特許第6231940号(P6231940)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231940
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】測距装置及び測距装置の駆動方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/10 20060101AFI20171106BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20171106BHJP
   H01L 31/12 20060101ALI20171106BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20171106BHJP
   H04N 5/335 20110101ALI20171106BHJP
【FI】
   G01S17/10
   G01C3/06 120Q
   G01C3/06 140
   H01L31/12 E
   H01L31/12 F
   H01L27/146 A
   H04N5/335
【請求項の数】4
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-96698(P2014-96698)
(22)【出願日】2014年5月8日
(65)【公開番号】特開2015-215181(P2015-215181A)
(43)【公開日】2015年12月3日
【審査請求日】2017年1月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 光人
(72)【発明者】
【氏名】平光 純
(72)【発明者】
【氏名】島田 明洋
【審査官】 請園 信博
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0317878(US,A1)
【文献】 特開2011−164095(JP,A)
【文献】 特開2009−047662(JP,A)
【文献】 特開2012−083213(JP,A)
【文献】 特開2013−206903(JP,A)
【文献】 特開2013−137242(JP,A)
【文献】 特開2011−215073(JP,A)
【文献】 特表2007−526448(JP,A)
【文献】 特開2004−294420(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0037969(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 3/00 − 3/32
G01S 7/48 − 7/51
17/00 − 17/95
H01L 21/339
27/14
27/144 − 27/148
29/762
31/12 − 31/14
31/16
H04N 5/30 − 5/378
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に向けてパルス光をフレーム周期毎に出射するように光源を駆動する駆動部と、
前記対象物でのパルス光の反射光の入射に応じて電荷が発生する電荷発生領域と、前記電荷発生領域から離間し且つ一次元方向で前記電荷発生領域を挟んで配置され、電荷を蓄積する第一及び第二電荷蓄積領域と、前記第一電荷蓄積領域と前記電荷発生領域との間に配置されている第一転送電極と、前記第二電荷蓄積領域と前記電荷発生領域との間に配置されている第二転送電極と、を有する複数の距離センサが前記一次元方向に配置されている距離画像センサと、
前記パルス光の出射と同期するように、前記フレーム周期毎に、前記電荷発生領域にて発生した電荷を信号電荷として前記第一電荷蓄積領域に流入させるように、第一パルス転送信号を前記第一転送電極に出力し、前記電荷発生領域にて発生した電荷を信号電荷として前記第二電荷蓄積領域に流入させるように、前記第一パルス転送信号と位相が異なる第二パルス転送信号を前記第二転送電極に出力する制御部と、
前記フレーム周期毎に、前記第一及び第二電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷の電荷量をそれぞれ読み出し、読み出した電荷量に基づいて前記対象物までの距離を演算する演算部と、を備え、
前記制御部は、前記フレーム周期毎に、前記第一パルス転送信号と前記第二パルス転送信号との時系列での順序を交互に入れ替えて、前記第一及び第二パルス転送信号を出力し、
前記演算部は、時系列で連続する二つの前記フレーム周期における、位相が同じとなる前記第一及び第二パルス転送信号に応じて前記第一電荷蓄積領域と前記第二電荷蓄積領域とに蓄積された信号電荷の合計電荷量に基づいて前記対象物までの距離を演算する、測距装置。
【請求項2】
前記演算部は、時系列で連続する二つの前記フレーム周期における一方のフレーム周期で前記第一電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷の電荷量と他方のフレーム周期で前記第二電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷の電荷量との合計電荷量、及び前記一方のフレーム周期で前記第二電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷の電荷量と前記他方のフレーム周期で前記第一電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷の電荷量との合計電荷量に基づいて前記対象物までの距離を演算する、請求項1記載の測距装置。
【請求項3】
対象物に向けてパルス光を出射する光源と、
前記対象物でのパルス光の反射光の入射に応じて電荷が発生する電荷発生領域と、前記電荷発生領域から離間し且つ一次元方向で前記電荷発生領域を挟んで配置され、電荷を蓄積する第一及び第二電荷蓄積領域と、前記第一電荷蓄積領域と前記電荷発生領域との間に配置されている第一転送電極と、前記第二電荷蓄積領域と前記電荷発生領域との間に配置されている第二転送電極と、を有する複数の距離センサが前記一次元方向に配置されている距離画像センサと、を備える測距装置の駆動方法であって、
前記パルス光をフレーム周期毎に出射するように前記光源を駆動し、
前記パルス光の出射と同期するように、前記フレーム周期毎に、前記電荷発生領域にて発生した電荷を信号電荷として前記第一電荷蓄積領域に流入させるように、第一パルス転送信号を前記第一転送電極に出力し、前記電荷発生領域にて発生した電荷を信号電荷として前記第二電荷蓄積領域に流入させるように、第一パルス転送信号と位相が異なる第二パルス転送信号を前記第二転送電極に出力し、
前記フレーム周期毎に、前記第一及び第二電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷の電荷量をそれぞれ読み出し、読み出した電荷量に基づいて前記対象物までの距離を演算し、
第一及び第二パルス転送信号を出力する際に、前記フレーム周期毎に、前記第一パルス転送信号と前記第二パルス転送信号との時系列での順序を交互に入れ替えて、前記第一及び第二パルス転送信号を出力し、
前記対象物までの距離を演算する際に、時系列で連続する二つの前記フレーム周期における、位相が同じとなる前記第一及び第二パルス転送信号に応じて前記第一電荷蓄積領域と前記第二電荷蓄積領域とに蓄積された信号電荷の合計電荷量に基づいて前記対象物までの距離を演算する、測距装置の駆動方法。
【請求項4】
前記対象物までの距離を演算する際に、時系列で連続する二つの前記フレーム周期における一方のフレーム周期で前記第一電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷の電荷量と他方のフレーム周期で前記第二電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷の電荷量との合計電荷量、及び前記一方のフレーム周期で前記第二電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷の電荷量と前記他方のフレーム周期で前記第一電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷の電荷量との合計電荷量に基づいて前記対象物までの距離を演算する、請求項3記載の測距装置の駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距装置及び測距装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TOF(Time-Of-Flight)型の距離画像センサを備える測距装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された測距装置は、一次元方向に配置された各距離センサが、矩形の電荷発生領域と、電荷発生領域の一組の対向する二辺に沿ってそれぞれ設けられた転送電極と、転送電極により転送された信号電荷をそれぞれ蓄積する電荷蓄積領域と、を含んで構成されている。
【0003】
この測距装置では、転送電極が電荷発生領域に発生した電荷を信号電荷として位相の異なる転送信号に応じて各電荷蓄積領域に振り分ける。振り分けられた信号電荷は、対応する各電荷蓄積領域にそれぞれ蓄積される。各電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷は、蓄積された電荷量に対応した出力として読み出される。これらの出力の比率に基づいて、対象物までの距離が算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2007/026779号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの調査研究の結果、上記特許文献1に記載されるような測距装置では、測定距離が同等であるべき二つの距離センサにおいて、測定距離が距離センサによって異なる場合があることが明らかになった。
【0006】
本発明は、測定距離が同等であるべき二つの距離センサにおける測定距離の異なりを低減する測距装置及び測距装置の駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、測定距離が同等であるべき二つの距離センサにおける測定距離の異なりを低減する測距装置及び測距装置の駆動方法について、調査研究を行った。その結果、本発明者らは以下の事実を見出した。
【0008】
上記特許文献1に記載されるような測距装置では、光が入射した距離センサ(以下、入射距離センサと称する)以外の他の距離センサでも信号が検出される場合がある。これは、入射距離センサの電荷発生領域で生成された電荷が、他の距離センサの各電荷蓄積領域に流入するクロストークが生じているためと考えられる。他の距離センサの各電荷蓄積領域へのクロストークの影響は、当該各電荷蓄積領域の配置によって異なる。特に、他の距離センサの各電荷蓄積領域の配置が、入射距離センサ側であるか否かによって大きく異なる。すなわち、他の距離センサにおいて光入射距離センサ側に配置される電荷蓄積領域では、クロストークの影響が大きく、光入射距離センサ側とは逆側に配置される電荷蓄積領域では、クロストークの影響が小さい。
【0009】
電荷振り分け方式の距離センサでは、上記のように、各電荷蓄積領域の出力の比率に基づいて、対象物までの距離が算出される。このため、各電荷蓄積領域に対して、周りの距離センサからの電荷の漏れ込みがあると、算出される距離が変化する。例えば、光が入射された二つの距離センサの各電荷蓄積領域において、一方の位相の転送信号に応じて振り分けられる電荷量と、他方の位相に応じて振り分けられる電荷量とが同じとなる場合であっても、クロストークの影響が異なるために、測定距離が異なる場合がある。すなわち、二つの光入射距離センサにおいて、測定距離が同等であるべき場合であっても、同じ位相の転送信号に応じて信号電荷を蓄積する各電荷蓄積領域同士の配置が、もう一方の光入射距離センサ側であるか否かで互いに異なる場合は、測定距離が距離センサによって異なり得る。
【0010】
本発明者らは、自らが見出したこれらの事実に着目して、測定距離が同等であるべき二つの距離センサにおける測定距離の異なりを低減する構成について更に鋭意研究を行い、本発明を想到するに至った。
【0011】
本発明に係る測距装置は、対象物に向けてパルス光をフレーム周期毎に出射するように光源を駆動する駆動部と、対象物でのパルス光の反射光の入射に応じて電荷が発生する電荷発生領域と、電荷発生領域から離間し且つ一次元方向で電荷発生領域を挟んで配置され、電荷を蓄積する第一及び第二電荷蓄積領域と、第一電荷蓄積領域と電荷発生領域との間に配置されている第一転送電極と、第二電荷蓄積領域と電荷発生領域との間に配置されている第二転送電極と、を有する複数の距離センサが一次元方向に配置されている距離画像センサと、パルス光の出射と同期するように、フレーム周期毎に、電荷発生領域にて発生した電荷を信号電荷として第一電荷蓄積領域に流入させるように、第一パルス転送信号を第一転送電極に出力し、電荷発生領域にて発生した電荷を信号電荷として第二電荷蓄積領域に流入させるように、第一パルス転送信号と位相が異なる第二パルス転送信号を第二転送電極に出力する制御部と、フレーム周期毎に、第一及び第二電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷をそれぞれ読み出し、読み出した信号電荷に基づいて対象物までの距離を演算する演算部と、を備え、制御部は、フレーム周期毎に、第一パルス転送信号と第二パルス転送信号との時系列での順序を交互に入れ替えて、第一及び第二パルス転送信号を出力し、演算部は、時系列で連続する二つのフレーム周期における、位相が同じとなる第一及び第二パルス転送信号に応じて第一電荷蓄積領域と第二電荷蓄積領域とに蓄積された信号電荷の合計電荷量に基づいて対象物までの距離を演算する。
【0012】
本発明に係る測距装置の駆動方法は、対象物に向けてパルス光を出射する光源と、対象物でのパルス光の反射光の入射に応じて電荷が発生する電荷発生領域と、電荷発生領域から離間し且つ一次元方向で電荷発生領域を挟んで配置され、電荷を蓄積する第一及び第二電荷蓄積領域と、第一電荷蓄積領域と電荷発生領域との間に配置されている第一転送電極と、第二電荷蓄積領域と電荷発生領域との間に配置されている第二転送電極と、を有する複数の距離センサが一次元方向に配置されている距離画像センサと、を備える測距装置の駆動方法であって、パルス光をフレーム周期毎に出射するように光源を駆動し、パルス光の出射と同期するように、フレーム周期毎に、電荷発生領域にて発生した電荷を信号電荷として第一電荷蓄積領域に流入させるように、第一パルス転送信号を第一転送電極に出力し、電荷発生領域にて発生した電荷を信号電荷として第二電荷蓄積領域に流入させるように、第一パルス転送信号と位相が異なる第二パルス転送信号を第二転送電極に出力し、フレーム周期毎に、第一及び第二電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷をそれぞれ読み出し、読み出した信号電荷に基づいて対象物までの距離を演算し、第一及び第二パルス転送信号を出力する際に、フレーム周期毎に、第一パルス転送信号と第二パルス転送信号との時系列での順序を交互に入れ替えて、第一及び第二パルス転送信号を出力し、対象物までの距離を演算する際に、時系列で連続する二つのフレーム周期における、位相が同じとなる第一及び第二パルス転送信号に応じて第一電荷蓄積領域と第二電荷蓄積領域とに蓄積された信号電荷の合計電荷量に基づいて対象物までの距離を演算する。
【0013】
これらの本発明では、フレーム周期毎に、光源からパルス光が出射され、対象物でのパルス光の反射光が距離画像センサに入射する。距離画像センサでは、電荷発生領域と、一次元方向で電荷発生領域を挟んで配置される第一及び第二電荷蓄積領域と、を有する複数の距離センサが一次元方向に配置されている。反射光が入射した距離センサでは、反射光に応じて電荷が電荷発生領域に発生する。発生した電荷は、フレーム周期毎に、第一及び第二パルス転送信号に応じて第一及び第二電荷蓄積領域に信号電荷として蓄積される。第一及び第二パルス転送信号は、位相が互いに異なり、且つ、フレーム周期毎に時系列での順序を交互に入れ替えて出力される。このため、時系列で連続する二つのフレーム周期において、一方のフレーム周期では、第一電荷蓄積領域に信号電荷が蓄積された後に、第二電荷蓄積領域に信号電荷が蓄積され、他方のフレーム周期では、第二電荷蓄積領域に信号電荷が蓄積された後に、第一電荷蓄積領域に信号電荷が蓄積される。対象物までの距離は、時系列で連続する二つのフレーム周期における、位相が同じとなる第一及び第二パルス転送信号に応じて第一電荷蓄積領域と第二電荷蓄積領域とに蓄積された信号電荷の合計電荷量に基づいて演算される。これらの合計電荷量が対象物までの距離の演算に用いられるので、他の距離センサから第一及び第二電荷蓄積領域に漏れ込む電荷量が互いに異なる場合でも、電荷の漏れ込みによる影響が一方の位相のパルス転送信号に応じた合計電荷量と、他方の位相のパルス転送信号に応じた合計電荷量とにバランスよく分配される。この結果、一次元方向で隣り合う距離センサ同士で距離計測に対する電荷のクロストークの影響が同様となるので、測定距離が同等であるべき二つの距離センサにおいて、測定距離の異なりを低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、測定距離が同等であるべき二つの距離センサにおける測定距離の異なりを低減する測距装置及び測距装置の駆動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る測距装置の構成を示す説明図である。
図2】距離画像センサの断面構成を説明するための図である。
図3】距離画像センサの構成図である。
図4図3におけるIV−IV線に沿った断面構成を示す図である。
図5】半導体基板の第二主面近傍におけるポテンシャル分布を示す図である。
図6】距離センサにおける電荷の漏れ込みについて説明する図である。
図7】各種信号のタイミングチャートである。
図8】従来の測距装置における各種信号のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る測距装置の構成を示す説明図である。
【0018】
測距装置10は、対象物OJまでの距離dを測定する装置である。測距装置10は、距離画像センサRSと、光源LSと、表示器DSPと、制御ユニットと、を備えている。制御ユニットは、駆動部DRVと、制御部CONTと、演算部ARTと、を備えている。光源LSは、対象物OJに向けてパルス光Lpを出射する。光源LSは、例えば、レーザ光照射装置、LEDなどで構成される。距離画像センサRSは、TOF型の距離画像センサである。距離画像センサRSは、配線基板WB上に配置されている。
【0019】
制御ユニット(駆動部DRV、制御部CONT、及び演算部ART)は、CPU(Central Processing Unit)などの演算回路、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などのメモリ、電源回路、及びA/Dコンバータを含む読出回路などのハードウエアによって構成されている。この制御ユニットは、一部もしくは全体がASIC(Application Specific Integrated Circuit)又はFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路によって構成されていてもよい。
【0020】
駆動部DRVは、制御部CONTの制御に従って光源LSに駆動信号Sを印加し、対象物OJに向けてパルス光Lpをフレーム周期毎に出射するように光源LSを駆動する。制御部CONTは、駆動部DRVを制御すると共に、第一及び第二パルス転送信号S、Sを距離画像センサRSに出力し、更に、演算部ARTの演算結果を表示器DSPに表示させる。演算部ARTは、距離画像センサRSから信号電荷の電荷量q,qをそれぞれ読み出し、読み出した電荷量q,qに基づいて距離dを演算し、演算結果を制御部CONTに出力する。距離dの演算方法の詳細については、図7を参照して後で説明する。表示器DSPは、制御部CONTから演算部ARTの演算結果を入力し、当該演算結果を表示するディスプレイである。
【0021】
測距装置10では、駆動信号Sが光源LSに印加されることにより、パルス光Lpがフレーム周期毎に光源LSから出射される。光源LSから出射されたパルス光Lpが対象物OJに入射すると、反射によりパルス光である反射光Lrが対象物OJから出射される。対象物OJから出射された反射光Lrは、距離画像センサRSの電荷発生領域に入射する。
【0022】
距離画像センサRSからは、画素毎に第一及び第二パルス転送信号S,Sに同期して収集された電荷量q,qが出力され、駆動信号Sに同期して演算部ARTに入力される。演算部ARTでは、入力された電荷量q,qに基づき、画素毎に距離dが演算され、演算結果が制御部CONTに入力される。制御部CONTに入力された演算結果は、表示器DSPに転送されて表示される。
【0023】
図2は、距離画像センサの断面構成を説明するための図である。
【0024】
距離画像センサRSは、表面入射型の距離画像センサであって、半導体基板1を備えている。半導体基板1は、互いに対向する第一及び第二主面1a,1bを有している。第二主面1bは、光入射面である。距離画像センサRSは、半導体基板1の第一主面1a側を配線基板WBに対向させた状態で、接着領域FLを介して配線基板WBに貼り付けられている。接着領域FLは、絶縁性の接着剤やフィラーを有している。距離画像センサRSには、半導体基板1の第二主面1b側から反射光Lrが入射する。
【0025】
続いて、図3及び図4を参照しながら、距離画像センサRSについて詳細に説明する。図3は、距離画像センサの構成図である。図4は、図3におけるIV−IV線に沿った断面構成を示す図である。
【0026】
距離画像センサRSは、複数の距離センサP〜P(Nは2以上の自然数)が一次元方向Aに配置されたアレイ構造を成すラインセンサである。複数の距離センサP〜Pそれぞれは、一つ又は二つ以上ずつで距離画像センサRSの一画素を構成している。本実施形態では、複数の距離センサP〜Pそれぞれは、一つで距離画像センサRSの一画素を構成している。図3では、距離センサP(nはN以下の自然数)の構成のみを示している。複数の距離センサP〜Pそれぞれは、距離センサPと同様の構成を有している。
【0027】
距離画像センサRSは、光入射面である第二主面1bの前方に遮光層LIを備えている。遮光層LIには、複数の距離センサP〜Pに対応する領域それぞれにおいて、一次元方向Aに開口LIaが形成されている。開口LIaは、矩形状を呈している。本実施形態では、開口LIaは、長方形状を呈している。光は、遮光層LIの開口LIaを通って、半導体基板1に入射する。したがって、開口LIaにより、半導体基板1には、受光領域が規定される。遮光層LIは、たとえば、アルミニウムなどの金属からなる。なお、図3では、遮光層LIを省略して示す。
【0028】
半導体基板1は、第一主面1a側に位置するp型の第一半導体領域3と、第一半導体領域3よりも不純物濃度が低く且つ第二主面1b側に位置するp型の第二半導体領域5と、からなる。半導体基板1は、例えば、p型の半導体基板上に、当該半導体基板よりも不純物濃度が低いp型のエピタキシャル層を成長させることにより得ることができる。半導体基板1の第二主面1b(第二半導体領域5)上には、絶縁層7が形成されている。
【0029】
複数の距離センサP〜Pは、半導体基板1において、一次元方向Aに配置される。すなわち、複数の距離センサP〜Pは、半導体基板1において、一次元方向Aに沿って並ぶように位置する。複数の距離センサP〜Pそれぞれは、フォトゲート電極PGと、第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2と、第一及び第二転送電極TX1、第二転送電極TX2と、p型のウェル領域Wと、を備えている。なお、図3では、第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2上に配置されている導体13(図4参照)を省略して示す。
【0030】
フォトゲート電極PGは、開口LIaに対応して配置されている。半導体基板1(第二半導体領域5)におけるフォトゲート電極PGに対応する領域(図4において、フォトゲート電極PGの下方に位置する領域)は、対象物OJでのパルス光Lpの反射光Lrの入射に応じて電荷が発生する電荷発生領域として機能する。フォトゲート電極PGは、開口LIaの形状にも対応し、平面視で矩形状を呈している。本実施形態では、フォトゲート電極PGは、開口LIaと同様に長方形状を呈している。すなわち、フォトゲート電極PGは、一次元方向Aと直交し且つ互いに対向する第一及び第二長辺L1,L2と、一次元方向Aと平行で且つ互いに対向する第一及び第二短辺S1,S2とを有する平面形状を有している。フォトゲート電極PGは、一次元方向Aの一方側に第一長辺L1、一次元方向Aの他方側に第二長辺L2を有している。
【0031】
第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2は、一次元方向Aでフォトゲート電極PGを挟んで配置されている。第一電荷蓄積領域FD1は、フォトゲート電極PGの第一長辺L1側にフォトゲート電極PGから離間して配置されている。第二電荷蓄積領域FD2は、フォトゲート電極PGの第二長辺L2側にフォトゲート電極PGから離間して配置されている。複数の距離センサP〜Pそれぞれは、距離センサPと同様の構成を有しているため、隣り合う二つの距離センサP,Pn+1において、第一電荷蓄積領域FD1と第二電荷蓄積領域FD2とが一次元方向Aで隣り合っている。
【0032】
第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2は、第二半導体領域5に形成された不純物濃度が高いn型の半導体領域であり、電荷発生領域にて発生した電荷を信号電荷として蓄積する。第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2は、平面視で矩形状を呈している。本実施形態では、第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2は、平面視で正方形状を呈しており、互いに同形状を成している。
【0033】
第一転送電極TX1は、絶縁層7上であって、第一電荷蓄積領域FD1とフォトゲート電極PGとの間に配置されている。第一転送電極TX1は、第一電荷蓄積領域FD1とフォトゲート電極PGとからそれぞれ離間して配置されている。第一転送電極TX1は、第一パルス転送信号S図7参照)に応じて電荷発生領域にて発生した電荷を信号電荷として第一電荷蓄積領域FD1に流入させる。
【0034】
第二転送電極TX2は、絶縁層7上であって、第二電荷蓄積領域FD2とフォトゲート電極PGとの間に配置されている。第二転送電極TX2は、第二電荷蓄積領域とフォトゲート電極PGとからそれぞれ離間して配置されている。第二転送電極TX2は、第一パルス転送信号Sと位相が異なる第二パルス転送信号S図7参照)に応じて電荷発生領域にて発生した電荷を信号電荷として第二電荷蓄積領域FD2に流入させる。複数の距離センサP〜Pそれぞれは、距離センサPと同様の構成を有しているため、隣り合う二つの距離センサP,Pn+1において、第一転送電極TX1と第二転送電極TX2とが一次元方向Aで隣り合っている。
【0035】
第一及び第二転送電極TX1,TX2は、平面視で矩形状を呈している。本実施形態では、第一及び第二転送電極TX1,TX2は、一次元方向Aに直交する方向を長辺とする長方形状を呈し、互いに同形状を成している。第一及び第二転送電極TX1,TX2の長辺の長さは、フォトゲート電極PGの第一及び第二長辺L1,L2の長さよりも短い。
【0036】
ウェル領域Wは、第二主面1bに直交する方向から見て、フォトゲート電極PG、第一及び第二転送電極TX1,TX2、並びに第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2を囲むように第二半導体領域5に形成されている。ウェル領域Wは、第二主面1bに直交する方向から見て、第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2それぞれの一部と重なっている。ウェル領域Wの外縁は、複数の距離センサR〜Rの外縁と略一致している。ウェル領域Wは、第二半導体領域5の導電型と同一の導電型であって、第二半導体領域5の不純物濃度よりも高い不純物濃度を有する。ウェル領域Wは、フォトゲート電極PGへの電圧の印加によって広がった空乏層と、第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2から広がる空乏層との結合を抑制している。これにより、クロストークが抑制される。
【0037】
絶縁層7には、第二半導体領域5の表面を露出させるためのコンタクトホールが設けられている。コンタクトホール内には、第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2を外部に接続するための導体13が配置される。
【0038】
本実施形態では、「不純物濃度が高い」とは例えば不純物濃度が1×1017cm−3程度以上のことであって、「+」を導電型に付けて示す。一方、「不純物濃度が低い」とは例えば10×1015cm−3程度以下のことであって、「−」を導電型に付けて示す。
【0039】
各半導体領域の厚さ/不純物濃度は以下の通りである。
第一半導体領域3:厚さ10〜1000μm/不純物濃度1×1012〜1019cm−3
第二半導体領域5:厚さ1〜50μm/不純物濃度1×1012〜1015cm−3
第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2:厚さ0.1〜1μm/不純物濃度1×1018〜1020cm−3
ウェル領域W:厚さ0.5〜5μm/不純物濃度1×1016〜1018cm−3
【0040】
半導体基板1(第一及び第二半導体領域3,5)には、バックゲート又は貫通電極などを介してグラウンド電位などの基準電位が与えられる。
【0041】
半導体基板はSiからなり、絶縁層7はSiOからなり、フォトゲート電極PG及び第一及び第二転送電極TX1,TX2はポリシリコンからなるが、これらは他の材料を用いてもよい。
【0042】
第一転送電極TX1に印加される第一パルス転送信号Sの位相と第二転送電極TX2に印加される第二パルス転送信号Sの位相とは、180度ずれている。複数の距離センサP〜Pそれぞれに入射した光は、半導体基板1(第二半導体領域5)内において電荷に変換される。このようにして発生した電荷のうち一部は、信号電荷として、フォトゲート電極PG並びに第一及び第二転送電極TX1,TX2に印加される電圧により形成されるポテンシャル勾配にしたがって、第一転送電極TX1又は第二転送電極TX2の方向、すなわちフォトゲート電極PGの第一及び第二短辺S1,S2に平行な方向に走行する。
【0043】
第一又は第二転送電極TX1,TX2に正電位を与えると、第一又は第二転送電極TX1,TX2の下のポテンシャルがフォトゲート電極PGの下の部分の半導体基板1(第二半導体領域5)のポテンシャルより電子に対して低くなり、負の電荷(電子)は、第一又は第二転送電極TX1,TX2の方向に引き込まれ、第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2によって形成されるポテンシャル井戸内に蓄積される。n型の半導体は、正にイオン化したドナーを含んでおり、正のポテンシャルを有し、電子を引き付ける。第一又は第二転送電極TX1,TX2に、上記正電位よりも低い電位(たとえば、グラウンド電位)を与えると、第一又は第二転送電極TX1,TX2によるポテンシャル障壁が生じ、半導体基板1で発生した電荷は、第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2には引き込まれない。
【0044】
図5は、図3のIV−IV線に沿った半導体基板の第二主面近傍におけるポテンシャル分布を示す図である。図5では、下向きがポテンシャルの正方向である。図5には、第一転送電極TX1の直下の領域のポテンシャルφTX1、第二転送電極TX2の直下の領域のポテンシャルφTX2、フォトゲート電極PGの直下の電荷発生領域のポテンシャルφPG、第一電荷蓄積領域FD1のポテンシャルφFD1、第二電荷蓄積領域FD2のポテンシャルφFD2が示されている。
【0045】
フォトゲート電極PGの直下の領域(電荷発生領域)のポテンシャルφPGは、無バイアス時における隣接する第一及び第二転送電極TX1,TX2直下の領域のポテンシャル(φTX1,φTX2)を基準電位とすると、この基準電位よりも高く設定されている。この電荷発生領域のポテンシャルφPGはポテンシャルφTX1,φTX2よりも高くなり、ポテンシャル分布は電荷発生領域において図面の下向きに凹んだ形状となる。
【0046】
図5を参照して、信号電荷の蓄積動作を説明する。第一転送電極TX1に印加される第一パルス転送信号Sの位相が0度のとき、第一転送電極TX1には正の電位が与えられる。第二転送電極TX2には、逆相の電位、すなわち位相が180度の電位(たとえば、グラウンド電位)が与えられる。フォトゲート電極PGには、第一転送電極TX1に与えられる電位と、第二転送電極TX2に与えられる電位との間の電位が与えられる。この場合、図5(a)に示されるように、電荷発生領域で発生した負の電荷eは、第一転送電極TX1直下の半導体のポテンシャルφTX1が電荷発生領域のポテンシャルφPGよりも下がることにより、第一電荷蓄積領域FD1のポテンシャル井戸内に流れ込む。
【0047】
一方、第二転送電極TX2直下の半導体のポテンシャルφTX2は下がらず、第二電荷蓄積領域FD2のポテンシャル井戸内には、電荷は流れ込まない。これにより、信号電荷が第一電荷蓄積領域FD1のポテンシャル井戸に収集されて、蓄積される。第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2では、n型の不純物が添加されているため、正方向にポテンシャルが凹んでいる。
【0048】
第二転送電極TX2に印加される第二パルス転送信号Sの位相が0度のとき、第二転送電極TX2には正の電位が与えられ、第一転送電極TX1には、逆相の電位、すなわち位相が180度の電位(たとえば、グラウンド電位)が与えられる。フォトゲート電極PGには、第一転送電極TX1に与えられる電位と、第二転送電極TX2に与えられる電位との間の電位が与えられる。この場合、図5(b)に示されるように、電荷発生領域で発生した負の電荷eは、第二転送電極TX2直下の半導体のポテンシャルφTX2が電荷発生領域のポテンシャルφPGよりも下がることにより、第二電荷蓄積領域FD2のポテンシャル井戸内に流れ込む。
【0049】
一方、第一転送電極TX1直下の半導体のポテンシャルφTX1は下がらず、第一電荷蓄積領域FD1のポテンシャル井戸内には、電荷は流れ込まない。これにより、信号電荷が第二電荷蓄積領域FD2のポテンシャル井戸に収集されて、蓄積される。
【0050】
以上により、信号電荷が第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2のポテンシャル井戸に収集されて、蓄積される。第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2のポテンシャル井戸に蓄積された信号電荷は、外部に読み出される。
【0051】
図6は、距離センサにおける電荷の漏れ込みについて説明する図である。図6では、特に、隣り合う二つの距離センサP,Pn+1について示す。
【0052】
距離センサP,Pn+1は、構成が同じで、それぞれフォトゲート電極PGの一次元方向Aの一方側に第一電荷蓄積領域FD1及び第一転送電極TX1を備えると共に、他方側に第二電荷蓄積領域FD2及び第二転送電極TX2を備えている。隣り合う二つの距離センサP,Pn+1において、第一電荷蓄積領域FD1と第二電荷蓄積領域FD2とが一次元方向Aで隣り合っている。
【0053】
距離画像センサRSにおいて、例えば、距離センサPに反射光Lrが入射されると、距離センサPでは反射光Lrに応じて電荷が発生する。発生した電荷は、第一及び第二パルス転送信号S,Sにしたがって、距離センサPの第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2へと振り分けられる。このとき電荷の一部が他の距離センサP(m≠n)の第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2に漏れ込む。漏れ込み量は、他の距離センサPにおける第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2の配置が、距離センサP側であるか否かによって大きく異なる。
【0054】
距離センサPn+1において、第一電荷蓄積領域FD1は、距離センサP側に配置されており、第二電荷蓄積領域FD2は、距離センサPとは逆側に配置されている。このため、距離センサPに光が入射され、距離センサPから距離センサPn+1に電荷が漏れ込む場合、第一電荷蓄積領域FD1への漏れ込み量B%は,第二電荷蓄積領域FD2への漏れ込み量A%よりも大きい。同様に、距離センサPn+1に光が入射され、距離センサPn+1から距離センサPに電荷が漏れ込む場合、距離センサPにおいて、距離センサPn+1側には第二電荷蓄積領域FD2が配置されているため、第二電荷蓄積領域FD2への漏れ込み量D%は、第一電荷蓄積領域FD1への漏れ込み量C%よりも大きい。
【0055】
このように、隣り合う二つの距離センサP,Pn+1において互いに電荷が漏れ込み合うことにより、第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2それぞれに蓄積される電荷量は、距離センサPと距離センサPn+1とで異なる場合がある。
【0056】
続いて、図7を参照して、距離dの演算方法について説明する。図7は、各種信号のタイミングチャートである。図7では、複数のフレーム周期Tのうち、時系列で連続する二つのフレーム周期Tについて示す。
【0057】
光源LSの駆動信号S、対象物OJでのパルス光Lpの反射光Lrが撮像領域まで戻ってきたときの反射光Lrの強度信号SLr、第一転送電極TX1に印加される第一パルス転送信号S、第二転送電極TX2に印加される第二パルス転送信号S、及びリセット信号resetが示されている。二つのフレーム周期Tそれぞれは、信号電荷を蓄積する期間(蓄積期間)Taccと、信号電荷を読み出す期間(読み出し期間)Troと、からなる。駆動信号S、強度信号SLr、第一パルス転送信号S、及び第二パルス転送信号Sは、いずれもパルス幅Tのパルス信号である。
【0058】
蓄積期間Taccにおいて、まず距離測定に先立って、リセット信号resetが第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2に印加され、内部に蓄積された電荷が外部に排出される。本例では、リセット信号resetが一瞬ONし、続いてOFFした後、駆動信号Sが光源LSに印加される。駆動信号Sの印加に同期して、第一及び第二パルス転送信号S,Sが互いに逆位相で第一及び第二転送電極TX1,TX2に印加される。これにより、電荷転送が行われ、第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2に信号電荷が蓄積される。その後、読み出し期間Troにおいて、第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2内に蓄積された信号電荷が読み出される。
【0059】
第一及び第二パルス転送信号S,Sは、フレーム周期T毎に、第一パルス転送信号Sと第二パルス転送信号Sとの時系列での順序を交互に入れ替えて出力される。したがって、時系列で連続する二つのフレーム周期Tにおける一方のフレーム周期T(ここでは、時系列で前のフレーム周期T)では、第一パルス転送信号Sが駆動信号Sに位相差0で同期して出力されると共に、第二パルス転送信号Sが駆動信号Sに位相差180度で同期して出力される。他方のフレーム周期T(ここでは、時系列で後のフレーム周期T)では、第二パルス転送信号Sが駆動信号Sに位相差0で同期して出力されると共に、第一パルス転送信号Sが駆動信号Sに位相差180度で同期して出力される。
【0060】
なお、このような第一及び第二パルス転送信号S,Sの出力制御は、制御部CONTにより行われる。すなわち、制御部CONTは、パルス光Lpの出射と同期するように、フレーム周期T毎に、電荷発生領域にて発生した電荷を信号電荷として第一電荷蓄積領域FD1に流入させるように、第一パルス転送信号Sを第一転送電極TX1に出力し、電荷発生領域にて発生した電荷を信号電荷として第二電荷蓄積領域FD2に流入させるように、第一パルス転送信号Sと位相が異なる第二パルス転送信号Sを第二転送電極TX2に出力する。制御部CONTは更に、フレーム周期T毎に、第一パルス転送信号Sと第二パルス転送信号Sとの時系列での順序を交互に入れ替えて、第一及び第二パルス転送信号S,Sを出力する。
【0061】
強度信号SLrと、駆動信号Sに位相差0で同期して出力される信号との重なり合った部分に相当する電荷量qは、一方のフレーム周期Tでは、第一電荷蓄積領域FD1に蓄積され、他方のフレーム周期Tでは、第二電荷蓄積領域FD2に蓄積される。反射光Lrの強度信号SLrと、駆動信号Sに位相差180で同期して出力される信号との重なり合った部分に相当する電荷量qは、一方のフレーム周期Tでは、第二電荷蓄積領域FD2に蓄積され、他方のフレーム周期Tでは、第一電荷蓄積領域FD1に蓄積される。
【0062】
強度信号SLrと、駆動信号Sに位相差0で同期して出力される信号との位相差Tdが、光の飛行時間であり、これは距離画像センサRSから対象物OJまでの距離dを示している。距離dは、演算部ARTにより、時系列で連続する二つのフレーム周期Tにおける電荷量qの合計電荷量Q、及び電荷量qの合計電荷量Qの比率を用いて、下記の式(1)により演算される。なお、cは光速である。
【0063】
距離d=(c/2)×(T×Q/(Q+Q))・・・(1)
【0064】
つまり、演算部ARTは、フレーム周期T毎に、第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2に蓄積された信号電荷の電荷量q,qそれぞれ読み出し、読み出した電荷量q,qに基づいて対象物OJまでの距離dを演算する。演算部ARTは、この際、時系列で連続する二つのフレーム周期Tにおける、位相が同じとなる第一及び第二パルス転送信号S,Sに応じて第一電荷蓄積領域FD1と第二電荷蓄積領域FD2とに蓄積された信号電荷の合計電荷量Q,Qに基づいて対象物OJまでの距離dを演算する。
【0065】
より具体的には、演算部ARTは、時系列で連続する二つのフレーム周期Tにおける一方のフレーム周期Tで第一電荷蓄積領域FD1に蓄積された信号電荷の電荷量qと他方のフレーム周期Tで第二電荷蓄積領域FD2に蓄積された信号電荷の電荷量qとの合計電荷量Q、及び一方のフレーム周期Tで第二電荷蓄積領域FD2に蓄積された信号電荷の電荷量qと他方のフレーム周期Tで第一電荷蓄積領域FD1に蓄積された信号電荷の電荷量qとの合計電荷量Qに基づいて対象物OJまでの距離dを演算する。
【0066】
このように、距離dの演算に用いる合計電荷量Q,Qはいずれも、第一電荷蓄積領域FD1に蓄積された信号電荷の電荷量q,qと、第二電荷蓄積領域FD2に蓄積された信号電荷の電荷量q,qとの和である。したがって、上述したように、電荷の漏れ込みにより、第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2それぞれに蓄積される電荷量が距離センサPと距離センサPn+1とで異なる場合であっても、電荷の漏れ込みによる影響は合計電荷量Q,Qにバランスよく分配される。
【0067】
この結果、一次元方向Aで隣り合う距離センサP,Pn+1同士で距離計測に対する電荷のクロストークの影響が同様となる。したがって、距離センサP,Pn+1において、第一転送電極TX1によって第一電荷蓄積領域FD1に振り分けられる電荷量と、第二転送電極TX2によって第二電荷蓄積領域FD2に振り分けられる電荷量との比が同じとなる場合、すなわち、測定される距離が、距離センサPと距離センサPn+1とで同等であるべき場合において、距離センサP,Pn+1における電荷の漏れ込みに起因した測定距離の異なりを低減することが可能となる。
【0068】
距離dの演算は、時系列で連続する二つのフレーム周期Tにおいて第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2に蓄積された信号電荷の電荷量に基づいて行われる。当該距離dの演算の次の距離dの演算は、先の距離dの演算に用いられた電荷量を得た二つのフレーム周期Tの後に続き且つ時系列で連続する二つのフレーム周期Tにおいて第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2に蓄積された信号電荷の電荷量に基づいて行ってもよい。上記次の距離dの演算は、先の距離dの演算に用いられた電荷量を得た二つのフレーム周期Tのうち後のフレーム周期Tと、当該フレーム周期Tに時系列で連続する一つのフレーム周期Tと、において第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2に蓄積された信号電荷の電荷量に基づいて行ってもよい。
【0069】
図8は、従来の測距装置における各種信号のタイミングチャートである。
【0070】
従来の測距装置は、制御部CONTが、フレーム周期T毎に、第一パルス転送信号Sと第二パルス転送信号Sとの時系列での順序を交互に入れ替えることなく、第一及び第二パルス転送信号S,Sを出力する点、及び、演算部ARTが、一つのフレーム周期Tで第一電荷蓄積領域FD1に蓄積された信号電荷の電荷量qと第二電荷蓄積領域FD2に蓄積された信号電荷の電荷量qとに基づいて対象物OJまでの距離dを演算する点以外は、本実施形態に係る測距装置10と同様の構成を備えている。すなわち、従来の測距装置では、距離dは一つのフレーム周期Tにおける電荷量q,qの比率を用いて、下記の式(2)により演算される。
【0071】
距離d=(c/2)×(T×q/(q+q))・・・(2)
【0072】
従来の測距装置では、強度信号SLrと、駆動信号Sに位相差0で同期して出力される信号との重なり合った部分に相当する電荷量qは、第一電荷蓄積領域FD1のみに蓄積された信号電荷量である。一方、強度信号SLrと、駆動信号Sに位相差180度で同期して出力される信号との重なり合った部分に相当する電荷量qは、第二電荷蓄積領域FD2のみに蓄積された信号電荷量である。したがって、上述したように、電荷の漏れ込みにより、第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2それぞれに蓄積される電荷量が距離センサPと距離センサPn+1とで異なる場合、電荷の漏れ込みによる影響は電荷量q,q間でアンバランスとなる。
【0073】
この結果、距離センサP,Pn+1において、第一転送電極TX1によって第一電荷蓄積領域FD1に振り分けられる電荷量と、第二転送電極TX2によって第二電荷蓄積領域FD2に振り分けられる電荷量との比が同じとなり、測定される距離が、距離センサPと距離センサPn+1とで同等であるべき場合であっても、距離センサP,Pn+1における電荷の漏れ込みに起因して測定距離が異なり得る。
【0074】
以上説明したように、本実施形態に係る測距装置10及び測距装置10の駆動方法では、フレーム周期T毎に、光源LSからパルス光Lpが出射され、対象物OJでのパルス光Lpの反射光Lrが距離画像センサRSに入射する。距離画像センサRSでは、電荷発生領域と、一次元方向Aで電荷発生領域を挟んで配置される第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2と、を有する複数の距離センサP〜Pが一次元方向Aに配置されている。反射光Lrが入射した距離センサPでは、反射光Lrに応じて電荷が電荷発生領域に発生する。発生した電荷は、フレーム周期T毎に、第一及び第二パルス転送信号S,Sに応じて第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2に信号電荷として蓄積される。第一及び第二パルス転送信号S,Sは、位相が互いに異なり、且つ、フレーム周期T毎に時系列での順序を交互に入れ替えて出力される。このため、時系列で連続する二つのフレーム周期Tにおいて、一方のフレーム周期Tでは、第一電荷蓄積領域FD1に信号電荷が蓄積された後に、第二電荷蓄積領域FD2に信号電荷が蓄積され、他方のフレーム周期Tでは、第二電荷蓄積領域FD2に信号電荷が蓄積された後に、第一電荷蓄積領域FD1に信号電荷が蓄積される。対象物OJまでの距離dは、時系列で連続する二つのフレーム周期Tにおける、位相が同じとなる第一及び第二パルス転送信号S,Sに応じて第一電荷蓄積領域FD1と第二電荷蓄積領域FD2とに蓄積された信号電荷の合計電荷量Q,Qに基づいて演算される。これらの合計電荷量Q,Qが対象物OJまでの距離dの演算に用いられるので、他の距離センサから第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2に漏れ込む電荷量が互いに異なる場合でも、電荷の漏れ込みによる影響が一方の位相のパルス転送信号に応じた合計電荷量Qと、他方の位相のパルス転送信号に応じた合計電荷量Qとにバランスよく分配される。この結果、一次元方向Aで隣り合う距離センサP,Pn+1同士で距離計測に対する電荷のクロストークの影響が同様となるので、測定距離が同等であるべき二つの距離センサP,Pn+1において、測定距離の異なりを低減することができる。
【0075】
具体的には、時系列で連続する二つのフレーム周期Tにおける一方のフレーム周期Tで第一電荷蓄積領域FD1に蓄積された信号電荷の電荷量qと他方のフレーム周期Tで第二電荷蓄積領域FD2に蓄積された信号電荷の電荷量qとの合計電荷量Q、及び一方のフレーム周期Tで第二電荷蓄積領域FD2に蓄積された信号電荷の電荷量qと他方のフレーム周期Tで第一電荷蓄積領域FD1に蓄積された信号電荷の電荷量qとの合計電荷量Qに基づいて対象物OJまでの距離dが演算される。合計電荷量Q,Qはいずれも、第一電荷蓄積領域FD1に蓄積された信号電荷の電荷量q,qと、第二電荷蓄積領域FD2に蓄積された信号電荷の電荷量q,qとの和である。したがって、電荷の漏れ込みにより、第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2それぞれに蓄積される電荷量が距離センサPと距離センサPn+1とで異なる場合であっても、電荷の漏れ込みによる影響は合計電荷量Q,Qにバランスよく分配される。この結果、測定される距離が、距離センサPと距離センサPn+1とで同等であるべき場合において、距離センサP,Pn+1における電荷の漏れ込みに起因した測定距離の異なりを低減することが可能となる。
【0076】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、複数の距離センサP〜Pそれぞれは、第一及び第二転送電極TX1,TX2及び第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2を1つずつ備えるが、2つずつ以上備えてもよい。
【0077】
複数の距離センサP〜Pそれぞれは、電荷発生領域にて発生した電荷を不要電荷として収集する不要電荷収集領域と、不要電荷収集領域と電荷発生領域との間に配置され、第一及び第二パルス転送信号と位相が異なる第三パルス転送信号に応じて電荷発生領域にて発生した電荷を不要電荷として不要電荷収集領域に流入させる第三転送電極を更に備えてもよい。この場合、不要電荷を外部に排出することができるので、距離の測定精度を向上させることが可能である。なお、不要電荷収集領域及び第三転送電極は、それぞれ複数であってもよい。
【0078】
各フレーム周期Tにおいて、複数の駆動信号Sが逐次印加され、これに同期して第一パルス転送信号S、及び第二パルス転送信号Sが逐次出力されてもよい。この場合、第一及び第二電荷蓄積領域FD1,FD2に信号電荷が積算して蓄積される。
【0079】
距離画像センサRSは、複数の距離センサP〜Pそれぞれが一次元に配置されたラインセンサであるが、二次元に配置してもよい。この場合、二次元画像を容易に得ることができる。なお、ラインセンサを回転させたり、ラインセンサ2つ用いて走査させたりすることによっても二次元画像を得ることができる。
【0080】
距離画像センサRSは、表面入射型の距離画像センサに限られない。距離画像センサRSは、裏面照射型の距離画像センサであってもよい。
【0081】
入射光に応じて電荷が発生する電荷発生領域をフォトダイオード(たとえば、埋め込み型のフォトダイオードなど)により構成してもよい。
【0082】
本実施形態に係る距離画像センサRSにおけるp型およびn型の各導電型は、上述したものとは逆になるように入れ替えられていてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10…測距装置、A…一次元方向、FD1…第一電荷蓄積領域、FD2…第二電荷蓄積領域、P〜P…距離センサ、PG…フォトゲート電極、RS…距離画像センサ、S…第一パルス転送信号、S…第二パルス転送信号、TX1…第一転送電極、TX2…第二転送電極、LS…光源、DRV…駆動部、ART…演算部、OJ…対象物、Lp…パルス光、Lr…反射光、T…フレーム周期、q,q…電荷量、Q,Q…合計電荷量、d…距離。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8