【実施例1】
【0031】
本発明の第1実施例である高水分燃料を供給してガス化するガス化炉を備えたガス化システムについて、
図1を参照して説明する。
【0032】
図1に示した本実施例のガス化炉を備えたガス化システムは、燃料の乾燥・供給、燃料のガス化、ガス化した生成ガスの脱塵、生成ガスのガス精製、生成ガス中のCO
2回収、再利用するCO
2供給系をそれぞれ備えている。
【0033】
図1に示した第1実施例であるガス化炉を備えたガス化システムにおいて、固体燃料の高水分燃料1をガス化するガス化炉16については、2つの燃料供給系統10a、10bを通じて固体燃料の高水分燃料1をそれぞれ投入するバーナ39、40をガス化炉16に上下に2段備えて構成しており、このガス化炉16内で投入した固体燃料中の可燃分のガス化で生じた生成ガス17をガス化炉16の上方より、炉下部の高温化で固体燃料中の灰分の溶融スラグ化で生じた溶融スラグをガス化炉16の下方より、それぞれ抜き出すガス化方式を適用している。
【0034】
本実施例のガス化炉を備えたガス化システムでは、ガス化炉16の炉下部を高温化するために、2つの燃料供給系統10a、10bのうち、ガス化炉16の炉下部に設置した下段バーナ40から該ガス化炉16内に投入する固体燃料の高水分燃料1のみを供給する燃料供給系統10bで乾燥させる。
【0035】
また、ガス化炉16で固体燃料をガス化して生じた生成ガスについては、生成ガス中のC分をCO
2として回収し、生成ガス中のH
2を主に利用する。
【0036】
本実施例のガス化炉を備えたガス化システムは、吸収液によるCO
2回収方式を用いた場合について説明する。生成ガスから回収したCO
2の一部は、プラント排熱で予熱し、予熱したCO
2を圧縮して固体燃料の高水分燃料1を搬送する搬送ガスとして用いる。
【0037】
本実施例のガス化炉を備えたガス化システムでは、固体燃料の高水分燃料1を搬送ガスとして用いるCO
2を予熱する熱源に、CO
2吸収液の再生加熱用蒸気を用いる場合で説明する。
【0038】
燃料供給系統10bを通じてガス化炉16の下段バーナ40に供給する固体燃料の高水分燃料1は、前記燃料供給系統10bを構成する乾燥装置2で乾燥した後に、粉砕装置3に供給される。
【0039】
高水分燃料1として褐炭を用いた場合、30〜65wt%の水分を含むが、乾燥装置2による乾燥により水分25wt%以下に低減させるのが望ましい。
【0040】
また、前記乾燥装置2で固体燃料の高水分燃料1を乾燥することにより、飛散燃料を含む水蒸気27が発生する。ここで、飛散燃料の多くは微粒である。
【0041】
前記乾燥装置2で乾燥した固体燃料の高水分燃料1は粉砕装置3に供給され、この粉砕装置3によって固体燃料の高水分燃料1は、平均粒径数十ミクロン程度に粉砕される。
【0042】
そして粉砕装置3で粉砕された固体燃料の高水分燃料1は、ロックホッパ4に貯留された後、所定の圧力に昇圧されて、移送弁6を介してフィードホッパ5に移送される。
【0043】
燃料移送の際、ロックホッパ4からの移送不良を防ぐべく、ロックホッパ均圧弁7とフィードホッパ均圧弁8を開けて、ロックホッパ4とフィードホッパ5を均圧化し、ロックホッパ4の出口付近に不活性ガスを投入する。
【0044】
本実施例のガス化炉を備えたガス化システムでは、この不活性ガスに、燃料搬送ガスと同様に、圧縮したCO
2(104)を用いる。なお、ロックホッパ4とフィードホッパ5の圧力は、圧力調整弁9で調整する。
【0045】
フィードホッパ5に移送された固体燃料の高水分燃料1は、圧縮したCO
2(104)で圧送され、前記燃料供給系統10bを構成する燃料搬送管10とガス化炉16に設置した下段バーナ40を通じて、ガス化炉16内に投入される。
【0046】
ガス化炉16内では、下段バーナ40を通じて投入された固体燃料の高水分燃料1は、同じく下段バーナ40より投入される酸素15と混合して着火してガス化し、生成ガス17を生成する。
【0047】
これにより、ガス化炉16の下部を高温化することで固体燃料の高水分燃料1の灰分を溶融スラグ化する。溶融スラグは、ガス化炉16のスラグタップ59から直下のクエンチ部53に流下して冷却されて固化し、スラグ31として回収される。
【0048】
このスラグ31は非晶質で、重金属の溶出も検出限界未満であるため、コンクリート骨材などへの有効利用が可能である。
【0049】
次に、ガス化炉16の上段バーナ39に供給する固体燃料の高水分燃料1は、未乾燥のまま、燃料供給系統10aを構成する粉砕装置3で粉砕され、ロックホッパ4、フィードホッパ5を経由した後、搬送管10とガス化炉16に設置した上段バーナ39を通じて、ガス化炉16に投入される。
【0050】
このように、前記燃料供給系統10aを構成してガス化炉16に投入する固体燃料の一部の高水分燃料1を未乾燥にしてガス化炉16に投入する構成にすることによって、固体燃料の高水分燃料1を乾燥させる乾燥動力も低減でき、プラントのエネルギー効率も向上する。
【0051】
例えば、固体燃料の高水分燃料1に褐炭を用いた場合、未乾燥の状態でも、乾燥褐炭と同様のハンドリングが可能な場合があるため、ガス化炉16内で灰溶融ガス化を維持できれば、本実施例のガス化炉を備えたガス化システムは成立する。
【0052】
本実施例である高水分燃料を供給してガス化するガス化炉を備えたガス化システムによれば、褐炭等の高水分の固体燃料の全量でなく、一部を乾燥させてガス化炉に投入することになるため、燃料の乾燥動力を低減できる。
【0053】
例えば、上下2段のバーナから等量の燃料を投入するガス化炉において、上段バーナから未乾燥の燃料を投入することで、乾燥動力を半減できる。
【0054】
一方、下段バーナから乾燥した燃料を投入することで、炉下部の温度低下を防ぐことができ、炉下部における灰の溶融スラグ化を維持する。
【0055】
上段バーナから未乾燥の燃料を投入することで、ガス化炉上段部には多量の水分が投入される。燃料中の水分が炉内で蒸発し、上段バーナからの噴流に同伴されることで、上段バーナの火炎温度が低下する。
【0056】
これにより、上段バーナの噴流が壁面近傍を流下する場合でも、高温火炎による炉壁溶損のリスクを低減できる。さらに、上段バーナの噴流に同伴される固体燃料中の炭素分は、水蒸気と混合することで(1)式の水蒸気ガス化反応が進むため、炉内における炭素ガス化率も向上する。
【0057】
C+H
2O→CO+H
2 ・・・・(1)
次に、燃料乾燥で発生した水蒸気を、ガス化炉で発生した生成ガスと混合させることで、生成ガスを冷却できる。
【0058】
これにより、ガス化炉の下流側に設置される生成ガス冷却部を小型化でき、生成ガス冷却用に投入する水又は水蒸気の流量を削減できる。
【0059】
また、生成ガス中の水蒸気濃度を高めた運用とすることで、下流のシフト反応器で添加する水蒸気量も削減できる。特に900〜1000℃以上で水蒸気濃度を高めると、(2)式のシフト反応も促進できるため、下流のシフト反応器で添加する水蒸気量をさらに削減できる。
【0060】
CO+H
2O→CO
2+H
2 ・・・・(2)
また、燃料乾燥で発生した水蒸気をバーナ近傍の側壁、又はバーナ面よりガス化炉内に供給することで、側壁やバーナ近傍のガス温度を低下し、側壁とバーナを保護する。
【0061】
一方、燃料乾燥で発生した水蒸気には、微粉の固体燃料も混入する。
【0062】
本発明のように、燃料乾燥で発生した水蒸気を生成ガスと混合させたり、ガス化炉内に投入したりすることで、水蒸気に同伴された微粉の固体燃料を除去するための集塵手段を不要化して系統簡素化でき、かつ乾燥時の燃料ロスを低減できる。
【0063】
最後に、プラント排熱で固体燃料を搬送する不活性ガスを予熱することで、ガス化炉内の温度低下防止と、プラントのエネルギー効率向上に有効である。
【0064】
従来は未利用であった水洗塔やクエンチャーからの200℃程度の高温水や、CO2回収する場合のCO
2再生塔におけるCO
2吸収液の再生加熱器からの100〜150℃程度の高温水の顕熱を回収し、ガス化炉に投入するため、プラント排熱を有効利用でき、かつガス化炉内の温度低下防止に有効である。
【0065】
前記ガス化炉16に投入される酸素15の総量は、高水分燃料1の完全燃焼に必要な酸素量よりも少なくする。これにより、ガス化炉16内で高水分燃料1がガス化されて、CO、H
2を主成分とする生成ガス17が発生する。
【0066】
生成ガス17の温度は800℃以上であるため、ガス化炉16の直上に設置した生成ガス冷却部18の側壁に水冷管18aを配置し、別系統として配設された冷却水系統18bを通じて冷却水を前記水冷管18aに供給することによって、ガス化炉16内で生成した生成ガス17を350℃程度まで冷却される。
【0067】
ここで、生成ガス冷却部18を小型化し、プラント建設コストを低減させるために、噴霧水32を生成ガス冷却部18に投入して生成ガス17を冷却する。
【0068】
さらに、ガス化炉16に設置した前記下段バーナ40に投入する固体燃料の高水分燃料1を乾燥させる前記燃料供給系統10bを構成する乾燥装置2で発生した飛散燃料を含む水蒸気27を、コンプレッサ28で昇圧し、昇圧後の飛散燃料を含む水蒸気29として、生成ガス冷却部18に設けた噴霧ノズル29aから生成ガス冷却部18内に投入し、生成ガス17を冷却する。
【0069】
これにより、ガス化炉16内でガス化した生成ガス17は、生成ガス冷却部18に投入された水や水蒸気と混合して冷却されるだけでなく、生成ガス17中の水蒸気濃度も高められる。
【0070】
上記した構成によって、ガス化炉16の下流側に設置されたシフト反応器38で添加されるシフト反応用水蒸気30の流量を低減でき、プラントのエネルギー効率を向上できる。
【0071】
また、ガス化炉16内でガス化した生成ガス17の温度が900〜1000℃以上で水蒸気濃度を高めることができれば、生成ガス冷却部18内においても、(2)式に前述したシフト反応(CO+H
2O→CO2+H
2)が無触媒で進む。
【0072】
シフト反応器38で使用するシフト触媒量も低減できるため、プラントの運転コスト低減にも寄与できる。
【0073】
生成ガス冷却器18で350℃程度まで冷却された生成ガス17は、脱塵装置19で脱塵され、生成ガス17中に同伴されたチャー20が回収される。
【0074】
ここで、チャー20には、ガス化炉16内で発生したチャーと、生成ガス冷却器18にて投入された昇圧後の飛散燃料を含む水蒸気29に含まれる飛散燃料が含まれる。
【0075】
チャー20は、上述した高水分燃料1と同様にチャーロックホッパ21からチャーフィードホッパ22に移送され、圧縮したCO
2104で圧送されてチャー搬送管60、チャーバーナ61を介してガス化炉16に再投入される。
【0076】
脱塵装置19で脱塵された350℃程度の生成ガス17は、生成ガスの熱交換器36でCO2吸収後の生成ガス43との熱交換により、250〜300℃程度に冷却される。
【0077】
その後、生成ガス17はガス精製部に供給され、まず水洗塔33で塩素等のハロゲン物質、および脱塵装置19を通過した微粒子などが除去される。
【0078】
水洗塔33で200℃程度に冷却された生成ガス17は、生成ガスの加熱器37で220℃程度に加熱されてCOS転化器34に供給される。
【0079】
COS転化器34において、COSをH
2Oとの反応により、COS中S分をH
2Sとさせる。
【0080】
なお、水洗塔33出口の生成ガス17の温度は露点以上とし、生成ガスの加熱器37出口の温度がCOS転化器34に適した条件であることに留意する必要がある。
【0081】
COS転化器下流の生成ガス35は、生成ガスの熱交換器36と生成ガスの加熱器37で250〜300℃程度に加熱され、シフト反応器38に供給される。
【0082】
シフト反応器38では、シフト反応用水蒸気30を添加し、前述の(2)式のシフト反応(CO+H
2O→CO
2+H
2)を進行させる。
【0083】
これにより、シフト反応後の生成ガス41の主成分はH
2、CO
2、H
2Oとなる。
【0084】
なお、シフト反応器38入口のCOS転化器34の下流の生成ガス35温度は、シフト反応器38内に充填されたシフト触媒の特性に応じて、適宜調整すると良い。
【0085】
また、シフト反応器38における上述したシフト反応は発熱反応であるため、シフト反応後の生成ガス41の温度は、シフト反応器38の入口側の温度より数十℃以上高まり、350℃以上となる。
【0086】
シフト反応後の生成ガス41の温度については、シフト触媒保護の観点で調整する必要があり、シフト反応器38の複数設置や冷却等で対処しても良い。
【0087】
350℃以上となったシフト反応後の生成ガス41は、前記の生成ガスの熱交換器36とクーラー58で40℃程度に冷却され、CO
2回収部のCO
2吸収塔42に供給される。
【0088】
CO
2吸収塔42において、シフト反応後の生成ガス41は、CO
2吸収液(ジメチルエタノールアミンなど)と接触して生成ガス41中のCO
2が除去される。ここで、シフト反応後の生成ガス41中のH
2Sも同時に除去される。
【0089】
これにより、CO
2吸収塔42によって生成ガス41中のCO
2を吸収後の生成ガス43の主成分はH
2となり、発電用燃料のみならず、メタノールやDME(ジメチルエーテル)やアンモニアなどの原料などに利用できる。
【0090】
CO
2吸収塔42で生成ガス41からCO
2を吸収したCO
2吸収液47は、CO
2吸収液47の熱交換器44、CO
2吸収液47の加熱器45で100℃以上に加熱されて、CO
2再生塔46に供給される。
【0091】
このCO
2再生塔46において、CO
2を吸収したCO
2吸収液47から該CO
2吸収液47中のCO
2を放出させることで、CO
2吸収液47の再利用が可能となる。
【0092】
CO
2再生塔46でCO
2吸収液47中のCO
2を回収するCO
2回収率を高く保つには、CO
2吸収液47を保温する必要がある。
【0093】
そこで、CO
2吸収液47の一部の吸収液を、再生加熱用のCO
2吸収液48としてCO
2再生塔46から抜き出し、CO
2吸収液48の加熱器49で100℃以上に再加熱した後、前記CO
2再生塔46に戻すと良い。
【0094】
この再生加熱用のCO
2吸収液48をCO
2吸収液の加熱器49で加熱する熱源には、従来は利用されなかった300℃以下の低温蒸気が適しており、これをCO
2吸収液の再生加熱用蒸気50と呼ぶ。
【0095】
ここで、本実施例の高水分燃料用ガス化炉を含むガス化システムでは、シフト反応後の生成ガス41からのCO
2回収に、吸収液を用いた化学吸収方式を記載したが、物理吸収、化学吸収、化学吸着、膜分離、深冷分離方式といった他のCO
2回収方式を用いても構わない。
【0096】
CO
2再生塔46で回収した回収CO
2101は、その一部を再利用CO
2102とし、残りを貯留CO
2103とする。
【0097】
再利用CO
2102については、ガス化炉16側での必要量に応じて、再利用CO
2102の流量調整弁51で流量調整し、再利用CO
2加熱用の熱交換器105で予熱し、CO
2コンプレッサ52で断熱圧縮してさらに昇温し、圧縮したCO
2104として固体燃料の高水分燃料1やチャー20の搬送ガスに用いる。
【0098】
再利用CO
2加熱用の熱交換器105で再利用CO
2102を予熱する熱源には、エネルギー効率向上の観点で、従来は未利用だったプラント排熱の適用が適している。
【0099】
本実施例のガス化炉を備えたガス化システムでは、この再利用CO
2を予熱する熱源として、CO
2再生塔46で使用するCO
2吸収液48を加熱するCO
2吸収液の加熱器49を設置し、前記加熱器49に再生加熱用蒸気50を供給して、該CO
2吸収液48の加熱に再生加熱用蒸気50を用いている。
【0100】
この場合、前記加熱器49で使用済みのCO
2吸収液48の再生加熱用蒸気50の蒸気温度が100℃以上であるため、再利用CO
2102も100℃程度に予熱できる。
【0101】
なお、昇温、圧縮したCO
2104の一部を、前記燃料供給系統10bを構成する乾燥装置2で高水分燃料1を乾燥する熱源等に用いても構わない。
【0102】
以上の説明により、ガス化炉16内に上段バーナ39及び下段バーナ40を通じて投入する固体燃料の高水分燃料1の全量でなく、高温化を要する箇所である下段バーナ40を通じてガス化炉16内に投入する固体燃料の高水分燃料1の一部のみを前記燃料供給系統10bで乾燥させることで、固体燃料の高水分燃料1を乾燥させる燃料乾燥の動力を低減する。
【0103】
また、この燃料乾燥で発生した水蒸気を、ガス化炉16内でガス化した生成ガス17の冷却に用い、かつ下流側のシフト反応器で添加する水蒸気量も削減する。
【0104】
また、ガス化炉16内でガス化した生成ガス17中のC分をCO
2として回収し、その一部をプラント排熱で予熱して再利用することで、ガス化炉16内の温度低下を防止し、エネルギー効率を高めることができる。
【0105】
本実施例によれば、ガス化炉に投入する高水分の固体燃料の乾燥動力が低減可能なガス化炉を備えたガス化システムが実現できる。