特許第6231960号(P6231960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231960
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/00 20060101AFI20171106BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   B60K35/00 Z
   B60R16/02 640Z
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-185886(P2014-185886)
(22)【出願日】2014年9月12日
(65)【公開番号】特開2016-55835(P2016-55835A)
(43)【公開日】2016年4月21日
【審査請求日】2016年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】小林 涼
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 義則
(72)【発明者】
【氏名】吉田 祐一
【審査官】 櫻田 正紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−052847(JP,A)
【文献】 特開2013−057569(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、液晶ディスプレイへの画像表示により車両搭乗員に対して情報を提供する車両用表示装置であって、
円弧状の外枠を示す外枠画像を表示させるための外枠画像データと、複数の目盛を示す目盛画像を表示させるための目盛画像データと、文字を示す文字画像を表示させるための文字画像データと、突起画像を有して内部に前記文字画像の表示領域を有するマーカを示すマーカ画像を表示させるためのマーカ画像データとを記憶する記憶手段と、
前記外枠画像データに基づいて前記液晶ディスプレイに円弧状の外枠画像を表示させると共に、前記目盛画像データに基づいて当該外枠画像から円弧内側に向かって伸びる複数の目盛画像を表示させ、且つ、前記マーカ画像データ及び前記文字画像データに基づいて前記表示領域に前記文字画像を表示させた状態のマーカ画像を、前記マーカ画像の前記突起画像が前記目盛画像側を指し示すように前記外枠画像の内側に表示させる表示制御手段と、を備え、
前記表示制御手段は、前記マーカ画像を前記外枠に沿って目標位置まで移動させて表示させる場合、所定の刻み角度だけ前記マーカ画像を回転させ、且つ、前記文字画像の表示領域については前記マーカ画像の回転方向と逆方向に前記所定の刻み角度だけ前記表示領域の中心位置を中心に回転させ、これらの回転を行ったうえで前記文字画像を含む前記マーカ画像を、円弧状の前記外枠画像の円弧中心位置を中心にして前記所定の刻み角度分だけ前記外枠に沿って移動させ、これら一連の処理を前記マーカ画像が前記目標位置に到達するまで繰り返す
ことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、前記外枠画像データとして、円状の外枠を示す外枠画像を表示させるための円形画像データを記憶すると共に、前記目盛画像データとして、複数の速度目盛又はエンジン回転量目盛を示す目盛画像を表示させるための挙動目盛画像データを記憶する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載され、液晶ディスプレイにより車両搭乗員に対して情報を提供する車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載され、車両搭乗員に対して情報を提供する車両用表示装置が提案されている。この車両用表示装置には、例えば液晶ディスプレイに速度計やタコメータを表示すると共に、それに指針を表示して車速やエンジン回転量の情報を車両搭乗員に提供するものもある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−006453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、アクセルペダルを踏み続けることなくセットした速度を維持するクルーズコントロールという技術が知られており、車両用表示装置では、クルーズコントロールシステムでの設定速度等をマーカによって指し示すことが考えられている。
【0005】
図4は、液晶ディスプレイに表示される速度計の一例を示す正面図である。図4に示すように、液晶ディスプレイには、速度計の外枠を示す円弧状の外枠画像11aと、外枠画像11aの内側において速度を示す目盛画像11bと、現在速度を示す指針画像11cと、設定速度を示すマーカ画像11dとが表示されている。設定速度は例えば50km/hであり、マーカ画像11dの内部には設定速度の値を示す「50」という文字画像11eがされている。なお、目盛画像11bは、棒状図形の目盛本体画像と、この目盛本体画像に隣接して速度値を示す数値画像とから構成されている。
【0006】
ここで、図4の例では、マーカ画像11dが円形状となっていることから、目盛のどの位置を指し示しているのか分かり難くなっている。このため、運転者はマーカ画像11d内の「50」という文字画像11eを視認することにより、正確な設定速度を把握することとなる。しかし、車両がトンネルに入った直後や出た直後、さらには西日が視界に入る場合など、運転者は液晶ディスプレイの表示内容を見難くなってしまうことがある。このような場合、マーカ画像11d内の「50」という文字画像11eが見難くなってしまう。
【0007】
図5は、液晶ディスプレイに表示される速度計の他の例を示す正面図である。図5に示すマーカ画像11fは、突起画像11gを有している。この突起画像11gは目盛画像11b(すなわち外枠画像11a側)を指し示すようになっているため、運転者は、マーカ画像11f内の文字画像11eが見難くなってしまっても、突起画像11gの指し示す位置から正確な設定速度を把握することができる。
【0008】
ここで、図5に示す例において、例えばユーザが設定速度を100km/hに変更したとする。この場合、車両用表示装置では、マーカ画像11fを100km/hの箇所まで滑らかに移動表示させる処理と、マーカ画像11f内の文字(数字)を「50」から「100」までの値で順次変更する処理が実行される。
【0009】
すなわち、マーカ画像11fを移動させ表示させる場合、車両用表示装置は、例えば1km/h刻みなど、所定の刻み角度で段階的にマーカ画像11fを移動させ表示させる。このとき、車両用表示装置は、マーカ画像11fの突起画像11gが常に外枠画像11aの方を向くように、外枠画像11aの円中心位置を中心としてマーカ画像11fを順次回転させる。
【0010】
一方で、このような処理を行った場合、マーカ画像11f内の文字画像11eについても円中心位置を中心に回転してしまうことから、これを防止するために、マーカ画像11f内の文字画像11eについては、回転させたうえで移動させるのではなく、いわゆる平行移動させる処理を行うこととなる。
【0011】
しかし、マーカ画像11fについて回転移動の処理を行い、且つ、文字画像11eについて平行移動の処理を行った場合、マーカ画像11fとマーカ画像11f内の文字画像11eとの間にズレが生じてしまうことがあった。図6は、マーカ画像11fの移動表示時におけるマーカ画像11fと文字画像11eとの状態を示す図である。まず、マーカ画像11fについては、画像の回転処理を行ったうえで表示処理を行う必要がある。一方、文字画像11eについては回転処理を行うことなく表示処理を行えばよい。よって、文字画像11eについては回転処理を行う必要が無い分だけ処理時間が短く、両者の処理時間に差が生じてしまう。これにより、例えば50km/hから100km/hまでのマーカ画像11fの移動過程において図6に示すようにマーカ画像11fと文字画像11eとにズレが発生してしまう。特に、このズレは50km/hから100km/hまで数km/h刻みなど、より細かな刻み角度で滑らかにマーカ画像11fを移動表示させる場合には、処理時間の差が累積されてしまうため、一層顕著な問題となる。
【0012】
なお、上記の問題は、クルーズコントロールシステムでの設定速度の変更時に限ることなく、他の速度の変更時にも共通する問題である。さらに、上記問題は、速度計に限らず、タコメータなど円弧状の外枠と目盛とを表示する計器において共通する問題である。
【0013】
本発明は、このような問題を解決するものであり、その目的とするところは、表示量の変更時においてマーカ画像とマーカ画像内の文字画像とのズレを防止することができる車両用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る車両用表示装置は、車両に搭載され、液晶ディスプレイへの画像表示により車両搭乗員に対して情報を提供する車両用表示装置であって、円弧状の外枠を示す外枠画像を表示させるための外枠画像データと、複数の目盛を示す目盛画像を表示させるための目盛画像データと、文字を示す文字画像を表示させるための文字画像データと、突起画像を有して内部に前記文字画像の表示領域を有するマーカを示すマーカ画像を表示させるためのマーカ画像データとを記憶する記憶手段と、前記外枠画像データに基づいて前記液晶ディスプレイに円弧状の外枠画像を表示させると共に、前記目盛画像データに基づいて当該外枠画像から円弧内側に向かって伸びる複数の目盛画像を表示させ、且つ、前記マーカ画像データ及び前記文字画像データに基づいて前記表示領域に前記文字画像を表示させた状態のマーカ画像を、前記マーカ画像の前記突起画像が前記目盛画像側を指し示すように前記外枠画像の内側に表示させる表示制御手段と、を備え、前記表示制御手段は、前記マーカ画像を前記外枠に沿って目標位置まで移動させて表示させる場合、所定の刻み角度だけ前記マーカ画像を回転させ、且つ、前記文字画像の表示領域については前記マーカ画像の回転方向と逆方向に前記所定の刻み角度だけ前記表示領域の中心位置を中心に回転させ、これらの回転を行ったうえで前記文字画像を含む前記マーカ画像を、円弧状の前記外枠画像の円弧中心位置を中心にして前記所定の刻み角度分だけ前記外枠に沿って移動させ、これら一連の処理を前記マーカ画像が前記目標位置に到達するまで繰り返すことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る車両用表示装置によれば、マーカ画像を外枠に沿って目標位置まで移動させて表示させる場合、所定の刻み角度だけマーカ画像を回転させ、且つ、文字画像の表示領域についてはマーカ画像の回転方向と逆方向に所定の刻み角度だけ回転させる。このため、例えばクルーズコントロールシステムの設定速度等に変更があった場合には、マーカ画像と文字画像とは、互いに逆方向に所定の刻み角度だけ回転させられる。そして、文字画像を含むマーカ画像を所定の刻み角度分だけ外枠に沿って移動させるため、マーカ画像と文字画像とは別々に回転や移動等の処理が行われるのではなく、双方が一体となって共に逆方向への回転処理が行われ、回転処理後に移動させられることとなる。よって、処理時間の差が生じず、表示量の変更時においてマーカ画像とマーカ画像内の文字画像とのズレを防止することができる。
【0016】
また、本発明に係る車両用表示装置において、前記記憶手段は、前記外枠画像データとして、円状の外枠を示す外枠画像を表示させるための円形画像データを記憶すると共に、前記目盛画像データとして、複数の速度目盛又はエンジン回転量目盛を示す目盛画像を表示させるための挙動目盛画像データを記憶することが好ましい。
【0017】
この車両用表示装置によれば、外枠画像データとして、円状の外枠を示す外枠画像を表示させるための円形画像データを記憶しているため、円形という円弧よりも周状にマーカ画像の移動量が大きくなる画像データを記憶していることとなる。よって、マーカ画像を外枠画像に沿って移動表示させる場合に、その移動量が大きくなり、より一層マーカ画像と文字画像とにズレが発生し易い場合において、これを防止することができる。しかも、目盛画像データとして、複数の速度目盛又はエンジン回転量目盛を示す目盛画像を表示させるための挙動目盛画像データを記憶しているため、車両の挙動の物理量を表示する速度計やタコメータという表示のズレがあった場合に運転者に数値を誤認させると安全性に関わるような計器についてマーカ画像と文字画像とのズレを防止することとなり、より運転者の誤認を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の車両用表示装置によれば、表示量の変更時においてマーカ画像とマーカ画像内の文字画像とのズレを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る車両用表示装置を示すブロック図である。
図2図1に示したCPUによるマーカ画像及び文字画像の回転処理を示すグラフである。
図3】本実施形態に係る車両用表示装置による表示方法を示すフローチャートである。
図4】液晶ディスプレイに表示される速度計の一例を示す正面図である。
図5】液晶ディスプレイに表示される速度計の他の例を示す正面図である。
図6】マーカ画像の移動表示時におけるマーカ画像と文字画像との状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を好適な一実施形態に沿って説明するが、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下において、上記に図示した要素と同一又は同様の要素には同一の符号を付して説明を省略するものとする。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用表示装置を示すブロック図である。図1に示す車両用表示装置は、車両に搭載され、TFT−LCD(Thin Film Transistor Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイの一例)を表示器8として備えたいわゆるグラフィックメータであって、表示器8への画像表示により車両搭乗員に対して情報を提供するものである。
【0022】
表示器8は、カラー画像の表示が可能な表示手段であり、本実施形態では車両の走行速度を示す速度計、過給圧力値を示すブースト計、及び、燃料残量を示す燃料計等の計器を画像表示するものである。
【0023】
この車両用表示装置は、表示器8に加えて、CPU(Central Processing Unit:表示制御部)1と、I/O2,3と、CPU電源4と、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)5と、グラフィックコントローラ6と、LCD(Liquid Crystal Display)電源7とを備えている。
【0024】
CPU1は、I/O2を介して、車両側のイグニッションスイッチの状態を表す信号(IGN+)を入力すると共に、I/O3を介して車両状態信号を、CAN(Controller Area Network)を通信プロトコルとして用いたCAN通信部にて受信する。なお、車両状態信号とは、例えば車速や過給圧力値など、表示器8にて表示させる車両物理量を示す情報を含んだ信号である。
【0025】
また、CPU1は、受信した車両状態信号に基づく表示を行うべく、グラフィックコントローラ6に対して命令コードを送信する。グラフィックコントローラ6は、この命令コードに従って描画処理を行うこととなる。
【0026】
CPU電源4は、車両側のプラス側電源ライン(+B)から供給される直流電力を入力してCPU1の動作に必要な直流電圧(Vcc)を生成する。また、CPU電源4は、必要に応じてリセット信号を生成したり、CPU1から出力されるスリープ信号に従って電力供給を抑制するための動作を行ったりする。EEPROM5は、CPU1が実行するプログラムの内容や予め用意された固定データ等を保持している。
【0027】
グラフィックコントローラ6は、CPU1からの命令コードに従った描画処理を行うものであり、メモリ(記憶手段)61を備えている。メモリ61は、描画に必要なデータを記憶したものであって、速度計、ブースト計及び燃料計等の表示に必要となる画像データを記憶している。より詳細にメモリ61は、速度計に必要となる画像データとして、円弧状(円状)となる速度計の外枠を示す外枠画像11aを表示するための外枠画像データと、外枠画像11aの内側において複数の目盛(速度目盛)を示す目盛画像11bを表示するための目盛画像データと、円弧状(円状)となる速度計の中心位置を回転中心として回転することにより目盛画像11bを指し示す指針画像11cを表示するための指針画像データとを記憶している(図5参照)。
【0028】
このようなグラフィックコントローラ6は、描画処理にあたり、RGB各画像データを出力すると共に、水平同期信号及び垂直同期信号を表示器8のXドライバ81及びYドライバ82に対して出力することでこれらを制御し、表示器8の本体部83に速度計、ブースト計及び燃料計等の画像を表示させる。
【0029】
LCD電源7は、車両側のプラス側電源ライン(+B)から供給される直流電力を入力して、表示器8の表示に必要とされる所定の直流電力を生成し、表示器8に供給するものである。
【0030】
さらに、本実施形態においてCPU1は、操作信号を入力するようになっている。この操作信号は、例えばクルーズコントロールシステムの設定速度を示す信号である。クルーズコントロールシステムにおいては固定する走行速度を設定でき、運転者は走行速度の情報を入力することができる。この入力された走行速度の情報は、設定速度の信号(操作信号)としてCPU1に入力される。
【0031】
さらに、本実施形態においてグラフィックコントローラ6のメモリ61は、文字(設定速度)を示す文字画像11eを表示させるための文字画像データと、突起画像11gを有して内部に文字画像11eの表示領域を有するマーカを示すマーカ画像11fを表示させるためのマーカ画像データとを記憶している(図5参照)。
【0032】
CPU1は、外枠画像データに基づいて表示器8に円弧状の外枠画像11aを表示させると共に、目盛画像データに基づいて外枠画像11aから円弧内側に向かって伸びる複数の目盛画像11bを表示させる。さらに、CPU1は、クルーズコントロールシステムが起動している場合、マーカ画像データ及び文字画像データに基づいて文字画像11eの表示領域に文字画像(設定速度の数値画像)11eを表示させた状態のマーカ画像11fを、突起画像11gが目盛画像11bを指し示すように(すなわち円弧外側を指し示すように)外枠画像11aの内側に表示させる。
【0033】
これにより、図5に示すように、文字画像11eの数値によって設定速度の情報を車両搭乗員に提示すると共に、突起画像11gの指し示す位置によっても設定速度の情報を車両搭乗員に提示することができる。
【0034】
さらに、本実施形態において車両運転者から設定速度の変更操作があったとする。この場合、CPU1は、その旨を操作信号に基づいて認識し、マーカ画像11fを外枠画像11aが示す外枠に沿って移動させ表示させると判断する。例えば、設定速度が50km/hから100km/hに変更された場合、CPU1は、100km/hの位置を目標位置とし、現在のマーカ画像11fの位置(50km/hの位置)から目標位置まで段階的に(滑らかに)マーカ画像11fを外枠画像11aに沿って移動させていく。
【0035】
このとき、CPU1は、所定の刻み角度X°(Xは任意の数)だけ、マーカ画像11fを回転させ、且つ、文字画像11eの表示領域についてはマーカ画像11fの回転方向と逆方向に上記所定の刻み角度X°だけ回転させ、これらの回転を行ったうえで文字画像11eを含むマーカ画像11fを、所定の刻み角度X°分だけ外枠画像11aに沿って移動させ、これら一連の処理をマーカ画像11fが目標位置に到達するまで繰り返し実行する。
【0036】
一例を挙げて詳細に説明する。まず、現在のマーカ画像11fの位置から目標位置までの移動量に応じた回転角度が例えば60°であるとする。そして、CPU1は、マーカ画像11fの移動を滑らかに表現するために、例えば1°刻みでマーカ画像11fを移動表示させるとする。この場合、まず、CPU1は、マーカ画像11fを1°だけ回転させ、且つ、文字画像11eの表示領域を逆方向に1°だけ回転させ、これらの回転を行ったうえで文字画像11eを含むマーカ画像11fを1°に応じた移動量分だけ外枠画像11aに沿って移動させ表示させる。次いで、CPU1は、さらにマーカ画像11fを1°だけ回転させ、且つ、文字画像11eの表示領域を逆方向に1°だけ回転させ、これらの回転を行ったうえで文字画像11eを含むマーカ画像11fを1°に応じた移動量分だけ外枠画像11aに沿って移動させ表示させる。以降、CPU1は、回転角度が60°に達するまで、すなわち、マーカ画像11fが目標位置に到達するまで、上記処理を繰り返すこととなる。
【0037】
図2は、図1に示したCPU1によるマーカ画像11f及び文字画像11eの回転処理を示すグラフである。図2に示すように、CPU1は、マーカ画像11fを100ms掛けて12°だけ回転させる。一方、CPU1は、文字画像11eの表示領域を100ms掛けて−12°だけ回転させる。従って、上記の如く、現在のマーカ画像11fの位置から目標位置までの移動量に応じた回転角度が60°である例において、CPU1は、500ms掛けてマーカ画像11fを移動させ表示させることとなる。
【0038】
なお、所定の刻み角度X°は1°に限らず、0.5°や0.1°など、より細かな刻みであってもよいし、場合によっては5°や10°などの刻みであってもよい。加えて、所定の刻み角度X°は固定値であってもよいし、可変値であってもよい。また、5km/h刻みや0.5km/h刻みなど、速度を基準とした刻みにより移動表示が行われてもよい。なお、この場合、5km/h刻みはY°刻みとなり、0.5km/h刻みはZ°刻みとなることから、結局のところ角度を基準とした刻みと等価である。
【0039】
図3は、本実施形態に係る車両用表示装置による表示方法を示すフローチャートである。まず表示器8には、外枠画像11a、目盛画像11b、及び指針画像11cが表示されると共に、クルーズコントロールシステムが起動しており設定速度に応じた文字画像11eを含むマーカ画像11fが表示されているものとする。
【0040】
このような状態において、CPU1は、操作信号を入力する(S1)。そして、CPU1は、ステップS1にて入力した操作信号に基づく設定速度が、現在の設定速度と異なるかを判断する(S2)。
【0041】
異ならないと判断した場合(S2:NO)、処理はステップS1に移行する。一方、異なると判断した場合(S2:YES)、CPU1は、現在の設定速度から、ステップS1にて入力した操作信号に基づく設定速度までのマーカ画像11fの移動角度(すなわち目標位置に到達するまでの移動に要する角度)を算出する(S3)。
【0042】
次いで、CPU1は、マーカ画像11fの回転処理を実行する(S4)。この処理においてCPU1は、所定の刻み角度X°だけマーカ画像11fを回転させる命令コードを生成する。
【0043】
次に、CPU1は、文字画像11eの表示領域の回転処理を実行する(S5)。この処理においてCPU1は、所定の刻み角度X°だけ文字画像11eの表示領域をマーカ画像11fと逆方向に回転させる命令コードを生成する。
【0044】
そして、CPU1は、これらの回転処理を行った画像(すなわち文字画像11eを含むマーカ画像11f)を表示器8に表示させるように表示制御する(S6)。すなわち、CPU1は、ステップS4及びステップS5にて生成した命令コードに加えて、円弧中心位置を中心にしてマーカ画像11fを外枠画像11aに沿って所定の刻み角度X°だけ移動させた位置にマーカ画像11fを描くような命令コードをグラフィックコントローラ6に送信する。これにより、グラフィックコントローラ6は、−X°だけ回転させた文字画像11eを含み、X°だけ回転させられたマーカ画像11fを、円弧中心位置を中心にして外枠画像11aに沿ってX°だけ移動させた位置に表示する。
【0045】
その後、CPU1は、ステップS6の処理における移動角度の累積値が、ステップS3にて算出した移動角度に達したかを判断する(S7)。達していないと判断した場合(S7:NO)、処理はステップS4に移行する。一方、達したと判断した場合(S7:YES)、図3に示す処理は終了する。
【0046】
なお、図3に示す処理は、例えばイグニッションスイッチがオフされるまで繰り返し実行される。
【0047】
このようにして、本実施形態に係る車両用表示装置によれば、マーカ画像11fを外枠に沿って目標位置まで移動させて表示させる場合、所定の刻み角度X°だけマーカ画像11fを回転させ、且つ、文字画像11eの表示領域についてはマーカ画像11fの回転方向と逆方向に所定の刻み角度X°だけ回転させる。このため、例えばクルーズコントロールシステムの設定速度等に変更があった場合には、マーカ画像11fと文字画像11eとは、互いに逆方向に所定の刻み角度X°だけ回転させられる。そして、文字画像11eを含むマーカ画像11fを所定の刻み角度X°分だけ外枠に沿って移動させるため、マーカ画像11fと文字画像11eとは別々に回転や移動等の処理が行われるのではなく、双方が一体となって共に逆方向への回転処理が行われ、回転処理後に移動させられることとなる。よって、処理時間の差が生じず、表示量の変更時においてマーカ画像11fとマーカ画像11f内の文字画像11eとのズレを防止することができる。
【0048】
また、外枠画像データとして、円状の外枠を示す外枠画像11aを表示させるための円形画像データを記憶しているため、円形という円弧よりも周状にマーカ画像11fの移動量が大きくなる画像データを記憶していることとなる。よって、マーカ画像11fを外枠画像11aに沿って移動表示させる場合に、その移動量が大きくなり、より一層マーカ画像11fと文字画像11eとにズレが発生し易い場合において、これを防止することができる。しかも、目盛画像データとして、複数の速度目盛又はエンジン回転量目盛を示す目盛画像11bを表示させるための挙動目盛画像データを記憶しているため、車両の挙動の物理量を表示する速度計やタコメータという表示のズレがあった場合に運転者に数値を誤認させると安全性に関わるような計器についてマーカ画像11fと文字画像11eとのズレを防止することとなり、より運転者の誤認を防止することができる。
【0049】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0050】
例えば、本実施形態に係る車両用表示装置は、クルーズコントロールシステムの設定速度の変更時に上記実施形態を適用しているが、これに限らず、他の速度の変更時に適用してもよい。また、速度計に限らず、タコメータなど円弧状の外枠と目盛とを表示する計器において上記実施形態を適用してもよい。さらに、指針画像11cに代えてマーカ画像11fを表示して上記実施形態と同様の処理を実行するようにしてもよい。
【0051】
また、本実施形態に係る車両用表示装置は、円形の外枠画像11aを有する計器を例に説明したが、特に円形の外枠画像11aに限らず、円弧状の外枠画像11aを有する計器等に適用してもよい。
【0052】
加えて、本実施形態に係る車両用表示装置は、車両用メータを模した表示に限らず、ナビなどの画像表示に上記実施形態を適用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 :CPU(表示制御手段)
2,3 :I/O
4 :CPU電源
5 :EEPROM
6 :グラフィックコントローラ
7 :LCD電源
8 :表示器(液晶ディスプレイ)
11a :外枠画像
11b :目盛画像
11c :指針画像
11e :文字画像
11f :マーカ画像
11g :突起画像
61 :メモリ(記憶手段)
81 :Xドライバ
82 :Yドライバ
83 :本体部
図1
図2
図3
図4
図5
図6