(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記固定具の少なくとも前記取り付け部を除いた部分の外側に被覆部を形成することによって前記固定具と前記下水受部とを一体化させるようにした、請求項3または4記載の内副管継手。
前記所定寸法が、少なくとも内副管継手を前記内壁面に取り付けるときの前記流入管の管底と前記下水受部の上端との高低差に相関して設定された、請求項1ないし5のいずれかに記載の内副管継手。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般的に、マンホールの側壁に流入管を接続する時には、側壁に設けた開口に流入管を配置して、流入管の周囲にモルタルなどの充填剤を充填することによって流入管を固定するようにしているが、そのモルタル部分にアンカーボルトを差し込んで(埋め込んで)内副管用継手を固定しようとすると、アンカーボルトがマンホールの側壁に対しグリップ(アンカ性能)を効果的に発揮することができないので、内副管用継手の安定性が懸念される。
【0006】
これは特許文献1の技術においても同じであるが、特許文献1の技術では、本体壁面の流入口の周囲に挿通孔を均等に配置しているのみであって、本体壁面に挿通孔を形成する位置、つまりマンホールの内壁面に対しアンカーボルトを差し込む位置については、マンホールの側壁に接続した流入管の周囲のモルタル部分などを考慮したものではなく、内副管用継手をマンホールの側壁に安定して固定することができない可能性があった。
【0007】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、内副管継手、およびそれを用いたマンホールまたは枡を提供することである。
【0008】
この発明の他の目的は、マンホールや枡の内壁面に適切に取り付けることができる、内副管継手、およびそれを用いたマンホールまたは枡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【0010】
第1の発明は、流入管からマンホールまたは枡に流入した下水を内副管に導くためにマンホールまたは枡の内壁面に取り付けられる内副管継手であって、内壁面に沿って配置される取り付け面とその取り付け面の幅方向端縁どうしをつなぐ背面とによって漏斗状に形成される下水受部を有する合成樹脂製の継手本体、下水受部の上端部に設けられ、下水受部の上端から所定距離下の位置にある補強位置を含む範囲の背面を補強する補強部、および下水受部の上端から所定寸法下げた位置に内壁面に固定されるアンカの取り付け部を有する固定具を備え、取り付け部を補強位置よりも低い位置に配置して、取り付け部と補強位置との間に高低差を形成した、内副管継手である。
【0011】
第1の発明では、内副管継手は、継手本体を備え、マンホールや枡の内壁面に取り付けて使用される。継手本体は、流入管からマンホールや枡の内部に流入した下水を受ける下水受部を含み、下水受部は、内壁面に沿って配置される取り付け面とその取り付け面の幅方向端縁どうしをつなぐ背面とによって漏斗状に形成される。下水受部の背面の上端部には、補強部が設けられる。補強部は、下水受部の上端から所定距離下の上端と近接する位置にある補強位置を含む範囲において、下水受部の背面を補強する。また、下水受部の上端から所定の条件に基づいて規定した寸法下げた位置には、アンカの取り付け部が設けられおり、この取り付け部は、補強位置よりも低い位置に、補強位置との間に高低差をつけた状態で配置されている。
【0012】
第1の発明によれば、下水受部の上端から所定寸法下げた位置にアンカの取り付け部を設けるようにしているので、アンカのアンカ耐力範囲が流入管の周囲の充填材の施工範囲と重なることを回避して、マンホールや枡の内壁面にアンカを安定的に固定させることができる。
【0013】
しかも、下水受部の上端に近接する補強位置を含む範囲に補強部を配置しつつ、その補強位置よりも低い位置に高低差をつけてアンカの取り付け部を設けるようにしているので、内副管継手の下水受部に十分な耐久性を確保することも可能である。
【0014】
第2の発明は、第1の発明に従属し、固定具は、補強部に連結して設けられる。
【0015】
第2の発明では、取り付け部を有する固定具と補強部とが連結される。これによって、補強部による補強効果が向上し、内副管継手の下水受部の耐久性をより向上させることができる。
【0016】
第3の発明は、第1または第2の発明に従属し、補強部は、背面の幅方向に延びる芯部材を含み、芯部材の外側に被覆部を形成することによって補強部と下水受部とが一体化される。
【0017】
第3の発明では、補強部は、背面の幅方向に延びる芯部材を含む。そして、芯部材の外側を、樹脂材料からなる被覆部で覆うことによって、補強部が下水受部に一体化される。
【0018】
第3の発明によれば、流入管から流入した下水による引張方向の荷重を芯部材によって負担することにより、下水受部への負荷を軽減させることが可能である。
【0019】
また、芯部材の外側を樹脂材料からなる被覆部によって覆うことにより、芯部材の劣化を防止することができる。
【0020】
第4の発明は、第3の発明に従属し、芯部材は、背面の幅方向の一端から他端にかけて延びる金属ワイヤを含む。
【0021】
第4の発明では、芯部材は、金属ワイヤを含み、背面の幅方向の一端から他端にかけて外面上に金属ワイヤが配置される。
【0022】
第4の発明によれば、下水受部の背面の幅方向の全長に亘って金属ワイヤを設けるようにしているので、流入管から流入した下水による引張方向の荷重を背面の幅方向の全体に分散させることができ、下水受部の背面への負荷をより軽減させることが可能である。
【0023】
第5の発明は、第3または第4の発明に従属し、固定具の少なくとも取り付け部を除いた部分の外側に被覆部を形成することによって固定具と下水受部とが一体化される。
【0024】
第5の発明では、芯部材およびその端部に連結された固定具の外側を、樹脂材料からなる被覆部によって覆うことによって、固定具が下水受部に一体化される。そして、少なくともアンカの取り付け部が外部に突き出すようにされている。
【0025】
第6の発明は、第1ないし第5のいずれかの発明に従属し、所定寸法が、少なくとも内副管継手を内壁面に取り付けるときの流入管の管底と下水受部の上端との高低差に相関して設定される。
【0026】
第6の発明では、下水受部の上端よりもアンカの取り付け部の位置を下げるその所定寸法が、内副管継手を内壁面に取り付けるときに流入管の管底と下水受部14の上端とに形成する高低差の寸法などの条件に基づいて規定されている。たとえば、他の条件には、流入管の周囲に充填剤を施工する範囲の大きさや、流入管の厚み寸法や、アンカ耐力範囲の大きさなどが用いられる。
【0027】
第7の発明は、第1ないし第6のいずれかの発明の内副管継手を施工した、マンホールまたは枡である。
【0028】
第7の発明では、継手本体の取り付け面をマンホールや枡の内壁面に沿うように曲げ変形させるとともに、内副管継手をその継手本体の上端が流入管の管底より所定寸法下がった位置になるように位置決めする。それから、たとえば、アンカの取り付け部に挿通したアンカを締め付けることにより、内副管継手をマンホールや枡の内壁面に固定し、内副管継手の下方に内副管やエルボを接続する。こうすることにより、流入管からマンホールや枡の内部に流入した下水を受けて流出管へと導く下水管路が形成される。
【発明の効果】
【0029】
この発明によれば、下水受部の上端から所定の条件に基づいて規定した寸法下げた位置であってかつ補強位置よりも低い所定位置にアンカの取り付け部を設けるようにしているので、内副管継手をマンホールや枡の内壁面に適切に取り付けることができる。
【0030】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1および
図2を参照して、この発明の一実施例である内副管継手10は、継手本体12を備え、たとえば合流式下水道のマンホール100の内壁面102に沿わせた状態でその内壁面102に取り付けられる。そして、流入管104からマンホール100内に流入した下水(排水)を受けて、その下水を内副管106およびエルボ108を介して流出管110に導くことによって、下水が高所から落下することによるマンホール100の底面112の摩耗や損傷、ならびに下水の飛散を防ぐ。
【0033】
なお、この実施例では、マンホール100として、たとえば、内径が900mmのマンホールを採用しており、流入管104の内径は、たとえば600mmであり、その外径は、たとえば700mmである。ただし、これに限定される必要はない。
【0034】
図2と共に
図3−
図5を適宜参照して、継手本体12は、ポリエチレンまたはポリプロプレンを母材としたFRP(繊維強化プラスチック)などの、可撓性を有する合成樹脂によって形成され、下水受部14および立管部16を含んでいる。
【0035】
下水受部14は、流入管104から流入する下水を受け入れる受枠となる部分であって、一体成形された第1側壁18および第2側壁20からなり、上端22から下端24に向かって徐々に縮径(縮小)する上部開口の漏斗状に形成される。
【0036】
第1側壁18は、マンホール100の内壁面102側に配置される面であり、マンホール100の内壁面102に沿うように配置されて、下水受部14の“取り付け面”をなす。第1側壁18は、マンホール100の内壁面102の曲率と同程度の曲率で湾曲する湾曲板状に形成され、その曲率半径は、たとえば450mmである。第1側壁18の外面には、パッキン材26が貼りつけられている。一例として、パッキン材26には、EPDM製の樹脂発泡体(たとえば、三和化工株式会社製の「オプシーラー」)等を用いることができる。
【0037】
第1側壁18およびパッキン材26には、下水受部14の上端22の中央部から所定寸法下がった、後述する取り付け金具40の挿通孔50と同じ高さ位置に挿通孔28が形成されており、内副管継手10をマンホール100の内壁面102に取り付けるときには、この挿通孔28に挿通したアンカ(アンカーボルト)114が内壁面102に打ち込まれる。
【0038】
また、第2側壁20は、マンホール100の中心側に配置される面であり、第1側壁18の幅方向端縁どうしを断面U字状につないで(結んで)、下水受部14の“背面”をなす。そして、この第2側壁20と上述した第1側壁18とによって、下水受部14は、上方からの平面視において、幅方向(
図3および
図4の左右方向)に長く奥行き方向(
図5の左右方向)に短い略楕円形状に形成される。下水受部14の上端22の幅方向の寸法は、たとえば400mmであり、下水受部14の上端22の奥行き方向の寸法は、たとえば280mmである。また、下水受部14の上下方向の長さは、たとえば250mmである。
【0039】
さらに、下水受部14の下端24には、上述した立管部16が一体的に形成される。立管部16は、内副管106を接続するための部位であり、鉛直方向に延びる直管状に形成される。立管部16の径は、たとえば200mmであり、その上下方向の長さは、たとえば150mmである。
【0040】
また、
図5と共に
図6を適宜参照して、下水受部14の上端部には、補強部30が設けられる。補強部30は、下水受部14に流入した下水に対し第2側壁20(背面)の耐久性を確保するための部位である。補強部30は、下水受部14の上端22から所定距離下の補強位置31を含む範囲の位置に設けられ、第2側壁20の幅方向に線状に延びる。ここで、補強位置31とは、下水受部14の第2側壁20の補強すべき位置に設定されるものであって、下水受部14の上端22から所定距離下の上端22と近接する高さ位置において背面の幅方向中央付近の一点に設定される。下水受部14の第2側壁20の上端22には、下水から作用する力の負荷が最もかかり易いので、理想的には、下水受部14の上端22に補強位置31を設定し、その補強位置31を含む範囲の位置に補強部30を設けることが望ましい。しかしながら、製造上、下水受部14の上端縁に補強部30を設けることは難しい。このため、下水受部14の上端22よりやや下がった位置において上端22となるべく近接させて補強位置31を設定し、その補強位置31を含む範囲の位置に補強部30を設けた。この実施例では、補強位置31は、下水受部14の上端から45mm下の位置に設定され、補強部30は、この補強位置31の上下5mmを覆う高さ範囲に設けられる。すなわち、補強部30は、下水受部14の上端から40−50mm下の10mmの高さ範囲に設けられる。こうすることで、下水受部14の耐久性を向上させている。
【0041】
この実施例では、補強部30は、鋼鉄や軟鉄、ステンレスなどの金属からなる金属ワイヤなどの芯部材32を含む。芯部材32は、補強位置31がある高さの位置において、第2側壁20の外面上にその幅方向(横方向)の一端から他端にかけて配置される。芯部材32の外側は、下水受部14と同じ樹脂材料、つまりFRPからなる被覆部34によって覆われており、このように芯部材32を下水受部14に埋め込むことによって、下水受部14に一体化した補強部30が形成されている。
【0042】
また、補強部30の芯部材32の各端部には、固定具36が設けられている。固定具36は、
図6および
図7に示すように、連結金具38および取り付け金具40を含み、第2側壁20の幅方向の両端部のそれぞれに配置される。
【0043】
連結金具38は、芯部材32とそれよりも低い位置に設けられる取り付け金具40とを連結するための板材であり、鋼鉄や軟鉄、ステンレス等の金属によって上下方向に長い矩形の板状に形成される。連結金具38は、下水受部14の第2側壁20の外面に沿って設けられ、上端22から下端24に向かって縮小する下水受部14の外形に適合するように、上部に対し下部が内向きに湾曲ないし屈曲した形状を有している。
【0044】
連結金具38の上部には、芯部材32の端部が連結される。連結金具38に芯部材32の端部を連結するためには適宜の手段を採用することができるが、この実施例では、芯部材32の各端部には、拡径した係止部32aが形成されている。また、
図8(a)に示すように、連結金具38の上部の第2側壁20側の端縁には、プレス加工等が施されることによって、外面側に向けてアーチ状に突き出した突出部42が形成され、さらに、その突出部42に隣接した位置に、連結金具38を厚み方向に貫通する貫通孔44が形成されている。そして、芯部材32の張力を一定に保った状態で、
図8(b)に示すように、芯部材32の各係止部32aを連結金具38の裏面(内面)側から貫通孔44に挿通させ、連結金具38の表面(外面)側において突出部42の端縁に係止させるとともに、その状態で芯部材32を突出部42の裏面の窪みに嵌め込んで、連結金具38を下水受部14の外面に沿わせて配置することによって、芯部材32を連結金具38に固定するようにしている。
【0045】
また、
図6および
図7に戻って、連結金具38の下部には、取り付け金具40が設けられる。取り付け金具40は、アンカ(アンカーボルト)116によってマンホール100の内壁面102に固定される部位であり、ステンレス等の金属によって形成され、連結金具38の下部の外面に溶接等によって固着される。
【0046】
取り付け金具40は、所定の角度をなす第1板部46および第2板部48を有しており、上方からの平面視において、略く字形状になるように形成されている。
【0047】
第1板部46は、矩形の板状に形成され、内向きに湾曲ないし屈曲した連結金具38に対し一定角度傾けて、上下方向が垂直方向に合致した状態で固定される。たとえば、この実施例では、第1板部46の裏面側に、L字形状を有する固定部46aが固着されており、第1板部46の下端付近から連結金具38に向けて突き出した固定部46aと第1板部46の上端縁とを連結金具38の外面に溶接等して固着することによって、取り付け金具40が連結金具38の外面上に固定される。
【0048】
また、第2板部48は、第1板部46と一体に成形され、第1板部46の第1側壁18側の端縁で屈曲して第1側壁18の湾曲方向とほぼ等しい方向に延びる。第2板部48には、アンカ116の取り付け部として、挿通孔50が形成されている。そして、内副管継手10をマンホール100の内壁面102に取り付けるときには、この挿通孔50に挿通したアンカ116が内壁面102に打ち込まれる。
【0049】
さらにまた、上述した被覆部34は、芯部材32の全体と共に、連結金具38および取り付け金具40の第1板部46の外側を覆っている。これによって、固定具36は、連結金具38および取り付け金具40の第1板部46が下水受部14に一体化(つまり、下水受部14に埋め込んだ状態に)されるとともに、下水受部14から取り付け金具40の第2板部48のみが外部に突き出すようにされている。
【0050】
ここで、本実施例においては、上述のとおり、取り付け金具40が連結金具38を介して補強位置31、つまり下水受部14の上端22と近接する位置よりも下がった位置に設けられており、補強位置31と取り付け金具40とはそれらの間に高低差をつけた状態でそれぞれ配置されている。このように、補強部30と固定具36とを連結しつつも、補強位置31よりも低い位置に取り付け金具40を配置するようにした理由は、上述したように、下水受部14に流入した下水に対し耐久性を確保するために補強部30を下水受部14の上端22に近接させて配置することが求められる一方で、
図9に示すように、アンカ116を安定して固定するために必要な、アンカ116の周囲のアンカ耐力範囲S(
図9中斜線で示す範囲)が流入管104の周囲に施工するモルタル等の充填材118の施工範囲に重なってしまうことがないように、下水受部14の上端22よりも所定寸法下げた位置にアンカ116の取り付け部つまり取り付け金具40の挿通孔50を配置する必要があるからである。
【0051】
このような所定寸法の値、つまり下水受部の上端よりもアンカの取り付け部の位置を下げる寸法Hは、以下に説明するように、流入管の管底と下水受部の上端とに形成する高低差A、充填剤を施工する範囲の大きさB、流入管の厚み寸法C、ならびにアンカ耐力範囲の大きさDの各数値に相関して規定されることとなる。
【0052】
先ず、流入管の管底と下水受部の上端とに形成する高低差Aについて説明すると、内副管継手をマンホールの内壁面に取り付けるときには、内副管継手の下水受部が晴天時の汚水(内副管継手の下水受部が受けるべき水)を受けることができ、かつ雨天時の雨水(内副管継手を介さずにマンホール内に直接流入させるべき水)を下水受部の奥に飛び越えさせることができるように、流入管の管底よりも低い位置に内副管継手の取り付け位置を適宜調整する必要があるが、この高低差Aは、そのときに流入管の管底と下水受部の上端との間に形成する高低差の寸法を示し、流入管を流れる下水の流量や流速、ならびに下水受部の上端における奥行き方向の長さなどを勘案することによって適宜設定される。
【0053】
次に、充填剤を施工する範囲の大きさBについて説明すると、マンホールに流入管を接続するときには、先ず、マンホールの壁面に形成した開口に流入管を挿入し、それから流入管とマンホールの壁面との間にモルタル等の充填剤を施工する必要があるが、この充填剤を施工する範囲の大きさBは、充填剤を施工した範囲の内縁である流入管の外面から外縁までの距離を示す。この充填剤を施工する範囲の大きさBは、マンホールの径や流入管の径などを勘案して適宜設定される。
【0054】
また、流入管の厚み寸法Cは、マンホールに接続した流入管の厚みであって、流入管の管底から流入管の下端までの距離を示す。
【0055】
最後に、アンカ耐力範囲の大きさDは、上述したアンカ耐力範囲の大きさであって、アンカを中心にその周囲に確保した範囲の大きさ(半径)の寸法を示し、たとえば、アンカ耐力範囲の直径は、引張力を受けるアンカの有効埋め込み深さ×2+アンカの外径によって算出されることが知られているので、その直径を1/2した値を利用することができる。
【0056】
すなわち、内副管継手をマンホールの内壁面に取り付けるときに、流入管の管底と下水受部の上端との間に高低差Aを形成して内副管継手を取り付けるようにすると、その高低差Aに上述した所定寸法Hを加えたA+Hだけ流入管の管底よりも下がった(低い)位置にアンカの取り付け部(挿通孔50)が配置されることとなる。これに対し、流入管の外面からBの距離を隔てた範囲まで充填剤が施工されているとき、流入管の厚み寸法Cを考慮すると、流入管の管底からB+C下がった位置まで充填剤が施工されていることとなり、そこにさらにアンカ耐力範囲を確保するためには、B+C+D以上流入管の管底よりも下がった(低い)位置にアンカの取り付け部が配置されていなくてはならない。よって、アンカ耐力範囲が充填材の施工範囲と重なることを回避するためには、下水受部の上端よりもアンカの取り付け部の位置を下げる寸法H、流入管の管底と下水受部の上端とに形成する高低差A、充填剤を施工する範囲の大きさB、流入管の厚み寸法C、ならびにアンカ耐力範囲の大きさDの各数値が、A+H≧B+C+Dの関係を満たしていることが必要である。つまり、内副管継手において下水受部の上端よりもアンカの取り付け部の位置を下げる寸法Hは、H≧B+C+D−Aの関係を満たすように規定するとよいと言える。
【0057】
なお、本実施例においては、流入管104の管底から100mm(A)下げた位置に内副管継手10を取り付けるようにしている。これは、本実施例と同じか同程度のサイズの内副管継手10をマンホール100に取り付けるときに、流入管104の管底と下水受部14の上端22との間に100mm以上の範囲で高低差Aを形成すると、下水受部14が晴天時の汚水を受けることができ、かつ雨天時の雨水を下水受部14の奥に飛び越えさせることができることが、本願発明者等による実験によって確認されたからである。さらに、高低差Aを大きくすると相対的に下水受部14の上端22の奥行き寸法を大きくしなければならないことや、内副管継手10の下方に内副管106やエルボ108を設置するためのスペースを好適に確保することも考慮して、本実施例においては、流入管104の管底と下水受部14の上端22とに形成する高低差Aを100mmに設定している。
【0058】
また、充填剤を施工する範囲の大きさBについては、マンホール100に流入管104を接続するときに、流入管104の外面から最大で100mm程度の範囲に充填剤118を施工することが経験的に想定され、また、マンホールの壁面に流入管を接続するための開口を形成するときに、その開口を矩形に穿孔する施工事例が過去にあるのでそのようなマンホールにも対応できるように、流入管104の外面から上下左右に100mm隔てた矩形の範囲に充填剤118を施工することを前提としている。
【0059】
さらに、本実施例においては、上述したように、流入管104の内径を600mmに、その外径を700mmに設定しているので、流入管104の厚み寸法Cは50mmである。
【0060】
さらにまた、アンカ耐力範囲の大きさDについては、本実施例においては、アンカ116のアンカ径が17.3mmであって、その埋め込み深さが50mmであるが、マンホール100の内壁面102が腐食して耐力維持できなくなることを想定して10mm分余裕をみて40mmと仮定しているので、上述した計算式に当てはめて、アンカを中心に直径100mm(40×2+17.3=97.3≒100)のアンカ耐力範囲を確保するようにしており、アンカ耐力範囲の大きさ(半径)Dは、50mmに設定される。
【0061】
したがって、本実施例においては、アンカ116のアンカ耐力範囲Sが充填材118の施工範囲と重なってしまうことを回避して、アンカ116をマンホール100の内壁面102に安定的に固定できるように、下水受部14の上端22よりも100mm以上(∵H≧100+50+50−100)下げた位置にアンカ116の取り付け部つまり取り付け金具40の挿通孔50を配置するようにしている。
【0062】
そしてさらに、内副管継手10の下水受部14に耐久性を確保しつつ、アンカ116をマンホール100の内壁面102に安定的に固定させるために、下水受部14の上端22よりも45mm下の補強位置31を含むように、下水受部14の上端22よりも40〜50mm下の範囲に設けられた補強部30の高さ位置を保持しつつ、補強位置31よりも60mm以上低い位置に挿通孔50を配置するようにして、補強位置31と挿通孔50の間に高低差を形成している。
【0063】
このような内副管継手10を製造する方法について説明すると、先ず、FRPを用いて継手本体12(下水受部14、立管部16)を成形する。そして、下水受部14の第2側壁20の外面に沿って芯部材32を配置するとともに、その芯部材32の各端部に固定具36をそれぞれ連結する。それから、各固定具36を第2側壁20の幅方向の各端部に設置し、続いて、ローラや刷毛などを用いて、芯部材32、連結金具38および取り付け金具40の第1板部46の全体を覆うようにFRPを塗布して積層する。これによって、被覆部34が形成され、補強部30と下水受部14とが一体化される。そして、そのFRPが固化すると、内副管継手10の製造が完了する。
【0064】
また、
図1、
図2および
図9を参照して、内副管継手10をマンホール100に施工する方法について以下に説明する。
【0065】
先ず、下水受部14の第1側壁(取り付け面)18をマンホール100の内壁面102に沿うように変形させながら、流入管104の管底と下水受部14の上端22とに上述した高低差が形成されるように、内副管継手10の位置決めを行う。このとき、マンホール100の内壁面102と第1側壁18の外面とによってパッキン材26が圧着されて、その部分の止水性が保持される。なお、下水受部14の第1側壁18の曲率がマンホール100の内壁面102の曲率と異なる場合には、第1側壁18をマンホール100の内壁面102の曲率に合うように曲げ変形させることによって、マンホール100の内壁面102に沿わせるようにする。
【0066】
次に、マンホール100の内壁面102に内副管継手10を取り付ける。先ず、第1側壁18の挿通孔28にアンカ114を挿通して、そのアンカ114をマンホール100の内壁面102に締め付ける。そして、内副管継手10の上端22が水平となるように位置決めを行ってから、左右の取り付け金具40の挿通孔50にアンカ116を挿通して、そのアンカ116をゴムブッシュ等の調整部材120を介してマンホール100の内壁面102に締め付ける。
【0067】
内副管継手10の取付作業が終わると、続いて、内副管継手10の立管部16の下端部に直管状の内副管106を接合し、その内副管106の下端部に90°エルボ等のエルボ108を接合して、下水を流出管110へと導く下水管路を形成する。それから、固定金具124を使用することによって、内副管継手10の立管部16や内副管106をマンホール100の内壁面102に適宜固定し、作業を終了する。
【0068】
このようにして内副管継手10を施工したマンホール100においては、晴天時に、流入管104から通常水量の下水が流れてくると、下水は下水受部14の上部開口から内副管継手10内に流入する。そして、漏斗状に形成される下水受部14内を滑らかに流れ、内副管106およびエルボ108を通って、流出管110から流出する。これにより、流入管104から流入した下水がマンホール100の底面108に打ちつけられることに起因した、マンホール100の底面112の浸食や損傷を抑制することができる。また、内副管継手10によって下水の飛散も防止できるので、晴天時にマンホール100内で維持管理などを行う作業者の作業性が向上されることとなる。
【0069】
一方、雨天時には、下水の流量および流速が増すので、下水は流入管104から勢いよく飛び出すが、下水受部14の上端22が流入管104の管底より所定寸法下がった位置になるように内副管継手10を位置決めしているので、下水は内副管継手10を飛び超えてマンホール100内に直接流入する。つまり、晴天時の計画最大流量を上回る雨天時の下水は、内副管継手10の管壁(下水受部14の第2側壁20など)にあまり衝突しないので、雨天時の下水の負荷による内副管継手10の破損が防止される。
【0070】
以上のように、この実施例では、下水受部14の上端22から所定の条件に基づいて規定した寸法下げた位置にアンカ116の取り付け部を設けるようにしているので、アンカ116のアンカ耐力範囲Sが充填材118の施工範囲と重なることを回避して、アンカ116をマンホール100の内壁面102に安定的に固定させることができるようになる。しかも、下水受部14の上端22に近接する補強位置31を含む範囲に補強部30を配置した状態を保持しつつ、その補強位置31よりも低い位置に当該補強位置31との間に高低差をつけた状態で取り付け金具40を設置するようにしているので、内副管継手10の下水受部14に十分な耐久性を確保することも可能である。したがって、この実施例によれば、内副管継手10をマンホール100の内壁面102に適切に取り付けることができる。
【0071】
また、この実施例では、下水受部14の上端から所定寸法下げた位置に設けられるアンカの取り付け部(挿通孔50)と下水受部14の上端部に設けられる補強部30とを、連結金具38を介して連結させているので、アンカが固定されるマンホール100の内壁面102および補強部30が一体となって下水受部14を支持する。これによって、補強部30による補強効果が向上し、下水受部14の耐久性をさらに向上させることができる。
【0072】
さらに、この実施例では、補強部30として、下水受部14の第2側壁(背面)20の幅方向の全長に亘って芯部材32つまり金属ワイヤを設けるとともに、その芯部材32の外側をFRPで覆うことによって、被覆部34を形成し、補強部30を下水受部14と一体化させるようにしている。
【0073】
ここで、継手本体12をFRPによって製造した場合には、その材質上、継手本体12は層間剥離を引き起こす方向(つまり、引張方向)の荷重に対して弱くなってしまう。特に、下水受部14の第2側壁20は、マンホール100の内壁面102に取り付けていないので、流入管104から流入した下水による引張方向の荷重を受けやすいと言える。
【0074】
これに対し、この実施例では、下水受部14の第2側壁20の幅方向の全長に亘って芯部材32(金属ワイヤ)を設けるようにしているので、流入管104から流入した下水による引張方向の荷重が下水受部14の第2側壁20にかかっても、その荷重を芯部材32が負担し、かつその荷重を第2側壁20の幅方向の全体に分散させることによって、下水受部14の第2側壁20への負荷を軽減させることが可能である。しかも、芯部材32を下水受部14に埋め込むようにしていることにより、芯部材32が酸化などによって劣化することも防止することができる。
【0075】
また、固定具36の連結金具38および取り付け金具40の第1板部46の外側を、被覆部34で覆うことによって、固定具36を下水受部14に埋め込んでいるので、固定具36の劣化を防止することができる。
【0076】
したがって、この実施例によれば、内副管継手10の性能低下を低減できるようになる。
【0077】
なお、上述の実施例では、芯部材32として、金属ワイヤを用いるようにしたが、これに限定される必要はない。
【0078】
たとえば、金属ワイヤの代わりに、他の金属部材を用いるようにしてもよい。一例を挙げると、
図10に示すように、細長い帯状に形成された金属板を下水受部14の第2側壁20の幅方向の全長に亘って配置し、その両端部を連結板34の表面に溶接等するようにしてもよい。
【0079】
また、上述の実施例では、芯部材32の各端部に連結金具38を固定するとともに、その連結金具38の下部に取り付け金具40を設けるようにしたが、これに限定される必要はない。
【0080】
たとえば、1枚の金属板を塑性変形させることによって、補強部30の芯部材32、連結金具38および取り付け金具40を一体成形するようにしてもよい。
【0081】
一例を挙げると、
図11に示すように、補強部30の芯部材32の端部に連結金具38を設けるとともに、連結金具38の上下方向の全体から取り付け金具40が突き出すようにし、その取り付け金具40の下部にアンカ116の取り付け部(挿通孔50)を設けるようにしてもよい。
【0082】
また、補強位置31よりも低い位置に高低差をつけた状態でアンカ116の取り付け部を設けることができるのであれば、連結金具38は必ずしもなくてよい。
【0083】
さらに、図示は省略するが、補強部30の芯部材32の両端部を下方向に屈曲ないし湾曲させて下方に延ばし、その下端部に取り付け金具40(アンカ116の取り付け部)を設けるようにしてもよい。
【0084】
続いて、
図12を参照して、内副管継手10の変形実施例について説明する。
図12に示す内副管継手は、炭素繊維(カーボンファイバー)製のシート状の芯部材32を備える点が、上述の内副管継手10と異なる。それ以外の構成については同様であるので、重複する部分については、同じ参照番号を用い、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0085】
図12に示すように、継手本体12は、下水受部14および立管部16を含み、ポリエチレンまたはポリプロプレンを母材としたFRPなどの可撓性を有する合成樹脂によって形成される。
【0086】
下水受部14は、一体成形された第1側壁18および第2側壁20からなり、上端22から下端24に向かって徐々に縮径(縮小)する上部開口の漏斗状に形成される。
【0087】
図12と共に
図13を適宜参照して、下水受部14の上端部には、補強部30が設けられる。補強部30は、下水受部14の上端22から所定距離下の補強位置31を含む範囲の位置に設けられ、第2側壁20の幅方向に帯状に延びる。補強位置31は、下水受部14の上端22から所定距離下の上端22と近接する高さ位置において背面の幅方向中央付近の一点に設定される。この実施例では、補強位置31は、下水受部14の上端から45mm下の位置に設定され、補強部30は、この補強位置31の上5mmおよび下45mmを覆う高さ範囲に設けられる。すなわち、補強部30は、下水受部14の上端から40−90mm下の50mmの高さ範囲に設けられ、その上部分で補強位置31を覆っている。こうすることで、下水受部14の耐久性を向上させている。
【0088】
補強部30は、カーボンファイバー製のシート状の芯部材32を含む。芯部材32は、幅方向に延びる帯状に形成され、その上下方向の長さは、たとえば40mmである。芯部材32は、補強位置31を上端とするように補強位置31を覆う高さ範囲において、第2側壁20の外面上に幅方向(横方向)の一端から他端にかけて配置される。芯部材32の外側は、下水受部14と同じ樹脂材料、つまりFRPを塗布して積層した被覆部34によって覆われており、このように芯部材32を下水受部14に埋め込むことによって、下水受部14に一体化した補強部30が形成されている。
【0089】
また、補強部30の芯部材32の各端部には、固定具36が設けられる。この実施例では、固定具36は、
図14に示すように、鋼鉄や軟鉄、ステンレス等の1枚の金属板を塑性変形させることによって一体成形される連結金具38および取り付け金具40を含み、第2側壁20の幅方向の両端部のそれぞれに配置される。
【0090】
連結金具38は、鋼鉄や軟鉄、ステンレス等の金属によって上下方向に長い矩形の板状に形成される。連結金具38は、下水受部14の第2側壁20の外面に沿って設けられ、上端22から下端24に向かって縮小する下水受部14の外形に適合するように、上部に対し下部が内向きに湾曲ないし屈曲した形状を有している。
【0091】
連結金具38には、芯部材32の端部が連結される。連結金具38に芯部材32の端部を連結するためには適宜の手段を採用することができるが、この実施例では、
図14(a)に示すように、連結金具38の幅方向中央部分に厚み方向に貫通する2つの貫通孔45が形成されている。一方、芯部材32の端部にも厚み方向に貫通する2つの貫通孔35が形成されている。芯部材32と連結金具38とを固定するときには、芯部材32の各貫通孔35と、連結金具38の各貫通孔45とが対向するように、連結金具38の表面(外面)側に芯部材32の端部を重ねて配置する。そして、その状態で芯部材32側から貫通孔35および貫通孔45にリベット33を挿通し、連結金具38の裏面側からリベット33の先端をかしめる。これによって、
図14(b)に示すように、芯部材32が連結金具38に固定される。
【0092】
また、
図13と共に
図14を適宜参照して、連結金具38の下部には、取り付け金具40が設けられる。取り付け金具40は、連結金具38の下部の第1側壁18側の端縁から屈曲して第1側壁18の湾曲方向とほぼ等しい方向に延びる。取り付け金具40には、アンカ116の取り付け部として、挿通孔50が形成されている。このとき、挿通孔50は、補強位置31、つまり下水受部14の上端22と近接する位置よりも低くされる。内副管継手10をマンホール100の内壁面102に取り付けるときには、この挿通孔50に挿通したアンカ116が内壁面102に打ち込まれる。
【0093】
さらにまた、上述した被覆部34は、芯部材32の全体と共に、連結金具38の外側を覆っている。これによって、固定具36は、連結金具38が下水受部14に一体化(つまり、下水受部14に埋め込んだ状態に)されると共に、下水受部14から取り付け金具40のみが外部に突き出すようにされている。
【0094】
このように、本実施例においても、上述の各実施例と同様に、取り付け部(挿通孔50)が連結金具38を介して、補強位置31よりも低い位置に設けられており、補強位置31と取り付け部とはそれらの間に高低差をつけた状態でそれぞれ配置されている。つまり、補強部30を下水受部14の上端22と近接させて配置する一方で、アンカ耐力範囲Sが流入管104の周囲に施工するモルタル等の充填材118の施工範囲に重なってしまうことを回避している。
【0095】
なお、アンカの取り付け部の位置を下げる所定寸法の値については、
図9を参照して説明した上述の実施例と同様に規定される。
【0096】
図12に示す実施例においても、上述の各実施例と同様に、下水受部14の上端22から所定寸法下げた位置にアンカ116の取り付け部を設けるようにしているので、アンカ116をマンホール100の内壁面102に安定的に固定させることができる。また、下水受部14の上端22と近接する補強位置31を含む範囲に補強部30を配置した状態を保持しつつ、その補強位置31よりも低い位置に当該補強位置31との間に高低差をつけた状態で取り付け金具40を設置するようにしているので、内副管継手10の下水受部14に十分な耐久性を確保することも可能である。したがって、
図12に示す実施例においても、上述の各実施例と同様に、内副管継手10をマンホール100の内壁面102に適切に取り付けることができる。
【0097】
さらに、
図12に示す実施例においては、補強部30として、下水受部14の第2側壁(背面)20の幅方向の全長に亘ってシート状の芯部材32を設けるとともに、その芯部材32の外側にFRPを塗布して積層することによって、被覆部34を形成し、補強部30を下水受部14と一体化させるようにしている。したがって、流入管104から流入した下水による引張方向の荷重を芯部材32が負担し、かつその荷重を第2側壁20の幅方向および芯部材32の上下方向の全体に分散させることによって、下水受部14の第2側壁20への負荷を軽減させることが可能である。つまり、下水受部14の上端22と近接する補強位置31を含む広い範囲を補強部30によって補強することができる。
【0098】
しかも、芯部材32を下水受部14に埋め込むようにしていることにより、芯部材32の破損などを防止することができる。
【0099】
また、
図12に示す実施例では、カーボンファイバー製のシート状の芯部材32を用いたので、軽量でかつ補強性能が高い補強部30を構成することができる。
【0100】
なお、
図12に示す実施例では、芯部材32の各端部と連結金具38とをリベット33で連結しているが、連結手段はこれに限定される必要はない。
【0101】
たとえば、
図15に示すように、芯部材32の各端部に係止部32aを設けるようにしてもよい。
図15に示す実施例では、芯部材32の各端部をT字状に形成することによって、2つの係止部32aが設けられている。一方、第1側壁18と逆側の連結金具38の端縁には、下水受部14と反対側(外側)に向けて突き出す角筒状の係合部37が形成されている。芯部材32を連結金具38に固定するときには、芯部材32の各端部を係合部37の挿通孔内に押し込み、係合部37の端縁に各係止部32aを係止させると共に、芯部材32の張力を一定に保った状態で、連結金具38を下水受部14の外面に沿わせて配置することによって、芯部材32を連結金具38に固定する。ただし、係止部32aおよび係合部37の形状はこれらに限定される必要はない。図示しないが、たとえば、係止部32aとして、芯部材32の各端部に断面略V字状の折り返しを形成してもよい。
【0102】
また、
図12に示す実施例では、連結金具38が上下方向に延びる矩形の板状に形成され、芯部材32の端部の上下部分に連結されているが、必ずしもこれに限定される必要はない。
【0103】
たとえば、
図16に示すように、連結金具38が上下方向に短い板状に形成され、芯部材32の端部の下部分のみに連結されるようにしてもよい。この場合でも、補強位置31よりも低い位置に高低差をつけた状態でアンカ116の取り付け部を設けることが可能である。
【0104】
さらに、
図12、
図15および
図16に示す実施例では、シート状の芯部材32が設けられる上下方向の範囲と、取り付け金具40が設けられる上下方向の範囲とが一部重なるようにされている。しかし、芯部材32が設けられる上下方向の範囲や、取り付け金具40との位置関係はこれに限定される必要はない。
【0105】
一例を挙げると、
図17に示す実施例では、板状部材によって、芯部材32および取り付け金具40が一体成形されており、上下方向の長さが大きいシート状の芯部材32の下部の第1側壁18側の端縁から、上下方向の長さが小さい取り付け金具40が屈曲して延びている。このように、芯部材32の上下方向の長さを大きく設定し、芯部材32が設けられる上下方向の範囲内に、取り付け金具40が設けられる上下方向の範囲がすべて収まるようにしてもよい。この場合でも、補強位置31よりも低い位置に高低差をつけた状態で取り付け部を設けることができる。
【0106】
なお、芯部材32および固定具の材料としては、十分な剛性や弾性を有する材料であれば、金属およびカーボンファイバーに限定される必要はなく、合成樹脂などを利用してもよい。
【0107】
さらに、上述の各実施例では、芯部材32の外側にFRPを塗布して積層することによって、被覆部34を形成するようにしたが、被覆部34は別部材であってもよい。
【0108】
図18に示す実施例では、FRPやPVCなどの合成樹脂によって形成されるカバー部材39をあらかじめ用意する。カバー部材39は、幅方向に延びる帯状に形成され、下水受部14の上端部の外形に適合するようにその幅方向の一端から他端にかけてU字状に湾曲している。
図18(b)からよくわかるように、カバー部材39の下水受部14側(内側)には、幅方向に延びる溝39aが設けられている。溝39aは、芯部材32の位置決めのために用いられる。カバー部材39を下水受部14に取り付ける際には、芯部材32をカバー部材39の溝39a内に嵌め込んだ状態で、下水受部14とカバー部材39とを接着する。これによって、被覆部34が形成され、補強部30と下水受部14とが一体化される。この場合でも、芯部材32の外側をカバー部材39によって覆うことにより、芯部材32の腐食などによる劣化を防止することができる。
【0109】
また、
図19に示す実施例では、継手本体12の射出成形時に、下水受部14の芯部材32が配置される位置において、第2側壁20の外面に沿って幅方向に延びる凹部41があらかじめ形成されている。下水受部14に芯部材32を固定するときには、凹部41内に、その幅方向(横方向)の一端から他端にかけて芯部材32を配置する。さらに、図示しないが、凹部41内の上部および下部には、凹部41の幅方向に沿って延びる嵌合溝が形成されている。一方、
図19(b)に示すように、カバー部材39の内側には突起39bが設けられ、その突起39bの先端には係止爪が形成されている。カバー部材39を下水受部14に取り付ける際には、突起39bの係止爪を下水受部14側の凹部41内に形成される嵌合溝に嵌合させることによって、カバー部材39を下水受部14に固定する。
【0110】
被覆部34としてこのようなカバー部材39を採用することによって、作業効率を向上させることができる。
【0111】
なお、カバー部材39の形状としては、
図19および
図20に示すものに限定される必要はなく、芯部材32の全体と共に、連結金具38の外側を覆うようにしてもよい。これによって、固定具36は、連結金具38が下水受部14に一体化されるとともに、下水受部14から取り付け金具40のみが外部に突き出すようにされる。
【0112】
また、必ずしも芯部材32の外側に被覆部34を形成することにより、補強部30を下水受部14と一体化させる必要はなく、接着または融着等により第2側壁20の外面に露出するように芯部材32を固定したものを補強部30として機能させるようにしてもよい。
【0113】
さらに、芯部材32および固定具36は、必ずしも下水受部14に後付けで設ける必要はなく、継手本体12の射出成形時に、芯部材32および固定具を金型にあらかじめセットしておき、インサート成形によって下水受部14の補強位置31がある高さ位置に埋め込むようにしてもよい。
【0114】
さらにまた、補強部30は、必ずしも下水受部14と別部材である必要はなく、
図20に示すように、継手本体12の成形時に、第2側壁20の上端部において幅方向の全長に亘ってリブ43を形成しておき、そのリブ43を補強部30として機能させるようにしてもよい。
【0115】
あるいは、下水受部14の第2側壁20の上端部を幅方向の全長に亘って肉厚に形成したり、剛性の高い材料に置き換えて形成し、補強部30として機能させてもよい。
【0116】
なお、このように、補強部30として別部材を用いないようにすれば、下水受部14の上端部に芯部材32を埋め込んだりする必要がないので、製造上、下水受部14の上端縁に補強部30を設けることが可能となる。したがって、たとえば、
図20に示すように、下水受部14の上端22の幅方向中央付近に補強位置31を設定し、その補強位置31を含む範囲の下水受部14の上端縁に補強部30(リブ43)を設けるようにするとよい。これにより、補強性能を高くすることができる。
【0117】
さらにまた、補強部30は、必ずしも下水受部14の第2側壁20の幅方向に沿って直線状、つまり水平方向に設ける必要はなく、
図21に示すように、幅方向の一端から中央部に向かって斜め上方に延び、中央部から他端に向かって斜め下方に延びるアーチ状に設けてもよい。この場合でも、下水受部14の上端22と近接する補強位置31を含む範囲に補強部30を配置した状態を保持しつつ、その補強位置31よりも低い位置に高低差をつけた状態で取り付け部を設けることができる。
【0118】
また、補強部30は、必ずしも下水受部14の第2側壁20の幅方向全長に亘って形成する必要はなく、たとえば、第2側壁20の幅方向中心部分のみに設けてもよいし、複数の補強部30を一定間隔またはランダムな位置に配置してもよい。また、継手本体12の上下方向に複数の補強部30を設けるようにしてもよい。要するに、補強部30は、下水受部の上端部において、補強位置31を含む範囲に形成されていればよく、補強部30の位置、大きさ、範囲、形状などは上述の各実施例に示すものに限定されない。
【0119】
さらにまた、上述の各実施例では、下水受部14の左右両側にアンカ116の取り付け部が形成された取り付け金具40がそれぞれ1つずつ設けられたが、これに限定される必要はなく、下水受部14の上端22から所定の条件に基づいて規定した寸法下げた位置にアンカの取り付け部を設けるようにするのであれば、継手本体12の上下方向に複数の取り付け金具40を設けるようにしてもよい。
【0120】
また、補強部30の両端部と取り付け金具40とは、必ずしも連結される必要はなく、分離して配置するようにしてもよい。
【0121】
なお、上述の各実施例に示す芯部材32および固定具36の形状、材料、連結手段およびこれらの組み合わせは適宜入れ替え可能である。
【0122】
さらにまた、上述の実施例では、下水受部14は、平面視で幅方向に長く奥行き方向に短い略楕円形状に形成されたが、これに限定される必要はなく、下水受部14は、平面視で円形状であってもよいし、方形状を含む多角形状であってもよい。
【0123】
さらに、上述の実施例では、継手本体12をFRPによって成形したが、これに限定される必要はなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、PVC等の他の合成樹脂による射出成形、回転成形、ブロー成形等の方法によって継手本体12を成形するようにしてもよい。この場合には、被覆部34にも継手本体12と同じ樹脂材料を利用するとよい。
【0124】
さらにまた、上述の実施例では、内副管継手10を合流式下水道のマンホール100の内壁面102に取り付けて使用したが、これに限定される必要はなく、枡などの他の排水施設に適用することが可能である。
【0125】
また、上述した径や高さ等の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
【0126】
特に、上述したように、内副管継手10を内壁面102に取り付けるときに流入管104の管底と下水受部14の上端22とに形成する高低差の寸法、流入管104の周囲に充填剤118を施工する範囲の大きさ、流入管104の厚み寸法、ならびにアンカ耐力範囲の大きさなどの値は、あくまで一例を示したのみであってこれに限定されるものではなく、下水受部14の上端22よりもアンカ116の取り付け部の位置を低くする寸法の値についても、上記条件に応じて適宜変更可能である。