(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
給油口から給油管に挿入される給油ノズルの外径から前記給油ノズルが軽油用又はガソリン用を識別し、軽油用の給油ノズルであれば通過させ、ガソリン用の給油ノズルであれば通過を阻止する誤給油防止装置であって、
給油ノズルの挿入方向に交差して給油口又は給油管を塞ぎ、前記給油ノズルの貫通口を設けたベースと、
前記ベースに位置固定されたリンク揺動軸を中心として貫通口を避けて前記貫通口と平行に揺動し、前記貫通口に近づく方向へ付勢された第1リンクアームと、
前記第1リンクアームと連結するアーム連結軸を中心として貫通口を避けて前記貫通口と平行に揺動し、前記貫通口に近づく方向へ付勢された第2リンクアームと、
ベースに位置固定されたフラッパ回動軸を中心として貫通口の一部又は全部を占める閉位置から前記貫通口から遠ざかる開位置まで給油ノズルの挿入方向に回動し、前記閉位置に向けて付勢されたフラッパとから構成され、
前記第1リンクアームと前記第2リンクアームとは、ガソリン用の給油ノズルの外径より大きく、軽油用の給油ノズルの外径より小さい距離で対向する第1トリガー突起及び第2トリガー突起を前記貫通口の範囲に突出させ、
第2リンクアームは、フラッパに設けた掛止突起に係合するストッパを設けることにより、
軽油用の給油ノズルにより前記第1トリガー突起及び前記第2トリガー突起が同時に押されると、ベースに固定された前記リンク揺動軸を中心として第1リンクアームが貫通口から遠ざかる方向に揺動し、揺動させた前記第1リンクアームに設けた前記アーム連結軸を中心として、ストッパを貫通口から遠ざかる方向に前記第2リンクアームが揺動して、フラッパの掛止突起からストッパを外し、
ガソリン用の給油ノズルが前記第1トリガー突起又は前記第2トリガー突起のいずれかのみを押すと、前記リンク揺動軸を中心として第1リンクアーム及び第2リンクアームを一体的に揺動させ、フラッパの掛止突起をストッパに掛止させたままとすることを特徴とする誤給油防止装置。
第1リンクアーム及び第2リンクアームは、第1トリガー突起及び第2トリガー突起の上面に、突出方向に下り勾配の傾斜縁又は傾斜面を設けた請求項1記載の誤給油防止装置。
第1リンクアーム及び第2リンクアームは、一端が第1リンクアームに、他端が第2リンクアームに係止され、第1リンクアーム及び第2リンクアームの連結方向にアーム連結軸を跨いで外嵌された弾性リングにより、貫通口に近づく方向へ付勢された請求項1又は2記載の誤給油防止装置。
第1リンクアーム及び第2リンクアームは、一端が第1リンクアームに、他端が第2リンクアームに摺接され、第1リンクアーム及び第2リンクアームの連結方向にアーム連結軸を跨いで外嵌され、中央部をベースに支持された弾性リングにより、貫通口に近づく方向へ付勢された請求項1又は2記載の誤給油防止装置。
フラッパは、掛止突起又は掛止突起の支持部位を、給油ノズルが受け流し荷重以上で押し付けられると弾性変形するようにした請求項1〜5いずれか記載の誤給油防止装置。
ベースは、第1リンクアーム及び第2リンクアームの揺動を確保して、貫通口に連通する案内口を開口したアッパーハウジングを装着した請求項1〜6いずれか記載の誤給油防止装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜特許文献3が開示する誤給油防止装置は、いずれもフラッパ(特許文献1:フラッパ扉、特許文献2:フラップ、特許文献3:シャッタ)に係合する樹脂製の環状部材(特許文献1:アクチュエータ、特許文献2:駆動リング、特許文献3:リング)を給油ノズルが拡径すれば前記給油ノズルによりフラッパを押し開き、拡径できなければ前記給油ノズルが押してもフラッパが開かれないようにする。そして、半径方向に延びるスリットを周方向に断続して並べた環状部材が、周方向に連続して弾性変形して湾曲しながら拡径する点が共通する。しかし、こうした環状部材は、次のような問題点がある。
【0008】
樹脂製の環状部材を弾性変形させるには、環状部材を硬くできず、結果として強度が抑制されるため、環状部材の耐久性を低下させる問題があった。そして、給油ノズルを押し当てて弾性変形させる環状部材は、
経時的に応力緩和が進むと拡径したまま復元しにくくなり、フラッパが係合しなくなって自由又は容易に前記フラッパを開閉させる問題もあった。これは、環状部材に接触することなく、給油ノズルがフラッパを押し開くことができるようになり、結果として給油ノズルの識別ができなくなることを意味する。
【0009】
また、給油ノズルを押し当てて弾性変形させる環状部材は、給油ノズルに過剰な摺動抵抗を与える問題がある。樹脂製の環状部材は、長期にわたって弾性変形及び復元させるため、弾性変形部位が弱くならないように、環状部材全体を給油ノズルの挿入方向に厚く作る傾向がある。このため、給油ノズルに摺接する部分も前記給油ノズルの挿入方向に長くなりがちで、給油ノズルとの間で摺動抵抗が大きくなる。給油口に対する給油ノズルの抜き差しに際し、前記摺動抵抗は無視できないものであり、給油作業における給油ノズルの操作感を損ねていた。
【0010】
このように、従来の誤給油防止装置は、給油ノズルを押し当てて弾性変形させる環状部材に起因する問題があった。そこで、給油ノズルを押し当てて弾性変形させる樹脂製の環状部材に頼らず、給油口から給油管に挿入される給油ノズルの外径を識別できる構成を有する誤給油防止装置を開発するため、検討した。
【課題を解決するための手段】
【0011】
検討の結果開発したものが、給油口から給油管に挿入される給油ノズルの外径から前記給油ノズルが軽油用又はガソリン用を識別し、軽油用の給油ノズルであれば通過させ、ガソリン用の給油ノズルであれば通過を阻止する誤給油防止装置であって、給油ノズルの挿入方向に交差して給油口又は給油管を塞ぎ、前記給油ノズルの貫通口を設けたベースと、前記ベースに位置固定されたリンク揺動軸を中心として貫通口を避けて前記貫通口と平行に揺動し、前記貫通口に近づく方向へ付勢された第1リンクアームと、前記第1リンクアームと連結するアーム連結軸を中心として貫通口を避けて前記貫通口と平行に揺動し、前記貫通口に近づく方向へ付勢された第2リンクアームと、ベースに位置固定されたフラッパ回動軸を中心として貫通口の一部又は全部を占める閉位置から前記貫通口から遠ざかる開位置まで給油ノズルの挿入方向に回動し、前記閉位置に向けて付勢されたフラッパとから構成され、
前記第1リンクアームと
前記第2リンクアームとは、ガソリン用の給油ノズルの外径より大きく、軽油用の給油ノズルの外径より小さい距離で対向する第1トリガー突起及び第2トリガー突起を前記貫通口の範囲に突出させ、第2リンクアームは、フラッパに設けた掛止突起に係合するストッパを設け
ることにより、軽油用の給油ノズルにより前記第1トリガー突起及び前記第2トリガー突起が同時に押されると、ベースに固定された前記リンク揺動軸を中心として第1リンクアームが貫通口から遠ざかる方向に揺動し、揺動させた前記第1リンクアームに設けた前記アーム連結軸を中心として、ストッパを貫通口から遠ざける方向に前記第2リンクアームが揺動して、フラッパの掛止突起からストッパを外し、ガソリン用の給油ノズルが前記第1トリガー突起又は前記第2トリガー突起のいずれかのみを押すと、前記リンク揺動軸を中心として第1リンクアーム及び第2リンクアームを一体的に揺動させ、フラッパの掛止突起をストッパに掛止させたままとすることを特徴とする誤給油防止装置である。
【0012】
本発明の誤給油防止装置は、第1リンクアーム及び第2リンクアームがリンク揺動軸を基端とする屈曲リンクを構成する。これにより、第1トリガー突起及び第2トリガー突起が共に給油ノズルに押されると、貫通口から遠ざかる方向へ揺動した第1リンクアームのアーム連結軸を基端として、第2リンクアームが貫通口から遠ざかる方向へ揺動することになり、第2リンクアームに設けられたストッパの変位量を、給油ノズルの外径差以上に大きくできる。こうして、本発明の誤給油防止装置は、ストッパの変位量を大きくして、給油ノズルの外径を識別しやすくしている。
【0013】
外径の小さなガソリン用の給油ノズルは、第1トリガー突起又は第2トリガー突起のいずれかのみを押し、リンク揺動軸を中心として第1リンクアーム及び第2リンクアームを一体に揺動させる。このため、第2リンクアームに設けたストッパは、多少ずれてもフラッパの掛止突起を外さないので、給油ノズルは、貫通口の一部又は全部を占める前記フラッパによりベースから奥へ挿入されることが阻止される。
【0014】
これに対し、外径の大きな軽油用の給油ノズルは、第1トリガー突起及び第2トリガー突起双方を押し、リンク揺動軸を中心として第1リンクアームを貫通口から遠ざかるように揺動させ、アーム連結軸を中心として第2リンクアームを貫通口から遠ざかるように揺動させる。これにより、第2リンクアームに設けたストッパは、大きくずれてフラッパの掛止突起を外すので、給油ノズルは、フラッパを押し開いてベースより奥へ挿入されることが許可される
【0015】
第1リンクアーム又は第2リンクアームは、給油口から挿入された給油ノズルの先端及び外周面に、第1トリガー突起又は第2トリガー突起が押されて、それぞれ貫通口から遠ざかる方向へ揺動する。第1リンクアーム及び第2リンクアームは、第1トリガー突起及び第2トリガー突起の上面に、突出方向に下り勾配の傾斜縁又は傾斜面を設けるとよい。これにより、給油口から挿入された給油ノズルは、まず先端が第1トリガー突起及び第2トリガー突起の傾斜縁又は傾斜面に当接して第1リンクアーム又は第2リンクアームを押し開き、次に外周面が第1トリガー突起及び第2トリガー突起の先端に摺接して、第1リンクアーム又は第2リンクアームが押し開かれた状態を維持する。
【0016】
第1リンクアーム及び第2リンクアームは、弾性部材(コイルバネや板バネ)で押すことにより、貫通口に近づく方向へ付勢する。このほか、第1リンクアーム及び第2リンクアームは、一端が第1リンクアームに、他端が第2リンクアームに係止され、第1リンクアーム及び第2リンクアームの連結方向にアーム連結軸を跨いで外嵌された弾性リングにより、貫通口に近づく方向へ付勢されるようにしてもよい。第1リンクアーム又は第2リンクアームが貫通口から遠ざかる方向へ揺動すると、前記第1リンクアーム又は第2リンクアームに一端又は他端が係止された弾性リングは、前記第1リンクアーム又は第2リンクアームに追随して拡径し、縮径しようとする復元力(弾性力)を発生させる。第1リンクアーム及び第2リンクアームは、前記復元力を付勢力として貫通口に近づく方向へ付勢され、初期状態に復帰する。
【0017】
また、第1リンクアーム及び第2リンクアームは、一端が第1リンクアームに、他端が第2リンクアームに摺接され、第1リンクアーム及び第2リンクアームの連結方向にアーム連結軸を跨いで外嵌され、中央部をベースに支持された弾性リングにより、貫通口に近づく方向へ付勢されるようにしてもよい。第1リンクアーム又は第2リンクアームが貫通口から遠ざかる方向へ揺動すると、中央部をベースに支持された弾性リングは、一端又は他端を第1リンクアーム又は第2リンクアームの外周に摺接させながら押されて拡径し、縮径しようとする復元力(弾性力)を発生させる。第1リンクアーム及び第2リンクアームは、前記復元力を付勢力として貫通口に近づく方向へ付勢され、初期状態に復帰する。
【0018】
フラッパは、閉位置において、貫通口の一部又は全部を占めて、前記貫通口を通過しようとする給油ノズルの障害物となればよい。これから、フラッパは、貫通口を縦断する棒体又は板体とし、貫通口の全部を塞がなくても構わない。「貫通口の一部を占める」とは、隙間を残して貫通口を塞ぐことを意味する。ここで、フラッパは、貫通口に倣った外形状の面板として前記貫通口を全部又はほとんど全部を塞げば、前記フラッパに阻止された給油ノズルからガソリンが給油された際、前記ガソリンが揮発して、給油口付近の気圧を直ちに上昇させることができる。「貫通口の全部を占める」とは、ほとんど又は完全に隙間を残さずに貫通口を塞ぐことを意味する。
【0019】
フラッパは、閉位置において、貫通口を通過しようとする給油ノズルの障害物になればよく、前記給油ノズルに対向する強度は必要ない。むしろ、通過した給油ノズルが、押し込まれた際、破損しないように、前記給油ノズルから逃げる構造又は構成が好ましい。これから、フラッパは、掛止突起又は掛止突起の支持部位を、給油ノズルが受け流し荷重以上で押し付けられると弾性変形するようにした構成にするとよい。予め設定した受け流し荷重以上で給油ノズルが押し付けられたフラッパは、掛止突起又は掛止突起の支持部位を弾性変形させて前記掛止突起が第2リンクアームのストッパを乗り越えられるようにする。
【0020】
ベースは、第1リンクアーム及び第2リンクアームの揺動を確保して、貫通口に連通する案内口を開口したアッパーハウジングを装着するとよい。ここで、「第1リンクアーム及び第2リンクアームの揺動を確保」するとは、前記第1リンクアーム及び第2リンクアームの揺動が妨げられないように、例えば突起物等のないように、ベースに対してアッパーハウジングを装着することを意味する。これにより、ベース及びアッパーハウジングに挟まれて揺動面が特定されるため、第1リンクアーム及び第2リンクアームの揺動が安定するほか、ベースからアッパーハウジングが一体のモジュールにできる。アッパーハウジングは、ベースと反対側の上端面から窪んだ錐台面の底に、前記ベースの貫通口と同心かつ同じ大きさの案内口を設けた構成が好ましい。この場合、給油口から給油管に挿入される給油ノズルは、錐台面に沿って案内口に導かれ、前記案内口から真っ直ぐに貫通口に挿入されるため、第1リンクアーム及び第2リンクアームの第1トリガー突起及び第2トリガー突起に先端及び外周面が均等に当接しやすくなる。
【0021】
本発明の誤給油防止装置は、ベースの外周面又は外周縁を給油管の内周面に対して密に内嵌させて取り付けるが、給油管の内径は車種により異なり、それぞれに合わせてベースを構成することは、多品種少量生産となり、生産効率が好ましくない。そこで、ベースは、給油口又は給油管に対する隙間を満たすスペーサを外装し、前記スペーサの外周面を給油口又は給油管の内周面に対して密に内嵌させるとよい。これにより、ベースを標準化して仕様を固定しながら、車種により異なる前記ベースの外周面と給油口又は給油管の内周面との隙間を、スペーサの仕様変更のみで対応できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の誤給油防止装置は、屈曲リンクを構成する第1リンクアーム及び第2リンクアームにより、第2リンクアームに設けたストッパの変位量を給油ノズルの外径差以上にすることにより、給油口から給油管に挿入される給油ノズルの外径を容易に識別する。第1リンクアーム及び第2リンクアームは、いずれも弾性変形する必要がないため、例えばFRP構造を採用して強度を高め、構成部材の耐久性を向上させることができる。また、弾性変形させる必要のない樹脂部材である第1リンクアーム及び第2リンクアームは、応力緩和等の経年劣化の心配もないので、給油ノズルの識別ができなくなることもない。
【0023】
また、本発明の誤給油防止装置は、給油ノズルが第1トリガー突起又は第2トリガー突起にしか接触しないので、従来の環状部材に比べて摺動抵抗が大幅に低減されており、給油ノズルの抜き差しする操作感を損ねない。第1トリガー突起又は第2トリガー突起の上面に傾斜縁又は傾斜面を設けると、給油ノズルの先端から外周面へと円滑に当接部位が移っていくので、前記操作感が更に向上する。そして、ベースにアッパーハウジングを追加した場合、給油ノズルはアッパーハウジングの案内口に案内されて第1トリガー突起及び第2トリガー突起に均等に摺接し、どちらか一方に押し付けられて摺動抵抗が増加する事態を回避できる。
【0024】
第1リンクアーム及び第2リンクアームの連結方向にアーム連結軸を跨いで外嵌された弾性リングは、占有空間を少なくしながら、第1リンクアーム及び第2リンクアームを貫通口に近づける方向へ付勢する付勢力を発生させる。一端が第1リンクアームに、他端が第2リンクアームに係止される弾性リングは、第1リンクアーム及び第2リンクアームの外周に連続して外嵌されるため、占有空間を細小にできる。また、一端が第1リンクアームに、他端が第2リンクアームに摺接され、中央部をベースに支持された弾性リングは、ベースを基点としてより強力な弾性力を発生できる。
【0025】
フラッパは、貫通口に倣った外形状の面板とすることにより、貫通口を塞いで給油ノズルの通過を阻止した際、前記給油ノズルから万一給油されたガソリンが揮発して給油口付近の気圧を直ちに上昇させ、給油ノズルの自動給油停止機構を作動させることにより、誤給油を停止させることができる。また、フラッパは、掛止突起又は掛止突起の支持部位を弾性変形可能にすることで、押し付けられた給油ノズルにより前記掛止突起が第2リンクアームのストッパを乗り越えさせて開位置に揺動させることができ、給油ノズルの過剰な押し付けによる破損を免れることができる。
【0026】
アッパーハウジングは、第1リンクアーム及び第2リンクアームが外れることなく揺動できるようにしたり、既述したように、案内口により案内される給油ノズルを第1トリガー突起及び第2トリガー突起に均等に当接させたりするほか、第1リンクアーム及び第2リンクアームが外れることのないモジュールとして誤給油防止装置を取り扱えるようにする。これは、例えば給油口キャップが干渉しなければ、本発明の誤給油防止装置を、前記給油口キャップを定着する給油口にも適用できることを意味する。
【0027】
スペーサは、標準化されたベースを車種に応じて異なる給油口又は給油管に内嵌させることにより、ベースの仕様を変更することなく、スペーサの仕様を変更するだけで対応して、本発明の誤給油防止装置を様々な車種に取り付けることができるようにする。また、上述のアッパーハウジングとスペーサとの組み合わせにより、本発明の誤給油防止装置をモジュールとして取り扱う際、第1リンクアーム及び第2リンクアームやベースを前記スペーサにより保護できるようになり、モジュールとしての取り扱いが容易になる利点が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について、図を参照しながら説明する。説明の便宜上、誤給油防止装置2の平面図(後掲
図5参照)において、紙面手前(軽油用の給油ノズル3(後掲
図14及び
図15参照)又はガソリン用の給油ノズル4(後掲
図16及び
図17参照)が差し込まれる側)を上方、紙面奥側(給油ノズル3又は給油ノズル4を差し込んでいく側)を下方とし、また図面右側(第1リンクアーム22のある側)を右方、図面左側(第2リンクアーム23のある側)を左方と呼び、そのほかの図面においても、前記定義に従って上下及び左右を説明する。
【0030】
本発明の誤給油防止装置2は、
図1〜
図6に見られるように、第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23、フラッパ24を組み付けたベース21に、アッパーハウジング26を重ねて一体化したモジュールとして取り扱われ、スペーサ5を介装して、給油口キャップ(図示略)が締め付けられる給油口1に組み込まれる。モジュール化された誤給油防止装置2は、給油管12の上端に組み込まれてもよい。このように、モジュール化された誤給油防止装置2は、部材がばらけないために取り扱いが容易になり、スペーサ5を変更すれば断面構造の異なる様々な給油口1へ簡単に組み付けることができる。
【0031】
ベース21は、中央に円形の貫通口211を設けた円環状部分の上面側に、前記円環状部分の周方向に断続して前記周方向の2/3の範囲で、半径方向に長いブロック状のベース側支持突起214を並べ、前記ベース側支持突起214群の中央付近にリンク揺動軸212を上方に突出させ、前記リンク揺動軸212に並べてアッパーハウジング連結鉤216を設けると共に、前記周方向の残る1/3の範囲で周壁を立て、前記周壁にアッパーハウジング連結溝215を設け、前記周壁の貫通口211に左右一対の回動軸受217,217を設けて、前記円環状部分の下面側に、前記回動軸受217,217から下方に延在する左右一対の突起状の回り止め218,218を設けた樹脂製部材である。
【0032】
貫通口211は、フラッパ24に設けられた掛止突起243が通過する迂回部を、半径方向外向きに突出して設けた円形の開口である。貫通口211は、軽油用の給油ノズル3が通過できればよいため、必ずしも円形でなくてもよいが、本例は従来同種の誤給油防止装置に用いられる開口形状に倣って、円形としている。円環状部分は、前記貫通口211を設け、その他部位を設ける基準部分である。前述の通り、貫通口211は円形でなくてもよく、円環状部分も平面視円形でなくてもよいが、モジュール化された誤給油防止装置2の外形を決定する円環状部分は、断面円形の給油口1又は給油管12に倣って、断面円形としている。
【0033】
ベース側支持突起214は、第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23の裏面と部分的に摺接し、第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23それぞれの揺動に際する摩擦抵抗を低減しながら、揺動する第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23を下方から支持し、それぞれの揺動する軌道を含む平面(揺動面)を特定する。本例のベース側支持突起214は、上面及び側面との境界角部を丸く面取りして、摺接する第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23が前記境界角部に引っかからないようにしている。また、本例のベース側支持突起214は、後述するアッパーハウジング26のアッパー側支持突起263と共に第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23を上下に挟み込んで、第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23それぞれががたつくことなく揺動できるようにしている。
【0034】
リンク揺動軸212は、第1リンクアーム22のリンク揺動軸孔226を外嵌し、前記第1リンクアーム22の揺動中心を与える。本例のリンク揺動軸212は、既述したように、ベース側支持突起214及びアッパー側支持突起263で挟まれる第1リンクアーム22が揺動面から逸脱する虞がないため、特に抜け止め防止対策を施していない。しかし、前記ベース側支持突起214及びアッパー側支持突起263による第1リンクアーム22の逸脱防止が期待できない場合、例えば特定角度でしか通過できないキー及びキー溝の組み合わせによる抜け止め防止対策をリンク揺動軸212に施すとよい。
【0035】
リンク揺動軸212に並んで設けられたアッパーハウジング連結鉤216と、周壁に設けられたアッパーハウジング連結溝215とは、アッパーハウジング26のほぼ点対称位置から下方に突出させた一対の係合爪262,262(
図10参照。
図10は上下逆になっている)をそれぞれ係合させ、ベース21とアッパーハウジング26とを一体化させる。こうしたベース21とアッパーハウジング26との一体化により、既述したように、ベース21のベース側支持突起214とアッパーハウジング26のアッパー側支持突起263とが第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23を上下に挟み、前記第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23のがたつきを抑えて、それぞれが安定して揺動できるようにする。
【0036】
回動軸受217,217は、フラッパ24の回動軸孔242,242に挿通したフラッパ回動軸241の両端それぞれを上方から嵌め込み、ベース1に対するフラッパ24の回動中心を与える。本例の回動軸受217,217は、ベース21にアッパーハウジング26を連結すると、アッパーハウジング連結溝215に係合する係合爪262を設けた周面が直上に位置するようになっている。これにより、フラッパ回動軸241は、前記周面によって両端を回動軸受217,217に押さえ込まれ、上方へ逸脱することが防止される。前記アッパーハウジング26の周面によるフラッパ回動軸24の逸脱防止が期待できない場合、例えば回動軸受217,217と一体又は別体の部材による抜け止め防止対策を施すとよい。
【0037】
回り止め218,218は、ベース21を当接させる給油口1の支持ブラケット13に設けた回り止め係止部132,132にそれぞれを周方向に係合させる。これにより、誤給油防止装置2は、ベース21を介して給油口1に対して回り止めが図られる。誤給油防止装置2は、フラッパ24が回動して開閉する向きが決まっている。ここで、給油管12は、給油口1より細く、また給油口1に対して偏芯して接続されることが多いため、前記フラッパ24の開閉する向きによっては、給油ノズル3を給油管12まで差し込みにくくなる。こうしたことから、回り止め突起218を用いた誤給油防止装置2の給油口1に対する回り止めが必要になる。
【0038】
第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23は、リンク揺動軸212の点対称位置にアーム連結軸
223が位置するように、それぞれがベース21に設けた貫通口211外周をほぼ半割する長さで前記貫通口211の周縁に倣って延びる平面視半円弧状の略扁平な樹脂製板材であり、前記リンク揺動軸212及びアーム連結軸
223を結ぶ軸線に直交する方向の点対称位置に一対の第1トリガー突起221及び第2トリガー突起231をそれぞれの上面側に設けている。第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23は、平面視形状が必ずしも半円弧状でなくてもよく、例えば角のある折れ曲がった多角辺形状でもよいが、狭い給油口1又は給油管12内に誤給油防止装置2を組み込みながら、必要充分な揺動代を確保するために、平面視半円弧状が好適である。
【0039】
本例の第1リンクアーム22は、上下方向に貫通する円筒状のリンク揺動軸孔226を一端(
図2中右下側)に設け、上面から上方に突出する円柱状のアーム連結軸223を他端(
図2中左上側)に設け、前記リンク揺動軸孔226及びアーム連結軸223を結ぶ周方向の中間付近から、貫通口211の半径方向内向きに突出する第1トリガー突起221を設けている。第1リンクアーム22は、リンク揺動軸孔226をリンク揺動軸212に外嵌してベース21に対して揺動自在に軸着し、アーム連結軸223にアーム連結軸孔233を外嵌させて第2リンクアーム23と屈曲自在に連結する。
【0040】
第1トリガー突起221は、貫通口211の半径方向内向きに下り勾配となる傾斜面222を形成している。これにより、第1トリガー突起221の傾斜面222に給油ノズル3又は給油ノズル4が上方から当接すると、リンク揺動軸212を中心として、アーム連結軸223を設けた他端を貫通口211から遠ざける方向へ第1リンクアーム22を揺動させる。そして、給油ノズル3又は給油ノズル4の外周面に第1トリガー突起221の先端が当接すると、貫通口211に近づく方向へ付勢されていても、第1リンクアーム22は揺動した状態が保持される。
【0041】
本例の第2リンクアーム23は、上下方向に貫通する円筒状のアーム連結軸孔233を一端(
図2中上側)に設け、下方に一段下がったフランジとしてストッパ236を他端(
図2中下側)に設け、前記アーム連結軸孔233及びストッパ236を結ぶ周方向の中間付近から、貫通口211の半径方向内向きに突出する第2トリガー突起231を設けている。第2リンクアーム23は、アーム連結軸孔233をアーム連結軸223に外嵌させて第2リンクアーム23と屈曲自在に連結し、ストッパ236をベース21のアッパーハウジング連結鉤216下方に潜り込ませ、前記アッパーハウジング連結鉤216との間にフラッパ24の掛止突起243を差し込ませ、前記フラッパ24が開位置に向けて回動することを防止する。
【0042】
第2トリガー突起221は、上述した第1トリガー突起211同様、貫通口211の半径方向内向きに下り勾配となる傾斜面232を形成している。これにより、第2トリガー突起231の傾斜面232に給油ノズル3又は給油ノズル4が上方から当接すると、アーム連結軸223を中心として、ストッパ236を設けた他端を貫通口211から遠ざける方向へ、第2リンクアーム23を揺動させる。そして、給油ノズル3又は給油ノズル4の外周面に第2トリガー突起231の先端が当接すると、貫通口211に近づく方向へ付勢されていても、第2リンクアーム23は揺動した状態が保持される。
【0043】
第1トリガー突起221及び第2トリガー突起231が同時に給油ノズル3に押されると、ベース21に設けたリンク揺動軸212を中心として、アーム連結軸223を貫通口211から遠ざける方向へ第1リンクアーム22を揺動させ、前記揺動させた第1リンクアーム22に設けたアーム連結軸223を中心として、ストッパ236を貫通口211から遠ざける方向へ第2リンクアーム23を揺動させる。ここで、本例の第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23は、リンク揺動軸212に近接した位置にストッパ236を突出させているから、第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23の揺動が最大限増幅されてストッパ236に伝達され、前記ストッパ236を大きく変位させることができる。
【0044】
本例の第1リンクアーム22は、第1トリガー突起221の半径方向外側に弾性リング端掛止溝225を設け、前記弾性リング端掛止溝225から第2リンクアーム23に向けて周方向に延びる弾性リング嵌合溝224を設けている。同様に、本例の第2リンクアーム23は、第2トリガー突起231の半径方向外側に弾性リング端掛止溝235を設け、前記弾性リング端掛止溝235から第1リンクアーム22に向けて周方向に延びる弾性リング嵌合溝234を設けている(
図3及び
図4参照)。
【0045】
これにより、本例の第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23は、アーム連結軸223を跨いで半円弧状の弾性リング25を前記弾性リング嵌合溝224及び弾性リング嵌合溝225に嵌合し、前記弾性リング35の内曲がり端251,251を弾性リング端掛止溝225及び弾性リング端掛止溝235に掛止させ、それぞれが貫通口211に近づく方向へ付勢される。弾性リング25は、弾性を備えた金属(バネ鋼)製の半円弧状部材で、拡径すると縮径しようとする復元力(弾性力)を発揮する。本例の弾性リング35は、アーム連結軸223を避けるため、小さく突出する円弧状のアーム連結軸回避部252を設けている。弾性リング25による付勢は、前記アーム連結軸回避部252で分断されず、あくまで弾性リング25全体が縮径しようとする復元力により与えられる。
【0046】
第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23は、第1トリガー突起221又は第2トリガー突起231のどちらかだけがガソリン用の給油ノズル4に押される(軽油用の給油ノズル3は第1トリガー突起221及び第2トリガー突起231を同時に押す)と、両者が一体となって揺動する。例えば給油ノズル4に第1トリガー突起221が押されると、第1リンクアーム21は前記給油ノズル4に直接押されて揺動し、第2リンクアーム23は第1リンクアーム22が揺動して拡径した弾性リング25の復元力に押され、第1リンクアーム22に追随して揺動する。このように、弾性リング25は、第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23の一体的な揺動にも寄与する。
【0047】
弾性リング25は、
図7に見られるように、貫通口211の半径方向外側へ大きく膨出させた中央部254を、ベース21の周面に設けた保持突起213に保持させ、第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23の弾性リング嵌合溝224,234に嵌合させながら、外曲がり端253,243を弾性リング端掛止溝225,235に掛止させない別例の構成でもよい。中央部254は、アッパーハウジング26の周面に押さえ込まれ、位置固定される。別例の弾性リング25は、中央部254を挟んだ右半分が外曲がり端254をずらしながら拡径すると縮径しようとする復元力を発生させ、第1リンクアーム22を貫通口211に近づく方向へ付勢する。同様に、中央部254を挟んだ左半分が外曲がり端254をずらしながら拡径すると縮径しようとする復元力を発生させ、第2リンクアーム23を貫通口211に近づく方向へ付勢する。このように、別例の弾性リング25は、第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23それぞれ個別に付勢力を与える。
【0048】
フラッパ24は、円形の貫通口211をほぼ塞ぐ大きさの略円形状の金属製板材で、板面から90度に折り曲げて外周縁から平行に突出した左右一対のフランジに回動軸孔242を設け、捻りコイルバネ245を遊嵌しながら前記回動軸孔242に挿通したフラッパ回動軸241の一端を裏面側に、他端をベース21にそれぞれ押し付けながら、前記フラッパ回動軸241の両端を回動軸受217,217に嵌め込んで、貫通口211のほとんどを占める閉位置から前記貫通口211から下方へ遠ざかる開位置まで回動自在にして、ベース21に取り付ける。
【0049】
掛止突起243は、第2リンクアーム23に設けられたストッパ236に掛止できれば、フラッパ24の外周縁のどこから突出させてもよい。しかし、フラッパ回動軸241と斜めに交差する方向へ突出させると、フラッパ24に押し付けたガソリン用の給油ノズル4(軽油用の給油ノズル3はフラッパ24を押し開くので、フラッパ24に押し付けられない)の負荷が偏って加わり、フラッパ24を破損させる虞がある。これから、本例の掛止突起243は、フラッパ回動軸241に直交する方向へ突出させている。これから、第2リンクアーム23のストッパ236が第1リンクアーム22を軸着するリンク揺動軸212近傍にあることから、本例のフラッパ24におけるフラッパ回動軸241は、リンク揺動軸212の点対称位置にあるアーム連結軸223近傍に位置する。
【0050】
本例のフラッパ24は、掛止突起243からフラッパ回動軸241へ向けて延びる凸条を形成して板面の剛性を高め、例えばガソリン用の給油ノズル4が押し付けられても、撓むことなく、閉位置を維持できるようにしている。これに対し、ガソリン用の給油ノズル4が受け流し荷重以上で押し付けられると弾性変形するように、掛止突起243の支持部位にフラッパ回動軸241と平行な波形条246を設けたり(
図8参照)、掛止突起243を挟んで延びる左右一対のスリット247,247を設けたり(
図9参照)してもよい。これにより、給油ノズル4が過剰に押し付けられると、波形条246(
図8例示のフラッパ24)又は掛止突起243(
図9例示のフラッパ24)自体を弾性変形させて、掛止突起243が第2リンクアーム23のストッパ236を越えてフラッパ24が回動できるようにし、前記フラッパ24の破損を免れるようにできる。
【0051】
本例の誤給油防止装置2は、ベース21に対してアッパーハウジング26を装着してモジュール化し、第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23が逸脱する虞をなくして取り扱いを容易にし、ベース21のベース側支持突起214とアッパーハウジング26のアッパー側支持突起263とで第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23を挟んで、前記第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23の揺動を安定させる。ベース側支持突起214及びアッパー側支持突起263は、それぞれ複数設け、揺動する第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23と常に複数が摺接すればよく、両者は周方向に同じ位置に設けても、又は違う位置に設けてもよい。
【0052】
本例のアッパーハウジング26は、樹脂製の円筒部材で、組み付けたベース21の貫通口211と同芯かつ同一円形状の案内口261を開口し(
図2及び
図10参照)、前記案内口261を囲んで周方向に断続して、半径方向に長いブロック状のアッパー側支持突起263を複数設け、そして点対称位置に一対の
係合爪262を下方に突出させている(
図10参照。
図10は上下逆になっている)。アッパー側支持突起263は、上面を案内口261の半径方向内向きに下り勾配の斜面にし、前記斜面に当接した給油ノズル3,4が無理なく案内口261に導かれるようにしている。係合爪262の一方は、本体の外周面に倣った周面外側に設けてあり、前記周面が回動軸受217や保持突起213と対になって、フランジ回動軸241や弾性リング25の中央部254を挟み込んで保持する。
【0053】
本例の誤給油防止装置2は、
図11〜
図13に見られるように、ベース21及びアッパーハウジング26にスペーサ5を介装して、給油口1に組み付ける。スペーサ5は、ベース21及びアッパーハウジング26の外周面と、給油口1の内周面との隙間を満たす厚みで半円弧状に湾曲した周面からなる樹脂製部材で、上縁内側の点対称位置に一対のアッパーハウジング係合爪52,52を設け、下方に突出した4枚のフラップそれぞれに給油管係合爪51,51,51,51を設け、そして前記フラップ間に弾性変形するアッパーハウジング押圧片53,53を設けている。スペーサ5の具体的構造は、ベース21及びアッパーハウジング26の構造と給油口1の構造とにより決まる。
【0054】
本例の給油口1は、雌ネジ11を刻設した上段円筒と前記上段円筒より外径が小さく段差を介して連続する下段円筒とから構成される金属製の二段円筒で、連通口134を設けた金属製の円筒である支持ブラケット13を前記下段円筒の内側に下方から差し込んで溶接で固定し、前記支持ブラケット13を覆うように給油管12を下段円筒に外嵌して溶接で固定している(
図11参照)。支持ブラケット13は、上縁から一部を切り欠いて、給油口1の下段円筒の下縁に対して給油管係合爪スリット131を形成し、連通口134を囲む環状フランジの受け底面133の一部に前記連通口134と繋がった2個一対の切欠である回り止め係止部132を設けている(
図12参照)。
【0055】
給油口1に対する誤給油防止装置2の組付手順を説明する。まず、支持ブラケット13を取り付けた給油口1にスペーサ5を上方から挿入し、給油管係合爪51,51を給油管係合爪スリット131に係合させて、給油口1にスペーサ5を位置固定する。そして、ベース21及びアッパーハウジング26を一体化したモジュルの誤給油防止装置2を前記スペーサ5に挿入し、ベース21の底面の回り止め218,218を支持ブラケット13の回り止め係止部132に係合させながら前記底面を支持ブラケット13の受け底面に押し当て、スペーサ5のアッパーハウジング係合爪52,52をアッパーハウジング26の上縁に係合させれば、組み付けを終える。このように、本例の誤給油防止装置2は、給油口1に対する組付に溶接やネジ止め等の固定手段を用いていない。給油管係合爪51,51を係合させる給油管係合爪スリット131は、下段円筒に外嵌される給油管12に覆われ、給油口1内外を連通させない(
図13参照)。
【0056】
誤給油防止装置2は、給油口1に固定された支持ブラケット13の受け底面133と、同じく給油口1に位置固定されたスペーサ5のアッパーハウジング係合爪52とに上下に挟まれ、位置固定される。また、誤給油防止装置2は、スペーサ5のアッパーハウジング押圧片53が、アッパーハウジング26を半径方向に押し付けられ、がたつきが抑制又は防止される。本例の誤給油防止装置2は、ベース21から突出する一対の回り止め218,218を、支持ブラケット13に設けた一対の回り止め係止部132,132に周方向に係合して回り止めが防止され、フラッパ24の開閉する向きが給油口1に対して特定されている。これから、給油口1に対して特定の向きに給油管12を接続すれば、給油管12に対してフラッパ24の開閉する向きも特定される。給油ノズル3は、同芯で上下に並ぶ案内口261、貫通口211、そして連通口134を通って給油管12に差し込まれる。
【0057】
本例の誤給油防止装置2の働きを説明する。第1トリガー突起221及び第2トリガー突起231は、互いの先端を直線で結んだ最短距離DM(
図5参照)が、軽油用の給油ノズル3の相対的に大きな外径DL(
図14参照)より小さく、ガソリン用の給油ノズル4の相対的に小さな外径DS(
図16参照)より大きい。これから、軽油用の給油ノズル3であれば、第1トリガー突起221及び第2トリガー突起231を同時に押すことができるが、ガソリン用の給油ノズル4であれば、第1トリガー突起221及び第2トリガー突起231のいずれか一方しか押すことができない。このように、本例の誤給油防止装置2は、第1トリガー突起221及び第2トリガー突起231を同時に押せるか、どちらか一方しか押せないかにより、給油ノズル3,4の外径DL,DSを識別する。
【0058】
誤給油防止装置2は、何もしない状態で、フラッパ24の掛止突起243下方に第2リンクアーム23のストッパ236が差し込まれ、前記フラッパ24を開くことができない。ここで、外径DLである軽油用の給油ノズル3が給油口1から挿入されると、
図14及び
図15に見られるように、案内口261を抜けた給油ノズル3の先端が第1トリガー突起221及び第2トリガー突起231の傾斜面222,232に当接し、そのまま前記傾斜面222,232を押すことにより、第1トリガー突起221及び第2トリガー突起231を互いに遠ざけ、第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23をいずれも貫通口211から遠ざける方向に揺動させる。これにより、第1リンクアーム22は、他端に設けられたアーム連結軸223を貫通口211から遠ざける方向に変位させ、第2リンクアーム23は、前記アーム連結軸223を中心としてストッパ236を貫通口211から遠ざける方向に変位させる。
【0059】
給油ノズル3が更に深く挿入されると、給油ノズル3の先端が第1トリガー突起221及び第2トリガー突起231の傾斜面222,232を抜け、今度は給油ノズル3の側面が前記第1トリガー突起221及び第2トリガー突起231の先端に当接する。この段階に至る過程で、第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23は、更に貫通口211から遠ざける方向にそれぞれ揺動する結果、第2リンクアーム23の他端に設けられたストッパ236が大きく変位して、フラッパ24の掛止突起243下方から前記ストッパ236が外れる。これにより、フラッパ24は、給油ノズル3に押されるまま下方へ回動し、前記給油ノズル3が給油管12まで差し込まれる(
図15参照)。
【0060】
給油管12まで給油ノズル3が挿入された状態では、第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23は、拡径した弾性リング25により貫通口211に近づく方向へ付勢され、フラッパ24は、捻りコイルバネ245により閉位置に向けて付勢されてい
るが、いずれも給油ノズル3に揺動又は回動が妨げられている。このため、給油ノズル3が引き抜かれると、まず捻りコイルバネ254の働きによりフラッパ24が閉位置まで回動し、続いて弾性リング25の働きにより第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23が貫通口211に近づく方向へ揺動して、第2リンクアーム23のストッパ236が前記フラッパ24の掛止突起243下方に再び差し込まれる。こうして、給油ノズル3を引き抜けば、再びフラッパ24が閉じ、ストッパ236により開くことができないようになる。
【0061】
フラッパ24の掛止突起243下方に差し込まれた第2リンクアーム23のストッパ236により前記フラッパ24を開くことができない状態で、外径DSであるガソリン用の給油ノズル4が給油口1から挿入されると、
図16及び
図17に見られるように、案内口261を抜けた給油ノズル
4は、外径DSが第1トリガー突起221及び第2トリガー突起231の最短距離DMより小さいため、第1トリガー突起221及び第2トリガー突起231の傾斜面222,232いずれも押すことができないので、第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23を揺動させない。このため、第2リンクアーム23の他端に設けられたストッパ236が動かず、フラッパ24の掛止突起243は前記ストッパ236に掛止されたままで、フラッパ24を回動させない。これにより、給油ノズル4は、フラッパ24に当接するのみで、給油管12まで差し込まれない(
図17参照)。
【0062】
本例のフラッパ24は、貫通口211を完全に塞がず、隙間を残している(例えば
図5参照)。このため、開かないフラッパ24に当接した給油ノズル4からガソリンが給油され始めると、前記ガソリンが給油管12に流れ込むことを完全に防止できない。しかし、前記隙間が十分に小さいため、給油ノズル4からガソリンが給油され始めても、発生するガソリン蒸気によって誤給油防止装置2より上方の気圧がすぐに高まり、給油ノズル4の自動給油停止機構を作動させ、ガソリンの給油を停止させることができる。貫通口211に対してフラッパ24が残す隙間は、緊急時に際して携行缶付属のノズルを挿入しても給油できるようにする働きを有する。
【0063】
ガソリン用の給油ノズル4が給油口1から偏って挿入され、第1トリガー突起221のみを押す場合、
図18及び
図19に見られるように、案内口261を抜けた給油ノズル
4は、第1トリガー突起221の傾斜面222を押し、リンク揺動軸212を中心として第1リンクアーム22を貫通口211から遠ざかる方向に揺動させる。これにより、拡径した弾性リング25の復元力により付勢された第2リンクアーム23が、第1リンクアーム22に引き寄せられるように、アーム連結軸223を中心として揺動する。
【0064】
この結果、第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23は、リンク揺動軸212を中心として、一体的に右方(
図18中右方)へ揺動する。ここで、第2リンクアームのストッパ236は、リンク揺動軸212近傍にあるため、前記第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23の一体的な揺動によってもほとんど変位しない。このため、フラッパ24の掛止突起243は前記ストッパ236に掛止されたままとなり、フラッパ24を回動させない。こうして、フラッパ24は、給油ノズル4が給油管12まで差し込まれ
ることが防止される(
図19参照)。
【0065】
同様に、ガソリン用の給油ノズル4が給油口1から偏って挿入され、第2トリガー突起231のみを押す場合、
図20及び
図21に見られるように、案内口261を抜けた給油ノズル
4は、第2トリガー突起231の傾斜面232を押し、アーム連結軸223を中心として第2リンクアーム23を貫通口211から遠ざかる方向に揺動させる。これにより、拡径した弾性リング25の復元力により付勢された第1リンクアーム22が、第2リンクアーム23に引き寄せられるように、リンク揺動軸212を中心として揺動する。
【0066】
この結果、第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23は、リンク揺動軸212を中心として、一体的に左方(
図21中左方)へ揺動する。ここで、第2リンクアームのストッパ236は、リンク揺動軸212近傍にあるため、前記第1リンクアーム22及び第2リンクアーム23の一体的な揺動によってもほとんど変位しない。このため、フラッパ24の掛止突起243は前記ストッパ236に掛止されたままとなり、フラッパ24を回動させない。こうして、フラッパ24は、給油ノズル4が給油管12まで差し込まれことが防止される(
図21参照)。