(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電解質の両側に電極が配設される電解質・電極構造体とセパレータとを有する発電セルが、複数積層される積層体を備え、前記積層体の積層方向に延在して燃料ガス、酸化剤ガス又は冷却媒体である流体を流通させる流体連通孔が形成されるとともに、前記積層体の積層方向両側には、ターミナルプレート、インシュレータ及びエンドプレートが配設される燃料電池スタックであって、
少なくとも一方のエンドプレート側には、前記一方のエンドプレートの外面より積層方向内側に位置してヒートパイプ構造体が設けられるとともに、
前記ヒートパイプ構造体は、前記流体連通孔に配置され、前記流体から受熱する受熱部と、
前記積層体の積層方向の端部に配置される前記発電セルと前記一方のエンドプレートの外面との間に配置され、前記発電セルの発電面に平行な面方向に沿って延在し、前記受熱部で受熱した熱を放出する放熱部と、
を備えることを特徴とする燃料電池スタック。
請求項1記載の燃料電池スタックにおいて、前記放熱部は、前記一方のエンドプレートの内部、一方のターミナルプレートの内部、一方のインシュレータの内部、前記一方のエンドプレートの表面、前記一方のターミナルプレートの表面又は前記一方のインシュレータの表面に沿って設けられる複数本のヒートパイプ又は平面型ヒートパイプを備えることを特徴とする燃料電池スタック。
請求項1〜3のいずれか1項に記載の燃料電池スタックにおいて、前記放熱部が配置される放熱部配置部位には、該放熱部の外周との間に伝熱用媒体が充填されることを特徴とする燃料電池スタック。
【背景技術】
【0002】
例えば、固体高分子型燃料電池は、高分子イオン交換膜からなる固体高分子電解質膜を採用している。この燃料電池は、固体高分子電解質膜の両側に、それぞれ電極触媒(電極触媒層)及び多孔質カーボン(ガス拡散層)を有するアノード電極とカソード電極とを配設した電解質膜・電極構造体(MEA)を備えている。電解質膜・電極構造体は、セパレータ(バイポーラ板)間に挟持されることにより発電セルが構成されている。燃料電池は、発電セルを所定の数だけ積層することにより、例えば、車載用燃料電池スタックとして使用されている。
【0003】
ところで、燃料電池スタックでは、外部への放熱により他の発電セルに比べて温度低下が惹起され易い発電セルが存在している。例えば、積層方向端部に配置されている発電セル(以下、端部発電セルともいう)は、例えば、電力取り出し用ターミナルプレート(集電板)や、エンドプレート等からの放熱が多く、上記の温度低下が顕著になっている。
【0004】
この温度低下によって、端部発電セルでは、燃料電池スタックの中央部分の発電セルに比べて結露が発生し易くなる。このため、生成水の排出性が低下して、発電性能が低下するという不具合が指摘されている。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1に開示されている燃料電池が知られている。この燃料電池では、
図22に示すように、セル1の積層体の各端部には、エンドプレート2a、2bが配置されている。燃料電池内には、冷却システム3が設けられている。冷却システム3は、各セル1内を積層方向に延在する循環ダクト4を備えるとともに、前記循環ダクト4には、流体ポンプ5を介して冷却材が循環供給されている。
【0006】
エンドプレート2a、2bの外方には、熱取り出し手段6が配設される。各熱取り出し手段6は、複数本のヒートパイプ7を備えるとともに、前記ヒートパイプ7は、エンドプレート2a、2b内に挿入されている。ヒートパイプ7は、エンドプレート2a、2bの内部を循環ダクト4に沿って流通する冷却材の熱を受熱し、セル1の冷却を迅速に行うことができる、としている。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び
図2に示すように、本発明の第1の実施形態に係る燃料電池スタック10は、例えば、図示しない燃料電池電気自動車に搭載される車載用燃料電池スタックとして使用される。
【0020】
燃料電池スタック10は、複数の発電セル12が水平方向(矢印A方向)又は鉛直方向(矢印C方向)に積層された積層体14を備える。積層体14の積層方向(矢印A方向)一端には、ターミナルプレート16a、インシュレータ(絶縁プレート)18a及びエンドプレート20aが積層方向外方に向かって、順次、配設される(
図2参照)。積層体14の積層方向他端には、ターミナルプレート16b、インシュレータ(絶縁プレート)18b及びエンドプレート20bが積層方向外方に向かって、順次、配設される。
【0021】
図1に示すように、エンドプレート20a、20bは、金属材又は樹脂材で構成され、横長(縦長でもよい)の長方形状を有するとともに、各辺間には、連結バー24が配置される。各連結バー24は、両端をエンドプレート20a、20bの面内にボルト26を介して固定され、複数の積層された発電セル12に積層方向(矢印A方向)の締め付け荷重を付与する。なお、燃料電池スタック10では、エンドプレート20a、20bを端板とする筐体を備え、前記筐体内に積層体14を収容するように構成してもよい。
【0022】
発電セル12は、
図3及び
図4に示すように、電解質膜・電極構造体30が、第1セパレータ(カソードセパレータ)32及び第2セパレータ(アノードセパレータ)34に挟持される。第1セパレータ32及び第2セパレータ34は、例えば、カーボンセパレータにより構成される。なお、第1セパレータ32及び第2セパレータ34は、例えば、鋼板、ステンレス鋼板、アルミニウム板、めっき処理鋼板、あるいは金属薄板を波形にプレス成形した金属セパレータを採用してもよい。
【0023】
発電セル12の矢印B方向(
図4中、水平方向)の一端縁部には、積層方向である矢印A方向に互いに連通して、酸化剤ガス入口連通孔(流体連通孔)36a及び燃料ガス出口連通孔(流体連通孔)38bが、矢印C方向(鉛直方向)に配列して設けられる。酸化剤ガス入口連通孔36aは、酸化剤ガス、例えば、酸素含有ガスを供給する一方、燃料ガス出口連通孔38bは、燃料ガス、例えば、水素含有ガスを排出する。
【0024】
発電セル12の矢印B方向の他端縁部には、矢印A方向に互いに連通して、燃料ガスを供給するための燃料ガス入口連通孔(流体連通孔)38a、及び酸化剤ガスを排出するための酸化剤ガス出口連通孔(流体連通孔)36bが、矢印C方向に配列して設けられる。
【0025】
発電セル12の矢印C方向の上端縁部には、冷却媒体を供給するための冷却媒体入口連通孔(流体連通孔)40aが設けられる。発電セル12の矢印C方向の下端縁部には、冷却媒体を排出するための冷却媒体出口連通孔(流体連通孔)40bが設けられる。
【0026】
第1セパレータ32の電解質膜・電極構造体30に向かう面32aには、酸化剤ガス入口連通孔36aと酸化剤ガス出口連通孔36bとに連通する酸化剤ガス流路42が設けられる。酸化剤ガス流路42は、水平方向(矢印B方向)に延在する複数本の流路溝42aを有する。
【0027】
第2セパレータ34の電解質膜・電極構造体30に向かう面34aには、燃料ガス入口連通孔38aと燃料ガス出口連通孔38bとに連通する燃料ガス流路44が設けられる。燃料ガス流路44は、水平方向(矢印B方向)に延在する複数本の流路溝44aを有する。
【0028】
互いに隣接する発電セル12を構成する第1セパレータ32の面32bと、第2セパレータ34の面34bとの間には、冷却媒体入口連通孔40aと冷却媒体出口連通孔40bとを連通する冷却媒体流路46が設けられる。冷却媒体流路46は、鉛直方向(矢印C方向)に延在する複数本の流路溝46aを有する。
【0029】
第1セパレータ32と第2セパレータ34とには、第1シール部材48と第2シール部材50とが、一体的又は個別に設けられる。第1シール部材48及び第2シール部材50としては、例えば、EPDM、NBR、フッ素ゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、ブチルゴム、天然ゴム、スチレンゴム、クロロプレーン、又はアクリルゴム等のシール材、クッション材、あるいはパッキン材等の弾性を有するシール部材が使用される。
【0030】
電解質膜・電極構造体30は、例えば、パーフルオロスルホン酸の薄膜に水が含浸された固体高分子電解質膜52と、前記固体高分子電解質膜52を挟持するカソード電極54及びアノード電極56とを備える。
【0031】
固体高分子電解質膜52は、カソード電極54及びアノード電極56よりも大きな平面寸法を有している。なお、カソード電極54とアノード電極56とは、同一の表面寸法に設定されているが、互いに異なる平面寸法に設定される、所謂、段差MEAを構成してもよい。
【0032】
カソード電極54及びアノード電極56は、カーボンペーパ等からなるガス拡散層と、白金合金が表面に担持された多孔質カーボン粒子が前記ガス拡散層の表面に一様に塗布されて形成される電極触媒層とを有する。電極触媒層は、例えば、固体高分子電解質膜52の両面に形成されている。
【0033】
図2に示すように、ターミナルプレート16a、16bの略中央には、積層方向外方に延在する端子部58a、58bが設けられる。端子部58aは、絶縁性筒体60に挿入されて、インシュレータ18aの孔部62a及びエンドプレート20aの孔部64aを貫通して前記エンドプレート20aの外部に突出する。端子部58bは、絶縁性筒体60に挿入されて、インシュレータ18bの孔部62b及びエンドプレート20bの孔部64bを貫通して前記エンドプレート20bの外部に突出する。
【0034】
インシュレータ18a、18bは、電気絶縁性材料、例えば、ポリカーボネート(PC)やフェノール樹脂等で形成される。インシュレータ18a、18bは、ターミナルプレート16a、16bと同一の平面寸法に設定される。
【0035】
エンドプレート20aの中央部には、ターミナルプレート16a及びインシュレータ18aを収容する矩形状の凹部66aが形成され、前記凹部66aの中央に孔部64aが連通する。エンドプレート20bの中央部には、ターミナルプレート16b及びインシュレータ18bを収容する矩形状の凹部66bが形成され、前記凹部66bの中央に孔部64bが連通する。エンドプレート20bの内部には、すなわち、一方のエンドプレートである前記エンドプレート20bの外面より積層方向内側に位置して、ヒートパイプ構造体70が設けられる。なお、エンドプレート20a側にも、ヒートパイプ構造体70を設けてもよい。
【0036】
図5及び
図6に示すように、ヒートパイプ構造体70は、発電セル12の冷却媒体出口連通孔(流体連通孔)40bに配置され、冷却媒体(流体)から受熱する1本以上の受熱部72を備える。受熱部72は、矢印A方向(積層方向)に所定の長さを有するとともに、冷却媒体出口連通孔40bの形状に対応して扁平柱形状を有しているが、例えば、円柱形状であってもよい。
【0037】
なお、受熱部72の配置部位は、冷却媒体出口連通孔40bに限定されるものではない。受熱部72は、冷却媒体入口連通孔40a、酸化剤ガス出口連通孔36b、燃料ガス出口連通孔38b、酸化剤ガス入口連通孔36a又は燃料ガス入口連通孔38aに配置してもよい。以下に説明する第2以降の実施形態でも、同様である。
【0038】
受熱部72のエンドプレート20b内に埋設される端部には、前記受熱部72で受熱した熱を放出する複数本の扁平柱形状(又は円柱形状)の放熱部74が連結される。各放熱部74は、複数本の扁平柱形状又は円柱形状を有し、発電セル12の発電面に平行な面方向に沿って、すなわち、エンドプレート面に沿って互いに拡開するように延在してエンドプレート20b内に埋設される。なお、放熱部74の形状は、エンドプレート20bの中に全面に亘って設けられればよく、本形状に限定されない。
【0039】
ヒートパイプ構造体70は、密閉容器を構成しており、図示しないが、高温部である受熱部72の内壁で作動液が熱を吸収して蒸発すると、作動液蒸気が空洞を通って低温部である各放熱部74に移動する。放熱部74で冷却された作動液蒸気は、凝集して液体に戻り、内壁のウィック(毛細管構造の芯)に吸収される。さらに、作動液は、ウィックを伝わって受熱部72に戻される。受熱部72は、放熱部74よりも重力方向下方に配置されることが好ましい。凝縮した液体が、重力の作用で受熱部72に戻るからである。
【0040】
図1に示すように、エンドプレート20aには、酸化剤ガス入口連通孔36a、酸化剤ガス出口連通孔36b、燃料ガス入口連通孔38a、燃料ガス出口連通孔38b、冷却媒体入口連通孔40a及び冷却媒体出口連通孔40bが形成される。なお、エンドプレート20aとエンドプレート20bとには、所定の連通孔を振り分けて形成してもよい。例えば、一方のエンドプレート(エンドプレート20a又は20b)に、酸化剤ガス入口連通孔36a、酸化剤ガス出口連通孔36b、燃料ガス入口連通孔38a及び燃料ガス出口連通孔38bを設けることができる。その際、他方のエンドプレート(エンドプレート20b又は20a)に、冷却媒体入口連通孔40a及び冷却媒体出口連通孔40bを設けることができる。
【0041】
このように構成される燃料電池スタック10の動作について、以下に説明する。
【0042】
先ず、
図1に示すように、酸素含有ガス等の酸化剤ガスは、エンドプレート20aの酸化剤ガス入口連通孔36aに供給される。水素含有ガス等の燃料ガスは、エンドプレート20aの燃料ガス入口連通孔38aに供給される。純水やエチレングリコール、オイル等の冷却媒体は、エンドプレート20aの冷却媒体入口連通孔40aに供給される。
【0043】
図4に示すように、酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口連通孔36aから第1セパレータ32の酸化剤ガス流路42に導入される。酸化剤ガスは、酸化剤ガス流路42に沿って水平方向(矢印B方向)に流動しながら、電解質膜・電極構造体30を構成するカソード電極54に供給される。
【0044】
一方、燃料ガスは、燃料ガス入口連通孔38aから第2セパレータ34の燃料ガス流路44に導入される。燃料ガスは、燃料ガス流路44に沿って水平方向(矢印B方向)に流動しながら、電解質膜・電極構造体30を構成するアノード電極56に供給される。
【0045】
従って、電解質膜・電極構造体30では、カソード電極54に供給される酸化剤ガスと、アノード電極56に供給される燃料ガスとが、電極触媒層内で電気化学反応により消費され、発電が行われる。
【0046】
次いで、カソード電極54に供給されて消費された酸化剤ガスは、酸化剤ガス出口連通孔36bに沿って矢印A方向に排出される。一方、アノード電極56に供給されて消費された燃料ガスは、燃料ガス出口連通孔38bに沿って矢印A方向に排出される。
【0047】
また、冷却媒体入口連通孔40aに供給された冷却媒体は、第1セパレータ32及び第2セパレータ34間の冷却媒体流路46に導入された後、矢印C方向に流通する。この冷却媒体は、電解質膜・電極構造体30を冷却した後、冷却媒体出口連通孔40bから排出される。
【0048】
この場合、第1の実施形態では、
図3及び
図6に示すように、ヒートパイプ構造体70を構成する受熱部72は、冷却媒体出口連通孔40bの奥側(エンドプレート20b側)に挿入されている。このため、受熱部72は、冷却媒体出口連通孔40bを流通する使用後の冷却媒体、すなわち、各発電セル12を冷却して昇温された冷却媒体から受熱することができる。
【0049】
そして、受熱部72で受熱した熱は、エンドプレート20b内に埋設された複数本の放熱部74から前記エンドプレート20bの面内に放熱されている(
図5参照)。従って、燃料電池スタック10の積層方向端部であるエンドプレート20bが加温され、特に積層体14の端部に配置される端部発電セル12e(
図3参照)は、発電時の中央側の発電セル12の温度と同等の温度で保温される。
【0050】
さらに、ヒートパイプ構造体70では、放熱部74の近傍の温度、すなわち、エンドプレート20bの温度が、冷却媒体出口連通孔40bの冷却媒体温度よりも低温であると、熱交換が行われる。すなわち、ヒートパイプ構造体70は、熱ダイオードとしての機能を有する。従って、暖機時にも良好に保温することができる。
【0051】
ここで、ヒートパイプ構造体70を採用する本実施例1と、燃料電池スタック端部に放熱対策を施さない比較例1と、前記燃料電池スタック端部に冷却媒体を循環させる比較例2とを用いて、端部温度変化を比較する実験を行った。その結果、
図7に示すように、本実施例1では、暖機開始から冷却媒体出口連通孔40bを流通する冷却媒体の温度が上昇するのに伴って、端部温度が上昇している。これにより、本実施例1では、比較例1及び比較例2に比べて、比較的短時間で端部温度が所望の温度まで昇温することが可能になるという結果が得られた。
【0052】
一方、ヒートパイプ構造体70を、冷却媒体出口連通孔40bに代えて酸化剤ガス出口連通孔36bに挿入した本実施例2を用いて、同様の実験を行った。その結果、
図8に示すように、本実施例2では、比較例1及び比較例2に比べて、比較的短時間で端部温度が所望の温度まで昇温することができた。
【0053】
これにより、第1の実施形態では、簡単且つコンパクトな構成で、特に積層方向端部に配置されている端部発電セル12eの温度低下を確実に阻止するとともに、暖機を良好に遂行することが可能になるという効果が得られる。
【0054】
図9〜
図11に示すように、本発明の第2の実施形態に係る燃料電池スタックを構成するヒートパイプ構造体80は、例えば、エンドプレート20bの内部に埋設される。
【0055】
なお、第1の実施形態に係る燃料電池スタック10を構成するヒートパイプ構造体70と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は、省略する。また、以下に説明する第3以降の実施形態においても同様に、その詳細な説明は、省略する。
【0056】
ヒートパイプ構造体80は、エンドプレート20bに形成されて発電セル12の冷却媒体出口連通孔40bに連通する冷却媒体出口凹部40beに配置され、冷却媒体(流体)から受熱する、例えば、3本の受熱部82を備える。受熱部82は、エンドプレート20b内に埋設され、下方に延在して冷却媒体出口連通孔40bの上部側に臨む。受熱部82の上端側には、複数本の放熱部74が連結される。受熱部82は、放熱部74と同一の厚さを有する。
【0057】
このように構成される第2の実施形態では、受熱部82は、冷却媒体出口連通孔40bを流通する使用後の冷却媒体から受熱することができる。これにより、簡単且つコンパクトな構成で、発電セル12の温度低下を確実に阻止するとともに、暖機を良好に遂行することが可能になる等、上記の第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0058】
図12及び
図13に示すように、本発明の第3の実施形態に係る燃料電池スタックを構成するヒートパイプ構造体90は、例えば、エンドプレート20bの内部に埋設される。
【0059】
ヒートパイプ構造体90は、発電セル12の冷却媒体出口連通孔40bに配置され、冷却媒体(流体)から受熱する、例えば、2本の受熱部92を備える。受熱部92は、矢印A方向(積層方向)に所定の長さを有するとともに、冷却媒体出口連通孔40bの形状に対応して扁平柱形状を有しているが、例えば、円柱形状であってもよい。
【0060】
各受熱部92のエンドプレート20b内に埋設される端部には、放熱部94が連結される。放熱部94は、それぞれ平面型ヒートパイプであり、内部には、図示しないがウィック構造が設けられる。放熱部94の内部には、仕切りを設けてもよい。各放熱部94は、矩形状を有し、エンドプレート20bの孔部64bに干渉しない位置に並列される。なお、エンドプレート20bに孔部64bが設けられない場合には、単一の放熱部94を使用してもよい。
【0061】
このように構成される第3の実施形態では、第1及び第2の実施形態の複数本の筒扁平柱形状(又は円柱形状)のヒートパイプに代えて、平面型ヒートパイプを採用している。このため、簡単且つコンパクトな構成で、発電セル12の温度低下を確実に阻止するとともに、暖機を良好に遂行することが可能になる等、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0062】
図14に示すように、本発明の第4の実施形態に係る燃料電池スタックを構成するヒートパイプ構造体100は、例えば、エンドプレート20bの内部に埋設される。
【0063】
ヒートパイプ構造体100は、エンドプレート20bに形成されて発電セル12の冷却媒体出口連通孔40bに連通する冷却媒体出口凹部40beに配置され、冷却媒体(流体)から受熱する、例えば、2本の受熱部102を備える。各受熱部102には、エンドプレート20b内に埋設された平面型ヒートパイプである放熱部94が連結される。受熱部102は、放熱部94と同一の厚さを有する。
【0064】
このように構成される第4の実施形態では、簡単且つコンパクトな構成で、発電セル12の温度低下を確実に阻止するとともに、暖機を良好に遂行することが可能になる等、上記の第1〜第3の実施形態と同様の効果が得られる。
【0065】
図15に示すように、本発明の第5の実施形態に係る燃料電池スタックを構成するヒートパイプ構造体104は、例えば、エンドプレート20bの内部に埋設される。
【0066】
ヒートパイプ構造体104は、冷却媒体出口凹部40beに配置される受熱部106aと、エンドプレート20bに埋設される放熱部106bとを一体に備える。放熱部106bが配置される放熱部配置部位であるエンドプレート20b内には、前記放熱部106bの外周との間に室108が形成され、前記室108には、伝熱用媒体、第5の実施形態では、冷却媒体が充填される。なお、伝熱用媒体としては、冷却媒体の他、所望の伝熱機能を有するものであれば種々用いることができ、流体の他、固体(樹脂やゴム、金属、ガラス等)であってもよい。
【0067】
このように構成される第5の実施形態では、放熱部106bの外周とエンドプレート20bとの間に空間部が存在することがなく、伝熱用媒体により充填されている。このため、放熱部106bからエンドプレート20bに良好に伝熱させることができ、前記エンドプレート20bを一層効率的に加温することが可能になる。なお、上記の第1〜第4の実施形態及び以下に説明する第6以降の実施形態においても、第5の実施形態と同様に構成してもよい。
【0068】
上記の第1〜第5の実施形態では、エンドプレート20b内に埋設されたヒートパイプ構造体について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、
図16に示すように、本発明の第6の実施形態に係る燃料電池スタック110は、ターミナルプレート16a、16bがインシュレータ18a、18bに形成された凹部112a、112bに収容される。インシュレータ18a、18bは、積層体14と略同一の外形寸法を有する。
【0069】
インシュレータ18bとエンドプレート20bとの間には、ヒートパイプ構造体114が介装される。ヒートパイプ構造体114は、プレート部材116を備え、前記プレート部材116内に受熱部118及び放熱部120が埋設される。受熱部118は、矢印A方向(積層方向)に所定の長さを有するとともに、冷却媒体出口連通孔40bの形状に対応して扁平柱形状を有しているが、例えば、円柱形状であってもよい。
【0070】
また、プレート部材116には、冷却媒体出口連通孔40bに連通する冷却媒体出口凹部40beを形成するとともに、矢印C方向に延在して前記冷却媒体出口凹部40beに臨む受熱部118aを、受熱部118に代えて用いてもよい。
【0071】
受熱部118には、放熱部120が接続されるとともに、前記放熱部120は、例えば、複数本の筒状ヒートパイプ(例えば、放熱部74と同一構成)を採用してもよく、また、平面型ヒートパイプ(放熱部94と同一構成)を採用してもよい。
【0072】
このように構成される第6の実施形態では、簡単且つコンパクトな構成で、発電セル12の温度低下を確実に阻止するとともに、暖機を良好に遂行することが可能になる等、上記の第1〜第5の実施形態と同様の効果が得られる。
【0073】
なお、第6の実施形態では、ヒートパイプ構造体114は、個別のプレート部材116を備えているが、これに限定されるものではない。例えば、エンドプレート20bの積層体14側の面に凹部を形成し、前記凹部に放熱部120を直接配置してもよい。また、ヒートパイプは、インシュレータ、ターミナルプレート又はエンドプレートの内部に埋設してもよい。ヒートパイプを埋設する際には、外側に樹脂部材を一体成形してもよい。
【0074】
図17に示すように、本発明の第7の実施形態に係る燃料電池スタック130は、ターミナルプレート16a、16bがインシュレータ18a、18bに形成された凹部132a、132bに収容される。インシュレータ18a、18bは、積層体14と略同一の外形寸法を有する。
【0075】
図17及び
図18に示すように、ターミナルプレート16bの内部には、ヒートパイプ構造体134が設けられる。ヒートパイプ構造体134は、一対の受熱部136を備え、前記一対の受熱部136が冷却媒体出口連通孔40bに配設される。各受熱部136には、放熱部138が一体に設けられるとともに、各放熱部138は、ターミナルプレート16bの内部に埋設される。各放熱部138の外周とターミナルプレート16bの隙間には、伝熱用媒体を充填してもよい(第5の実施形態参照)。ヒートパイプ構造体134の形状や本数は、第7の実施形態に限定されるものではなく、例えば、湾曲形状や屈曲形状を有していてもよい。
【0076】
なお、ターミナルプレート16bに凹部を形成し、前記凹部に放熱部138を配置してもよい。また、放熱部138は、インシュレータ18bの凹部132bを形成する平坦面に一部を埋設し、前記ターミナルプレート16bの表面に直接接触させてもよい。
【0077】
このように構成される燃料電池スタック130では、冷却媒体出口連通孔40bを流通する冷却媒体により受熱部136で受熱した熱は、放熱部138からターミナルプレート16bの内部に直接放熱されている。従って、ターミナルプレート16bを迅速に加温させることができ、積層体14の端部からの放熱を良好に抑制することが可能になる。
【0078】
図19には、ヒートパイプ構造体134の有無によるターミナルプレート16bの温度(代表温度)の比較結果が示されている。ヒートパイプ構造体134が用いられた場合、ターミナルプレート16bの温度は、冷却媒体入口温度と冷却媒体出口温度との間、すなわち、適正MEA温度範囲内に昇温されている。一方、ヒートパイプ構造体134が用いられない場合には、ターミナルプレート16bの温度は、冷却媒体入口温度未満、すなわち、適正MEA温度範囲未満となっている。
【0079】
さらに、
図20に示すように、ヒートパイプ構造体134の有無による燃料電池スタック130の各部位の温度(代表温度)が検出された。その結果、ヒートパイプ構造体134が用いられた場合には、燃料電池スタック130の内部からエンドプレート20bの外面に至る間、適正MEA温度範囲内に維持されている。一方、ヒートパイプ構造体134が用いられない場合には、燃料電池スタック130の内部温度に比べて、端部発電セル12eから外方の温度が適正MEA温度範囲未満になっている。
【0080】
これにより、第7の実施形態では、簡単且つコンパクトな構成で、特に積層方向端部に配置されている端部発電セル12eの温度低下を確実に阻止することができる等、上記の第1〜第6の実施形態と同様の効果が得られる。
【0081】
図21に示すように、本発明の第8の実施形態に係る燃料電池スタック140は、第7の実施形態に係る燃料電池スタック130と同様に、インシュレータ18a、18bの凹部132a、132bにターミナルプレート16a、16bが収容される。ターミナルプレート16a、16bは、端子部58a、58bに代えて端子板142a、142bを設ける。端子板142a、142bは、ターミナルプレート16a、16bの一辺から面方向外方に突出し、インシュレータ18a、18bの切り欠き部144a、144bから外方に突出する。
【0082】
ターミナルプレート16bの内部には、ヒートパイプ構造体134が設けられる。ヒートパイプ構造体134は、第7の実施形態と同様であり、その詳細な説明は省略する。
【0083】
このように構成される第8の実施形態では、ターミナルプレート16bの内部にヒートパイプ構造体134が埋設されており、上記の第7の実施形態と同様の効果が得られる。