特許第6231842号(P6231842)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231842
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】ガス化炉を備えたガス化システム
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/46 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
   C10J3/46 G
   C10J3/46 F
【請求項の数】12
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-210627(P2013-210627)
(22)【出願日】2013年10月8日
(65)【公開番号】特開2015-74689(P2015-74689A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】石賀 琢也
(72)【発明者】
【氏名】木曽 文彦
(72)【発明者】
【氏名】流森 文彦
(72)【発明者】
【氏名】末次 朗憲
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−155289(JP,A)
【文献】 特開2014−095004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体燃料と酸素をガス化炉の高さ方向に複数段設置したバーナからガス化炉内に供給し、ガス化炉内で固体燃料中の可燃分をガス化した生成ガスを生成すると共に、固体燃料中の灰分を溶融して溶融スラグ化するガス化炉を備えたガス化システムにおいて、
前記複数段設置したバーナにそれぞれ固体燃料を供給する複数の燃料供給系統を設置し、
前記複数段設置したバーナのうち、下段のバーナに固体燃料を供給する燃料供給系統に、水分を含有した固体燃料である高水分燃料を乾燥する乾燥装置を備えた固体燃料の含有水分量を調整する手段を設けたことを特徴とするガス化炉を備えたガス化システム。
【請求項2】
請求項1に記載のガス化炉を備えたガス化システムにおいて、
前記ガス化炉でガス化した前記生成ガスをガス化炉の上方より抜き出すように前記ガス化炉を構成すると共に、前記ガス化炉で溶融した溶融スラグをガス化炉の下方より抜き出すように前記ガス化炉を構成し、
前記複数段設置したバーナのうち、前記下段のバーナに固体燃料を供給する前記燃料供給系統に前記固体燃料の含有水分量を調整する手段を設置したことを特徴とするガス化炉を備えたガス化システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のガス化炉を備えたガス化システムにおいて、
前記固体燃料の含有水分量を調整する手段は、水分を含有した固体燃料である高水分燃料を乾燥する前記乾燥装置と、前記乾燥装置で乾燥させた固体燃料を粉砕する粉砕装置と、前記粉砕装置で粉砕した固体燃料を貯留すると共に、この貯留した固体燃料を供給するホッパと、前記ホッパから前記下段のバーナに固体燃料を供給する燃料搬送管を備えて構成していることを特徴とするガス化炉を備えたガス化システム。
【請求項4】
請求項3に記載のガス化炉を備えたガス化システムにおいて、
前記固体燃料の水分含有量を調整する手段に備えられた乾燥装置で高水分燃料を乾燥させて発生した水蒸気を、前記複数段設置したバーナより上方のガス化炉内に供給して該ガス化炉で発生した生成ガスと混合させるように構成していることを特徴とするガス化炉を備えたガス化システム。
【請求項5】
請求項3に記載のガス化炉を備えたガス化システムにおいて、
前記固体燃料の水分含有量を調整する手段に備えられた乾燥装置で高水分燃料を乾燥させて発生した水蒸気を、前記ガス化炉の上部に設置した生成ガス冷却部に供給して該ガス化炉で発生した生成ガスと混合させるように構成していることを特徴とするガス化炉を備えたガス化システム。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載のガス化炉を備えたガス化システムにおいて、
前記固体燃料の水分含有量を調整する手段に備えられた乾燥装置で高水分燃料を乾燥させて発生した水蒸気の一部を、前記ガス化炉の下流側に供給して該ガス化炉の下流側でも前記水蒸気を生成ガスと混合させるように構成していることを特徴とするガス化炉を備えたガス化システム。
【請求項7】
請求項5に記載のガス化炉を備えたガス化システムにおいて、
前記固体燃料の水分含有量を調整する手段に備えられた乾燥装置で高水分燃料を乾燥させて発生した水蒸気は、前記ガス化炉の上部の前記生成ガス冷却部に設置した噴霧ノズルから生成ガス冷却部内に供給するように構成していることを特徴とするガス化炉を備えたガス化システム。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれか1項に記載のガス化炉を備えたガス化システムにおいて、
前記ガス化炉の上部の前記生成ガス冷却部の壁面部に冷却水を流通させる水冷管を配設し、
前記水冷管に冷却水を供給する冷却水系統を配設し、
前記冷却水系統を通じて前記ガス化炉の上部の生成ガス冷却部に設置した前記水冷管に冷却水を供給し、該ガス化炉で発生した生成ガスを前記生成ガス冷却部の水冷管によって冷却するように構成していることを特徴とするガス化炉を備えたガス化システム。
【請求項9】
請求項1に記載のガス化炉を備えたガス化システムにおいて、
前記ガス化炉でガス化した前記生成ガスをガス化炉の上方より抜き出すように前記ガス化炉を構成すると共に、前記ガス化炉で溶融した溶融スラグをガス化炉の下方より抜き出すように前記ガス化炉を構成し、
前記複数段設置したバーナのうち、前記下段のバーナに固体燃料を供給する前記燃料供給系統に前記固体燃料の含有水分量を調整する手段を設置し、
前記ガス化炉の下流側に、生成ガス中のCOを回収するCO回収手段と、前記CO回収手段で回収したCOを加熱する加熱手段と、前記加熱手段で加熱したCOを圧縮する圧縮装置をそれぞれ設置して、前記圧縮装置で圧縮したCOを搬送流体として用いて前記固体燃料をガス化炉に搬送する搬送手段を備えたことを特徴とするガス化炉を備えたガス化システム。
【請求項10】
請求項9に記載のガス化炉を備えたガス化システムにおいて、
COを加熱する前記加熱手段の熱源に、前記CO回収手段で回収した生成ガス中のCOを吸収させるCO吸収液の再生加熱用蒸気を用いるように構成したことを特徴とするガス化炉を備えたガス化システム。
【請求項11】
請求項9に記載のガス化炉を備えたガス化システムにおいて、
COを加熱する前記加熱手段の熱源に、前記ガス化炉の下流側にて該ガス化炉で生成した生成ガスをシフト反応させた後の生成ガスの一部を用いるように構成したことを特徴とするガス化炉を備えたガス化システム。
【請求項12】
請求項9に記載のガス化炉を備えたガス化システムにおいて、
COの加熱手段における熱源に、クエンチャーおよび水洗塔で発生する高温水を用いるように構成したことを特徴とするガス化炉を備えたガス化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体燃料中の可燃分をガス化して灰分を溶融スラグ化するガス化炉に係り、特に褐炭等の水分含有量の多い固体燃料をガス化炉の燃料として適用するガス化炉を備えたガス化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
褐炭等の水分含有量の多い固体燃料の利用量は、全石炭の約半分に増加している。褐炭の水分含有量は、30〜65%程度である。これは、日本で発電用に多く用いられている瀝青炭の5〜10倍多い。
【0003】
褐炭の単位重量当たりの真発熱量は、瀝青炭の40〜70%程度と低いため、同じ酸素量で比較すると、褐炭の燃焼温度は、瀝青炭より数百度低くなる。
【0004】
これに対し、固体燃料を部分燃焼(ガス化)させてCOやHを主成分とする生成ガスを回収し、固体燃料中の灰分を溶融スラグ化して生成ガスから分離するガス化炉では、ガス化炉の炉内温度を灰融点(1200〜1600℃)以上に高める必要がある。
【0005】
固体燃料として褐炭を未乾燥でガス化炉に投入した場合、その水分量の多さと真発熱量の低さからガス化炉の炉内温度が上がらず、炉内で灰溶融できずにガス化運転できない場合がある。
【0006】
ガス化炉の炉内温度を上げるためには、ガス化炉投入前の固体燃料の褐炭を乾燥して水分量を低減し、ガス化炉に投入する固体燃料の真発熱量を高める必要がある。
【0007】
一方、ガス化炉のエネルギー効率を高めるには、固体燃料の褐炭の乾燥動力低減が不可欠である。
【0008】
例えば、WO2011−129192号公報(特許文献1)には、乾燥により水分含有量を調整した固体燃料を、ガス化炉に設けた上下段バーナからガス化炉内に投入する構成のガス化炉が記載されている。
【0009】
また、特開2012−17371号公報(特許文献2)には、固体燃料をガス化炉に設けた上下段バーナからガス化炉内に投入する構成のガス化炉であって、下段バーナには瀝青炭や亜瀝青炭や石油コークスといった乾燥プロセスの不要な固体燃料を供給し、上段バーナには下段バーナよりも低灰分かつ低燃料比の固体燃料を供給する構成のガス化炉が記載されている。そして褐炭等の水分含有量の多い固体燃料は、乾燥後に上段バーナからガス化炉内に投入されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2011−129192号公報
【特許文献2】特開2012−17371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
褐炭等の高水分の固体燃料をガス化炉の固体燃料として用いるための課題として、燃料乾燥の動力低減、乾燥で発生した水蒸気の有効利用、ガス化炉内で灰溶融ガス化を成立させるための炉内温度低下防止が挙げられる。
【0012】
まず、褐炭等の高水分の固体燃料を乾燥するために必要なエネルギー使用量試算の一例として、水分50wt%の固体燃料1500t/d(含有水分750t/d)を水分25wt%の固体燃料1000t/d(含有水分250t/d)に乾燥する場合の、乾燥後の燃料の総発熱量の試算例を表1に、燃料乾燥に必要な熱量の試算例を表2にそれぞれ示す。
【0013】
【表1】
【0014】
【表2】
【0015】
表1は、水分50wt%の固体燃料1500t/d(含有水分750t/d)を水分25wt%の固体燃料1000t/d(含有水分250t/d)に乾燥する場合の、乾燥後の燃料の総発熱量を示す試算例であり、表2は、水分50wt%の固体燃料1500t/d(含有水分750t/d)を水分25wt%の固体燃料1000t/d(含有水分250t/d)に乾燥する場合の、乾燥後の燃料の燃料乾燥に必要な熱量を示す試算例である。
【0016】
表2の試算例に記載した燃料乾燥に必要な熱量においては、燃料中の水分は20℃の液体で存在すると仮定し、燃料乾燥の定義は、20℃の液体の水を100℃の水蒸気に加熱することとした。
【0017】
その結果、表1の試算例における項目(4)の乾燥後燃料の総発熱量に関する値、及び、表2の試算例における項目(10)の燃料乾燥に必要な熱量に関する値から検討すると、燃料乾燥に必要な熱量は、乾燥後燃料の総発熱量の約7%に達する。
【0018】
上記の試算結果からも、褐炭等の高水分の固体燃料を用いる場合、ガス化炉のエネルギー効率を高めるには、乾燥動力を低減し、燃料乾燥に必要な熱量の削減が不可欠である。
【0019】
しかしながら、前記WO2011−129192号公報及び特開2012−17371号公報には、褐炭等の高水分の固体燃料のみを用いた場合の、燃料乾燥に必要な熱量の削減策については、何等言及されていない。
【0020】
次に、燃料乾燥で発生した水蒸気の有効利用方法としては、燃料乾燥の熱源、ガス化炉で発生した生成ガスとの混合による生成ガスの冷却およびシフト反応促進、ガス化炉内への燃料投入による炉壁の高温化防止および水蒸気ガス化反応促進等が考えられる。
【0021】
WO2011−129192号公報には、ガス化炉に投入する固体燃料中の水分量を所定値となるように乾燥させ、炉内の水蒸気ガス化反応を促進させるガス化炉について記載されている。
【0022】
しかしながら、前記WO2011−129192号公報及び特開2012−17371号公報には、燃料乾燥で発生した水蒸気の有効利用方法については、何等言及されていない。
【0023】
炉内温度低下防止策について、前記WO2011−129192号公報では、乾燥した固体燃料を上下段バーナからガス化炉内に投入するガス化炉に関する技術が記載されている。
【0024】
また、特開2012−17371号公報には、下段バーナから発熱量の高い瀝青炭、亜瀝青炭、石油コークスをガス化炉内に投入し、上段バーナから乾燥させた褐炭をガス化炉内に投入するガス化炉に関する技術が記載されている。
【0025】
しかしながら、褐炭等の高水分の固体燃料のみをガス化炉に投入する燃料として用いた場合に、燃料の乾燥動力低減も考慮したガス化炉内の温度低下防止策については、前記WO2011−129192号公報及び特開2012−17371号公報のいずれにも言及されていない。
【0026】
本発明の目的は、ガス化炉に投入する高水分の固体燃料の乾燥動力が低減可能なガス化炉を備えたガス化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明のガス化炉を備えたガス化システムは、固体燃料と酸素をガス化炉の高さ方向に複数段設置したバーナからガス化炉内に供給し、ガス化炉内で固体燃料中の可燃分をガス化した生成ガスを生成すると共に、固体燃料中の灰分を溶融して溶融スラグ化するガス化炉を備えたガス化システムにおいて、 前記複数段設置したバーナにそれぞれ固体燃料を供給する複数の燃料供給系統を設置し、前記複数段設置したバーナのうち、下段のバーナに固体燃料を供給する燃料供給系統に、水分を含有した固体燃料である高水分燃料を乾燥する乾燥装置を備えた固体燃料の含有水分量を調整する手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ガス化炉に投入する高水分の固体燃料の乾燥動力が低減可能なガス化炉を備えたガス化システムが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施例である高水分燃料を供給してガス化するガス化炉を備えたガス化システムの系統図。
図2】本発明の第2実施例である高水分燃料を供給してガス化するガス化炉を備えたガス化システムであって、生成ガスの冷却にクエンチャーを用いたガス化システムの系統図。
図3】本発明の第3実施例である高水分燃料を供給してガス化するガス化炉を備えたガス化システムの系統図。
図4】本発明の第4実施例である高水分燃料を供給してガス化するガス化炉を備えたガス化システムであって、ガス化炉への固体燃料の搬送ガスを予熱するガス化システムの系統図。
図5】本発明の第5実施例である高水分燃料を供給してガス化するガス化炉を備えたガス化システムであって、ガス化炉への固体燃料の搬送ガスを予熱するガス化システムの系統図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施例である高水分燃料を供給してガス化するガス化炉を備えたガス化システムについて、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0031】
本発明の第1実施例である高水分燃料を供給してガス化するガス化炉を備えたガス化システムについて、図1を参照して説明する。
【0032】
図1に示した本実施例のガス化炉を備えたガス化システムは、燃料の乾燥・供給、燃料のガス化、ガス化した生成ガスの脱塵、生成ガスのガス精製、生成ガス中のCO回収、再利用するCO供給系をそれぞれ備えている。
【0033】
図1に示した第1実施例であるガス化炉を備えたガス化システムにおいて、固体燃料の高水分燃料1をガス化するガス化炉16については、2つの燃料供給系統10a、10bを通じて固体燃料の高水分燃料1をそれぞれ投入するバーナ39、40をガス化炉16に上下に2段備えて構成しており、このガス化炉16内で投入した固体燃料中の可燃分のガス化で生じた生成ガス17をガス化炉16の上方より、炉下部の高温化で固体燃料中の灰分の溶融スラグ化で生じた溶融スラグをガス化炉16の下方より、それぞれ抜き出すガス化方式を適用している。
【0034】
本実施例のガス化炉を備えたガス化システムでは、ガス化炉16の炉下部を高温化するために、2つの燃料供給系統10a、10bのうち、ガス化炉16の炉下部に設置した下段バーナ40から該ガス化炉16内に投入する固体燃料の高水分燃料1のみを供給する燃料供給系統10bで乾燥させる。
【0035】
また、ガス化炉16で固体燃料をガス化して生じた生成ガスについては、生成ガス中のC分をCOとして回収し、生成ガス中のHを主に利用する。
【0036】
本実施例のガス化炉を備えたガス化システムは、吸収液によるCO回収方式を用いた場合について説明する。生成ガスから回収したCOの一部は、プラント排熱で予熱し、予熱したCOを圧縮して固体燃料の高水分燃料1を搬送する搬送ガスとして用いる。
【0037】
本実施例のガス化炉を備えたガス化システムでは、固体燃料の高水分燃料1を搬送ガスとして用いるCOを予熱する熱源に、CO吸収液の再生加熱用蒸気を用いる場合で説明する。
【0038】
燃料供給系統10bを通じてガス化炉16の下段バーナ40に供給する固体燃料の高水分燃料1は、前記燃料供給系統10bを構成する乾燥装置2で乾燥した後に、粉砕装置3に供給される。
【0039】
高水分燃料1として褐炭を用いた場合、30〜65wt%の水分を含むが、乾燥装置2による乾燥により水分25wt%以下に低減させるのが望ましい。
【0040】
また、前記乾燥装置2で固体燃料の高水分燃料1を乾燥することにより、飛散燃料を含む水蒸気27が発生する。ここで、飛散燃料の多くは微粒である。
【0041】
前記乾燥装置2で乾燥した固体燃料の高水分燃料1は粉砕装置3に供給され、この粉砕装置3によって固体燃料の高水分燃料1は、平均粒径数十ミクロン程度に粉砕される。
【0042】
そして粉砕装置3で粉砕された固体燃料の高水分燃料1は、ロックホッパ4に貯留された後、所定の圧力に昇圧されて、移送弁6を介してフィードホッパ5に移送される。
【0043】
燃料移送の際、ロックホッパ4からの移送不良を防ぐべく、ロックホッパ均圧弁7とフィードホッパ均圧弁8を開けて、ロックホッパ4とフィードホッパ5を均圧化し、ロックホッパ4の出口付近に不活性ガスを投入する。
【0044】
本実施例のガス化炉を備えたガス化システムでは、この不活性ガスに、燃料搬送ガスと同様に、圧縮したCO(104)を用いる。なお、ロックホッパ4とフィードホッパ5の圧力は、圧力調整弁9で調整する。
【0045】
フィードホッパ5に移送された固体燃料の高水分燃料1は、圧縮したCO(104)で圧送され、前記燃料供給系統10bを構成する燃料搬送管10とガス化炉16に設置した下段バーナ40を通じて、ガス化炉16内に投入される。
【0046】
ガス化炉16内では、下段バーナ40を通じて投入された固体燃料の高水分燃料1は、同じく下段バーナ40より投入される酸素15と混合して着火してガス化し、生成ガス17を生成する。
【0047】
これにより、ガス化炉16の下部を高温化することで固体燃料の高水分燃料1の灰分を溶融スラグ化する。溶融スラグは、ガス化炉16のスラグタップ59から直下のクエンチ部53に流下して冷却されて固化し、スラグ31として回収される。
【0048】
このスラグ31は非晶質で、重金属の溶出も検出限界未満であるため、コンクリート骨材などへの有効利用が可能である。
【0049】
次に、ガス化炉16の上段バーナ39に供給する固体燃料の高水分燃料1は、未乾燥のまま、燃料供給系統10aを構成する粉砕装置3で粉砕され、ロックホッパ4、フィードホッパ5を経由した後、搬送管10とガス化炉16に設置した上段バーナ39を通じて、ガス化炉16に投入される。
【0050】
このように、前記燃料供給系統10aを構成してガス化炉16に投入する固体燃料の一部の高水分燃料1を未乾燥にしてガス化炉16に投入する構成にすることによって、固体燃料の高水分燃料1を乾燥させる乾燥動力も低減でき、プラントのエネルギー効率も向上する。
【0051】
例えば、固体燃料の高水分燃料1に褐炭を用いた場合、未乾燥の状態でも、乾燥褐炭と同様のハンドリングが可能な場合があるため、ガス化炉16内で灰溶融ガス化を維持できれば、本実施例のガス化炉を備えたガス化システムは成立する。
【0052】
本実施例である高水分燃料を供給してガス化するガス化炉を備えたガス化システムによれば、褐炭等の高水分の固体燃料の全量でなく、一部を乾燥させてガス化炉に投入することになるため、燃料の乾燥動力を低減できる。
【0053】
例えば、上下2段のバーナから等量の燃料を投入するガス化炉において、上段バーナから未乾燥の燃料を投入することで、乾燥動力を半減できる。
【0054】
一方、下段バーナから乾燥した燃料を投入することで、炉下部の温度低下を防ぐことができ、炉下部における灰の溶融スラグ化を維持する。
【0055】
上段バーナから未乾燥の燃料を投入することで、ガス化炉上段部には多量の水分が投入される。燃料中の水分が炉内で蒸発し、上段バーナからの噴流に同伴されることで、上段バーナの火炎温度が低下する。
【0056】
これにより、上段バーナの噴流が壁面近傍を流下する場合でも、高温火炎による炉壁溶損のリスクを低減できる。さらに、上段バーナの噴流に同伴される固体燃料中の炭素分は、水蒸気と混合することで(1)式の水蒸気ガス化反応が進むため、炉内における炭素ガス化率も向上する。
【0057】
C+HO→CO+H ・・・・(1)
次に、燃料乾燥で発生した水蒸気を、ガス化炉で発生した生成ガスと混合させることで、生成ガスを冷却できる。
【0058】
これにより、ガス化炉の下流側に設置される生成ガス冷却部を小型化でき、生成ガス冷却用に投入する水又は水蒸気の流量を削減できる。
【0059】
また、生成ガス中の水蒸気濃度を高めた運用とすることで、下流のシフト反応器で添加する水蒸気量も削減できる。特に900〜1000℃以上で水蒸気濃度を高めると、(2)式のシフト反応も促進できるため、下流のシフト反応器で添加する水蒸気量をさらに削減できる。
【0060】
CO+HO→CO+H ・・・・(2)
また、燃料乾燥で発生した水蒸気をバーナ近傍の側壁、又はバーナ面よりガス化炉内に供給することで、側壁やバーナ近傍のガス温度を低下し、側壁とバーナを保護する。
【0061】
一方、燃料乾燥で発生した水蒸気には、微粉の固体燃料も混入する。
【0062】
本発明のように、燃料乾燥で発生した水蒸気を生成ガスと混合させたり、ガス化炉内に投入したりすることで、水蒸気に同伴された微粉の固体燃料を除去するための集塵手段を不要化して系統簡素化でき、かつ乾燥時の燃料ロスを低減できる。
【0063】
最後に、プラント排熱で固体燃料を搬送する不活性ガスを予熱することで、ガス化炉内の温度低下防止と、プラントのエネルギー効率向上に有効である。
【0064】
従来は未利用であった水洗塔やクエンチャーからの200℃程度の高温水や、CO2回収する場合のCO再生塔におけるCO吸収液の再生加熱器からの100〜150℃程度の高温水の顕熱を回収し、ガス化炉に投入するため、プラント排熱を有効利用でき、かつガス化炉内の温度低下防止に有効である。
【0065】
前記ガス化炉16に投入される酸素15の総量は、高水分燃料1の完全燃焼に必要な酸素量よりも少なくする。これにより、ガス化炉16内で高水分燃料1がガス化されて、CO、Hを主成分とする生成ガス17が発生する。
【0066】
生成ガス17の温度は800℃以上であるため、ガス化炉16の直上に設置した生成ガス冷却部18の側壁に水冷管18aを配置し、別系統として配設された冷却水系統18bを通じて冷却水を前記水冷管18aに供給することによって、ガス化炉16内で生成した生成ガス17を350℃程度まで冷却される。
【0067】
ここで、生成ガス冷却部18を小型化し、プラント建設コストを低減させるために、噴霧水32を生成ガス冷却部18に投入して生成ガス17を冷却する。
【0068】
さらに、ガス化炉16に設置した前記下段バーナ40に投入する固体燃料の高水分燃料1を乾燥させる前記燃料供給系統10bを構成する乾燥装置2で発生した飛散燃料を含む水蒸気27を、コンプレッサ28で昇圧し、昇圧後の飛散燃料を含む水蒸気29として、生成ガス冷却部18に設けた噴霧ノズル29aから生成ガス冷却部18内に投入し、生成ガス17を冷却する。
【0069】
これにより、ガス化炉16内でガス化した生成ガス17は、生成ガス冷却部18に投入された水や水蒸気と混合して冷却されるだけでなく、生成ガス17中の水蒸気濃度も高められる。
【0070】
上記した構成によって、ガス化炉16の下流側に設置されたシフト反応器38で添加されるシフト反応用水蒸気30の流量を低減でき、プラントのエネルギー効率を向上できる。
【0071】
また、ガス化炉16内でガス化した生成ガス17の温度が900〜1000℃以上で水蒸気濃度を高めることができれば、生成ガス冷却部18内においても、(2)式に前述したシフト反応(CO+HO→CO2+H)が無触媒で進む。
【0072】
シフト反応器38で使用するシフト触媒量も低減できるため、プラントの運転コスト低減にも寄与できる。
【0073】
生成ガス冷却器18で350℃程度まで冷却された生成ガス17は、脱塵装置19で脱塵され、生成ガス17中に同伴されたチャー20が回収される。
【0074】
ここで、チャー20には、ガス化炉16内で発生したチャーと、生成ガス冷却器18にて投入された昇圧後の飛散燃料を含む水蒸気29に含まれる飛散燃料が含まれる。
【0075】
チャー20は、上述した高水分燃料1と同様にチャーロックホッパ21からチャーフィードホッパ22に移送され、圧縮したCO104で圧送されてチャー搬送管60、チャーバーナ61を介してガス化炉16に再投入される。
【0076】
脱塵装置19で脱塵された350℃程度の生成ガス17は、生成ガスの熱交換器36でCO2吸収後の生成ガス43との熱交換により、250〜300℃程度に冷却される。
【0077】
その後、生成ガス17はガス精製部に供給され、まず水洗塔33で塩素等のハロゲン物質、および脱塵装置19を通過した微粒子などが除去される。
【0078】
水洗塔33で200℃程度に冷却された生成ガス17は、生成ガスの加熱器37で220℃程度に加熱されてCOS転化器34に供給される。
【0079】
COS転化器34において、COSをHOとの反応により、COS中S分をHSとさせる。
【0080】
なお、水洗塔33出口の生成ガス17の温度は露点以上とし、生成ガスの加熱器37出口の温度がCOS転化器34に適した条件であることに留意する必要がある。
【0081】
COS転化器下流の生成ガス35は、生成ガスの熱交換器36と生成ガスの加熱器37で250〜300℃程度に加熱され、シフト反応器38に供給される。
【0082】
シフト反応器38では、シフト反応用水蒸気30を添加し、前述の(2)式のシフト反応(CO+HO→CO+H)を進行させる。
【0083】
これにより、シフト反応後の生成ガス41の主成分はH、CO、HOとなる。
【0084】
なお、シフト反応器38入口のCOS転化器34の下流の生成ガス35温度は、シフト反応器38内に充填されたシフト触媒の特性に応じて、適宜調整すると良い。
【0085】
また、シフト反応器38における上述したシフト反応は発熱反応であるため、シフト反応後の生成ガス41の温度は、シフト反応器38の入口側の温度より数十℃以上高まり、350℃以上となる。
【0086】
シフト反応後の生成ガス41の温度については、シフト触媒保護の観点で調整する必要があり、シフト反応器38の複数設置や冷却等で対処しても良い。
【0087】
350℃以上となったシフト反応後の生成ガス41は、前記の生成ガスの熱交換器36とクーラー58で40℃程度に冷却され、CO回収部のCO吸収塔42に供給される。
【0088】
CO吸収塔42において、シフト反応後の生成ガス41は、CO吸収液(ジメチルエタノールアミンなど)と接触して生成ガス41中のCOが除去される。ここで、シフト反応後の生成ガス41中のHSも同時に除去される。
【0089】
これにより、CO吸収塔42によって生成ガス41中のCOを吸収後の生成ガス43の主成分はHとなり、発電用燃料のみならず、メタノールやDME(ジメチルエーテル)やアンモニアなどの原料などに利用できる。
【0090】
CO吸収塔42で生成ガス41からCOを吸収したCO吸収液47は、CO吸収液47の熱交換器44、CO吸収液47の加熱器45で100℃以上に加熱されて、CO再生塔46に供給される。
【0091】
このCO再生塔46において、COを吸収したCO吸収液47から該CO吸収液47中のCOを放出させることで、CO吸収液47の再利用が可能となる。
【0092】
CO再生塔46でCO吸収液47中のCOを回収するCO回収率を高く保つには、CO吸収液47を保温する必要がある。
【0093】
そこで、CO吸収液47の一部の吸収液を、再生加熱用のCO吸収液48としてCO再生塔46から抜き出し、CO吸収液48の加熱器49で100℃以上に再加熱した後、前記CO再生塔46に戻すと良い。
【0094】
この再生加熱用のCO吸収液48をCO吸収液の加熱器49で加熱する熱源には、従来は利用されなかった300℃以下の低温蒸気が適しており、これをCO吸収液の再生加熱用蒸気50と呼ぶ。
【0095】
ここで、本実施例の高水分燃料用ガス化炉を含むガス化システムでは、シフト反応後の生成ガス41からのCO回収に、吸収液を用いた化学吸収方式を記載したが、物理吸収、化学吸収、化学吸着、膜分離、深冷分離方式といった他のCO回収方式を用いても構わない。
【0096】
CO再生塔46で回収した回収CO101は、その一部を再利用CO102とし、残りを貯留CO103とする。
【0097】
再利用CO102については、ガス化炉16側での必要量に応じて、再利用CO102の流量調整弁51で流量調整し、再利用CO加熱用の熱交換器105で予熱し、COコンプレッサ52で断熱圧縮してさらに昇温し、圧縮したCO104として固体燃料の高水分燃料1やチャー20の搬送ガスに用いる。
【0098】
再利用CO加熱用の熱交換器105で再利用CO102を予熱する熱源には、エネルギー効率向上の観点で、従来は未利用だったプラント排熱の適用が適している。
【0099】
本実施例のガス化炉を備えたガス化システムでは、この再利用COを予熱する熱源として、CO再生塔46で使用するCO吸収液48を加熱するCO吸収液の加熱器49を設置し、前記加熱器49に再生加熱用蒸気50を供給して、該CO吸収液48の加熱に再生加熱用蒸気50を用いている。
【0100】
この場合、前記加熱器49で使用済みのCO吸収液48の再生加熱用蒸気50の蒸気温度が100℃以上であるため、再利用CO102も100℃程度に予熱できる。
【0101】
なお、昇温、圧縮したCO104の一部を、前記燃料供給系統10bを構成する乾燥装置2で高水分燃料1を乾燥する熱源等に用いても構わない。
【0102】
以上の説明により、ガス化炉16内に上段バーナ39及び下段バーナ40を通じて投入する固体燃料の高水分燃料1の全量でなく、高温化を要する箇所である下段バーナ40を通じてガス化炉16内に投入する固体燃料の高水分燃料1の一部のみを前記燃料供給系統10bで乾燥させることで、固体燃料の高水分燃料1を乾燥させる燃料乾燥の動力を低減する。
【0103】
また、この燃料乾燥で発生した水蒸気を、ガス化炉16内でガス化した生成ガス17の冷却に用い、かつ下流側のシフト反応器で添加する水蒸気量も削減する。
【0104】
また、ガス化炉16内でガス化した生成ガス17中のC分をCOとして回収し、その一部をプラント排熱で予熱して再利用することで、ガス化炉16内の温度低下を防止し、エネルギー効率を高めることができる。
【0105】
本実施例によれば、ガス化炉に投入する高水分の固体燃料の乾燥動力が低減可能なガス化炉を備えたガス化システムが実現できる。
【実施例2】
【0106】
図2に、本発明の第2実施例である高水分燃料用ガス化炉を含むガス化システムの系統図を示す。
【0107】
本実施例では、第1実施例に前述した図1と異なる箇所、すなわちガス化炉で発生した生成ガスの冷却に、生成ガス冷却部とクエンチャーを併用するガス化システムについて説明する。
【0108】
ガス化炉16で発生した生成ガス17は、生成ガス冷却部18で800℃以下程度に冷却される。これは、ファウリングにより、生成ガス冷却部18と下流のクエンチャー54をつなぐ配管内における生成ガス17に同伴されたチャー等の付着・堆積を防ぐためである。
【0109】
次に、クエンチャー54に入った生成ガス17は、噴霧水32投入により350℃程度に冷却される。ここで、クエンチャー54内に投入された噴霧水32については、前記第1実施例の高水分燃料用ガス化炉を含むガス化システムにおいて示した生成ガス冷却部18に投入した場合と異なり、その全量を蒸発させる必要がない。
【0110】
クエンチャー54内で蒸発しなかった噴霧水32は、生成ガス17に同伴されたチャー等とともにクエンチャー54の下部に溜まり、クエンチャーからのチャーを含む高温水55として回収する。
【0111】
クエンチャーからのチャーを含む高温水55の排水処理が必要である。このため、クエンチャーからのチャーを含む高温水55の温度を、飽和温度に近い温度(例えば200℃程度)で運用できれば、噴霧水32とクエンチャーからのチャーを含む高温水55の流量増加を抑えることができ、効率的な運転が可能となる。
【0112】
クエンチャー下流の生成ガス56の温度は、上述の通り350℃程度である。クエンチャー下流の生成ガス56は、第1実施例のガス化炉16と同様の運用方法で脱塵、ガス精製、CO回収される。
【0113】
以上より、ガス化炉16で発生した生成ガスの冷却に、生成ガス冷却部18とクエンチャー54を併用することで、生成ガス冷却部18を、第1実施例のガス化炉16より小型化でき、プラントの建設コストを低減できる。
【0114】
また、噴霧水32をクエンチャー54に投入し、噴霧水32の全量を蒸発させる必要がないため、噴霧水32の液滴がガス化炉16に落下することによる炉内温度低下も予防できる。
【0115】
本実施例によれば、ガス化炉に投入する高水分の固体燃料の乾燥動力が低減可能なガス化炉を備えたガス化システムが実現できる。
【実施例3】
【0116】
図3に、本発明の第3実施例である高水分燃料用のガス化炉を含むガス化システムの系統図を示す。
【0117】
本実施例の高水分燃料用のガス化炉を含むガス化システムでは、図2に示した第2実施例のガス化炉に、更に高水分燃料1の乾燥で発生した水蒸気をガス化炉16に投入し、ガス化炉16の炉壁やバーナを保護する運用方法について説明する。
【0118】
本実施例の高水分燃料用のガス化炉を含むガス化システムにおけるガス化炉16では、ガス化炉16の下段に設置した下段バーナ40より投入する高水分燃料1を乾燥させる乾燥装置2で発生した飛散燃料を含む水蒸気27は、コンプレッサ28で昇圧した後に、昇圧後の飛散燃料を含む水蒸気29として、生成ガス冷却部18だけでなく、水蒸気ノズル63を介してガス化炉16にも投入する。
【0119】
水蒸気ノズル63から投入する昇圧後の飛散燃料を含む水蒸気29は、炉内温度に応じた流量調整が必要であるため、炉内投入水蒸気の流量調整弁62を設置する。
【0120】
水蒸気ノズル63の設置場所は、炉壁の高温化による炉壁耐火材の溶損防止の観点から、上段バーナ39高さからスラグタップ59までが好適であり、バーナ本数や炉内温度分布に応じて複数個所設置しても構わない。
【0121】
また、図示しないが、昇圧後の飛散燃料を含む水蒸気29を上下段バーナに供給しても良い。
【0122】
上下段バーナへの供給方法としては、酸素15と混合、酸素15と燃料搬送管10からの高水分燃料1の供給箇所の隙間、およびバーナの外周部などが好適である。
【0123】
以上の構成により、高水分燃料の乾燥で発生した水蒸気を、ガス化炉内の高温箇所にも供給し、炉壁耐火材やバーナの損傷を防止するため、ガス化炉の信頼性を向上できる。
【0124】
本実施例によれば、ガス化炉に投入する高水分の固体燃料の乾燥動力が低減可能なガス化炉を備えたガス化システムが実現できる。
【実施例4】
【0125】
図4に、本発明の第4実施例である高水分燃料用のガス化炉を含むガス化システムの系統図を示す。
【0126】
本実施例の高水分燃料用のガス化炉を含むガス化システムにおけるガス化炉では、第2実施例のガス化炉に前述した図2と異なる箇所、すなわち搬送ガスを予熱する熱源に、シフト反応後の生成ガスの顕熱を用いた場合について説明する。
【0127】
本実施例の高水分燃料用のガス化炉を含むガス化システムにおけるガス化炉16では、ガス化炉16の下流側に設置したシフト反応器38において、前述の(2)式のシフト反応(CO+HO→CO+H)が進行し、反応熱によりシフト反応後の生成ガス41の温度は、350℃以上となる。
【0128】
シフト反応後の生成ガス41を、生成ガスの熱交換器36を通過させても、その温度は200℃以上と想定される。
【0129】
CO吸収塔42に投入するためには、シフト反応後の生成ガス41の温度を40℃程度まで下げる必要がある。
【0130】
そこで、生成ガスの熱交換器36を通過後のシフト反応後の生成ガス41(200℃以上)を、再利用CO加熱用の熱交換器105に流通させ、CO再生塔46で回収した再利用CO102を予熱する熱源とする。
【0131】
以上の構成により、シフト反応器38でのシフト反応で高温化した生成ガスの顕熱を、再利用するCOを予熱する熱源として有効活用できる。プラント排熱利用によりエネルギー効率を向上し、燃料の搬送ガスである再利用COを予熱することでガス化炉内の温度低下も防止できる。
【0132】
本実施例によれば、ガス化炉に投入する高水分の固体燃料の乾燥動力が低減可能なガス化炉を備えたガス化システムが実現できる。
【実施例5】
【0133】
図5に、本発明の第5実施例である高水分燃料用のガス化炉を含むガス化システムの系統図を示す。
【0134】
本実施例の高水分燃料用のガス化炉を含むガス化システムでは、第2実施例に前述した図2と異なる箇所、すなわち搬送ガスを予熱する熱源に、水洗塔で発生する高温水、およびクエンチャーで発生するチャーを含む高温水の顕熱を用いた場合について説明する。
【0135】
クエンチャー54と水洗塔33において、チャーを含む高温水55と水洗塔33からの高温水57が、それぞれ200℃程度で排出される。これら高温水55、57の顕熱は、従来は利用されず、これらの高温水は、冷却された後に、排水処理されていた。
【0136】
しかし、本実施例の高水分燃料用のガス化炉を含むガス化システムでは、これらの高温水を再利用CO加熱用の熱交換器105に流通させ、これら高温水の顕熱で再利用CO102を予熱する。
【0137】
本実施例の高水分燃料用のガス化炉を含むガス化システムでは、複数の再利用CO加熱用の熱交換器105を用いる系統を示したが、1台の再利用CO加熱用の熱交換器105としても構わない。
【0138】
以上の構成により、従来は利用されなかったプラント排熱を利用し、固体燃料を搬送するCOを予熱することで、プラントのエネルギー効率を高め、かつガス化炉内の温度低下も防止できる。
【0139】
本実施例によれば、ガス化炉に投入する高水分の固体燃料の乾燥動力が低減可能なガス化炉を備えたガス化システムが実現できる。
【符号の説明】
【0140】
1:高水分燃料、2:乾燥装置、3:粉砕装置、4:ロックホッパ、5:フィードホッパ、6:移送弁、7:ロックホッパ均圧弁、8:フィードホッパ均圧弁、9:圧力調整弁、10:燃料搬送管、10a、10b:燃料供給系統、11:空気、12:コンプレッサ、13:空気分離器、14:窒素、15:酸素、16:ガス化炉、17:生成ガス、18:生成ガス冷却部、18a:水冷管、18b:冷却水系統、19:脱塵装置、20:チャー、21:チャーロックホッパ、22:チャーフィードホッパ、23:チャー移送弁、24:チャーロックホッパ均圧弁、25:チャーフィードホッパ均圧弁、26:チャー系圧力調整弁、27:飛散燃料を含む水蒸気、28:コンプレッサ、29:昇圧後の飛散燃料を含む水蒸気、29a:噴霧ノズル、30:シフト反応用水蒸気、31:スラグ、32:噴霧水、33:水洗塔、34:COS転化器、35:COS転化器下流の生成ガス、36:生成ガスの熱交換器、37:生成ガスの加熱器、38:シフト反応器、39:上段バーナ、40:下段バーナ、41:シフト反応後の生成ガス、42:CO吸収塔、43:CO吸収後の生成ガス、44:CO吸収液の熱交換器、45:CO吸収液の加熱器、46:CO再生塔、47:CO吸収したCO吸収液、48:再生加熱用のCO吸収液、49:CO吸収液の加熱器、50:CO吸収液の再生加熱用蒸気、51:再利用COの流量調整弁、52:COコンプレッサ、53:クエンチ部、54:クエンチャー、55:クエンチャーからのチャーを含む高温水、56:クエンチャー下流の生成ガス、57:水洗塔からの高温水、58:クーラー、59:スラグタップ、60:チャー搬送管、61:チャーバーナ、62:炉内投入水蒸気の流量調整弁、63:水蒸気ノズル、101:回収CO、102:再利用CO、103:貯留CO、104:圧縮CO、105:再利用CO加熱用の熱交換器。
図1
図2
図3
図4
図5