特許第6231920号(P6231920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231920
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   B62K 25/20 20060101AFI20171106BHJP
   B62K 19/12 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   B62K25/20
   B62K19/12
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-63098(P2014-63098)
(22)【出願日】2014年3月26日
(65)【公開番号】特開2015-182707(P2015-182707A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093115
【弁理士】
【氏名又は名称】佐渡 昇
(72)【発明者】
【氏名】針生 淳
【審査官】 山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−001158(JP,A)
【文献】 特開平10−086872(JP,A)
【文献】 特開昭55−058495(JP,A)
【文献】 特開2004−276863(JP,A)
【文献】 特開昭61−215186(JP,A)
【文献】 特開平09−123973(JP,A)
【文献】 特開昭60−042181(JP,A)
【文献】 特開2010−023684(JP,A)
【文献】 特開2000−85670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 25/20
B62K 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドパイプ(11)と、その後方に延びるメインフレーム(20)と、当該メインフレーム(20)とは別体であって、メインフレーム(20)の後方に位置し、シート(2)を支える左右のシートレール(30)と、後輪(WR)を支持するスイングアーム(5)と、スイングアーム(5)の揺動中心であるピボット(41)を支持するピボットプレート(40)と、路面の振動を抑制するためのクッション(60)と、を備える鞍乗型車両であって、
前記クッション(60)の上端(61)は、前記左右のシートレール(30)の間に位置するクロス部材(100)によって受けられ、
当該クロス部材(100)は、前記シートレール(30)と別体であって、左右のシートレール(30)それぞれの内側において相対向して設けられた凹部(35)によって両端が支持され、かつ、クロス部材締結部材(73)によってシートレール(30)に締結されることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項2】
請求項において、
前記シートレール(30)は、車幅方向に型割をして製造し、
前記クロス部材(100)は、上下または前後方向に型割をして製造することを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記クッション(60)は、前記クロス部材(100)に対して、車幅方向から設けられるクッション結合部材(74)によって結合され、
当該クッション結合部材(74)の軸線方向の延長線上において、前記シートレール(30)に工具通し穴(36)が設けられることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項4】
請求項において、
前記クッション(60)は、車体中心線(C2)に対し、前記クッション結合部材(74)の挿入される側にオフセットした位置に配置されることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項5】
請求項において、
前記クロス部材(100)における前記クッション(60)との結合部(93)の車幅方向外側には、左右で大きさが異なる肉抜き穴(103L、103R)が設けられ、
それら肉抜き穴(103L,103R)には、対角線上にリブ(104L,104R)が設けられ、
大きい肉抜き穴(103R)のリブ(104R)の厚さ(t2)が、小さい肉抜き穴(103L)のリブ(104L)の厚さ(t1)より厚いことを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項6】
請求項1〜のうちいずれか一項において、
側面視において、前記クロス部材締結部材(73)は、前記クッション(60)の軸線(a1)と略平行に取り付けられることを特徴とする鞍乗型車両。
【請求項7】
請求項1〜のうちいずれか一項において、
前記シートレール(30)は、前側の一端(31)がメインフレーム(20)に、前側の他端(32)がピボットプレート(40)に取り付けられ、
前記クッション(60)の下端(62)は、リンク部材(63)を介してエンジン(50)とスイングアーム(5)とに取り付けられることを特徴とする鞍乗型車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鞍乗型車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に見られるように、前後に分かれた分割フレーム構造を有し、後側フレームでクッションの荷重を受ける鞍乗型車両が知られている。後側フレームは、ピボットプレートおよびクッション荷重受部がいずれもシートレールと一体となっているため、強度が大きいという利点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−116484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の鞍乗型車両では、後側フレームが高強度である一方、ピボットプレートおよびクッション荷重受部がいずれもシートレールと一体となっているため、重量面およびレイアウト面で非常に制約が多く、スリム、軽量で魅力的な完成車を造る上で大きな課題となっていた。
本発明が解決しようとする課題は、重量面およびレイアウト面での制約を小さくし、スリム、軽量化が可能な鞍乗型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
記課題を解決するために本発明の鞍乗型車両は、
ヘッドパイプ(11)と、その後方に延びるメインフレーム(20)と、当該メインフレーム(20)とは別体であって、メインフレーム(20)の後方に位置し、シート(2)を支える左右のシートレール(30)と、後輪(WR)を支持するスイングアーム(5)と、スイングアーム(5)の揺動中心であるピボット(41)を支持するピボットプレート(40)と、路面の振動を抑制するためのクッション(60)と、を備える鞍乗型車両であって、
前記クッション(60)の上端(61)は、前記左右のシートレール(30)の間に位置するクロス部材(100)によって受けられ、
当該クロス部材(100)は、前記シートレール(30)と別体であって、左右のシートレール(30)それぞれの内側において相対向して設けられた凹部(35)によって両端が支持され、かつ、クロス部材締結部材(73)によってシートレール(30)に締結されることを特徴とする。
この鞍乗型車両によれば、クッションの上端を受けるクロス部材は、シートレールと別体となっているので、クッション荷重が直接作用するクロス部材の材質をシートレールの材質とは異なる材質とすることが可能となるため、クロス部材のみの剛性を上げることによって、車両の全体的な一層の軽量化を図ることができるとともに、生産性も向上させることができる。
【0007】
この鞍乗型車両においては、クッションの上端を受けるクロス部材とシートレールとが別体となっているので、クロス部材とシートレールとで型割の方向を変えることができる。
したがって、全体的に軽量化を図りながら必要強度を確保することが可能となる。
特に、シートレールは車幅方向に型割をして製造し、クロス部材は上下または前後方向に型割をして製造する構成とすると、クロス部材の型割方向をクッション荷重の受け方向と略一致させることができるため、クロス部材の軽量化を図りながら必要強度を確保することができ、全体的にも、軽量化を図りながら必要強度を確保することが可能となる。
【0008】
この鞍乗型車両においては、
前記クッションは、前記クロス部材に対して、車幅方向から設けられるクッション結合部材によって結合され、
当該クッション結合部材の軸線方向の延長線上において、前記シートレールに工具通し穴が設けられる構成とすることができる。
このように構成すると、シートレールに設けられた工具通し穴を介し、車幅方向外側から容易にクッションの取り外し作業を行うことができる。
【0009】
この鞍乗型車両においては、
前記クッションは、車体中心線に対し、前記クッション結合部材の挿入される側にオフセットした位置に配置される構成とすることができる。
このように構成すると、シートレールに設けられた工具通し穴を介し、車幅方向外側から更に容易にクッションの取り外し作業を行うことができる。
【0010】
この鞍乗型車両においては、
前記クロス部材における前記クッションとの結合部の車幅方向外側には、左右で大きさが異なる肉抜き穴が設けられ、
それら肉抜き穴には、対角線上にリブが設けられ、
大きい肉抜き穴のリブの厚さが、小さい肉抜き穴のリブの厚さより厚い構成とすることができる。
このように構成すると、上記のようにオフセットさせたクッションから入る荷重によって傾きやすくなるクロス部材の変形を抑制することができる。
【0011】
この鞍乗型車両においては、
側面視において、前記クロス部材締結部材は、前記クッションの軸線と略平行に取り付けられる構成とすることができる。
このように構成すると、クッション荷重を効率よくクロス部材およびシートレールで受けることができる。
【0012】
この鞍乗型車両においては、
前記シートレールは、前側の一端がメインフレームに、他端がピボットプレートに取り付けられ、
前記クッションの下端は、リンク部材を介してエンジンとスイングアームとに取り付けられる構成とすることができる。
このように構成すると、シートレールを剛性部材であるエンジンに取り付けないようにすることができ、クッション下端をリンク部材を介してエンジンとスイングアームとに取り付けることと相俟って、車両全体のとしてのクッション性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る鞍乗型車両の一実施の形態を示す側面図。
図2】同実施の形態のフレーム構造を示す図で、(a)は部分省略平面図、(b)は側面図、(c)(c’)はそれぞれ図(b)におけるc−c断面図、(d)は図(b)におけるd−d断面図。
図3】主としてメインフレーム20を示す側面図。
図4図3における部分省略4矢視図。
図5】(a)は図3における部分省略5a−5a断面図、(b)は図3における部分省略5b−5b断面図。
図6】メインフレーム20の部分省略断面図(図7における部分省略6−6断面図)。
図7】作用を説明するためのフレームの概略的正面図。
図8】(a)はシートレール30およびピボットプレート40の斜視図、(b)はシートレール30の分解斜視図。
図9】クッション60の取付構造を示す側面図。
図10】クッション60の上部取付構造を示す斜視図。
図11】クロス部材100の取付構造を示す断面図。
図12】クロス部材100を示す図で、(a)は平面図、(b)は図(a)の右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る鞍乗型車両の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとし、以下の説明において、前後、左右、上下は、操縦者から見た方向に従い、必要に応じて図面に車両の前方をFr、後方をRr、左側をL、右側をR、上方をU、下方をD、として示す。各図において、同一部分ないし相当する部分には、同一の符号を付してある。
【0015】
図1に示す鞍乗型車両は自動二輪車であり、車体フレーム10を備えている。
車体フレーム10は、ヘッドパイプ11と、その後方に延びるメインフレーム20と、メインフレーム20の後方に位置し、シート2を支えるシートレール30と、シートレール30に連結されたピボットプレート40とを備えている。
【0016】
ヘッドパイプ11には、ハンドル3hおよびフロントフォーク3fを有するステアリング3が回動可能に支持され、フロントフォーク3fの下端に前輪WFが回転可能に支持されている。
メインフレーム20の上部には燃料タンク4が取り付けられる。
ピボットプレート40には、ピボット41で該ピボット41を中心として揺動するスイングアーム5が取り付けられ、該スイングアーム5の後端に後輪WRが回転可能に取り付けられる。
50は後輪WRを駆動するエンジン、60は路面の振動を抑制するためのクッションである。
【0017】
図3図4に示すように、メインフレーム20は、車幅方向外側から内側に向けて設けられた締結部材70によってエンジン50に締結されている。締結部材70はボルトで構成することができる。
締結部材70の近傍の位置において、メインフレーム20とエンジン50との間には、ノックピン(81および/または81’)が設けられている。このノックピンは、締結部材70の少なくとも1箇所の近傍の位置に設ける構成とすることもできるが、後述するように、メインフレーム20の前後左右、計4箇所に設けることが望ましい。
【0018】
図2にも示すように、メインフレーム20とシートレール30とは別体であり、締結部材70はメインフレーム20のみに設けられている。締結部材70は、メインフレーム20下部の前後左右4箇所に設けられている。図3においては左側前後の締結部材70が現れているが、右側についても同様である。
【0019】
この実施の形態においては、ノックピンとして、車幅方向と直交方向に設けられる第一ノックピン81、および/または車幅方向に設けられる第二ノックピン82が設けられる。
【0020】
第一ノックピン81は、メインフレーム20下部の前後左右4箇所に設けられた締結部材70の内、前側2箇所、または後側2箇所において、それぞれの締結部材70の下方に設けられる。第一ノックピン81は、メインフレーム20下部の前側2箇所(図3において左側のみ図示)に設けるが、図3に仮想線81’で示すように、メインフレーム20下部の後側2箇所(図3において左側のみ図示)に設けてもよい。
第一ノックピン81は、図5(b)に示すように、メインフレーム20に設けられた嵌合穴20hと、エンジン50に設けられた嵌合穴50h1とに嵌合する。
【0021】
第二ノックピン82は、メインフレーム20下部の前後左右4箇所に設けられた締結部材70それぞれの下方に設けられている。各第二ノックピン82は、図5(a)に示すように、メインフレーム20に設けられた雌ネジ部20sとネジ結合される雄ねじ部82sと、この雄ねじ部82sより先端側にあって、エンジン50に設けられた嵌合部50hと嵌合する嵌合部(ピン部)82pとを有している。
【0022】
図3に示すように、第一ノックピン81は、車両前後方向において、締結部材70と第二ノックピン82との間に設けられている。
【0023】
エンジン50は、シリンダ51、52が側面視V字形のVバンク形状であって、フロントバンク51の後部51rおよびリアバンク52の前部52fが締結部材70でメインフレーム20に締結され、Vバンク形状の中心線C1から前後方向外方に向かって、締結部材70、第一ノックピン81、第二ノックピン82の順に設けられている。
【0024】
図3に示すように、この実施の形態の自動二輪車は、第一ノックピン81を収容するメインフレーム20とエンジン50との合わせ面F1(図5(b)参照)を前後左右4箇所(図3において左側の2箇所のみ図示)備えており、当該合わせ面F1と前記Vバンク形状の中心線C1とが、側面視において直交している。
【0025】
側面視V字形のシリンダ51,52の間には、吸気ファンネル53が設けられ、当該吸気ファンネル53は、メインフレーム20内に形成されたエアクリーナケース21(図6参照)に開口している。エアクリーナケース21におけるダーティーサイド21dには、当該ダーティーサイド21dに溜まろうとする水を逃がす水抜き穴22が設けられている。
水抜き穴22は、フィルターエレメント21fの濾紙又はスポンジよりも下方に設ける。これによって、フィルターエレメント21fの濾紙又はスポンジの水没を防止することができる。また、図7にも示すように、水抜き穴22は、サイドスタンド駐車時に、ダーティーサイド21dの下端部となる位置に設ける。図7において、dは水抜き穴22から排出される水滴を示している。
【0026】
図8(a)に示すように、ピボットプレート40は、シートレール30と別体に設けられる。
図8(a)(b)に示すように、シートレール30は、左右のシートレール30(L,R)を、フロントクロスプレート33f、リヤクロスプレート33r、後端結合ボルト33b、および後述するクロス部材100で結合して構成される。
【0027】
フロントクロスプレート33fは、左右のシートレール30(L,R)の上部前部同士間を締結ボルト34fで結合する。
リヤクロスプレート33rは、左右のシートレール30(L,R)の上部後部同士間を締結ボルト34rで結合する。
後端結合ボルト33bは、左右のシートレール30(L,R)の後端締結部35r同士を結合する。
【0028】
図8(a)(b)および図2図3に示すように、シートレール30は、前側の一端31がメインフレーム20に、前側の他端32がピボットプレート40に取り付けられる。
メインフレーム20とシートレール30とは、第一締結部材71によって上下方向から締結される第一締結部91を備えている。
【0029】
第一締結部材71は、車両前方から見て、図2(c)に示すように、鉛直方向に設ける。ただし、図2(c’)に示すように、車幅方向外側から内側に向かって斜めに第一締結部91を締結することもできる。鉛直方向からの傾斜角度をθで示す。
ピボットプレート40とシートレール30とは、第二締結部材72によって車幅方向から締結される第二締結部92を備えている。
【0030】
図2に示すように、クッション60の上端61は上端結合部93によってシートレール30に結合されており、側面視において、車両前方から第一締結部91、第二締結部92、上端結合部93の順に並んでいる。
【0031】
第一締結部91または第二締結部92のどちらか一方にはノックピン83を設ける。図2(c)(c’)に示すように、この実施の形態では、ノックピン83は第一締結部91に設ける。ノックピン83は、第一締結部材71が挿入されるスリーブ状のピンである。
【0032】
図8図9に示すように、クッション60の上端結合部93は、左右のシートレール30(L,R)の間に位置するクロス部材100に設けられている。
クロス部材100は、シートレール30と別体であって、図11に示すように、左右のシートレール30(L,R)それぞれの内側において相対向して設けられた凹部35によって両端101が支持され、かつ、クロス部材締結部材73によってシートレール30に締結される。
【0033】
凹部35の上面35bは、座面を形成しており、この座面35bに、クロス部材100の上面102が当接する。
クロス部材締結部材73は、その先端部分73sにおいてのみシートレール30の上部に設けたネジ受部37とネジ結合し、他の部分および頭部73hは、クロス部材100に設けた貫通孔107およびシートレール30の下部と嵌合する。
【0034】
シートレール30は、車幅方向(L,R方向)に型割をして製造し、クロス部材100は、押し出し材で構成するか、または上下方向(U,D方向)に型割をして製造する。
【0035】
図1図2に示すように、シートレール30は側面視Y字形状であって、第一締結部91、第二締結部92はY字の腕の端部に設けられている。
【0036】
図9図10に示すように、クッション60は、クロス部材100に対して、車幅方向から設けられるクッション結合部材74によって結合される。
クッション結合部材74の軸線方向の延長線上において、シートレール30(この実施の形態では左のシートレール30(L))には、図2(b)および図8(b)に示すように、工具通し穴36が設けられている。
クッション結合部材74はボルトであり、左のシートレール30(L)に設けられた工具通し穴36からクロス部材100へ向けて挿入され、クロス部材100の挿通穴105、クッション60の上端61の穴61h、およびクロス部材100の貫通穴106を通って、先端のネジ部74sがナット74nとネジ結合される。
図10において、200は工具、108は工具200を通すために、クロス部材100に設けられた工具通し用凹部である。
【0037】
図2(a)および図12(a)に示すように、クッション60は、車体中心線C2に対し、クッション結合部材74の挿入される側(図示のものは左側)にオフセットした位置に配置される。
【0038】
図12に示すように、クロス部材100におけるクッション60との結合部93の車幅方向外側には、左右で大きさが異なる肉抜き穴103L,103Rが設けられており、それら肉抜き穴103L,103Rには、対角線上にリブ104L、104Rが設けられている。
大きい肉抜き穴103Rのリブ104Rの厚さt2は、小さい肉抜き穴103Lのリブ104Lの厚さt1より厚くなっている。
【0039】
図9に示すように、側面視において、クロス部材締結部材73は、クッション60の軸線a1と略平行に取り付けられる。
【0040】
図9に示すように、クッション60の下端62は、リンク部材63を介してエンジン50とスイングアーム5とに取り付けられている。
【0041】
以上のような鞍乗型車両によれば次のような作用効果が得られる。
(1)メインフレーム20は車幅方向外側から内側に向けて設けられた締結部材70によってエンジン50に締結されるため、フレームとエンジン50とを締結する際の作業方向が車幅方向となり、作業性が良くなって、生産性が向上する。
ここで、ただ単に車幅方向に締結部材70を設けると、発進・停車といった動作時に生じる前後方向の荷重を、締結部材70の軸方向と垂直方向の部分(腹部)で受けることとなり、締結部材70そのものに強度が求められ、コスト高になるおそれがある。
これに対し、この実施の形態の鞍乗型車両によれば、前記締結部材70の少なくとも1箇所の近傍の位置で、メインフレーム20とエンジン50との間に、ノックピン(81および/または81’および/または82)が設けられているので、発進・停車といった動作時に生じる前後方向の荷重をノックピンで受けることが可能となる。そして、ノックピンの取付作業は、締結部材70による締結作業に比べて容易である。
以上のように、この実施の形態の鞍乗型車両によれば、作業性を良くして生産性を向上させることができると同時に、締結部材70そのものの強度を抑えながらも、発進・停車といった動作時に生じる前後方向の荷重に対応することが可能になる。
【0042】
(2)メインフレーム20とシートレール30とは別体であって、締結部材70はメインフレーム20のみに設けられ、かつ、メインフレーム20下部の前後左右4箇所に設けられているので、メインフレーム20に作用する外力の影響がシートレール30に及ぶことを、逆にシートレール30に作用する外力の影響がメインフレーム20に及ぶことを、それぞれ緩和することができる。したがって、発進・停車といった動作時に生じる前後方向の荷重への対応がより良好となる。
【0043】
(3)ノックピンとして、車幅方向と直交方向に設けられる第一ノックピン81、および/または車幅方向に設けられる第二ノックピン82が設けられているので、第一、第二のノックピン81,82を適切に設けることで、前後左右方向の荷重に対応することができ、締結座面(合わせ面)F1のスリップを防止(少なくとも著しく抑制)することができる。
【0044】
(4)第一ノックピン81は、メインフレーム20下部の前後左右4箇所に設けられた締結部材70の内、前側2箇所、または後側2箇所において、それぞれの締結部材70の下方に設けられているので、路面反力入力時の締結座面F1のスリップをできるだけコストを抑えながら防ぐことが可能となる。
仮に、全4箇所に第一ノックピン81を設けようとした場合には、部品間の精度が高く求められるため、コストがあがってしまう。
これに対し、前方もしくは後方2箇所に第一ノックピン81を配置することで、路面反力入力時の締結座面F1のスリップをできるだけコストを抑えながら防ぐことが可能となる。
【0045】
(5)第二ノックピン82は、メインフレーム20下部の前後左右4箇所に設けられた締結部材70それぞれの下方に設けられ、各第二ノックピン82は、前記メインフレーム20に設けられた雌ネジ部20sとネジ結合される雄ねじ部82sと、当該雄ねじ部82sより先端側にあって、エンジン50に設けられた嵌合部50hと嵌合する嵌合部82pとを有しているので、各第二ノックピン82とエンジン50との嵌合によって、締結部材70を中心としてメインフレーム20が回転しようとする力を更に抑えることができる。
また、前後左右4箇所に第二ノックピン82を設けているにもかかわらず、その方向は車幅方向であるので、作業性は損なわれず、また、メインフレーム20における雌ネジ部20sとエンジン50における嵌合部50hは同方向に設けられるため、容易に高精度に作製することが可能であり、コストアップにはつながりにくい。
【0046】
(6)車両前後方向において、第一ノックピン81は、締結部材70と第二ノックピン82との間に位置しているので、締結座面F1をスリップさせようとする力が作用した際、締結座面F1同士の間隔が開きにくい位置に第一ノックピン81が設けられることとなる。そのため、第一ノックピン81による締結座面F1のスリップ防止作用が向上する。
【0047】
(7)エンジン50は、シリンダ51,52が側面視V字形のVバンク形状であって、フロントバンク51の後部51rおよびリアバンク52の前部52fが締結部材70で締結され、Vバンク形状の中心線C1から前後方向外方に向かって、締結部材70、第一ノックピン81、第二ノックピン82の順に設けられているので、Vバンク形状の中心線C1に関してシンメトリーな外観性が得られるとともに、組み付け性も向上する。
【0048】
(8)第一ノックピン81を収容するメインフレーム20とエンジン50との合わせ面F1を、前後左右4箇所に備え、当該合わせ面F1とVバンク形状の中心線C1とが、側面視において直交しているので、Vバンク形状の中心線C1に関してシンメトリーな外観性が得られるとともに、組み付け性も向上する。
【0049】
(9)側面視V字形のシリンダ51,52の間には、吸気ファンネル53が設けられ、当該吸気ファンネル53は、メインフレーム20内に形成されたエアクリーナケース21に開口され、エアクリーナケース21におけるダーティーサイド21dには、当該ダーティーサイド21dに溜まろうとする水を逃がす水抜き穴22が設けられているので、メインフレーム20の効率的利用が可能となる。
(10)この鞍乗型車両によれば、ピボットプレート40とシートレール30とが別体となっているので、重量面およびレイアウト面での制約を小さくすることができる。したがって、スリム、軽量化が可能となる。
このように、ピボットプレート40とシートレール30とを別体にした場合において、例えばシートレール30でクッション60の上端61を支持する構造としたときには、クッション60からの大きな荷重がシートレール30に入力された際、シートレール30とメインフレーム20並びにピボットプレート40との締結構造によっては、締結部における座面が相対的にスリップし、ディメンションや締結剛性が変化してしまうことも考えられる。
これに対し、この鞍乗型車両によれば、シートレール30は、前側の一端31がメインフレーム20に、前側の他端32がピボットプレート40に取り付けられ、メインフレーム20とシートレール30とは、第一締結部材71によって上下方向から締結される第一締結部91を備え、ピボットプレート40とシートレール30とは、第二締結部材72によって車幅方向から締結される第二締結部92を備えているので、シートレール30は、上下方向と車幅方向という異なる方向から締結される第一、第二締結部91,92を有することとなり、それによって、大きな荷重が入力された場合でも、締結部における座面F2,F3(図2(c)(d)参照)が相対的にスリップしにくくなり、ディメンションや締結剛性が変化しにくくなるという効果が得られる。
【0050】
(11)クッション60の上端61は上端結合部93によってシートレール30に結合され、
側面視において、車両前方から第一締結部91、第二締結部92、上端結合部93の順に並んでいるので、シートレール30にクッション60の荷重が入力された際、車幅方向に締結された第二締結部92を中心としてシートレール30を回動させるような力の作用を上下方向に締結された第一締結部91で良好に受け止めることが可能となる。
【0051】
(12)第一締結部91または第二締結部92のどちらか一方にノックピン83を設けることにより、第一締結部91または第二締結部92の座面にスリップ荷重の負荷が掛からないようにすることができる。また、どちらか一方にのみノックピン83を設けることによって、部品間のバラツキを吸収することができる。
【0052】
(13)この実施の形態では、ノックピン83は第一締結部91に設けたので、第一締結部91は第一締結部材71によって上下方向から締結されることから、ノックピン83を上方から入れやすくなり、作業性が向上する。
【0053】
(14)この鞍乗型車両によれば、ピボットプレート40とシートレール30とが別体となっているので、重量面およびレイアウト面での制約を小さくすることができる。したがって、スリム、軽量化が可能となる。
しかも、クッション60の上端結合部93は、左右のシートレール30の間に位置するクロス部材100に設けられ、当該クロス部材100は、シートレール30と別体であって、左右のシートレール30それぞれの内側において相対向して設けられた凹部35によって両端101が支持され、かつ、クロス部材締結部材73によってシートレール30に締結されているので、クッション60の荷重が直接作用するクロス部材100の材質をシートレール30の材質とは異なる材質とすることが可能となる。そのため、クロス部材100のみの剛性を上げることによって、車両の全体的な軽量化を図ることができるとともに、生産性も向上させることができる。
例えば、シートレール30はアルミダイカストとし、クロス部材100はアルミ展伸材とする。アルミ展伸材の材料強度は、アルミダイカストの3,4倍である。
【0054】
(15)凹部35の上面35bは、座面を形成しており、この座面35bに、クロス部材100の上面102が当接し、クロス部材締結部材73は、その先端部分73sにおいてのみシートレール30の上部に設けたネジ受部37とネジ結合し、他の部分および頭部73hは、クロス部材100に設けた貫通孔107およびシートレール30の下部と嵌合するので、クッション60からの荷重を主として座面35bで受けることができ、ネジ結合部(73s、37)に大きな荷重が掛からないようにすることができる。。
【0055】
(16)シートレール30は、車幅方向に型割をして製造し、クロス部材100は、押し出し材で構成するか、または上下方向に型割をして製造することにより次のような効果が得られる。
クッション60の上端61を受けるクロス部材100とシートレール30とを別体とすると、クロス部材100とシートレール30とで型割の方向を変えることができる。
したがって、全体的に軽量化を図りながら必要強度を確保することが可能となる。
特に、シートレール30は車幅方向に型割をして製造し、クロス部材100は押し出し材で構成するか、または上下方向に型割をして製造すると、クロス部材100の押し出し方向または型割方向をクッション60荷重の受け方向と略一致させることができるため、クロス部材100の軽量化を図りながら必要強度を確保することができ、全体的にも、軽量化を図りながら必要強度を確保することが可能となる。
また、シートレール30については、車幅方向内側に突出形成される補強リブ38等を容易に製造できるようになり、クロス部材100については、リブ104(L,R)を容易に製造できるようになる。
【0056】
(17)シートレール30は側面視Y字形状であって、第一締結部91、第二締結部92はY字の腕の端部に設けられているので、Y字の腕の間S1(図2(b)参照)を空けることができ、シートレール30を軽量化することができる。
【0057】
(18)第一締結部材71は、図2(c’)に示すように、車両前方から見て、車幅方向外側から内側に向かって斜めに第一締結部91を締結した場合には、締結作業を行いやすくなる。
【0058】
(19)クッション60は、クロス部材100に対して、車幅方向から設けられるクッション結合部材74によって結合され、当該クッション結合部材74の軸線方向の延長線上において、シートレール30に工具通し穴36が設けられているので、シートレール30に設けられた工具通し穴36を介し、車幅方向外側から容易にクッション60の取り外し作業を行うことができる。
【0059】
(20)クッション60は、車体中心線C2に対し、クッション結合部材74の挿入される側にオフセットした位置に配置されるので、シートレール30に設けられた工具通し穴36を介し、車幅方向外側から更に容易にクッション60の取り外し作業を行うことができる。
【0060】
(21)クロス部材100におけるクッション60との結合部(93)の車幅方向外側には、左右で大きさが異なる肉抜き穴103L,103Rが設けられ、それら肉抜き穴103L,103Rには、対角線上にリブ104L,104Rが設けられ、大きい肉抜き穴104Rのリブ104Rの厚t2さが、小さい肉抜き穴103Lのリブ104Lの厚さt1より厚くなっているので、上記のようにオフセットさせたクッション60から入る荷重によって傾きやすくなるクロス部材100の変形を抑制することができる。
【0061】
(22)側面視において、クロス部材締結部材73は、クッション60の軸線a1と略平行に取り付けられるので、クッション60の荷重を効率よくクロス部材100およびシートレール30で受けることができる。
【0062】
(23)シートレール30は、前側の一端31がメインフレーム20に、他端がピボットプレート40に取り付けられ、クッション60の下端62は、リンク部材63を介してエンジン50とスイングアーム5とに取り付けられるので、シートレール30を剛性部材であるエンジン50に取り付けないようにすることができ、クッション60の下端62をリンク部材63を介してエンジン50とスイングアームとに取り付けることと相俟って、車両全体のとしてのクッション性を確保することができる。
【0063】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変形実施可能である。
【符号の説明】
【0064】
2:シート、5:スイングアーム、10:車体フレーム、11:ヘッドパイプ、20:メインフレーム、20s:雌ネジ部、21:エアクリーナケース、21d:ダーティーサイド、22:水抜き穴、30:シートレール、31:前側の一端31、32:前側の他端、35:凹部、36:工具通し穴、40:ピボットプレート、41:ピボット、50:エンジン、50h:嵌合部、51:フロントバンク、52:リアバンク、53:吸気ファンネル、60:クッション、61:上端、62:下端、63:リンク部材、70:締結部材、71:第一締結部材、72:第二締結部材、73:クロス部材締結部材、74:クッション結合部材、81〜83:ノックピン、82s:雄ねじ部、82p:嵌合部、91:第一締結部、92:第二締結部、93:上端結合部、100:クロス部材、101:両端、103(L、R):肉抜き穴、104(L,R):リブ、a1:クッション60の軸線、C1:Vバンク形状の中心線、C2:車体中心線、F1:合わせ面。
図1
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図12