特許第6231915号(P6231915)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6231915表面処理した無機化合物及びその製造方法並びにその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231915
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】表面処理した無機化合物及びその製造方法並びにその用途
(51)【国際特許分類】
   C09C 3/06 20060101AFI20171106BHJP
   C01B 13/14 20060101ALI20171106BHJP
   C01G 9/02 20060101ALI20171106BHJP
   C09C 1/00 20060101ALI20171106BHJP
   C09C 3/08 20060101ALI20171106BHJP
   C09C 3/10 20060101ALI20171106BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   C09C3/06
   C01B13/14 A
   C01G9/02 A
   C09C1/00
   C09C3/08
   C09C3/10
   C09K3/00 104Z
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-57731(P2014-57731)
(22)【出願日】2014年3月20日
(65)【公開番号】特開2015-183011(P2015-183011A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2017年1月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000354
【氏名又は名称】石原産業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 満
(72)【発明者】
【氏名】飯田 正紀
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳也
(72)【発明者】
【氏名】小川 誠
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−200698(JP,A)
【文献】 特開昭51−023312(JP,A)
【文献】 特開2008−201825(JP,A)
【文献】 特表2005−519163(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/053274(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09C 1/00〜3/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも窒化炭素を粒子表面に有する無機化合物を含む、熱伝導性フィラー
【請求項2】
少なくともメラミン及び/又はその重合化合物を粒子表面に有する無機化合物を含む、熱伝導性フィラー
【請求項3】
請求項1又は2に記載の熱伝導性フィラーを含む放熱性組成物。
【請求項4】
少なくとも窒化炭素を粒子表面に有する無機化合物を含む、紫外線遮蔽材
【請求項5】
少なくともメラミン及び/又はその重合化合物を粒子表面に有する無機化合物を含む、紫外線遮蔽材
【請求項6】
少なくとも窒化炭素を粒子表面に有する無機化合物を含む、化粧料
【請求項7】
少なくともメラミン及び/又はその重合化合物を粒子表面に有する無機化合物を含む、化粧料
【請求項8】
メラミンと無機化合物及び/又はその前駆体化合物とを混合し、450〜1000℃の温度で焼成して、少なくとも窒化炭素を粒子表面に存在させる、無機化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化炭素等を表面処理した無機化合物粒子及びその製造方法並びにその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
無機化合物として、金属化合物、半金属化合物あるいは非金属化合物が工業上頻繁に使用されている。例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化アルミニウム、炭化チタン等を、白色顔料、黒色顔料、紫外線遮蔽材、熱伝導性フィラー、充填剤、吸着剤、光触媒、触媒、セラミックス原料、導電材、圧電材料、ガスセンサー、電子写真感光材料、バリスタ、蛍光体、エミッタ、電子デバイス等種々の用途に用いており、また、化粧料、外用剤、塗料、樹脂組成物、放熱性組成物等に配合して用いている。
【0003】
それぞれの用途に応じて、無機化合物の粒子表面に別の無機化合物や有機化合物を処理して性質、特性、機能等を改善している。例えば、特許文献1には酸化亜鉛粒子の表面にケイ素酸化物からなる高密度の被覆層を形成して、純水や硫酸水溶液への亜鉛溶解度を抑制することを開示している。また、特許文献2には、酸化亜鉛粒子を、Mg、Co、Ca及びNiからなる群より選択される少なくとも一つの金属化合物により表面処理すると、硬度が低く、かつ、放熱性及び絶縁性に優れた低導電性の酸化亜鉛が得られることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−302015号公報
【特許文献2】特開2011−230947号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の従来技術では、酸化亜鉛の表面にケイ素酸化物やマグネシウム等の金属化合物を被覆しているため水溶解性、光半導性、導電性等はある程度改善されるものの、ケイ素酸化物等の被覆物が非晶質あるいは結晶性の低いものであるため、酸化亜鉛の熱伝導性が低下し易く、絶縁性の改善は認められないなどの問題がある。また、ケイ素酸化物等の金属化合物が酸化亜鉛粒子の表面に強固に被覆されていないために、樹脂等に配合する際に力が加わると酸化亜鉛粒子の表面から剥離してしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、高い硬度や抵抗を有し、耐熱性等もある窒化炭素の表面処理方法を種々検討した結果、メラミンと無機化合物及び/又はその前駆体化合物とを混合し、450〜1000℃の温度で焼成すると、無機化合物の粒子表面に結晶性の高い窒化炭素を処理することができること、このものは粉末抵抗が高く、樹脂組成物に配合した時に高い熱伝導率と高い絶縁破壊電圧を示すことなどを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、(1)少なくとも窒化炭素を粒子表面に有する無機化合物、
(2)メラミンと無機化合物及び/又はその前駆体化合物とを混合し、450〜1000℃の温度で焼成して、少なくとも窒化炭素を粒子表面に存在させる、無機化合物の製造方法、
(3)前記の酸化亜鉛を含む熱伝導性フィラー、紫外線遮蔽材などである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の無機化合物粒子は、結晶性の高い窒化炭素を強固に表面処理しているため、無機化合物粒子に高い硬度や抵抗を有し、優れた耐熱性等を付与することが可能である。しかも、粉末抵抗が高く、樹脂組成物に配合した時に高い熱伝導率と絶縁破壊電圧を示すことから、熱伝導性フィラーとして有用である。
また、本発明の製造方法は、メラミンと無機化合物及び/又はその前駆体化合物とを混合し、450〜1000℃の温度で焼成して、少なくとも窒化炭素を粒子表面に存在させる方法であり、安価かつ短時間で強固な窒化炭素の表面処理が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明において、無機化合物は、典型金属元素や遷移金属元素の金属単体あるいは金属化合物、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、テルル等の半金属単体あるいは半金属化合物、更には非金属化合物等であり、金属あるいは半金属の酸化物、水酸化物、窒化物、炭化物、リン酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ケイ酸塩等を含む。具体的には、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化アルミニウム、炭化チタン等が好ましい。無機化合物粒子の形状は特に制限がなく、板状、薄片状、柱状、針状、粒状等でも良く、また、大きさにも特に制限はなく、0.0002〜1000μm程度であれば良い。
【0010】
酸化亜鉛は、六方晶、立方晶、立方晶面心構造いずれかのX線回折パターンを示すZnOを少なくとも50重量%含むものであり、水酸化亜鉛や製造の際に使用する硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等の亜鉛化合物が含まれていても良い。また、製造の際に使用する亜鉛化合物を構成していた硫酸根、硝酸根、塩素、酢酸等が含まれていても良く、また、カルボン酸、その塩、アルカリ金属化合物等の材料が含まれていても良い。酸化亜鉛粒子の形状は特に制限がなく、板状、薄片状、柱状、針状、粒状等でも良く、また、大きさにも特に制限はなく、0.0002〜1000μm程度であれば良い。酸化亜鉛粒子の形状は、電子顕微鏡観察により行うことができ、粒子径はメジアン径(D50)で表して、0.1〜1000μmのものであることが好ましく、1〜100μmがより好ましい。上記メジアン径(D50)は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(堀場製作所社製 LA−910)によって求める。
【0011】
本発明の無機化合物は、その粒子表面に少なくとも窒化炭素を有する。窒化炭素は、窒素原子と炭素原子とを有しており、それらの原子の好ましいモル比は、炭素原子に対する窒素原子の比をN/Cで表した場合に、1.33≧N/C>0であり、より好ましくは1.33≧N/C>0.25である。結晶性窒化炭素のN/Cの最大値は4/3であり、窒素原子と炭素原子とが交互に結合した場合にこの最大値をとる。N/Cが4/3以下であることにより、窒化炭素の結晶性がより高くなる。窒素原子が結晶内に均一に配置されている場合、N/Cが0.25以上であると、グラファイト構造の六員環の原子のうちの少なくとも1つは窒素原子となり、窒化炭素に含まれる全ての六員環構造に窒素原子が含まれることにより、グラファイト構造を有しない構造となる。本発明では、無機化合物粒子の表面に処理し易いことから、グラファイト状窒化炭素Cが好ましい。また、立方晶、六方晶等の結晶性の高い窒化炭素が好ましいが、アモルファスでも良い。窒素原子と炭素原子とのモル比は、CHN分析装置で測定することができる。窒化炭素における窒素及び炭素の含有量は、40モル%以上であると好ましく、60モル%以上であるとより好ましく、例えば、水素、酸素及びホウ素などが含まれていても良い。窒化炭素の処理量は、無機化合物に対して窒化炭素をCに換算して、0.01〜20.0質量%が好ましく、0.1〜15.0質量%がより好ましく、0.2〜10.0質量%が更に好ましい。窒化炭素は、無機化合物粒子の表面に存在していれば良く、表面に被覆されているのが好ましい。窒化炭素の存在状態は、電子顕微鏡観察により確認することができ、窒化炭素の厚みも算出することができる。窒化炭素の厚みは、1〜500nm程度が好ましく、2〜100nm程度がより好ましい。更に、無機化合物の粒子表面にシリカ、アルミナ等の無機化合物やシロキサン等の有機化合物の表面処理剤を被覆していても良く、窒化炭素を処理した酸化亜鉛の粒子表面にシリカ、アルミナ等の無機化合物やシロキサン等の有機化合物の表面処理剤を被覆していても良い。
【0012】
本発明の無機化合物は、下記の方法で測定した粉体抵抗値が、1×10Ω・cm以上であり、好ましくは1×1010Ω・cm以上であり、より好ましくは1×1012Ω・cm以上である。このように粉末抵抗が高いため、樹脂組成物等に用いたときに、その絶縁破壊電圧を高めることができる。
[粉体抵抗値測定方法]
フィラー0.3gを10MPaの圧力で円柱状(18mmφ)に成形し、直流電圧印加方式の絶縁抵抗試験機(Model 3154 HIOKI社製)を用いて抵抗を測定し、下式により粉体抵抗値を算出した。
粉体抵抗値=測定値×円柱の断面積/円柱の厚み
【0013】
窒化炭素を表面処理する方法として、少なくとも無機化合物及び/又はその前駆体化合物と、窒素原子と炭素原子とを有する化合物及び/又は炭素原子を有する化合物と窒素原子を有する化合物との混合物を焼成することにより、粒子表面に少なくとも窒化炭素を存在させることができる。前駆体化合物は、乾燥や焼成により無機化合物となる化合物である。窒化炭素の原料は、窒素原子と炭素原子とを有する化合物、及び/又は、炭素原子を有する化合物と窒素原子を有する化合物との混合物である。所望の窒化炭素を容易に得る観点から、窒素含有炭化水素が好ましい。窒素含有炭化水素は、炭化水素の水素原子及び炭素原子の一部が窒素原子を有する1価の基に置換されたものである。窒素含有炭化水素としては、特に限定されないが、例えば、シアン化水素、アセトニトリル、アクリロニトリルなどのシアノ基を有する炭化水素、メラミン、ピリジンなど環状の窒素含有炭化水素が挙げられる。これらのうち、窒素原子と炭素原子との間に結合を有するものが好ましく、その結合が二重結合又は三重結合であるものがより好ましい。窒素原子と炭素原子との二重結合を含む窒素含有炭化水素としては、例えば、メラミン、ピリジンが挙げられ、メラミンがより好ましい。窒素原子と炭素原子との三重結合を含む窒素含有炭化水素としては、例えば、上述のシアノ基を有する炭化水素が挙げられる。窒素含有炭化水素以外の窒素原子と炭素原子とを有する化合物としては、窒素原子と炭素原子との間に結合を有するものが好ましく、その結合が二重結合又は三重結合であるものがより好ましい。窒素原子と炭素原子との二重結合を含む化合物としては、例えば、塩化シアヌル、シアヌル酸が挙げられる。窒素原子と炭素原子との三重結合を含む化合物としては、例えば、BrCN、ICNが挙げられる。窒素原子と炭素原子とを有する化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0014】
炭素原子を有する化合物と窒素原子を有する化合物との混合物を原料とする場合、炭素原子を有する化合物としては、例えば、アルコール、カルボン酸等の炭化水素が挙げられ、窒素原子を有する化合物としては、アンモニアなどが挙げられる。これらの原料の混合比は、製造する窒化炭素のN/Cによって調整すればよく、原料に含まれる炭素原子に対する窒素原子のモル比N/Cが、N/C≧0.25となるような混合比であることが好ましく、より好ましくはN/C≧1.3である。炭素原子を有する化合物と窒素原子を有する化合物とは、それぞれ、1種を単独又は2種以上を組み合わせて用いられる。
【0015】
無機化合物及び/又はその前駆体化合物と窒化炭素の原料を混合するには、通常の混合機を用いることができる。例えばプロシェアミキサー、レディーゲミキサー、バーチカルグラニュレータ、プラネタリーミキサー、ホモジナイザー、ヘンシェルミキサー等の混合機が挙げられる。また、混合する前に原料を粉砕しても良く、粉砕機の中で原料を混合しても良い。粉砕機はハンマーミル、ピンミル等の衝撃粉砕機、ローラーミル、パルペライザー、解砕機等の摩砕粉砕機、ロールクラッシャー、ジョークラッシャー等の圧縮粉砕機、ジェットミル等の気流粉砕機等を用いることができる。得られた混合物は、必要に応じて乾燥しても良く、乾燥温度は適宜設定することができるが、80〜200℃程度が適当である。
【0016】
次に、混合物を焼成して、窒化炭素を表面に有する無機化合物粒子を製造する。焼成は、窒化炭素に変性する条件であれば良く、例えば、200〜1300℃程度の温度が適当であり、500〜1200℃が好ましく、800〜1000℃がより好ましい。雰囲気は、大気中でも良いが、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気が好ましく、水素、一酸化炭素等の還元性ガス雰囲気でも良い。焼成時間は適宜設定することができ、具体的には10分〜10時間程度で行える。焼成は、通常の電気炉、バーナー炉等の焼成炉で行うことができる。
【0017】
また、別の本発明は、少なくともメラミン及び/又はその重合化合物を粒子表面に有する無機化合物であり、前記の窒化炭素を粒子表面に有する無機化合物を製造するための中間体、有機−無機ハイブリッド化合物等として有用である。メラミンは、構造の中心にトリアジン環、その周辺にアミノ基3個を持つ有機窒素化合物である。表面に存在するメラミンを加熱すると、アンモニアを発生しながら分解し、重合して、メレム、メロン等の重合化合物を粒子表面に存在させることができる。メラミン、その重合化合物の存在量は、適宜設定することができ、0.01〜20.0質量%が好ましく、0.1〜15.0質量%がより好ましく、0.2〜10.0質量%が更に好ましい。無機化合物としては前記の金属化合物、半金属化合物、非金属化合物等を用いることができ、特に、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化アルミニウム、炭化チタンが好ましい。
【0018】
メラミンと無機化合物及び/又はその前駆体化合物とを混合すると、少なくともメラミンを粒子表面に存在させることができる。前記の混合は、乾式混合であっても良く、湿式混合でも良く、前述の混合機を用いることができる。湿式混合が無機化合物の粒子表面にメラミンを均一に処理することができることから好ましく、無機化合物及び/又はその前駆体化合物とメラミンを水系スラリー状で混合するのが好ましい。メラミンと無機化合物及び/又はその前駆体化合物とを混合し、乾燥し及び/又は焼成すると、少なくともメラミン及び/又はその重合化合物を粒子表面に存在させることができる。乾燥温度、焼成温度は、適宜設定することができ、例えば、乾燥は50〜150℃程度が適当であり、焼成温度は重合化合物の重合度に応じて150〜450℃程度が適当である。乾燥、焼成の雰囲気も適宜設定することができ、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス、水素等の還元ガス、酸素含有ガス等の雰囲気下で行うことができる。
【0019】
次に、メラミンと無機化合物及び/又はその前駆体化合物とを混合し、450〜1000℃の温度で焼成すると、少なくとも窒化炭素を粒子表面に存在させることができる。焼成温度は、450〜700℃程度であると窒化炭素の処理量が多いため好ましい。焼成の雰囲気も適宜設定することができ、例えば、窒素、アルゴン等の不活性ガス、水素等の還元ガス、酸素含有ガス等の雰囲気下で行うことができる。焼成時間は適宜設定することができ、具体的には10分〜10時間程度で行える。焼成は、通常の電気炉、バーナー炉等の焼成炉で行うことができる。
【0020】
無機化合物は、窒化炭素の表面処理の前及び/又は表面処理の後に、その粒子表面に必要に応じてケイ素、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ等の酸化物あるいはそれらのリン酸塩等の無機化合物の被覆層を設けることもできる。また、溶媒、塗料やプラスチックス等への分散性を付与するなどの目的で、有機化合物を被覆しても良く、前記の無機化合物と有機化合物の両者を被覆しても良い。有機化合物としては、例えば、(1)有機ケイ素化合物((a)オルガノポリシロキサン類(ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン、メチルメトキシポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンジオール、ジメチルポリシロキサンジハイドロジェン等又はそれらの共重合体)、(b)オルガノシラン類(アミノシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン、ビニルシラン、メルカプトシラン、クロロアルキルシラン、アルキルシラン、フルオロアルキルシラン等又はそれらの加水分解生成物)、(c)オルガノシラザン類(ヘキサメチルシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等)、(2)有機金属化合物((a)有機チタニウム化合物(アミノアルコキシチタニウム、リン酸エステルチタニウム、カルボン酸エステルチタニウム、スルホン酸エステルチタニウム、チタニウムキレート、亜リン酸エステルチタニウム錯体等)、(b)有機アルミニウム化合物(アルミニウムキレート等)、(c)有機ジルコニウム化合物(カルボン酸エステルジルコニウム、ジルコニウムキレート等)等)、(3)ポリオール類(トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等)、(4)アルカノールアミン類(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等)又はその誘導体(酢酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩等)、(5)高級脂肪酸類(ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸等)又はその金属塩(アルミニウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等)、(6)高級炭化水素類(パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等)又はその誘導体(パーフルオロ化物等)が挙げられる。これらの有機化合物は1種を用いても、2種以上を積層又は混合して用いても良い。化粧料に用いる場合は、オルガノポリシロキサン類、高級脂肪酸類を用いるのが好ましい。無機化合物、有機化合物の被覆量は、無機化合物粒子に対し、0.1〜50重量%の範囲が好ましく、0.1〜30重量%の範囲が更に好ましい。無機化合物の粒子表面に前記の無機化合物や有機化合物を被覆させるには、無機化合物の水性スラリー中で、無機化合物あるいは有機化合物を添加し中和するなどして被覆することができる。また、有機化合物を被覆するには別の方法として、前述の乾式粉砕の際に有機化合物を添加し混合することもできる。
【0021】
本発明の表面処理した無機化合物、特に酸化亜鉛、酸化チタン、酸化鉄は、紫外線遮蔽能があるため紫外線遮蔽材に用いられる。また、紫外線遮蔽材、白色顔料、充填材等として、日焼け止め化粧料、基礎化粧料等の化粧料に適量配合して用いられる。例えば、前記の無機化合物以外に、通常化粧料の用いられる公知の成分、例えば、(1)溶媒(水、低級アルコール類等)、(2)油剤(高級脂肪酸類、高級アルコール類、オルガノポリシロキサン類(シリコーンオイル)、炭化水素類、油脂類等)、(3)界面活性剤(アニオン性、カチオン性、両性、非イオン性等)、(4)保湿剤(グリセリン類、グリコール等のポリオール系、ピロリドンカルボン酸類等の非ポリオール系等)(5)有機紫外線吸収剤(ベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体等)、(6)酸化防止剤(フェノール系、有機酸又はその塩、酸アミド系、リン酸系等)、(7)増粘剤、(8)香料、(9)着色剤(顔料、色素、染料等)、(10)生理活性成分(ビタミン類、ホルモン類、アミノ酸類等)、(11)抗菌剤等が配合されていても良い。化粧料の様態は、固形状、液状、ジェル状等特に制限なく、液状やジェル状の場合、その分散形態も油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、油型等のいずれでも良い。化粧料中の酸化亜鉛の配合量は、0.1〜50重量%の範囲が好ましい。
【0022】
本発明の放熱性組成物は、上記の表面処理した無機化合物、特に酸化亜鉛、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、炭化ケイ素等を熱伝導性フィラーとして含有したものであり、樹脂組成物、グリース組成物、塗料組成物などが挙げられる。また、それらを用いて形成するシート、ゲル、エラストマー、プラスチックなどであっても良い。本発明の放熱性組成物中の上記無機化合物の配合量は、目的とする熱伝導性や樹脂組成物の硬度等、樹脂組成物の性能に合わせて任意に決定することができる。上記無機化合物の熱伝導性を十分に発現させるためには、樹脂組成物中の固形分全量に対して1体積%以上が好ましく、5体積%以上がより好ましく、10体積%以上が更に好ましく、30体積%以上が最も好ましい。このようにして、熱伝導率が好ましくは0.5W/m・K以上とすることができ、より好ましくは1.0W/m・K以上、更に好ましくは2.0W/m・K以上とすることができる。具体的には、熱伝導性フィラー20体積%:エポキシ樹脂80体積%で配合した樹脂組成物において、樹脂組成物の熱伝導率を1.0W/m・K以上、絶縁破壊電圧を4kV/mm以上とすることができる。
【0023】
放熱性樹脂組成物の熱伝導率は次のようにして求めることができる。無機化合物と樹脂を混練し、形状が10φ×1t(mm)のペレットになるように研磨し、次の計算式により熱伝導率を求める。
熱伝導率=熱拡散率×比熱×比重
・熱拡散率:JIS R 1611に準拠し、雰囲気温度25℃中、レーザーフラッシュ法(熱定数測定装置TC−7000 アルバック理工製)により測定。
・比熱:JIS K 7123に準拠し、DSC(示差走査熱量測定法 DSC6200 SII製)により測定。
・比重:JIS K 7112に準拠し、水中置換法により測定。
【0024】
また、放熱性樹脂組成物の絶縁破壊電圧は次のようにして求めることができる。無機化合物と樹脂を混練し、形状が50mm×50mm、厚さ1〜2mmの試験片を準備し、JIS C2110−1(商用周波数交流電圧印加による試験)に準拠して、絶縁耐力総合試験装置・高圧耐圧試験装置(YHA/D‐30K‐2KDR 山菱電気社製)を用いて絶縁破壊電圧を測定する。試験方法は短時間法で、昇圧速度は、10〜20秒で破壊する速度、電極形状は25mmφ円柱/ 75mmφ円柱とする。また、試験雰囲気は絶縁油中とし、絶縁油には谷口石油製 高圧絶縁油RAを用いた。絶縁破壊電圧は、測定値を各試験片の厚みで除して算出した。
【0025】
本発明の放熱性組成物は、電子機器などに取り付けて効率よく放熱する材料として用いることができる。なお、本発明の放熱性組成物には、本発明の無機化合物以外に、その他の成分を併用して使用することもでき、例えば、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム等の金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化チタン、金属ケイ素、ダイヤモンド等の放熱性フィラー、樹脂、界面活性剤等を挙げることができる。
【0026】
放熱性樹脂組成物は、上記の無機化合物を樹脂と混合して使用することができる。使用する樹脂は、熱可塑性樹脂であっても熱硬化性樹脂であっても良く、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素樹脂、ポリメタクリル酸メチル、エチレン・アクリル酸エチル共重合体(EEA)樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)樹脂、エポキシ、フェノール、液晶樹脂(LCP)、シリコン樹脂、アクリル樹脂等の樹脂を挙げることができる。放熱性グリース組成物とする場合、鉱油又は合成油を含有する基油と混合する。合成油としてα−オレフィン、ジエステル、ポリオールエステル、トリメリット酸エステル、ポリフェニルエーテル、アルキルフェニルエーテル、シリコーンオイル等が使用できる。また、放熱性塗料組成物とする場合、樹脂は硬化性を有するものであっても、硬化性を有さないものであっても良い。塗料は、有機溶媒を含有する溶剤系のものであっても、水中に樹脂が溶解又は分散した水系のものであっても良い。
【0027】
本発明の放熱性組成物は、(1)熱可塑性樹脂と上記無機化合物とを溶融状態で混練して熱成型用の樹脂組成物とする、(2)熱硬化性樹脂と上記無機化合物とを混練後、加熱硬化させて樹脂組成物とする、(3)樹脂溶液又は分散液中に上記酸化亜鉛を分散させて塗料組成物、グリース組成物とすることができる。
【実施例】
【0028】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0029】
実施例1
純水90mlにメラミン(ナカライテスク社製、特級)6.3gを添加し、100℃に昇温しメラミンを溶解した。その溶液に酸化亜鉛(六角板状)10gを添加し、1時間で20℃まで降温させ、メラミンを再析出させた。そのろ過し洗浄し、乾燥し、乳鉢粉砕して、メラミンを表面処理した酸化亜鉛(試料A)を得た。
【0030】
実施例2
実施例1で得られた試料Aを電気炉で400℃の温度で2時間焼成して、酸化亜鉛(試料B)を得た。
【0031】
実施例3
実施例1で得られた試料Aを電気炉で550℃の温度で2時間焼成して、酸化亜鉛(試料C)を得た。
【0032】
実施例4
実施例1で得られた試料Aを電気炉で700℃の温度で2時間焼成して、酸化亜鉛(試料D)を得た。
【0033】
実施例5
メラミン(ナカライテスク社製、特級)6.3gと酸化亜鉛(六角板状)10gを乳鉢で10分間混合して、メラミンを表面処理した酸化亜鉛(試料E)を得た。
【0034】
実施例6
実施例5で得られた試料Eを電気炉で550℃の温度で2時間焼成して、酸化亜鉛(試料F)を得た。
【0035】
比較例1
実施例1で用いた酸化亜鉛(六角板状)を比較試料Gとして用いた。
【0036】
比較例2
比較例2の試料Gを電気炉で550℃の温度で2時間焼成して、酸化亜鉛(試料H)を得た。
【0037】
実施例で得た試料A、B、C、FのCNH分析を行った結果を表1に示す。この結果から、試料Aはメラミンを表面処理していること、試料Bはメラミンの重合化合物を表面処理していること、試料C、Fは窒化炭素を表面処理していることがわかった。
【0038】
【表1】
【0039】
実施例と比較例で得た試料B、C、F、G、Hそれぞれ0.3gを10MPaの圧力で円柱状(18mmφ)に成形し、直流電圧印加方式の絶縁抵抗試験機(Model 3154 HIOKI社製)を用いて抵抗を測定し、下式により粉体抵抗値を算出した。その結果を表2に示す。本発明の表面処理した酸化亜鉛の粉体抵抗値は比較試料に比べて高いことがわかった。
粉体抵抗値=測定値×円柱の断面積/円柱の厚み
【0040】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の無機化合物は、結晶性の高い窒化炭素を強固に表面処理しているため、無機化合物粒子に高い硬度や抵抗を有し、優れた耐熱性等を付与することが可能である。しかも、粉末抵抗が高く、樹脂組成物に配合した時に高い熱伝導率と絶縁破壊電圧を示すことから、熱伝導性フィラーとして有用である。