特許第6231834号(P6231834)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231834
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】オフセット印刷用非塗工紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21F 1/18 20060101AFI20171106BHJP
   D21H 19/12 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   D21F1/18
   D21H19/12
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-194310(P2013-194310)
(22)【出願日】2013年9月19日
(65)【公開番号】特開2015-59283(P2015-59283A)
(43)【公開日】2015年3月30日
【審査請求日】2016年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100202430
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 千香子
(74)【代理人】
【識別番号】100126169
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 淳子
(74)【代理人】
【識別番号】100130812
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 淳
(72)【発明者】
【氏名】山下 真貴子
(72)【発明者】
【氏名】轟 雅也
(72)【発明者】
【氏名】近藤 和奈
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 清満
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−131901(JP,A)
【文献】 特開2002−040700(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/015323(WO,A1)
【文献】 特開2009−155787(JP,A)
【文献】 特開2005−068611(JP,A)
【文献】 特開2012−206328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B1/00−1/38
D21C1/00−11/14
D21D1/00−99/00
D21F1/00−13/12
D21G1/00−9/00
D21H11/00−27/42
D21J1/00−7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1で定義されるシェーキング強度が4,500〜20,000(範囲)となるようワイヤーシェーキング装置を用いて抄紙機のワイヤーを振動させて原紙を抄造し、
次いで、該原紙の少なくとも片面に水溶性高分子を主成分とするクリア塗工層を設ける、
灰分が15重量%以上40重量%以下印刷用非塗工紙の製造方法
(式1)
シェーキング強度=振動数(Hz)×振幅(mm)/抄速(m/分)
【請求項2】
前記印刷用非塗工紙の引張強度の縦横比(T/Y比)が1.8以下である、請求項1に記載の印刷用非塗工紙の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷用非塗工紙に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷用非塗工紙は、顔料塗工層を有する印刷用塗工紙と異なり、原紙の地合が、印字品質に及ぼす影響が大きい。そのため、地合を改良するために、抄紙機でワイヤー速度とパルプスラリーのジェット流速度の比(J/W比)やワイヤー上での脱水パターンを調整する、抄紙機のワイヤーパート上にシェーキング装置を設けることなどが行われていた。
【0003】
シェーキング装置を用いた方法としては、原紙の表面の配向角と裏面の配向角との差を規定したオフセット輪転印刷用塗工紙において、ワイヤーシェーキング装置を用いて製造する方法が開示されていたり(特許文献1)、シェーキング強度を特定値として製造するインクジェット記録媒体(特許文献2)、同装置を用いて製造する記録用紙(特許文献3)、写真印画紙用支持体(特許文献4)などが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−91930号公報
【特許文献2】特開2012−206328号公報
【特許文献3】特開2009−121004公報
【特許文献4】特開2004−37546公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高灰分でも地合が良好で寸法安定性に優れたオフセット印刷に好適である印刷用非塗工紙である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、原紙の灰分が高くても、シェーキング条件を特定の値とすることにより、填料の分散を高め、地合が良好で、引張強度の縦横の値の差が小さく、寸法安定性に優れるオフセット印刷用非塗工紙を製造できることを見いだし、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高灰分でも地合が良好で寸法安定性に優れたオフセット印刷用非塗工紙を製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の印刷用非塗工紙は、基紙(以下、本明細書において、「原紙」ということがある)と、該基紙上の片面あるいは両面に少なくとも一層のクリア塗工層を有しており、白色顔料を含む顔料塗工層は有しない。ここでクリア塗工層(以下、本明細書において、サイズプレス層ということがある)とは、水溶性高分子が主成分の接着剤を主成分とし、白色顔料を含まない塗工層を意味する。本発明の印刷用非塗工紙は、オフセット印刷、グラビア印刷、凸版印刷などに用いることができる。特にオフセット印刷に好適である。本発明の印刷用非塗工紙の坪量は、40g/mを超えるものであるが、坪量の上限は特に限定されないが、例えば、220g/mとすることができる。
【0009】
クリア塗工
本発明の印刷用非塗工紙は、原紙の片面または両面に、特定の粘度特定を有する澱粉系高分子を含むクリア塗工液を塗布し、クリア(透明)塗工層を有する。本発明においてクリア塗工とは、例えば、ポンド式2ロールサイズプレス、フィルム転写方式としてゲートロールコータやロッドメタリングサイズプレス、カーテンコータ、スプレーコータなどのコータ(塗工機)を使用して、クリア塗工液を原紙上に塗布することをいう。 本発明においては、塗工量に制限のあるフィルム転写方式のコーターにおいて、特に効果を発揮する。
【0010】
引張強度の縦横比
本発明の印刷用非塗工紙は、引張強度の縦横比(T/Y)比が、2.0以下、好ましくは1.85以下、より好ましくは、1.65以下である。本発明の引張強度は、JIS P 8113に従って測定されるもので、紙の縦と横方向で、既定の条件によって引っ張り、破断する前の最大引張荷重を幅1m当たりに換算した値である。紙の縦方向とは、抄紙時の繊維の流れ方向をいい、横方向とは、繊維の流れ方向に直行する方向を言う。引張強度の縦方向の値と横方向の値が、同じ値に近づけば近づくほど、すなわちT/Y比が1に近くなればなるほど、紙の寸法安定性は向上する。特に、オフセット輪転機の場合、印刷工程における湿し水浸透時の寸法伸張、並びに乾燥工程における加熱時の寸法収縮は小さくなり、印刷用非塗工紙として品質適性・加工適性が向上する。
【0011】
シェーキング強度
本発明の印刷用非塗工紙は、下記式1で定義されるシェーキング強度が、4500〜20,000、好ましくは、6,000〜16,000であるワイヤーシェーキング装置を用いて、抄紙機のワイヤーを振動させて抄造されたものである。
式1
シェーキング強度=振動数(Hz)×振幅(mm)/ワイヤー速度(m/分)
【0012】
本発明のシェーキング装置とは、抄紙機のワイヤーを振動させることができるものであれば特に限定されないが、例えば以下の装置を挙げることができる。摺動システムはシェーキング装置本体とブレストロールで構成され、シェーキング装置本体内部の2組のアンバランスマスを回転させる事で抄紙機幅方向へのシェーキング力を与え、その力はシェークロッドを介してブレストロール軸方向に伝達、ブレストロールはカウンターウェイトに相当しシェーク・ゼネレーターの運動量バランスを維持するため、マシンフレーム等の外部に力が伝達されること無く、ブレストロールを幅方向に動かせる構造となっている。シェーキングの振動数はサーボモータ速度により、振幅はマス・ペアの位相角によって調整される機構となっている。ブレストロールは操作側駆動側共に幅方向に稼動可能な軸受け構造となっておりシェーキング装置本体からのシェーキング力により、幅方向にブレストロールが動く構造となっている。シェーキング強度は、上述の式1で算出されるが、振幅が大きい方が、地合およびT/Y比の値も良好となる傾向がある。
しかし、坪量が低い印刷用非塗工紙は振幅を大きくすると、抄紙工程における断紙やカッター断裁工程におけるつまみ皺などができ発生しやすい傾向がある。
上記のことから、坪量が100g/m未満の印刷用非塗工紙の製造においては、シェーキング強度が4,500〜10,000,より好ましくは6,000〜10,000であり、坪量100g/m以上の印刷用非塗工紙の製造においては、10,000から20,000、好ましくは12,000〜16,000が適している。
【0013】
また、坪量100g/mを超える印刷用非塗工紙では、上記の条件でシェーキングすることにより地合が改善する効果が大きく、坪量100g/m以下の印刷用非塗工紙では、引張強度縦横比が低下し寸法安定性が向上する効果や収縮率低下の効果が大きい。収縮率とは抄紙機乾燥工程前後におけるシート巾寸法の変化度合いを指す。パルプ繊維が縦方向に多く配向しているほど、乾燥工程にてシート巾は小さくなり、収縮率は大きくなる。収縮率が低い方が寸法安定性が高いといえる。本発明においては、坪量100g/m以下の低坪量の印刷用非塗工紙において、収縮率の低減、すなわち寸法安定性の向上効果が顕著である。
【0014】
繊維配向指数
本発明において、繊維配向指数とは、紙の繊維の配向を示すもので、数値は、「0〜1」の範囲で表される。配向指数が1に近いほど配向性が強く、0に近いほど配向性が弱い(ランダムな方向に配向している)である。一般的に繊維配向指数は、0.02異なれば有意差とされている。配向指数は、坪量や抄紙条件により変わり、一般的には低坪量のものほど、配向指数は大きくなる傾向にある。よって、配向指数の変化を見る場合は、同坪量帯で比較する。
配向指数はワイヤーパート工程における初期脱水完了時点でほぼ決定されるため、本発明においては、初期脱水が完了する前に、特定の強さでワイヤーをシェーキングすることで配向を乱すことにより、T/Y比を適切な値にしている。
【0015】
紙中灰分
本発明の印刷用非塗工紙の紙中灰分は、15重量%以上40重量%以下である。紙中灰分を、15重量%以上40重量%以下とするためには、原紙に添加する填料の量を調整する。本発明において灰分は、JIS P 8251に規定される紙および板紙の灰分試験方法に準拠し、燃焼温度を525±25℃に設定した方法で測定される。一般に灰分は、紙に含まれる無機物の量を示すため、基本的に紙中に含まれる填料の量を反映する。紙の灰分は、紙料に添加されるフレッシュな填料に由来するものと、DIP(古紙パルプ、脱墨パルプ)などのパルプ原料によって持ち込まれるもので構成される。DIPによって持ち込まれる灰分としては、炭酸カルシウムが比較的多いが、炭酸カルシウム以外の無機成分も含まれ、炭酸カルシウムと他の無機成分との割合は、新聞古紙や雑誌古紙などの古紙の種類や回収状況などによって異なる。
【0016】
昨今、木質原料の使用削減や軽量化、コストダウンのため、紙中の灰分量を増加させる取り組みは行われている。灰分は、印刷用非塗工紙においては、現用パルプに添加する填料の量とほぼ同程度と考えられるが、填料を増加させると、填料が紙中で分散しにくくなり、できあがった印刷用非塗工紙の紙表面の地合を悪化させることがある。特に、顔料塗工層を設けない印刷用非塗工紙では、原紙の地合が印刷用紙としての印刷面感に大きな影響を及ぼす。
【0017】
本発明においては、紙中灰分が15重量%以上において、原紙のシェーキング強度を4,500以上とすることにより、地合が良好で印刷面感に優れた印刷用非塗工紙を製造することができる。
【0018】
原紙
[原料パルプ]
本発明で製造される印刷用非塗工紙のパルプ原料としては、特に限定されるものではなく、グランドパルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、脱墨パルプ(DIP)、針葉樹クラフトパルプ(NKP)など、一般的に抄紙原料として使用されているものであればよい。
【0019】
[填料]
本発明の紙に使用される填料は、紙中灰分が紙の絶乾重量に対し、15重量%以上、さらに好ましくは18重量%以上となるように添加することが好ましい。灰分の上限は特にないが、紙の強度や操業性を考慮すると、40重量%以下であることが好ましい。
原紙に添加する填料としては、例えば、重質炭酸カルシウムや軽質炭酸カルシウムなどの炭酸カルシウム、酸化チタン、クレー、シリカ、タルク、カオリン、焼成カオリン、デラミカオリン、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、酸化亜鉛、酸化珪素、非晶質シリカ、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、酸化チタン、ベントナイトなどの無機填料;尿素−ホルマリン樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、微小中空粒子等の有機填料;を単独または適宜2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、製紙スラッジや脱墨フロス等を原料とした再生填料も使用することができる。
特に、本発明においては、安価でかつ光学特性に優れていることから、炭酸カルシウムを填料として使用することが好ましい。また、炭酸カルシウム−シリカ複合物(例えば、特開2003−212539号公報あるいは特開2005−219945号公報等に記載の軽質炭酸カルシウム−シリカ複合物)などの複合填料も使用可能である。酸性抄紙では、前記中性抄紙で使用する填料から、酸溶解性のものを除いた填料が使用され、その単独または適宜2種類以上を組み合わせて使用される。
【0020】
[クリア塗工]
本発明においては、原紙上に設けるクリア塗工液(サイズプレス液ともいう)に各種水溶性高分子化合物を好適に使用することができる。澱粉とは、アミロース、アミロペクチンからなる混合物のことをいい、一般に、その混合比は澱粉の原材料である植物によって異なる。
【0021】
本発明のクリア塗工液中の水溶性高分子化合物の含有量は、5重量%〜40重量%の範囲で、目標とする塗工量にあわせて濃度を調整する。
【0022】
水溶性高分子化合物としては、各種加工澱粉を始めとする澱粉、澱粉を加水分解して得られるデキストリン、生澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、カチオン化澱粉、酵素変性澱粉、アルデヒド化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉などの澱粉;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体;ポリビニルアルコール、カルボキシル変性ポリビニルアルコールなどの変性アルコール;スチレンブタジエン共重合体、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリルアミドなどを適宜1種以上使用できる。また、紙に吸水抵抗性を付与するために、前記の水溶性高分子物質の他に、スチレンアクリル酸、スチレンマレイン酸、オレフィン系化合物、アルキル(メタ)アクリレート系化合物など一般的な表面サイズ剤を併用塗布することができるが、中性抄紙の場合、サイズ剤のイオン性がカチオン性であるものを塗布することが好ましい。
【0023】
クリア塗工の量は、フィルム転写塗工の場合は片面あたり固形分で0.5g/m〜2.0g/m、2ロールサイズプレスの場合は片面あたり固形分で2.0g/m〜4.0g/mが好ましい
本発明においては、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、耐水化剤、着色剤等、通常のクリア塗工に配合される各種助剤を適宜使用できる。
【0024】
[その他添加剤]
本発明においては、内添用として、公知の製紙用添加剤を使用することができる。製紙用薬品は、特に制限されず、種々の薬品を単独または組み合わせて用いることができる。例えば、例えば、歩留剤、濾水性向上剤、凝結剤、硫酸バンド、ベントナイト、シリカ、サイズ剤、乾燥紙力剤、湿潤紙力剤、嵩高剤、填料、染料、蛍光増白剤、pH調整剤、消泡剤、紫外線防止剤、退色防止剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤などの製紙用薬品を用いることができる。中でも、短時間で紙料との混合ができるという本発明の効果を大きく享受できる点で、製紙用薬品として歩留剤を添加することが特に好ましい。歩留剤の他、本発明の製紙用薬品として好適に使用できるものとしては、ポリアクリルアミド系高分子、ポリビニルアルコール系高分子、カチオン性澱粉、各種変性澱粉、尿素・ホルマリン樹脂、メラミン・ホルマリン樹脂などの内添乾燥紙力増強剤;ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂などの内添湿潤紙力増強剤;ロジン系サイズ剤、AKD系サイズ剤、ASA系サイズ剤、石油系サイズ剤、中性ロジンサイズ剤などの内添サイズ剤;などを挙げることができる。
【0025】
これらの助剤は、本発明の填料のスラリーに予め添加してから抄紙機に施用してもよく、また、本発明の填料のスラリーと別々に抄紙機に施用してもよい。
【0026】
[抄紙方法・抄紙機]
上記のようにして製紙用薬品を混合された紙料は、ヘッドボックスに送られ、ヘッドボックスからワイヤーに噴射されて抄紙される。本発明は、種々の抄紙機や抄紙法に適用することができる。抄紙機としては例えば、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、ギャップフォーマー抄紙機、ヤンキー抄紙機等で適宜抄紙できるが、特に地合が悪化しやすいツインワイヤー抄紙機でも、本発明の効果を有意に発揮させることができる。ツインワイヤー抄紙機としては、ギャップフォーマー、オントップフォーマーなどが挙げられる。
本発明の抄紙系は、特に制限されず、中性紙でも酸性紙でもよいが、本発明の紙が炭酸カルシウムを比較的多く含有する場合、中性紙であることが好ましい。具体的には、本発明においては、紙面pHが6.0〜9.0であることが好ましく、6.8〜8.0であることがより好ましい。抄紙速度は、特に限定されない。
【0027】
[原紙の坪量]
本発明の原紙の坪量は特に限定されないが、41g/mを超えることが好ましい。原紙の坪量の上限は特に制限されないが、例えば、220g/mとすることができる。さらに、本発明においては、抄造した原紙に種々の表面処理を施すことができる。
【0028】
本発明において、原紙表面に表面処理剤を塗工する場合、例えば、プレドライヤーとアフタードライヤーの間に設置された表面塗工装置を利用することができる。塗工装置は、一般に使用されるもの用いることができ、印刷用紙用の抄紙機ではゲートロールサイズプレスなどのフィルムトランスファー型のサイズプレスが一般的に用いられ、本発明においても好ましく用いることができる。
【0029】
本発明においては、オンラインソフトキャレンダ、オンラインチルドカレンダなどにより塗工前の原紙にプレカレンダー処理を行い、原紙を予め平滑化しておくこともできる。
【0030】
本発明において、湿潤塗工層を乾燥させる方法に制限はなく、例えば蒸気過熱シリンダ、加熱熱風エアドライヤ、ガスヒータードライヤ、電気ヒータードライヤ、赤外線ヒータードライヤ等各種の方法が単独もしくは併用して用いることができる。
【0031】
本発明においては、紙表面にカレンダー処理を施すこともできるが、カレンダー装置の種類と処理条件は特に限定はなく、金属ロールから成る通常のカレンダーやソフトニップカレンダー、高温ソフトニップカレンダーなどの公用の装置を適宜選定し、品質目標値に応じて、これらの装置の制御可能な範囲内で条件を設定すればよい。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例を比較例と対比しつつ具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、説明中、「%」および「部」は特に断らない限り、「重量パーセント」および「重量部」を示す。また、材料添加率については、特に指定が無い場合は、固形分の添加率を示す。
【0033】
[品質評価方法]
本発明の印刷用非塗工紙の紙質は、下記に規定される方法に準じて測定した。
1)坪量:ISO536
(2)紙中灰分:ISO1762
(3)地合指数:ハネウェル社製のBM計(型式Mx Open)に搭載している地合計のフロックインテンシティーにより測定した。フロックインテンシティーの数値が小さいほど地合は良好である。
(4)引張強度(N/m):JIS P 8113に基づいて、紙の縦(抄紙流れ)方向と横方向(抄紙流れと直行する方向)を測定した。
(5)収縮率
プレスパートのセンターロール出口のシート巾(a)、並びにリールパートのシート巾(b)を測定した上で、下記計算式によりマシン乾燥工程による収縮率を算出した。
式2
収縮率(%)={(a)−(b)}/(a)×100
(6)繊維配向指数
野村商事(株)SST−250を使用して、紙サンプルの繊維配向指数を測定した。配向指数は0〜1の範囲で規定される。配向指数が1に近いほど配向性が強く、0に近いほど配向性が弱い(ランダムな方向に配向している)となる。抄紙機を使用した紙生産の場合、配向指数が1に近いほど抄紙方向に配向しており、0に近いほどランダムな方向に配向していると解釈できる。
【0034】
[実施例1]
製紙用原料パルプとしてLBKP(濾水度400ml、CSF)のスラリーに、パルプ固形分に対し液体硫酸バンドを0.5重量%(有姿)添加し、製品灰分が18%になるように填料として軽質炭酸カルシウム(奥多摩工業社製「TP−121」)を添加し、対パルプ固形分250ppmの歩留まり向上剤を添加した後、ツインワイヤー型抄紙機を用いてワイヤー速度704m/分で坪量52.3g/mとなるように抄紙し、オンマシンのゲートロールコーターを用いて、ヒドロキシエチル化澱粉(Tate&Lyle社製Ethylex2015)をフェルト面、ワイヤー面の両面に均等に合計2.5g/m塗工し、マシンカレンダーで処理し、印刷用非塗工紙を得た。抄紙時のシェーキングは、振幅15mm、振動数570Hz、シェーキング強度は、6924であった。
【0035】
[実施例2]
ワイヤー速度713m/分、原紙坪量を64.0g/mとした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。抄紙時のシェーキングは、振幅15mm、振動数570Hz、シェーキング強度は、6832であった。
【0036】
[実施例3]
ワイヤー速度706m/分、原紙坪量を81.4g/mとした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。抄紙時のシェーキングは、振幅15mm、振動数570Hz、シェーキング強度は、6902であった。
【0037】
[実施例4]
ワイヤー速度750m/分とし、振動数を475Hzとした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。シェーキング強度は、4809であった。
【0038】
[実施例5]
ワイヤー速度755m/分、原紙坪量を64g/mとし、振動数を475Hzとした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。シェーキング強度は、4744であった。
【0039】
[実施例6]
ワイヤー速度750m/分、原紙坪量を81.4g/mとし、振動数を475Hzとした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。シェーキング強度は、4793であった。
【0040】
[実施例7]
ワイヤー速度737m/分、原紙坪量を64g/mとし、振幅を25mm、振動数を475Hzとした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。シェーキング強度は、7652であった。
【0041】
[実施例8]
ワイヤー速度438m/分、原紙坪量を104.7g/m、振幅25mm、振動数475Hzとした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。シェーキング強度は、12880であった。
【0042】
[実施例9]
ワイヤー速度406m/分、原紙坪量を127.9g/m、振幅25mm、振動数475Hzとした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。シェーキング強度は13887であった。
【0043】
[実施例10]
ワイヤー速度365m/分、原紙坪量を157g/m、振幅25mm、振動数475Hzとした以外は、実施例1と同様の方法で印刷用非塗工紙を得た。シェーキング強度は、15461であった。
【0044】
[比較例1]
抄紙時のシェーキング条件を、振幅5mm、振動数570Hz、シェーキング強度2320とした以外は、実施例2と同様にして印刷用非塗工紙を得た。
【0045】
[比較例2]
抄紙時にシェーキングなしとした以外は、実施例2と同様にして、印刷用非塗工紙を得た。
【0046】
[比較例3]
抄紙時にシェーキングなしとした以外は、実施例3と同様にして、印刷用非塗工紙を得た。
【0047】
[比較例4]
抄紙時にシェーキングなしとした以外は、実施例10と同様にして、印刷用非塗工紙を得た。
【0048】
【表1】
【0049】
表1に結果を示す。表1の結果から、同坪量で比較すると、例えば、実施例2と比較例1、2など、実施例の方が地合の良好度を示すフロックインテンシティーの値、収縮率、繊維配向性が改善していることが分かる。また、引張強度の縦横比は、実施例においてはいずれも2.0以下であり、寸法安定性に優れる。