(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231871
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】排気浄化装置
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
F01N3/08 B
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-263594(P2013-263594)
(22)【出願日】2013年12月20日
(65)【公開番号】特開2015-117681(P2015-117681A)
(43)【公開日】2015年6月25日
【審査請求日】2016年10月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】國島 旭
【審査官】
菅家 裕輔
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−116916(JP,A)
【文献】
特表2008−514860(JP,A)
【文献】
特開2003−083041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/08
B01D 53/86
B01D 53/90
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に噴射される還元剤が内部に供給されるハウジングと、
前記ハウジングの内部に摺動可能に設けられ、閉弁時に前記ハウジングの噴射孔を塞ぐとともに、開弁時に前記ハウジングの前記噴射孔から離間して前記噴射孔から還元剤を外部に噴射させるアマーチャと、
開弁時に前記アマーチャが近接又は接触するストッパーと、
前記アマーチャと前記ハウジング又は前記ストッパーとが近接する部位に設けられた還元剤の通路と、
を備え、
前記還元剤が、前記ストッパーから前記アマーチャの方向に供給される還元剤噴射弁において、
前記アマーチャは中空形状を成し、前記通路は、前記ハウジングの内面と摺動する前記アマーチャの外面と前記アマーチャの中空部分を接続する孔によって構成されることを特徴とする、還元剤噴射弁。
【請求項2】
内燃機関の排気通路に噴射される還元剤が内部に供給されるハウジングと、
前記ハウジングの内部に摺動可能に設けられ、閉弁時に前記ハウジングの噴射孔を塞ぐとともに、開弁時に前記ハウジングの前記噴射孔から離間して前記噴射孔から還元剤を外部に噴射させるアマーチャと、
開弁時に前記アマーチャが近接又は接触するストッパーと、
前記アマーチャと前記ハウジング又は前記ストッパーとが近接する部位に設けられた還元剤の通路と、
を備え、
前記還元剤が、前記ストッパーから前記アマーチャの方向に供給される還元剤噴射弁において、
前記通路は、前記ハウジングの内面と摺動する前記アマーチャの外周面に設けられた前記外周面の周方向の複数の溝と前記アマーチャの軸方向の複数の溝から構成されることを特徴とする、還元剤噴射弁。
【請求項3】
内燃機関の排気通路に噴射される還元剤が内部に供給されるハウジングと、
前記ハウジングの内部に摺動可能に設けられ、閉弁時に前記ハウジングの噴射孔を塞ぐとともに、開弁時に前記ハウジングの前記噴射孔から離間して前記噴射孔から還元剤を外部に噴射させるアマーチャと、
開弁時に前記アマーチャが近接又は接触するストッパーと、
前記アマーチャと前記ハウジング又は前記ストッパーとが近接する部位に設けられた還元剤の通路と、
を備え、
前記還元剤が、前記ストッパーから前記アマーチャの方向に供給される還元剤噴射弁において
前記通路は、前記アマーチャの前記ストッパーと近接又は接触する端面に設けられた溝から構成されることを特徴とする、還元剤噴射弁。
【請求項4】
内燃機関の排気通路に噴射される還元剤が内部に供給されるハウジングと、
前記ハウジングの内部に摺動可能に設けられ、閉弁時に前記ハウジングの噴射孔を塞ぐとともに、開弁時に前記ハウジングの前記噴射孔から離間して前記噴射孔から還元剤を外部に噴射させるアマーチャと、
開弁時に前記アマーチャが近接又は接触するストッパーと、
前記アマーチャと前記ハウジング又は前記ストッパーとが近接する部位に設けられた還元剤の通路と、
を備え、
前記還元剤が、前記ストッパーから前記アマーチャの方向に供給される還元剤噴射弁において
前記通路は、前記ストッパーの前記アマーチャと近接又は接触する端面に設けられた溝から構成されることを特徴とする、還元剤噴射弁。
【請求項5】
内燃機関の排気通路に噴射される還元剤が内部に供給されるハウジングと、
前記ハウジングの内部に摺動可能に設けられ、閉弁時に前記ハウジングの噴射孔を塞ぐとともに、開弁時に前記ハウジングの前記噴射孔から離間して前記噴射孔から還元剤を外部に噴射させるアマーチャと、
開弁時に前記アマーチャが近接又は接触するストッパーと、
前記アマーチャと前記ハウジング又は前記ストッパーとが近接する部位に設けられた還元剤の通路と、
を備え、
前記還元剤が、前記ストッパーから前記アマーチャの方向に供給される還元剤噴射弁において
前記通路は、前記アマーチャと摺動する前記ハウジングの内面に設けられた溝から構成されることを特徴とする、還元剤噴射弁。
【請求項6】
内燃機関の排気通路に還元剤を噴射する還元剤噴射弁と、
前記還元剤噴射弁に供給される還元剤が貯蔵される貯蔵タンクと、
第1の状態では前記貯蔵タンクから前記還元剤噴射弁に還元剤を供給し、第2の状態では前記還元剤噴射弁から前記貯蔵タンクへ還元剤を吸い戻すポンプと、を備え、
前記還元剤噴射弁は、
還元剤が内部に供給されるハウジングと、
前記ハウジングの内部に摺動可能に設けられ、閉弁時に前記ハウジングの噴射孔を塞ぐとともに、開弁時に前記ハウジングの前記噴射孔から離間して前記噴射孔から還元剤を外部に噴射させるアマーチャと、
開弁時に前記アマーチャが近接又は接触するストッパーと、
前記アマーチャと前記ハウジング又は前記ストッパーとが近接する部位に設けられた還元剤の通路と、
を備え、
前記第1の状態では前記還元剤噴射弁内において、前記ストッパーから前記アマーチャの方向に前記還元剤が供給され、
前記アマーチャは中空形状を成し、前記通路は、前記ハウジングの内面と摺動する前記アマーチャの外面と前記アマーチャの中空部分を接続する孔によって構成されることを特徴とする、排気浄化システム。
【請求項7】
内燃機関の排気通路に還元剤を噴射する還元剤噴射弁と、
前記還元剤噴射弁に供給される還元剤が貯蔵される貯蔵タンクと、
第1の状態では前記貯蔵タンクから前記還元剤噴射弁に還元剤を供給し、第2の状態では前記還元剤噴射弁から前記貯蔵タンクへ還元剤を吸い戻すポンプと、を備え、
前記還元剤噴射弁は、
還元剤が内部に供給されるハウジングと、
前記ハウジングの内部に摺動可能に設けられ、閉弁時に前記ハウジングの噴射孔を塞ぐとともに、開弁時に前記ハウジングの前記噴射孔から離間して前記噴射孔から還元剤を外部に噴射させるアマーチャと、
開弁時に前記アマーチャが近接又は接触するストッパーと、
前記アマーチャと前記ハウジング又は前記ストッパーとが近接する部位に設けられた還元剤の通路と、
を備え、
前記第1の状態では前記還元剤噴射弁内において、前記ストッパーから前記アマーチャの方向に前記還元剤が供給され、
前記通路は、前記ハウジングの内面と摺動する前記アマーチャの外周面に設けられた前記外周面の周方向の複数の溝と前記アマーチャの軸方向の複数の溝から構成されることを特徴とする、排気浄化システム。
【請求項8】
内燃機関の排気通路に還元剤を噴射する還元剤噴射弁と、
前記還元剤噴射弁に供給される還元剤が貯蔵される貯蔵タンクと、
第1の状態では前記貯蔵タンクから前記還元剤噴射弁に還元剤を供給し、第2の状態では前記還元剤噴射弁から前記貯蔵タンクへ還元剤を吸い戻すポンプと、を備え、
前記還元剤噴射弁は、
還元剤が内部に供給されるハウジングと、
前記ハウジングの内部に摺動可能に設けられ、閉弁時に前記ハウジングの噴射孔を塞ぐとともに、開弁時に前記ハウジングの前記噴射孔から離間して前記噴射孔から還元剤を外部に噴射させるアマーチャと、
開弁時に前記アマーチャが近接又は接触するストッパーと、
前記アマーチャと前記ハウジング又は前記ストッパーとが近接する部位に設けられた還元剤の通路と、
を備え、
前記第1の状態では前記還元剤噴射弁内において、前記ストッパーから前記アマーチャの方向に前記還元剤が供給され、
前記通路は、前記アマーチャの前記ストッパーと近接又は接触する端面に設けられた溝から構成されることを特徴とする、排気浄化システム。
【請求項9】
内燃機関の排気通路に還元剤を噴射する還元剤噴射弁と、
前記還元剤噴射弁に供給される還元剤が貯蔵される貯蔵タンクと、
第1の状態では前記貯蔵タンクから前記還元剤噴射弁に還元剤を供給し、第2の状態では前記還元剤噴射弁から前記貯蔵タンクへ還元剤を吸い戻すポンプと、を備え、
前記還元剤噴射弁は、
還元剤が内部に供給されるハウジングと、
前記ハウジングの内部に摺動可能に設けられ、閉弁時に前記ハウジングの噴射孔を塞ぐとともに、開弁時に前記ハウジングの前記噴射孔から離間して前記噴射孔から還元剤を外部に噴射させるアマーチャと、
開弁時に前記アマーチャが近接又は接触するストッパーと、
前記アマーチャと前記ハウジング又は前記ストッパーとが近接する部位に設けられた還元剤の通路と、
を備え、
前記第1の状態では前記還元剤噴射弁内において、前記ストッパーから前記アマーチャの方向に前記還元剤が供給され、
前記通路は、前記ストッパーの前記アマーチャと近接又は接触する端面に設けられた溝から構成されることを特徴とする、排気浄化システム。
【請求項10】
内燃機関の排気通路に還元剤を噴射する還元剤噴射弁と、
前記還元剤噴射弁に供給される還元剤が貯蔵される貯蔵タンクと、
第1の状態では前記貯蔵タンクから前記還元剤噴射弁に還元剤を供給し、第2の状態では前記還元剤噴射弁から前記貯蔵タンクへ還元剤を吸い戻すポンプと、を備え、
前記還元剤噴射弁は、
還元剤が内部に供給されるハウジングと、
前記ハウジングの内部に摺動可能に設けられ、閉弁時に前記ハウジングの噴射孔を塞ぐとともに、開弁時に前記ハウジングの前記噴射孔から離間して前記噴射孔から還元剤を外部に噴射させるアマーチャと、
開弁時に前記アマーチャが近接又は接触するストッパーと、
前記アマーチャと前記ハウジング又は前記ストッパーとが近接する部位に設けられた還元剤の通路と、
を備え、
前記第1の状態では前記還元剤噴射弁内において、前記ストッパーから前記アマーチャの方向に前記還元剤が供給され、
前記通路は、前記アマーチャと摺動する前記ハウジングの内面に設けられた溝から構成されることを特徴とする、排気浄化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元剤噴射弁及び排気浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両等に搭載された内燃機関から排出される排気ガスには窒素酸化物(NOx)が含まれる場合がある。このNOxを浄化する排気浄化装置の一つとして、内燃機関の排気通路に備えられた還元触媒の上流側で還元剤を噴射し、還元剤とNOxとの還元反応を触媒によって促進させ、NOxを窒素や水、二酸化炭素等に分解して大気中に放出するように構成されたものがある。
【0003】
このような排気浄化装置として、尿素水溶液やアンモニア水を還元剤として用いる尿素SCR(Selective Catalyst Reduction)システムがある。尿素SCRシステムでは、アンモニアの吸着機能を有するNOx選択還元触媒が用いられ、還元剤が加水分解することによって生成されるアンモニアが還元触媒に吸着され、そこに流入する排気ガス中のNOxがアンモニアと反応することで浄化される。
【0004】
例えば、下記の特許文献1には、内燃機関の排気通路に還元剤を噴射するための添加弁の構成が記載されている(
図2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−255608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
SCRシステムにおいては、還元剤噴射弁から排気通路に還元剤が噴射される。還元剤として用いられる尿素水溶液は融点が比較的高く、氷点下で凍結するため、エンジン停止時等においては、還元剤を貯蔵するタンクから還元剤噴射弁に至る経路、及び還元剤噴射弁内で還元剤が凍結することが想定される。このため、エンジン停止後に、尿素水溶液を貯蔵タンクへ吸い戻す処理が行われる。
【0007】
上記特許文献1に記載されているような従来の添加弁の構造では、アマーチャ(可動コア43)がハウジング21内にて軸方向へ往復移動可能とされている。そして、添加弁を開弁させる際には、可動コア43が固定コア42に吸引されてニードル26が弁座部25aから離座し、開弁が行われる。この際、可動コア43と固定コア42との間には、通常、微小なエアギャップが設けられる。
【0008】
上記特許文献1に記載された構成では、尿素水の吸い戻しの際に、可動コア43とハウジング1との間の微小な隙間、可動コア43と固定コア42との間の微小な隙間などに尿素水が残留してしまい、尿素水をタンクに完全に吸い戻すことができない。このため、残留した尿素水が氷点下で凍結するという問題が生じる。また、エンジン停止後においても還元剤噴射弁は排気通路の高温の熱に晒される。これらの隙間に残留した尿素水が排気通路の熱によって高温に晒され、その後温度が低下すると、尿素が結晶化することによって弁が固着し、弁動作に不具合が生じることも想定される。
【0009】
更に、可動コア43はハウジング21内で径方向に所定のクリアランスを有して配置されるため、クリアランスの範囲内で可動コア43はハウジング21に対して傾く。この傾きによって、可動コア43とハウジング21との間の隙間がより狭くなり、隙間が狭い領域、若しくは可動コア43とハウジング21が密着する領域では、吸い戻しの際に尿素水の残留が顕著になる。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、簡素な構成で還元剤噴射弁からの還元剤の吸い戻しを確実に行うことが可能な、新規かつ改良された還元剤噴射弁及び排気浄化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、内燃機関の排気通路に噴射される還元剤が内部に供給されるハウジングと、前記ハウジングの内部に摺動可能に設けられ、閉弁時に前記ハウジングの噴射孔を塞ぐとともに、開弁時に前記ハウジングの前記噴射孔から離間して前記噴射孔から還元剤を外部に噴射させるアマーチャと、開弁時に前記アマーチャが近接又は接触するストッパーと、前記アマーチャと前記ハウジング又は前記ストッパーとが近接する部位に設けられた還元剤の通路と、を備える還元剤噴射弁が提供される。
【0012】
前記アマーチャは中空形状を成し、前記通路は、前記ハウジングの内面と摺動する前記アマーチャの外面と前記アマーチャの中空部分を接続する孔によって構成されるものであっても良い。
【0013】
また、前記通路は、前記ハウジングの内面と摺動する前記アマーチャの外面に設けられた溝から構成されるものであっても良い。
【0014】
また、前記通路は、前記アマーチャの前記ストッパーと近接又は接触する端面に設けられた溝から構成されるものであっても良い。
【0015】
また、前記通路は、前記ストッパーの前記アマーチャと近接又は接触する端面に設けられた溝から構成されるものであっても良い。
【0016】
また、前記通路は、前記アマーチャと摺動する前記ハウジングの内面に設けられた溝から構成されるものであっても良い。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、内燃機関の排気通路に還元剤を噴射する還元剤噴射弁と、前記還元剤噴射弁に供給される還元剤が貯蔵される貯蔵タンクと、第1の状態では前記貯蔵タンクから前記還元剤噴射弁に還元剤を供給し、第2の状態では前記還元剤噴射弁から前記貯蔵タンクへ還元剤を吸い戻すポンプと、を備え、前記還元剤噴射弁は、還元剤が内部に供給されるハウジングと、前記ハウジングの内部に摺動可能に設けられ、閉弁時に前記ハウジングの噴射孔を塞ぐとともに、開弁時に前記ハウジングの前記噴射孔から離間して前記噴射孔から還元剤を外部に噴射させるアマーチャと、開弁時に前記アマーチャが近接又は接触するストッパーと、前記アマーチャと前記ハウジング又は前記ストッパーとが近接する部位に設けられた還元剤の通路と、を備える排気浄化システムが提供される。
【0018】
前記アマーチャは中空形状を成し、前記通路は、前記ハウジングの内面と摺動する前記アマーチャの外面と前記アマーチャの中空部分を接続する孔によって構成されるものであっても良い。
【0019】
また、前記通路は、前記ハウジングの内面と摺動する前記アマーチャの外面に設けられた溝から構成されるものであっても良い。
【0020】
また、前記通路は、前記アマーチャの前記ストッパーと近接又は接触する端面に設けられた溝から構成されるものであっても良い。
【0021】
また、前記通路は、前記ストッパーの前記アマーチャと近接又は接触する端面に設けられた溝から構成されるものであっても良い。
【0022】
また、前記通路は、前記アマーチャと摺動する前記ハウジングの内面に設けられた溝から構成されるものであっても良い。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、簡素な構成で還元剤噴射弁からの還元剤の吸い戻しを確実に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置とその周辺の構成の一例を示す模式図である。
【
図3】アマーチャの基本的な構成を説明するための模式図である。
【
図4】還元剤の吸い戻しを行った際に、還元剤が滞留し易い領域を示す模式図である。
【
図5】還元剤の吸い戻しを行った際に、還元剤が滞留し易い領域を示す模式図である。
【
図6】還元剤の吸い戻しを行った際に、還元剤が滞留し易い領域を示す模式図である。
【
図7】アマーチャの外周面と、アマーチャの内部の中空部分とを接続する複数の通路(孔)を設けた例を示す模式図である。
【
図8】アマーチャの外周面に溝状の複数の通路を設けた例を示す模式図である。
【
図9】アマーチャの端面に溝状の通路を設けた例を示す模式図である。
【
図10】ストッパーの端面に溝状の通路を設けた例を示す模式図である。
【
図11】ハウジングの内面に溝状の通路を設けた例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0026】
1.排気浄化装置
(1)全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係る内燃機関の排気浄化装置10とその周辺の構成の一例を示している。この排気浄化装置10は、内燃機関5の排気通路11に接続されており、還元触媒20と、還元剤噴射装置30と、制御装置60等を備えており、内燃機関5から排出される排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を、還元剤としての尿素水溶液を用いて浄化する尿素SCRシステムとして構成されている。ただし、本実施形態において使用できる還元剤は尿素水溶液に限られるものではなく、例えばアンモニア水等、アンモニアが生成されるものであればよい。
【0027】
内燃機関5は、ECU(Engine Control Unit)50によって制御される。制御装置60は、内燃機関5の制御に関する制御データ等をCAN(Control Area Network)バスシステムを介してECU50から受信する。
【0028】
排気通路11において、内燃機関5と還元触媒20との間には酸化触媒12(DOC)が配置されている。酸化触媒12は、排気ガス中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)を酸化する機能を有する。酸化触媒12は公知の触媒が適宜用いられる。
【0029】
本実施形態の排気浄化装置10に用いられる還元触媒20は、排気通路11内に噴射された尿素水溶液が加水分解することで生成されるアンモニアを吸着し、アンモニアとNOxとの還元反応を促進する機能を有している。具体的には、還元触媒20では、尿素水溶液中の尿素が分解することによって生成されるアンモニア(NH
3)がNOxと反応することにより、NOxが窒素(N
2)及び水(H
2O)に分解される。還元触媒20は公知の触媒が適宜用いられる。
【0030】
また、還元触媒20の下流側には排気ガス中のNOx濃度を検出するためのNOxセンサ14が備えられている。NOxセンサ14のセンサ信号は、制御装置60に送信され、制御装置60ではこのセンサ信号に基づいて排気ガス中のNOx濃度が算出される。また、還元触媒20の上流側には排気ガスの温度を検出する排気温度センサ13が設けられている。
【0031】
(2)還元剤噴射装置
還元剤噴射装置30は、貯蔵タンク31と、還元剤噴射弁70と、ポンプ41等を主たる要素として構成されている。貯蔵タンク31とポンプ41とは第1の還元剤供給通路57で接続され、ポンプ41と還元剤噴射弁70とは第2の還元剤供給通路58で接続されている。このうち第2の還元剤供給通路58には圧力センサ43が設けられている。圧力センサ43のセンサ信号は制御装置60に送信され、制御装置60ではこのセンサ信号に基づいて第2の還元剤供給通路58内の圧力が算出される。
【0032】
貯蔵タンク31には、尿素水溶液の温度を検出するためのタンク温度センサ18が設けられている。ポンプ41としては、制御装置60により駆動制御される電動ポンプが用いられている。本実施形態において、ポンプ41は、圧力センサ43によって検出される第2の還元剤供給通路58内の圧力が所定値に維持されるように、その出力がフィードバック制御されるように構成されている。
【0033】
還元剤噴射弁70は、制御装置60により開弁のオンオフが制御される電磁駆動式のオンオフ弁が用いられており、還元触媒20よりも上流側において排気通路11に固定されている。この還元剤噴射弁70は、基本的には、第2の還元剤供給通路58内の圧力が目標値に維持されている状態で通電制御が行われる。具体的には、演算によって求められる指示噴射量に応じて所定のDUTYサイクル中における開弁DUTY比を設定することにより、排気通路11内への還元剤の噴射量が調節される。指示噴射量は、排気ガス中の窒素酸化物の流量と、還元触媒20におけるアンモニアの吸着量とに応じて決定される。
【0034】
本実施形態において、ポンプ41は、正逆いずれの方向にも回転が可能となっている。ポンプ41の正回転により貯蔵タンク31内の尿素水溶液の吸い上げが行われ、尿素水溶液が還元剤噴射弁70へ供給される。また、ポンプ41の逆回転により還元剤噴射弁70から貯蔵タンク31への尿素水溶液の吸い戻しが行われる。なお、還元剤噴射弁70へ還元剤(尿素水溶液)を供給する状態を第1の状態と称し、還元剤噴射弁70から還元剤を吸い戻す状態を第2の状態と称することとする。還元剤噴射弁70への還元剤の供給(第1の状態)と、還元剤噴射弁70からの還元剤の吸い戻し(第2の状態)とは、双方の状態のポンプ41の回転方向を同一として、流路切換弁の制御により行うようにしても良い。このような還元剤噴射装置30の基本構成は、公知の構成のものを用いることができる。
【0035】
2.還元剤噴射弁の構成
SCRシステムでは、内燃機関5の停止後にポンプ41を逆回転させ、貯蔵タンク31から還元剤噴射弁70までの経路に充填されている還元剤を貯蔵タンク31内に戻す動作を行う(第2の状態)。これにより、貯蔵タンク31から還元剤噴射弁70までの経路に充填されている還元剤が低温時に凍結してしまうことを抑止できる。なお、このような還元剤を貯蔵タンク31に戻す動作は、CAN信号にエラーが生じている場合等、エラー発生時にも行うことができる。還元剤を貯蔵タンク31に戻す際には、還元剤噴射弁70が開かれる。
【0036】
図2は、還元剤噴射弁70の構成を示す模式図である。
図2に示すように、還元剤噴射弁70は、ハウジング72、アマーチャ74、ストッパー76、圧縮バネ78、コイル80、調整スリーブ82、フィルタ84を有して構成されている。ハウジング72は、還元剤噴射弁70の本体を構成し、ハウジング72内にアマーチャ74、ストッパー76、圧縮バネ78が配置されている。
【0037】
より詳細には、アマーチャ74及びストッパー76はハウジング72の筒状の内部に挿入され、アマーチャ74は軸方向に移動可能とされ、ストッパー76はハウジング72に対して固定されている。アマーチャ74及びストッパー76は鉄などの金属から構成されている。また、ストッパー76の外周にはコイル80が配置されている。
【0038】
調整スリーブ82は、ストッパー76に対して固定されている。圧縮バネ78は、一端が調整スリーブ82に当接し、他端がアマーチャ74の当接面74aに当接している。アマーチャ74、ストッパー76、及び調整スリーブ82は、いずれも内部に空間を有している。ストッパー76、及び調整スリーブ82は、中空のパイプ形状とされ、アマーチャ74は先端部74h以外は中空形状とされている。
【0039】
アマーチャ74の先端部74hは球形状とされている。一方、ハウジング72の先端部にはオリフィス72aが設けられている。コイル80に通電がされていない状態では、圧縮バネ78の付勢力によりアマーチャ74がハウジング72の先端側へ付勢され、アマーチャ74の先端部74hがハウジング72の先端の内側に設けられた弁座72bと当接する。
【0040】
一方、コイル80に通電が行われると、磁力によりアマーチャ74がストッパー76側へ吸引され、アマーチャ74の端面74bとストッパー76の端面76aとが近接する。この際、アマーチャ74の端面74bとストッパー76の端面76aとの間に所定のエアギャップが設けられるように、アマーチャ74の動きを規制する部位が別途設けられる。端面74bと端面76aが近接した際のギャップは、例えば20μm程度の値とすることができる。これにより、吸引時のコイル80による磁力を十分に大きくすることができる。
【0041】
また、アマーチャ74の端面74bとストッパー76の端面76aとが当接するようにしても良い。この場合、アマーチャ74の端面74bに所定の厚さのメッキ層を形成することで、上記の20μm程度のギャップを無くし、端面74bと端面76aとが当接するように構成することができる。
【0042】
還元剤は、
図2の矢印A1方向から供給され、フィルタ84を通過して、調整スリーブ82へ供給される。調整スリーブ82、ストッパー76は中空のパイプ形状とされているため、還元剤は調整スリーブ82及びストッパー76の内部を通過してアマーチャ74へ供給される。
【0043】
図2に示すように、アマーチャ74には、その内部と外部を接続する孔74iが設けられている。還元剤は、ストッパー76側からアマーチャ74の内部へ供給され、孔74iを通ってアマーチャ74の外部へ送られ、先端部74hの方向へ送られる。
【0044】
上述したように、コイル80に通電がされていない状態では、アマーチャ74の先端部74hがハウジング72の先端の内側に設けられた弁座72bと当接している。従って、孔74iから先端部74hの方向に送られた還元剤は、オリフィス72aから噴射されない。
【0045】
一方、コイル80に通電が行われると、アマーチャ74がストッパー76側へ吸引され、アマーチャ74の端面74bとストッパー76の端面76aとが近接する。これにより、アマーチャ74の先端部74hが弁座72bから離間し、還元剤がオリフィス72aを通ってハウジング72の外部へ噴射される。
【0046】
図3は、アマーチャ74の基本的な構成を説明するための模式図である。
図3に示すように、アマーチャ74には、端面74b側にハウジング72の内面72dに対して摺動する外周面74cが設けられている。外周面74cとハウジング72の内面72dとの間のクリアランスは、所定値(例えば100μm程度)とされている。なお、外周面74cのうち、ハウジング72との間のクリアランスが所定値とされているのは、端面74b側の長さDの範囲であり、その他の領域では、外周面74cとハウジング72の内面72dとの間のクリアランスは、所定値よりも大きな値に設定されている。
【0047】
図4〜
図6は、ハウジング72にアマーチャ74が挿入された状態を示しており、還元剤の吸い戻しを行った際に、還元剤が滞留し易い領域を示す模式図である。ハウジング72の内面72dと外周面74cとの間にクリアランスが設けられているため、ハウジング72の内面72dの中心軸C1に対してアマーチャ74の中心軸C2に傾きが生じる場合がある。
図4は、ハウジング72の内面72dの中心軸C1に対してアマーチャ74の中心軸C2に傾きが生じていない場合を示している。この場合、還元剤は、ハウジング72の内面72dと外周面74cとの間の隙間のうち、重力方向の下側(領域R1)に溜まり易くなる。これは、ハウジング72の内面72dと外周面74cとの間のクリアランスが、重力方向の下側で最も小さくなり、且つ還元剤が重力方向に移動するためである。
【0048】
また、
図5は、ハウジング72の内面72dの中心軸C1に対してアマーチャ74の中心軸C2に傾きが生じ、アマーチャ74の先端部74hが上側に移動した場合を示している。この場合、
図5中に示す領域R2でアマーチャ74とハウジング72の内面72dとのクリアランスが狭くなり、領域R2に還元剤が溜まり易くなる。
【0049】
また、
図6は、ハウジング72の内面72dの中心軸C1に対してアマーチャ74の中心軸C2に傾きが生じ、アマーチャ74の先端部74hが下側に移動した場合を示している。この場合、
図6中に示す領域R3でアマーチャ74とハウジング72の内面72dとのクリアランスが狭くなり、領域R3に還元剤が溜まり易くなる。
【0050】
以上のように、還元剤を貯蔵タンク31に吸い戻す際には、アマーチャ74とハウジング72の内面72dとのクリアランスが狭い領域に還元剤が溜まり易くなる。また、還元剤を貯蔵タンク31に吸い戻す際には、アマーチャ74の端面74bとストッパー76の端面76aとの間にも還元剤が溜まり易くなる。このため、吸い戻されずに残留した還元剤が、氷点下で凍結したり、排気熱によって結晶化することが想定される。
【0051】
このため、本実施形態では、ハウジング72、アマーチャ74、及びストッパー76において、還元剤が接触する部位に還元剤が通る通路を設けている。以下、
図7〜
図10に基づいて、還元剤が通る通路の具体的な構成について説明する。
【0052】
図7は、アマーチャ74の外周面74cと、アマーチャ74の内部の中空部分とを接続する複数の通路74d(孔)を設けた例を示す模式図である。通路74dを設けたことにより、還元剤の吸い戻しを行うと、
図7中に示す矢印方向に還元剤が流れる。これにより、特にアマーチャ74の外周面74cとハウジング72の内面72dとの間に滞留する還元剤が通路74dを通ってアマーチャ74の内部の中空部分に流れ、ストッパー76及びスリーブ82の中空部分を通って貯蔵タンク31側へ吸い戻される。従って、アマーチャ74とハウジング72との間に滞留する還元剤を確実に吸い戻すことが可能となる。
【0053】
図8は、アマーチャ74の外周面74cに複数の溝状、またはスリット状の通路74eを設けた例を示す模式図である。
図8に示す例では、通路74eは外周面74cの周方向と、アマーチャ74の軸方向に延在するように設けられている。通路74eを設けたことにより、還元剤の吸い戻しを行うと、
図8中に示す矢印方向に還元剤が流れる。これにより、特にアマーチャ74の外周面74cとハウジング72の内面72dとの間に滞留する還元剤が通路74eを通ってアマーチャ74の内部の中空部分に流れ、ストッパー76及びスリーブ82の中空部分を通って貯蔵タンク31側へ吸い戻される。従って、アマーチャ74とハウジング72との間に滞留する還元剤を確実に吸い戻すことが可能となる。
【0054】
図9は、アマーチャ74の端面74bに溝状、またはスリット状の通路74f,74gを設けた例を示す模式図である。
図9に示す例では、通路74fは端面74bに設けられ、外周面74cに沿って環状に設けられている。また、通路74gは、環状の通路74fの4箇所において、外周面74cと内部の中空部分とを接続するように設けられている。通路74f,74gを設けたことにより、端面74bとストッパー76の端面76aとの間に滞留する還元剤を確実に吸い戻すことが可能となる。また、通路74f,74gを設けたことにより、外周面74cとハウジング72の内面72dとの間に滞留する還元剤が通路74f,74gを通ってアマーチャ74の内部の中空部分に流れるため、アマーチャ74とハウジング72との間に滞留する還元剤を確実に吸い戻すことが可能となる。
【0055】
図10は、ストッパー76の端面76aに溝状、またはスリット状の通路76b,76cを設けた例を示す模式図である。
図10に示す例では、通路76bは端面76aに設けられ、ストッパー76の外周面に沿って環状に設けられている。また、通路76cは、環状の通路76bの4箇所において、ストッパー76の外周面と内部の中空部分とを接続するように設けられている。通路76b,76cを設けたことにより、外周面74cとハウジング72の内面72dとの間に滞留する還元剤が通路76b,76cを通ってアマーチャ74の内部の中空部分に流れるため、アマーチャ74の端面74bとストッパー76の端面76aとの間に滞留する還元剤を確実に吸い戻すことが可能となる。
【0056】
図11は、ハウジング72の内面72dに溝状、またはスリット状の通路72cを設けた例を示す模式図である。
図11に示す例では、通路72cはアマーチャ74の軸方向に延在するように設けられている。通路72cを設けたことにより、還元剤の吸い戻しを行うと、
図8と同様に通路72c内をストッパー76側に向かって還元剤が流れる。これにより、特にアマーチャ74の外周面74cとハウジング72の内面72dとの間に滞留する還元剤が通路72cを通ってストッパー76側に流れ、貯蔵タンク41側へ吸い戻される。従って、アマーチャ74とハウジング72との間に滞留する還元剤を確実に吸い戻すことが可能となる。
【0057】
なお、
図7〜
図11に示す構成は、単独で構成しても良いし、複数を組み合わせて構成しても良い。
【0058】
以上説明したように本実施形態によれば、還元剤噴射弁70の内部の還元剤が接触する部位に還元剤が通る通路を設けたため、吸い戻しの際に還元剤が残留することを確実に抑止することができる。従って、残留した還元剤が凍結したり、熱によって結晶化してしまうことを確実に抑えることが可能となる。これにより、還元剤噴射弁70の動作に不具合が生じてしまうことを確実に抑止することが可能となる。
【0059】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0060】
5 内燃機関
31 貯蔵タンク
41 ポンプ
70 還元剤噴射弁
72 ハウジング
72d 内面
72a オリフィス
74 アマーチャ
76 ストッパー
74b 端面
74c 外周面
74d,74e,74f,74g 通路
ストッパー 76
端面 76a