特許第6231935号(P6231935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6231935樹脂モールド型コンデンサおよびその製造方法、成型用型枠
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231935
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】樹脂モールド型コンデンサおよびその製造方法、成型用型枠
(51)【国際特許分類】
   H01G 13/00 20130101AFI20171106BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20171106BHJP
   H01G 4/18 20060101ALI20171106BHJP
   H01G 9/08 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   H01G13/00 321K
   H01G1/02 R
   H01G1/02 P
   H01G4/24 311
   H01G9/08 C
   H01G13/00 321L
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-87896(P2014-87896)
(22)【出願日】2014年4月22日
(65)【公開番号】特開2015-207679(P2015-207679A)
(43)【公開日】2015年11月19日
【審査請求日】2016年10月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
(72)【発明者】
【氏名】東 寛敏
(72)【発明者】
【氏名】藤田 亮二
【審査官】 右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−028320(JP,A)
【文献】 特開昭60−160601(JP,A)
【文献】 米国特許第05885505(US,A)
【文献】 特開昭50−110057(JP,A)
【文献】 特開平05−217801(JP,A)
【文献】 特開2006−253349(JP,A)
【文献】 特開平01−072519(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 13/00
H01G 2/10
H01G 4/18
H01G 9/08
H01F 41/00
H01C 17/00
H01M 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成型品である樹脂モールド型コンデンサを成型する成型用型枠として、その型枠内に得られる成型品の稜線部相当位置から離れた位置のパーティングラインをもって分割構成された複数の型枠構成プレートを組み立てた組立式の成型用型枠を用いることとして、
前記組立式の成型用型枠のキャビティ内にコンデンサユニットを収容し、前記キャビティ内に溶融樹脂を注入充填し、注入樹脂の固化をまって成型品を成型し、
次いで、前記成型用型枠を離型して前記キャビティ内に得られた前記成型品を取り出し、
次いで、取り出した前記成型品の表面の平面領域において、その成型品の稜線部から離れた位置のパーティングライン対応箇所に現れているバリを除去することを特徴とする樹脂モールド型コンデンサの製造方法。
【請求項2】
前記成型用型枠として、その内側面において、前記パーティングラインがある端縁から反対側の端縁に向けて一定の広がりをもつ領域が凹領域に形成された型枠構成プレートを組み立てた成型用型枠を用いる請求項1に記載の樹脂モールド型コンデンサの製造方法。
【請求項3】
分割構成された複数の型枠構成プレートからなり、その複数の型枠構成プレートを組み立てた状態で、成型品として樹脂モールド型コンデンサを成型するための樹脂が充填される組立式の成型用型枠であって、前記複数の型枠構成プレートは、そのパーティングラインが前記成型用型枠のキャビティ内に得られる前記成型品の稜線部相当位置から離れた平面領域の位置に定められていることを特徴とする樹脂モールド型コンデンサ用の組立式の成型用型枠。
【請求項4】
前記型枠構成プレートは、その内側面において、前記パーティングラインがある端縁から反対側の端縁に向けて一定の広がりをもつ領域が凹領域に形成されている請求項3に記載の組立式の成型用型枠。
【請求項5】
組み立てられた前記成型用型枠の樹脂充填空間はほぼ直方体形状であり、前記成型用型枠が広幅の前側面部・後側面部と狭幅の左側面部・右側面部との4つの型枠構成プレートから構成されているものとして、前記成型用型枠が、前記左側面から右方向に所定間隔だけ隔てた近傍位置で、前記成型用型枠の内周面のうち、前側面から底面を通って後側面に至る第1のパーティングラインと、右側面から左方向に所定間隔だけ隔てた近傍位置で、前記前側面から前記底面を通って前記後側面に至る第2のパーティングラインと、底面を前後方向に2分割し、前記第1および第2のパーティングラインを連結するように左右方向に延びる第3のパーティングラインとにより、4つの型枠構成プレートに分割された形態となっている請求項3または請求項4に記載の組立式の成型用型枠。
【請求項6】
樹脂モールド型コンデンサの外周面を形成する複数の側面のうち、対向する第1および第2の2つの側面とこれら第1および第2の両側面に連なる第3の側面において、前記連なる3つの側面に対して隣接する他の側面との境界上の稜線部から所定寸法を隔てた平面領域の位置であって、成型時の組立式の成型用型枠のパーティングライン対応箇所に線状バリ除去跡が現れていることを特徴とする樹脂モールド型コンデンサ。
【請求項7】
前記パーティングライン対応箇所からその両側に向けて一定の広がりをもつ領域が薄肉凸領域に形成され、この薄肉凸領域のほぼ中央に沿って前記線状バリ除去跡が形成されている請求項6に記載の樹脂モールド型コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンデンサユニットが外装樹脂で被覆されたケースレスの樹脂モールド型コンデンサの製造方法に関する。また、樹脂モールド型コンデンサの製造に用いる成型用型枠ならびに成型品である樹脂モールド型コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
図9は従来例の樹脂モールド型コンデンサ50を示す斜視図、図10はその樹脂モールド型コンデンサ50をモールド成型するための組立式の成型用型枠(金型)60を示す斜視図、図11はその成型用型枠60を構成要素5つの型枠構成プレート61,62,63,64,65に分割した状態を示す斜視図である。図9に示す樹脂モールド型コンデンサ50は、その外殻が外装樹脂52で構成され、外装樹脂52の内部にはコンデンサユニット51が埋入されている。すなわち、コンデンサユニット51はエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂からなる外装樹脂52によって被覆され、保護されている。
【0003】
モールド成型を行う際に用いる成型用型枠60内にコンデンサユニット51をセットし、型締めした上で成型用型枠60のキャビティに溶融樹脂を注入充填し、充填樹脂が硬化したのち、離型を行い、樹脂モールド型コンデンサ50を得る。樹脂モールド型コンデンサ50を成型用型枠60から離型した直後においては、図9に示すように、樹脂モールド型コンデンサ50の8つの稜線部50a〜50hにバリ70が生じている。バリ70は断続的な×印の記号で強調表示している。バリ70は概ね8つの稜線部50a〜50hに現れる。それは、樹脂モールド型コンデンサ50の4つの角部で鉛直方向に沿った稜線部50a,50b,50c,50dと、底面における平行な2つの長尺な稜線部50e,50fと、同じく底面における平行な2つの短尺な稜線部50g,50hとである。
【0004】
このような8つの稜線部50a〜50hに現れるバリ70は離型直後において除去しなければならない。バリ70をそのまま残しておくと、バリ70が不用意に脱離して汚染源となったり、怪我の原因になるおそれがあるし、床やテーブルやフレームなどの平面上に載置したときの設置安定性が悪くなるからである。バリ除去作業は主として手作業で行われる。バリ除去工具としては回転式、無端ベルト式または振動式のバリ除去工具80が用いられる。
【0005】
なお、パーティングラインとバリについて言及した先行技術文献として特許文献1〜3があるが、それらの論旨は本発明にかかわる下記の課題とは異なるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】2013−248754号公報
【特許文献2】2001−88713号公報
【特許文献3】2001−118356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記で説明した従来の樹脂モールド型コンデンサ50にあっては、バリ70を除去するのに、研摩工具である電動サンダなどのバリ除去工具80を用いて樹脂成型体のバリを除去する。具体的には、バリ除去工具80を手で持ち、サンディングディスクなどのバリ除去作用面81を稜線部にあてがい、切削をしながらバリ除去工具80を持った手を稜線部に沿って移動させ、稜線部上のバリ70を連続的に除去する。
【0008】
バリ70が成型品である樹脂モールド型コンデンサ50の稜線部に生じる原因の一つに、成型用型枠60が5つの平板状の型枠構成プレート61〜65を組み立てて構成されていることがある。すなわち、図10図11に示すように、5つの平板状の型枠構成プレート61〜65を互いに端縁突き合わせ状態で組み立てている。詳しくは、底面を形成する型枠構成プレート65の上面の前後両端縁に対して広幅の前側面と後側面を形成する型枠構成プレート61,62の下端縁を当接させる。また、底面を形成する型枠構成プレート65の上面の左右両端縁に対して狭幅の左側面・右側面を形成する型枠構成プレート63,64の下端縁を当接させる。併せて、前側面と後側面の型枠構成プレート61,62の左側端縁に対して左側の型枠構成プレート63の前後両端縁を当接させ、さらに、前側面と後側面の型枠構成プレート61,62の右側端縁に対して右側の型枠構成プレート64の前後両端縁を当接させる。
【0009】
左右の型枠構成プレート63,64はその上下両側部が段差状になっているが、これは次の理由による。すなわち、実使用において、樹脂モールド型コンデンサ50を電気自動車や産業用電気機器などのフレーム等の固定部に取り付け固定する際に締結部材(ボルト)を用いる。その締結部材を螺合させるために外装樹脂52に端部露出状態で固定取り付け用の筒状の被締結具(ナット)55をインサートする。左右の型枠構成プレート63,64の上下両側部が段差状になっているのは、その被締結具55のインサート領域を確保するためである。左右の型枠構成プレート63,64の段差状に合せて前後の型枠構成プレート61,62の左右両端も段差形状となっている。このように型枠構成プレートには段差部があるが、以下の議論ではその段差部の有無は実質的に問題とはならず、段差のない平板状の型枠構成プレートとして扱ってもなんら支障はない。
【0010】
前後の型枠構成プレート61,62は底面の型枠構成プレート65に対して直角姿勢で突き合わされ、左右の型枠構成プレート63,64も底面の型枠構成プレート65に対して直角姿勢で突き合わされ、さらに左右の型枠構成プレート63,64は底面の型枠構成プレート65に対して直角姿勢で突き合わされている。このように、上記の5つの型枠構成プレート61〜65の端縁どうしの突合せが直角交差の状態で行われるため、パーティングラインPLは樹脂成型品である樹脂モールド型コンデンサ50の8つの稜線部50a,50c,50b,50d,50e,50f,50g,50hに現れることとなる。パーティングラインPLの数は合計で8つである。以上のことが原因で、これら8つの稜線部50a〜50hにバリ70が出現することになる。
【0011】
上記の従来技術において、バリ70を除去するためにバリ除去工具80をコンデンサ50の稜線部に沿って動かすときに、バリ除去作用面81と稜線部とは線接触状態となってバリ除去作用面81を安定的に支えるものがないため、バリ除去工具80の姿勢が安定せず、バリ除去工具80を持つ手とともにバリ除去工具80がふらついて、バリ除去の作業安定性が悪いものとなっていた。それ故にまた、バリ除去の性状が不良となりがちで、美麗な仕上げのためには多大な労力と時間を要するものとなっている。加えて、作業安定性の悪さが原因して、バリ除去作用面81が樹脂モールド型コンデンサ50の表面に不測に接触することもあり、そうなるとコンデンサの表面を傷つけ、外観を悪化させてしまうことになる。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みて創作したものであり、樹脂モールド型コンデンサの製造に当たり、離型後の成型品に現れるバリの除去に関して、そのバリ除去作業の効率化と外観美麗なバリ除去仕上げを実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、次の手段を講じることにより上記の課題を解決する。
【0014】
〔樹脂モールド型コンデンサの製造方法〕
本発明による樹脂モールド型コンデンサの製造方法は、
成型品である樹脂モールド型コンデンサを成型する成型用型枠として、その型枠内に得られる成型品の稜線部相当位置から離れた位置のパーティングラインをもって分割構成された複数の型枠構成プレートを組み立てた組立式の成型用型枠を用いることとして、
[1]前記組立式の成型用型枠のキャビティ内にコンデンサユニットを収容し、前記キャビティ内に溶融樹脂を注入充填し、注入樹脂の固化をまって成型品を成型し、
[2]次いで、前記成型用型枠を離型して前記キャビティ内に得られた前記成型品を取り出し、
[3]次いで、取り出した前記成型品の表面の平面領域において、その成型品の稜線部から離れた位置のパーティングライン対応箇所に現れているバリを除去することを特徴としている。
【0015】
〔樹脂モールド型コンデンサ用の組立式の成型用型枠〕
また、本発明による樹脂モールド型コンデンサ用の組立式の成型用型枠は、分割構成された複数の型枠構成プレートからなり、その複数の型枠構成プレートを組み立てた状態で、成型品として樹脂モールド型コンデンサを成型するための樹脂が充填される組立式の成型用型枠であって、前記複数の型枠構成プレートは、そのパーティングラインが前記成型用型枠のキャビティ内に得られる成型品の稜線部相当位置から離れた平面領域の位置に定められていることを特徴としている。
【0016】
〔樹脂モールド型コンデンサ〕
また、本発明による樹脂モールド型コンデンサは、樹脂モールド型コンデンサの外周面を形成する複数の側面のうち、対向する第1および第2の2つの側面とこれら第1および第2の両側面に連なる第3の側面において、前記連なる3つの側面に対して隣接する他の側面との境界上の稜線部から所定寸法を隔てた平面領域の位置であって、成型時の組立式の成型用型枠のパーティングライン対応箇所に線状バリ除去跡が現れていることを特徴としている。
【0017】
上記3つのカテゴリーの発明構成に関して、まず、樹脂モールド型コンデンサ用の組立式の成型用型枠について説明する。この成型用型枠は複数の型枠構成プレートを組み立てるものであるが、本発明ではその組み立てで隣接する型枠構成プレートどうしの境界部に現れるパーティングラインの位置について配慮している。すなわち、従来では、そのパーティングラインを成型用型枠のキャビティ内に得られる成型品の稜線部相当位置に定めていたのに対して、本発明では、成型品の稜線部相当位置から離れた位置に定めている。これは、つまりは、成型品における不要異物としての小突条であるバリの出現箇所を成型品の稜線部ではなく、その稜線部から離れた平面領域の位置に特定するということである。
【0018】
次に、このような組立式の成型用型枠を用いた樹脂モールド型コンデンサの製造方法について説明する。第1の段階では、樹脂モールド型コンデンサの一般的な製法と同様に、成型用型枠のキャビティ内にコンデンサユニットを収容し、キャビティ内に溶融樹脂を注入充填し、注入樹脂の固化をまって成型品を成型する。第2の段階では、成型用型枠を離型してキャビティ内に得られた成型品を取り出す。そして、第3の段階として、取り出した成型品の表面において、その成型品の稜線部から離れた位置のパーティングライン対応箇所に現れているバリを除去する。この点が重要なポイントである。従来ではバリは成型品の稜線部に現れていたのに対して、本発明ではバリは成型品の稜線部から離れた位置のパーティングライン対応箇所に現れるように工夫している。このようにできるのは、組立式の成型用型枠として上記したような特殊なパーティングラインをもって分割される成型用型枠を用いているからである。従来例でバリが樹脂モールド型コンデンサの稜線部に現れていたのとは異なり、本発明ではバリは樹脂モールド型コンデンサの平面領域に現れることになる。
【0019】
バリの出現箇所を樹脂モールド型コンデンサの稜線部から離れた平面領域の位置に設定することは、次の作用をもたらす。すなわち、電動サンダなどのバリ除去工具を用いてバリを除去することになるが、その除去作業が樹脂モールド型コンデンサの平面領域であるために、バリ除去工具のバリ除去作用面をその平面領域(この平面領域にバリが出現している)にあてがう状態で移動させることになる。このようにバリ除去作用面を平面領域に沿わせることにより、移動中のバリ除去工具の姿勢を安定化させることが可能となる。なぜなら、稜線部とは違って平面領域はある広がり(面的な広がり)をもっているからである(稜線部は実質的には単に線状に延びるだけであって、面的な広がりをもたず、接触の態様が線接触状態となるためバリ除去工具を安定的に支えることができない)。このようにバリ除去作用面をバリが存在している平面領域で支えることができるため、つまり平面領域をバリ除去工具の移動のガイド面として利用できるため、バリ除去工具の姿勢が安定し、バリ除去の作業安定性が良好なものとなる。バリ除去工具のふらつきに起因した不測の接触でコンデンサ表面を傷つけるといったこともなくなる。それ故に、バリ除去の性状も良好なものとなり、効率良く外観美麗なバリ除去仕上げを実現することができる。
【0020】
以上のようにして成型された樹脂モールド型コンデンサは、その外周面を形成する平面領域において、成型時の組立式の成型用型枠のパーティングライン対応箇所に線状バリ除去跡が現れたものとなる。すなわち、外周面を形成する複数の側面のうち、対向する第1および第2の2つの側面とこれら第1および第2の両側面に連なる第3の側面において、これら3つの平面に対して隣接する他の側面との境界上の稜線部から所定寸法を隔てた位置に線状バリ除去跡が現れている。
【0021】
なお、ここで線状バリ除去跡の態様については、視覚的に顕現しているか否かを問わない。線状バリ除去跡があっても塗装などで隠すことも可能であるが、塗装を剥がせば顕現することになる。このような態様も含めて、何らかの方法により線状バリ除去跡と認識可能であればすべて含まれる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、組立式の成型用型枠のパーティングラインに対応して成型品である樹脂モールド型コンデンサの外表面に現れるバリの出現箇所をコンデンサの稜線部相当位置から離れた位置で平面領域に設定してあるので、従来の稜線部にバリが出現する場合に比べて、バリ除去作業に際してバリ存在領域である平面領域をバリ除去工具のバリ除去作用面のガイド面として利用できる、バリ除去作業の効率化と外観美麗なバリ除去仕上げを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施例における樹脂モールド型コンデンサの外観を示す斜視図
図2】本発明の実施例における樹脂モールド型コンデンサ用の組立式の成型用型枠を示す斜視図
図3】本発明の実施例における組立式の成型用型枠を分解した状態を示す斜視図
図4】本発明の実施例における組立式の成型用型枠を分解した状態を示す斜視図
図5】本発明の実施例における樹脂モールド型コンデンサの製造方法で成型用型枠から取り出した直後のバリが現れている状態の樹脂モールド型コンデンサの斜視図
図6図5と同じくバリが現れている状態の樹脂モールド型コンデンサを裏返して見た斜視図
図7】本発明の実施例における樹脂モールド型コンデンサでバリ除去後の外観を示す斜視図
図8図7と同じくバリ除去後の樹脂モールド型コンデンサを裏返して見た斜視図
図9】従来例の樹脂モールド型コンデンサを示す斜視図
図10】従来例の樹脂モールド型コンデンサ用の組立式の成型用型枠を示す斜視図
図11】従来例における組立式の成型用型枠を分解した状態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0024】
上記した本発明の各構成には、それぞれ次のような好ましい態様がある。
【0025】
〔樹脂モールド型コンデンサの製造方法〕
前記の成型用型枠として、その内側面において、パーティングラインがある端縁から反対側の端縁に向けて一定の広がりをもつ領域が凹領域に形成された型枠構成プレートを組み立てた成型用型枠を用いるという態様。この型枠構成プレートにおける凹領域は後述する成型品である樹脂モールド型コンデンサの薄肉凸領域に対応している。
【0026】
〔樹脂モールド型コンデンサ用の組立式の成型用型枠〕
前記の型枠構成プレートとして、その内側面において、パーティングラインがある端縁から反対側の端縁に向けて一定の広がりをもつ領域が凹領域に形成されているという態様。
【0027】
〔樹脂モールド型コンデンサ〕
前記のパーティングライン対応箇所からその両側に向けて一定の広がりをもつ領域が薄肉凸領域に形成され、この薄肉凸領域のほぼ中央に沿って線状バリ除去跡が形成されているという態様。
【0028】
これらの態様は結局は、成型品である樹脂モールド型コンデンサの前記の平面領域においてさらに薄肉凸領域を形成し、パーティングライン対応箇所がその薄肉凸領域のほぼ中央に沿うようにし、薄肉凸領域の中央に沿って線状のバリが現れるようにする構成である。薄肉凸領域の上面は平面領域となっていて、その平面領域にパーティングライン対応箇所が位置することになる。線状のバリの除去を薄肉凸領域(平面領域)において除去することは、その薄肉凸領域(平面領域)にバリ除去作用面をあてがってバリ除去作業をするということであり、薄肉凸領域以外の平面領域にはバリ除去工具のバリ除去作用面が接触しにくく、薄肉凸領域以外の平面領域を傷付けないですむという効果がある。線状のバリが除去されたあとは、薄肉凸領域の表面はほぼ平坦な状態になる。このほぼ平坦な薄肉凸領域は樹脂モールド型コンデンサの外観における帯状のデザインを呈する。特に、樹脂モールド型コンデンサの底面に現れるほぼ平坦な薄肉凸領域は樹脂モールド型コンデンサの設置面に対する安定設置脚の役目を果たすこととなる。
【0029】
また、前記の成型用型枠としては次のような4分割構成の成型用型枠を用いることが好ましい。すなわち、組み立てられた成型用型枠の樹脂充填空間はほぼ直方体形状であり、前記成型用型枠が底面の構成部を含む広幅の前側面部・後側面部と狭幅の左側面部・右側面部との4つの型枠構成プレートから構成されているものとして、その成型用型枠を、前記成型用型枠の内周面のうち、左側面から右方向に所定間隔だけ隔てた近傍位置で、前側面から底面を通って後側面に至る第1のパーティングラインと、右側面から左方向に所定間隔だけ隔てた近傍位置で、前側面から底面を通って後側面に至る第2のパーティングラインと、底面を前後方向に2分割し、第1および第2のパーティングラインを連結するように左右方向に延びる第3のパーティングラインとにより、4つの型枠構成プレートに分割された形態とする。これは、まず、形状として上方に開口する向きの「コ」字形に連なる形状のパーティングラインの2つ(第1および第2のパーティングライン)をもって成型用型枠を左側・中央・右側の3つに分割する。左側面と右側面の型枠構成プレートは狭幅で、中央の型枠部分は広幅である。そして、中央の広幅の型枠部分をその底面において、第1および第2のパーティングラインを連結するように左右方向に延びるパーティングライン(第3のパーティングライン)により、前後方向に2分割している。
【0030】
この3分割プラス2分割で全体として4分割の型枠構成プレートからなる成型用型枠は、単に2分割のものに比べて、成型品の離型が行いやすいという利点がある。また、底面において線状バリ除去跡が「H」字形となり、薄肉凸領域が線対称で、かつ広い面積領域で展開することになるため、設置安定性が優れたものになる。
【0031】
なお、上記の好ましい実施態様として、パーティングライン対応箇所に現れるバリの位置について、樹脂モールド型コンデンサの平面領域においてさらに形成した薄肉凸領域のほぼ中央に沿う位置とする構成を挙げたが、本発明においてはこれに限定されるものではなく、薄肉凸領域の形成がなくて、樹脂モールド型コンデンサの側面が全体的に平坦な平面領域となっていて、直接その平面領域にバリが現れる形態であってもよいものとする。この場合、組立式の成型用型枠では前述の凹領域をなくすものとする。
【実施例】
【0032】
以下、本発明にかかわる樹脂モールド型コンデンサ、その製造方法および成型用型枠の実施例を、図面を参照しながら説明する。
【0033】
図1は完成品となっている樹脂モールド型コンデンサ10の外観を示す斜視図である。この樹脂モールド型コンデンサ10は、外部引き出し端子の接続端子部14を除いてコンデンサユニット11の全体を外装樹脂12によって被覆したものである。内部のコンデンサユニット11は複数個のコンデンサ素子11aを上下方向に積み重ね、並列に配置した状態で組み立て、各コンデンサ素子11aの軸方向両端の金属電極(符号図示省略)に正極および負極の外部引き出し端子(図示せず)を半田付け等で接合したものである。また、個々のコンデンサ素子11aは金属化フィルム(誘電体フィルムの少なくとも片面に金属蒸着電極を形成したもの)を巻回または積層し、その軸方向両端に金属電極(金属溶射電極)を形成したものである。外部の湿気がコンデンサユニット11内に浸入し、コンデンサの特性が劣化するのを外装樹脂12によって防止する。15は外装樹脂12に端部露出状態でインサートされた筒状の被締結具(ナット)であり、これに締結部材(ボルト)を螺合する等して樹脂モールド型コンデンサ10をフレーム等の固定部に取り付け固定するようになっている。
【0034】
図2は組立式の成型用型枠20を示す斜視図、図3図4は成型用型枠20を分解した状態を示す斜視図である。この成型用型枠20は分割構成された4つの型枠構成プレート21,22,23,24からなっている。すなわち、組み立てられた成型用型枠20の樹脂充填空間はほぼ直方体形状であり、底面の構成部を含む広幅の前側面部の型枠構成プレート21と、同じく底面の構成部を含む広幅の後側面部の型枠構成プレート22と、狭幅の左側面部の型枠構成プレート23と、同じく狭幅の右側面部の型枠構成プレート24とからなる。前側面部および後側面部の型枠構成プレート21,22と左側面部の型枠構成プレート23とは、樹脂モールド型コンデンサ10の左側の鉛直方向に沿う稜線部10a,10cに相当する位置から小寸法だけ離れた位置に設定された第1のパーティングラインPL1に沿って分割されている。前側面部および後側面部の型枠構成プレート21,22と右側面部の型枠構成プレート24とは、樹脂モールド型コンデンサ10の右側の鉛直方向に沿う稜線部10b,10dに相当する位置から小寸法だけ離れた位置に設定された第2のパーティングラインPL2に沿って分割されている。第1および第2のパーティングラインPL1,PL2は前側面から底面を通って後側面に至る一連のラインであり、その形状は上方に開口する向きの「コ」字形となっている。また、前側面部の型枠構成プレート21と後側面部の型枠構成プレート22とは、樹脂モールド型コンデンサ10の底面部で第1のパーティングラインPL1と第2のパーティングラインPL2とを連結するように、前後方向の中央部を左右方向に延びる第3のパーティングラインPL3に沿って分割されている。
【0035】
以上のように、組立式の成型用型枠20は第1、第2および第3の3つのパーティングラインPL1,PL2,PL3をもって4つの型枠構成プレート21,22,23,24に分割され、これら4つの型枠構成プレート21,22,23,24を端縁突き合わせ状態で組み立てて構成されている。
【0036】
4つの型枠構成プレート21,22,23,24のそれぞれは、その内側面において、パーティングライン(PL1,PL2,PL3)がある端縁から反対側の端縁に向けて一定の広がりをもつ領域が凹領域30に形成されている。これらの凹領域30は型枠構成プレート21,22,23,24を構成する金属板のプレス成型によって形造られる。
【0037】
前側面部および後側面部の型枠構成プレート21,22においては、それぞれ第1のパーティングラインPL1のL字形に屈折する部分から第3のパーティングラインPL3および第2のパーティングラインPL2のL字形に屈折する部分にかけての一連のラインに沿って、プレート内側面に凹領域30が形成されている。左側面部の型枠構成プレート23においては、第1のパーティングラインPL1のコ字形の全範囲にわたる一連のラインに沿って、プレート内側面に凹領域30が形成されている。また、右側面部の型枠構成プレート24においては、第2のパーティングラインPL2のコ字形の全範囲にわたる一連のラインに沿って、プレート内側面に凹領域30が形成されている。
【0038】
上記のようなパーティングラインPL1,PL2,PL3に沿って内側面に凹領域30が形成された4つの型枠構成プレート21,22,23,24を隣接するものどうし端縁突き合わせ状態で組み立てた成型用型枠20(図2参照)を用いて、その内部空間であるキャビティ内にコンデンサユニット11を収容し、キャビティ内にエポキシ樹脂などの溶融した熱硬化性樹脂を注入充填し、注入樹脂の固化をまって樹脂モールド型コンデンサ10の成型品を成型する。次いで、成型用型枠20を4つの型枠構成プレート21,22,23,24に分解することにより樹脂モールド型コンデンサ10の離型を行い、キャビティ内に得られた樹脂モールド型コンデンサ10を取り出す。
【0039】
図5は本発明実施例における樹脂モールド型コンデンサの製造方法で成型用型枠から取り出した直後のバリが現れている状態の樹脂モールド型コンデンサの斜視図、図6は同じくバリが現れている状態の樹脂モールド型コンデンサを裏返して見た斜視図である。
【0040】
取り出した樹脂モールド型コンデンサ10においては、図5図6に示すように、成型用型枠20のパーティングラインPL1,PL2,PL3に対応する箇所にバリ(不要な異物である小突条)40が生じている。すなわち、左側の鉛直方向の稜線部10a,10cに平行に第1のパーティングラインPL1の対応箇所にコ字状に連なる薄肉凸領域16aが樹脂モールド型コンデンサ10の外表面(前側面と底面と後側面)に形成されているが、このコ字状に連なる薄肉凸領域16aの幅方向中央ラインに沿ってバリ40が生じている。また、右側の鉛直方向の稜線部10b,10dに平行に第2のパーティングラインPL2の対応箇所にコ字状に連なる薄肉凸領域16bが樹脂モールド型コンデンサ10の外表面(前側面と底面と後側面)に形成されているが、このコ字状に連なる薄肉凸領域16bの幅方向中央ラインに沿ってもバリ40が生じている。さらに、底面で左右方向の稜線部10e,10fに沿って第3のパーティングラインPL3の対応箇所に直線状の薄肉凸領域16cが樹脂モールド型コンデンサ10の底面に形成されているが、この直線状の薄肉凸領域16cの幅方向中央ラインに沿ってもバリ40が生じている。
【0041】
そこで次の工程において、薄肉凸領域16(16a,16b,16c)の中央線に沿って生じているバリ40を除去する。樹脂モールド型コンデンサ10の前側面には左側端縁の近傍の薄肉凸領域16aにバリ40が生じているとともに、右側端縁の近傍の薄肉凸領域16bにもバリ40が生じている。この前側面左右の薄肉凸領域16a,16bの上面は平面領域となっており、その平面領域にバリ40が突出状態で生じている。
【0042】
薄肉凸領域16(16a,16b,16c)の上面である平面領域に生じているバリ40はバリ除去工具としての無端式の研摩ベルト(図示せず)によって容易かつ美麗に除去することができる。無端式の研摩ベルトを用いれば、左右に分かれている薄肉凸領域16a,16b上のバリ40を1回の作業で取り除くことが可能となる。樹脂モールド型コンデンサ10における前側面の左右の薄肉凸領域16a,16b上の平行に2本伸びるバリ40も、後側面の左右の薄肉凸領域16a,16b上の平行に2本伸びるバリ40も、ともに1回の作業で取り除ける。樹脂モールド型コンデンサ10の底面では左右の薄肉凸領域16a,16b上とこの両者をつなぐ中央の薄肉凸領域16c上の「H」字形に展開するバリ40を1回の作業で取り除ける。合計では3回の作業ですべてのバリ40を効率良く除去することができる。従来例で8回にわたる作業を必要としていたのと比べると、作業能力の大幅な向上が図られる。
【0043】
このバリ除去作業においてバリ40が存在している薄肉凸領域16(16a,16b,16c)は稜線部10とは違ってある一定の広がり(面的な広がり)をもっているから、無端式の研摩ベルトをその薄肉凸領域である平面領域にあてがって姿勢を安定させた状態でバリ除去作業を遂行することができる。つまり薄肉凸領域である平面領域をガイド面として利用できるため、バリ除去の作業安定性が良好なものとなる。コンデンサ表面の他の領域を傷つけることもない。それ故に、バリ除去の性状も良好なものとなり、効率良く外観美麗なバリ除去仕上げを実現することができる。
【0044】
図7は本発明の実施例における樹脂モールド型コンデンサ10でバリ除去後の外観を示す斜視図、図8は同じくバリ除去後の樹脂モールド型コンデンサ10を裏返して見た斜視図である。パーティングライン対応箇所からその両側に向けて一定の広がりをもつ薄肉凸領域16(16a,16b,16c)において、そのほぼ中央に沿って線状バリ除去跡41が形成されている。この線状バリ除去跡41を含めて薄肉凸領域16(16a,16b,16c)はその全領域が平坦面となっている。
【0045】
なお、参考のために各部の寸法関係について一例を挙げると、樹脂モールド型コンデンサ10の横幅を約120mmとして、薄肉凸領域16(16a,16b,16c)の幅は約20mm、その厚みは約0.5mmである。これらは任意に設定できるが、薄肉凸領域16の厚みは、コンデンサの横幅や高さ制約(薄肉凸領域16の厚みが大きいほどサイズが大きくなるため、できる限り小さいほうが好ましい)およびバリ除去の作業性の観点から0.5mm以上、1.0mm以下であることが好ましい。
【0046】
なお、成型用型枠の分割方式については、上記の4分割方式に代えて、2分割方式、6分割方式などであってもよい。小型のコンデンサの場合は2分割方式でもよく、大型のコンデンサには6分割方式が好ましい。2分割にするときは、コンデンサの幅方向(左右方向)の中央位置で第1のパーティングラインPL1(あるいは第2のパーティングラインPL2)に相当する1つのパーティングラインをもって分割するものや、コンデンサCの奥行方向(前後方向)の中央位置で第3のパーティングラインPL3に相当する1つのパーティングラインをもって分割するものがある。6分割にするときは、上記実施例において、コンデンサの幅方向(左右方向)の中央位置を通るパーティングラインをもってさらに分割するものがある。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、組立式の成型用型枠のパーティングラインに対応して樹脂モールド型コンデンサの外表面に現れるバリの除去作業について、その作業効率化と外観の美麗仕上げを実現する技術として有用である。特に、産業機械用、車両用などの樹脂モールド型コンデンサにとって有効である。
【符号の説明】
【0048】
10 樹脂モールド型コンデンサ
10a〜10f 稜線部
11 コンデンサユニット
12 外装樹脂
16a,16b,16c 薄肉凸領域
20 成型用型枠
21,22,23,24 型枠構成プレート
30 凹領域
40 バリ
41 線状バリ除去跡
PL1,PL2,PL3 パーティングライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11