特許第6231863号(P6231863)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231863
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】エアサスペンションシステム
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/052 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
   B60G17/052
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-248207(P2013-248207)
(22)【出願日】2013年11月29日
(65)【公開番号】特開2015-105020(P2015-105020A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2016年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立オートモティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】特許業務法人広和特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100079441
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 和彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勉
(72)【発明者】
【氏名】森 俊介
(72)【発明者】
【氏名】李 友行
(72)【発明者】
【氏名】岩村 力
【審査官】 倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−254295(JP,A)
【文献】 特開2004−034985(JP,A)
【文献】 特開平10−119531(JP,A)
【文献】 実開平01−158306(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00 − 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と車軸との間に介装され空気の給排に応じて車高調整を行うエアサスペンションと、
空気を圧縮するコンプレッサと、
該コンプレッサにより圧縮された空気を蓄えるタンクと、
前記コンプレッサと該タンクとの間を接続する補給通路と、
該補給通路の途中に設けられ前記コンプレッサから前記タンクへの空気の流れを許し逆向きの流れを阻止する第1のチェック弁と、
前記タンクと前記エアサスペンションとの間を接続する給排通路と、
該給排通路の途中に設けられ前記エアサスペンションに空気を供給する供給位置と前記エアサスペンション内の空気を排出する排出位置とに切換えられる給排切換弁と、
該給排切換弁と前記エアサスペンションとの間に位置して前記給排通路に設けられ、前記給排通路を開閉し前記エアサスペンションの伸長と縮小を制御するサスペンション制御弁と、
一端側が前記給排切換弁に接続され、他端側が前記コンプレッサの吸込側に接された戻り通路と、
該戻り通路の途中に設けられ前記戻り通路を開閉する戻り通路開閉弁と
を備えたエアサスペンションシステムであって、
大気を吸込む吸気フィルタと接続され、該吸気フィルタと前記コンプレッサの吸込側との間には、前記コンプレッサに向かう空気の流れを許し逆向きの流れを阻止する第2のチェック弁が配置され、
前記戻り通路の前記他端側は、前記コンプレッサの吸込側と前記第2のチェック弁との間に接続し、
前記エアサスペンションにより車高を下げるときには、前記給排切換弁を排出位置に切換え、前記サスペンション制御弁によって前記給排通路を開き、前記戻り通路開閉弁によって前記戻り通路を開くと共に前記コンプレッサが作動することにより、前記エアサスペンション内の空気を前記戻り通路および前記補給通路を通じて前記タンク内に補給する構成とし
前記エアサスペンションにより車高を上げるときには、前記給排切換弁を供給位置に切換えると共に前記サスペンション制御弁によって前記給排通路を開くことにより、前記コンプレッサが停止した状態で前記タンク内の圧縮空気を前記給排通路を通じて前記エアサスペンションに供給する構成としてなるエアサスペンションシステム。
【請求項2】
記戻り通路内の圧力が大気圧よりも低いときには、前記コンプレッサは前記吸気フィルタを介して吸込んだ外気を圧縮し前記補給通路を通じて前記タンクに補給する構成としてなる請求項1に記載のエアサスペンションシステム。
【請求項3】
前記コンプレッサと前記第1のチェック弁との間に位置して前記補給通路の途中に配置され前記コンプレッサからの圧縮空気を乾燥させるエアドライヤと、
一端側が前記給排切換弁と前記戻り通路開閉弁との間で前記戻り通路に接続されると共に他端側が前記エアドライヤと前記第1のチェック弁との間で前記補給通路に接続されたバイパス通路と、
該バイパス通路の途中に配置され前記戻り通路から前記補給通路に向かう空気の流れを許し逆向きの流れを阻止する第3のチェック弁と、
一端側が前記コンプレッサの吐出側と前記エアドライヤとの間で前記補給通路に接続されると共に他端側が大気に開放された排気通路と、
該排気通路の途中に配置され前記排気通路を開閉する排気通路開閉弁とを設ける構成としてなる請求項1または2に記載のエアサスペンションシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば4輪自動車等の車両に搭載され、コンプレッサによって圧縮された空気をエアサスペンションに給排することにより車高調整を行うエアサスペンションシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、4輪自動車等の車両には、車高調整を行うためのエアサスペンションシステムが搭載されている。このエアサスペンションシステムは、空気の給排に応じて車高調整を行うエアサスペンションと、エアサスペンションに供給される空気を圧縮するコンプレッサと、コンプレッサにより圧縮された空気を蓄える高圧タンクとを備えている。そして、高圧タンクに蓄えられた圧縮空気をエアサスペンションに供給することにより、車高を上昇させる構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、この従来技術では、車高を下げるときには、エアサスペンションから空気を排出し、この排出された空気を低圧タンクに蓄える。そして、コンプレッサは、低圧タンク内に蓄えられた大気圧以上の圧力を有する空気を圧縮し、この圧縮空気を高圧タンク内に蓄える。これにより、コンプレッサの吸込側と吐出側との圧力差を抑え、コンプレッサによって空気を圧縮するときの圧力を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−46027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来技術によるエアサスペンションシステムは、車高を上げるときにエアサスペンションに供給される圧縮空気を蓄える高圧タンクと、車高を下げるときにエアサスペンションから排出される空気を蓄える低圧タンクとの2つのタンクを含んで構成されている。
【0006】
このため、車両にエアサスペンションシステムを搭載する場合に、2つのタンクを設置するためのスペースが大きくなるという問題がある。また、エアサスペンションシステムを構成するための部品点数が増大し、製造コストが増大してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、タンクの個数を減らすことにより、設置スペースの縮小、製造コストの低減を図ることができるようにしたエアサスペンションシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、発明、車体と車軸との間に介装され空気の給排に応じて車高調整を行うエアサスペンションと、空気を圧縮するコンプレッサと、該コンプレッサにより圧縮された空気を蓄えるタンクと、前記コンプレッサと該タンクとの間を接続する補給通路と、該補給通路の途中に設けられ前記コンプレッサから前記タンクへの空気の流れを許し逆向きの流れを阻止する第1のチェック弁と、前記タンクと前記エアサスペンションとの間を接続する給排通路と、該給排通路の途中に設けられ前記エアサスペンションに空気を供給する供給位置と前記エアサスペンション内の空気を排出する排出位置とに切換えられる給排切換弁と、該給排切換弁と前記エアサスペンションとの間に位置して前記給排通路の途中に設けられ、前記給排通路を開閉し前記エアサスペンションの伸長と縮小を制御するサスペンション制御弁と、一端側が前記給排切換弁に接続され、他端側が前記コンプレッサの吸込側に接された戻り通路と、該戻り通路の途中に設けられ前記戻り通路を開閉する戻り通路開閉弁と、を備えたエアサスペンションシステムであって、大気を吸込む吸気フィルタと接続され、該吸気フィルタと前記コンプレッサの吸込側との間には、前記コンプレッサに向かう空気の流れを許し逆向きの流れを阻止する第2のチェック弁が配置され、前記戻り通路の前記他端側は、前記コンプレッサの吸込側と前記第2のチェック弁との間に接続し、前記エアサスペンションにより車高を下げるときには、前記給排切換弁を排出位置に切換え、前記サスペンション制御弁によって前記給排通路を開き、前記戻り通路開閉弁によって前記戻り通路を開くと共に前記コンプレッサが作動することにより、前記エアサスペンション内の空気を前記戻り通路および前記補給通路を通じて前記タンク内に補給する構成とし、前記エアサスペンションにより車高を上げるときには、前記給排切換弁を供給位置に切換えると共に前記サスペンション制御弁によって前記給排通路を開くことにより、前記コンプレッサが停止した状態で前記タンク内の圧縮空気を前記給排通路を通じて前記エアサスペンションに供給する構成としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、1個のタンクを用いてエアサスペンションシステムを構成することができ、設置スペースの縮小、製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態によるエアサスペンションシステムを示す回路構成図である。
図2】エアサスペンションにより車高を上げる状態を示す回路構成図である。
図3】エアサスペンションにより車高を下げる状態を示す回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態によるエアサスペンションシステムについて、図1ないし図3を参照しつつ詳細に説明する。
【0012】
図中、1,2は車両に搭載されたエアサスペンションを示し、この各エアサスペンション1,2は、車軸と車体(いずれも図示せず)との間に設けられ、空気の給排に応じて車高調整を行うものである。なお、4輪自動車の場合には、通常、前輪側の2個と後輪側の2個とで合計4個のエアサスペンションが配設されるが、本実施の形態では、説明を簡略化するために2個のエアサスペンション1,2のみを図示している。
【0013】
ここで、エアサスペンション1は、シリンダ1Aとピストンロッド1Bとの間にエア室1Cが形成され、該エア室1Cは、後述の分岐給排通路9Aに接続されている。一方、エアサスペンション2も、シリンダ2Aとピストンロッド2Bとの間にエア室2Cが形成され、該エア室2Cは、後述の分岐給排通路9Bに接続されている。
【0014】
コンプレッサ3はエアサスペンション1,2に供給される空気を圧縮するものである。ここで、コンプレッサ3は、コンプレッサ本体3Aと、該コンプレッサ本体3Aを駆動する電動モータ3Bとにより構成されている。コンプレッサ3の吸込ポート3C側には、コンプレッサ本体3Aに吸込まれる外気中の粉塵等を除去する吸気フィルタ4が設けられている。一方、コンプレッサ3の吐出ポート3Dには、後述の補給通路6が接続されている。
【0015】
タンク5はコンプレッサ3により圧縮された空気を蓄えるものである。コンプレッサ3の吐出ポート3Dとタンク5とは補給通路6を介して接続され、コンプレッサ3から吐出した圧縮空気は、補給通路6を通じてタンク5内に蓄えられる。そして、タンク5内に蓄えられた圧縮空気は、後述の給排通路9を通じてエアサスペンション1,2のエア室1C,2Cに供給される。
【0016】
エアドライヤ7は補給通路6の途中に設けられている。このエアドライヤ7は、例えば内部にシリカゲル等の乾燥剤(図示せず)が充填され、コンプレッサ3から吐出した圧縮空気に含まれる水分を乾燥剤に吸着させることにより、乾燥した圧縮空気を生成する。従って、タンク5内には、エアドライヤ7を通過することにより乾燥した圧縮空気が蓄えられ、エアサスペンション1,2のエア室1C,2Cにも、乾燥した圧縮空気が供給される。
【0017】
第1のチェック弁(逆止弁)8はタンク5とエアドライヤ7との間に位置して補給通路6の途中に設けられている。この第1のチェック弁8は、コンプレッサ3からタンク5へと向かう空気(圧縮空気)の流れを許し、逆向きの流れを阻止している。
【0018】
給排通路9はタンク5とエアサスペンション1,2のエア室1C,2Cとの間を接続するものである。給排通路9は、タンク5からエアサスペンション1,2に供給される圧縮空気が流通すると共に、エアサスペンション1,2から排出される空気が流通するものである。ここで、給排通路9は、後述する給排切換弁10とエアサスペンション1,2との間で2つの分岐給排通路9A,9Bに分岐し、一方の分岐給排通路9Aは、エアサスペンション1のエア室1Cに接続され、他方の分岐給排通路9Bは、エアサスペンション2のエア室2Cに接続されている。
【0019】
給排切換弁10は給排通路9の途中に設けられ、該給排切換弁10は、3ポート2位置の電磁弁により構成されている。ここで、給排切換弁10は、エアサスペンション1,2に空気(圧縮空気)を供給する供給位置(a)と、エアサスペンション1,2内の空気を排出する排出位置(b)とに選択的に切換えられる。そして、給排切換弁10は、例えばソレノイド10Aが励磁されていないときには、ばね10Bによって排出位置(b)を保持し、ソレノイド10Aが励磁されたときには、ばね10Bに抗して供給位置(a)に切換えられる。
【0020】
サスペンション制御弁11はエアサスペンション1と給排切換弁10との間に位置して分岐給排通路9Aの途中に設けられ、該サスペンション制御弁11は、2ポート2位置の電磁弁により構成されている。このサスペンション制御弁11は、分岐給排通路9Aを開いてエアサスペンション1のエア室1Cに対する空気の給排を許す開位置(a)と、分岐給排通路9Aを閉じてエアサスペンション1のエア室1Cに対する空気の給排を遮断する閉位置(b)とに選択的に切換えられ、エアサスペンション1の伸長と縮小とを制御するものである。ここで、サスペンション制御弁11は、例えばソレノイド11Aが励磁されていないときには、ばね11Bによって分岐給排通路9Bを閉じる閉位置(b)を保持し、ソレノイド11Aが励磁されたときには、ばね11Bに抗して分岐給排通路9Aを開く開位置(a)に切換えられる。
【0021】
サスペンション制御弁12はエアサスペンション2と給排切換弁10との間に位置して分岐給排通路9Bの途中に設けられている。このサスペンション制御弁12は、サスペンション制御弁11と同様に2ポート2位置の電磁弁により構成され、分岐給排通路9Bを開く開位置(a)と分岐給排通路9Bを閉じる閉位置(b)とに選択的に切換えられることにより、エアサスペンション2の伸長と縮小とを制御するものである。ここで、サスペンション制御弁12は、例えばソレノイド12Aが励磁されていないときには、ばね12Bによって分岐給排通路9Bを閉じる閉位置(b)を保持し、ソレノイド12Aが励磁されたときには、ばね12Bに抗して分岐給排通路9Bを開く開位置(a)に切換えられる。
【0022】
戻り通路13は給排切換弁10とコンプレッサ3の吐出ポート3Dとの間を接続するものである。この戻り通路13は、給排切換弁10が排出位置(b)を保持すると共にサスペンション制御弁11,12が開位置(a)に切換ったときに、エアサスペンション1,2のエア室1C,2Cから排出された空気を、コンプレッサ3の吸込側(吸込ポート3C側)に戻すものである。
【0023】
戻り通路開閉弁14は戻り通路13の途中に設けられ、該戻り通路開閉弁14は、2ポート2位置の電磁弁により構成され、戻り通路13を開,閉するものである。ここで、戻り通路開閉弁14は、戻り通路13を開く開位置(a)と、戻り通路13を閉じる閉位置(b)とを有し、例えばソレノイド14Aが励磁されていないときには、ばね14Bによって閉位置(b)を保持し、ソレノイド14Aが励磁されたときには、ばね14Bに抗して開位置(a)に切換えられる。
【0024】
第2のチェック弁15はコンプレッサ3の吸気側に設けられている。この第2のチェック弁15は、コンプレッサ3の吸込ポート3Cと吸気フィルタ4との間に配置されている。この第2のチェック弁15は、吸気フィルタ4からコンプレッサ3に向かう空気の流れを許し、逆向きの流れを阻止するものである。
【0025】
バイパス通路16は補給通路6と戻り通路13との間に設けられている。ここで、バイパス通路16の一端側は、給排切換弁10と戻り通路開閉弁14との間に位置する接続部位16Aで戻り通路13の途中に接続され、バイパス通路16の他端側は、エアドライヤ7と第1のチェック弁8との間に位置する接続部位16Bで補給通路6の途中に接続されている。そして、バイパス通路16は、エアサスペンション1,2のエア室1C,2C内の空気を、コンプレッサ3をバイパスさせて大気中に放出するためのものである。
【0026】
第3のチェック弁17はバイパス通路16の途中に設けられ、該第3のチェック弁17は、戻り通路13から補給通路6に向かう空気の流れを許し、逆向きの流れを阻止するものである。
【0027】
排気通路18はエアサスペンション1,2のエア室1C,2C内の空気を大気中に放出するものである。ここで、排気通路18の一端側は、コンプレッサ3の吐出ポート3Dとエアドライヤ7との間に位置する接続部位18Aで補給通路6に接続されている。また、排気通路18の他端側は、吸気フィルタ4を介して大気に開放されている。そして、排気通路18は、エアサスペンション1,2から排出された空気を、タンク5に導入することなく大気中に放出させるものである。
【0028】
排気通路開閉弁19は排気通路18の途中に設けられ、該排気通路開閉弁19は、2ポート2位置の電磁弁により構成され、排気通路18を開,閉する。ここで、排気通路開閉弁19は、排気通路18を開く開位置(a)と、排気通路18を閉じる閉位置(b)とを有し、例えばソレノイド19Aが励磁されていないときには、ばね19Bによって閉位置(b)を保持し、ソレノイド19Aが励磁されたときには、ばね19Bに抗して開位置(a)に切換えられる。
【0029】
本実施の形態によるエアサスペンションシステムは上述の如き構成を有するもので、以下、その作動について説明する。
【0030】
まず、タンク5内に圧縮空気が充分に蓄えられていない場合には、図1に示すように、給排切換弁10を排出位置(b)に保持し、サスペンション制御弁11,12、戻り通路開閉弁14、および排気通路開閉弁19をそれぞれ閉位置(b)に保持した状態で、コンプレッサ3を作動させる。
【0031】
これにより、コンプレッサ3は、吸気フィルタ4を通じて外気を吸込み、この外気を圧縮して補給通路6に吐出する。この圧縮空気は、エアドライヤ7によって乾燥された後、タンク5内に蓄えられる。そして、例えばタンク5内の圧力が一定の圧力に達するとコンプレッサ3が停止し、タンク5内に充分な圧縮空気を充填することができる。
【0032】
次に、車高を上げる場合には、コンプレッサ3が停止した状態で、図2に示すように、戻り通路開閉弁14を閉位置(b)に保持すると共に、排気通路開閉弁19を閉位置(b)に保持する。この状態で、給排切換弁10のソレノイド10Aを励磁することにより、給排切換弁10を供給位置(a)に切換えると共に、サスペンション制御弁11,12のソレノイド11A,12Aを励磁することにより、サスペンション制御弁11,12を開位置(a)に切換える。
【0033】
これにより、タンク5内の圧縮空気が給排通路9に導出され、この圧縮空気は、分岐給排通路9Aを通じてエアサスペンション1のエア室1C内に供給されると共に、分岐給排通路9Bを通じてエアサスペンション2のエア室2C内に供給される。このように、タンク5内に蓄えられた圧縮空気をエア室1C,2C内に供給してエアサスペンション1,2を迅速に伸長させることができるので、例えばコンプレッサ3によって生成した圧縮空気を直接的にエアサスペンション1,2のエア室1C,2C内に供給する場合に比較して、車高を素早く上昇させることができる。
【0034】
車高の上げ動作が完了した後には、図1に示すように、給排切換弁10のソレノイド10Aに対する通電を停止して給排切換弁10を排出位置(b)に切換えると共に、サスペンション制御弁11,12のソレノイド11A,12Aに対する通電を停止してサスペンション制御弁11,12を閉位置(b)に切換える。これにより、分岐給排通路9A,9Bが閉じ、エアサスペンション1,2のエア室1C,2Cが封止されるので、エアサスペンション1,2は伸長状態を保ち、車高を上げた状態に保つことができる。
【0035】
一方、車高を下げる場合には、図3に示すように、給排切換弁10を排出位置(b)に保持すると共に、排気通路開閉弁19を閉位置(b)に保持する。この状態で、戻り通路開閉弁14のソレノイド14Aを励磁することにより、戻り通路開閉弁14を開位置(a)に切換えると共に、サスペンション制御弁11,12のソレノイド11A,12Aを励磁することにより、サスペンション制御弁11,12を開位置(a)に切換える。また、コンプレッサ3を作動させる。
【0036】
これにより、エアサスペンション1のエア室1C内の空気は、分岐給排通路9Aから戻り通路13に導出され、エアサスペンション2のエア室2C内の空気は、分岐給排通路9Bから戻り通路13に導出される。そして、戻り通路13に導出された空気は、大気中に放出されることなく、コンプレッサ3の吸込ポート3Cに導かれ、コンプレッサ3によって圧縮された後、補給通路6、エアドライヤ7を通じてタンク5内に補給される。この結果、エアサスペンション1,2のエア室1C,2Cから空気が排出され、エアサスペンション1,2が縮小状態に移行することにより、車高を下げることができる。
【0037】
このように、本実施の形態によるエアサスペンションシステムは、エアサスペンション1,2のエア室1C,2Cから排出された空気を、大気中に放出することなくコンプレッサ3で圧縮してタンク5に蓄え、このタンク5に蓄えられた圧縮空気をエアサスペンション1,2に供給する閉回路を構成している。
【0038】
車高の下げ動作が完了した後には、図1に示すように、サスペンション制御弁11,12のソレノイド11A,12Aに対する通電を停止し、サスペンション制御弁11,12を閉位置(b)に切換える。これにより、分岐給排通路9A,9Bが閉じ、エアサスペンション1,2のエア室1C,2Cが封止されるので、エアサスペンション1,2が縮小状態を保持することにより、車高を下げた状態に保つことができる。
【0039】
このように、車高を下げるときにエアサスペンション1,2から排出された空気は、戻り通路13を通ってコンプレッサ3の吸込ポート3Cに導かれた後、コンプレッサ3により圧縮されてタンク5に蓄えられるので、エアサスペンション1,2にから排出された空気を蓄えるためのタンク(低圧タンク)を不要とすることができる。
【0040】
従って、本実施の形態によるエアサスペンションシステムは、1個のタンク5を用いて構成することができ、システム全体の部品点数を削減することができる。この結果、エアサスペンションシステム全体を小型化、軽量化することができ、車両に搭載したときの設置スペースを縮小することができる。また、車両への組付性を向上させることができる上に、製造コストの低減にも寄与することができる。
【0041】
しかも、エアサスペンション1,2のエア室1C,2C内は、通常、大気圧以上の圧力を有しているので、エアサスペンション1,2から排出された空気をコンプレッサ3の吸込ポート3Cに導くことにより、コンプレッサ3の吸込ポート3C側と吐出ポート3D側との圧力差を抑え、コンプレッサ3によって空気を圧縮するときの圧力を低減することができる。
【0042】
一方、エアサスペンション1,2のエア室1C,2C内の圧力が大気圧よりも低い場合には、吸気フィルタ4を通じて外気がコンプレッサ3に吸込まれる。これにより、コンプレッサ3は外気を圧縮して補給通路6に吐出し、補給通路6に吐出された圧縮空気は、エアドライヤ7によって乾燥された後、タンク5内に蓄えられる。
【0043】
次に、例えば車両の旋回走行時の姿勢を安定させるために、車高を急速に下げる場合には、給排切換弁10を排出位置(b)に保持すると共に、戻り通路開閉弁14を閉位置(b)に保持する。この状態で、排気通路開閉弁19のソレノイド19Aを励磁することにより、排気通路開閉弁19を開位置(a)に切換えると共に、サスペンション制御弁11,12のソレノイド11A,12Aを励磁することにより、サスペンション制御弁11,12を開位置(a)に切換える。このとき、コンプレッサ3は停止している。
【0044】
これにより、エアサスペンション1のエア室1C内の空気は、分岐給排通路9Aから戻り通路13に導出され、エアサスペンション2のエア室2C内の空気は、分岐給排通路9Bから戻り通路13に導出される。そして、戻り通路13に導出された空気は、バイパス通路16を通りエアドライヤ7を介して排気通路18に導かれ、該排気通路18から大気中に放出される。この結果、エアサスペンション1,2のエア室1C,2Cから空気を急速に排出することができ、車高を急速に下げることができる。
【0045】
一方、車高を急速に下げるときには、エアサスペンション1,2から排出された空気が、バイパス通路16からエアドライヤ7を通過して排気通路18へと流れる。これにより、エアドライヤ7内に充填された乾燥剤から水分を除去することができ、乾燥剤を再生させることができる。
【0046】
かくして、本実施の形態によるエアサスペンションシステムは、エアサスペンション1,2により車高を上げるときには、予めタンク5内に蓄えられた圧縮空気を、給排通路9を通じてエアサスペンション1,2のエア室1C,2Cに供給する構成としている。これにより、例えばコンプレッサ3によって圧縮した空気を直接的にエアサスペンション1,2に供給する場合に比較して、迅速に圧縮空気を供給することができ、車高を素早く上昇させることができる。
【0047】
また、エアサスペンション1,2により車高を下げるときには、エアサスペンション1,2のエア室1C,2C内の空気を、大気中に放出することなく戻り通路13を通じてコンプレッサ3の吸込ポート3Cに導き、コンプレッサ3によって圧縮した後、補給通路6、エアドライヤ7を通じてタンク5内に補給する構成としている。これにより、エアサスペンション1,2から排出された空気を蓄えるタンク(低圧タンク)を不要とすることができる。
【0048】
このため、本実施の形態によるエアサスペンションシステムは、1個のタンク5を用いて構成することができ、システム全体の部品点数を削減することができる。この結果、エアサスペンションシステム全体を小型化、軽量化することができ、車両に搭載したときの設置スペースを縮小することができる。また、車両への組付性を向上させることができる上に、製造コストの低減にも寄与することができる。
【0049】
また、車高を下げるときに、エアサスペンション1,2のエア室1C,2C内の圧力が大気圧よりも低い場合には、コンプレッサ3は、吸気フィルタ4を通じて外気を吸込み、この外気を圧縮してタンク5内に蓄えることができる。従って、タンク5内には常に充分な圧縮空気を蓄えておくことができ、エアサスペンション1,2による車高調整に対応することができる。
【0050】
また、エアサスペンション1,2から空気を排出するときに、戻り通路開閉弁14を閉位置(b)に切換えた場合には、エアサスペンション1,2から戻り通路13に導出された空気を、バイパス通路16からエアドライヤ7を介して排気通路18に導き、該排気通路18から大気中に放出することができる。
【0051】
この結果、エアサスペンション1,2のエア室1C,2Cから空気を急速に排出してエアサスペンション1,2を縮小させることにより、車高を急速に下げることができる。また、エアサスペンション1,2から排出された空気が、バイパス通路16からエアドライヤ7を通過して排気通路18へと流れることにより、エアドライヤ7内に充填された乾燥剤から水分を除去し、乾燥剤を再生させることができる。
【0052】
なお、上述した実施の形態では、給排切換弁10、サスペンション制御弁11,12、戻り通路開閉弁14、排気通路開閉弁19を、それぞれ電磁パイロット式の方向制御弁により構成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば空圧パイロット式、あるいは油圧パイロット式の方向制御弁を用いてもよい。
【0053】
次に、前記実施の形態に含まれる発明について記載する。即ち、本発明によれば、エアサスペンションシステムを、エアサスペンションと、コンプレッサと、タンクと、コンプレッサとタンクとの間を接続する補給通路と、補給通路の途中に設けられた第1のチェック弁と、タンクとエアサスペンションとの間を接続する給排通路と、給排通路の途中に設けられた給排切換弁と、給排切換弁とエアサスペンションとの間に位置して給排通路に設けられたサスペンション制御弁と、給排切換弁とコンプレッサの吸込側との間を接続する戻り通路と、戻り通路の途中に設けられた戻り通路開閉弁とにより構成し、エアサスペンションにより車高を下げるときには、給排切換弁を排出位置に切換え、サスペンション制御弁によって給排通路を開き、戻り通路開閉弁によって戻り通路を開くと共にコンプレッサが作動することにより、エアサスペンション内の空気を大気中に放出することなく戻り通路および補給通路を通じてタンク内に補給する構成とした。これにより、エアサスペンションから排出された空気をコンプレッサに導入し、コンプレッサで圧縮してタンクに蓄えることができる。従って、1個のタンクを用いてエアサスペンションシステムを構成することにより、エアサスペンションシステム全体を小型化、軽量化することができ、車両に搭載したときの設置スペースを縮小することができる。
【0054】
また、本発明によれば、エアサスペンションにより車高を上げるときには、給排切換弁を供給位置に切換えると共にサスペンション制御弁によって給排通路を開くことにより、タンク内の圧縮空気を給排通路を通じて前記エアサスペンションに供給することができる。
【0055】
また、本発明によれば、コンプレッサの吸気側にはコンプレッサに向かう空気の流れを許し逆向きの流れを阻止する第2のチェック弁を設けることにより、戻り通路内の圧力が大気圧よりも低いときには、コンプレッサは吸気フィルタを介して吸込んだ外気を圧縮し補給通路を通じてタンクに補給することができる。
【0056】
さらに、本発明によれば、コンプレッサと第1のチェック弁との間に位置して補給通路の途中にエアドライヤを設け、一端側が給排切換弁と戻り通路開閉弁との間で戻り通路に接続されると共に他端側がエアドライヤと第1のチェック弁との間で補給通路に接続されたバイパス通路を設け、バイパス通路の途中には第3のチェック弁を設け、一端側がコンプレッサの吐出側とエアドライヤとの間で補給通路に接続されると共に他端側が大気に開放された排気通路を設け、排気通路の途中には排気通路開閉弁とを設ける構成とした。これにより、エアサスペンション内の空気を大気中に排出することにより、車高を急速に下げることができる。また、エアサスペンションから排出された空気が、バイパス通路からエアドライヤを通過して排気通路へと流れることにより、エアドライヤ内に充填された乾燥剤から水分を除去し、乾燥剤を再生させることができる。
【符号の説明】
【0057】
1,2 エアサスペンション
3 コンプレッサ
4 吸気フィルタ
5 タンク
6 補給通路
8 第1のチェック弁
9 給排通路
10 給排切換弁
11,12 サスペンション制御弁
13 戻り通路
14 戻り通路開閉弁
15 第2のチェック弁
16 バイパス通路
17 第3のチェック弁
18 排気通路
19 排気通路開閉弁
図1
図2
図3