特許第6231836号(P6231836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231836
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】射出成形金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/73 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
   B29C45/73
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2013-196639(P2013-196639)
(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公開番号】特開2015-63013(P2015-63013A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208765
【氏名又は名称】株式会社エンプラス
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 将臣
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−195443(JP,A)
【文献】 特開2003−039437(JP,A)
【文献】 特開平08−216161(JP,A)
【文献】 特開2013−014075(JP,A)
【文献】 特開平11−058465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/26−45/44
B29C 45/64−45/68
B29C 45/73
B29C 33/00−33/76
B22D 17/22
B29L 21:00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型と、この固定型に対して型締め・型開きができるようになっている可動型と、を有する射出成形金型であって、
前記可動型は、可動型本体と、この可動型本体に相対回動可能に取り付けられ且つキャビティを形作るためのキャビティ形成用空間である穴が形成された成形品駒と、を有し、
前記成形品駒の前記キャビティ形成用空間内には、型締め時に、前記可動型本体の軸型が嵌合され、
前記キャビティは、型締め時に、前記成形品駒、前記成形品駒の前記キャビティ形成用空間内に嵌合された前記軸型、及び前記固定型によって形成され、
前記成形品駒は、前記キャビティ形成用空間を取り囲む環状のキャビティ冷却流路と、前記キャビティ冷却流路に冷却液を導き入れる駒側供給流路と、前記キャビティ冷却流路から冷却液を導き出す駒側排出流路と、が形成され、
前記可動型本体は、型締め時、及び型開き後で且つ少なくとも前記成形品駒が移動を開始するまでの間、前記駒側供給流路に接続される可動型本体側供給流路と、前記駒側排出流路に接続される可動型本体側排出流路と、を有し、
前記可動型本体側供給流路、前記駒側供給流路、前記キャビティ冷却流路、前記駒側排出流路、及び前記可動型本体側排出流路は、冷却液が負圧によって流動させられるようになっている冷却液循環装置に接続され、
前記キャビティは、前記駒側供給流路、前記キャビティ冷却流路、及び前記駒側排出流路内の冷却液によって空気層を介することなく冷却される、
ことを特徴とする射出成形金型。
【請求項2】
前記成形品駒は、前記可動型本体に相対回動可能に取り付けられ、前記キャビティ内から前記成形品が取り出される際に前記可動型本体に対して回動する、
ことを特徴とする請求項1に記載の射出成形金型。
【請求項3】
前記駒側供給流路は、前記成形品駒が前記可動型本体に対して停止している場合及び前記成形品駒が前記可動型本体に対して相対回動した場合でも、前記成形品駒と前記可動型本体とのいずれか一方の摺動面で且つ前記成形品駒の回動中心軸の周りに形成された第1の周方向溝によって前記可動型本体側供給流路に常時接続され、
前記駒側排出流路は、前記成形品駒が前記可動型本体に対して停止している場合及び前記成形品駒が前記可動型本体に対して相対回動した場合でも、前記成形品駒と前記可動型本体とのいずれか一方の摺動面で且つ前記成形品駒の回動中心軸の周りに形成された第2の周方向溝によって前記可動型本体側排出流路に常時接続される、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の射出成形金型。
【請求項4】
前記成形品駒が前記可動型本体に対して所定角度回動する毎に、前記可動型本体側供給流路が前記駒側供給流路に接続され、前記可動型本体側排出流路が前記駒側排出流路に接続されるように、前記駒側供給流路又は前記駒側排出流路となり得る複数の流路が前記成形品駒に設けられた、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の射出成形金型。
【請求項5】
前記成形品駒は、前記可動型本体に対して回動した後、前記可動型と前記固定型とが型締めされる際に、前記可動型本体に対する回動前の位置に元位置復帰手段によって戻されるようになっており、
前記元位置復帰手段は、前記成形品駒に形成されたカム面と、前記固定型の前記成形品駒に対向する箇所に配置されたカム面押圧突起と、を有し、
前記カム面押圧突起は、前記成形品駒が前記可動型本体に対して回動した後、前記可動型本体と前記固定型とが型締めされる際に、前記カム面を押圧することにより、前記成形品駒を前記可動型本体に対する回動前の位置に戻すようになっている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の射出成形金型。
【請求項6】
固定型と、この固定型に対して型締め・型開きができるようになっている可動型と、を有する射出成形金型であって、
前記可動型は、可動型本体と、この可動型本体にスライド移動可能に取り付けられた成形品駒と、を有し、
前記成形品駒は、第1成形品駒と第2成形品駒に二分割された割型であり、前記第1成形品駒と前記第2成形品駒とが突き合わせられた状態において、内側に棒状のキャビティ形成用空間が形成され、前記第1成形品駒と前記第2成形品駒とが突き合わせられた状態から離れる方向にスライド移動させられるようになっており、
前記キャビティは、型締め時に、前記成形品駒、前記成形品駒の前記キャビティ形成用空間内に収容された軸型、及び前記固定型によって形成され、
前記第1成形品駒及び前記第2成形品駒は、前記キャビティ形成用空間に沿うように形成された半円筒状のキャビティ冷却流路と、前記キャビティ冷却流路に冷却液を導き入れる駒側供給流路と、前記キャビティ冷却流路から冷却液を導き出す駒側排出流路と、が形成され、
前記可動型本体は、前記駒側供給流路に常時接続される可動型本体側供給流路と、前記駒側排出流路に常時接続される可動型本体側排出流路と、を有し、
前記第1成形品駒と前記可動型本体とのいずれか一方の摺接面には、前記第1成形品駒の前記駒側供給流路と前記可動型本体側供給流路とを前記第1成形品駒のスライド方向に沿って常時接続する第1の長溝が形成されると共に、前記第1成形品駒の前記駒側排出流路と前記可動型本体側排出流路とを前記第1成形品駒のスライド方向に沿って常時接続する第2の長溝が形成され、
前記第2成形品駒と前記可動型本体とのいずれか一方の摺接面には、前記第2成形品駒の前記駒側供給流路と前記可動型本体側供給流路とを前記第2成形品駒のスライド方向に沿って常時接続する第3の長溝が形成されると共に、前記第2成形品駒の前記駒側排出流路と前記可動型本体側排出流路とを前記第2成形品駒のスライド方向に沿って常時接続する第4の長溝が形成され、
前記可動型本体側供給流路、前記駒側供給流路、前記キャビティ冷却流路、前記駒側排出流路、及び前記可動型本体側排出流路は、冷却液が負圧によって流動させられるようになっている冷却液循環装置に接続され、
前記キャビティは、前記駒側供給流路、前記キャビティ冷却流路、及び前記駒側排出流路内の冷却液によって空気層を介することなく冷却される、
ことを特徴とする射出成形金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、射出成形金型に関するものであり、特に、キャビティの冷却構造に特徴を有する射出成形金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図18は、はすば歯車等の成形中にギヤ駒(成形品駒)100が回転する機構を有すると共に、ギヤ駒100を冷却するための冷却機構101を有する射出成形金型102を示す図である。この図18に示す従来の射出成形金型102は、はすば歯車等の成形品を形作るためのキャビティ103が形成されたギヤ駒100と、このギヤ駒100のうちのキャビティ103を取り囲む部分に形成された固定駒収容溝104内に相対回動可能に係合された固定駒105と、を有している。そして、この従来の射出成形金型102は、固定駒105の内部に冷却用水路106が形成され、この固定駒105の冷却用水路106を流れる水によってギヤ駒100が冷却されるようになっている。
【0003】
このような構成の従来の射出成形金型102は、ギヤ駒100が固定駒105の周りに回動でき、ギヤ駒100が固定駒105の冷却用水路106を流れる水によって冷却される(固定駒105を介して間接的に冷却される)ことにより、はすば歯車(成形品)の局部的な収縮差に起因する成形不良を低減すると共に、はすば歯車の射出成形に要するサイクルタイムの短縮を図っている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−130902号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図18に示した従来の射出成形金型102は、固定駒105がギヤ駒100の固定駒収容溝104内に係合されるようになっており、固定駒105の外表面と固定駒収容溝104の内面との間に空気層が形成されるため、ギヤ駒100と固定駒105との間の熱伝導が空気層によって妨げられ、ギヤ駒(キャビティ内の成形品)100の冷却が不十分であった。
【0006】
また、図18に示した従来の射出成形金型102は、固定駒105とこの固定駒105が取り付けられるバックアッププレート107との間にシール用のOリング108A,108Bを配置し、固定駒105に形成された冷却用水路106から水が漏洩するのを防止するようになっているため、水の密封構造(Oリング108A,108B及びOリング収容溝110A,110B)を設ける分だけ金型構造が複雑化するという問題を有していた。
【0007】
そこで、本発明は、キャビティ内の成形品の冷却を効果的に行うことができ且つ簡単な構造の射出成形金型の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、固定型と、この固定型に対して型締め・型開きができるようになっている可動型と、を有する射出成形金型に関するものである。この発明において、前記可動型は、可動型本体と、この可動型本体に相対回動可能に取り付けられ且つキャビティ16を形作るためのキャビティ形成用空間14である穴が形成された成形品駒と、を有している。そして、前記成形品駒6の前記キャビティ形成用空間14内には、型締め時に、前記可動型本体5の軸型7が嵌合される。また、前記キャビティ16は、型締め時に、前記成形品駒6、前記成形品駒6の前記キャビティ形成用空間14内に嵌合された前記軸型7、及び前記固定型3によって形成されている。また、前記成形品駒は、前記キャビティ形成用空間14を取り囲むように形成された環状のキャビティ冷却流路30と、前記キャビティ冷却流路30に冷却液を導き入れる駒側供給流路31と、前記キャビティ冷却流路30から冷却液を導き出す駒側排出流路32と、が形成されている。また、前記可動型本体は、型締め時、及び型開き後で且つ少なくとも前記成形品駒が移動を開始するまでの間、前記駒側供給流路31に接続される可動型本体側供給流路34と、前記駒側排出流路32に接続される可動型本体側排出流路35と、を有している。また、前記可動型本体側供給流路34、前記駒側供給流路31、前記キャビティ冷却流路30、前記駒側排出流路32、及び前記可動型本体側排出流路35は、冷却液が負圧によって流動させられるようになっている冷却液循環装置36に接続されている。そして、前記成形品駒の前記キャビティ16は、前記駒側供給流路31、前記キャビティ冷却流路30、及び前記駒側排出流路32内の冷却液によって空気層を介することなく冷却されるようになっている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、キャビティ内の成形品の熱が成形品駒に伝導され、成形品駒の熱が空気層を介することなく成形品駒のキャビティ冷却流路、駒側供給流路、及び駒側排出流路を流動する冷却液に直接伝達されるため、キャビティ内の成形品が効果的に冷却される。したがって、本発明によれば、成形品の局部的な収縮差に起因する成形不良を低減することができると共に、射出成形のサイクルタイムを短縮することが可能になる。
【0010】
また、本発明によれば、冷却液は、可動型本体側供給流路、駒側供給流路、キャビティ冷却流路、駒側排出流路、及び可動型本体側排出流路を、冷却液循環装置によって負圧で流動させられるようになっているため、成形品駒と可動型本体とが相対移動する部位に冷却液の漏洩を防止するための密封構造を設ける必要がなく、射出成形金型の部品点数を削減できると共に、射出成形金型の金型構造を簡単化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る射出成形金型の型締め時における縦断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る射出成形金型の型開き時における縦断面図である。
図3】ギヤ駒(成型品駒)を示す図である。図3(a)がギヤ駒の平面図であり、図3(b)がギヤ駒の側面図であり、図3(c)が図3(a)のA1−A1線に沿って切断して示すギヤ駒の断面図である。
図4】第1ギヤ駒部を示す図である。図4(a)が第1ギヤ駒部の平面図(図3(b)のA2−A2線に沿って切断して示す図)であり、図4(b)が第1ギヤ駒部の側面図であり、図4(c)が図4(a)のA4−A4線に沿って切断して示す第1ギヤ駒の断面図である。
図5】第2ギヤ駒部を示す図である。図5(a)が第2ギヤ駒部の平面図(図3(b)のA3−A3線に沿って切断して示す図)であり、図5(b)が第2ギヤ駒部の側面図であり、図5(c)が図5(a)のA5−A5線に沿って切断して示す第2ギヤ駒の断面図である。
図6】冷却液流路を示す図である。図6(a)が型締め時におけるギヤ駒と可動型との関係を示す図であり、図6(b)が型開き後の成型品取り出し時におけるギヤ駒と可動型との関係を示す図である。
図7】射出成形金型に設けられた元位置復帰手段を示す図である。図7(a)が元位置復帰手段を示す射出成形金型の一部平面図であり、図7(b)が元位置復帰手段を示す射出成形金型の一部側面図である。
図8図8(a)が元位置復帰手段の第1作動状態を示す図であり、図8(b)が元位置復帰手段の第2作動状態を示す図であり、図8(c)が元位置復帰手段の第3作動状態を示す図である。
図9図9(a)がはすば歯車の正面図であり、図9(b)がはすば歯車の側面図であり、図9(c)が図9(a)のA6−A6線に沿って切断して示すはすば歯車の断面図である。
図10】本発明の実施形態に係る射出成形金型の変形例1を示す図であり、冷却液流路の変形例を示す図である。図10(a)が型締め時におけるギヤ駒と可動型との関係を示す図であり、図10(b)が型開き後の成型品取り出し時におけるギヤ駒と可動型との関係を示す図である。
図11】本発明の実施形態に係る射出成形金型の変形例1を示す図であり、ギヤ駒の駒側冷却液流路、可動型側供給流路、及び可動型側排出流路の変形例を示す図である。図11(a)がギヤ駒の平面図であり、図11(b)がギヤ駒の側面図であり、図11(c)が図11(a)のA7−A7線に沿って切断して示すギヤ駒の断面図である。
図12】本発明の実施形態に係る射出成形金型の変形例2を示す図であり、冷却液流路の流路断面形状の変形例を示す図である。
図13】本発明の実施形態に係る射出成形金型の変形例3を示す図であり、射出成形金型の一部(ギヤ駒と軸型との関係図)を示す図である。図13(a)がギヤ駒の平面図であり、図13(b)がギヤ駒の側面図であり、図13(c)が図13(a)のA8−A8線に沿って切断して示すギヤ駒の断面図である。
図14】本発明の実施形態に係る射出成形金型の変形例4を示す図であり、図6に対応する図である。図14(a)が型締め時におけるギヤ駒と可動型との関係を示す図であり、図14(b)が型開き後の成型品取り出し時におけるギヤ駒と可動型との関係を示す図である。
図15】本発明の実施形態に係る射出成形金型の変形例5を示す図であり、図6に対応する図である。
図16】本発明の実施形態に係る射出成形金型の変形例7を示す図であり、型締め時の射出成形金型を示す図である。図16(a)が固定型を省略して示す可動型の一部平面図であり、図16(b)が射出成形金型の断面図(図16(a)のA9−A9線に沿って切断して示す断面図)である。
図17】本発明の実施形態に係る射出成形金型の変形例7を示す図であり、型開き時の射出成形金型を示す図である。図17(a)が固定型を省略して示す可動型の一部平面図であり、図17(b)が射出成形金型の断面図(図17(a)のA10−A10線に沿って切断して示す断面図)である。
図18】従来の射出成形金型を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づき詳述する。
【0013】
図1及び図2は、本実施形態に係る射出成形金型1の縦断面図であり、はすば歯車2を射出成形するための射出成形金型1である(図9参照)。なお、図1は、型締め時の射出成形金型1の縦断面図である。また、図2は、型開き時の射出成形金型1の縦断面図である。
【0014】
この図1に示すように、射出成形金型1は、射出成形機本体(図示せず)に固定される固定型3と、この固定型3に対して移動可能に設置されて型締め・型開きを可能にする可動型4と、を有している。
【0015】
可動型4は、可動型本体5と、この可動型本体5に相対回動できるように収容されるギヤ駒(成形品駒)6と、を有している。可動型本体5は、軸型7と、この軸型7を収容する第1ブロック8と、この第1ブロック8の表面(固定型3に対向する面)に固定される第2ブロック10と、第1ブロック8の背面に固定されるバックアップブロック11と、を有している。可動型本体5のうちの軸型7の外周側に形成されたギヤ駒収容凹部12内には、ギヤ駒6が相対回動できるように収容されている。軸型7は、先端側の軸穴形成部13がギヤ駒6の中心穴14(キャビティ16を形成するためのキャビティ形成用空間)内に嵌合され、軸穴形成部13の外周面、ギヤ駒6の中心穴14の内面側、及び軸穴形成部13に隣接して位置するギヤ駒突き当て面15によってキャビティ16を形作るようになっている。また、軸型7は、軸穴形成部13の隣りに形成された駒支持部17がギヤ駒6の軸穴18に相対回動できるように嵌合されている。
【0016】
また、可動型4は、軸型7を収容する第1ブロック8に形成された環状の軸受取付凹部20にベアリング21を係合し、このベアリング21によってギヤ駒6の外周面を回動可能に支持している。また、可動型4は、第1ブロック8のうちの固定型3側に位置する表面に、第2ブロック10が固定されている。この第2ブロック10は、ギヤ駒6の外周面に隙間を持って嵌合されるギヤ駒嵌合穴22が形成されると共に、環状の軸受収容凹部23が形成されている。
【0017】
可動型4に取り付けられたベアリング21は、ギヤ駒6を回動可能に支持する。また、このベアリング21は、その側面がギヤ駒6のフランジ部24の側面に当接して、ギヤ駒6を中心軸25に沿った方向に位置決めすると共に、ギヤ駒6が可動型4のギヤ駒収容凹部12内から抜け出るのを阻止する。
【0018】
図3乃至図6に示すように、ギヤ駒6は、第1ギヤ駒部26のブランクと第2ギヤ駒部27のブランクが金属接合技術(通電加圧接合又は通電拡散接合)により一体化された後に、各種除去加工(切削加工、放電加工等)が適宜施されて仕上げられたものであり、内部に冷却液(水、エチレングルコール、又は油等)を流動させるための駒側冷却液流路28が形成されている。
【0019】
駒側冷却液流路28は、キャビティ16に沿うように形成されることによってキャビティ16を取り囲む環状流路(キャビティ冷却流路)30と、この環状流路30に冷却液を導き入れる駒側供給流路31と、環状流路30から冷却液を導き出す駒側排出流路32と、で構成されている(図6参照)。そして、駒側供給流路31は、ギヤ駒6の中心軸25に沿った方向に延びる第1駒側供給流路部31aと、ギヤ駒6の裏面33(固定型に対向する面に対して反対側に位置している面)に形成された第2駒側供給流路部31bと、を有している。また、駒側排出流路32は、ギヤ駒6の中心軸25に沿った方向に延びる第1駒側排出流路部32aと、ギヤ駒6の裏面33に形成された第2駒側排出流路部32bと、を有している。第2駒側供給流路部31bは、ギヤ駒6が可動型本体5に対して所定角度だけ回動した場合でも、第1駒側供給流路部31aと可動型本体側供給流路34とを確実に接続し、可動型本体側供給流路34から第1駒側供給流路部31aに冷却液を導き入れることを可能にする。第2駒側排出流路部32bは、ギヤ駒6が可動型本体5に対して所定角度だけ回動した場合でも、第1駒側排出流路部32aと可動型本体側排出流路35とを確実に接続し、第1駒側排出流路部32aから可動型本体側排出流路35に冷却液を導き出すことを可能にする。このように、駒側供給流路31は、ギヤ駒6が可動型本体5に対して回動する前はもちろんのこと、ギヤ駒6が可動型本体5に対して所定角度回動した後も、可動型本体側供給流路34に接続される。また、駒側排出流路32は、ギヤ駒6が可動型本体5に対して回動する前はもちろんのこと、ギヤ駒6が可動型本体5に対して所定角度回動した後も、可動型本体側排出路35に接続される。
【0020】
第2駒側供給流路部31b及び第2駒側排出流路部32bは、共に、ギヤ駒6の中心軸25の周りに所定角度形成された周方向溝であり、断面半円形状に形成されている。すなわち、ギヤ駒6の駒側供給流路31は、可動型本体側供給流路34に常時接続されている。また、駒側排出流路32は、可動型本体側排出流路35に常時接続されている。そして、可動型本体側供給流路34が冷却液循環装置36の冷却液供給ポート37に接続され、可動型本体側排出流路35が冷却循環装置36の冷却液排出ポート38に接続されている。このように、駒側冷却液流路28と可動型本体側供給流路34及び可動型本体側排出流路35により射出成形金型1の冷却液流路40が構成されている。
【0021】
冷却液循環装置36は、図示しない負圧発生手段、冷却液タンク、熱交換機等を備えており、負圧発生手段によって発生させた負圧によって射出成形金型1の冷却液流路40に冷却液を流動させ、射出成形金型1によって温められた冷却水を熱交換機で冷やして繰り返し射出成形金型1の冷却に使用できるようになっている。
【0022】
図3及び図4に示すように、第1ギヤ駒部26は、接合面41(第2ギヤ駒部27が接合される面)に、環状流路30を半割にした状態の第1分割環状流路30aが形成されている。この第1分割環状流路30aは、中心穴14を取り囲むように接合面41にリング状に形成され、断面形状が半円形状になっている。また、第1ギヤ駒部26は、第1分割環状流路30aに開口する第1駒側供給流路部31aが中心軸25に沿って形成され、第1分割環状流路30aに開口する第1駒側排出流路部32aが第1駒側供給流路部31aに対して180°ずれた位置に中心軸25に沿って形成されている。第1駒側供給流路部31aと第1駒側排出流路部32aは、一端が第1分割環状流路30aに開口し、他端が第1ギヤ駒部26の裏面33(接合面41に対して反対側に位置する面)に形成された第2駒側供給流路部31b又は第2駒側排出流路部32bに開口するようになっている。なお、第1ギヤ駒部26の中心穴14は、ギヤ駒部6の中心穴14を軸方向に二分した軸方向長さに形成されている。
【0023】
図3及び図5に示すように、第2ギヤ駒部27は、接合面42(第1ギヤ駒部26が接合される面)に、環状流路30を半割にした状態の第2分割環状流路30bが形成されている。この第2分割環状流路30bは、中心穴14を取り囲むように接合面42にリング状に形成され、断面形状が半円形状になっている。
【0024】
図3に示すように、図4に示した第1ギヤ駒部26の接合面41に、図5に示した第2ギヤ駒部28の接合面42が重ね合わせられ、第1ギヤ駒部26と第2ギヤ駒部27が通電加圧接合又は通電拡散接合により一体化されると、駒側供給流路31、環状流路30、及び駒側排出流路32が内部に形成されたギヤ駒6が形成される。
【0025】
図7は、ギヤ駒6が可動型本体5に対して所定角度回動した後、ギヤ駒6を回動前の元の位置に戻す元位置復帰手段43の構成を示す図である。ギヤ駒6は、射出成形が終了し、型開き後(可動型4を固定型3から離した後)に、はすば歯車(成形品)2をキャビティ16内からエジェクタスリーブ44で押し出す際に、可動型本体5に対して所定角度(はすば歯車2の歯のねじれ角度に対応する角度)回動する(図1図2図6(b)参照)。そして、はすば歯車(成形品)2がキャビティ16内から取り出された後、型締めされる際に、元位置復帰手段43がギヤ駒6を回動前の元に位置に戻すようになっている(図1図2図6(a)参照)。
【0026】
図7に示すように、本実施形態に係る射出成形金型1の元位置復帰手段43は、ギヤ駒6に形成されたカム面(傾斜面)45と、固定型3のギヤ駒6に対向する箇所に取り付けられたカム面押圧突起46と、を有している。この図7に示す元位置復帰手段43は、はすば歯車2がキャビティ16内からエジェクタスリーブ44で押し出されることによって、ギヤ駒6が可動型本体5に対して所定角度回動し(図2図6参照)、このギヤ駒6と可動型本体5の状態で型締めが行われると、型締めの進行に応じ、固定型3のカム面押圧突起46がギヤ駒6のカム面45を押圧する量が増大し、ギヤ駒6が回動前の元の位置に戻される(図8(a)〜(c)参照)。
【0027】
以上のように構成された本実施形態に係る射出成形金型1は、型締めされた状態において(図1参照)、固定型3に形成された複数のピンゲート47から可動型4のキャビティ16内に溶融状態の合成樹脂材料が射出される。その後、ギヤ駒6内の駒側冷却液流路28を流動する冷却液によってキャビティ16内のはすば歯車(成形品)2が十分に冷却されると、図2に示すように型開きされ、キャビティ16内のはすば歯車2がエジェクタスリーブ44によって押し出される(図9参照)。次いで、射出成形金型1は、次の射出成形のために型締めされる(図1参照)。この射出成形の1サイクルにおいて、ギヤ駒6の駒側冷却液流路28には冷却液が常時流動し、その冷却液がキャビティ16内のはすば歯車2を効率的に冷却する。
【0028】
以上のように、本実施形態に係る射出成形金型1によれば、冷却液がギヤ駒6の駒側供給流路31、環状流路30、及び駒側排出流路32を常時流動し、キャビティ16内のはすば歯車(成形品)2の熱が空気層を介することなくギヤ駒6に直接伝導され、ギヤ駒6の熱が空気層を介することなく冷却液に伝達されるため、キャビティ16内のはすば歯車2が均一に且つ効率的に冷却される。その結果、本実施形態に係る射出成形金型1によれば、はすば歯車(成形品)2の局部的な収縮差に起因する成形不良を低減することができる。また、本実施形態によれば、キャビティ16内のはすば歯車2を効率的に冷却できるため、従来例に比較し、キャビティ16内のはすば歯車2の冷却に要する時間を短縮でき、はすば歯車2の射出成形に要するサイクルタイムを短縮できる。
【0029】
また、本実施形態に係る射出成形金型1によれば、冷却液が冷却液流路40を負圧によって流動させられ、冷却液が駒側供給流路31と可動型本体側供給流路34との接続部(ギヤ駒6と可動型本体5との相対回動部)、及び駒側排出流路32と可動型本体側排出流路35との接続部から漏洩することがないため、駒側供給流路31と可動型本体側供給流路34との接続部、及び駒側排出流路32と可動型本体側排出流路35との接続部に、Oリング等を使用した密封構造を設ける必要がなく、従来例と比較し、部品点数を削減できると共に、金型構造を簡単化することができる。
【0030】
なお、本実施形態に係る射出成形金型1で製造されたはすば歯車2は、冷却液流路40を備えていないギヤ駒6を使用して射出成形されたはすば歯車の歯車精度(歯筋誤差)がJIS7級であったのに対し、歯車精度がJIS3級に向上した。
【0031】
また、本実施形態に係る射出成形金型1は、ギヤ駒6をばねの弾性力で元の位置に戻すようにしてもよい。すなわち、ばねを元位置復帰手段としてもよい。
【0032】
また、本実施形態に係る射出成形金型1は、図1乃至図2に示すように、軸型7及びバックアッププレート11等に温度調節用流体通路49を設け、温度調節用流体通路49を流動する冷却液によって可動型4を冷却すると共に、キャビティ16内の成形品(例えば、はすば歯車2)を冷却するようになっている。このように、本実施形態に係る射出成形金型1は、駒側冷却液流路28を流動する冷却液と温度調節用流体通路49を流動する冷却液により、キャビティ16内の成形品(例えば、はすば歯車2)を効果的に冷却することができ、射出成形のサイクルタイムを短縮することができる。なお、温度調節用流体流路49の冷却液は、ポンプ等で加圧された状態で流動させられるか、又は、冷却液循環装置36等が発生する負圧で流動させられる。
【0033】
(変形例1)
図10は、本発明の実施形態に係る射出成形金型1の変形例1を示す図であり、冷却液流路40の変形例を示す図である。なお、図10(a)が型締め時におけるギヤ駒6と可動型4との関係を示す図であり、図10(b)が型開き後の成型品取り出し時におけるギヤ駒6と可動型4との関係を示す図である。また、図11は、本発明の実施形態に係る射出成形金型1の変形例1を示す図であり、ギヤ駒6の駒側冷却液流路28、可動型側供給流路34、及び可動型側排出流路35の変形例を示す図である。なお、図11(a)がギヤ駒6の平面図であり、図11(b)がギヤ駒6の側面図であり、図11(c)が図11(a)のA7−A7線に沿って切断して示すギヤ駒6の断面図である。
【0034】
これらの図に示すように、本変形例1に係る射出成形金型1の冷却液流路40は、可動型本体側供給流路34、駒側供給流路31、環状流路30、駒側排出流路32、及び可動型本体側排出流路35で構成される点において第1実施形態に係る射出成形金型1の冷却液流路40と同様である。しかし、本変形例1に係る射出成形金型1の冷却液流路40は、可動型本体側供給流路34を第1可動型本体側供給流路部34aと第2可動型本体側供給流路部34bとで構成し、可動型本体側排出流路35を第1可動型本体側排出流路部35aと第2可動型本体側排出流路部35bとで構成している。すなわち、本変形例1に係る射出成形金型1の冷却液流路40は、上記実施形態に係る射出成形金型1の冷却液流路40における第2駒側供給流路部31bと第2駒側排出流路部32bに代えて、周方向溝としての第2可動型本体側供給流路部34bと第2可動型本体側排出流路部35bとを形成している。
【0035】
第2可動型本体側供給流路34bと第2可動型本体側排出流路35bは、可動型本体5のギヤ駒6に対向する面(ギヤ駒6が摺動する面)に形成された周方向溝であり、ギヤ駒6が可動型本体5に対して所定角度回動した場合でも、第1可動型本体側供給流路部34aと駒側供給流路31とを常時接続し、駒側排出流路32と第1可動型本体側排出流路部35aとを常時接続するようになっている。
【0036】
本変形例1に係る冷却液流路40を備えた射出成形金型1は、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0037】
(変形例2)
図12は、上記実施形態の変形例2に係る冷却液流路40の断面形状を示すものである。この図12に示すように、冷却液流路40は、上記実施形態及び上記変形例1に示したような流路断面形状が円形状又は半円形状のものに限られず、例えば、流路断面形状が四角形状(図12(a)参照)や台形形状(図12(b)参照)のものでもよい。
【0038】
この図12に示すような流路断面形状の冷却液流路40を形成した射出成形金型1は、冷却液流路40の有効流路断面積を上記実施形態及び上記変形例1に係る冷却液流路40の流路断面積と同一にすることにより、上記実施形態及び上記変形例1に係る射出成形金型1と同様の効果を得ることができる。
【0039】
(変形例3)
図13は、上記実施形態に係る射出成形金型1の変形例3を示す図であり、射出成形金型1の一部(ギヤ駒6と可動型本体5との関係)を示す図である。なお、図13(a)がギヤ駒6の平面図であり、図13(b)がギヤ駒6の側面図であり、図13(c)が図13(a)のA8−A8線に沿って切断して示すギヤ駒6の断面図である。
【0040】
本変形例に係るギヤ駒6は、金属積層造形技術(金属粉末レーザー積層、溶融金属積層等)で全体が一体に形成され、駒側冷却液流路28が内部に形作られている。この点において、本変形例に係るギヤ駒6は、金属接合技術で形成された上記実施形態のギヤ駒6と相違するが、他の構成が上記実施形態に係るギヤ駒6と同様である。したがって、本変形例に係るギヤ駒6を使用した射出成形金型1は、上記実施形態の射出成形金型1と同様の効果を得ることができる。なお、本変形例に係るギヤ駒6は、金属積層造形技術によってギヤ駒ブランクが作成された後、各種除去加工(切削加工、放電加工等)がギヤ駒ブランクに施されることにより所望の寸法精度に仕上げられる。
【0041】
(変形例4)
図14は、上記実施形態に係る射出成形金型1の変形例4を示す図であり、図6に対応する図である。なお、図14(a)が型締め時におけるギヤ駒6と可動型5との関係を示す図であり、図14(b)が型開き後の成型品取り出し時におけるギヤ駒6と可動型5との関係を示す図である。
【0042】
この図14に示すように、本変形例に係る射出成形金型1は、上記実施形態に係る射出成形金型1の第2駒側供給流路部31b及び第2駒側排出流路部32bを形成せず、また、上記変形例1に係る射出成形金型1の第2可動型本体側供給流路部34b及び第2可動型本体側排出流路部35bを形成しない構造になっている。
【0043】
このような本変形例に係る射出成形金型1は、型締め時から型開き後の成形品(はすば歯車)取り出し工程に入る前までの間、可動型本体側供給流路34と駒側供給流路31が接続されると共に、駒側排出流路32と可動型本体側排出流路35が接続され、駒側冷却液流路28に確実に冷却液が流動するようになっている(図14(a)参照)。
【0044】
また、本変形例に係る射出成形金型1は、型開き後に、はすば歯車(成形品)2がキャビティ16内から取り出される際に、ギヤ駒(成形品駒)6が可動型本体5に対して回動させられるため、可動型本体側供給流路34と駒側供給流路31の連通が遮断されると共に、駒側排出流路32と可動型本体側排出流路35との連通が遮断される(図2図14(b)参照)。その結果、駒側冷却液流路28内に冷却液が閉じ込められた状態になり、駒側冷却液流路28に新たな冷却液が供給されることがなく、また、駒側冷却液流路28から冷却液が流出することがない(図14(b)参照)。
【0045】
また、本変形例に係る射出成形金型1は、型締め時において、ギヤ駒6が元位置復帰手段43によって回動前の元の位置に戻され、可動型本体側供給流路34と駒側供給流路31とが接続され、駒側排出流路32と可動型本体側排出流路35とが接続され、ギヤ駒6内の駒側冷却液流路28に新たな冷却液が供給される(図7図8図14(a)参照)。
【0046】
このような本変形例に係る射出成形金型1は、キャビティ16内のはすば歯車(成形品)がギヤ駒6内の駒側冷却液流路28を流動する冷却液によって効率的に冷却されるため、上記実施形態に係る射出成形金型1と同様の効果を得ることができる(図1図2参照)。
【0047】
(変形例5)
図15は、上記実施形態に係る射出成形金型1の変形例5を示す図であり、図6に対応する図である。
【0048】
この図15に示す本変形例に係る射出成形金型1は、上記実施形態における元位置復帰手段43を省略し、ギヤ駒6がはすば歯車(成形品)2をキャビティ16内から取り出す毎に可動型本体5に対して所定角度ずつ同一方向へ回動するようになっている。そのため、本変形例に係る射出成形金型1は、ギヤ駒6が所定角度ずつ回動しても、ギヤ駒6内の駒側供給流路28と可動型本体側供給流路34とが連通し、ギヤ駒6内の駒側供給流路28と可動型本体側排出流路35とが連通するように、環状流路30と可動型本体側供給流路34及び環状流路30と可動型本体側排出流路35とを接続する複数の流路48が形成されている。この複数の流路48のいずれか一つが環状流路30と可動型本体側供給流路34とを接続する駒側供給流路となり、複数の流路48の他のいずれか一つが環状流路30と可動型本体側排出流路35とを接続する駒側排出流路となる。
【0049】
このような本変形例に係る射出成形金型1は、キャビティ16内のはすば歯車(成形品)2がギヤ駒6内の駒側冷却液流路28を流動する冷却液によって効率的に冷却されるため、上記実施形態に係る射出成形金型1と同様の効果を得ることができる(図1図2参照)。
【0050】
(変形例6)
上記実施形態及び変形例1〜3に係る射出成形金型1は、成形品としてはすば歯車2を例示したが、これに限られず、成形品駒(例えば、ギヤ駒)が可動型本体5に対して回動する構成となるねじ歯車、やまば歯車、ウォームホイール、二段のはすば歯車(小径のはすば歯車部と大径のはすば歯車部とが軸方向に沿って連続して一体成形された歯車)、ポンプ用羽根車等の成形に適用できる。また、上記実施形態及び変形例1〜3に係る射出成形金型1は、成形品駒(6)が可動型本体5に対して回動させる必要のないものの射出成形にも適用でき、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
(変形例7)
上記実施形態及び変形例1〜3は、成形品駒(例えば、ギヤ駒6)が可動型本体5に対して回動する構成を例示したが、成形品駒が可動型本体5に対してスライド移動する場合にも適用できる。
【0052】
図16乃至図17は、本変形例に係る射出成形金型51を示す図である。なお、図16は、型締め時の射出成形金型51を示す図であり、図16(a)が固定型52を省略して示す可動型53の一部平面図であり、図16(b)が射出成形金型51の断面図(図16(a)のA9−A9線に沿って切断して示す断面図)である。また、図17は、型開き時の射出成形金型51を示す図であり、図17(a)が固定型52を省略して示す可動型53の一部平面図であり、図17(b)が射出成形金型51の断面図(図17(a)のA10−A10線に沿って切断して示す断面図)である。
【0053】
図16に示すように、本変形例に係る射出成形金型51は、固定型52と、この固定型52に対して型締め又は型開きされる可動型53とを有している(図17参照)。可動型53は、可動型本体54と、この可動型本体54に相対移動(スライド移動)できるように取り付けられる成形品駒55と、を有している。可動型本体54は、軸型56と、この軸型56が組み付けられたベースブロック57と、を有している。成形品駒55は、第1成形品駒55Aと第2成形品駒55Bとに二分割された割型であり、型締め時において、軸型56及び固定型52との間にキャビテイ58を形成するようになっている。このキャビティ58には、固定型52に設置されたピンポイントゲート60から溶融樹脂が射出される。また、キャビティ58には、第1成形品駒55Aと第2成形品駒55Bに取り付けられたピン61(成形品62の側面に穴をあけるためのピン61)が突出している(図17参照)。
【0054】
図17に示すように、本変形例に係る射出成形金型51は、型開き後、キャビティ58内の成形品62を取り出す場合、第1成形品駒55Aと第2成形品駒55Bがベースブロック57に設置したストッパ63に当接する位置までベースブロック57の表面57aに沿ってスライド移動させられる。これにより、第1成形品駒55Aのピン61と第2成形品駒55Bのピン61が成形品62から抜かれ、成形品62を図外のエジェクタピンによってキャビティ58内から押し出すことが可能になる。なお、成形品62は、有底円筒体であり、その有底円筒体の側面に複数の穴が形成されている。また、本変形例は、図16及び図17において、成形品62として有底円筒体を例示したが、これに限られず、断面形状が三角形の有底筒状体、断面形状が四角形の有底筒状体等、断面形状が多角形の有底筒状体の成形にも適用が可能である。
【0055】
以上のように作動する本変形例に係る射出成形金型51は、図16に示すように、第1成形品駒55Aと第2成形品駒55Bとが付き合わせられた状態において、丸棒状のキャビティ形成用空間64が内側に形成されるようになっている。
【0056】
このような本変形例に係る射出成形金型51において、第1成形品駒55Aと第2成形品駒55Bは、キャビティ形成用空間64に沿うように形成された半円筒状流路(キャビティ冷却流路)65と、半円筒状流路65に冷却液を導き入れる駒側供給流路66と、半円筒状流路65から冷却液を導き出す駒側排出流路67と、が形成されている。そして、第1成形品駒55Aと第2成形品駒55Bの駒側供給流路66は、可動型本体54に形成された可動型本体側供給流路68に接続されるようになっている。また、第1成形品駒55Aと第2成形品駒55Bの駒側排出流路67は、可動型本体54に形成された可動型本体側排出流路70に接続されるようになっている。そして、可動型本体側供給流路68は、冷却液循環装置36の冷却液供給ポート37に接続されている。また、可動型本体側排出流路70は、冷却液循環装置36の冷却液排出ポート38に接続されている。
【0057】
第1成形品駒55Aと第2成形品駒55Bの駒側供給流路66は、半円筒状流路65に接続される第1駒側供給流路部66aと、可動型本体側供給流路68に接続される第2駒側供給流路部66bと、を有している。そして、第2駒側供給流路部66bは、第1駒側供給流路66aと可動型本体側供給流路68とを常時接続することができるように、第1成形品駒55A又は第2成形品駒55Bのスライド方向に沿って形成された長溝である。ここで、常時とは、第1成形品駒55Aと第2成形品駒55Bが付き合わされた状態(型締め時)から第1成形品駒55Aと第2成形品駒55Bがストッパ63に突き当たるまでスライド移動した後、再度、第1成形品駒55Aと第2成形品駒55Bが付き合わされるまでの1サイクルをいう。
【0058】
また、第1成形品駒55Aと第2成形品駒55Bの駒側排出流路67は、半円筒状流路65に接続される第1駒側排出流路部67aと、可動型本体側排出流路70に接続される第2駒側排出流路部67bと、を有している。そして、第2駒側排出流路部67bは、第1駒側排出流路67aと可動型本体側排出流路70とを常時接続することができるように、第1成形品駒55A又は第2成形品駒55Bのスライド方向に沿って形成された長溝である。
【0059】
なお、本変形例において、第2駒側供給流路部66b及び第2駒側排出流路部67bは第1成形品駒55A及び第2成形品駒55Bのスライド面71(可動型本体に摺接する面)側に形成されているが、これに限られず、第2駒側供給流路部66b及び第2駒側排出流路部67bと同様に機能する長溝を可動型本体側供給流路68の端部と可動型本体側排出流路70の端部に形成するようにしてもよい。
【0060】
また、本変形例において、第1成形品駒55A及び第2成形品駒55Bは、上記実施形態におけるギヤ駒6と同様に、金属接合技術(通電加圧接合又は通電拡散接合)、又は金属積層造形技術(金属粉末レーザー積層、溶融金属積層等)で成形品駒ブランクが作成された後、切削加工等が適宜施されることによって形成される。
【0061】
以上のように構成された本変形例に係る射出成形金型51は、第1成形品駒55Aの半円筒状流路65と第2成形品駒55Bの半円筒状流路65が円筒流路(キャビティ58を取り囲む円筒形状の仮想流路)を二分割したような形状になっているため、型締め時に第1成形品駒55Aと第2成形品駒55Bが付き合わされた状態において、第1成形品駒55Aの半円筒状流路65と第2成形品駒55Bの半円筒状流路65とで円筒流路と同様の機能を発揮する。その結果、本変形例に係る射出成形金型51は、第1成形品駒55Aと第2成形品駒55Bの内側のキャビティ58が、駒側供給流路66、半円筒状流路65、及び駒側排出流路67内を負圧で流動させられる冷却液によって冷却され、上記実施形態に係る射出成形金型1と同様の効果を得ることができる。
【0062】
また、本変形例に係る射出成形金型51は、図16乃至図17に示すように、軸型56等に温度調節用流体通路72を設け、その温度調節用流体通路72を流動する冷却液によって可動型53冷却すると共に、キャビティ58内の成形品62を冷却するようになっている。このように、本変形例に係る射出成形金型51は、半円筒状流路(キャビティ冷却流路)65を流動する冷却液と温度調節用流体通路72を流動する冷却液により、キャビティ58内の成形品62を効果的に冷却することができ、射出成形のサイクルタイムを短縮することができる。なお、温度調節用流体流路72の冷却液は、ポンプ等で加圧された状態で流動させられるか、又は、冷却液循環装置36等が発生する負圧で流動させられる。
【0063】
また、本変形例に係る射出成形金型51は、図16乃至図17に示すように、第1成形品駒55Aと第2成形品駒55Bに取り付けられたピン61が半円筒状流路65を貫通してキャビティ58内に突出しているが、半円筒状流路65内の冷却液が負圧で流動させられるようになっているため、半円筒状流路65内の冷却液がピン61と第1成形品駒55Aとの隙間及びピン61と第2成形品駒55Bとの隙間からキャビティ58内に漏出するようなことがない。
【符号の説明】
【0064】
1,51……射出成形金型、2……はすば歯車(成形品)、3,52……固定型、4,53……可動型、5,54……可動型本体、6……ギヤ駒(成形品駒)、14……中心穴(キャビティ形成用空間)、16,58……キャビティ、30……環状流路(キャビティ冷却流路)、31,66……駒側供給流路、32,67……駒側排出流路、34,68……可動型本体側供給流路、35,70……可動型本体側排出流路、36……冷却液循環装置、55……成形品駒、64……キャビティ形成用空間、65……半円筒状流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18