【実施例】
【0026】
図1に示すように、自動二輪車10は、前輪11を転舵させるステアリングシャフト12を回転可能に支えるヘッドパイプ31と、このヘッドパイプ31に前端が溶接され車両後方へ延びるメインフレーム32と、このメインフレーム32の後部に前端が連結され車両後方へ延びピボットフレーム34とからなる車体フレーム30を、要部とする車両である。
【0027】
ピボットフレーム34には、ピボット軸33が設けられており、このピボット軸33にスイングアーム14が上下移動可能に取付けられ、このスイングアーム14に後輪13が取付けられる。
【0028】
本実施例では、メインフレーム32は、左メインフレーム32L(Lは左を示す添え字。以下同じ)と右メインフレーム32R(Rは右を示す添え字。以下同じ)で構成する。左・右メインフレーム32L、32Rの後部に左・右ピボットフレーム34L、34Rが接続される。なお、メインフレーム32は、いわゆるセンターフレームと呼ばれ、車幅中心に1本の長手フレームを延ばす構造の物であってもよい。
【0029】
好ましくは、ヘッドパイプ31からダウンフレーム35を下へ延ばし、このダウンフレーム35の下部から車体後方へ左・右ロアフレーム36L、36Rを延ばし、左・右ロアフレーム36L、36Rを左・右ピボットフレーム34L、34Rに各々接続してエンジン15を収納する空間を形成する。
エンジン15を車体フレーム30に形成された空間に収納しつつ支持し、エンジン15から排気管16を延ばす。この排気管16はエンジン15の側方(この例では右側方)を通るようにして車両後方へ延ばされる。排気管16の後部に消音器17が取付けられる。
【0030】
また、ヘッドパイプ31の後方で且つ左・右メインフレーム32間に燃料タンク18が取付けられる。メインフレーム32L、32Rの後部又はピボットフレーム34L、34Rの上部からシートフレーム19L、19Rが延ばされ、シートフレーム19L、19Rに乗員が座るシート21が載せられ、シートフレーム19L、19Rに支持される。
【0031】
車体フレーム30は、
図2に示すように、ヘッドパイプ31と、このヘッドパイプ31から車両後方へ延びる左・右メインフレーム32L、32Rと、メインフレーム32L、32Rの後部から下へ延びる左・右ピボットフレーム34L、34Rと、ヘッドパイプ31から斜め下へ延びるダウンフレーム35と、このダウンフレーム35の後部から延びてピボットフレーム34L、34Rに接続されるロアフレーム36L、36Rと、スティフナーガセット37を介してダウンフレーム35に接続され車体中心を車体後方へ延びるスティフナーパイプ38とを備えている。
【0032】
加えて、ダウンフレーム35とロアフレーム36L、36Rとの接続部位近傍に、略三角形状のエンジンハンガー41Lがボルト42で締結される。このエンジンハンガー41Lはエンジン(
図1、符号15)に向かって延びている。
また、ピボットフレーム34の下部に、ステップブラケット43が取付けられ、スティフナーパイプ38に電装品ブラケット44が取付けられている。
以上に述べたエンジンハンガー41L、ステップブラケット43及び電装品ブラケット44の取付構造の詳細について、以下、順に説明する。
【0033】
図3に示すように、車体側部材であって且つアルミニウム合金からなるエンジンハンガー41Lは、このエンジンハンガー41Lに取付けられる支持部材であって且つ鉄系材料からなる円筒形のカラー45を備えている。
鉄系材料は炭素鋼、ステンレス鋼など鉄元素(Fe)を主成分とする鋼であって、アルミニウム合金に代表される軽金属(マグネシウム合金などを含む。)より、強度が格段に高い。
【0034】
図4に示すように、エンジンハンガー41Lは貫通穴46を有し、この貫通穴46にカラー45が軽圧入される。圧入法は、貫通穴46の内径よりカラー45の外径を大きくしておき、径の差に基づいて発生する圧縮力を利用して、貫通穴46にカラー45を固定する工法である。後述するエンジンハンガー41Rについても同様の工法を適用する。
【0035】
カラー45が貫通穴46より大きいため、常温では貫通穴46にカラー45が圧入できない。
そこで、例えばエンジンハンガー41Lを暖める。すると貫通穴46の径が大きくなる。この状態でカラー45を挿入する。そして、常温に戻すと、貫通穴46が縮径し、カラー45を圧縮する。または、カラー45をドライアイスで冷却する。すると、カラー45の外径が小さくなる。この状態でカラー45を貫通穴46へ挿入する。そして、常温に戻すと、カラー45が増径し、貫通穴46を圧縮する。
【0036】
軽圧入は径の差が小さなものを指す。径の差が小さいため、エンジンハンガー41Lを暖める場合はそれほど高温にする必要が無く、カラー45を冷却する場合もそれほど低温にする必要がない。
【0037】
さらには、軽圧入は、径の差が小さいため、カラー45の一端を先尖りテーパ部にし、このテーパ部を貫通穴46の入口に差し込み、油圧プレスでカラー45を強引に貫通穴46へ圧入することもできる。この手法は常温下で手軽に実施できる。
【0038】
ところで、レーザ溶接法では、2つの部材間の隙間を可及的に小さく(例えば0.01mm以下に)する必要がある。軽圧入により、貫通穴46の内周面とカラー45の外周面との間に隙間が無くなるため、レーザ溶接が可能となる。
そこで、軽圧入後に、レーザ溶接トーチ47にてカラー45の外周に沿ってレーザ光48を照射する。結果、レーザ溶接ビード49でカラー45がエンジンハンガー41Lに連結・固定される。
【0039】
レーザ溶接は、アーク溶接に比較して入熱が格段に大きいため、異種材料(アルミニウム合金と鉄系材料)をごく短い時間で接合することができ、且つ、溶接ビードの幅が小さくて深さが大きいため、外観に現れるビード幅は小さくて外観性が良好になる。
【0040】
図5に示すように、フレーム35の車両後方に、アルミニウム合金製のエンジン15が配置される。車幅方向右側に配置されるエンジンハンガー41Rは、ダウンフレーム35の後部から延出される。又は、エンジンハンガー41Rは、ダウンフレーム35の後部に溶接される。エンジンハンガー41Rにもエンジンハンガー41Lと同様にしてカラー45が圧入されレーザ溶接されている。
【0041】
車幅方向左側に配置されるエンジンハンガー41Lは、ダウンフレーム35にボルト42で締結される。エンジンハンガー41L、41Rは、エンジン15に向かって延びており、カラー45、45を通るボルト51で、エンジン15に締結される。
【0042】
カラー45を省いて、エンジンハンガー41L、41Rの全体をアルミニウム合金とすることや全体を鉄系材料とすることが考えられる。
全体を鉄系材料にすると強度の点では問題ないが、重くなり、軽量化の点で難がある。
【0043】
一方、全体的にアルミニウム合金製とし、これをアルミニウム合金製のエンジン15に当てる場合、エンジン15の振動により摩耗が進行して黒色に変色してしまうフレッティング現象が起こる。この点、本実施例では、アルミニウム合金製のエンジンハンガー41L、45Rにレーザ溶接で鉄系材料からなるカラー45を取付けて、このカラー45をエンジン15に当てるようにしたので、フレッティング現象が起こる心配はない。
【0044】
次にステップブラケット43について説明する。
図6に示すように、ピボットフレーム34から車幅方向外方へ凸になるように、車体フレーム側部材としての座53を一体形成する。座53は先端に平坦面54を有する。ピボットフレーム34がアルミニウム合金製であるため、座53もアルミニウム合金製である。
【0045】
支持部材としてのステップブラケット43は、底部55とこの底部55の両端から車幅方向外方へ延びる軸支持部56、56とからなる。ステップブラケット43は鉄系材料からなる。
底部55を平坦面54に当てながら、ステップブラケット43をレーザ溶接ビード49、49で座53に接合する。
【0046】
軸支持部56はステップ回転軸57を挿入する軸穴58を有している。一対の軸支持部56、56の間にステップ59の基部59a、59a、を挿入し、軸穴58、58にステップ回転軸57を通し、ステップ回転軸57の先に座金61を取付け、割りピン62を取付ける。
【0047】
結果、
図7に示すように、ステップ59がステップ回転軸57及びステップブラケット43を介してピボットフレーム34に取付けられる。ボルトを用いることなく、ステップブラケット43をピボットフレーム34に取付けることができたので、ボルトの分は重量の軽減が図れる。
【0048】
レーザ溶接ビード49、49が目立たないため、外観性も高まる。その上、ステップ回転軸57と底部55との間の空間は、従来であればボルトの頭を収納する空間であるが、本実施例ではボルトを用いないため、図中、底部55とステップ59の基部59aの間の距離Lを短縮することができる。これにより、軸支持部56、56が短くなり、ステップブラケット43の剛性を高くしつつ小型・軽量化が図れる。
【0049】
次に、別の形態のステップブラケット43を説明する。
図8に示すように、ピボットフレーム34から車幅方向外方へ凸になるように、車体フレーム側部材としての座53を一体形成する。座53は先端に平坦面54を有する。ピボットフレーム34がアルミニウム合金製であるため、座53もアルミニウム合金製である。
【0050】
支持部材としてのステップ支持ピース63は、車幅方向外方へ延びる略矩形断面を呈する部材であり、鉄系材料からなる。
ステップ支持ピース63を平坦面54に当てながら、レーザ溶接ビード49、49で座53に接合する。レーザ溶接ビード49は、ビード深さがアーク溶接ビードに比較して格段に大きい。結果、ビード長さが小さくても十分な接合強度が得られる。
【0051】
ステップ支持ピース63はステップ回転軸57を挿入する軸穴58を有している。ステップ59の基部59a、59aでステップ支持ピース63を挟むようにし、次にステップ回転軸57を通し、ステップ回転軸57の先に座金61を取付け、割りピン62を取付ける。
【0052】
結果、
図9に示すように、ステップ59がステップ回転軸57及びステップ支持ピース63を介してピボットフレーム34に取付けられる。ボルトを用いることなく、ステップ支持ピース63をピボットフレーム34に取付けることができたので、ボルトの分は重量の軽減が図れる。
その上、ステップ支持ピース63は、ステップブラケット(
図6、符号43)に比較して格段に小さいため、車体フレームの軽量化に寄与する。
【0053】
次に電装品ブラケット44について説明する。
図10は車体フレーム(一部)の右側面図であり、アルミニウム合金製のスティフナーパイプ38に、鉄系材料からなる電装品ブラケット44が、レーザ溶接ビード49、49、49で取付けられている。レーザ溶接によるスポット溶接が好適であるが、レーザ溶接による連続溶接であっても良い。
【0054】
図11に示すように、スティフナーパイプ38に電装品ブラケット44を当てた状態で、レーザ溶接トーチ47により、レーザ光48を照射する。レーザ熱により電装品ブラケット44が局部的に溶ける。レーザ光48は電装品ブラケット44を貫通してスティフナーパイプ38を局部的に溶かす。照射を止めると溶融金属が凝固してレーザ溶接ビード49が形成される。このレーザ溶接ビード49で電装品ブラケット44がスティフナーパイプ38に固定される。
【0055】
ビード幅が小さくて、ビード深さが大きいため、溶着金属の断面積がアーク溶接に比較して格段に小さく、溶融金属の強固に伴う収縮が小さくなり、電装品ブラケット44に与える熱影響が大幅に軽減できる。結果、アーク溶接での取付けに比較して、レーザ溶接によれば電装品ブラケット44の変形を大幅に抑制することができる。
【0056】
尚、実施例ではエンジンハンガーをダウンフレームに取付けたが、エンジンハンガーは車体フレームの任意の部位に設けることができる。ステップブラケット、電装品ブラケットも同様に車体フレームの任意の部位に設けることができる。
また、本発明は、自動二輪車に好適であるが、ヘッドパイプを有する三輪バギーや四輪バギーに適用可能である。