(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1面及びそれと反対側に位置する第2面を有する前記繊維シートにおける第1面にのみ前記水系塗布液を噴霧する請求項1ないし8のいずれか一項に記載の抗菌性シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明においては、前記式(1)で表される水難溶性抗菌剤(以下、単に「抗菌剤」とも言う。)を含む水系塗布液を繊維シートに噴霧して、目的とする抗菌性シートを得る。抗菌剤が付与される対象である繊維シートとしては、セルロース繊維を含むシートが用いられる。セルロース繊維としては、例えば針葉樹クラフトパルプや広葉樹クラフトパルプのような木材パルプ、木綿パルプ及びワラパルプ等の天然セルロース繊維が挙げられる。あるいはレーヨン及びキュプラ等の再生セルロース繊維を用いることができる。更に、アセテート等の半合成セルロース繊維を用いることもできる。
【0013】
セルロース繊維として、嵩高性のセルロース繊維を用いることもできる。本明細書において「嵩高性の繊維」とは、繊維形状が、捻れ構造、クリンプ構造、屈曲及び/又は分岐構造等の立体構造をとるか、又は繊維断面が極太(例えば繊維粗度が0.3mg/m以上)である繊維を言う。嵩高性のセルロース繊維の好ましいものの例として、繊維粗度が0.3mg/m以上、特に0.32mg/m以上、また、2mg/m以下、特に1mg/m以下、とりわけ0.32mg/m以上1mg/m以下のセルロース繊維が挙げられる。「繊維粗度」とは、木材パルプのように、繊維の太さが不均一な繊維において、繊維の太さを表す尺度として用いられるものであり、例えば、繊維粗度計(FS−200、AJANI ELECTRONICS LTD.社製)を用いて測定することができる。繊維粗度が0.3mg/m以上のセルロース繊維の例としては、針葉樹クラフトパルプ〔Federal Paper Board Co. 製の「ALBACEL 」(商品名)、及びPT Inti Indorayon Utama 製の「INDORAYON 」(商品名)〕等が挙げられる。
【0014】
嵩高性のセルロース繊維の好ましいものの他の例として、繊維断面の真円度が好ましくは0.5以上、更に好ましくは0.55以上であり、また、好ましくは1以下であるセルロース繊維が挙げられる。繊維断面の真円度が0.5以上1以下であるセルロース繊維は、液体の移動抵抗が小さく、液体の透過速度が大きくなるので好ましい。繊維断面の真円度は、例えば特開平8−246395号公報に記載の方法で測定することができる。
【0015】
一般に木材パルプの断面は、脱リグニン化処理により偏平であり、その殆どの真円度は0.5未満である。このような木材パルプの真円度を0.5以上にするためには、例えば、斯かる木材パルプをマーセル化処理して木材パルプの断面を膨潤させればよい。このように、嵩高性のセルロース繊維としては、木材パルプをマーセル化処理して得られる真円度が0.5以上1以下であるマーセル化パルプも好ましい。本発明において用いることのできる市販のマーセル化パルプの例としては、ITT Rayonier Inc. 製の「FILTRANIER」(商品名)や同社製の「POROSANIER」(商品名)等が挙げられる。また、繊維粗度が0.3mg/m以上で、かつ繊維断面の真円度が0.5以上1以下であるセルロース繊維を用いると、嵩高なネットワーク構造が一層形成されやすくなり、液体の通過速度も一層大きくなるので好ましい。
【0016】
嵩高性のセルロース繊維の別の例として、セルロース繊維の分子内及び/又は分子間を架橋させた架橋セルロース繊維がある。かかる架橋セルロース繊維は湿潤状態でも嵩高構造を維持し得るという特長を有している。セルロース繊維を架橋するための方法には特に制限はないが、例えば、架橋剤を用いた架橋方法が挙げられる。かかる架橋剤の例としては、ジメチロールエチレン尿素及びジメチロールジヒドロキシエチレン尿素等のN−メチロール系化合物;クエン酸、トリカルバリル酸及びブタンテトラカルボン酸等のポリカルボン酸;ジメチルヒドロキシエチレン尿素等のポリオール;ポリグリシジルエーテル系化合物の架橋剤などが挙げられる。特に、架橋時に人体に有害なホルマリン等を発生しないポリカルボン酸やポリグリシジルエーテル系化合物の架橋剤が好ましい。
【0017】
以上の各種のセルロース繊維は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。またセルロース繊維は、繊維シートの製造方法や、抗菌性シートの具体的な用途に応じて適切な繊維長のものが用いられる。例えば湿式抄造法で繊維シートを製造する場合、セルロース繊維の繊維長は1mm以上20mm以下であることが好ましい。
【0018】
繊維シートは、上述したセルロース繊維のみから構成されていてもよく、あるいはセルロース繊維に加えて他の繊維が含まれていてもよい。他の繊維としては、例えば熱融着性繊維が挙げられる。熱融着性繊維としては、加熱により溶融し相互に接着する繊維を用いることができる。熱融着性繊維の具体例としては、
ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリビニルアルコール等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維、ポリエチレン−ポリプロピレン複合繊維、ポリエチレン−ポリエステル複合繊維、低融点ポリエステル−ポリエステル複合繊維、繊維表面が親水性であるポリビニルアルコール−ポリプロピレン複合繊維、並びにポリビニルアルコール−ポリエステル複合繊維等を挙げることができる。複合繊維を用いる場合には、芯鞘型複合繊維及びサイド・バイ・サイド型複合繊維のいずれをも用いることができる。これらの熱融着性繊維は、各々単独で用いることもでき、又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0019】
熱融着性繊維は、その繊度が0.1dtex以上、特に0.5dtex以上であり、また、3dtex以下であることが好ましい。また、繊維シートを例えば湿式抄造法で製造する場合、熱融着性繊維は、一般にその繊維長が2mm以上60mm以下であることが好ましい。更に熱融着性繊維は、繊維シート中に1質量%以上30質量%以下含まれていることが好ましい。
【0020】
繊維シートには、上述した繊維成分に加えて他の成分が含まれていてもよい。他の成分としては例えば紙力補強剤が挙げられる。紙力補強剤としては、例えばポリアミン・エピクロルヒドリン樹脂、ジアルデヒドデンプン、カイメン、カルボキシメチルセルロースなどを用いることができる。これらの紙力補強剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。紙力補強剤は、繊維シート中に0.01質量%以上30質量%以下、特に0.01質量%以上20質量%以下含まれていることが好ましい。
【0021】
繊維シートは、上述したセルロース繊維が含まれている限り、単層構造のものでもよく、又は多層構造のものでもよい。あるいは繊維シートは、2プライ以上の複数のシートを重ね合わせたものであって、該複数のシートのうちのいずれか一つにセルロース繊維が含まれているものであってもよい。
【0022】
繊維シートは、抗菌性シートの具体的な用途に応じて適切な坪量のものが用いられる。例えば抗菌性シートを、吸収性物品における吸収性コアの被覆に用いる場合には、繊維シートの坪量を8g/m
2以上、特に13g/m
2以上、また、45g/m
2以下、特に20g/m
2以下に設定することが好ましい。
【0023】
繊維シートに付与する水系塗布液に含有される前記抗菌剤は、上述のとおり、前記式(1)で表されるものである。本発明においては、式(1)で表されるもののうちの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。式(1)中、R
1及びR
2の好ましい組み合わせとしては、例えばR
1がメチル基であり、R
2が炭素数8以上20以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である組み合わせや、R
1及びR
2が同一の基であり、かつ該基が炭素数8以上20以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である組み合わせが挙げられる。これらの組み合わせにおいて、アルキル基の炭素数は、10以上18以下であることが更に好ましい。
【0024】
式(1)中、X
−で表される一価のアニオンは、例えばハロゲン化物イオンやアニオン活性基であることが好ましい。特にX
−で表される一価のアニオンがアニオン活性基である場合、前記抗菌剤は水への溶解性が低くなることが知られているので、本発明の製造方法を採用する場合にその効果が顕著なものとなる。「アニオン活性基」とは、陰イオン性の界面活性能を有するイオンのことを言う。
【0025】
前記アニオン活性基としては、炭素数6以上、特に炭素数10以上であり、また、炭素数20以下、特に炭素数18以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を含むアニオン性活性基を用いることが好ましい。そのようなアニオン活性基として、例えばアルキルリン酸エステル塩やアルキルカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩を用いることが、抗菌能の点で好ましい。特に以下の式(2)で表されるアルキルリン酸を用いることが、抗菌能が一層高くなる点で好ましい。
【0027】
式(2)中、R
3とR
4の好ましい組み合わせとしては、R
3が水素原子であり、R
4が炭素数8以上20以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である組み合わせが挙げられる。アルキル基の炭素数は、10以上18以下であることが更に好ましい。
【0028】
式(1)で表される前記抗菌剤は水難溶性のものである。本明細書において「水難溶性」とは、25℃の純水100gに2.0gの前記抗菌剤を添加し撹拌した液を、JIS Z 8801−1で規定される目開き106μmの試験用ふるいで濾過したときに、メッシュ上に残る該抗菌剤の質量の割合(以下、この割合のことを「残存率」という。)が、初めの量に対して3%以上であることを言う。
【0029】
前記抗菌剤は、これを水と混合することで水系塗布液が得られる。前記抗菌剤は水難溶性のものであるから、これを水と混合しても完全に水に溶解しない場合がある。しかし、後述するとおり、水系塗布液のpHを調整することで、未溶解の前記抗菌剤からなる粗大物の生成は効果的に防止される。水系塗布液中の前記抗菌剤の濃度は、抗菌性シートに十分な抗菌性を付与する観点から、0.2質量%以上であることが好ましく、0.4質量%以上であることが更に好ましい。また、水系塗布液の粘度が過度に上昇しないようにする観点から、前記抗菌剤の濃度は3%以下であることが好ましく、2%以下であることが更に好ましい。具体的には、前記抗菌剤の濃度は、0.2質量%以上3%質量%以下であることが好ましく、0.4質量%以上2%質量%以下であることが更に好ましい。
【0030】
前記抗菌剤が含まれている水系塗布液は、そのpHが6.5以上、特に7.0以上に調整されていることが好ましい。水系塗布液のpHをこの値以上に設定することで、未溶解の前記抗菌剤からなる粗大物が水系塗布液中に生成することが、効果的に防止される。この理由は水系塗布液のpHを高めることで、式(1)におけるカチオン部位とアニオン部位との解離が促進されるからであると、本発明者は考えている。水系塗布液のpHは高ければ高いほど、前記抗菌剤からなる粗大物の生成が抑制されるので好ましい。尤も、pHが過度に高くなると、前記抗菌剤の溶解が進行し過ぎて、水系塗布液の粘度が急激に上昇しやすくなる。したがって本発明においては、水系塗布液のpHの上限は9.0、特に8.5とすることが好ましい。このように、本発明における水系塗布液のpHは6.5以上9.0以下であることが好ましく、7.5以上8.5以下であることが更に好ましい。水系塗布液のpHはその温度に依存するところ、本発明に言う水系塗布液のpHとは、該水系塗布液を繊維シートに付与するときの該水系塗布液の温度におけるpHのことである。
【0031】
水系塗布液のpHを上述の範囲に設定するためには、該水系塗布液に塩基性化合物を含有させることが効果的であることが、本発明者らの検討の結果判明した。塩基性化合物としては、例えば炭酸塩、炭酸水素塩、アンモニア、及び金属水酸化物などが挙げられる。これらの塩基性化合物は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの塩基性化合物のうち、皮膚への刺激性が低い観点から、炭酸塩及び炭酸水素塩を用いることが好ましく、特に炭酸塩を用いることが好ましい。炭酸塩としては、例えば炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩を用いることが、皮膚への刺激性が一層低い観点から好ましい。水系塗布液に含まれる塩基性化合物の濃度は、該水系塗布液のpHが上述の値となるように調整される。また、前記水系塗布液を噴霧する作業環境下において、安全性の問題からpHを低く抑え、アルカリ性側から中性側にしたい場合がある。その場合は、上述のpH範囲内であれば、前記塩基性化合物によって未溶解の前記抗菌剤からなる粗大物が水系塗布液から効果的に防止された後に、適当な酸性物質を用いてpHを適宜調整することができる。
【0032】
水系塗布液にはキレート剤を含有させることも好ましい。キレート剤は、水系塗布液中に不純物として含まれることのある金属イオンと錯体を形成して、前記抗菌剤に起因するスカムの生成を抑制するからである。この観点から、水系塗布液に含まれるキレート剤の濃度は0.1質量%以上、特に0.5質量%以上とすることが好ましい。また、2.0質量%以下、特に1.5質量%以下とすることが好ましい。水系塗布液に含まれるキレート剤の濃度は例えば0.1質量%以上2.0質量%以下、特に0.5質量%以上1.5質量%以下とすることが好ましい。
【0033】
キレート剤としては、例えばアミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1−ジホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、及びそれらの塩、2−ホスホノカルボン酸又はその塩、アスパラギン酸又はその塩、グルタミン酸又はその塩等のアミノ酸又はその塩、ニトリロ三酢酸又はその塩、エチレンジアミン四酢酸又はその塩等のアミノポリ酢酸又はその塩等の有機酸又はその塩、クエン酸又はその塩、ピロ−及びトリリン酸塩等が挙げられる。これらのキレート剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
本発明における水系塗布液は、該水系塗布液にキレート剤が含まれている場合、該水系塗布液に金属石けんを生成し得る金属イオン、例えばカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどのアルカリ土類金属元素のイオンが含まれている場合であっても、スカムの生成が効果的に抑制されたものとなる。したがって、水系塗布液に用いられる水として、硬度の高い水を用いることが可能になる。アルカリ土類金属元素のイオンの濃度は、河川水や地下水等の水源や採取場所によって異なるが、本発明においては、水系塗布液に利用する水が100mgCaCO
3/Lを超える高い硬度であっても、該水系塗布液に含まれるキレート剤の濃度が前記範囲内であれば、スカムの生成を効果的に抑制することができる。
【0035】
水系塗布液は、その粘度が80mPa・s、特に65mPa・s以下、とりわけ20mPa・s以下であることが好ましい。粘度をこの値以下に設定することによって、該水系塗布液を首尾よく繊維シートに噴霧することが可能になる。水系塗布液の粘度はその温度に依存するところ、本発明に言う水系塗布液の粘度とは、該水系塗布液を繊維シートに付与するときの該水系塗布液の温度における粘度のことである。水系塗布液の粘度は、前記抗菌剤の濃度や該水系塗布液のpHによって調整することができる。水系塗布液の粘度は、B型粘度計TVB−10M(東機産業株式会社製)を用いて測定される。
【0036】
図1及び
図2には、水系塗布液を繊維シートに付与する装置の一例が示されている。
図1に示すとおり、原液タンク10中に、水系塗布液の成分である水、前記抗菌剤及び前記塩基性化合物を仕込み、必要に応じ更にキレート剤を仕込む。これらの成分を、撹拌翼11を用いて十分に混合することで、水系塗布液の原液を調製する。原液タンク10に貯留されている原液は、これを希釈タンク12に移送するときに、希釈水Wによって希釈される。原液が希釈水Wによって希釈されて得られた水系塗布液は、希釈タンク12において撹拌翼13を用い十分に混合される。このようにして得られた水系塗布液はストレーナ14を通過することで粗大物が除去され、ポンプ15によって噴霧ノズル16へ送液される。
【0037】
図2に示すとおり抄造工程(図示せず)によって湿式抄造された繊維シート20は、湿潤状態のまま搬送ベルト21に搬送されてヤンキードライヤ22に導入される。ヤンキードライヤ22の導入部には、該ヤンキードライヤ22の周面に対向するようにタッチロール23が配置されている。繊維シート20は搬送ベルト21とともに、タッチロール23に案内されてヤンキードライヤ22に導入される。そして繊維シート20は、ヤンキードライヤ22に導入される直前に、タッチロール23の周面に保持された状態下、該繊維シート20の一面に、噴霧ノズル16から噴霧された水系塗布液が付与される。このように、本工程においては、第1面及びそれと反対側に位置する第2面を有する繊維シート20における一方の面(例えば第1面)からのみ、水系塗布液が噴霧によって付与される。
【0038】
水系塗布液が付与された繊維シート20は、湿潤状態のままヤンキードライヤ22の周面に保持されて搬送される。そして、その搬送の間に加熱されて水分が除去され乾燥される。このようにして得られた抗菌性シート24は、ドクターブレード25によってヤンキードライヤ22の周面から剥離される。
【0039】
以上の方法によって得られた抗菌性シート24は、その第1面及び第2面のうち、第2面に比べて、水系塗布液の付与面である第1面の側に前記抗菌剤が多く存在した状態となる。この理由は、前記抗菌剤は、水系塗布液中において完全には溶解しておらず、未溶解の凝集体が該水系塗布液中に存在していることから、該水系塗布液を繊維シート20に噴霧すると、未溶解の該凝集体が、繊維シート内に浸透せず、噴霧面の表面、すなわち第1面の表面に残存するからである。
【0040】
このようにして得られた抗菌性シート24は、前記抗菌剤を1.0mg/m
2以上、特に2.5mg/m
2以上含んでいることが十分な抗菌性の発現の点から好ましい。前記抗菌剤の含有量の上限は50.0mg/m
2以下、特に20.0mg/m
2以下であることが好ましい。前記抗菌剤の含有量は例えば1mg/m
2以上50.0mg/m
2以下、特に2.5mg/m
2以上20.0mg/m
2以下であることが好ましい。
【0041】
抗菌性シート24は、その抗菌性能を利用して種々の分野に適用することができる。
図3には、抗菌性シート24を使い捨ておむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品に適用したときの一例が示されている。同図には、吸収性物品の吸収性コア30の表面全域を被覆する被覆シート31として、抗菌性シート24を用いた実施形態が示されている。吸収性コア30は、フラッフパルプなどの吸液性繊維、又は吸液性繊維及び高吸収性ポリマーを含んで構成されている。この吸収性コア30における面のうち、少なくとも着用者の肌に対向する面を抗菌性シート24で被覆している。この場合、抗菌性シート24における第1面241、すなわち前記抗菌剤が多く存在している側の面を着用者の肌に対向するように配置することが、抗菌効果の効果的な発現の点から好ましい。なお吸収性物品は、一般に、液透過性の表面シート、液不透過性ないし難透過性の裏面シート及び両シート間に配置された液保持性の吸収体を備えている。
【0042】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、繊維シート20の第1面及び第2面のうち、一方の面にのみ、すなわち第1面にのみ水系塗布液を付与したが、これに代えて、第1面及び第2面の双方に水系塗布液を付与してもよい。
【0043】
また、前記実施形態においては、抗菌性シート24を吸収性物品に適用した例を挙げたが、それ以外の菌やカビの生育を阻止するために抗菌性を必要とする用途、例えば食品の包装材やトレイ、空調用フィルター、床材や壁材等の建材、医療用のマスク、シーツや手袋、衣類、ウェットティッシュや除菌クリーナー、おしり拭きシートに抗菌性シート24を適用してもよい。
【0044】
上述した実施形態に関し、本発明は更に以下の抗菌性シートの製造方法を開示する。
<1>
以下の式(1)で表される水難溶性抗菌剤及び塩基性化合物を含有し、かつpHが6.5以上、特に7.0以上である水系塗布液を、セルロース繊維を含有する繊維シートに噴霧する工程を有する抗菌性シートの製造方法。
【化3】
<2>
前記式(1)において、R
1がメチル基であり、R
2が炭素数8以上20以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、
前記アルキル基の炭素数は、10以上18以下であることが更に好ましい前記<1>に記載の抗菌性シートの製造方法。
<3>
前記式(1)において、R
1及びR
2が同一の基であり、かつ該基が炭素数8以上20以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基であり、
アルキル基の炭素数は、10以上18以下であることが更に好ましい前記<1>に記載の抗菌性シートの製造方法。
<4>
25℃の純水100gに2.0gの前記水難溶性抗菌剤を添加し撹拌した液を、JIS
Z 8801−1で規定される目開き106μmの試験用ふるいで濾過したときに、メッシュ状に残る該水難溶性抗菌剤の量の割合が、初めの量に対して3%以上である前記<1>ないし<3>のいずれか1に記載の抗菌性シートの製造方法。
<5>
前記式(1)中、X
−で表される一価のアニオンが、ハロゲン化物イオン又はアニオン活性基である前記<1>ないし<4>のいずれか1に記載の抗菌性シートの製造方法。
【0045】
<6>
前記式(1)におけるX
−が、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を含むアニオン性活性基である前記<1>ないし<5>のいずれか1に記載の抗菌性シートの製造方法。
<7>
前記アニオン活性基が、炭素数6以上、特に炭素数10以上であり、炭素数20以下、特に炭素数18以下である前記<5>又は<6>に記載の抗菌性シートの製造方法。
<8>
前記式(1)におけるX
−が、炭素数6以上20以下、好ましくは炭素数10以上18以下の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基を含むアニオン性活性基である前記<1>ないし<7>のいずれか1に記載の抗菌性シートの製造方法。
<9>
アニオン活性基が、陰イオン性の界面活性能を有するイオンである前記<5>ないし<8>のいずれか1に記載の抗菌性シートの製造方法。
<10>
前記式(1)におけるX
−が、アルキルリン酸エステル塩、アルキルカルボン酸塩、アルキルスルホン酸塩又はアルキル硫酸エステル塩である前記<1>ないし<9>のいずれか1に記載の抗菌性シートの製造方法。
【0046】
<11>
前記式(1)におけるX
−が、以下の式(2)で表されるアルキルリン酸である前記<1>ないし<10>のいずれか1に記載の抗菌性シートの製造方法。
【化4】
<12>
前記式(2)中、R
3が水素原子であり、R
4が炭素数8以上20以下、好ましくは炭素数10以上18以下の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である前記<11>に記載の抗菌性シートの製造方法。
<13>
前記式(2)中、R
3が水素原子であり、R
4が炭素16の直鎖又は分岐鎖のアルキル基である前記<12>に記載の抗菌性シートの製造方法。
<14>
前記水系塗布液中の前記水難溶性抗菌剤の濃度が、0.2質量%以上であることが好ましく、0.4質量%以上であることが更に好ましく、また前記水難溶性抗菌剤の濃度は3%以下であることが好ましく、2%以下であることが更に好ましい前記<1>ないし<13>のいずれか1に記載の抗菌性シートの製造方法。
<15>
前記水系塗布液中の前記水難溶性抗菌剤の濃度が、0.2質量%以上3質量%以下、好ましくは0.4質量%以上2%質量%以下である前記<1>ないし<14>のいずれか1に記載の抗菌性シートの製造方法。
<16>
前記水系塗布液のpHが9.0以下、特に8.5以下である前記<1>ないし<15>のいずれか1に記載の抗菌性シートの製造方法。
【0047】
<17>
前記塩基性化合物が、炭酸塩、炭酸水素塩、アンモニア及び金属水酸化物から選ばれる1種又は2種以上である前記<1>ないし<16>のいずれか1に記載の抗菌性シートの製造方法。
<18>
前記塩基性化合物が炭酸塩である前記<1>ないし<17>のいずれか1に記載の抗菌性シートの製造方法。
<19>
前記炭酸塩が、炭酸ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩である前記<18>に記載の抗菌性シートの製造方法。
<20>
前記水系塗布液が更にキレート剤を含む前記<1>ないし<19>のいずれか1に記載の抗菌性シートの製造方法。
<21>
前記水系塗布液に含まれるキレート剤の濃度が、0.1質量%以上、特に0.5質量%以上とすることが好ましく、また、2.0質量%以下、特に1.5質量%以下とすることが好ましい前記<20>に記載の抗菌性シートの製造方法。
【0048】
<22>
前記キレート剤が、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1−ジホスホン酸)、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、及びそれらの塩、2−ホスホノカルボン酸及びその塩、アスパラギン酸及びその塩、グルタミン酸及びその塩等のアミノ酸及びその塩、ニトリロ三酢酸及びその塩、エチレンジアミン四酢酸及びその塩等のアミノポリ酢酸及びその塩等の有機酸及びその塩、クエン酸及びその塩、並びにピロ−及びトリリン酸塩から選ばれる1種又は2種以上である前記<20>又は<21>に記載の抗菌性シートの製造方法。
<23>
前記水系塗布液が更にエチレンジアミン四酢酸又はその塩を含む前記<1>ないし<22>のいずれか1に記載の抗菌性シートの製造方法。
<24>
前記水系塗布液に利用する水が100mgCaCO
3/Lを超える硬度を有する前記<20>ないし<23>のいずれか1に記載の抗菌性シートの製造方法。
<25>
前記水系塗布液を前記繊維シートに付与するときの該水系塗布液の温度における粘度が80mPa・s、特に65mPa・s以下、とりわけ20mPa・s以下である前記<1>ないし<24>のいずれか1に記載の抗菌性シートの製造方法。
<26>
第1面及びそれと反対側に位置する第2面を有する前記繊維シートにおける第1面にのみ前記水系塗布液を噴霧する前記<1>ないし<25>のいずれか1に記載の抗菌性シートの製造方法。
【0049】
<27>
前記噴霧する工程の前に、前記水系塗布液の成分である水、前記抗菌剤及び前記塩基性化合物を混合し撹拌する工程を有する前記<26>に記載の抗菌性シートの製造方法。
<28>
前記噴霧する工程の後に、前記繊維シートをヤンキードライヤに導入する工程を有する前記<26>又は<27>に記載の抗菌性シートの製造方法。
<29>
第1面及びそれと反対側に位置する第2面を有し、前記<1>ないし<28>のいずれか1に記載の製造方法によって製造された抗菌性シート。
<30>
前記水難溶性抗菌剤を1mg/m
2以上含む前記<29>に記載の抗菌性シート。
<31>
前記抗菌性シートは、前記抗菌剤を1mg/m
2以上、特に2.5mg/m
2以上含んでおり、また50.0mg/m
2以下、特に20.0mg/m
2以下含んでいる前記<29>又は<30>に記載の抗菌性シート。
【0050】
<32>
第2面に比べて第1面の側に前記水難溶性抗菌剤が多く存在している前記<29>ないし<31>のいずれか1に記載の抗菌性シート。
<33>
前記<29>ないし<32>のいずれか1に記載の抗菌性シートを有する吸収性物品。
<34>
前記抗菌性シートにおける第1面を着用者の肌に対向するように配置した前記<33>に記載の吸収性物品。
<35>
液保持性の吸収性コアを有し、該吸収性コアの面のうち、着用者の肌に対向する面を前記抗菌性シートで被覆した前記<33>又は<34>に記載の吸収性物品。
<36>
前記繊維シートの坪量が8g/m
2以上、特に13g/m
2以上であり、また、45g/m
2以下、特に20g/m
2以下である前記<35>に記載の吸収性物品。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0052】
〔実施例1〕
(1)水系塗布液の調製
水難溶性抗菌剤としてセチルリン酸ベンザルコニウム(花王株式会社の「サニゾールP」(登録商標))を用いた。この抗菌剤の残存率は3.7%であった。塩基性化合物として、炭酸ナトリウムを用いた。キレート剤として、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA)を用いた。これらを地下水と混合して水系塗布液を得た。この地下水の硬度は、75mgCaCO
3/Lであった。水系塗布液中における各成分の濃度は、表1に示すとおりである。また水系塗布液のpH及び粘度も同表に示すとおりである。各水性塗布液について測定した粗大物の100μmメッシュ残渣率も同表に示すとおりである。メッシュ残渣率は、目開き100μmのメッシュによって水系分散液を濾過し、濾別された粗大物を乾燥してその質量を測定し、測定された質量を、濾過前の水系分散液の質量で除し、更に100を乗じて算出した。各水系塗布液の外観の目視観察結果も同表には示されている。
【0053】
(2)繊維シートの製造
針葉樹クラフトパルプを90%、広葉樹クラフトパルプを10%含む紙料を原料として湿式抄造を行い、坪量14g/m
2の紙を製造した。この紙を繊維シートとして用いた。
【0054】
(3)抗菌性シートの製造
図1及び
図2に示す装置を用いて抗菌性シートを製造した。ストレーナのメッシュの目開きは100μmであった。
【0055】
(4)製造安定性(2時間経過後)の評価
抗菌性シートを製造するときの噴霧ノズル及びストレーナの目詰まり発生の有無を目視評価した。目詰まりが観察されなかった場合を「○」とし、目詰まりが僅かに観察された場合を「△」とし、目詰まりが甚だしく観察された場合を「×」とした。結果を表1に示す。更に、抗菌剤の歩留まりを算出した。算出は、まず繊維シートに水系塗布液を均一に塗布するノズル条件を決め、その条件下で繊維シートがない状態で、水系塗布液の1分間当たりの吐出量A(g/min)を適当な大きさの容器に受けて計量した。そして抗菌剤の水系塗布液中の濃度B(%)、及び1分間当たりに塗布される繊維シートの面積W(m
2)より繊維シート上に噴霧した単位面積当たりの抗菌剤の坪量C=A×B÷100÷W(g/m
2)を求めた。次に、繊維シートに水系塗布液を噴霧、乾燥した後の抗菌シートにおいて、実際に抗菌シートに含まれる抗菌剤の坪量D(g/m
2)を後述の方法にて測定した。抗菌剤の噴霧した量に対する抗菌シートに残る割合である歩留まりEは、E=D/C×100(%)の式より行った。抗菌剤の歩留まりが低下する原因としては、水系塗布液の噴霧液の一部がノズル16から繊維シート20に到達する間に、ヤンキードライヤ22の回転により生じる空気の乱流により噴霧液が散逸し、繊維シート20に実質的に塗布されないことや、タッチロール23にてニップされる際に、水系塗布液の噴霧液の一部が繊維シートを通過し、塗布面の裏面に接する搬送ベルト21(毛布)まで浸透するためと考えられる。
【0056】
(5)抗菌性シートの評価
抗菌性シートに含まれる抗菌剤の量は、液体クロマトグラフ/質量分析計(アジレント社製6140 LC/MS、イオン化法:ESI)にて測定した。まず、検量線の作成のため、抗菌剤の有効成分を約0.05g量りとり、10mmol/L酢酸含有メタノールに溶解して100mLにした(500μg/mL)。この溶液を希釈して、有効分として0.01、0.05、0.1、0.5μg/mLの検量線用の溶液を調製した。次に、10cm×10cm角の抗菌シートを10mmol/L酢酸含有メタノール溶液30mLに浸し、超音波を10分間照射し、抽出液を100mLのメスフラスコに回収した。この抽出作業を3回繰り替えし、前記酢酸含有メタノールで100mLに調製した。この溶液を2〜10倍に適宜希釈し、0.45μmのメンブランフィルターで濾過し、濾液を抗菌性シートの抽出液として得た。測定モードを選択イオンモニタリングに設定し、モニタリングイオンとしてm/z=276(C10のM+)、304(C12のM+)、332(C14のM+)及び360(C16のM+)を設定した。検量線用の溶液のC10、C12、C14、C16のピーク面積の合計値を用いて検量線を作成し、抗菌性シートの抽出液の測定から抽出液中の抗菌剤の濃度(μg/mL)を求め、抗菌性シートの坪量D(g/m
2)に換算した。また、抗菌性シートの静菌活性を大腸菌及び黄色ブドウ球菌について行った。測定は、抗菌性シートの静菌活性は、大腸菌及び黄色ブドウ球菌の各々についてJIS L 1902
2008の菌液吸収法にて測定した。具体的には、抗菌性シートの0.4gの試験片に試験菌液を接種し、試験菌液接種直後の生菌数(M
0)と37℃で18時間培養した後の生菌数(M
c)を測定した。綿標準白布についても同様に試験菌液接種直後の生菌数(M
a)と培養後の生菌数(M
b)を測定し、以下の式より静菌活性値Sを求めた。なお式中、「log」は常用対数である。
S=(log
10M
b−log
10M
a)−(log
10M
c−log
10M
0)
更に、抗菌性シートで吸収性コアを被覆して吸収体を製造し、その吸収体に尿を注入し、36℃で24時間放置した後の尿臭の強さを評価した。吸収性コアは、フラッフパルプの坪量が150g/m
2であり、高吸収性ポリマーの坪量が160g/m
2である混合積繊体からなり、質量が4.1gのものであった。抗菌性シートは70cm×190cmの大きさのものを、水系塗布液の噴霧面が外方を向くように吸収性コアの全域を被覆した。評価基準は、尿臭が強い場合を「5」とし、尿臭がやや強い場合を「4」とし、尿臭が弱い場合を「3」とし、尿臭がわかる場合を「2」とし、尿臭がわからない場合を僅かな「1」とし、臭いがない場合を「0」とした。結果を表1に示す。なお、尿臭の基準として、水系塗布液を噴霧せず、抗菌剤を実質的に含まない繊維シートも製造し、前記抗菌シートに替わり吸収性コアの全域を被覆したものを作成し、その吸収体の尿臭の強さを評価すると、「5」であった。
【0057】
〔実施例2ないし5及び比較例1〕
水系塗布液として、表1に示すものを用いた。これ以外は実施例1と同様にして抗菌性シートを得た。得られた抗菌性シートについて、実施例1と同様の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0058】
〔比較例2〕
本比較例は、内添によって抗菌剤を繊維シートに付与した例である。実施例1において調製した繊維シートを製造するための紙料に、該紙料中のパルプの質量に対して2.4%の抗菌剤を添加して湿式抄造を行い、抗菌性シートを得た。得られた抗菌性シートについて、実施例1と同様の評価を行った。更に湿式抄造時における抄紙白水の発泡の有無を目視評価した。発泡が観察されなかった場合を「○」とし、発泡が僅かに観察された場合を「△」とし、発泡が甚だしく観察された場合を「×」とした。その結果を表1に示す。
【0059】
【表1】
【0060】
表1に示す結果から明らかなとおり、各実施例においては、抗菌性シートの製造過程で、噴霧ノズルやストレーナの目詰まりが観察されず、しかも高い歩留まりで抗菌性シートが得られることが判る。また、得られた抗菌性シートの抗菌性能が高いことが判る。これに対して比較例では、未溶解の抗菌剤からなる水系塗布液中に粗大物が多量に生じ、それが原因で噴霧ノズルやストレーナの目詰まりが観察された。また、それが原因で歩留まりが低く、しかも得られた抗菌性シートの抗菌性能が低いものとなってしまった。内添法を用いた比較例2では、湿式抄造時に抄紙白水の発泡が生じ、抄紙トラブルが発生してしまった。また、歩留まりが極めて低くなってしまい、工業的な製造に見合わないことが判る。