(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記熱可塑性樹脂組成物(C)のクロロホルム溶液(濃度0.4質量%)を光路長1cmの石英セルに収容して吸光度計により測定した、当該溶液が示す波長380nmおよび590nmの光の透過率が、それぞれ10%未満および90%以上である、請求項1〜12のいずれかに記載の紫外線吸収剤を含む熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の製造方法では、熱可塑性樹脂(A)と紫外線吸収剤(UVA);(B)とを押出機にて溶融混練し(工程(i))、この溶融混練により形成された熱溶融状態の組成物をポリマーフィルタに導入して濾過して(工程(ii))、UVA(B)をX質量%の含有率で含む熱可塑性樹脂組成物(C)を得る。樹脂組成物(C)および当該組成物(C)をさらに成形して得た熱可塑性樹脂成形体(成形品)では、UVA(B)の含有により、紫外線を含む光による黄変が抑制される。また、熱溶融状態でのポリマーフィルタによる濾過(溶融濾過)を経ているため、ゲルなどの含まれる異物の数が少なく、例えば、成形体としての外観上の欠点の発生が抑制される。当該成形体が光学部材であるときは、例えば、光学的欠点の発生が抑制された光学部材が得られる。
【0010】
本発明の製造方法では、さらに、押出機およびポリマーフィルタの立ち上げ時(工程(i)および工程(ii)の開始時)において、以下のように、ポリマーフィルタに導入する熱溶融状態の熱可塑性樹脂組成物を制御する。すなわち、ポリマーフィルタへの上記組成物の導入を開始した後、ポリマーフィルタ内部の上記組成物の経路が当該組成物により充填されるまで、ポリマーフィルタへの上記組成物の導入量を定常状態よりも低くするとともに、当該組成物におけるUVA(B)の含有率をY質量%(ただし、0≦Y≦1.5×X)とする。そして、ポリマーフィルタが上記組成物により充填された後で、ポリマーフィルタへの上記組成物の導入量を定常状態とし、当該組成物におけるUVA(B)の含有率をX質量%として、UVA(B)をX質量%の含有率で含む樹脂組成物(C)を得る。なお、本明細書において、このような押出機およびポリマーフィルタの立ち上げ時にポリマーフィルタに導入する、熱可塑性樹脂(A)とUVA(B)とを含み、UVA(B)の含有率がY質量%である熱可塑性樹脂組成物を、熱可塑性樹脂組成物(C)と区別して熱可塑性樹脂組成物(D)とする。
【0011】
ポリマーフィルタの立ち上げ時には、当該フィルタ内部の樹脂組成物の経路(フィルタ濾材を含む)に、当該経路内の空気を置き換えるように樹脂組成物が充填される。ポリマーフィルタに導入された樹脂組成物は、熱溶融状態にあるとはいえ、比較的高い粘度を有する。このため、経路内が樹脂組成物によって充填された後の定常状態に比べて、立ち上げ時にポリマーフィルタ内部の部材、特にフィルタ濾材、に加わる負荷は大きい。本発明の製造方法では、ポリマーフィルタへの樹脂組成物の導入を開始した後、ポリマーフィルタ内部の樹脂組成物の経路が当該組成物により充填されるまで、ポリマーフィルタへの当該組成物の導入量を定常状態よりも低くする。これにより、樹脂組成物の導入開始から、ポリマーフィルタ内部の上記経路が当該組成物により充填されるまでの間のポリマーフィルタの破損、特にフィルタ濾材の破損、が抑制される。
【0012】
また、本発明の製造方法では、ポリマーフィルタへの樹脂組成物の導入を開始した後、ポリマーフィルタ内部の樹脂組成物の経路が当該組成物により充填されるまで、樹脂組成物におけるUVA(B)の含有率をY質量%に制御する(UVA(B)の含有率がY質量%である樹脂組成物(D)を導入する)。押出機およびポリマーフィルタの立ち上げ時に、ポリマーフィルタに導入する樹脂組成物の量を定常状態よりも低くするために、樹脂組成物の主成分であるとともにその高い粘度の要因である(UVAは、通常、樹脂組成物の粘度に影響を与えない)熱可塑性樹脂(A)の量を単に減らすだけでは、樹脂組成物におけるUVA(B)の含有率が相対的に上昇し、高い含有率となったUVA(B)がポリマーフィルタの上記経路内の空気と高温で接触して、UVA(B)の酸化によると推定される褐色の変色が樹脂組成物に発生する。特に、構造上、空気と樹脂組成物との接触面積が大きいフィルタ濾材において、このような褐色の変色が生じやすい。一方、Y質量%へのUVA(B)の含有率の制御により、このようなポリマーフィルタの立ち上げおよび充填時における、UVA(B)の酸化によると推定される樹脂組成物の褐色の変色が抑制される。そして、UVA(B)の含有率がY質量%に制御された組成物(D)によるポリマーフィルタの充填後は、もはやポリマーフィルタの破損が生じにくい状態となっており、かつ高温でのUVA(B)と酸素との接触、特にフィルタ濾材における接触、が抑制されるため、ポリマーフィルタに導入する樹脂組成物におけるUVA(B)の含有率を、所望のX質量%に制御する。このように、樹脂(A)と含有率X質量%のUVA(B)とを含む樹脂組成物(C)の、褐色の変色が抑制された速やかな製造立ち上げが達成され、樹脂組成物(C)の生産性および歩留まりが向上する。
【0013】
ポリマーフィルタはその内部に、熱溶融状態にある樹脂組成物の経路を有する。経路には、ポリマーフィルタの内部に配置されたフィルタ濾材が含まれる。ポリマーフィルタに樹脂組成物が充填されたことは、例えば、ポリマーフィルタに導入した樹脂組成物が当該フィルタの出口(排出口)から連続的に安定して排出され始めることにより確認できる。その際、ポリマーフィルタ内部の上記経路が樹脂組成物によって全て満たされている必要は必ずしもない。経路内に部分的に空気が残存していてもよい。
【0014】
「定常状態」とは、ポリマーフィルタが樹脂組成物によって充填された以降、押出機による溶融混練およびポリマーフィルタによる樹脂組成物(C)の濾過を連続的に実施している状態を意味する。ただし、定常状態において、溶融混練により得る樹脂組成物(C)の量およびポリマーフィルタによる当該組成物(C)の濾過量は、必ずしも一定であり続ける必要はない。これらの量は、樹脂組成物(C)の製造において通常、多少の変動を伴うし、また、必要に応じて自由に制御することができる。
【0015】
樹脂組成物(D)におけるUVA(B)の含有率Yは、必ずしも一定でなくてもよく、樹脂組成物(C)におけるUVA(B)の含有率をX(質量%)として、0質量%以上1.5×X質量%以下の範囲で変化しても(変化させても)よい。安定かつ速やかな樹脂組成物(C)の製造立ち上げのためには、ポリマーフィルタの立ち上げから充填完了まで、含有率Yは一定であることが好ましい。樹脂組成物(D)におけるUVA(B)の含有率Yは、0質量%以上1.0×X質量%未満が好ましい。このとき、褐色の変色の発生がさらに抑えられ、より速やかな樹脂組成物(C)の製造立ち上げが可能となる。
【0016】
樹脂組成物(C),(D)におけるUVA(B)の含有率は、例えば、押出機に供給する樹脂(A)をはじめとする熱可塑性樹脂の量および/またはUVA(B)の量により制御できる。
【0017】
工程(i)における樹脂(A)とUVA(B)との溶融混練は、樹脂組成物(D)を得る場合にも、樹脂組成物(C)を得る場合にも、公知の押出機による、公知の溶融混練の手法により実施できる。
【0018】
工程(i)において、樹脂(A)とUVA(B)とを個別に押出機に供給し、溶融混練することが、樹脂組成物(C),(D)におけるUVA(B)の含有率の制御が容易であることから好ましい。また、UVA(B)は、溶液の状態で押出機に供給することが好ましく、この場合、樹脂組成物(C)の成形時の黄変、発泡およびUVAのブリードアウトが抑制される。また、この場合、樹脂組成物(C)および当該組成物(C)をさらに成形して得た成形体における外観上の欠点あるいは光学的な欠点の発生がさらに抑制される。溶液の状態で供給とは、例えば、常温もしくは押出機への供給温度において液体であるUVAの供給、またはUVAを溶媒に溶解させた溶液の供給である。常温(25℃)において液体であるUVA(B)を押出機に供給することが好ましい。溶液の状態でUVA(B)を供給する際には、得られた樹脂組成物に含まれる異物の数を低減させる観点から、濾過した当該溶液を供給することが好ましい。UVA(B)の溶液の状態での供給には、例えば、高圧定量ポンプを利用できる。当該ポンプは逆流防止弁を備えることが好ましい。
【0019】
樹脂組成物(C)におけるUVA(B)の含有率Xは、例えば、後述する波長380nmの光の透過率T380が10%未満となるように設定される。
【0020】
押出機の種類は特に限定されず、単軸、二軸、多軸のいずれの押出機も使用可能である。押出機のL/D値(Lは押出機のシリンダー長、Dはシリンダー内径)は、好ましくは10以上100以下、より好ましくは15以上80以下、さらに好ましくは20以上60以下である。これらの範囲において、樹脂組成物の十分な可塑化および良好な混練状態が実現しやすい。L/D値が過度に大きくなると、せん断発熱が過度に大きくなり、溶融混練中に樹脂(A)が熱分解することがある。
【0021】
押出機のシリンダーの設定温度は、好ましくは200℃以上350℃以下、より好ましくは250℃以上320℃以下である。これらの範囲では、樹脂組成物の溶融粘度が当該組成物の生産性の向上に適した状態にあるとともに、樹脂(A)の熱分解も抑制される。
【0022】
押出機は、少なくとも1箇所のベント部を有することが好ましい。ベント部を有する押出機を用いることによって、ベント部から、樹脂組成物の分解により生じたガス、および重合溶媒などの揮発性成分を吸引でき(脱揮でき)、得られた樹脂組成物(C)に残存する揮発性成分の量を低減できる。これにより、例えば、樹脂組成物(C)の成形時の発泡が抑制され、樹脂組成物(C)および当該組成物(C)をさらに成形して得た成形体における外観上の欠点あるいは光学的欠点の発生がさらに抑制される。ベント部から揮発性成分を脱揮するためには、例えば、当該ベント部を減圧状態にすればよく、その減圧度は、ベント部の圧力雰囲気にして1.3hPa以上906hPa以下が好ましく、13.3hPa以上798hPa以下が好ましい。ベント部の圧力雰囲気が906hPaより高くなると、揮発性成分が樹脂組成物中に残存しやすい。一方、ベント部の圧力を1.3hPaより低く保つことは工業的に困難である。
【0023】
換言すれば、本発明の製造方法は、押出機が備える、1.3hPa以上906hPa以下の圧力雰囲気にあるベント部から、樹脂組成物(C)に含まれる揮発性成分を除去する工程をさらに含んでいてもよい。また、押出機にベント部を有し、ポリマーフィルタ内部の上記経路内を1.3hPa以上906hPa以下の圧力雰囲気にすることで、UVA(B)の酸素との不要な接触を避けることができ、上述したUVA(B)の酸化によると推定される、樹脂組成物の褐色の変色を低減することができる。
【0024】
押出機は、サイドフィーダーを備えていてもよく、この場合、サイドフィーダーからさらなる熱可塑性樹脂を押出機に供給し、樹脂(A)およびUVA(B)とともに溶融混練して、当該さらなる樹脂を含む樹脂組成物(C)を形成できる。さらなる樹脂の具体例は、樹脂組成物(C)の説明において後述する。
【0025】
押出機およびポリマーフィルタの立ち上げ時における、当該フィルタ内部への樹脂組成物(D)の充填は、押出機にて溶融混練して得た組成物(D)をポリマーフィルタに導入することにより実施できる。また、工程(ii)における、溶融混練により得た樹脂組成物(C)のポリマーフィルタへの導入およびポリマーフィルタでの濾過は、公知のポリマーフィルタを用いた公知の溶融濾過の手法により実施できる。
【0026】
ポリマーフィルタは、例えば、リーフディスクフィルタ、キャンドルフィルタ、パックディスクフィルタ、および円筒型フィルタから選ばれる少なくとも1種である。なかでも、有効濾過面積が高いリーフディスクフィルタまたはキャンドルフィルタが好ましい。このうち、リーフディスクフィルタは、高粘度体の濾過に適しているが、その構造上、負荷により破損しやすい。このため、ポリマーフィルタにリーフディスクフィルタを用いる場合、本発明の製造方法による効果がより顕著となる。
【0027】
フィルタ濾材は特に限定されず、金属繊維不織布を焼結したタイプ、金属粉末を焼結したタイプ、金網を積層したタイプ、あるいはこれらを組み合わせたハイブリッドタイプのいずれでもよい。なかでも、金属繊維不織布を焼結したタイプが最も好ましい。
【0028】
ポリマーフィルタの濾過精度は特に限定されないが、通常20μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下である。濾過精度の下限は限定されないが、例えば1μmである。濾過精度が過度に小さいと、異物が除去される効果よりも、ポリマーフィルタ内に樹脂組成物が長時間滞留することによるデメリット(例えば樹脂組成物の熱劣化)の方が大きくなる。一方、濾過精度が過度に大きいと、樹脂組成物に含まれる異物の除去が難しくなる。
【0029】
ポリマーフィルタの形状は特に限定されず、例えば、複数の樹脂流通口を有し、センターポール内に樹脂の流路を有する内流型;断面が複数の頂点もしくは面においてフィルタ濾材の内周面に接し、センターポールの外面に樹脂の流路がある外流型;である。樹脂組成物のポリマーフィルタ内での滞留を抑えるためには、樹脂組成物の滞留箇所の少ない外流型の採用が好ましい。ポリマーフィルタにおける樹脂組成物(C)の滞留時間は特に限定されないが、20分以下とすることが好ましく、10分以下、さらには5分以下とすることがより好ましい。
【0030】
ポリマーフィルタによる樹脂組成物(C)の濾過にあたっては、押出機とポリマーフィルタとの間にギアポンプを設置し、当該ポンプにより圧力を加えながら樹脂組成物(C)をポリマーフィルタに導入することが好ましい。この方法により、ポリマーフィルタ内の樹脂組成物(C)の圧力が安定化する。ポリマーフィルタへの樹脂組成物(D)の導入にもこのギアポンプを使用でき、これにより、ポリマーフィルタへの当該組成物(D)の導入を安定して行うことができる。
【0031】
樹脂組成物(C)を濾過するポリマーフィルタの内部の温度は、260℃以上330℃以下が好ましい。この場合、樹脂組成物(C)の熱劣化を抑制しながら、安定した当該組成物(C)の濾過が可能となる。ポリマーフィルタに樹脂組成物(D)を導入する際にも、ポリマーフィルタの内部の温度を260℃以上330℃以下とすることが好ましい。
【0032】
ポリマーフィルタにおける樹脂組成物(C)の時間あたり濾過量は適宜設定できるが、定常状態において、例えば、ポリマーフィルタの有効濾過面積(フィルタ濾材の濾過面積)1m
2あたり15kg/時以上65kg/時以下である。なお、ポリマーフィルタの有効濾過面積は、一般に、5〜15m
2程度であることから、実際の製造現場では時間あたり数百kg〜数トンの樹脂組成物(C)が濾過され、製造されることになる。このため、本発明の製造方法で実現する速やかな製造立ち上げによる組成物(C)の生産性向上および歩留まり向上の効果は、産業上、非常に有利である。
【0033】
フィルタ入口圧およびフィルタ出口圧がそれぞれ3〜15MPaおよび0.3〜10MPaとなるように濾過を制御することが好ましい。また、定常状態におけるポリマーフィルタの圧力損失(フィルタ入口圧とフィルタ出口圧との圧力差)が1〜15MPaとなるように濾過を制御することが好ましい。これらの範囲において、樹脂組成物(C)の溶融濾過をより均一かつ安定して実施でき、得られた樹脂組成物(C)および当該組成物(C)をさらに成形して得た成形体の品質をより向上できる。圧力損失を過度に小さくすると、ポリマーフィルタ内での樹脂組成物(C)の流路が偏りやすい。圧力損失を過度に大きくすると、濾過時にポリマーフィルタが破損しやすい。
【0034】
本発明の製造方法では、工程(i)および(ii)を通常、連続して実施する。連続的な工程(i),(ii)の実施は、例えば、先端(排出口側)にポリマーフィルタを接続した押出機により実現できる。
【0035】
本発明の製造方法は、本発明の効果が得られる限り、上述した工程以外の任意の工程を含んでいてもよい。
【0036】
ポリマーフィルタによる濾過後の樹脂組成物(C)は、任意の工程に供することができる。当該工程は、例えば、濾過後の樹脂組成物(C)を成形する成形工程であり、例えば、ペレット化して樹脂組成物(C)のペレットを製造したり、そのまま溶融成形して、樹脂組成物(C)から構成される任意の形状を有する成形体を製造できる。成形体は、例えばフィルム、シートであり、任意の用途、例えば光学部材としての用途、に使用できる。具体的な例は、位相差フィルム、偏光子保護フィルムなどの光学フィルムである。光学部材としての用途に供する場合、その外観上の欠点あるいは光学的な欠点の少なさが特にメリットとなる。
【0037】
本発明の製造方法では、工程(i),(ii)に引き続いて、上記任意の工程を連続的に実施できる。すなわち、樹脂組成物(C)から構成される成形体を連続的に製造でき、その製造立ち上げが従来よりも速やかである。
【0038】
[熱可塑性樹脂(A)]
熱可塑性樹脂(A)は特に限定されない。樹脂(A)は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)、ノルボルネンポリマーなどのオレフィン樹脂;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂などのハロゲン含有樹脂;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体などのスチレン単位を構成単位として有するスチレン系樹脂;ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などのアクリル樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド;トリアセチルセルロースなどのセルロース類;ポリアセタール;ポリカーボネート(PC);ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリエーテルニトリル;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミドである。
【0039】
樹脂組成物(C)または当該組成物(C)をさらに成形して得た成形体を光学部材に使用する場合、樹脂(A)は非晶性の熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0040】
樹脂(A)はアクリル樹脂であってもよく、この場合、光学的透明性に優れる樹脂組成物(C)が得られる。なお、アクリル樹脂は、非晶性の熱可塑性樹脂である。
【0041】
アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステル単位および/または(メタ)アクリル酸単位を構成単位として有する樹脂である。アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルおよび/または(メタ)アクリル酸の誘導体に由来する構成単位を有してもよい。アクリル樹脂が有する全構成単位に占める(メタ)アクリル酸エステル単位、(メタ)アクリル酸単位および上記誘導体に由来する構成単位の割合の合計は、通常50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上である。アクリル樹脂は、構成単位としてこれらの単位を2種以上有していてもよい。
【0042】
(メタ)アクリル酸エステル単位は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸クロロメチル、(メタ)アクリル酸2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチル、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸メチルの各単量体に由来する構成単位である。
【0043】
(メタ)アクリル酸単位は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、2−(ヒドロキシエチル)アクリル酸の各単量体に由来する構成単位である。
【0044】
アクリル樹脂は、メタクリル酸メチル(MMA)単位を有することが好ましく、この場合、当該アクリル樹脂を樹脂(A)として含む樹脂組成物(C)および当該組成物(C)をさらに成形して得た成形体の熱安定性が向上する。
【0045】
以下、アクリル樹脂である熱可塑性樹脂(A)について説明する。
【0046】
アクリル樹脂である樹脂(A)は、主鎖に環構造を有していてもよい。すなわち、樹脂(A)は、主鎖に環構造を有するアクリル樹脂であってもよい。この場合、樹脂(A)および当該樹脂(A)を含む樹脂組成物(C)のガラス転移温度(Tg)が高くなり、組成物(C)および当該組成物(C)をさらに成形して得た成形体の耐熱性が向上する。耐熱性が向上した成形体、例えば光学部材およびその1種である光学フィルム、は、液晶表示装置(LCD)などの画像表示装置における光源、電源、回路基板などの発熱部の近傍への配置が容易となる。このような配置の容易さによって、例えば、画像表示装置の設計、デザインの自由度が増す。
【0047】
樹脂(A)が主鎖に環構造を有するアクリル樹脂の場合、樹脂(A)のTgが高くなることで、樹脂組成物(C)の溶融混練温度および成形温度を高くする必要がある。このような場合においても本発明の製造方法では、ポリマーフィルタを用いた溶融濾過により、高温環境において生成したゲルの数を低減でき、樹脂組成物(C)および当該組成物(C)をさらに成形して得た成形体に含まれる異物の数を低減できる。また、押出機への液体の状態でのUVA(B)の供給を併用することにより、樹脂組成物(C)の成形時の黄変、発泡およびUVAのブリードアウトを抑制できる。
【0048】
アクリル樹脂である樹脂(A)が主鎖に有していてもよい環構造の種類は特に限定されないが、例えば、ラクトン環構造、無水グルタル酸構造、グルタルイミド構造、N−置換マレイミド構造および無水マレイン酸構造から選ばれる少なくとも1種である。環構造は、ラクトン環構造、グルタルイミド構造およびN−置換マレイミド構造から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0049】
式(1)に、無水マレイン酸構造およびN−置換マレイミド構造を示す。
【0051】
式(1)におけるR
1およびR
2は、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、X
1は、酸素原子または窒素原子である。X
1が酸素原子のときR
3は存在せず、X
1が窒素原子のとき、R
3は水素原子、炭素数1から6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基またはフェニル基である。
【0052】
X
1が酸素原子のとき、式(1)に示される環構造は無水マレイン酸構造である。無水マレイン酸構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、例えば、無水マレイン酸と、(メタ)アクリル酸エステルとの共重合により形成できる。
【0053】
X
1が窒素原子のとき、式(1)に示される環構造はN−置換マレイミド構造である。N−置換マレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、例えば、N−置換マレイミドと、(メタ)アクリル酸エステルとの共重合により形成できる。
【0054】
N−置換マレイミド構造は、N−フェニルマレイミド構造(R
3がフェニル基)およびN−シクロヘキシルマレイミド構造(R
3がシクロヘキシル基)から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0055】
式(2)に、無水グルタル酸構造およびグルタルイミド構造を示す。
【0057】
式(2)におけるR
4およびR
5は、互いに独立して、水素原子またはメチル基であり、X
2は、酸素原子または窒素原子である。X
2が酸素原子のときR
6は存在せず、X
2が窒素原子のとき、R
6は水素原子、炭素数1から6の直鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基またはフェニル基である。
【0058】
X
2が酸素原子のとき、式(2)に示される環構造は無水グルタル酸構造である。無水グルタル酸構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと(メタ)アクリル酸との共重合体を分子内で脱アルコール環化縮合させて形成できる。
【0059】
X
2が窒素原子のとき、式(2)に示される環構造はグルタルイミド構造である。グルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル重合体をメチルアミンなどのイミド化剤によりイミド化して形成できる。
【0060】
アクリル樹脂である樹脂(A)が主鎖に有していてもよいラクトン環構造は特に限定されず、例えば、4から8員環のラクトン環構造であってもよいが、環構造の安定性に優れることから5員環または6員環のラクトン環構造が好ましく、6員環のラクトン環構造がより好ましい。6員環のラクトン環構造は、例えば、特開2004-168882号公報に開示されている構造であるが、前駆体の重合収率が高いこと、前駆体の環化縮合反応により、高いラクトン環含有率を有するアクリル樹脂が得られること、MMA単位を構成単位として有する重合体を前駆体にできること、などの理由から、式(3)に示す構造が好ましい。
【0062】
式(3)のR
7、R
8およびR
9は、互いに独立して、水素原子または炭素数1から20の有機残基である。当該有機残基は酸素原子を含んでいてもよい。
【0063】
式(3)の有機残基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基のような炭素数1から20のアルキル基;エテニル基、プロペニル基のような炭素数1から20の不飽和脂肪族炭化水素基;フェニル基、ナフチル基のような炭素数1から20の芳香族炭化水素基である。これらアルキル基、不飽和脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基では、当該基が有する1つ以上の水素原子が、水酸基、カルボキシル基、エーテル基およびエステル基から選ばれる少なくとも1種の基により置換されていてもよい。
【0064】
ラクトン環構造以外の上記環構造を主鎖に有するアクリル樹脂において、当該樹脂における上記環構造の含有率は特に限定されず、例えば、5〜90質量%であり、10〜70質量%が好ましく、10〜60質量%がより好ましく、10〜50質量%がさらに好ましい。
【0065】
ラクトン環構造を主鎖に有するアクリル樹脂において、当該樹脂におけるラクトン環構造の含有率は特に限定されず、例えば、5〜90質量%であり、10〜80質量%が好ましく、10〜70質量%がより好ましく、12〜50質量%がさらに好ましい。
【0066】
樹脂(A)が主鎖に環構造を有するアクリル樹脂である場合、当該樹脂における環構造の含有率は、樹脂組成物(C)または当該組成物(C)をさらに成形して得た成形体として所望の特性、例えば、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度、成形性ハンドリング性、に応じて制御できる。環構造の含有率が過度に小さいと、所望の耐熱性、耐溶剤性および表面硬度が得られなくなることがある。環構造の含有率が過度に大きいと、成形性およびハンドリング性が低下することがある。
【0067】
主鎖に環構造を有するアクリル樹脂は、公知の方法により形成できる。主鎖に無水グルタル酸構造またはグルタルイミド構造を有するアクリル樹脂は、例えば、WO2007/26659号公報、WO2005/108438号公報に記載の方法により形成できる。主鎖に無水マレイン酸構造またはN−置換マレイミド構造を有するアクリル樹脂は、例えば、特開昭57-153008号公報、特開2007-31537号公報に記載の方法により形成できる。主鎖にラクトン環構造を有するアクリル樹脂は、例えば、特開2006-96960号公報、特開2006-171464号公報または特開2007-63541号公報に記載の方法により形成できる。
【0068】
アクリル樹脂である樹脂(A)は、(メタ)アクリル酸エステル単位、(メタ)アクリル酸単位、および上記誘導体に由来する単位以外の構成単位を有していてもよい。このような構成単位は、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、α−ヒドロキシメチルスチレン、α−ヒドロキシエチルスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、メタリルアルコール、アリルアルコール、エチレン、プロピレン、4−メチル−1−ペンテン、酢酸ビニル、2−ヒドロキシメチル−1−ブテン、メチルビニルケトン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカルバゾールの各単量体に由来する構成単位である。樹脂(A)は、構成単位としてこれらの単位を2種以上有していてもよい。
【0069】
樹脂(A)は、当該樹脂に対して負の固有複屈折を与える作用を有する構成単位を有していてもよい。この場合、樹脂組成物(C)および当該組成物(C)をさらに成形して得た成形体における複屈折性の制御の自由度を向上できる。そしてこの自由度の向上により、例えば、樹脂組成物(C)および上記成形体の光学部材としての用途が拡大する。なお、樹脂に対して負の固有複屈折を与える作用を有する構成単位とは、この構成単位のみからなるホモポリマーを形成したときに、当該ホモポリマーの固有複屈折の値が負となる構成単位をいう。固有複屈折の値とは、樹脂(重合体)の分子鎖が一軸配向した層(例えばフィルム)において、分子鎖が配向する方向(配向軸)に平行な方向の光の屈折率n1から、配向軸に垂直な方向の光の屈折率n2を引いた値(即ち、“n1−n2”)をいう。樹脂(A)自体の固有複屈折の正負は、固有複屈折に関して当該構成単位が与える作用と、樹脂(A)が有するその他の構成単位が与える作用との兼ね合いにより決定される。
【0070】
樹脂(A)に対して負の固有複屈折を与える作用を有する構成単位は、例えば、スチレン単位である。
【0071】
樹脂(A)は、紫外線吸収能を有する構成単位(UVA単位)を構成単位として有していてもよい。この場合、樹脂組成物(C)および当該組成物(C)をさらに成形して得た成形体の紫外線吸収能がより向上する。また、UVA単位の構造によっては、樹脂(A)とUVA(B)との相容性が向上する。
【0072】
樹脂(A)がUVA単位を構成単位として有する場合、樹脂(A)におけるUVA単位の含有率は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。UVA単位の含有率が過度に大きくなると、樹脂(A)および当該樹脂を含む樹脂組成物(C)の耐熱性が低下することがある。
【0073】
樹脂(A)のTgは、例えば80℃以上であり、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上である。
【0074】
樹脂(A)の重量平均分子量は、例えば1000〜300000であり、好ましくは5000〜250000、より好ましくは10000〜200000、さらに好ましくは50000〜200000である。
【0075】
[紫外線吸収剤(B)]
UVA(B)は、紫外線吸収能を有するとともに、樹脂(A)と相溶する物質である限り限定されない。UVA(B)は、単量体に由来する繰り返し単位を含まない(すなわち重合体ではない)ことが好ましい。重合体である紫外線吸収剤は、樹脂(A)との相溶性を確保することが一般に難しく、また、重合体に残留する重合開始剤、連鎖移動剤などの添加剤によって、樹脂組成物(C)および当該組成物(C)をさらに成形して得た成形体に着色が生じることがある。
【0076】
UVA(B)として、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシ
レート系化合物、ベンゾエート系化合物、トリアゾール系化合物およびトリアジン系化合物から選ばれる少なくとも1種を使用できる。なかでも、紫外線吸収能が高いことから、トリアゾール系化合物およびトリアジン系化合物であるUVA(B)が好ましい。
【0077】
トリアゾール系化合物は、例えば、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4,6−ジ−t−ブチルフェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(t−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−t−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−C7−9側鎖および直鎖アルキルエステル、である。紫外線吸収能が高いことから、ハロゲン原子、例えば塩素原子、を有するトリアゾール化合物が好ましい。
【0078】
トリアジン系化合物は、例えば、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシエトキシ)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(3−アルキルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−5−α−クミルフェニル]−s−トリアジン骨格(アルキルオキシ;オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシなどの長鎖アルキルオキシ基)を有するUVA、である。なかでも、アクリル樹脂である樹脂(A)との相溶性が高く、紫外線吸収性能が優れていることから、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−[2−ヒドロキシ−4−(3−アルキルオキシ−2−ヒドロキシプロピルオキシ)−5−α−クミルフェニル]−s−トリアジン骨格(アルキルオキシ;オクチルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシなどの長鎖アルキルオキシ基)を有するUVAが好ましい。
【0079】
UVA(B)の分子量は特に限定はされないが、600以上が好ましく、700以上、800以上の順により好ましい。UVA(B)の分子量の上限は、例えば、10000である。UVA(B)の分子量が過度に大きくなると、樹脂(A)との相溶性が低下し、樹脂組成物(C)および当該組成物(C)をさらに成形して得た成形体の光学的透明性が低下する。UVA(B)の分子量の上限は、8000が好ましく、5000がより好ましい。
【0080】
UVA(B)は、市販の物質であってもよく、例えば、チヌビン477(BASF製)、アデカスタブ LA−F70(ADEKA製)である。
【0081】
UVA(B)の紫外線吸収能は、波長300〜380nmの範囲内にある、UVA(B)による吸収が最大となる波長の光に対するモル吸光係数(クロロホルム溶液)にして、10000(L・mol
-1・cm
-1)以上が好ましい。
【0082】
UVA(B)は常温(25℃)において液体である物質が好ましい。常温で液体であるUVA(B)として、市販の物質、例えば、チヌビン213、チヌビン571、チヌビン477(いずれもBASF製)を使用できる。
【0083】
UVA(B)は、2種以上の化合物の混合物であってもよい。
【0084】
[熱可塑性樹脂組成物(C)]
本発明の製造方法により得た樹脂組成物(C)は、樹脂(A)とUVA(B)とを含む。樹脂組成物(C)におけるUVA(B)の含有率Xは、UVA(B)の種類により異なるが、例えば0.01〜5質量%であり、好ましくは0.05〜3質量である。樹脂組成物(C)におけるUVA(B)の含有率Xが過度に小さいと、所望の紫外線吸収能が得られずに、紫外線を含む光に曝されることによって樹脂組成物(C)および当該組成物(C)をさらに成形して得た成形体に黄変が生じやすくなる。一方、UVA(B)の含有率Xが過度に大きいと、UVA(B)による黄変の抑制というメリットよりも、樹脂組成物(C)の成形時に発泡が生じたりUVAがブリードアウトするといったデメリットの方が大きくなる。
【0085】
樹脂組成物(C)におけるUVA(B)の含有率Xは、例えば、以下の方法により測定した波長380nmの光の透過率T380が10%未満となるように設定できる。この場合、UVA(B)の紫外線吸収能が大きいほど、含有率Xを小さく設定することが可能となる。T380は、樹脂組成物のクロロホルム溶液(濃度0.4質量%)を作製し、これを光路長1cmの石英セルに収容して、吸光度計により当該溶液における波長380nmの光の透過率を測定して求めた値である。T380は、樹脂組成物(C)および当該組成物(C)をさらに成形して得た成形体の紫外線吸収能に対応する。
【0086】
樹脂組成物(C)のTgは、例えば80℃以上であり、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上である。Tgが高いほど、樹脂組成物(C)および当該組成物(C)をさらに成形して得た成形体の耐熱性が向上する。画像表示装置に用いる光学部材としては、樹脂組成物(C)のTgは110℃以上が好ましい。
【0087】
樹脂組成物(C)の紫外線吸収能は、T380にして10%未満が好ましく、9%以下がより好ましい。また、樹脂組成物(C)の可視光線透過率は、T380と同様に測定した、波長590nmの光の透過率T590にして90%以上が好ましく、95%以上がより好ましい。樹脂組成物(C)のT380およびT590は、それぞれ10%未満および90%以上が好ましい。これをT380およびT590の測定方法を考慮して換言すると、樹脂組成物(C)のクロロホルム溶液(濃度0.4質量%)を光路長1cmの石英セルに収容して吸光度計により測定した、当該溶液が示す波長380nmおよび590nmの光の透過率が、それぞれ10%未満および90%以上であることが好ましい。
【0088】
樹脂組成物(C)は、2種以上の樹脂(A)を含んでいてもよい。また、樹脂組成物(C)は、樹脂(A)以外に、さらなる熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。ただし、樹脂組成物(C)および当該組成物(C)をさらに成形して得た成形体を光学部材に使用する場合、十分な光学特性を確保するために、樹脂(A)と、上記さらなる樹脂とは互いに相溶する必要がある。
【0089】
上記さらなる樹脂は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)などのオレフィン系樹脂;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂などの含ハロゲン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610などのポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシペンジレン;ポリアミドイミド;ゴム質重合体である。樹脂組成物(C)は、これらの樹脂を2種以上含んでいてもよい。樹脂組成物(C)におけるさらなる樹脂の含有率は、例えば、50質量%未満であり、好ましくは40質量%以下である。
【0090】
樹脂(A)がアクリル樹脂である場合、特に、主鎖に環構造を有するアクリル樹脂である場合、樹脂(A)との相溶性に優れることから、上記さらなる樹脂は、シアン化ビニル単量体に由来する構成単位と芳香族ビニル単量体に由来する構成単位とを有する共重合体であることが好ましい。当該共重合体は、例えば、スチレン−アクリロニトリル共重合体である。すなわち、樹脂組成物(C)は、アクリル樹脂とスチレン−アクリロニトリル共重合体とを含んでいてもよく、このとき、アクリル樹脂は主鎖に環構造を有していてもよい。
【0091】
樹脂(A)が正の固有複屈折を示す場合、樹脂組成物(C)は、負の固有複屈折を示す熱可塑性樹脂をさらに含んでいてもよい。このとき、樹脂組成物(C)および当該組成物(C)をさらに成形して得た成形体における複屈折性(例えば位相差)の制御の自由度が向上する。なお、スチレン−アクリロニトリル共重合体は、負の固有複屈折を示す。
【0092】
スチレン−アクリロニトリル共重合体は、乳化重合、懸濁重合、溶液重合、バルク重合などの各種の重合方法による形成が可能である。樹脂組成物(C)および当該組成物(C)をさらに成形して得た成形体を光学部材に使用する場合、その透明性および光学特性が向上することから、溶液重合またはバルク重合により形成したスチレン−アクリロニトリル共重合体が好ましい。
【0093】
樹脂組成物(C)は、熱可塑性樹脂およびUVA(B)以外の材料、例えば添加剤、を含むことができる。添加剤は、例えば、酸化防止剤、耐光安定剤、耐候安定剤、熱安定剤などの安定剤;位相差上昇剤、位相差低減剤、位相差安定剤などの位相差調整剤;ガラス繊維、炭素繊維などの補強材;近赤外線吸収剤;トリス(ジブロモプロピル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、酸化アンチモンなどの難燃剤;アニオン系、カチオン系、ノニオン系の界面活性剤を含む帯電防止剤;無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤;有機フィラー、無機フィラー、樹脂改質剤、可塑剤、滑剤である。樹脂組成物(C)における添加剤の含有率は、好ましくは5質量%未満、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0094】
これらの添加剤は、任意の時点および方法により樹脂組成物(C)に加えることができる。例えば、工程(i)において、樹脂(A)およびUVA(B)とともに溶融混練すればよい。
【0095】
工程(ii)における溶融濾過後の樹脂組成物(C)は、公知の成形方法、例えば押出成形、ブロー成形、射出成形、により、任意の形状に成形できる。成形後の樹脂組成物(C)の形状は、例えば、ペレット、フィルム、シートである。一度ペレットに成形した後に、さらに成形して、フィルム、シートなどの成形体としてもよい。
【0096】
樹脂組成物(C)および当該組成物(C)をさらに成形して得た成形体の用途は限定されず、例えば、光学部材であり、より具体的な例は、位相差フィルム、偏光子保護フィルムのような光学フィルムである。
【実施例】
【0097】
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
【0098】
最初に、本実施例において作製した熱可塑性樹脂組成物の評価方法を示す。
【0099】
[ガラス転移温度(Tg)]
熱可塑性樹脂組成物のガラス転移温度(Tg)は、JIS K7121の規定に準拠して求めた。具体的には、示差走査熱量計(リガク製、DSC−8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスには、α−アルミナを用いた。
【0100】
[重量平均分子量]
熱可塑性樹脂組成物の重量平均分子量Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算により求めた。測定に用いた装置および測定条件は以下の通りである。
システム:東ソー製GPCシステムHLC−8220
測定側カラム構成:
・ガードカラム(東ソー製、TSKguardcolumn SuperHZ−L)
・分離カラム(東ソー製、TSKgel SuperHZM−M)2本直列接続
リファレンス側カラム構成:
・リファレンスカラム(東ソー製、TSKgel SuperH−RC)
展開溶媒:クロロホルム(和光純薬工業製、特級)
展開溶媒の流量:0.6mL/分
標準試料:TSK標準ポリスチレン(東ソー製、PS−オリゴマーキット)
カラム温度:40℃
【0101】
[透過率]
波長380nmおよび590nmの光に対する熱可塑性樹脂組成物の光線透過率は、得られた樹脂組成物のクロロホルム溶液(濃度0.4質量%)を調製した後、当該クロロホルム溶液を光路長1cmの石英セルに収容し、吸光度計の一種である分光光度計(島津製作所製、UV−3100)を用いて求めた。波長380nmの光の透過率をT380(%)、波長590nmの光の透過率をT590(%)とする。
【0102】
[褐色の変色]
各実施例および比較例において、押出機の先端に取り付けたポリマーフィルタから排出される熱可塑性樹脂組成物の褐色の変色が、押出機およびポリマーフィルタの立ち上げ後、どの程度の時間で抑制されるかを評価した。具体的には、ポリマーフィルタへの樹脂組成物の導入、充填が完了し、当該フィルタの出口より樹脂組成物が吐出され始めてから、褐色味を帯びていない透明な樹脂組成物が2時間以内に得られた場合を「◎」、2時間以上3時間以内に得られた場合を「○」、3時間以上経過した後に得られた場合を「×」とした。より詳細には、ポリマーフィルタから排出された後にペレタイザーによってペレット化した熱可塑性樹脂組成物(樹脂ペレット)について、その褐色味の有無を判定した。
【0103】
[グルタルイミド単位の含有率]
実施例6および比較例3で使用したアクリル樹脂におけるグルタルイミド単位の含有率は、当該アクリル樹脂のペレットに対してその赤外吸収スペクトル(IRスペクトル)を測定し、イミドカルボニル基に対応する波数1670cm
-1付近の吸収強度と、エステルカルボニル基に対応する波数1720cm
-1付近の吸収強度および酸無水物のカルボニル基に対応する波数1760cm
-1付近の吸収強度との比から求めた。
【0104】
(製造例1)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応釜に、メタクリル酸メチル(MMA)230質量部、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル(MHMA)33質量部、重合溶媒としてトルエン250質量部、酸化防止剤(ADEKA製、アデカスタブ2112)0.15質量部、およびn−ドデシルメルカプタン0.2質量部を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。
【0105】
昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、商品名:ルペロックス570)0.28質量部を添加するとともに、上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.56質量部とスチレン12質量部とを2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の加温、熟成を行った。
【0106】
次に、得られた重合溶液に、環化縮合反応の触媒(環化触媒)としてリン酸ステアリル(堺化学工業製、Phoslex A−18)0.2質量部を加え、約90〜110℃の還流下において2時間、主鎖に位置するラクトン環構造が形成される環化縮合反応を進行させて、重合溶液(a−1)を得た。
【0107】
(製造例2)
攪拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応釜に、MMA42.5質量部、N−フェニルマレイミド5質量部、スチレン0.5質量部、重合溶媒としてトルエン50質量部、有機酸として無水酢酸0.2質量部、および連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン0.06質量部を仕込み、これに窒素を通じつつ重合槽内を昇温した。そして槽内の温度が100℃に達した時点で、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.075質量部を加え、これと同時に、滴下槽にて窒素のバブリングを開始した。次に、スチレン2質量部およびt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート0.075質量部の混合液を、重合槽内に5時間かけて等速度で滴下しながら、重合温度105〜110℃の還流下で15時間、重合反応を進行させた。
【0108】
次に、得られた重合溶液に、リン酸系の酸化防止剤として9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファネナントレン−10−オキシド(三光株式会社製、HCA)と、フェノール系酸化防止剤としてペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](ADEKA製、AO−60)とを、それぞれ0.1質量部および0.02質量部添加して、重合溶液(a−2)を得た。
【0109】
(製造例3)
撹拌装置、温度センサー、冷却管および窒素導入管を備えた反応釜に、MMA40質量部、MHMA10質量部、および重合溶媒としてトルエン50質量部を仕込み、これに窒素を通じつつ、105℃まで昇温させた。
【0110】
昇温に伴う還流が始まったところで、重合開始剤としてt−アミルパーオキシイソノナノエート(アルケマ吉富製、商品名:ルペロックス570)0.03質量部を添加するとともに、上記t−アミルパーオキシイソノナノエート0.06質量部を2時間かけて滴下しながら、約105〜110℃の還流下で溶液重合を進行させ、さらに4時間の加温、熟成を行った。
【0111】
次に、得られた重合溶液に、環化触媒としてリン酸ステアリル(堺化学工業製、Phoslex A−18)0.05質量部を加え、約90〜110℃の還流下において2時間、主鎖に位置するラクトン環構造が形成される環化縮合反応を進行させて、重合溶液(a−3)を得た。
【0112】
(実施例1)
製造例1で作製した重合溶液(a−1)を240℃に加熱した多管式熱交換器に通して、ラクトン環構造が形成される環化縮合反応を完結させた。重合溶液(a−1)は、ラクトン環構造を主鎖に有するアクリル樹脂(A−1)を含む。
【0113】
次に、重合溶液(a−1)を、バレル温度250℃、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)、先端部にギアポンプを介してリーフディスク型のポリマーフィルタ(濾過精度5μm、温度270℃)が接続された、ベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に12.5質量部/時(樹脂量換算)の処理速度で導入した。この処理速度にて脱揮を実施し、さらにポリマーフィルタ内部の経路への、アクリル樹脂(A−1)を含む、熱溶融状態にある樹脂組成物(D)の充填を完了させた。実施例1の組成物(D)は紫外線吸収剤を含まない(紫外線吸収剤の含有率Yは0質量%であった)。充填の完了は、ポリマーフィルタの出口から組成物(D)が吐出され始めることにより確認した。
【0114】
充填完了の確認後、重合溶液(a−1)の押出機への導入速度を31.2質量部/時(樹脂量換算)に増大させ、さらに、イオン交換水の第2および第4ベントの前からの投入(それぞれ投入速度0.47質量部/時)、ならびに紫外線吸収剤(B−1);(ADEKA製、アデカスタブ LA−F70)の35質量%トルエン溶液の供給(供給速度0.63質量部/時)を開始した。紫外線吸収剤の溶液は、高圧ポンプを用い、濾過精度1μmのフィルタを通した後に第3ベントの前から供給した。
【0115】
これにより、熱溶融状態にある脱揮された樹脂組成物が、ポリマーフィルタの有効濾過面積1m
2あたり58.2kg/時の速度で当該フィルタから連続的に吐出される定常状態となった。吐出された樹脂組成物は連続的にペレタイザーでペレット化して、ラクトン環構造を主鎖に有するアクリル樹脂(A−1)と紫外線吸収剤(B−1)とを含む樹脂組成物(C−1)のペレットを得た。
【0116】
樹脂組成物(C−1)のTgは121℃、重量平均分子量は13.6万であった。樹脂組成物(C−1)における紫外線吸収剤(B−1)の含有率Xは、0.7質量%(=(0.63×0.35)/(0.63×0.35+31.2)×100)であった。樹脂組成物(C−1)のT380は6%、T590は100%であった。
【0117】
実施例1では、含有率Yは0質量%であり、含有率Xに対する含有率Yの比Y/Xは0であった。そして、樹脂組成物(C−1)において褐色の変色の発生が継続する時間の程度は「◎」であった。
【0118】
(実施例2)
組成物(D)をポリマーフィルタに充填する際(このとき重合溶液(a−1)の押出機への導入速度は12.5質量部/時(樹脂量換算))にも、押出機への紫外線吸収剤(B−1)の35質量%トルエン溶液の供給(供給速度0.125質量部/時)を行った以外は実施例1と同様にして、アクリル樹脂(A−1)と紫外線吸収剤(B−1)とを含む樹脂組成物(C−1)のペレットを得た。なお、紫外線吸収剤の溶液は、高圧ポンプを用い、濾過精度1μmのフィルタを通した後に第3ベントの前から供給した。実施例2の組成物(D)における紫外線吸収剤の含有率Yは0.35質量%(=(0.125×0.35)/(0.125×0.35+12.5)×100)であった。
【0119】
実施例2では、含有率Yは0.35質量%、含有率Xは実施例1と同じ0.7質量%であり、比Y/Xは0.5であった。そして、樹脂組成物(C−1)において褐色の変色の発生が継続する時間の程度は「◎」であった。
【0120】
(実施例3)
組成物(D)をポリマーフィルタに充填する際(このとき重合溶液(a−1)の押出機への導入速度は12.5質量部/時(樹脂量換算))にも、押出機への紫外線吸収剤(B−1)の35質量%トルエン溶液の供給(供給速度0.176質量部/時)を行った以外は実施例1と同様にして、アクリル樹脂(A−1)と紫外線吸収剤(B−1)とを含む樹脂組成物(C−1)のペレットを得た。なお、紫外線吸収剤の溶液は、高圧ポンプを用い、濾過精度1μmのフィルタを通した後に第3ベントの前から供給した。実施例3の組成物(D)における紫外線吸収剤の含有率Yは0.49質量%(=(0.176×0.35)/(0.176×0.35+12.5)×100)であった。
【0121】
実施例3では、含有率Yは0.49質量%、含有率Xは実施例1と同じ0.7質量%であり、比Y/Xは0.7であった。そして、樹脂組成物(C−1)において褐色の変色の発生が継続する時間の程度は「◎」であった。
【0122】
(実施例4)
組成物(D)をポリマーフィルタに充填する際(このとき重合溶液(a−1)の押出機への導入速度は12.5質量部/時(樹脂量換算))にも、押出機への紫外線吸収剤(B−1)の35質量%トルエン溶液の供給(供給速度0.252質量部/時)を行った以外は実施例1と同様にして、アクリル樹脂(A−1)と紫外線吸収剤(B−1)とを含む樹脂組成物(C−1)のペレットを得た。なお、紫外線吸収剤の溶液は、高圧ポンプを用い、濾過精度1μmのフィルタを通した後に第3ベントの前から供給した。実施例4の組成物(D)における紫外線吸収剤の含有率Yは0.7質量%(=(0.252×0.35)/(0.252×0.35+12.5)×100)であった。
【0123】
実施例4では、含有率Yは0.7質量%、含有率Xは実施例1と同じ0.7質量%であり、比Y/Xは1.0であった。そして、樹脂組成物(C−1)において褐色の変色の発生が継続する時間の程度は「○」であった。
【0124】
(実施例5)
組成物(D)をポリマーフィルタに充填する際(このとき重合溶液(a−1)の押出機への導入速度は12.5質量部/時(樹脂量換算))にも、押出機への紫外線吸収剤(B−1)の35質量%トルエン溶液の供給(供給速度0.379質量部/時)を行った以外は実施例1と同様にして、アクリル樹脂(A−1)と紫外線吸収剤(B−1)とを含む樹脂組成物(C−1)のペレットを得た。なお、紫外線吸収剤の溶液は、高圧ポンプを用い、濾過精度1μmのフィルタを通した後に第3ベントの前から供給した。実施例5の組成物(D)における紫外線吸収剤の含有率Yは1.05質量%(=(0.379×0.35)/(0.379×0.35+12.5)×100)であった。
【0125】
実施例5では、含有率Yは1.05質量%、含有率Xは実施例1と同じ0.7質量%であり、比Y/Xは1.5であった。そして、樹脂組成物(C−1)において褐色の変色の発生が継続する時間の程度は「○」であった。
【0126】
(比較例1)
組成物(D)をポリマーフィルタに充填する際(このとき重合溶液(a−1)の押出機への導入速度は12.5質量部/時(樹脂量換算))にも、押出機への紫外線吸収剤(B−1)の35質量%トルエン溶液の供給(供給速度0.507質量部/時)を行った以外は実施例1と同様にして、アクリル樹脂(A−1)と紫外線吸収剤(B−1)とを含む樹脂組成物(C−1)のペレットを得た。なお、紫外線吸収剤の溶液は、高圧ポンプを用い、濾過精度1μmのフィルタを通した後に第3ベントの前から供給した。比較例1の組成物(D)における紫外線吸収剤の含有率Yは1.4質量%(=(0.507×0.35)/(0.507×0.35+12.5)×100)であった。
【0127】
比較例1では、含有率Yは1.4質量%、含有率Xは実施例1と同じ0.7質量%であり、比Y/Xは2であった。そして、樹脂組成物(C−1)において褐色の変色の発生が継続する時間の程度は「×」であった。
【0128】
実施例1〜5および比較例1の結果を、以下の表1にまとめる。
【0129】
【表1】
【0130】
(実施例6)
製造例2で作製した重合溶液(a−2)を240℃に加熱した多管式熱交換器に通した。重合溶液(a−2)は、N−フェニルマレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂(A−2)を含む。
【0131】
次に、重合溶液(a−2)を、バレル温度250℃、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)、先端部にギアポンプを介してリーフディスク型のポリマーフィルタ(濾過精度5μm、温度280℃)が接続された、ベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に10.8質量部/時(樹脂量換算)の処理速度で導入した。このとき、押出機の第3ベントの前から、高圧ポンプを用いて、紫外線吸収剤(B−1)の35質量%トルエン溶液を濾過精度1μmのフィルタを通した後に0.218質量部/時の供給速度で供給した。この処理速度にて脱揮を実施し、さらにポリマーフィルタ内部の経路への、アクリル樹脂(A−2)と紫外線吸収剤(B−1)とを含む、熱溶融状態にある樹脂組成物(D)の充填を完了させた。実施例6の組成物(D)における紫外線吸収剤の含有率Yは0.7質量%(=(0.218×0.35)/(0.218×0.35+10.8)×100)であった。充填の完了は、ポリマーフィルタの出口から組成物(D)が吐出され始めることにより確認した。
【0132】
充填完了の確認後、重合溶液(a−2)の押出機への導入速度を27.1質量部/時(樹脂量換算)に増大させ、さらに、イオン交換水の第2および第4ベントの前からの投入(それぞれ投入速度0.41質量部/時)を開始するとともに、紫外線吸収剤(B−1)の上記トルエン溶液の供給速度を0.546質量部/時に変更した。
【0133】
これにより、熱溶融状態にある脱揮された樹脂組成物が、ポリマーフィルタの有効面積1m
2あたり50.5kg/時の速度で当該フィルタから連続的に吐出される定常状態となった。吐出された樹脂組成物は連続的にペレタイザーでペレット化して、N−フェニルマレイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂(A−2)と紫外線吸収剤(B−1)とを含む樹脂組成物(C−2)のペレットを得た。
【0134】
樹脂組成物(C−2)のTgは133℃、重量平均分子量は16万であった。樹脂組成物(C−2)における紫外線吸収剤(B−1)の含有率Xは、0.7質量%(=(0.546×0.35)/(0.546×0.35+27.1)×100)であった。樹脂組成物(C−2)のT380は6%、T590は100%であった。
【0135】
実施例6では、含有率XおよびYともに0.7質量%であり、比Y/Xは1.0であった。そして、樹脂組成物(C−2)において褐色の変色の発生が継続する時間の程度は「○」であった。
【0136】
(比較例2)
組成物(D)をポリマーフィルタに充填する際(このとき重合溶液(a−2)の押出機への導入速度は10.8質量部/時(樹脂量換算))に押出機に供給する紫外線吸収剤(B−1)のトルエン溶液の速度を0.438質量部/時とした以外は、実施例6と同様にして、アクリル樹脂(A−2)と紫外線吸収剤(B−1)とを含む樹脂組成物(C−2)のペレットを得た。比較例2の組成物(D)における紫外線吸収剤の含有率Yは1.4質量%(=(0.438×0.35)/(0.438×0.35+10.8)×100)であった。
【0137】
比較例2では、含有率Yは1.4質量%、含有率Xは実施例6と同じ0.7質量%であり、比Y/Xは2.0であった。そして、樹脂組成物(C−2)において褐色の変色の発生が継続する時間の程度は「×」であった。
【0138】
(実施例7)
グルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂(A−3);(ダイセル・エボニック製、プレキシイミド8813、グルタルイミド単位の含有率42質量%)を、バレル温度250℃、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)、先端部にギアポンプを介してリーフディスク型のポリマーフィルタ(濾過精度5μm、温度280℃)が接続された、ベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に、フィーダーを用いて10.8質量部/時の処理速度で導入した。このとき、押出機の第2ベントの前から、高圧ポンプを用いて、紫外線吸収剤(B−1)の35質量%トルエン溶液を濾過精度1μmのフィルタを通した後に0.218質量部/時の供給速度で供給した。この処理速度にて脱揮を実施し、さらにポリマーフィルタ内部の経路への、アクリル樹脂(A−3)と紫外線吸収剤(B−1)とを含む、熱溶融状態にある樹脂組成物(D)の充填を完了させた。実施例7の樹脂組成物(D)における紫外線吸収剤の含有率Yは0.7質量%(=(0.218×0.35)/(0.218×0.35+10.8)×100)であった。充填の完了は、ポリマーフィルタの出口から組成物(D)が吐出され始めることにより確認した。
【0139】
充填完了の確認後、アクリル樹脂(A−3)の押出機への導入速度を27.1質量部/時(樹脂量換算)に増大させ、さらに、イオン交換水の第3ベントの前からの投入(投入速度0.41質量部/時)を開始するとともに、紫外線吸収剤(B−1)の上記トルエン溶液の供給速度を0.546質量部/時に変更した。
【0140】
これにより、熱溶融状態にある脱揮された樹脂組成物が、ポリマーフィルタの有効面積1m
2あたり50.5kg/時の速度で当該フィルタから連続的に吐出される定常状態となった。吐出された樹脂組成物は連続的にペレタイザーでペレット化して、グルタルイミド構造を主鎖に有するアクリル樹脂(A−3)と紫外線吸収剤(B−1)とを含む樹脂組成物(C−3)のペレットを得た。
【0141】
樹脂組成物(C−3)のTgは128℃、重量平均分子量は14.2万であった。樹脂組成物(C−3)における紫外線吸収剤(B−1)の含有率Xは、0.7質量%(=(0.546×0.35)/(0.546×0.35+27.1)×100)であった。樹脂組成物(C−3)のT380は6%、T590は100%であった。
【0142】
実施例7では、含有率XおよびYともに0.7質量%であり、比Y/Xは1.0であった。そして、樹脂組成物(C−3)において褐色の変色の発生が継続する時間の程度は「○」であった。
【0143】
(比較例3)
組成物(D)をポリマーフィルタに充填する際(このときアクリル樹脂(A−3)の押出機への導入速度は10.8質量部/時(樹脂量換算))に押出機に供給する紫外線吸収剤(B−1)のトルエン溶液の速度を0.438質量部/時とした以外は、実施例7と同様にして、アクリル樹脂(A−3)と紫外線吸収剤(B−1)とを含む樹脂組成物(C−3)のペレットを得た。比較例3の組成物(D)における紫外線吸収剤の含有率Yは1.4質量%(=(0.438×0.35)/(0.438×0.35+10.8)×100)であった。
【0144】
比較例3では、含有率Yは1.4質量%、含有率Xは実施例7と同じ0.7質量%であり、比Y/Xは2.0であった。そして、樹脂組成物(C−3)において褐色の変色の発生が継続する時間の程度は「×」であった。
【0145】
(実施例8)
製造例3で作製した重合溶液(a−3)を240℃に加熱した多管式熱交換器に通して環化縮合反応を完結させた。重合溶液(a−3)は、ラクトン環構造を主鎖に有するアクリル樹脂(A−4)を含む。
【0146】
次に、重合溶液(a−3)を、バレル温度250℃、減圧度13.3〜400hPa(10〜300mmHg)、リアベント数1個およびフォアベント数4個(上流側から第1、第2、第3、第4ベントと称する)、先端部にギアポンプを介してリーフディスク型のポリマーフィルタ(濾過精度5μm、温度295℃)が接続され、第3ベントと第4ベントとの間にサイドフィーダーを備える、ベントタイプスクリュー二軸押出機(L/D=52)に9.6質量部/時(樹脂量換算)の処理速度で導入した。このとき、サイドフィーダーからスチレン−アクリロニトリル共重合(スチレン単位/アクリロニトリル単位の比率が73質量%/27質量%、重量平均分子量22万)のペレットを1.2質量部/時の速度で投入するとともに、押出機の第4ベントの前から、高圧ポンプを用いて、紫外線吸収剤(B−2)および酸化防止剤の混合溶液を濾過精度1μmのフィルタを通した後に0.15質量部/時の供給速度で供給した。当該混合溶液には、フェノール系酸化防止剤(BASFジャパン製、イルガノックス1010)0.9質量部、イオウ系酸化防止剤(ADEKA製、アデカスタブAO−412S)0.9質量部および紫外線吸収剤(B−2);(BASFジャパン製、チヌビン477(有効成分80%))68.4質量部をトルエン29.8質量部に溶解させた溶液を用いた。混合溶液における紫外線吸収剤(B−2)の有効成分量は54.7質量%である。この処理速度にて脱揮を実施し、さらにポリマーフィルタ内部の経路への、アクリル樹脂(A−4)と紫外線吸収剤(B−2)とを含む、熱溶融状態にある樹脂組成物(D)の充填を完了させた。実施例8の樹脂組成物(D)における紫外線吸収剤の含有率Yは0.75質量%(=(0.15×0.547)/(0.15×0.547+9.6+1.2)×100)であった。充填の完了は、ポリマーフィルタの出口から組成物(D)が吐出され始めることにより確認した。
【0147】
充填完了の確認後、重合溶液(a−3)の押出機への導入速度を24.0質量部/時(樹脂量換算)に、スチレン−アクリロニトリル共重合体のペレットの投入速度を3.0質量部/時に、それぞれ増大させ、さらに、イオン交換水の第2ベントの前からの投入(投入速度0.36質量部/時)および失活剤溶液の第3ベントの前からの投入(投入速度0.17質量部/時)を開始するとともに、紫外線吸収剤(B−2)を含む上記混合溶液の供給速度を0.757質量部/時に変更した。失活剤(環化触媒の失活剤)溶液には、36質量部のオクチル酸カルシウム(日本化学産業製、ニッカオクチクスカルシウム5%)をトルエン64質量部に溶解させた溶液を用いた。
【0148】
これにより、熱溶融状態にある脱揮された樹脂組成物が、ポリマーフィルタの有効面積1m
2あたり50.9kg/時の速度で当該フィルタから連続的に吐出される定常状態となった。吐出された樹脂組成物は連続的にペレタイザーでペレット化して、ラクトン環構造を主鎖に有するアクリル樹脂(A−4)とスチレン−アクリロニトリル共重合体と紫外線吸収剤(B−2)とを含む樹脂組成物(C−4)のペレットを得た。
【0149】
樹脂組成物(C−4)のTgは124℃、重量平均分子量は14.9万であった。樹脂組成物(C−4)における紫外線吸収剤(B−2)の含有率Xは、1.5質量%(=(0.757×0.547)/(0.757×0.547+24+3)×100)であった。樹脂組成物(C−4)のT380は7%、T590は100%であった。
【0150】
実施例8では、含有率Xは1.5質量%、含有率Yは0.75質量%であり、比Y/Xは0.5であった。そして、樹脂組成物(C−4)において褐色の変色の発生が継続する時間の程度は「◎」であった。
【0151】
(実施例9)
組成物(D)をポリマーフィルタに充填する際(このとき重合溶液(a−3)の押出機への導入速度は9.6質量部/時(樹脂量換算)、スチレン−アクリロニトリル共重合体の投入速度は1.2質量部/時)に押出機に供給する紫外線吸収剤(B−2)を含む上記混合溶液の速度を0.30質量部/時とした以外は、実施例8と同様にして、アクリル樹脂(A−4)とスチレン−アクリロニトリル共重合体と紫外線吸収剤(B−2)とを含む樹脂組成物(C−4)のペレットを得た。実施例9の組成物(D)における紫外線吸収剤の含有率Yは1.5質量%(=(0.30×0.547)/(0.30×0.547+9.6+1.2)×100)であった。
【0152】
実施例9では、含有率Yは1.5質量%、含有率Xは実施例8と同じ1.5質量%であり、比Y/Xは1.0であった。そして、樹脂組成物(C−4)において褐色の変色の発生が継続する時間の程度は「○」であった。
【0153】
(比較例4)
組成物(D)をポリマーフィルタに充填する際(このとき重合溶液(a−3)の押出機への導入速度は9.6質量部/時(樹脂量換算)、スチレン−アクリロニトリル共重合体の投入速度は1.2質量部/時)に押出機に供給する紫外線吸収剤(B−2)を含む上記混合溶液の速度を0.61質量部/時とした以外は、実施例8と同様にして、アクリル樹脂(A−4)とスチレン−アクリロニトリル共重合体と紫外線吸収剤(B−2)とを含む樹脂組成物(C−4)のペレットを得た。比較例4の組成物(D)における紫外線吸収剤の含有率Yは3.0質量%(=(0.61×0.547)/(0.61×0.547+9.6+1.2)×100)であった。
【0154】
比較例4では、含有率Yは3.0質量%、含有率Xは実施例8と同じ1.5質量%であり、比Y/Xは2.0であった。そして、樹脂組成物(C−4)において褐色の変色の発生が継続する時間の程度は「×」であった。
【0155】
実施例6〜9および比較例2〜4の結果を、以下の表2にまとめる。
【0156】
【表2】
【0157】
表1,2に示すように、比Y/Xが1.5以下において、押出機およびポリマーフィルタの立ち上げ時における樹脂組成物の褐色の変色が抑制され、速やかな樹脂組成物の製造立ち上げが達成できた。