(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ハニカム構造部が、前記隔壁を有する柱状のハニカムセグメントを、複数個有し、複数個の前記ハニカムセグメントの互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合されたセグメント構造である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の目封止ハニカム構造体。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に本発明を実施するための形態を図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0030】
本発明の目封止ハニカム構造体の一の実施形態は、
図1〜
図5に示すような、柱状のハニカム構造部4と、セル2の開口部に配設された目封止部5と、を備えた目封止ハニカム構造体100である。ハニカム構造部4は、流体の流路となる第一端面11から第二端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1を有する柱状のものである。目封止部5は、複数のセル2のいずれか一方の開口部に配設され、当該セル2の開口部を封止するものである。
図1〜
図5においては、目封止部5が、第一端面11における所定のセル2b(以下、単に「セル2b」ともいう)の開口部、及び第二端面12における残余のセル2a(以下、単に「セル2a」ともいう)の開口部に配設されている。このように構成された目封止ハニカム構造体100は、内燃機関、又は各種燃焼装置から排出される排ガスを浄化するパティキュレートフィルタとして用いることができる。
図1〜
図5に示す目封止ハニカム構造体100は、ハニカム構造部4の最外周に位置する外周壁3を更に有している。
【0031】
ここで、
図1は、本発明の目封止ハニカム構造体の一の実施形態を流入端面側からみた模式的な斜視図である。
図2は、
図1に示す目封止ハニカム構造体を流出端面側からみた模式的な斜視図である。
図3は、
図1に示す目封止ハニカム構造体を流入端面側からみた模式的な平面図である。
図4は、
図1に示す目封止ハニカム構造体を流出端面側からみた模式的な平面図である。
図5は、
図1に示す目封止ハニカム構造体の、セルの延びる方向に平行な断面を示す模式的な断面図である。
図5において、符号Gは、セル内を通過する流体(例えば、排ガス)を示し、符号Gに示す矢印の方向に流体が移動する。
【0032】
目封止ハニカム構造体100は、隔壁1が、主相としてα−Al
2O
3を含み、更にβ−スポジュメンを含む多孔体からなる。このような多孔体は、従来公知の目封止ハニカム構造体に用いられる隔壁の材料に比して、多孔体を構成する材料の単位体積当たりの熱容量が高いものである。本実施形態の目封止ハニカム構造体100においては、多孔体を構成する材料の単位体積当たりの熱容量が高いため、高温での使用に際して温度上昇を抑制することができ、耐熱衝撃性に優れるという顕著な効果を奏する。また、この多孔体を構成する材料は、結晶方位による熱膨張の異方性が小さい材料から構成されているため、マイクロクラックが少なく、優れた機械的強度を有するという効果を奏するものである。したがって、本実施形態の目封止ハニカム構造体100を、DPFとして用いた場合に、当該DPFの再生時における温度上昇を抑制することができ、例えば、DPFの再生回数を減少させたとしても、熱衝撃による破損が生じ難くなる。
【0033】
目封止ハニカム構造体100は、
図6に示すように、隔壁1が、骨材7、及び骨材7間に細孔9を形成した状態で骨材7同士を結合する結合材8を有する多孔体10からなるものであってもよい。そして、この多孔体10においては、骨材7が、α−Al
2O
3を含み、且つ、結合材8が、β−スポジュメンを含む。すなわち、
図6に示すような骨材7及び結合材8を有する多孔体10においては、主相として多孔体10に含まれるα−Al
2O
3によって骨材7が構成され、多孔体10に更に含まれるβ−スポジュメンによって結合材8が構成されていてもよい。ここで、
図6は、隔壁を構成する多孔体を模式的に示す拡大模式図である。なお、上述した骨材7及び結合材8を有する多孔体10は、本実施形態の目封止ハニカム構造体の隔壁を構成する多孔体の一態様である。したがって、本実施形態の目封止ハニカム構造体の隔壁を構成する多孔体は、例えば、骨材と結合材が明確に区別されないような多孔体であってもよい。
【0034】
隔壁1を構成する多孔体における「主相」とは、質量割合において40質量%以上の物質をいう。一方、質量割合において20質量%未満の物質で、上述した主相に該当せず、且つX線回折法で同定された物質を、「副相」ということがある。なお、多孔体における「主相」は、1種類に限られず、上記の条件を満たす物質が2種類存在する場合には、その2種類の物質が、共に「主相」となる。本明細書において、「物質」とは、化学的に見て一定の組成を持ち、物理的操作によって2種以上の物質に分離できないもの(物質)のことを意味する。
【0035】
本明細書において、「α−Al
2O
3」や「MgAl
2O
4」と記載した場合は、その化学式にて記載された成分以外に、その他の成分が固溶している場合も含む。例えば、固溶しているその他の成分としては、Fe、Mg、Si等を挙げることができる。
【0036】
隔壁を構成する多孔体には、α−Al
2O
3、及びβ−スポジュメンの他に、更に、MgAl
2O
4やコージェライトが含まれていてもよい。隔壁が、骨材及び結合材を有する多孔体からなるものの場合には、骨材にMgAl
2O
4が含まれていてもよく、また、結合材にコージェライトが含まれていてもよい。骨材が、α−Al
2O
3を含み、更にMgAl
2O
4を含む場合は、当該骨材が、α−Al
2O
3とMgAl
2O
4との混合相になる。また、例えば、β−スポジュメンを含む結合材に、コージェライトが更に含まれていても、結晶方位による熱膨張の異方性が小さくなるため、目封止ハニカム構造体は、優れた機械的強度を有するものとなる。結合材が、β−スポジュメンとコージェライトを含む場合は、結合材が、β−スポジュメンとコージェライトとの混合相になる。
【0037】
多孔体を構成する材料100質量%に対する、α−Al
2O
3の質量割合が50〜80質量%であることが好ましく、60〜80質量%であることが更に好ましく、65〜80質量%であることが特に好ましい。α−Al
2O
3の質量割合が少ないと、多孔体を構成する材料の単位体積当たりの熱容量が十分に向上しないことがある。一方、α−Al
2O
3の質量割合が多いと、多孔体の40〜800℃における平均熱膨張係数が大きくなることがある。本実施形態の目封止ハニカム構造体においては、下記式(2)に示す「F」の値が、4.00以上であることが好ましく、熱容量が低い、又は平均熱膨張係数が大きくなると、この「F」の値が、4.00未満になってしまうことがある。
【0038】
F=C−0.007×α
2 ・・・ (2)
(但し、上記式(2)において、Cは、多孔体を構成する材料の600℃における熱容量(J/K/cm
3)を示し、αは、多孔体の40〜800℃における平均熱膨張係数(ppm/K)を示す。)
【0039】
多孔体を構成する材料100質量%に対する、β−スポジュメンの質量割合が3〜30質量%であ
り、3〜20質量%であること
が好ましく、10〜20質量%であることが特に好ましい。β−スポジュメンの質量割合が少ないと、多孔体を構成する材料が低強度となることがある。β−スポジュメンの質量割合が多いと、多孔体を構成する材料の単位体積当たりの熱容量が小さくなることがある。
【0040】
多孔体を構成する材料100質量%に対する、MgAl
2O
4の質量割合が0〜20質量%であ
り、0〜15質量%であること
が好ましい。MgAl
2O
4の質量割合が多いと、多孔体の40〜800℃における平均熱膨張係数が大きくなることがある。
【0041】
多孔体を構成する材料100質量%に対する、コージェライトの質量割合が0〜15質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることが更に好ましい。コージェライトの質量割合が少ないと、多孔体を構成する材料が低強度となることがある。コージェライトの質量割合が多いと、多孔体を構成する材料の単位体積当たりの熱容量が小さくなることがある。
【0042】
多孔体を構成する材料100質量%に対する、α−Al
2O
3とMgAl
2O
4の合計質量の割合が70〜90質量%であ
り、80〜90質量%であること
が好ましい。α−Al
2O
3とMgAl
2O
4の合計質量の割合が少ないと、多孔体を構成する材料の単位体積当たりの熱容量が小さくなることがある。α−Al
2O
3とMgAl
2O
4の合計質量の割合が多いと、多孔体の40〜800℃における平均熱膨張係数が大きくなることがある。
【0043】
多孔体を構成する材料100質量%中に、α−Al
2O
3、β−スポジュメン、MgAl
2O
4、及びコージェライトの4物質以外の物質が含まれる場合には、当該物質の質量割合が、0〜5質量%であることが好ましい。このような物質が多く含まれていると、多孔体を構成する材料の単位体積当たりの熱容量が小さくなったり、熱膨張係数が大きくなったりすることがある。
【0044】
多孔体を構成する材料中に含まれる、α−Al
2O
3、β−スポジュメン、MgAl
2O
4、及びコージェライト等の質量比率は、X線回折(XRD)の内部標準法にて定量することができる。「X線回折(XRD)の内部標準法」とは、内部標準物質と試料を一定の割合で混合し、物質濃度と回折線強度比との間には直線関係が得られることを利用して、濃度が既知の標準試料で検量線を作成し分析する方法である。
【0045】
多孔体を構成する材料の真密度が、3.20〜3.80g/cm
3であることが好ましく、3.30〜3.70g/cm
3であることが更に好ましく、3.40〜3.70g/cm
3であることが特に好ましい。例えば、多孔体を構成する材料の真密度が、3.20g/cm
3未満であると、熱容量が小さくなり過ぎることがあり、3.80g/cm
3超であると、低強度となり過ぎたり、平均熱膨張係数が大き過ぎたりすることがある。多孔体を構成する材料の真密度は、JIS R 1634に準拠して、アルキメデス法により測定することができる。
【0046】
多孔体を構成する材料の600℃における単位体積当たりの熱容量が、4.00〜4.50J/K/cm
3であることが好ましく、4.20〜4.50J/K/cm
3であることが更に好ましく、4.30〜4.50J/K/cm
3であることが特に好ましい。このように構成することによって、多孔体を構成する材料の単位体積当たりの熱容量が、従来公知の目封止ハニカム構造体に用いられる隔壁の材料に比して高いものとなる。多孔体を構成する材料の単位体積当たりの熱容量を高くすることにより、高温での使用に際して温度上昇を抑制することができ、耐熱衝撃性に優れるという顕著な効果を奏する。多孔体を構成する材料の600℃における単位体積当たりの熱容量が、4.00J/K/cm
3未満であると、温度上昇を抑制する効果が十分に発現しないことがある。
【0047】
ここで、「材料の単位体積当たりの熱容量」とは、気孔等が形成されていない密実な材料において計測された熱容量のことを意味する。例えば、多孔体においては、当該多孔体に形成された気孔を考慮せず、多孔体を構成する材料自体の熱容量ということになる。以下、本明細書において、多孔体に形成された気孔を考慮した熱容量については、「多孔体の単位体積当たりの熱容量」と記し、上述した「材料の単位体積当たりの熱容量」とは区別するものとする。「材料の単位体積当たりの熱容量」を、単に「材料の熱容量」ということがある。「多孔体の単位体積当たりの熱容量」を、単に「多孔体の熱容量」ということがある。本明細書において、特に断りのない限り、「熱容量」とは、600℃における熱容量のことである。本明細書において、特に断りのない限り、「熱容量」及び「単位体積当たりの熱容量」の値は、1cm
3当たりの熱容量(J/K/cm
3)として示す。
【0048】
多孔体を構成する材料の600℃における熱容量は、以下の方法によって求めることができる。まず、アルバック理工社製の断熱型比熱測定装置を用いて、多孔体を構成する材料の600℃における単位質量あたりの熱容量(J/K/g)を測定する。得られた単位質量あたりの熱容量(J/K/g)に、室温においてアルキメデス法で測定した多孔体を構成する材料の真密度(g/cm
3)を乗算することで、多孔体を構成する材料の単位体積あたりの熱容量(J/K/cm
3)を算出する。熱容量の測定は、隔壁を構成する多孔体から所定の大きさの試験片(サンプル)を切り出して作製し、当該試験片を用いて行うことができる。
【0049】
多孔体の40〜800℃における平均熱膨張係数が、2.0〜6.0ppm/Kであることが好ましく、3.0〜6.0ppm/Kであることが更に好ましく、3.5〜5.0ppm/Kであることが特に好ましい。多孔体の40〜800℃における平均熱膨張係数が、上記数値範囲であると、目封止ハニカム構造体の耐熱衝撃性が優れたものとなる。平均熱膨張係数が、2.0ppm/K未満であると、熱容量が小さくなり過ぎることがあるのであまり好ましくない。平均熱膨張係数が、6.0ppm/K超であると、耐熱衝撃性が低くなり過ぎることがあるのであまり好ましくない。平均熱膨張係数は、示差検出型の熱膨張計にて測定することができる。
【0050】
多孔体が、下記式(3)の関係を満たすことが好ましい。
C−0.007×α
2 ≧ 4.00 ・・・ (3)
(但し、上記式(3)において、Cは、多孔体を構成する材料の600℃における熱容量(J/K/cm
3)を示し、αは、多孔体の40〜800℃における平均熱膨張係数(ppm/K)を示す。)
【0051】
多孔体が、上記式(3)の関係を満たすと、本実施形態の目封止ハニカム構造体において、多孔体を構成する材料の600℃における熱容量(J/K/cm
3)、及び多孔体の40〜800℃における平均熱膨張係数(ppm/K)の双方が好適な値となる。すなわち、熱容量(J/K/cm
3)は、目封止ハニカム構造体の温度上昇の抑制に有効なパラメータであり、平均熱膨張係数(ppm/K)は、目封止ハニカム構造体の耐熱衝撃性の向上に有効なパラメータである。そして、多孔体が、上記式(3)の関係を満たす場合には、温度上昇の抑制効果と耐熱衝撃性の向上効果のバランスを図ることができる。
【0052】
多孔体の気孔率が、20〜50%であることが好ましく、20〜45%であることが更に好ましく、25〜45%であることが特に好ましい。多孔体の気孔率が、20%未満であると、目封止ハニカム構造体の圧力損失が増大することがある。多孔体の気孔率が、50%超であると、目封止ハニカム構造体の隔壁が脆くなり欠落し易くなることがある。また、多孔体の気孔率が高すぎると、多孔体の熱容量が小さくなるため、目封止ハニカム構造体が温度上昇しやすくなることがある。多孔体の気孔率とは、目封止ハニカム構造体の隔壁の気孔率のことである。多孔体の気孔率は、JIS R 1634に準拠して、アルキメデス法により測定することができる。
【0053】
多孔体の平均細孔径が、5〜20μmであることが好ましく、8〜15μmであることが更に好ましく、8〜12μmであることが特に好ましい。多孔体の平均細孔径が、5μm未満であると、目封止ハニカム構造体の圧力損失が大きくなることがある。多孔体の平均細孔径が、20μm超であると、目封止ハニカム構造体をDPF等のフィルタとして用いた際に、排ガス中のPMの一部が隔壁を通過することがあり、当該フィルタの捕集効率が低くなることがある。多孔体の平均細孔径は、JIS R 1655に準拠して、水銀圧入法により測定することができる。
【0054】
また、目封止ハニカム構造体のハニカム構造部が、隔壁を有する柱状のハニカムセグメントを、複数個有し、複数個のハニカムセグメントの互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で接合されたセグメント構造であってもよい。セグメント構造のハニカム構造部を備えた目封止ハニカム構造体としては、例えば、
図7に示すような目封止ハニカム構造体200を挙げることができる。
図7に示す目封止ハニカム構造体200は、複数個のハニカムセグメント36が、互いの側面同士が対向するように隣接して配置された状態で、接合層37によって接合されたハニカム構造部34を備えたものである。ハニカムセグメント36は、第一端面41から第二端面42まで延びる流体の流路となる複数のセル32(セル32a,セル32b)を区画形成する多孔質の隔壁31及び隔壁31を取り囲むように配設された外壁38を有するものである。接合層37は、隣接して配置されるハニカムセグメント36の外壁38同士を接合するためのものである。この接合層37は、ハニカム構造部34に生じる熱応力を緩衝するための緩衝材としての機能を有していてもよい。
図7に示す目封止ハニカム構造体200では、複数個のハニカムセグメント36が接合された接合体の最外周に、外周壁33が配置されている。
【0055】
セグメント構造のハニカム構造部においては、複数のハニカムセグメントのうち、少なくとも1つのハニカムセグメントの隔壁が、主相としてα−Al
2O
3を含み、更にβ−スポジュメンを含む多孔体からなることが好ましい。セグメント構造のハニカム構造部においては、全てのハニカムセグメントの隔壁が、主相としてα−Al
2O
3を含み、更にβ−スポジュメンを含む多孔体からなるものであってよい。接合層については、従来公知のセグメント構造のハニカム構造部における接合層と同様に構成されたものを用いることができる。
【0056】
図7に示すような目封止ハニカム構造体200は、複数個のハニカムセグメント36を接合した接合体を得、得られた接合体の外周部を研削等によって加工したものであってもよい。接合体の外周部を加工することにより、当該接合体のセル32の延びる方向に直交する断面の形状を、円形等の所望の形状にすることができる。接合体の外周部を加工した後、最外周にセラミック材料を塗工することによって外周壁33を配置してもよい。
図7は、本発明の目封止ハニカム構造体の他の実施形態を流入端面側からみた模式的な斜視図である。
図7において、符号35は、セル32の開口部に配設された「目封止部」を示す。このような、所謂、セグメント構造の目封止ハニカム構造体であっても、
図1〜
図5に示すような、所謂、一体型の目封止ハニカム構造体と同様の作用効果を得ることができる。
【0057】
ハニカム構造部の隔壁の厚さについては特に制限はないが、100〜500μmであることが好ましく、150〜400μmであることが更に好ましく、150〜300μmであることが特に好ましい。隔壁の厚さをこのような範囲にすることにより、目封止ハニカム構造体の隔壁の強度を保ちつつ、圧力損失の上昇を抑制することができる。
【0058】
ハニカム構造部のセル密度については特に制限はないが、15〜100セル/cm
2であることが好ましく、30〜65セル/cm
2であることが更に好ましく、30〜50セル/cm
2であることが特に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、目封止ハニカム構造体をDPF等に用いた場合には、圧力損失を抑制しつつ、捕集効率を向上させることができる。
【0059】
ハニカム構造部に形成されるセルの形状については特に制限はない。ここで、「セルの形状」とは、ハニカム構造部のセルの延びる方向に直交する断面における、セルの形状のことである。セルの形状としては、例えば、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
【0060】
ハニカム構造部の形状は、特に限定されず、例えば、底面が円形の柱状(円柱形状)、底面がオーバル形状の柱状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の柱状等の形状とすることができる。
【0061】
ハニカム構造部の第一端面から第二端面までの長さ、及びハニカム構造部のセルの延びる方向に直交する断面の大きさは、本実施形態の目封止ハニカム構造体を排ガス浄化のフィルタとして用いた際に、最適な浄化性能を得るように適宜選択すればよい。例えば、ハニカム構造部の第一端面から第二端面までの長さは、100〜500mmであることが好ましく、100〜300mmであることが更に好ましい。ハニカム構造部のセルの延びる方向に直交する断面の面積は、7000〜70000mm
2であることが好ましく、7000〜30000mm
2であることが更に好ましい。
【0062】
ハニカム構造部の隔壁の表面及び隔壁の細孔のうちの少なくとも一方に、排ガス浄化用の触媒が担持されていてもよい。触媒としては、例えば、多孔質なγ−Al
2O
3に白金族金属を担持したものを挙げることができる。なお、ハニカム構造部の隔壁に担持された触媒は、隔壁(別言すれば、多孔体)とは異なる構成要素であるため、これまでに説明した「多孔体を構成する材料」には、当該触媒は含まないものとする。
【0063】
次に、本実施形態の目封止ハニカム構造体の製造方法について説明する。目封止ハニカム構造体の製造する際には、まず、主相としてα−Al
2O
3を含み、更にβ−スポジュメンを含む多孔体を作製するための成形原料を調製する。成形原料としては、成形原料を焼成することにより得られる焼成体(多孔体)中に、上記2物質が含まれ得るものであれば、特に制限はない。例えば、成形原料としては、Al
2O
3、Al(OH)
3、カオリン、タルク、LiOH・H
2O、Li
2CO
3、LiCl、コージェライト、フォルステライト、MgO、SiO
2等を混合した粉末を用いることができる。また、成形原料には、上述した原料に加えて、分散媒や添加剤を更に加えてもよい。
【0064】
成形原料に用いるAl
2O
3の粉末(以下、「Al
2O
3粉末」ともいう)は、その平均粒子径が20〜60μmであることが好ましく、20〜50μmであることが更に好ましく、30〜50μmであることが特に好ましい。Al
2O
3粉末の平均粒子径が大きすぎると、成形原料より作製した坏土の押出成形が困難になることがある。一方、Al
2O
3粉末の平均粒子径が小さすぎると、得られる目封止ハニカム構造体の初期の圧力損失が大きくなりすぎることがある。隔壁が、骨材及び結合材を有する多孔体からなるものの場合には、例えば、成形原料に用いるAl
2O
3粉末が、多孔体の骨材となる。
【0065】
成形原料に用いるその他の原料粉末は、その平均粒子径が0.01〜20μmであることが好ましく、0.01〜15μmであることが更に好ましく、0.01〜10μmであることが特に好ましい。その他の原料粉末の平均粒子径が大きすぎると、得られる目封止ハニカム構造体の機械的強度が不十分となることがある。その他の原料は、水などの分散媒に溶解するものであってもよい。
【0066】
添加剤としては、バインダー、造孔材等を挙げることができる。分散媒としては、水等を挙げることができる。
【0067】
バインダーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。
【0068】
原料粉末の粒子径及び配合量、並びに添加する造孔材粉末の粒子径及び配合量を調整することにより、所望の気孔率、平均細孔径の多孔体を得ることができる。
【0069】
次に、得られた成形原料を混練して坏土を形成する。坏土を形成する方法としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0070】
次に、得られた坏土を押出成形して、ハニカム成形体を作製する。押出成形は、所望のセル形状、隔壁厚さ、セル密度を有する口金を用いて行うことができる。次に、得られたハニカム成形体を乾燥させて、当該ハニカム成形体を乾燥させたハニカム乾燥体を得てもよい。乾燥方法は、特に限定されるものではないが、例えば、熱風乾燥、マイクロ波乾燥、誘電乾燥、減圧乾燥、真空乾燥、凍結乾燥等を挙げることができ、これらの中でも、誘電乾燥、マイクロ波乾燥又は熱風乾燥を単独で又は組合せて行うことが好ましい。また、乾燥条件としては、乾燥温度30〜150℃、乾燥時間1分〜2時間とすることが好ましい。
【0071】
次に、得られたハニカム成形体又は当該ハニカム成形体を乾燥したハニカム乾燥体のセルの開口部を、目封止材によって目封止する。セルの開口部を目封止する方法としては、セルの開口部に目封止材を充填する方法を挙げることができる。目封止材を充填する方法としては、従来公知の目封止ハニカム構造体の製造方法に準じて行うことができる。目封止材を形成するためのセラミック原料は、従来公知の目封止ハニカム構造体の製造方法において用いられるセラミック原料を用いることができるが、ハニカム成形体(或いは、ハニカム乾燥体)と同じセラミック原料を用いることが好ましい。なお、目封止材によって形成される目封止部の気孔率や細孔径などを調節するために、セラミック原料粉末の粒子径及び配合量、並びに添加する造孔材粉末の粒子径及び配合量について適宜変更してもよい。
【0072】
次に、目封止材をセルの開口部に充填したハニカム成形体(或いは、ハニカム乾燥体)を焼成する。得られたハニカム焼成体が、本実施形態の目封止ハニカム構造体となる。焼成温度は、1200〜1400℃が好ましく、1250〜1350℃が更に好ましい。また、焼成時間は、1〜10時間程度とすることが好ましい。焼成は、例えば、大気中、水蒸気雰囲気中、炭化水素ガス燃焼雰囲気中にて行うことができる。
【0073】
ハニカム成形体に目封止部を形成する前に、ハニカム成形体を焼成してハニカム焼成体を得、得られたハニカム焼成体のセルの開口部に目封止部を形成した後、更に焼成することによって目封止ハニカム構造体を得ることもできる。以上のようにして、本実施形態の目封止ハニカム構造体を製造することができる。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0075】
(実施例1)
実施例1においては、まず、α−Al
2O
3粉末、カオリン粉末、タルク粉末、及びLiOH・H
2O(水酸化リチウム一水和物)を用いて、成形原料を調製した。α−Al
2O
3粉末の使用量は3500gとし、カオリン粉末の使用量は1365gとし、タルク粉末の使用量は660gとし、LiOH・H
2Oの使用量は40gとした。表1に、実施例1の成形原料の配合処方(単位:g)を示す。α−Al
2O
3粉末の平均粒子径は32μmであった。カオリン粉末の平均粒子径は3μmであった。タルク粉末の平均粒子径は3μmであった。実施例1においては、表1の配合処方に示す原料の他に、造孔材として澱粉を350g、バインダーとしてメチルセルロースを200g、及び適量の水を添加した。
【0076】
【表1】
【0077】
次に、得られた成形原料をニーダーで混練し、次に、真空土練機で土練して、坏土を形成した。次に、得られた坏土を押出成形して、ハニカム成形体を作製した。ハニカム成形体は、焼成後において、隔壁の厚さが300μmとなり、セル密度が46.5セル/cm
2となるものとした。ハニカム成形体のセルの形状は、焼成後において、正方形となるものとした。次に、ハニカム成形体を乾燥させて、ハニカム乾燥体を得た。乾燥は、まず、マイクロ波乾燥を行い、その後、熱風乾燥を行った。次に、得られたハニカム乾燥体のセルの開口部に目封止部を配設した。次に、得られたハニカム乾燥体を脱脂した。脱脂は、大気中、450℃で5時間行った。次に、脱脂したハニカム乾燥体を焼成して、目封止ハニカム構造体を得た。焼成は、大気中、1300℃で4時間行った。
【0078】
実施例1の目封止ハニカム構造体を構成する隔壁(多孔体)の組成を、X線回折(XRD)にて測定した。その結果、実施例1の目封止ハニカム構造体を構成する隔壁は、主相としてα−Al
2O
3を含み、更にβ−スポジュメンを含む多孔体からなるものであった。X線回折(XRD)による測定結果を、表2に示す。なお、より具体的には、隔壁を構成する多孔体は、α−Al
2O
3、MgAl
2O
4、β−スポジュメン、及びコージェライトを含むものであった。多孔体中のα−Al
2O
3の質量割合は73質量%であった。多孔体中のMgAl
2O
4の質量割合は12質量%であった。多孔体中のβ−スポジュメンの質量割合は4質量%であった。多孔体中のコージェライトの質量割合は11質量%であった。多孔体中の、α−Al
2O
3、MgAl
2O
4、β−スポジュメン、及びコージェライトの質量比率(質量%)を、表2に示す。なお、実施例1の目封止ハニカム構造体の隔壁は、骨材、及び骨材間に細孔を形成した状態で骨材同士を結合する結合材を有する多孔体からなるものであった。
【0079】
また、多孔体を構成する材料100質量%に対する、α−Al
2O
3とMgAl
2O
4の合計の質量割合は、85質量%であった。表2の「α−Al
2O
3とMgAl
2O
4の合計の質量割合(%)」の欄に、多孔体を構成する材料100質量%に対する、α−Al
2O
3とMgAl
2O
4の合計の質量割合を示す。
【0080】
【表2】
【0081】
得られた目封止ハニカム構造体を構成する隔壁(多孔体)について、以下の方法で、真密度(g/cm
3)、熱容量(J/K/cm
3)、熱膨張係数(ppm/K)、気孔率(%)、平均細孔径(μm)を測定した。測定結果を表3に示す。また、表3の「F」の欄に、「C−0.007×α
2」の値を示す。ここで、Cは、多孔体を構成する材料の600℃における熱容量(J/K/cm
3)を示し、αは、多孔体の40〜800℃における平均熱膨張係数(ppm/K)を示す。
【0082】
真密度(g/cm
3)、及び気孔率(%)は、アルキメデス法(JIS R 1634)により測定した。真密度(g/cm
3)は、多孔体を構成する材料の真密度(g/cm
3)である。平均細孔径(μm)は、水銀圧入法(JIS R 1655)により測定した。熱膨張係数(ppm/K)は、示差検出型の熱膨張計にて、40〜800℃の多孔体の平均熱膨張係数(ppm/K)を測定することにより求めた。
【0083】
熱容量(J/K/cm
3)は、以下の方法で測定した。まず、アルバック理工社製の断熱型比熱測定装置を用いて、多孔体を構成する材料の600℃における単位質量あたりの熱容量(J/K/g)を測定した。次に、得られた単位質量あたりの熱容量(J/K/g)に、室温においてアルキメデス法で測定した多孔体を構成する材料の真密度(g/cm
3)を乗算することで、多孔体を構成する材料の単位体積あたりの熱容量(J/K/cm
3)を算出した。
【0084】
また、実施例1の目封止ハニカム構造体を構成する隔壁(多孔体)の強度(MPa)を、以下の方法で測定した。測定結果を表3に示す。まず、目封止ハニカム構造体の隔壁を所定の大きさに切り出し、強度測定用の試験片を作製した。作製した試験片を用いて、3点曲げ試験にて強度(MPa)を測定した。
【0085】
【表3】
【0086】
(実施例2〜5)
表1に示すような成形原料の配合処方とした以外は、実施例1と同様の方法で目封止ハニカム構造体を製造した。ただし、実施例5においては、表1に示す成形原料の他に添加する造孔材(澱粉)の量を、350gから50gに変更して成形原料を調製した。表1に示すように、実施例2〜4においては、成形原料にコージェライト粉末を用いた。コージェライト粉末の平均粒子径は2μmであった。実施例2〜5の目封止ハニカム構造体の隔壁は、骨材、及び骨材間に細孔を形成した状態で骨材同士を結合する結合材を有する多孔体からなるものであった。隔壁を構成する多孔体の組成を、X線回折(XRD)にて測定した。測定結果を表2に示す。
【0087】
実施例2〜5の目封止ハニカム構造体を構成する隔壁(多孔体)について、実施例1と同様の方法で、真密度(g/cm
3)、熱容量(J/K/cm
3)、熱膨張係数(ppm/K)、気孔率(%)、平均細孔径(μm)を測定した。測定結果を表3に示す。また、表3の「F」の欄に、「C−0.007×α
2」の値を示す。また、実施例2〜5の目封止ハニカム構造体を構成する隔壁(多孔体)の強度(MPa)を、実施例1と同様の方法で測定した。測定結果を表3に示す。
【0088】
(比較例1)
比較例1においては、まず、α−Al
2O
3粉末、TiO
2粉末、タルク粉末、及びマイカ粉末を用いて、成形原料を調製した。α−Al
2O
3粉末の使用量は2550gとし、TiO
2粉末の使用量は1950gとし、タルク粉末の使用量は350gとし、マイカ粉末の使用量は150gとした。α−Al
2O
3粉末の平均粒子径は32μmであった。TiO
2粉末の平均粒子径は0.4μmであった。タルク粉末の平均粒子径は3μmであった。マイカ粉末の平均粒子径は42μmであった。比較例1においては、上述した原料の他に、造孔材として澱粉を50g、バインダーとしてメチルセルロースを200g、及び適量の水を添加した。このように調製した成形原料を用い、且つ、ハニカム乾燥体の焼成を、大気中、1500℃で4時間行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で目封止ハニカム構造体を製造した。
【0089】
(比較例2)
比較例2においては、まず、平均粒子径が12μmのα−SiC粉末を3000g、平均粒子径が2μmのα−SiC粉末を2000g、バインダーとしてのメチルセルロースを300g、適量の水を添加して成形原料を調製した。このように調製した成形原料を用い、且つ、ハニカム乾燥体の焼成を、アルゴン雰囲気中、2200℃で2時間行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で目封止ハニカム構造体を製造した。
【0090】
(比較例3)
比較例3においては、まず、カオリン粉末を1110g、タルク粉末を2135g、アルミナ粉末を1210g、シリカ粉末を540g、この他に造孔材を50g、バインダーとしてのメチルセルロースを200g、水を添加して成形原料を調製した。カオリン粉末の平均粒子径は3μmであった。タルク粉末の平均粒子径は24μmであった。アルミナ粉末の平均粒子径は6μmであった。シリカ粉末の平均粒子径は21μmであった。このように調製した成形原料を用い、且つ、ハニカム乾燥体の焼成を、大気中、1420℃で4時間行ったこと以外は、実施例1と同様の方法で目封止ハニカム構造体を製造した。
【0091】
比較例1〜3の目封止ハニカム構造体を構成する隔壁(多孔体)について、実施例1と同様の方法で、真密度(g/cm
3)、熱容量(J/K/cm
3)、熱膨張係数(ppm/K)、気孔率(%)、平均細孔径(μm)を測定した。測定結果を表3に示す。また、表3の「F」の欄に、「C−0.007×α
2」の値を示す。また、比較例1〜3の目封止ハニカム構造体を構成する隔壁(多孔体)の強度(MPa)を、実施例1と同様の方法で測定した。測定結果を表3に示す。
【0092】
(結果)
比較例1の目封止ハニカム構造体は、マイクロクラックが多いため、低強度なものであった。比較例2,3の目封止ハニカム構造体は、熱容量が小さいものであった。実施例1〜5の目封止ハニカム構造体の全ては、比較例1の目封止ハニカム構造体に比して、マイクロクラックの発生が抑制されていた。また、実施例1〜5の目封止ハニカム構造体の全ては、比較例1の目封止ハニカム構造体に比して、強度が高かった。また、実施例1〜5の目封止ハニカム構造体の全ては、比較例1〜3に比して、熱容量が高かった。ここで、熱容量は、目封止ハニカム構造体の温度上昇の抑制に有効なパラメータであり、熱膨張係数は、目封止ハニカム構造体の耐熱衝撃性の向上に有効なパラメータである。したがって、実施例1〜5の目封止ハニカム構造体は、比較例1〜3の目封止ハニカム構造体と比較して、温度上昇の抑制効果と耐熱衝撃性の向上効果のバランスが良好なものであることが分かる。表3に示す「F」の値を、実施例1〜5及び比較例1〜3で比較すると、実施例1〜5の目封止ハニカム構造体は、当該「F」の値が、4.00以上であった。したがって、「F」の値が4.00以上であると、目封止ハニカム構造体の温度上昇の抑制効果と耐熱衝撃性の向上効果のバランスを図ることができると推察される。