(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231824
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】ボルト軸力の設定方法
(51)【国際特許分類】
F16B 31/04 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
F16B31/04 Z
【請求項の数】2
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2013-184859(P2013-184859)
(22)【出願日】2013年9月6日
(65)【公開番号】特開2015-52339(P2015-52339A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】591209246
【氏名又は名称】濱中ナット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫
(72)【発明者】
【氏名】濱中 重信
【審査官】
熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−270909(JP,A)
【文献】
特開平10−103325(JP,A)
【文献】
特開昭48−033252(JP,A)
【文献】
特開昭63−270908(JP,A)
【文献】
国際公開第95/021333(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00−43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に雄ねじ(10A)が形成され両端部が開放され該両端部内面に雌ねじ(10B)が形成された円筒状ボルト(10)を加熱し、該加熱した円筒状ボルト(10)の内部に該円筒状ボルト(10)の内径よりも小径の応力ロッド(11)を挿入し、上記円筒状ボルト(10)の両端部内面の雌ねじ(10B)にボルト(12)を螺合させて応力ロッド(11)を圧縮することなく応力ロッド(11)の両端面に当接させることによって応力ロッド(11)の両端を上記円筒状ボルト(10)に取付けた後、
上記円筒状ボルト(10)を室温に戻すことによって、上記応力ロッド(11)によって円筒状ボルト(10)に軸方向引っ張り力を作用させ、
上記円筒状ボルト(10)の外周面に一対のナット(15)を螺合して該一対のナット(15)の間に部材(13、14)を挟持した後、
上記ボルト(12)を外して上記応力ロッド(11)による軸方向引っ張り力を解放して上記円筒状ボルト(10)を収縮させることによって、上記円筒状ボルト(10)を所定の軸力に設定するようにしたことを特徴とするボルト軸力の設定方法。
【請求項2】
応力ロッド(11)を冷却し、該応力ロッド(11)を、外周面に雄ねじが形成された円筒状ボルト(10)内に挿入して上記応力ロッド(11)の両端を治具(12)で上記円筒状ボルト(10)に取付けた後、
上記応力ロッド(11)を室温に戻して上記応力ロッド(11)によって上記円筒状ボルト(10)に軸方向引っ張り力を作用させ、
上記円筒状ボルト(10)の外周面に一対のナット(15)を螺合し、該一対のナット(15)の間に部材(13、14)を挟持した後、
上記治具(12)を外して上記応力ロッド(11)による軸方向引っ張り力を解放して上記円筒状ボルト(10)を収縮させることによって、上記円筒状ボルト(10)を所定の軸力に制御するようにしたことを特徴とするボルト軸力の設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボルト軸力の設定方法に関し、特にボルト・ナットで部材を締め付けた際に、ボルトを所望の軸力に安定に設定できるようにした方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ボルト・ナットを組み合わせ、ナットの締付け力によってボルトに軸方向の締付け力(ボルト軸力)を発生させ、部材を締結する方法はよく知られている。ボルト軸力は締結する部材や用途によって所定の範囲内になるようにナットの締付けトルクでコントロールされる。
【0003】
通常、ナットのねじりトルクとボルト軸力との間には、トルク係数値とねじの呼び径によって以下の関係にあることがよく知られている。
K=トルクN・m/ボルト径(mm)・ボルト軸力(KN)
但し、Kはトルク係数値である。
【0004】
しかし、トルク係数値Kを一定にコントロールしてボルト軸力のバラツキを小さくすることは非常に難しい。
【0005】
これに対し、板ばねの弾性反発力によってボルト軸力をコントロールする方法が提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平07−224823号公報
【特許文献2】特開2003−322220号公報
【特許文献3】特開2006−144838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1〜3記載の方法ではボルトに板ばねを常に設ける必要があって、構造が複雑かつ大型になってしまう。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑み、シンプルな構造によって所望のボルト軸力を安定に得られるようにしたボルト軸力の設定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明に係るボルト軸力の設定方法は、外周面に雄ねじが形成された円筒状ボルトを加熱し、該円筒状ボルトの内部に応力ロッドを挿入して該応力ロッドの両端を治具で上記円筒状ボルトに取付けた後、上記円筒状ボルトを室温に戻して上記応力ロッドによって上記円筒状ボルトに軸方向引っ張り力を作用させ、上記円筒状ボルトの外周面に一対のナットを螺合し、該一対のナットの間に部材を挟持した後、上記治具を外して上記応力ロッドによる軸方向引っ張り力を解放して上記円筒状ボルトを収縮させることによって、上記円筒状ボルトを所定の軸力に制御するようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るボルト軸力の設定方法は、応力ロッドを冷却し、該応力ロッドを、外周面に雄ねじが形成された円筒状ボルト内に挿入して上記応力ロッドの両端を治具で上記円筒状ボルトに取付けた後、上記応力ロッドを室温に戻して上記応力ロッドによって上記円筒状ボルトに軸方向引っ張り力を作用させ、上記円筒状ボルトの外周面に一対のナットを螺合し、該一対のナットの間に部材を挟持した後、上記治具を外して上記応力ロッドの軸方向引っ張り力を解放して上記円筒状ボルトを収縮させることによって、上記円筒状ボルトを所定の軸力に制御するようにしたことを特徴とする。
【0011】
本発明の特徴の1つは円筒状ボルトを加熱し又は応力ロッドを冷却し、円筒状ボルトに応力ロッドを挿入して治具で取付けた後、室温に戻して応力ロッドによって円筒状ボルトの軸方向の引っ張り力を加え、その状態で円筒状ボルト外周面に一対のナットを螺合させて部材を挟持し、最後に治具を外して軸方向引っ張り力を解放し、円筒状ボルトの軸力を制御するようにした点にある。
【0012】
これにより、円筒状ボルトと一対のナットとによって部材の締付けを行うことができ、構造を非常にシンプルにできる。
しかも、加熱又は冷却によって円筒状ボルトの伸び又は応力ロッドの収縮をコントロールすれば、所定のボルト軸力を安定に得ることができる。
【0013】
治具には六角ボルト又はキャップスクリューを用いることができ、円筒状ボルトの内面に雌ねじを形成して六角ボルト又はキャップスクリューを螺合させて応力ロッドを円筒状ボルトに取付けるようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るボルト軸力の設定方法の好ましい実施形態を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明に係るボルト軸力の設定方法の好ましい実施形態を示す。本例の方法によってボルト軸力を設定する場合、
図1の(a)に示されるように、外周面に雄ねじ10Aを形成し両端部内面に雌ねじ10Bを形成した円筒状ボルト10を準備する。円筒状ボルト10の応力ロッド11を収容する内面部分は円筒状でもよく、角筒状でもよい。
【0016】
次に、
図1の(b)(c)(d)に示されるように、円筒状ボルト10を所定の温度に加熱し、この円筒状ボルト10内に応力ロッド11を挿入し、円筒状ボルト10の両端部内面に六角ボルト(治具)12を螺合して応力ロッド11を圧縮することなく、その両端部を円筒状ボルト10の両端部に取付ける。
【0017】
この状態で円筒状ボルト10及び応力ロッド11を室温に戻すと、円筒状ボルト10が縮み、応力ロッド11に圧縮力が作用し、その反作用として円筒状ボルト10に軸方向引っ張り力が作用することとなる。
【0018】
この円筒状ボルト10及び応力ロッド11の組合せを部材13、14の穴に挿通し、
図1の(e)に示されるように、円筒状ボルト10の外周面に一対のナット12を螺合させて部材13、14を挟持する。
【0019】
最後に、
図1の(f)に示されるように、六角ボルト12を弛めて応力ロッド11を引き抜くと、部材13、14を所定のボルト軸力によって締付けることができる。
【0020】
今、円筒状ボルト10の長さをL1とし、これを所定の温度に加熱したときにL1+I1になったとする。次に、常温において円筒状ボルト10に引っ張り試験を行い、長さL1+I1になったときの引っ張り荷重を測定することができる。冷却によって円筒状ボルト10が縮もうとする荷重が応力ロッド11に加わって圧縮し、その反作用によって円筒状ロッド11には軸方向の引っ張り力が作用する。この応力ロッド11による軸方向引っ張り力を解放すると、円筒状ボルト11が縮み、ナット15の間のボルト軸力を測定することができる。
【0021】
図2は第2の実施形態を示し、図において
図1と同一符号は同一又は相当部分を示す。本例では応力ロッド11を冷却して(
図2(a)(b))、円筒状ロッド10内にセットし、室温に戻す(
図2(c)(d))以外は、第1の実施形態と同様である。このように応力ロッド11を冷却してもボルト軸力を設定できる。
【符号の説明】
【0022】
10 円筒状ボルト
10A 雄ねじ
10B 雌ねじ
11 応力ロッド
12 六角ボルト(治具)
13、14 部材
15 ナット