ごとに、少なくとも2ビットのデジタル値を疑似のデジタル値、たとえば“00h”に書き換える(消去する)。
本実施形態において、スキャン方向(水平方向)に同じ位置ではなく異なる位置となるような数とは、たとえば“1”である。
すなわち、疑似データ書き換え処理部43は、1キャラクタ(文字)を構成するビット数から1を減じたビット数ごとに、連続または非連続の少なくとも2ビットのデジタル値を疑似のデジタル値に書き換える。
たとえば、磁気データがJIS−II仕様に対応している場合、8ビットから1を減じた7ビットごとに連続または非連続の2ビットのデジタル値を、たとえば“00h”に書き換え消去する。
【0053】
図4は、本実施形態に係る疑似データ書き換え処理部の1キャラクタにおける2ビットを疑似データで書き換える処理概要を示す図である。
図4の例は、磁気データがJIS−II仕様に対応している場合の一例である。
後で述べるように、消去(書き換え)パターン(フォーマット)は、シミュレーションを行って検討した結果、磁気データがJIS−II仕様に対応している場合、スキャン方向(水平方向)において7(8−1)ビットごとに、連続する2ビットを書き換える(消去する)処理を行うと、全ての文字(キャラクタ)が2ビット以上消去できて元の出力波形(アナログ信号)を最も残すことができる。
【0054】
同様に、後で述べるように、磁気データがJIS−Iのトラック1の仕様に対応している場合、スキャン方向(水平方向)において6(7−1)ビットごとに、連続する2ビットを書き換える(消去する)処理を行うと、全ての文字(キャラクタ)が2ビット以上消去できて元の出力波形(アナログ信号)を障害解析等ができる程度に残すことができる。
【0055】
同様に、後で述べるように、磁気データがJIS−Iのトラック2または3の仕様に対応している場合、スキャン方向(水平方向)において4(5−1)ビットごとに、連続する2ビットを書き換える(消去する)処理を行うと、全ての文字(キャラクタ)が2ビット以上消去できて元の出力波形(アナログ信号)を障害解析等ができる程度に残すことができる。
【0056】
この例は最も効率の良いパターンであるが、1文字(キャラクタ)で特定のビットのみ消去されてしまうパターンや1文字(キャラクタ)内でパリティビットで補正できる数のビット(本例では1ビット)しか消去できない箇所が発生するパターンは、本実施形態における疑似データの書き換え(消去)には不適であるといえる。
したがって、効率があまりよくない場合であっても、1文字(キャラクタ)で特定のビットのみ消去されてしまうパターンや1文字(キャラクタ)内でパリティビットで補正できる数のビット(1ビット)しか消去できない箇所が発生するパターンとならない限り、サイクル数と消去文字数を適宜選択してパターンを選択して適用することはできる。
【0057】
図5は、本実施形態に係る疑似データ作成部における疑似データ書き換え処理部の構成例を示す図である。
図5の疑似データ書き換え処理部43は、書き換え範囲設定部431、フォーマット(パターン)設定部432、および疑似データ書き換え部433を含んで構成されている。
【0058】
書き換え範囲設定部431は、疑似データへの書き換え対象の磁気データにおいて書き換える範囲、すなわち磁気データの書き換えるべき領域等が設定される。
フォーマット設定部432は、書き換え範囲設定部431で設定された書き換え範囲に対して書き換えを行うための書き換えフォーマット(パターン)が設定される。
疑似データ書き換え部433は、書き換え範囲設定部431で設定された書き換え範囲において、フォーマット設定部432にて設定された書き換えフォーマット(パターン)に従って書き換え対象の磁気データを疑似データに書き換える。
【0059】
次に、疑似データ書き換え処理部43の具体的な機能および処理例について説明する。
本実施形態では、疑似データ書き換え処理部43が、障害解析等で磁気ヘッド23により読み取った出力波形を出力するとき、既知の方法では確実な磁気データの復調を不可能にするような擬似データへの変換、すなわち疑似データによる所定ビットの書き換え(消去)を行う。
疑似データ書き換え処理部43は、疑似データの書き換え処理を行うに際し、障害解析のために可能な限り元の出力波形を残すようなパターン(フォーマット)を選択して書き換え(消去)を行う。このパターン(フォーマット)は、上述したように、フォーマット設定部432に設定される。また、書き換え範囲設定部431において、疑似データへの書き換え対象の磁気データにおいて書き換える範囲、すなわち磁気データの書き換えるべき領域等が設定される。
【0060】
具体的にはJIS規格で規定されたフォーマットの復調を不可能にすることを目的とし、以下の特徴を備える。
全てのキャラクタでキャラクタの復元を不可能にする。具体的には、全てのキャラクタで垂直パリティビットを用いたキャラクタの復元を不可能にする。
各キャラクタの全てのビットで水平パリティビットを用いたビットの復元を不可能にする。
磁気ヘッド23による元の出力波形は障害解析はできる程度に可能な限り残す。
【0061】
図6は、本実施形態に係る疑似データ作成部における具体的な処理例を説明するためのフローチャートである。
図7は、本実施形態に係る疑似データ作成部におけるデジタル値の置換ルールについて説明するための図である。
【0062】
磁気カードMCに記録された磁気データを読み取るために、カードMCが機械搬送方式で定速搬送され、これに応じて磁気ヘッド23を用いて読み取られたアナログ信号の出力値が読取処理部30の第2の増幅器32で増幅された後、疑似データ作成部40に供給される。
疑似データ作成部40においては、アナログ信号(磁気データ)をA/D変換部41がA/D変換し(ステップST1)、時系列のデジタル値としてメモリ42に格納する(ステップST2)。
ここで、疑似データ書き換え処理部43は、ホスト装置50等からの出力波形(アナログ信号)の提供要求を受けると(ステップST3)、要求のあったメモリ42に格納された磁気データ(デジタル値)を読み取る(ステップST4)。
そして、疑似データ書き換え処理部43は、読み取ったデジタル値のうち、デジタル値の一部を『ルールRL1』に従って値“00h”に書き換え置換する(ステップST5)。
疑似データ書き換え処理部43は、出力波形(アナログ信号)の提供要求を発行したホスト装置50等に、置換した擬似データを、磁気ヘッドの出力波形(アナログ信号)として出力する(ステップST6)。
【0063】
「ルールRL」について、図7(A)および(B)に関連付けて説明する。
(1)A/D変換後の磁気データのメモリ42への格納開始時間を起点とする(ステップST51)。
すなわち、A/D変換部41は、磁気ヘッド23で再生したアナログ信号をサンプリングすることによって所定時間毎にデジタル信号に変換する。
したがって、前述したように、A/D変換後の磁気データは、等間隔となっている。これにより、メモリ42にデジタル値を格納するとき、メモリ42の一定アドレスを一定時間として扱うことが可能であり、アドレスすなわち時間として扱うことが可能となる。
本実施形態においては、図7(B)に示すように、告示した磁気データを含めて磁気データの先頭からメモリ42の所定アドレスADDRxを起点として格納される。
【0064】
(2)メモリ42に格納されたデジタル値を値“00h”に置換するサイクルを奇遇パリティ(検査)ビットを含めたキャラクタ(文字)長より1ビット分短い時間とする(ステップST52)。
磁気データがJIS−II仕様に対応している場合、8ビットから1を減じた7ビットごとに連続の2ビットのデジタル値(磁気データ)を、たとえば“00h”に書き換え消去する。
【0065】
(3)値“00h”に置換する幅を2ビット長に相当する時間とする(ST53)。
以上の方法により、水平方向、垂直方向共に冗長符号による磁気データの再現が不可能になる。
しかしながら、元の出力波形(アナログ信号)は最大限残る。元の出力波形(アナログ信号)は、キャラクタデータとして復調はできないように書き換え処理により残される。
換言すれば、磁気データを磁気ヘッドで読み取った磁気ヘッドの出力波形は、観測者の目視によって読み取り状態を観測することはできるが、具体的なキャラクタデータ(磁気データ)として復調することはできない。
【0066】
図8および図9は、実際に上記「ルールRL」に従ってデジタル値の一部を“00h”で書き換え(消去、置換)した例を示している。
【0067】
図8は、磁気データがJIS−II仕様に対応している場合の書き換え(消去)前後の磁気データサンプル例を示す図である。
図8(A)は消去前の磁気データサンプルを示し、図8(B)は消去後の磁気データサンプルを示している。
この場合、ルールRLに従って7ビットごとに2ビットの磁気データ(デジタル値)を“00h”で書き換え(消去、置換)している。
データ書き換え(消去)後、で出力波形は原型をとどめているが、磁気データ(キャラクタデータ)としての復調はできない。
【0068】
図9は、磁気データがJIS規格に対応している場合の書き換え(消去)前後の読取障害解析の一例を示す図である。
図9(A)は消去前の出力波形を示し、図9(B)は消去後の出力波形例を示している。
この例は、図9(A)に示すように、データ書き換え(消去)前、磁気データの出力がほとんどない期間が続いている領域がある。
データ書き換え(消去)後、図9(B)に示すように、読み取り障害が磁気データの出力減退(消磁)であることがわかる。
【0069】
以上のように、本実施形態の疑似データ作成部40によれば、出力された波形からは正確な復調が1文字(1キャラクタ)もできなくなり、情報の保護が可能になる。
出力された波形からの正確な復調を防ぎながら、元の出力波形(アナログ信号)を最大限残すことができる。
具体的な磁気データの復調ができない場合でも、出力された波形からおおよその障害解析が可能である。
また、2ビットの磁気データ(デジタル値)を“00h”で書き換え(消去、置換)していることから、今回処理した箇所が一目瞭然となり、状態よって、解析処理で無視することも可能となる。
【0070】
次に、疑似データ書き換え処理部における1文字8ビットのとき、1文字7ビットのとき、および1文字5ビットとのきの消去(書き換え)パターンについて考察する。
検討(考察)する項目は、消去文字数ECN、消去サイクルECY、消去率ER(%)の3つであり、これらを適宜変更した各パターンについて検討した判定結果を良好な場合を○印で、良好ではない(好ましくない)場合を×印で示している。
良好な場合とは、全ての文字が2ビット以上消去でき、元の出力波形(アナログ信号)が残る場合をいい、良好ではない場合とは、特定ビットのみが消去されてしまう場合や文字内でパリティビットで補正できる数のビット(1ビット)しか消去できない箇所がある場合をいう。
【0071】
[1文字8ビットのとき]
図10は、本実施形態に係る疑似データ書き換え処理部の1文字8ビットのときの消去パターンを考察するための図である。
図10の例は、JIS−II型の磁気カードの1文字が8ビットの磁気データに対する消去パターンを検討した結果を示している。この例では、第1〜第21の21パターンについて検討した。図10では、最も上段に示されているパターンが第1のパターンであり、最も下段に示されているパターンが第21のパターンである。
以下に示す消去パターンのうち、1文字(キャラクタ)で特定のビットのみが消去されてしまうパターンは元の出力波形(アナログ信号)の真の磁気データ内容が予測することが可能となるおそれがあり、本実施形態では不適である。
また、1文字(キャラクタ)内でパリティビットで補正できるビット数(1ビット)しか消去できない箇所が発生するパターンは、真の磁気データを一部であっても復調することが可能であることから、本実施形態では不適である。
【0072】
上段の第1の消去パターンは、消去文字数ECNが1、消去サイクルECYが2、消去率ER(%)が50%の場合である。この第1の消去パターンの場合には、1文字(キャラクタ)で特定のビットのみが消去されてしまうことから、本実施形態には不適である。
次段の第2の消去パターンは、消去文字数ECNが1、消去サイクルECYが3、消去率ER(%)が33.3%の場合である。この第2の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0073】
次段の第3の消去パターンは、消去文字数ECNが1、消去サイクルECYが4、消去率ER(%)が25%の場合である。この第3の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことから、本実施形態には不適である。
次段の第4の消去パターンは、消去文字数ECNが1、消去サイクルECYが5、消去率ER(%)が20%の場合である。この第4の消去パターンの場合には、1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することから、本実施形態には不適である。
【0074】
次段の第5の消去パターンは、消去文字数ECNが2、消去サイクルECYが5、消去率ER(%)が40%の場合である。この第5の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
次段の第6の消去パターンは、消去文字数ECNが2、消去サイクルECYが6、消去率ER(%)が33.3%の場合である。この第6の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0075】
次段の第7の消去パターンは、消去文字数ECNが2、消去サイクルECYが7、消去率ER(%)が28.6%の場合である。この第7の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはなく、さらに、全ての文字(キャラクタ)が2ビット以上消去できて元のデータが最も残ることから、最適であり、本実施形態には適用することが可能である。
【0076】
次段の第8の消去パターンは、消去文字数ECNが2、消去サイクルECYが9、消去率ER(%)が22.2%の場合である。この第8の消去パターンの場合には、1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することから、本実施形態には不適である。
次段の第9の消去パターンは、消去文字数ECNが3、消去サイクルECYが9、消去率ER(%)が33.3%の場合である。この第9の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0077】
次段の第10の消去パターンは、消去文字数ECNが3、消去サイクルECYが10、消去率ER(%)が30%の場合である。この第10の消去パターンの場合には、1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することから、本実施形態には不適である。
次段の第11の消去パターンは、消去文字数ECNが4、消去サイクルECYが10、消去率ER(%)が40%の場合である。この第11の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0078】
次段の第12の消去パターンは、消去文字数ECNが4、消去サイクルECYが11、消去率ER(%)が36.4%の場合である。この第12の消去パターンの場合には、1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することから、本実施形態には不適である。
次段の第13の消去パターンは、消去文字数ECNが5、消去サイクルECYが11、消去率ER(%)が45.5%の場合である。この第13の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0079】
次段の第14の消去パターンは、消去文字数ECNが5、消去サイクルECYが12、消去率ER(%)が41.7%の場合である。この第14の消去パターンの場合には、1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することから、本実施形態には不適である。
次段の第15の消去パターンは、消去文字数ECNが6、消去サイクルECYが12、消去率ER(%)が50%の場合である。この第15の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0080】
次段の第16の消去パターンは、消去文字数ECNが6、消去サイクルECYが13、消去率ER(%)が46.2%の場合である。この第16の消去パターンの場合には、1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することから、本実施形態には不適である。
次段の第17の消去パターンは、消去文字数ECNが7、消去サイクルECYが13、消去率ER(%)が53.8%の場合である。この第17の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0081】
次段の第18の消去パターンは、消去文字数ECNが7、消去サイクルECYが14、消去率ER(%)が50%の場合である。この第18の消去パターンの場合には、1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することから、本実施形態には不適である。
次段の第19の消去パターンは、消去文字数ECNが8、消去サイクルECYが14、消去率ER(%)が57.1%の場合である。この第19の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0082】
次段の第20の消去パターンは、消去文字数ECNが8、消去サイクルECYが15、消去率ER(%)が53.3%の場合である。この第20の消去パターンの場合には、1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することから、本実施形態には不適である。
次段の第21の消去パターンは、消去文字数ECNが9、消去サイクルECYが15、消去率ER(%)が60%の場合である。この第21の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0083】
[1文字7ビットのとき]
図11は、本実施形態に係る疑似データ書き換え処理部の1文字7ビットのときの消去パターンを考察するための図である。
図11の例は、JIS−I型のトラック1の磁気カードの1文字が7ビットの磁気データに対する消去パターンを検討した結果を示している。この例では、18パターンについて検討した。図11では、最も上段に示されているパターンが第1のパターンであり、最も下段に示されているパターンが第18のパターンである。
以下に示す消去パターンのうち、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内でパリティビットで補正できるビット数(1ビット)しか消去できない箇所が発生するパターンは、真の磁気データを一部であっても復調することが可能であることから、本実施形態では不適である。
【0084】
上段の第1の消去パターンは、消去文字数ECNが1、消去サイクルECYが2、消去率ER(%)が50%の場合である。この第1の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
次段の第2の消去パターンは、消去文字数ECNが1、消去サイクルECYが3、消去率ER(%)が33.3%の場合である。この第2の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0085】
次段の第3の消去パターンは、消去文字数ECNが1、消去サイクルECYが4、消去率ER(%)が25%の場合である。この第3の消去パターンの場合には、1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することから、本実施形態には不適である。
次段の第4の消去パターンは、消去文字数ECNが2、消去サイクルECYが4、消去率ER(%)が50%の場合である。この第4の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0086】
次段の第5の消去パターンは、消去文字数ECNが2、消去サイクルECYが5、消去率ER(%)が40%の場合である。この第5の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0087】
次段の第6の消去パターンは、消去文字数ECNが2、消去サイクルECYが6、消去率ER(%)が33.3%の場合である。この第6の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはなく、さらに、全ての文字(キャラクタ)が2ビット以上消去できて元の出力波形(アナログ信号)が障害解析等ができる程度に残ることから、最適であり、本実施形態には適用することが可能である。
【0088】
次段の第7の消去パターンは、消去文字数ECNが2、消去サイクルECYが8、消去率ER(%)が25%の場合である。この第7の消去パターンの場合には、1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することから、本実施形態には不適である。
次段の第8の消去パターンは、消去文字数ECNが3、消去サイクルECYが8、消去率ER(%)が37.5%の場合である。この第8の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0089】
次段の第9の消去パターンは、消去文字数ECNが3、消去サイクルECYが9、消去率ER(%)が33.3%の場合である。この第9の消去パターンの場合には、1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することから、本実施形態には不適である。
次段の第10の消去パターンは、消去文字数ECNが4、消去サイクルECYが9、消去率ER(%)が44.4%の場合である。この第10の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0090】
次段の第11の消去パターンは、消去文字数ECNが4、消去サイクルECYが10、消去率ER(%)が40%の場合である。この第11の消去パターンの場合には、1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することから、本実施形態には不適である。
次段の第12の消去パターンは、消去文字数ECNが5、消去サイクルECYが10、消去率ER(%)が50%の場合である。この第12の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0091】
次段の第13の消去パターンは、消去文字数ECNが5、消去サイクルECYが11、消去率ER(%)が45.5%の場合である。この第13の消去パターンの場合には、1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することから、本実施形態には不適である。
次段の第14の消去パターンは、消去文字数ECNが6、消去サイクルECYが11、消去率ER(%)が54.5%の場合である。この第14の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0092】
次段の第15の消去パターンは、消去文字数ECNが6、消去サイクルECYが12、消去率ER(%)が50%の場合である。この第15の消去パターンの場合には、1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することから、本実施形態には不適である。
次段の第16の消去パターンは、消去文字数ECNが7、消去サイクルECYが12、消去率ER(%)が58.3%の場合である。この第16の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0093】
次段の第17の消去パターンは、消去文字数ECNが7、消去サイクルECYが13、消去率ER(%)が53.8%の場合である。この第17の消去パターンの場合には、1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することから、本実施形態には不適である。
次段の第18の消去パターンは、消去文字数ECNが8、消去サイクルECYが13、消去率ER(%)が61.5%の場合である。この第18の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0094】
図12は、本実施形態に係る疑似データ書き換え処理部の1文字5ビットのときの消去パターンを考察するための図である。
図12の例は、JIS−I型のトラック2または3の磁気カードの1文字が5ビットの磁気データに対する消去パターンを検討した結果を示している。この例では、12パターンについて検討した。図12では、最も上段に示されているパターンが第1のパターンであり、最も下段に示されているパターンが第12のパターンである。
以下に示す消去パターンのうち、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内でパリティビットで補正できるビット数(1ビット)しか消去できない箇所が発生するパターンは、真のデータを一部であっても復調することが可能であることから、本実施形態では不適である。
【0095】
上段の第1の消去パターンは、消去文字数ECNが1、消去サイクルECYが2、消去率ER(%)が50%の場合である。この第1の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
次段の第2の消去パターンは、消去文字数ECNが1、消去サイクルECYが3、消去率ER(%)が33.3%の場合である。この第2の消去パターンの場合には、1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することから、本実施形態には不適である。
【0096】
次段の第3の消去パターンは、消去文字数ECNが2、消去サイクルECYが3、消去率ER(%)が66.7%の場合である。この第3の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0097】
次段の第4の消去パターンは、消去文字数ECNが2、消去サイクルECYが4、消去率ER(%)が50%の場合である。この第4の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはなく、さらに、全ての文字(キャラクタ)が2ビット以上消去できて元の出力波形(アナログ信号)が障害解析等ができる程度に残ることから、最適であり、本実施形態には適用することが可能である。
【0098】
次段の第5の消去パターンは、消去文字数ECNが2、消去サイクルECYが6、消去率ER(%)が33.3%の場合である。この第5の消去パターンの場合には、1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することから、本実施形態には不適である。
次段の第6の消去パターンは、消去文字数ECNが3、消去サイクルECYが6、消去率ER(%)が50%の場合である。この第6の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0099】
次段の第7の消去パターンは、消去文字数ECNが3、消去サイクルECYが7、消去率ER(%)が42.9%の場合である。この第7の消去パターンの場合には、1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することから、本実施形態には不適である。
次段の第8の消去パターンは、消去文字数ECNが4、消去サイクルECYが7、消去率ER(%)が57.1%の場合である。この第8の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0100】
次段の第9の消去パターンは、消去文字数ECNが4、消去サイクルECYが8、消去率ER(%)が50%の場合である。この第9の消去パターンの場合には、1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することから、本実施形態には不適である。
次段の第10の消去パターンは、消去文字数ECNが5、消去サイクルECYが8、消去率ER(%)が62.5%の場合である。この第10の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0101】
次段の第11の消去パターンは、消去文字数ECNが5、消去サイクルECYが9、消去率ER(%)が55.6%の場合である。この第11の消去パターンの場合には、1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することから、本実施形態には不適である。
次段の第12の消去パターンは、消去文字数ECNが6、消去サイクルECYが9、消去率ER(%)が66.7%の場合である。この第12の消去パターンの場合には、特定のビットのみが消去されてしまうことや1文字(キャラクタ)内で1ビットしか消去できない箇所が発生することはないことから、本実施形態には適用することは可能である。
【0102】
以上,詳細に考察したように、本実施形態において、消去(書き換え)パターンは、シミュレーションを行って検討した結果、磁気データがJIS−II仕様に対応している場合、図10の第7の消去パターンのように、スキャン方向(水平方向)において7(8−1)ビットごとに、連続する2ビットを書き換える(消去する)処理を行うと、全ての文字(キャラクタ)が2ビット以上消去できて元の出力波形(アナログ信号)を障害解析等ができる程度に残すことができる。
【0103】
同様に、磁気データがJIS−Iのトラック1の仕様に対応している場合、図11の第6の消去パターンのように、スキャン方向(水平方向)において6(7−1)ビットごとに、連続する2ビットを書き換える(消去する)処理を行うと、全ての文字(キャラクタ)が2ビット以上消去できて元の出力波形(アナログ信号)を障害解析等ができる程度に残すことができる。
【0104】
同様に磁気データがJIS−Iのトラック2または3の仕様に対応している場合、図12の第4の消去パターンのように、スキャン方向(水平方向)において4(5−1)ビットごとに、連続する2ビットを書き換える(消去する)処理を行うと、全ての文字(キャラクタ)が2ビット以上消去できて元の出力波形(アナログ信号)を障害解析等ができる程度に残すことができる。
【0105】
この例は最も効率の良いパターンであるが、上述したように、1文字(キャラクタ)で特定のビットのみ消去されてしまうパターンや1文字(キャラクタ)内でパリティビットで補正できる数のビット(1ビット)しか消去できない箇所が発生するパターンは、本実施形態における疑似データの書き換え(消去)には不適であるといえる。
したがって、効率があまりよくない場合であっても、1文字(キャラクタ)で特定のビットのみ消去されてしまうパターンや1文字(キャラクタ)内でパリティビットで補正できる数のビット(1ビット)しか消去できない箇所が発生するパターンとならない限り、サイクル数と消去文字数を適宜選択してパターンを選択して適用することができる。
【0106】
[全体の動作]
図13は、本実施形態に係る情報媒体読取装置の全体的な動作概要を説明するためのフローチャートである。
次に、上述した構成を有すカードリーダ10の全体的な動作について、図13のフローチャートに関連付けて説明する。
【0107】
カード等を磁気ヘッド23に対して相対的に移動させることにより磁気ヘッド23よりアナログ信号S23が出力され(ステップST11)、このアナログ信号S23が読取処理部30に供給される。
読取処理部30では、磁気データのアナログ信号S23が2系統の第1の増幅器31および第2の増幅器32により増幅作用を受ける(ステップST12)。
そして、第1の増幅器31で増幅された磁気データは信号S31としてピーク検出部33に供給される。
第2の増幅器32で増幅された磁気データは信号32として、第2のコンパレータ35に供給され、かつ、疑似データ作成部40のA/D変換部41に供給される。
【0108】
ピーク検出部33においては、アナログ信号S31の磁気反転位置に生じているピーク位置が検出され(ステップST13)、検出結果が第1のコンパレータ34に供給される。
第1のコンパレータ34においては、ピーク位置検出を示す信号S33が、波形成形されて2値化したピーク間隔(インターバル)信号S34が形成され、タイミング発生部36に供給される。
また、第2のコンパレータ35においては、第2の増幅器32による磁気データのアナログ信号S32が、波形成形されて2値化データが得られる。
タイミング発生部36において、第1のコンパレータ34によるピーク間隔(インターバル)信号S34および第2のコンパレータ35による信号S35に従って、アナログ信号S31、S32のピーク出力に対応したタイミング信号S36が発生され(ステップST14)、タイミング信号S36が復調部37に供給される。
そして、復調部37においては、タイミング発生部36で発生されたタイミング信号S36に応じて、隣接するピーク位置同士の間の時間間隔が計時され、それによって得た間隔データに基づいて磁気データの復調が行われる(ステップST15)。
復調された磁気データは、ホスト装置50等に転送される。
【0109】
一方、疑似データ作成部40においては、増幅されたアナログ信号(磁気データ)がA/D変換部41によってA/D変換され(ステップST16)、時系列のデジタル値としてメモリ42に格納される(ステップST17)。
【0110】
ここで、疑似データ書き換え処理部43は、障害解析等を行うために、ホスト装置50等からの出力波形(アナログ信号)の提供要求を受けると(ステップST18)、要求のあったメモリ42に格納された磁気データが疑似データ書き換え処理部43により読み取られる(ステップST18)。
そして、疑似データ書き換え処理部43においては、読み取った磁気データを時系列のデジタル値としてメモリ42に格納され、時系列のデジタル値の一部が『ルールRL』に従って値“00h”に書き換え置換される(ステップST19)。
疑似データ書き換え処理部43においては、出力波形(アナログ信号)の提供要求を発行したホスト装置50等に対して、置換した擬似データが磁気ヘッドの出力波形として出力される(ステップST20)。
【0111】
[実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態のカードリーダ10によれば、疑似データ作成部40が、A/D変換部41、メモリ42、および疑似データ書き換え処理部43を含んで構成されている。
A/D変換部41は、読取処理部30の第2の増幅器32で増幅された磁気データをアナログ信号からデジタル信号に変換する。
メモリ42は、不揮発性メモリ等により構成することが可能で、A/D変換部41でA/D変換された磁気データをデジタル値として時系列に格納する。
疑似データ書き換え処理部43は、たとえば読取処理部30による磁気データの読み取り処理で、障害等が発生した場合に、障害等の解析を行うために、ホスト装置50等からの出力波形(アナログ信号)の提供要求に応じて、蓄積された磁気データの一部を疑似データに書き換えてホスト装置50に提供する。
疑似データ書き換え処理部43は、ホスト装置50からの出力波形(アナログ信号)の提供要求を受けると、メモリ42に格納されているデジタル値(磁気データ)を読み取り、1キャラクタ(1文字)を構成する数のビットのうち、垂直パリティビットで補正できるビット数より多い数のビットのデジタル値を疑似のデジタル値に書き換える。
換言すれば、疑似データ書き換え処理部43は、キャラクタ(1文字)を構成する数のビットのうち、垂直パリティビットで補正できるビット数より多い数の連続するまたは非連続の複数ビット(2ビット以上)のデジタル値を、真のデジタル値(真の磁気データ)と異なる値である疑似のデジタル値(擬似データ)、たとえば値“00h”に書き換えて(置換して)、真のデジタル値を消去する処理を行う。
疑似データ書き換え処理部43は、疑似データPSDで書き換えた磁気データを、出力波形(アナログ信号)の提供要求を発行したホスト装置50等に送信し、提供する。
本実施形態の疑似データ書き換え処理部43は、1キャラクタを構成するビット数(8、7または5)からスキャン方向(水平方向)に同じ位置ではなく異なる位置となるような数、たとえば1を減じたビット数ごとに、連続または非連続の少なくとも2ビットのデジタル値を疑似のデジタル値、たとえば“00h”に書き換える(消去する)。
【0112】
したがって、本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
本実施形態に係るカードリーダ10は、磁気データの読み取り失敗時に、カードリーダ10内のメモリ42に蓄えて有る磁気ヘッドの出力波形を調査することは障害解析において有用であることはもとより、障害解析で磁気ヘッドの出力波形を開示した場合、出力波形より具体的な磁気データを解析することができなくなるという利点がある。
既存の技術にように、実際に障害が発生した部分以外の箇所に顧客の個人データ等の重要なデータが含まれていた場合、これを復調することが可能になることを防止でき、障害解析時に磁気ヘッドの出力波形(アナログ信号)を開示するときにおいて既知の復調方法やデータ復元方法では磁気データの復調を不可能とすることが可能となる。
すなわち、本実施形態に係るカードリーダ10によれば、障害解析等で磁気ヘッドの出力波形(アナログ信号)を出力するとき、障害解析のために可能な限り元出力波形を残しつつ、既知の方法では確実な磁気データの復調を困難とすることが可能となる利点がある。
【0113】
換言すれば、本実施形態によれば、障害等の解析を行うために、ホスト装置等に出力された出力波形からは正確な復調が一文字もできなくなり、情報の保護が可能になる。
また、出力された出力波形からの正確な復調を防止しつつ、元の出力波形を障害等の解析をすることができる程度に残すことができる。
換言すれば、具体的な磁気データの復調ができない場合であっても、擬似データ作成部40から出力された出力波形(アナログ信号)からおおよその障害解析が可能である。
【0114】
[他の実施形態]
本実施形態では、カードMCが機械搬送方式で定速搬送され場合を例に説明したが、カード速度と同期させれば、スワイプ式、ディップ式のカードリーダにも応用することができる。また、上述した実施形態は、情報媒体としてカードを例に説明したが、本発明は、他の磁気情報が記録されたカードや通帳の情報媒体にも応用できる。
さらに、冗長符号を持つその他の記録方式にも応用が可能である。
【符号の説明】
【0115】
10・・・情報媒体読取装置、20・・・カード処理部、21・・・カード搬送路、22・・・カード搬送部、23・・・磁気ヘッド、30・・・読取処理部、31・・・第1の増幅器、32・・・第2の増幅器、33・・・ピーク検出部、34・・・第1のコンパレータ、35・・・第2のコンパレータ、36・・・タイミング発生部、37・・・復調部、40・・・疑似データ作成部、41・・・A/D変換部、42・・・メモリ(記憶部)、43・・・データ書き換え処理部、431・・・書き換え範囲設定部、432・・・フォーマット(パターン)設定部、433・・・疑似データ書き換え部、50・・・ホスト装置(上位装置)、MC・・・カード(情報媒体)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13