(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本実施の形態の車両用シートは、自動二輪車に用いられるものである。ただし、これに限られるものではなく、二輪車、すなわち陸上のオートバイ、スクーターや、雪上のスノーモービル、水上バイク用のシートを含み、また三輪バギー車等や跨座式乗物、或いは建機シートに関する乗物用シートをも含むものとする。
そして、このような車両用シートは、
図1〜
図8に示すように、クッション材2と、当該クッション材2を支持するベース部材1と、クッション材2を被覆し、その端末部3aがベース部材1の周縁部1aにおいて支持される表皮3と、を備える。
【0030】
ベース部材1は、クッション支持部材として用いられ、ポリプロピレンやポリ塩化ビニル等の樹脂材料を成形してなる。そして、自動二輪車の車体の形状に対応した形状となるように成形され、当該車体に装着される。
なお、ベース部材1に対しては、自動二輪車の車体に装着固定するのに必要な金具等が取り付けられていてもよい。
また、本実施の形態のベース部材は樹脂による一体成型品が採用されるが、これに限られるものではない。すなわち、例えば金属製のワイヤー部材で構成されるようなベース部材や、その他、既存の車両用シートに採用される各種のベース部材を含むものとする。
【0031】
本実施の形態の周縁部1aは、外周側に向かうにつれて徐々に迫り上がる状態となるように形成されている。すなわち、当該周縁部1aは、車体装着時には、ベース部材1の下面における中央側の箇所に比して下方に突出した状態となる。
また、周縁部1aは、
図1に示すように前後方向に長尺であり、全体的に丸みを帯びた状態となっているため、前端部の左右側と、後端部の左右側に、比較的急な曲線となったコーナー部1bが形成される。
さらに、車両用シートの表面に起伏を生じさせたり、車体側の構造に起伏(凹凸)があったりする場合には、
図2に示すように、周縁部1aにも高低差の大きい箇所1cが形成される。
【0032】
クッション材2は、柔軟フォーム材、例えばウレタンフォーム,ポリプロピレンフォーム,ポリエチレンフォームから形成されており、ベース部材1の上面に配置されるとともに、表皮3によって被覆される。
【0033】
表皮3は、車両用シートの座面を構成し、乗員に接触する部分であり、ポリプロピレンやポリ塩化ビニル等の樹脂材料を成形してなる。
また、当該表皮3は、クッション材2の膨らみを考慮するとともに、ベース部材1の周縁部1aの形状に対応して形成されており、表皮3の端末部3aが、ベース部材1の周縁部1aに沿って配置できるようになっている。
より詳細に説明すると、表皮3は、クッション材2のうちベース部材1に当接する箇所を除く全領域を被覆し、さらに端末部3aが、ベース部材1の外周端末を巻き込んだ状態で当該ベース部材1の下面側の周縁部1aに支持されている。
【0034】
そして、ベース部材1の周縁部1aと表皮3の端末部3aとの間には、端末部3aを周縁部1aに係合させるための係合部が、周縁部1aの方向に沿って複数設けられている。また、当該複数の係合部のそれぞれは、周縁部1aの方向に沿って長尺に形成されている。
【0035】
本実施の形態における係合部は、
図1〜
図7に示すように、長孔部4と、第一係止部材5と、を備える。
【0036】
長孔部4は、
図1,
図2に示すように、ベース部材1の周縁部1aに沿って複数形成されている。さらに、当該長孔部4は、周縁部1aをその厚み方向に貫通するように形成されている。
また、当該長孔部4は、ベース部材1の前後方向の軸Aと直交する同一平面上の左右に配置されている。すなわち、本実施の形態においては、
図1に示すように、ベース部材1の前端部にある一つの長孔部4を除く全ての長孔部4が左右対称の位置関係となるように配置されている。
【0037】
さらに、ベース部材1は、
図3に示すように、長孔部4の周辺に設けられて、当該長孔部4を補強する補強部4a,4bを有する。当該補強部4a,4bは、ベース部材1の下面側における周縁部1aに設けられたビードであり、ベース部材1の下面側における周縁部1aの表面から隆起するように形成されている。
補強部4aは、ベース部材1の周縁部1aの方向に沿って、かつ隣り合う長孔部4,4同士を連結するように設けられている。また、本実施の形態では隣り合う長孔部4,4間には二本のビード4a,4aが設けられている。
補強部4bは、長孔部4の周囲を囲むようにして枠状に形成されたビードである。その長辺4cは、ベース部材1の周縁部1aの方向に沿って設けられている。短辺4dは、ベース部材1の周縁部1aの方向と直交する方向に沿って設けられている。また、当該短辺4dは、補強部4aと一体形成されている。
【0038】
第一係止部材5は、表皮3の端末部3aに沿って複数取り付けられ、長孔部4の外側縁に、当該外側縁の長さ方向に亘って係止される。すなわち、当該第一係止部材5は、
図4に示すように、その先端が略フック状に形成されたものである。
また、当該第一係止部材5の基端は表皮3の端末部3aに縫製して結合されている。なお、表皮3の端末部3aは、第一係止部材5を縫製した際の強度向上のために折り畳まれて複層化されている。
【0039】
また、第一係止部材5は、長孔部4の数および位置に対応して表皮3の端末部3aに設けられている。長孔部4は、上述のようにベース部材1の前後方向の軸Aと直交する同一平面上の左右に配置されるため、第一係止部材5も、長孔部4に係止された状態において、ベース部材1の前後方向の軸Aと直交する同一平面上の左右に配置されることになる。
換言すれば、ベース部材の周縁部1aと表皮3の端末部3aとの間に設けられる複数の係合部は、ベース部材1の前後方向の軸Aと直交する同一平面上の左右に配置されている。
【0040】
第一係止部材5についてより詳細に説明する。
当該第一係止部材5は、
図4に示すように、取付部6と、引掛部7と、を有する。
取付部6は、表皮3の端末部3aに取り付けられるものであり、第一係止部材5の前記基端に相当する。すなわち、当該取付部6が表皮3の端末部3aに縫製されて結合されている。なお、当該取付部6は、その先端が表皮3の端末部3aよりも長孔部4側に突出するように設定されている。
引掛部7は、取付部6の先端に一体形成され、長孔部4の外側縁に引っ掛けられるフック状のものである。そして、当該引掛部7の幅寸法は、長孔部4の外側縁の長さ寸法と略等しくなるように設定されている。つまり、当該引掛部7の幅寸法が、長孔部4の外側縁の長さ寸法と略等しくなるように設定されることで、上述のように、第一係止部材5を長孔部4の外側縁に、当該外側縁の長さ方向に亘って係止することができる。
また、当該引掛部7のうち少なくとも一部は、当該引掛部7が長孔部4の外側縁に引っ掛けられた際に、当該引掛部7が長孔部4から抜けることを抑制するために、ベース部材1とクッション材2の双方に当接している。
【0041】
また、引掛部7は、突出部8と、延出部9と、を備える。
突出部8は、引掛部7が長孔部4の外側縁に引っ掛けられた際に、取付部6の先端から長孔部4の奥に向かって突出する部位である。
延出部9は、突出部8の先端からベース部材1の外周端末に向かって延出する部位である。そして、上述のように、引掛部7のうち少なくとも一部が、ベース部材1とクッション材2の双方に当接するとしたが、本実施の形態においては当該延出部9の全域が、引掛部7が長孔部4の外側縁に引っ掛けられた際に、ベース部材1とクッション材2の双方に当接した状態となっている。
すなわち、延出部9の一面はベース部材1に当接し、かつ他面はクッション材2に当接している。また、延出部9は、このようにベース部材1とクッション材2の双方に当接するため、当該ベース部材1とクッション材2とによって挟み込まれた状態となっている。
【0042】
なお、ベース部材1と第一係止部材5との間には、
図5,
図6に示すように、第一係止部材5がベース部材1の長孔部4から抜けることを抑制するための抜け抑制部が設けられるものとしてもよい。換言すれば、引掛部7の延出部9が長孔部4から抜けることを抑制するために、当該抜け抑制部が設けられるものとしてもよい。
【0043】
図5に示す抜け抑制部は、差込凸部11と、差込孔部12と、を備える。
差込凸部11は、ベース部材1の周縁部1aのうちクッション材2側の面に、クッション材2側に向かって突出して一体に設けられている。なお、本実施の形態の差込凸部11は断面略三角形状に形成されているが、これに限られるものではなく、断面略四角形状等であってもよい。
差込孔部12は、第一係止部材5の引掛部7における延出部9に、当該延出部9をその厚み方向に貫通して形成されている。当該差込孔部12の形成位置は、差込凸部11の位置に対応しており、第一係止部材5を長孔部4の外側縁に係止させた際に、差込凸部11が差込孔部12に差し込まれるように設定されている。
【0044】
図6に示す抜け抑制部は、第一爪部13と、第二爪部14と、を備える。
第一爪部13は、ベース部材1の周縁部1aのうちクッション材2側の面に、クッション材2側に向かって突出するように一体形成されている。なお、当該第一爪部13は、ややベース部材1の外周端末側に向かって突出している。
第二爪部14は、第一係止部材5の引掛部7における延出部9に、ベース部材1の周縁部1a側に向かって突出するように一体形成されている。
すなわち、第一爪部13と第二爪部14は互いに向き合う方向に突出しており、第一係止部材5を長孔部4の外側縁に係止させた際に、第二爪部14が第一爪部13に引っ掛かるように設定されている。
【0045】
なお、ベース部材1の周縁部1aには、上述のようにコーナー部1bが設けられている(
図1参照)。そこで、表皮3の端末部3aに沿って複数取り付けられる第一係止部材5のうち、当該コーナー部1bに配置される第一係止部材5として、
図7に示すように、複数の取付部6,6と、複数の引掛部7,7と、追従部15と、を有するものを用いる。
追従部15は、複数の取付部6,6間に設けられ、コーナー部1bにおける表皮3のダブつきを抑制するために、コーナー部1bの形状に追従して変形可能に構成されている。当該追従部15は、図示例においては蛇腹状に形成されているが、これに限られるものではない。
なお。追従部15は蛇腹状の構造としたが、例えば襞状やギャザー状としてもよい。さらに、本実施の形態の追従部15は、このように蛇腹状(襞状・ギャザー状)の構造を採用したが、その厚みを取付部6の箇所よりも薄く(薄肉に)することによって可撓性を高めるような構造を採用してもよい。
また、追従部15は、コーナー部1bにおいて好適ではあるが、コーナー部1bだけに限られるものではなく、それ以外の箇所に配置されるものとしてもよい。
【0046】
また、ベース部材1の周縁部1aには、上述のようにコーナー部1bだけでなく、高低差の大きい箇所1cも存在する(
図2参照)。そして、当該高低差の大きい箇所1cには傾斜があり、当該傾斜の上端と下端に表皮3のダブつきが生じやすい。そこで、表皮3の端末部3aに沿って複数取り付けられる第一係止部材5のうち、当該高低差の大きい箇所1cまたはコーナー部1bに配置される第一係止部材5に替えて、第二係止部材17を用いる。
より詳細に説明すると、高低差の大きい箇所1cにおける表皮3のダブつきを抑制するために、係合部はベース部材1のコーナー部1bまたは高低差の大きい箇所1cに配置されており、
図8に示すように、引掛凸部16と、第二係止部材17と、を備える。
【0047】
引掛凸部16は、ベース部材1の周縁部1aの方向に沿って、かつ複数の長孔部4と同列に設けられ、ベース部材1の下面から突出するように形成されている。また、当該引掛凸部16の突出方向は、当該引掛凸部16に引っ掛けられる第二係止部材17が容易に外れないように、ベース部材1の中央側に傾くように突出形成されている。
なお、当該引掛凸部16のある箇所には、第二係止部材17を引っ掛けて装着させるための隙間を形成する装着用孔16aが形成されている。
【0048】
第二係止部材17は、表皮3の端末部3aに沿って取り付けられ、引掛凸部16に係止される孔部17aを有する。また、当該第二係止部材17は、表皮3よりも伸張性の高いシート状素材からなる。当該シート状素材としては例えばターポリン等のような柔軟性に優れる樹脂製シートが採用されている。
なお、本実施の形態の引掛凸部16の幅寸法は、長孔部4と略等しく設定されており、第二係止部材17の孔部17aも、当該引掛凸部16の幅寸法に対応した形状とされている。
【0049】
以上のような構成の車両用シートにおいて、表皮3によってクッション材2を被覆し、かつその端末部3aをベース部材1の周縁部1aに支持させる際は、概略的には、第一係止部材5の引掛部7を長孔部4の外側縁に係止するだけでよい。また、コーナー部1bおよび高低差の大きい箇所1cにおいても、追従部15を有する第一係止部材5を用いたり、第二係止部材17を用いたりすれば、表皮3のダブつきを抑制しつつ、当該表皮3によってクッション材2を被覆することができる。
【0050】
本実施の形態によれば、ベース部材1の周縁部1aの方向に沿って設けられた複数の係合部のそれぞれが、ベース部材1の周縁部1aの方向に沿って長尺であるため、複数の長尺な係合部によって表皮3の端末部3aを支持した状態とすることができる。
これによって、例えば表皮3を点で支持するようなファスナー等を用いる場合に比して、支持面積を増やすことができるので、表皮3の支持剛性を向上させることが可能となる。
また、係合部の一つ一つが長尺であるため、ベース部材1の周縁部1aに設けられる係合部の数も少なくすることができるので、表皮3の着脱も容易となる。また、このように表皮3の着脱が容易となれば、表皮3の交換性を向上させることができる。
【0051】
また、第一係止部材5が長孔部4の外側縁に、当該外側縁の長さ方向に亘って係止されるので、支持面積を増やすことができるとともに、表皮3にテンションをかけてクッション材2を被覆する際に、第一係止部材5が長孔部4の外側縁に強く引っ掛かることになる。これによって、表皮3の支持剛性をより向上させることが可能となる。さらに、単に第一係止部材5を長孔部4の外側縁に引っ掛けるだけで表皮3をベース部材1の周縁部1aにおいて支持できるので、表皮3の着脱が容易となる。
したがって、表皮3の支持剛性をより向上させたいという要望に対して好適に対応できる。
【0052】
また、引掛部7のうち少なくとも一部は、ベース部材1とクッション材2の双方に当接するので、第一係止部材5が長孔部4の外側縁から抜けることを抑制できる。
しかも、引掛部7における延出部9の全域がベース部材1とクッション材2の双方に当接するので、第一係止部材5が長孔部4の外側縁から抜けることをより効果的に抑制できる。
したがって、第一係止部材5が長孔部4の外側縁から抜けることを抑制したいという要望に対して好適に対応できる。
【0053】
また、複数の係合部が、ベース部材1の前後方向の軸Aと直交する同一平面上の左右に配置されているので、表皮3にテンションをかけてクッション材2を被覆する際に、左右の係合部に均等にテンションがかかりやすくなる。これによって、表皮3の端末部3aをベース部材1の周縁部1aに係合させた状態を維持しやすくなる。
したがって、表皮3の端末部3aをベース部材1の周縁部1aに係合させた状態を維持させたいという要望に対して好適に対応できる。
【0054】
また、ベース部材1は、長孔部4の周辺に設けられる補強部4a,4bを有するので、長孔部4を形成したことによるベース部材1の周縁部1aの剛性低下を補完できる。
したがって、長孔部4を形成したことによるベース部材1の周縁部1aの剛性低下を補完したいという要望に対して好適に対応できる。
【0055】
また、補強部4a,4bは、ベース部材1の周縁部1aの方向に沿って設けられているので、長孔部4が配置された方向に沿ってベース部材1の周縁部1aの剛性を向上させることができる。
したがって、ベース部材1の周縁部1aの剛性を向上させたいという要望に対して好適に対応できる。
【0056】
また、補強部4aは、隣り合う長孔部4,4同士を連結するように設けられているので、隣り合う長孔部4,4間におけるベース部材1の周縁部1aの剛性を向上させることができる。
したがって、隣り合う長孔部4,4間におけるベース部材1の周縁部1aの剛性を向上させたいという要望に対して好適に対応できる。
【0057】
また、ベース部材1と第一係止部材5との間に抜け抑制部が設けられているので、第一係止部材5がベース部材1の長孔部4から抜けることを効果的に抑制できる。
したがって、第一係止部材5がベース部材1の長孔部4から抜けることを抑制したいという要望に対して好適に対応できる。
【0058】
また、第一係止部材5が、複数の取付部6,6間に設けられ、コーナー部1bの形状に追従して変形可能な追従部15を有するので、追従部15をコーナー部1bの形状に追従して変形させて、ベース部材1のコーナー部1bに生じやすい表皮3のダブつきを抑制できる。
したがって、ベース部材1のコーナー部1bに生じやすい表皮3のダブつきを抑制したいという要望に対して好適に対応できる。
【0059】
また、第二係止部材17が、表皮3よりも伸張性の高いシート状素材からなるので、ベース部材1のコーナー部1bや高低差の大きい箇所1cに生じやすい表皮3のダブつきを抑制できる。
また、引掛凸部16がベース部材1の下面から突出して設けられ、第二係止部材17が、当該引掛凸部16に係止される孔部17aを有するので、第二係止部材17がシート状素材であっても、表皮3の端末部3aをベース部材1の周縁部1aに係合させやすくなる。
したがって、ベース部材1のコーナー部1bや高低差の大きい箇所1cに生じやすい表皮3のダブつきを抑制したいという要望に対して好適に対応できる。さらには、シート状素材であっても、表皮3の端末部3aをベース部材1の周縁部1aに係合させやすくしたいという要望に対して好適に対応できる。