(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記規制装置は、前記逃しラインに設けられた、パイロット圧が高くなるほど開口面積を増大させる位置調整弁と、前記位置調整弁へパイロット圧を出力する電磁比例弁と、を含む、請求項1に記載の油圧ショベル駆動システム。
前記位置調整弁は、中継ラインにより前記ヘッド側給排ラインと接続されており、前記ロッド側給排ラインを通じて前記シリンダへ作動油が供給される際に、前記中継ラインを前記逃しラインを通じてタンクへ連通させるように構成されている、請求項2,3,5,6のいずれか一項に記載の油圧ショベル駆動システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、アームおよびバケットは、その重心が揺動中心を通る鉛直線を横切るように駆動される。このため、アームを運転席に近づけるアーム引き操作を行う場合は、アームの位置によって、アームの自重がアームの揺動を加速させる方向に作用したり減速させる方向に作用したりする。同様に、バケットを運転席に近づけるバケットイン操作を行う場合は、バケットの位置によって、バケットの自重がバケットの揺動を加速させる方向に作用したり減速させる方向に作用したりする。
【0005】
アーム引き操作またはバケットイン操作を行う場合、アームシリンダまたはバケットシリンダのロッド側から制御弁を介してタンクへ作動油が戻る。ここで、アームまたはバケット用の制御弁におけるシリンダ伸長時のタンク戻し用の開口面積が大きいと、空中でアームまたはバケットを作動させる場合には、アームまたはバケットの重心が揺動中心の真下に到達するまでは、上述したアームまたはバケットの自重の影響により、シリンダのヘッド側にキャビテーションが発生するおそれがある。また、そのまま操作を続ける場合、アームまたはバケットの重心が揺動中心の真下に到達した後は、シリンダのヘッド側の圧力が十分高くなるまでアームまたはバケットの揺動が一時的に停止するおそれがある。
【0006】
このような不具合を防止する対策としては、アームシリンダまたはバケットシリンダの伸長時に、制御弁においてメータアウト制御を行うことが考えられる。具体的には、制御弁におけるシリンダ伸長時のタンク戻し用の開口面積を小さくする。しかしながら、このようにした場合には、特に掘削時に、小さくした開口面積が抵抗となって油圧ポンプの吐出圧力が必要以上に高くなり、エネルギーを無駄に消費することになる。
【0007】
そこで、本発明は、アームまたはバケット用のシリンダのヘッド側でキャビテーションが発生することとアームまたはバケットの揺動が一時的に停止することの防止を図りつつ、エネルギーの無駄な消費を抑制することができる油圧ショベル駆動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の油圧ショベル駆動システムは、アームまたはバケットである作動部を駆動するシリンダと、前記シリンダとヘッド側給排ラインおよびロッド側給排ラインにより接続された制御弁と、前記制御弁を介して前記シリンダへ作動油を供給する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出される作動油の圧力または前記ヘッド側給排ラインを通じて前記シリンダへ供給される作動油の圧力を検出するための負荷検出器と、前記ロッド側給排ラインから分岐してタンクにつながる逃しラインと、前記逃しラインを遮断または開放する規制装置と、前記ヘッド側給排ラインを通じて前記シリンダへ作動油が供給される際に、前記負荷検出器で検出される圧力が所定値未満の場合は前記逃しラインを遮断し、前記負荷圧力検出器で検出される圧力が前記所定値以上の場合は前記逃しラインを開放するように、前記規制装置を制御する制御装置と、を備える、ことを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、アームまたはバケット用のシリンダ伸長時(アーム引き操作時またはバケットイン操作時)に、シリンダのヘッド側の圧力が小さい場合(例えば、空中でアームまたはバケットを作動させる場合)には、逃しラインが遮断される。このため、アームまたはバケット用の制御弁におけるシリンダ伸長時のタンク戻し用の開口面積を小さくしておけば、アームまたはバケット用のシリンダのヘッド側でキャビテーションが発生することを防止できるとともに、アームまたはバケットの揺動が一時的に停止することを防止できる。一方、シリンダのヘッド側の圧力が大きい場合(例えば、掘削時)には、逃しラインが開放されるため、制御弁におけるシリンダ伸長時のタンク戻し用の開口面積を小さくしておいても、シリンダ伸長時にシリンダのロッド側の作動油の大部分は逃しラインを通じてタンクへ戻る。このため、油圧ポンプの吐出圧力が必要以上に高くなることがなく、エネルギーの無駄な消費を抑制することができる。
【0010】
例えば、前記規制装置は、前記逃しラインに設けられた、パイロット圧が高くなるほど開口面積を増大させる位置調整弁と、前記位置調整弁へパイロット圧を出力する電磁比例弁と、を含んでもよい。
【0011】
上記の油圧ショベル駆動システムは、前記制御弁へパイロット圧を出力する操作弁と、前記操作弁から出力されるパイロット圧を検出するための操作検出器と、をさらに備え、前記制御装置は、前記負荷検出器で検出される圧力が前記所定値以上の場合に、前記操作検出器で検出されるパイロット圧に比例する電流を前記電磁比例弁へ送給してもよい。この構成によれば、位置調整弁の開口面積を操作弁での操作量に応じて適切に制御することができる。
【0012】
上記の油圧ショベル駆動システムは、前記作動部の位置を検出するための位置検出器をさらに備え、前記制御装置は、前記位置検出器の検出結果により前記作動部の重心が当該作動部の揺動中心を通る鉛直線よりも運転席から遠い側にあると判定される場合には、前記負荷検出器で検出される圧力に応じて前記逃しラインを遮断または開放するように前記規制装置を制御し、前記位置検出器の検出結果により前記作動部の重心が当該作動部の揺動中心を通る鉛直線よりも運転席に近い側にあると判定される場合には、前記負荷検出器で検出される圧力に拘らずに前記逃しラインを開放するように前記規制装置を制御してもよい。この構成によれば、アームまたはバケットである作動部の重心が運転席に近い側にある場合、換言すれば、作動部にその自重が揺動方向と逆方向に作用する場合に、逃しラインが開放される。すなわち、逃しラインを遮断する場合を、作動部にその自重が揺動方向に作用する場合に限定することができ、逃しラインを最大限に活用することができる。
【0013】
前記作動部はアームであり、前記シリンダはアームシリンダであり、上記の油圧ショベル駆動システムは、バケットシリンダのヘッド側の圧力を検出するための掘削検出器をさらに備え、前記制御装置は、前記位置検出器の検出結果によりアームの重心がアームの揺動中心を通る鉛直線よりも運転席に近い側にあると判定される場合において、前記掘削検出器で検出される圧力が閾値以上の場合には、前記負荷検出器で検出される圧力が前記所定値以上の場合に前記電磁比例弁へ送給される電流と同一の電流/パイロット圧関係線により定まる電流を前記電磁比例弁へ送給し、前記掘削検出器で検出される圧力が前記閾値未満の場合には、前記電流/パイロット圧関係線よりも傾きの小さな電流/パイロット圧関係線により定まる電流を前記電磁比例弁へ送給してもよい。この構成によれば、アームの揺動が速くなりすぎることもなく、且つ、油圧ポンプの吐出圧力が必要以上に高くなることがないため、エネルギの無駄な消費を抑えることができる。
【0014】
前記位置調整弁は、中継ラインにより前記ヘッド側給排ラインと接続されており、前記ロッド側給排ラインを通じて前記シリンダへ作動油が供給される際に、前記中継ラインを前記逃しラインを通じてタンクへ連通させるように構成されていてもよい。この構成によれば、アーム押し操作時またはバケットアウト操作時に、シリンダのヘッド側から流出する作動油の一部をアームまたはバケット用の制御弁を経由せずにタンクへ戻すことができる。すなわち、位置調整弁および逃しラインを合理的に利用して、シリンダ短縮時の背圧を低減することができる。
【0015】
前記位置調整弁は、前記油圧ポンプから延びるブリードライン上に配置されていてもよい。この構成によれば、位置調整弁を制御弁と一緒にマルチ制御弁ユニットへ組み込むことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、アームまたはバケット用のシリンダのヘッド側でキャビテーションが発生することとアームまたはバケットの揺動が一時的に停止することの防止を図りつつ、エネルギーの無駄な消費を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
図1に、本発明の第1実施形態に係る油圧ショベル駆動システム1Aを示し、
図2に、その駆動システム1Aが搭載された油圧ショベル10を示す。
【0019】
図2に示す油圧ショベル10は、走行体15と旋回体11を含む。また、油圧ショベル10は、旋回体11に対して俯仰するブーム12と、ブーム12の先端に揺動可能に連結されたアーム13と、アーム13の先端に揺動可能に連結されたバケット14を含む。
【0020】
図1に示すように、駆動システム1Aは、油圧アクチュエータとして、図示しない左右一対の走行モータおよび旋回モータを含むとともに、ブームシリンダ24、アームシリンダ25およびバケットシリンダ26を含む。ブームシリンダ24はブーム12を駆動し、アームシリンダ25はアーム13を駆動し、バケットシリンダ26はバケット14を駆動する。
【0021】
また、駆動システム1Aは、上記の油圧アクチュエータへ作動油を供給する第1油圧ポンプ21および第2油圧ポンプ22を含む。ブームシリンダ24へは、第2油圧ポンプ22からブーム第1制御弁51を介して作動油が供給されるとともに、第1油圧ポンプ21からブーム第2制御弁52を介して作動油が供給される。アームシリンダ25へは、第1油圧ポンプ21からアーム第1制御弁61を介して作動油が供給されるとともに、第2油圧ポンプ22からアーム第2制御弁62を介して作動油が供給される。また、バケットシリンダ26へは、第2油圧ポンプ22からバケット制御弁71を介して作動油が供給される。なお、その他の旋回モータ用および走行モータ用の制御弁は図示を省略する。
【0022】
より詳しくは、第1油圧ポンプ21からは第1ブリードライン31がタンクまで延びており、第2油圧ポンプ22からは第2ブリードライン41がタンクまで延びている。第1ブリードライン31上には、ブーム第2制御弁52とアーム第1制御弁61が直列に配置されており、第2ブリードライン41上には、ブーム第1制御弁51とアーム第2制御弁62とバケット制御弁71が直列に配置されている。なお、第1ブリードライン31上には、上述した図略の旋回モータ用の制御弁が配置される。また、第1ブリードライン31および第2ブリードライン41上には、上述した図略の走行モータ用の制御弁も配置される。
【0023】
上述した制御弁のうち、ブーム第2制御弁52は2位置弁であるが、その他の制御弁は3位置弁である。ブーム第2制御弁52は、ブーム上げ操作専用の弁である。
【0024】
第1ブリードライン31からはパラレルライン34が分岐しており、このパラレルライン34を通じて第1ブリードライン31上の全ての制御弁へ第1油圧ポンプ21から吐出される作動油が導かれる。同様に、第2ブリードライン41からはパラレルライン44が分岐しており、このパラレルライン44を通じて第2ブリードライン41上の全ての制御弁へ第2油圧ポンプ22から吐出される作動油が導かれる。第1ブリードライン31上のブーム第2制御弁52以外の制御弁はタンクライン35によりタンクと接続されている一方、第2ブリードライン41上の全ての制御弁はタンクライン45によりタンクと接続されている。
【0025】
第1ブリードライン31および第2ブリードライン41上に配置された全ての制御弁は、オープンセンター型の弁である。すなわち、ブリードライン(31または41)上の全ての制御弁が中立位置にあるときには制御弁によって当該ブリードラインにおける作動油の流通が制限されることがなく、いずれかの制御弁が作動して中立位置から移動するとその制御弁によって当該ブリードラインにおける作動油の流通が制限される。
【0026】
本実施形態では、第1油圧ポンプ21の吐出流量および第2油圧ポンプ22の吐出流量がネガティブコントロール(以下、「ネガコン」という)方式で制御される。すなわち、第1ブリードライン31には全ての制御弁の下流側に絞り32が設けられているとともに、この絞り32をバイパスするライン上にリリーフ弁33が配置されている。同様に、第2ブリードライン41には全ての制御弁の下流側に絞り42が設けられているとともに、この絞り42をバイパスするライン上にリリーフ弁43が配置されている。
【0027】
第1油圧ポンプ21および第2油圧ポンプ22は、図略のエンジンにより駆動される。第1油圧ポンプ21および第2油圧ポンプ22は、傾転角に応じた流量の作動油を吐出する可変容量型のポンプであり、第1油圧ポンプ21および第2油圧ポンプ22の傾転角はそれぞれ図略のレギュレータにより調整される。各レギュレータには、ブリードライン(31または41)における絞り(32または42)の上流側の圧力であるネガコン圧が導かれる。
【0028】
上述したブーム第1制御弁51は、ブーム上げ供給ライン24aおよびブーム下げ供給ライン24bによりブームシリンダ24と接続されている。ブーム第2制御弁52は、副供給ライン24cによりブーム上げ供給ライン24aと接続されている。
【0029】
また、ブーム第1制御弁51のパイロットポートは、ブーム上げパイロットライン53およびブーム下げパイロットライン54によりブーム操作弁50と接続されている。ブーム操作弁50は、操作レバーを含み、操作レバーの操作量に応じた大きさのパイロット圧をブーム第1制御弁51へ出力する。一方、ブーム第2制御弁52のパイロットポートは、副パイロットライン55によりブーム上げパイロットライン53と接続されている。
【0030】
アーム第1制御弁61は、アーム引き供給ライン25aおよびアーム押し供給ライン25bによりアームシリンダ25と接続されている。アーム第2制御弁62は、副供給ライン25cによりアーム引き供給ライン25aと接続され、副供給ライン25dによりアーム押し供給ライン25bと接続されている。
【0031】
また、アーム第1制御弁61のパイロットポートは、アーム引きパイロットライン63およびアーム押しパイロットライン64によりアーム操作弁60と接続されている。アーム操作弁60は、操作レバーを含み、操作レバーの操作量に応じた大きさのパイロット圧をアーム第1制御弁61へ出力する。一方、アーム第2制御弁62のパイロットポートは、副パイロットライン65によりアーム引きパイロットライン63と接続されているとともに、副パイロットライン66によりアーム押しパイロットライン64と接続されている。
【0032】
バケット制御弁71は、バケットイン供給ライン26aおよびバケットアウト供給ライン26bによりバケットシリンダ26と接続されている。また、バケット制御弁71のパイロットポートは、バケットインパイロットライン72およびバケットアウトパイロットライン73により図略のバケット操作弁と接続されている。バケット操作弁は、操作レバーを含み、操作レバーの操作量に応じた大きさのパイロット圧をバケット制御弁71へ出力する。
【0033】
本実施形態は、アームシリンダ25の伸長時のメータアウト制御に本発明を適用した例である。すなわち、本発明の作動部がアーム13であり、本発明のヘッド側給排ラインがアーム引き供給ライン25aに相当し、本発明のロッド側給排ラインがアーム押し供給ライン25bに相当する。
【0034】
アーム押し供給ライン25bからは逃しライン7が分岐しており、この逃しライン7はタンクにつながっている。逃しライン7は、規制装置8により遮断されたり開放されたりする。規制装置8は、制御装置9により制御される。
【0035】
規制装置8の制御のために、本実施形態では、第1ブリードライン31における全ての制御弁の上流側に負荷検出器91が設けられ、アーム引きパイロットライン63に操作検出器92が設けられている。負荷検出器91は、第1油圧ポンプ21から吐出される作動油の圧力を検出するためのものであり、操作検出器92は、アーム引き操作時(アーム引き供給ライン25aを通じてアームシリンダ25へ作動油が供給される際)にアーム操作弁60から出力されるパイロット圧を検出するためのものである。負荷検出器91および操作検出器92としては、例えば圧力センサが用いられる。
【0036】
本実施形態では、規制装置8が、逃しライン7に設けられたパイロット式の位置調整弁81と、位置調整弁81へパイロット圧を出力する電磁比例弁82を含む。位置調整弁81は、パイロット圧が高くなるほど開口面積を増大させるように構成されている。そして、位置調整弁81は、電磁比例弁82からパイロット圧が出力されないときは逃しライン7を遮断し、電磁比例弁82からパイロット圧が出力されると、そのパイロット圧に応じた開口面積で逃しライン7を開放する。
【0037】
本実施形態では、位置調整弁81が第1ブリードライン31上に配置された4ポート弁である。そして、位置調整弁81は、作動しないとき(電磁比例弁82からパイロット圧が出力されないとき)でも作動したとき(電磁比例弁82からパイロット圧が出力されたとき)でも第1ブリードライン31における作動油の流通を制限しないように構成されている。ただし、位置調整弁81は、第1ブリードライン31上に配置されない2ポート弁であってもよい。
【0038】
電磁比例弁82は、一次圧ライン83により補助ポンプ23と接続されている。補助ポンプ23は、上述した図略のエンジンにより駆動される。電磁比例弁82は、制御装置9から電流が送給されたときに、その電流に応じた大きさのパイロット圧(二次圧)を位置調整弁81へ出力し、制御装置9から電流が送給されないときは位置調整弁81へパイロット圧を出力しない。
【0039】
制御装置9は、アーム引き操作時以外は電磁比例弁82へ電流を送給せず、アーム引き操作時には、上述した負荷検出器91で検出される圧力に基づいて電磁比例弁82へ電流を送給するか否かを決定する。アーム引き操作時か否かは、上述した操作検出器92で検出される圧力がゼロであるか否かにより判定することができる。
【0040】
より詳しくは、アーム引き操作時に、負荷検出器91で検出される圧力が所定値P1未満の場合は、制御装置9は電磁比例弁82へ電流を送給しない。これにより、逃しライン7が遮断される。一方、負荷検出器91で検出される圧力が所定値P1以上の場合は、制御装置9は電磁比例弁82へ電流を送給する。これにより、逃しライン7が開放される。
【0041】
本実施形態では、負荷検出器91で検出される圧力が所定値P1以上の場合、制御装置9は、
図3に示すように、操作検出器92で検出されるパイロット圧に比例する電流を電磁比例弁82へ送給する。すなわち、制御装置9に予め格納される電流/パイロット圧関係線9aは、一定の傾きの直線である。これにより、位置調整弁81は、アーム操作弁60での操作量にほぼ比例する開口面積で逃しライン7を開放する。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の駆動システム1Aでは、アームシリンダ25の伸長時(アーム引き操作時)に、アームシリンダ25のヘッド側の圧力が小さい場合(例えば、空中でアーム13を作動させる場合)には、逃しライン7が遮断される。このため、アーム第1制御弁61およびアーム第2制御弁62におけるシリンダ伸長時のタンク戻し用の開口面積を小さくしておけば、タンクに戻る作動油を絞ることができ、アームシリンダ25のロッド側の背圧を十分高く保つことができる。これにより、アーム13の重心が揺動中心13a(
図2参照)の真下に到達するまでにアームシリンダ25のヘッド側でキャビテーションが発生することを防止できるとともに、アーム13の重心が揺動中心13aの真下に到達した後にアーム
13の揺動が一時的に停止することを防止できる。
【0043】
一方、アームシリンダ25のヘッド側の圧力が大きい場合(例えば、掘削時)には、逃しライン7が開放される。このため、アーム第1制御弁61およびアーム第2制御弁62におけるシリンダ伸長時のタンク戻し用の開口面積を小さくしておいても、アームシリンダ25の伸長時にアームシリンダ25のロッド側の作動油の大部分は逃しライン7を通じてタンクへ戻る。その結果、第1および第2油圧ポンプ21,22の吐出圧力が必要以上に高くなることがなく、エネルギーの無駄な消費を抑制することができる。
【0044】
また、本実施形態では、操作検出器92で検出されるパイロット圧に比例する電流を制御装置9が電磁比例弁82へ送給するため、位置調整弁81の開口面積をアーム操作弁60での操作量に応じて適切に制御することができる。
【0045】
さらに、本実施形態では、位置調整弁81が第1ブリードライン31上に配置されているので、位置調整弁81をアーム第1制御弁61や他の第1ブリードライン31上の制御弁と一緒にマルチ制御弁ユニットへ組み込むことができる。
【0046】
<変形例>
アーム第2制御弁62は必ずしも設けられている必要はなく、駆動システム1Aは、アームシリンダ25用の制御弁として、アーム第1制御弁61のみを有していてもよい。この点は、後述する後述する第2〜第4実施形態でも同様である。
【0047】
負荷検出器91は、必ずしも第1ブリードライン31に設けられている必要はなく、
図4に示すように、アーム引き供給ライン25aを通じてアームシリンダ25へ供給される作動油の圧力を検出できるようにアーム引き供給ライン25aに設けられていてもよい。
【0048】
(第2実施形態)
次に、
図5を参照して、本発明の第2実施形態に係る油圧ショベル駆動システム1Bを説明する。なお、本実施形態ならびに後述する第3および第4実施形態において、第1実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0049】
本実施形態では、第1実施形態の変形例(
図4)と同様に負荷検出器91がアーム引き供給ライン25aに設けられている。ただし、第1実施形態(
図1)と同様に、負荷検出器91が第1ブリードライン31に設けられていてもよいことは言うまでもない。この点は、後述する第3および第4実施形態でも同様である。
【0050】
また、本実施形態の駆動システム1Bは、アーム
13の位置を検出するための位置検出器93を含む。本実施形態では、位置検出器93が、ブームシリンダ24に設けられたストロークセンサ94とアームシリンダ25に設けられたストロークセンサ95で構成されている。ただし、位置検出器93としては、例えばアーム13に設けられた傾斜センサを用いてもよい。あるいは、位置検出器93は、ブーム12の俯仰角およびブーム12とアーム13の間の角度を検出する2つの角度センサで構成されていてもよい。
【0051】
制御装置9が行う制御は、アーム引き操作時以外は第1実施形態と同様である。アーム引き操作時は、制御装置9が、まず位置検出器93の検出結果により、アーム13の重心が揺動中心13aを通る鉛直線Lよりも運転席(旋回体11の一部)から遠い側である遠方領域Aにあるか運転席に近い側である近接領域Bにあるかを判定する(
図2参照)。アーム13の重心が遠方領域Aにあると判定される場合には、第1実施形態と同様に、制御装置9は、負荷検出器91で検出される圧力に応じて逃しライン7を遮断または開放するように規制装置8を制御する。
【0052】
一方、アーム13の重心が近接領域Bにあると判定される場合には、制御装置9は、負荷検出器91で検出される圧力に拘らずに逃しライン7を開放するように規制装置8を制御する。例えば、制御装置9は、アーム13の重心が近接領域Bにあると判定される場合は、アーム13の重心が遠方領域Aにある場合と同様に、操作検出器92で検出されるパイロット圧に比例する電流を電磁比例弁82へ送給する。あるいは、制御装置9は、位置調整弁81が全開となるような電流を電磁比例弁82へ送給してもよい。
【0053】
本実施形態によれば、アーム引き操作時にアーム13の重心が近接領域Bにある場合、換言すれば、アーム13にその自重が揺動方向と逆方向に作用する場合に、逃しライン7が開放される。すなわち、アーム引き操作時に逃しライン7を遮断する場合を、アーム13にその自重が揺動方向に作用する場合に限定することができ、逃しライン7を最大限に活用することができる。
【0054】
(第3実施形態)
次に、
図6を参照して、本発明の第3実施形態に係る油圧ショベル駆動システム1Cを説明する。本実施形態の駆動システム1Cは、第2実施形態の油圧駆動システム1Bに変更を加えたものである。ただし、駆動システム1Cは、第2実施形態で説明した位置検出器93を有していなくてもよい。
【0055】
第1および第2実施形態では規制装置8の位置調整弁81が2位置弁であったが、本実施形態では位置調整弁81が3位置弁である。位置調整弁81は、第1および第2実施形態で説明した機能を実現するために、中立位置と第1位置(
図6における右側位置)の間で作動する。すなわち、位置調整弁81は、中立位置に位置するときは逃しライン7を遮断し、第1位置へ作動すると逃しライン7を開放する。換言すれば、位置調整弁81は、アーム引き操作時において第1および第2実施形態で説明した条件を満たしたときに第1位置へ作動する。なお、位置調整弁81は、第2位置(
図6における左側位置)へ作動したときも逃しライン7を遮断する。
【0056】
一方、位置調整弁81は、アーム押し操作時(アーム押し供給ライン25bを通じてアームシリンダ25へ作動油が供給される際)には、常に中立位置から第2位置、あるいはそれらの中間位置へ作動する。位置調整弁81は、中継ライン75によりアーム引き供給ライン25aと接続されている。位置調整弁81は、中立位置に位置するときは中継ライン75を閉じ、第2位置へ作動すると中継ライン75を逃しライン7における位置調整弁81よりも下流側部分に連通させる。換言すれば、位置調整弁81が第2位置へ作動すると、中継ライン75が逃しライン7を通じてタンクへ連通する。
【0057】
位置調整弁81は、当該位置調整弁81を第2位置へ作動させるためのパイロットポートを有している。このパイロットポートは、パイロットライン67によりアーム押しパイロットライン64と接続されている。すなわち、位置調整弁81は、アーム押し操作時には、アーム操作弁60から出力されるパイロット圧に応じた開口面積で中継ライン75をタンクへ連通させる。
【0058】
本実施形態によれば、アーム押し操作時に、アームシリンダ25のヘッド側から流出する作動油の一部をアーム第1制御弁61およびアーム第2制御弁62を経由せずにタンクへ戻すことができる。すなわち、位置調整弁81および逃しライン7を合理的に利用して、アームシリンダ25の短縮時の背圧を低減することができる。
【0059】
(第4実施形態)
次に、
図7を参照して、本発明の第4実施形態に係る油圧ショベル駆動システム1Dを説明する。本実施形態の駆動システム1Dは、第3実施形態の油圧駆動システム1Cに変更を加えたものである。ただし、駆動システム1Dで用いられる規制装置8の位置調整弁81は、第3実施形態で説明したように3位置弁である必要はなく、第1実施形態で説明したように2位置弁であってもよい。
【0060】
本実施形態では、バケットイン供給ライン26aに、バケットシリンダ26のヘッド側の圧力を検出するための掘削検出器96が設けられている。制御装置9は、第2実施形態で説明したのと同様の制御を行うものの、アーム13の重心が近接領域B(
図2参照)にあると判定される場合は、掘削検出器96で検出される圧力に基づいて電磁比例弁82へ送給する電流を異ならせる。
【0061】
より詳しくは、アーム13の重心が遠方領域A(
図2参照)にあると判定される場合であって、
負荷検出器91で検出される圧力が所定値P1以上の場合には、制御装置9は、
図8に示すように、第1実施形態で説明した一定の傾きの電流/パイロット圧関係
線9aにより定まる電流を電磁比例弁82へ送給する。
【0062】
本実施形態では、制御装置9に、電流/パイロット圧関係線9aだけでなく、電流/パイロット圧関係線9aよりも傾きの小さな電流/パイロット圧関係線9bも予め格納されている。
【0063】
アーム13の重心が近接領域Bにあると判定される場合であって、掘削検出器96で検出される圧力が閾値P2以上の場合には、制御装置9は、電流/パイロット圧関係線9aにより定まる相対的に大きな電流を電磁比例弁82へ送給する。すなわち、掘削検出器96で検出される圧力が大きな場合には(例えば、掘削時)、近接領域Bでは逃しライン7が大きな開口面積で開放される。一方、掘削検出器96で検出される圧力が閾値P2未満の場合には、制御装置9は、電流/パイロット圧関係線9bにより定まる相対的に小さな電流を電磁比例弁82へ送給する。すなわち、掘削検出器96で検出される圧力が小さな場合には(例えば、空荷時)、近接領域Bでは逃しライン7が小さな開口面積で開放される。
【0064】
本実施形態によれば、アーム13の重心が近接領域Bにあると判定される場合でバケットが掘削していない動作において、アームの動く速度が速すぎず、遅すぎない適度な速度とすることができる。また、油圧ポンプの吐出圧力が必要以上に高くなることがないため、エネルギの無駄な消費を抑えることができる。
【0065】
(その他の実施形態)
本発明は、アームシリンダ25の伸長時のメータアウト制御以外にも、バケットシリンダ26の伸長時のメータアウト制御にも適用可能である。この場合、本発明の作業部がバケット14であり、本発明のヘッド側給排ラインがバケットイン供給ライン26aに相当し、本発明のロッド側給排ラインがバケットアウト供給ライン26bに相当する。そして、逃しライン7は、バケットアウト供給ライン26bから分岐する。本発明の作動部がバケット14である場合は、例えば、以下の(1)〜(4)の構成を採用することができる。
【0066】
(1)第1実施形態およびその変形例で説明したのと同様に、第2油圧ポンプ22から吐出される作動油の圧力またはバケットイン供給ライン26aを通じてバケットシリンダ26へ供給される作動油の圧力を検出するための負荷検出器が設けられてもよい。そして、逃しライン7を遮断または開放する規制装置8は、制御装置9により、バケットイン操作時(バケットイン供給ライン26aを通じてバケットシリンダ26へ作動油が供給される際)に、前記負荷検出器で検出される圧力が所定値P3未満の場合は逃しライン7を遮断し、前記負荷圧力検出器で検出される圧力が所定値P3以上の場合は逃しライン7を開放するように制御されてもよい。
【0067】
上記の構成によれば、バケットシリンダ26の伸長時(バケットイン操作時)に、バケットシリンダ26のヘッド側の圧力が小さい場合(例えば、空中でバケット14(
図2参照)を作動させる場合)には、逃しライン7が遮断される。このため、バケット制御弁71におけるシリンダ伸長時のタンク戻し用の開口面積を小さくしておけば、タンクに戻る作動油を絞ることができ、バケットシリンダ26のロッド側の背圧を十分高く保つことができる。これにより、バケット14の重心が揺動中心14a(
図2参照)の真下に到達するまでにバケットシリンダ26のヘッド側でキャビテーションが発生することを防止できるとともに、バケット14の重心が揺動中心14aの真下に到達した後にバケット14の揺動が一時的に停止することを防止できる。
【0068】
一方、バケットシリンダ26のヘッド側の圧力が大きい場合(例えば、掘削時)には、逃しライン7が開放される。このため、バケット制御弁71におけるシリンダ伸長時のタンク戻し用の開口面積を小さくしておいても、バケットシリンダ26の伸長時にバケットシリンダ26のロッド側の作動油の大部分は逃しライン7を通じてタンクへ戻る。その結果、第2油圧ポンプ22の吐出圧力が必要以上に高くなることがなく、エネルギーの無駄な消費を抑制することができる。
【0069】
(2)第1実施形態と同様に、規制装置8は、逃しライン7に設けられた位置調整弁81と電磁比例弁82で構成されていてもよい。また、制御装置9は、前記負荷検出器で検出される圧力が所定値P3以上の場合に、図略のバケット操作弁からバケット制御弁71へ出力されるパイロット圧と比例する電流を電磁比例弁82へ送給してもよい。位置調整弁81は、第2ブリードライン41上に配置される4ポート弁であってもよいし、第2ブリードライン41上に配置されない2ポート弁であってもよい。
【0070】
(3)第2実施形態と同様に、バケット14の位置を検出するための位置検出器が設けられていてもよい。前記位置検出器は、ブームシリンダ24に設けられたストロークセンサ94、アームシリンダ25に設けられたストロークセンサ95、およびバケットシリンダ26に設けられたストロークセンサ(図示せず)で構成されていてもよい。あるいは、前記位置検出器は、例えばバケットに設けられた傾斜センサであってもよいし、ブーム12の俯仰角、ブーム12とアーム13の間の角度およびアーム13とバケット14の間の角度を検出する3つの角度センサで構成されていてもよい。
【0071】
前記位置検出器が設けられている場合、制御装置9は、前記位置検出器の検出結果によりバケット14の重心が揺動中心14aを通る鉛直線よりも運転席から遠い側である遠方領域にあるか運転席に近い側である近接領域にあるかを判定してもよい。バケットの重心が遠方領域にあると判定される場合には、制御装置9は、前記負荷検出器で検出される圧力に応じて逃しライン7を遮断または開放するように規制装置8を制御してもよい。逆に、バケット14の重心が近接領域にあると判定される場合には、制御装置9は、前記負荷検出器で検出される圧力に拘らずに逃しライン7を開放するように規制装置8を制御してもよい。
【0072】
(4)前記第3実施形態と同様に、位置調整弁81は、中継ライン75によりバケットイン供給ライン26aと接続されており、バケットアウト供給ライン26bを通じてバケットシリンダ26へ作動油が供給される際に、中継ライン75を逃しライン7を通じてタンクへ連通させるように構成されていてもよい。この構成によれば、バケットアウト操作時に、バケットシリンダ26のヘッド側から流出する作動油の一部をバケット
制御弁71を経由せずにタンクへ戻すことができる。
【0073】
また、本発明がアームシリンダ25の伸長時のメータアウト制御に適用されるかバケットシリンダ26の伸長時のメータアウト制御に適用されるかを問わず、規制装置8は、必ずしも位置調整弁81と電磁比例弁82で構成されている必要はなく、単体の電磁開閉弁であってもよいし、単体の電磁絞り弁であってもよい。
【0074】
さらに、第1および第2油圧ポンプ21,22の吐出流量の制御方式は、必ずしもネガコン方式である必要はなく、ポジティブコントロール方式であってもよい。また、第1および第2油圧ポンプ21,22の吐出流量の制御方式は、ロードセンシング方式であってもよい。