(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231916
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20171106BHJP
G03G 21/16 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G15/20 525
G03G21/16 104
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-59838(P2014-59838)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2015-7752(P2015-7752A)
(43)【公開日】2015年1月15日
【審査請求日】2016年10月3日
(31)【優先権主張番号】特願2013-113663(P2013-113663)
(32)【優先日】2013年5月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 博一
(72)【発明者】
【氏名】浪崎 広介
(72)【発明者】
【氏名】太田 基希
【審査官】
飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−129138(JP,A)
【文献】
特開平11−305580(JP,A)
【文献】
特開昭63−267980(JP,A)
【文献】
特開昭63−271383(JP,A)
【文献】
特開2011−081338(JP,A)
【文献】
特開平11−102141(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0063798(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
G03G 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙の搬送方向に直交する幅方向の少なくとも一方の端部までトナー像が転写された用紙が搬送される用紙ガイドであって、印字可能な用紙の最大幅よりも短い幅に設定される用紙ガイドと、
前記用紙ガイドの近傍に配設され、前記用紙ガイドを搬送される前記用紙から飛散するトナーを回収するトナー回収装置と、
を備える、画像形成装置。
【請求項2】
前記トナー回収装置は、導電性を有する表面を備える吸着部材と、前記吸着部材の表面と前記トナーの電位との間に電位差を形成する電位差形成手段と、を備える、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記用紙ガイドの下流に、前記トナー像を前記用紙に定着させる定着装置を備え、
前記定着装置は、定着回転部材と、前記定着回転部材を加熱する熱源と、前記定着回転部材に圧接される加圧回転部材と、を有し、
前記吸着部材を前記定着回転部材又は前記加圧回転部材で兼用する、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記用紙ガイドの下流端縁が前記加圧回転部材にオーバーラップするように前記用紙ガイドが設置され、前記用紙ガイドの下流端部両端に、前記加圧回転部材に向かって傾斜するように突出する突出片が設けられた、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記トナー回収装置は、前記吸着部材の表面をクリーニングするクリーニング手段をさらに備える、請求項2〜4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記電位差形成手段は、前記吸着部材の表面を除電するアース機構である、請求項2〜5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記加圧回転部材の端部に接触する検知片を有し、前記加圧回転部材の温度を検知するサーミスタをさらに備え、
前記サーミスタは、前記検知片へのトナーの付着を防止する保護部材をさらに有する、請求項3または4に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
用紙に転写されたトナー像を熱圧着によって定着する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、用紙の周縁一杯まで印字を行うなど、用紙搬送方向に直交する幅方向の少なくとも一方の端部まで印字領域を拡大して印字する余白無し印字に対する要望が高まっている。特に電子写真方式では、写真用紙に比べて大サイズの用紙に対して余白無し印字を行える魅力がある。電子写真方式での余白無し印字は、原理的には、感光体ドラムへの静電潜像の書き込み幅を変更する、わずかな設計上の変更を加えるだけで実現可能である。
【0003】
しかし、電子写真方式では、現像剤に粉体であるトナーを使用するため、用紙からはみ出したり用紙の端部から飛散するトナーによって転写部周辺の環境を汚すことが懸念され、積極的には余白無し印字を採用してこなかった。特に、用紙ガイドがトナーで汚れると、その後に通常の余白有り印字を行った場合でも用紙ガイドを通過する用紙にトナーが付着して印字品質が低下する問題があった。
【0004】
そこで、特許文献1のように、ワンサイズ大きな用紙上に、余白有りでトナー像を転写および定着した後、その余白をカットして見かけ上の余白無し印字を実現する方式が提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、転写手段と定着手段との間の用紙ガイドに、用紙のトナー像が転写された側とは反対側の用紙裏面を帯電する用紙裏面帯電手段を配置し、余白無し印字では、用紙裏面帯電手段に転写手段に印加される電圧と同極性の電圧を印加することで、用紙上に未定着トナー像を落ち着かせる方式も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−86140号公報
【特許文献2】特開2009−169106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし特許文献1の方式では、所望のサイズの用紙に余白無し印字を行うのにワンサイズ大きな用紙が必要となるので、資材コストが上昇する。また、印字可能な最大サイズの用紙では、事実上、余白無し印字を行えない。
【0008】
また特許文献2の方式では、所望のサイズの用紙に直接余白無し印字を行うことができるが、余白無し印字では、用紙の幅よりもトナー像は広く作られる。このため、どうしても用紙上に載らなかった分のトナーは飛散してしまうことが避けられない。用紙裏面帯電手段はトナーを引きつけやすい電位に帯電されているので、飛散したトナーが用紙裏面帯電手段に付着するおそれがある。用紙は用紙裏面帯電手段に接触しながら搬送されるので、用紙搬送手段に付着したトナーによって用紙の裏面が汚れる問題がある。
【0009】
本発明では、従来の課題に鑑みてなされたものであり、余白無し印字において用紙端部から飛散するトナーにより用紙ガイドが汚れるのを抑制し、さらに飛散トナーの回収効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の画像形成装置は、用紙ガイド、トナー回収装置を備える。用紙ガイドは、用紙の搬送方向に直交する幅方向の少なくとも一方の端部までトナー像が転写された用紙が搬送される用紙ガイドであって、印字可能な用紙の最大幅よりも短い幅に設定される。用紙ガイドの幅が短く設定される部分は、用紙ガイドの全部でなくても良い。トナー回収装置は、用紙ガイドの近傍に配設され、用紙ガイドを搬送される用紙から飛散するトナーを回収する。
【0011】
この構成によると、用紙ガイドの幅が印字可能な用紙の最大幅よりも短い幅寸法に設定されるので、転写部において端部までトナー像が転写された用紙が用紙ガイドを搬送される際に、衝撃や振動などによって用紙から飛散するトナーが、汚れやすい用紙ガイドの端部に付着することが抑制される。また、飛散トナーは、用紙ガイドの近傍に配設されるトナー回収装置によって効率よく回収される。
【0012】
用紙上に転写されたトナーは電荷を帯びている。したがって、前記トナー回収装置の構成例としては、導電性を有する表面を備える表面に前記用紙から飛散するトナーを静電吸着する吸着部材と、吸着部材の表面とトナーの電位との間に電位差を形成する電位差形成手段と、を備える構成とするのが簡便である。
【0013】
この構成によると、吸着部材の表面とトナーの電位との間に形成される電位差によって、吸着部材の表面に、飛散トナーが静電吸着される。これによって、飛散するトナーを効率よく回収することができる。
【0014】
画像形成プロセスで、転写部の次工程には定着部が位置する。この場合、用紙ガイドの最もシンプルな構造は、定着装置の上流側に配設される定着前用紙ガイドである。
【0015】
定着装置は種々のタイプがあるが、加熱されて回転駆動される定着回転部材に圧接する加圧回転部材を備える構造を採用することで、吸着部材を定着回転部材又は加圧回転部材で兼用することが可能である。これによると、トナー回収装置の主要な構成要素を、画像形成プロセスに必須である定着装置を利用して実現することができる。トナー回収装置を別途設ける場合に比して装置コスト上昇や装置サイズ大型化を抑制できる。
【0016】
用紙ガイドが定着前用紙ガイドであれば、用紙ガイドは、用紙ガイド下流端が加圧回転部材にオーバーラップするように設置される。この場合、オーバーラップ部分である用紙ガイド下流端部の両端に、加圧回転部材に向かって傾斜するように突出する突出片を設けると、突出片を物理的なガイドとして用紙ガイド両端部に付着したトナーが移動し、吸着部材を兼ねる加圧回転部材の表面にトナーを吸着させることが容易になる。
【0017】
トナー回収装置は、吸着部材の表面をクリーニングするクリーニング手段をさらに備えることで、吸着部材を再生して繰り返し使用することができる。例えば、加圧回転部材が吸着部材を兼ねる場合は、定着装置に元々備わっている、加圧回転部材の表面をクリーニングするためのウェブクリーニング装置を利用できる。
【0018】
電位差形成手段は、帯電機構でも除電機構でも構わないが、除電機構の場合は吸着部材の表面をアースするアース機構で構成することが可能である。アース機構は電力を消費しないので電位差形成手段を省エネに構成することができる。加圧回転部材が吸着部材を兼ねる場合は、定着装置に元々備わっている、加圧回転部材の表面を除電するための除電ブラシなどのアース部材を利用できる。
【0019】
この発明では、用紙ガイドの幅が印刷可能な最大用紙の幅より短く設定されているので、上記のように用紙ガイドの下流端縁が加圧回転部材にオーバーラップしている場合であっても、加圧回転部材の表面の両端部は、用紙ガイドに覆われることなく用紙搬送路に露出することになる。
【0020】
加圧回転部材の温度検知用のサーミスタが設置される場合、サーミスタの検知片は接触検知式なので加圧回転部材の中央部に持ってくると加圧回転部材が傷ついたりして画像に不具合が出る。画像に影響のないところに検知片を置くために検知片は加圧回転部材の端部に接触している。このため、この定着前用紙ガイドの構造的に、検知片は飛散トナーの付着に対して無防備である。また、一般的に、検知片は熱伝導性が良好で弾力を有する金属弾性体から成るので、静電気力により帯電したトナーが付着しやすくなっている。
【0021】
サーミスタの検知片に飛散トナーが付着し、多量の蓄積に至ると、温度の誤検知を誘発することがある。そこで、検知片へのトナーの付着を防止する保護部材を設けるのが好ましい。保護部材は樹脂カバーまたは樹脂シートを好適に使用できる。
【0022】
用紙ガイドは、印字可能な用紙の最大幅と同等又は最大幅以上の幅に設定されたものとすることもできる。この構成においても、飛散したトナーのある程度の量を加圧回転部材の表面の端部に吸着させることが可能である。
【0023】
加圧回転部材の表面とトナーの電位との間に電位差が形成される場合は、加圧回転部材の表面をクリーニングする第1のクリーニング手段を備えることが好ましい。なお、第1のクリーニング手段に代えて、定着回転部材の表面をクリーニングする第2のクリーニング手段を備えるように構成することもできる。また、加圧回転部材の表面をクリーニングする第1のクリーニング手段、及び定着回転部材の表面をクリーニングする第2のクリーニング手段の両者を備えるように構成することもできる。これによれば、一方のクリーニング手段で回収しきれなかったトナーがある場合でも他方のクリーニング手段で回収することができ、トナーの回収効率がより向上する。
【発明の効果】
【0024】
この発明によると、余白無し印字において用紙端部から飛散するトナーにより用紙ガイドが汚れるのを抑制でき、さらに飛散トナーの回収効率を向上させることで、飛散トナーの広範囲な飛散を抑制できるとともに、用紙ガイドを搬送される用紙の裏面が汚れるのを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の要部の概略構成図である。
【
図2】定着装置の斜視図であって、ハウジング、定着前用紙ガイドおよびサーミスタを分離して示す図である。
【
図3】加圧ローラ、定着前用紙ガイド、サーミスタ検知片の保護部材を搬送方向に平行な面に関する平面図である。
【
図4】加圧ローラ、定着前用紙ガイド、サーミスタ検知片の保護部材を搬送方向に直交する面に投影した投影図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る画像形成装置の要部の概略構成図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態に係る画像形成装置の要部の概略構成図である。
【
図7】本発明の第4の実施形態に係る画像形成装置の要部の概略構成図である。
【
図8】本発明の第5の実施形態に係る画像形成装置の要部の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置10の要部を
図1に示す。同図に現われない画像形成装置10を構成するその他の構成は公知であるため、図示および説明を省略する。本発明の画像形成装置10は、用紙搬送方向に直交する幅方向の少なくとも一方の端部まで印字領域を拡大して印字する余白無し印字に対応した画像形成装置である。
【0027】
図1に示すように、画像形成装置10は、用紙Pが搬送される用紙搬送路100に沿って転写部101および定着部102が形成されている。
【0028】
転写部101において、転写装置1によって用紙P上にトナー像が転写される。同図において符号Tは、トナー像を構成するトナー(粉体)を示している。
【0029】
転写装置のタイプは問わない。本実施形態では、周回駆動される中間転写ベルト11上に一次転写したトナー像を、周回駆動される二次転写ベルト12によって用紙Pの片面に転写する。このような転写装置1の構成および動作は公知であるため詳しい説明は省略する。
【0030】
転写部101では転写装置1の2つのベルト11,12が対向する2つのローラを介して圧接(ニップ)しており、転写部101を通過する用紙Pは両ベルト11,12の周回によって用紙搬送路100を搬送され、定着部102に至る。
【0031】
定着部102において、定着装置2によって用紙P上の未定着トナー像が定着される。転写部101と定着部102との間の用紙搬送路100には、定着前用紙ガイド3が設置される。定着部102の下流側の用紙搬送路100には、定着後用紙ガイド4が設置される。定着前用紙ガイド3は本発明の用紙ガイドの一例である。
【0032】
本実施形態では、定着装置2は、無端ベルト21、熱源22、加圧ローラ23、アース機構24およびクリーニング機構25を備える。
【0033】
無端ベルト21は、駆動ローラ26および従動ローラ27との間に掛け渡される。駆動ローラ26は不図示の駆動源によって回転駆動され、これによって無端ベルト21が周回(回転)駆動される。無端ベルト21は本発明の定着回転部材の一例である。例えば、定着回転部材はローラでも構わない。
【0034】
加圧ローラ23は、定着部102において無端ベルト21に圧接する。加圧ローラ23は、不図示の圧接装置によって回転中心から定着部102に向かうベクトル方向に付勢された状態で回転自在に支持される。圧接装置自体は駆動源を持たないが、加圧ローラ23は、無端ベルト21に圧接するニップ力により、無端ベルト21の周回に伴って従動回転する。加圧ローラ23は、本発明の加圧回転部材の一例である。加圧回転部材の他の例として、無端状のベルトである加圧ベルトを張架するローラが加圧ベルト及び無端ベルト21を挟んで駆動ローラ26に圧接する構成における加圧ベルトを挙げることができる。なお、加圧回転部材が駆動回転し、定着回転部材が従動回転するように構成することもできる。
【0035】
転写部101を通過した用紙Pは、定着前用紙ガイド3によって、無端ベルト21と加圧ローラ23との間の定着部102へガイドされる。定着部102は、この発明の定着ニップ部に相当する。
【0036】
加圧ローラ23は本発明の吸着部材の一例である。加圧ローラ23の表面は導電性を有する。
【0037】
熱源22は無端ベルト21を加熱する。本実施形態では、熱源22はメインヒータ221およびサブヒータ222から構成される。メインヒータ221は無端ベルト21が掛け渡された従動ローラ27に内蔵され、サブヒータ222は加圧ローラ23に内蔵される。
【0038】
アース機構24は加圧ローラ23の表面をアースする。アース機構24は、加圧ローラ23表面に接触して回転する除電ブラシなどを好適に用いることができる。アース機構24は本発明の電位差形成手段の一例である。例えば、電位形成手段は加圧ローラ23の表面を積極的に帯電させる帯電機構でも構わない。
【0039】
クリーニング機構25は、加圧ローラ23の表面をクリーニングする。本実施形態では、一例として加圧ローラ23の表面に当接するウエブ251を周回駆動するウェブクリーニング装置を図示している。クリーニング機構25はウェブクリーニング装置に限定されない。例えば、剥離爪を加圧ローラ23に押し当てて掻き取るタイプの簡易なクリーニング機構を採用することも可能である。
【0040】
ウェブ251は、例えば、帯状の不織布である。ウェブ251の幅方向の寸法は、印字可能な用紙の最大幅以上であることが好ましい。一例として、ウェブ251の幅方向の寸法は、印字可能な用紙の最大幅よりも、片側に30mmずつ長い。このように構成することで、余白無し印字の実行時に、飛散したトナーTが、加圧ローラ23の表面における印字可能な用紙の最大幅の外側に付着しても、加圧ローラ23の表面の汚れをウェブ251によって拭い取ることができる。
【0041】
本実施形態では、加圧ローラ23、アース機構24およびクリーニング機構25は本発明のトナー回収装置を構成している。トナー回収装置は、本発明の用紙ガイドである定着前用紙ガイド3の近傍に配設されている。
【0042】
図2に示すように、以上説明した定着装置2の各要素は、堅牢なフレーム20を支持部材としてその内側に構成される。フレーム20は定着装置2の定着前カバーを兼ねている。フレーム20の定着前カバー部201は定着部102に臨む開口202を有する。
【0043】
定着前用紙ガイド3は、ステンレス鋼(SUS)等の金属材料を加工することで構成される。定着前用紙ガイド3は、定着前カバー部201の開口202を介して定着前カバー部201の外側と内側に跨って設置される。このとき、定着前用紙ガイド3の下流端縁は、
図3に示すように、加圧ローラ23とオーバーラップしている。オーバーラップ部分である定着前用紙ガイド3の下流端部の、用紙搬送方向に直交する幅方向の両端に、加圧ローラ23に向かって下向きの傾斜で突出する突出片31が形成されている。
【0044】
定着前用紙ガイド3は、
図3に示すように、印字可能な用紙の最大幅よりも短い幅に設定される。したがって、上記のように定着前用紙ガイド3の下流端縁が加圧ローラ23にオーバーラップしている場合であっても、加圧ローラ23表面の両端部は、定着前用紙ガイド3に覆われることなく用紙搬送路100の空間に露出することになる。
【0045】
加圧ローラ23の温度検知用のサーミスタ5が設置される場合、サーミスタ5の検知片51は接触検知式なので加圧ローラ23の中央部に持ってくると加圧ローラ23が傷ついたりして画像に不具合が出る。そこで、図示の如くサーミスタ5を加圧ローラ23の端部に配置している。このため、この発明の定着前用紙ガイド3の構造的に、検知片51は飛散トナーの付着に対して無防備となる。また、一般的に、検知片51は熱伝導性が良好で弾力を有する金属弾性体から成るので、静電気力により帯電したトナーが付着しやすくなっている。
【0046】
サーミスタ5の検知片51に飛散トナーが付着し、多量の蓄積に至ると、温度の誤検知を誘発することがある。そこで、検知片51へのトナーの付着を防止する保護部材6を設けるのが好ましい。保護部材6は本実施形態ではビスを用いてサーミスタ5に対して着脱自在に取付けられる樹脂カバーである。例えば、保護部材6は検知片51の非検知側面に直接貼り付けられるような樹脂シートなどを使用することも可能である。
【0047】
図4に想像線で示すように、保護部材6は用紙搬送路100を搬送される最大幅の用紙Pmaxに接触しないように定着前用紙ガイド3より加圧ローラ23側に近い位置関係で設置されることが望ましい。
【0048】
上記のように構成される本実施形態に係る画像形成装置10において余白無し印字を行った場合に、飛散トナーが回収される動作を
図1および
図3に基づいて説明する。
【0049】
まず、転写部101において、転写装置1によって用紙Pの幅方向の少なくとも一方の端部までトナー像が転写される(余白無し印字。)。この用紙Pは転写装置1により搬送力を付与され、定着前用紙ガイド3に沿って用紙搬送路100を搬送されて定着部102に到る。
【0050】
幅方向の少なくとも一方の端部までトナー像が転写された用紙Pからは、定着前用紙ガイド3を搬送される際に、振動や衝撃などによってトナーTが飛散しやすい。しかし、定着前用紙ガイド3の幅が印字可能な用紙の最大幅よりも短い幅寸法に設定されるので、用紙Pから飛散したトナーTは、定着前用紙ガイド3の幅方向の端部に付着することが抑制される。
【0051】
電荷を帯びている飛散したトナーTは、アース機構24によって常時アースされた加圧ローラ23の表面との間に形成された電位差によって、加圧ローラ23の表面に静電吸着される。このとき、定着前用紙ガイド3の下流端部の加圧ローラ23に向けて傾斜する突出片31によって飛散トナーTは加圧ローラ23の端部に積極的に導かれる。こうして、飛散したトナーTは加圧ローラ23の表面の端部に回収される。このため、飛散したトナーTの回収効率が向上する。また、トナーTの広範囲な飛散が抑制される。さらに、定着前用紙ガイド3を搬送される用紙Pの裏面が汚れるのが抑制される。
【0052】
トナーTが付着した加圧ローラ23の表面はクリーニング機構25によって周回毎にクリーニングされる。したがって、飛散トナーTの吸着部材を兼ねる加圧ローラ23を再生して繰り返し使用することができる。
【0053】
第2の実施形態について
図5を参照して説明する。本実施形態では、第1の実施形態に係る定着装置2における加圧ローラ23に替えて無端ベルト211を用いた加圧方式を採用したものである。無端ベルト211は、第1ローラ231および第2ローラ232との間に掛け渡される。第1ローラ231は、不図示の圧接装置によって回転中心から定着部102に向かうベクトル方向に付勢された状態で回転自在に支持される。圧接装置自体は駆動源を持たないが、無端ベルト211は、第1ローラ231を介して無端ベルト21に圧接するニップ力により、無端ベルト21の周回に伴って従動回転する。本実施形態では無端ベルト211が本発明の吸着部材として機能する。
【0054】
第3の実施形態について
図6を参照して説明する。本実施形態では、クリーニング機構25のウエブ251が二次転写ベルト12にも接触しており、加圧ローラ23と二次転写ベルト12とを共通のクリーニング機構25でクリーニングできるようにしたものである。
【0055】
第4の実施形態について
図7を参照して説明する。本実施形態に係る画像形成装置10は、加圧ローラ23の表面をクリーニングするクリーニング機構25に加えて、無端ベルト21の表面をクリーニングするクリーニング機構28をさらに備えることを除いて、第1の実施形態に係る画像形成装置10と同様に構成されている。
【0056】
この構成によれば、飛散したトナーTの大部分は加圧ローラ23に吸着するが、加圧ローラ23で回収しきれずに無端ベルト21に付着するトナーTがあった場合でも、無端ベルト21の表面がクリーニング機構28によってクリーニングされる。このため、用紙Pの汚れをより抑制することができる。
【0057】
第5の実施形態について
図8を参照して説明する。本実施形態に係る画像形成装置10は、加圧ローラ23の表面をクリーニングするクリーニング機構25を備えないことを除いて、第4の実施形態に係る画像形成装置10と同様に構成されている。
【0058】
即ち、加圧ローラ23の表面をクリーニングするクリーニング機構25は、必須の構成要件ではない。クリーニング機構25を備えなくても飛散したトナーTを加圧ローラ23の表面に吸着させることはできる。また、飛散するトナーTが少ない場合は、クリーニング機構25を備えなくても、ある程度の枚数までは用紙の汚れは許容範囲内に抑えられる。
【0059】
なお、定着前用紙ガイド3は、上述のように印字可能な用紙の最大幅よりも短い幅に設定されることが好ましいが、印字可能な用紙の最大幅以上の幅に設定されたものとすることもできる。このような構成においても、飛散したトナーTのある程度の量を加圧ローラ23の表面の端部に吸着させることが可能である。このため、余白無し印字において用紙端部から飛散するトナーTにより定着前用紙ガイド3が汚れるのを抑制でき、トナーの広範囲な飛散を抑制できるとともに、定着前用紙ガイド3を搬送される用紙Pの裏面が汚れるのを抑制できる。
【0060】
上述の実施形態のそれぞれの技術的特徴を互いに組み合わせることで、新たな実施形態を構成することが考えられる。
【0061】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0062】
P…用紙
Pmax…印字可能な最大幅の用紙
T…トナー
1…転写装置
2…定着装置
3…定着前用紙ガイド
31…突出片
4…定着後用紙ガイド
5…サーミスタ
51…検知片
6…保護部材
10…画像形成装置
20…フレーム
21…無端ベルト
22…熱源
23…加圧ローラ
24…アース機構
25…クリーニング機構
26…駆動ローラ
27…従動ローラ
28…クリーニング機構
100…用紙搬送路
101…転写部
102…定着部