特許第6231962号(P6231962)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231962
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】柱と梁の連結構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/343 20060101AFI20171106BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   E04B1/343 D
   E04B1/58 508H
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-191457(P2014-191457)
(22)【出願日】2014年9月19日
(65)【公開番号】特開2016-61109(P2016-61109A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年1月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】302045705
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 太郎
(72)【発明者】
【氏名】村松 達也
(72)【発明者】
【氏名】杉田 香
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−37506(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第1916349(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/343
E04B 1/58
E04H 6/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状に形成された支柱と梁を連結部材を用いて接続する柱と梁の連結構造であって、
前記連結部材は、上下方向に延設され、前記支柱の上端部から中空部内に嵌合する柱側嵌合部と、前記柱側嵌合部の上端側に後端を接続して所定の角度で略横方向に延設され、前記梁の後端部側から中空部内に嵌合する梁側嵌合部とを備えて略逆L字状に形成され、
前記支柱は、前方を向く側面に上端部から下端部側に凹み、前記梁側嵌合部が嵌り込む切り欠き部を備えて形成されており、
且つ、前記切り欠き部の両側に設けられて前記切り欠き部を形成する前記支柱の側壁片部に、前記支柱に前記柱側嵌合部を嵌合した状態で前後方向に対向する前記柱側嵌合部の面が、前記連結部材に作用する想定最大応力に応じて下方から上方に向かうに従い漸次前後方向中央側に傾斜する傾斜面として形成され、
前記切り欠き部の両側の側壁片部と前記連結部材の傾斜面との間に隙間が設けられていることを特徴とする柱と梁の連結構造。
【請求項2】
請求項1記載の柱と梁の連結構造において、
前記支柱の上端部を閉塞する柱キャップと、前記支柱の切り欠き部と前記梁側嵌合部及び該梁側嵌合部を嵌合して支持された前記梁の後端との取り合い部を被覆する柱梁カバーとを備え、
前記柱キャップと前記柱梁カバーがそれぞれ、前記連結部材と分離した状態で取り付けられている柱と梁の連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーポートなどの建物外部構築物の柱と梁の連結部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅や店舗などに、カーポート、自転車置き場等の建物外部構築物を設置、増築するケースが増えている。
【0003】
そして、この種の建物外部構築物は、横方向T1に間隔をあけて立設された複数の支柱1と、各支柱1の上端部にそれぞれ後端を接続して前後方向T2に片持ち状態で延設された複数の梁2と、複数の梁2に支持させて横方向T1に架設し、前後方向T2に間隔をあけて配設された複数の母屋3と、複数の母屋3で支持して前後方向T2に架設し、横方向T1に間隔をあけて配設された複数の垂木4と、垂木4に支持させて設けられ、屋根面を形成する屋根パネル5とを備えて構成されている(図1参照)。
【0004】
また、この種の建物外部構築物は、支柱1と梁2がそれぞれ、例えば押出成形で形成した中空状のアルミ形材を用いて形成されている。そして、図9に示すように、これら支柱1と梁2は、略逆L字状に形成されたブラケット(連結部材)6を用いて接続されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
具体的に、ブラケット6は、金属製で、上下方向T3に直線状に延設された柱側嵌合部6aと、柱側嵌合部6aの上端に後端を接続して屋根部7(梁2)の角度に応じた所定の角度で直線状に延設された梁側嵌合部6bとを備えて略逆L状に形成されている。そして、支柱1の上端部1a側から中空部内に柱側嵌合部6aを嵌合し、梁側嵌合部6bを梁2の後端側の中空部内に嵌合させることにより、ブラケット6によって支柱1に梁2を片持ち支持状態で接続することができる。
【0006】
また、図9及び図10に示すように、支柱1には、梁2の延設方向(前方)を向く側面の上端部1a側の幅方向略中央に、上端部1aから下端部側に凹み、内面から外面に貫通する切り欠き部8が形成されている。これにより、ブラケット6の柱側嵌合部6aを支柱1に嵌合させると、柱側嵌合部6aが切り欠き部8に嵌り、柱側嵌合部6aの上端部を支柱1の上端部1aと略同じ高さ位置に配設することができる。
【0007】
さらに、中心孔に梁2を通すようにし、環状の柱梁カバー9を支柱1の切り欠き部8の周端と梁2との取り合い部10に設置してこの取り合い部10の意匠性を確保するようにしている。また、支柱1の上端部1aに柱キャップ11を取り付けるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平08−232490号公報
【特許文献2】特開平10−37506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、図10図9)に示すように、積雪や強風などによって屋根部7ひいては梁2に大きな荷重が作用すると、ブラケット6に曲げ荷重が作用して変位が生じ、ブラケット6の上端部側の前方を向く側面部分6cが支柱1の切り欠き部8の両側の側壁片部1bに当たり、この側壁片部1bに変形、損傷が生じるおそれがある。
【0010】
これに対し、上記従来の柱と梁の連結構造では、図9に示すように、柱キャップ11を金属で形成するとともに、この柱キャップ11を支柱1の上端部1aに外被せで接続しつつブラケット6の上端部を押えるように設置し、ブラケット6を柱キャップ11で動かないようにしている。このため、柱キャップ11を堅固に形成する必要が生じ、コスト高を招く一要因となっていた。また、屋根部7の角度が大きい場合には、柱キャップ11の絞り加工が深くなってその製作が困難になる。このため、現状では、この構造の適用が屋根部7の角度が平らに近い場合に限定されるという不都合が生じている。
【0011】
なお、特許文献1、特許文献2では、上端部側の前方を向く側面部分が傾斜面として形成されているブラケットが開示されているが、この傾斜面は単に梁の後端側を受ける受け面として形成されているに過ぎず、必然的に梁の材軸に直交する傾斜角度で形成したものである。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑み、支柱と梁を連結する連結部材(ブラケット)に変位が生じても、支柱の側面に連結部材が当たることを防止して支柱の変形、損傷を回避することを可能にした柱と梁の連結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達するために、この発明は以下の手段を提供している。
【0014】
本発明の柱と梁の連結構造は、中空状に形成された支柱と梁を連結部材を用いて接続する柱と梁の連結構造であって、前記連結部材は、上下方向に延設され、前記支柱の上端部から中空部内に嵌合する柱側嵌合部と、前記柱側嵌合部の上端側に後端を接続して所定の角度で略横方向に延設され、前記梁の後端部側から中空部内に嵌合する梁側嵌合部とを備えて略逆L字状に形成され、前記支柱は、前方を向く側面に上端部から下端部側に凹み、前記梁側嵌合部が嵌り込む切り欠き部を備えて形成されており、且つ、前記切り欠き部の両側に設けられて前記切り欠き部を形成する前記支柱の側壁片部に、前記支柱に前記柱側嵌合部を嵌合した状態で前後方向に対向する前記柱側嵌合部の面が、前記連結部材に作用する想定最大応力に応じて下方から上方に向かうに従い漸次前後方向中央側に傾斜する傾斜面として形成され、前記切り欠き部の両側の側壁片部と前記連結部材の傾斜面との間に隙間が設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の柱と梁の連結構造においては、前記支柱の上端部を閉塞する柱キャップと、前記支柱の切り欠き部と前記梁側嵌合部及び該梁側嵌合部を嵌合して支持された前記梁の後端との取り合い部を被覆する柱梁カバーとを備え、前記柱キャップと前記柱梁カバーがそれぞれ、前記連結部材と分離した状態で取り付けられていることが望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の柱と梁の連結構造においては、支柱の切り欠き部を形成する側壁片部と前後方向に対向する連結部材の柱側嵌合部の面が、積雪や強風などで屋根部ひいては梁に荷重がかかり、連結部材(ブラケット)に作用する最大応力に応じた角度で傾斜する傾斜面として形成されている。このため、梁に荷重がかかり連結部材に変位が生じても、柱側嵌合部が支柱の側壁片部に当接することがなく、従来のように柱側嵌合部が当接して支柱に変形が生じることを確実に防止できる。
【0017】
これにより、従来のように堅牢に形成した柱キャップを連結部材及び支柱に固着し、連結部材を柱キャップで押えて動かないように構成する必要がなく、すなわち、支柱の上端部を被覆して外観を確保できればよく、樹脂製などの柱キャップを用いることが可能になる。また、柱梁カバーにおいても連結部材及び支柱に固着する必要がなく、連結部材の変位を許容できるように脂製などの柱梁カバーを用いることができる。よって、従来と比較し、柱キャップや柱梁カバーのコストの低減、施工性の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る柱と梁の連結構造を備えた建物外部構築物を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る柱と梁の連結構造の連結部材(ブラケット)を示す斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る柱と梁の連結構造の連結部材(ブラケット)を示す側面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る柱と梁の連結構造の連結部材(ブラケット)を示す上面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る柱と梁の連結構造の柱キャップと柱梁カバーの取付け状況を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係る柱と梁の連結構造の柱梁カバーの取付け状況を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係る柱と梁の連結構造の柱キャップを示す斜視図である。
図8】本発明の一実施形態に係る柱と梁の連結構造の柱梁カバーを示す斜視図である。
図9】従来の柱と梁の連結構造を示す上方側からの斜視図である。
図10】従来の柱と梁の連結構造を示す下方側からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1から図8を参照し、本発明の一実施形態に係る柱と梁の連結構造について説明する。
【0020】
ここで、本実施形態では、本発明の柱と梁の連結構造Bが例えばカーポートなどの建物外部構築物Aの屋根部7を支持する支柱(柱)1と梁2の連結構造であるものとして説明を行う。
【0021】
具体的に、本実施形態の建物外部構築物Aは、図1に示すように、横方向T1に所定の間隔をあけて立設された複数の支柱1と、各支柱1の上端部にそれぞれ後端を接続して前後方向T2に片持ち状態で延設された複数の梁2と、複数の梁2に支持させて横方向T1に架設し、前後方向T2に間隔をあけて配設された複数の母屋3と、複数の母屋3に支持させて前後方向T2に架設し、横方向T1に間隔をあけて配設された複数の垂木4と、垂木4に支持させて設けられ、屋根面を形成する屋根パネル5とを備えて構成されている。
【0022】
また、屋根部7の後端部側(軒尻を形成する母屋)に、意匠性を確保したり、横樋などとして機能する後枠15を取り付け、屋根部7の先端部(軒先を形成する母屋)や屋根部7の両側部側(妻垂木4)に、意匠性を確保するための前枠16、側枠17を取り付けて構成されている。
【0023】
そして、この建物外部構築物Aは、支柱1と梁2がそれぞれ、例えば押出成形で形成した中空状(本実施形態では略角管状)のアルミ形材を用いて形成されている。また、これら支柱1と梁2は、略逆L字状に形成されたブラケット(連結部材)20を用いて接続されている。
【0024】
本実施形態の柱と梁の連結構造Bのブラケット20は、図2から図4図5に示すように、金属製で、略角管状に形成され、上下方向T3に直線状に延設された柱側嵌合部20aと、略角管状に形成され、柱側嵌合部20aの上端に後端を接続して屋根部7(梁2)の角度に応じた所定の角度で直線状に延設された梁側嵌合部20bとを備えて略逆L状に形成されている。
【0025】
そして、本実施形態の柱と梁の連結構造Bにおいては、支柱1の上端部1a側から中空部内に柱側嵌合部20aを嵌合し、梁側嵌合部20bを梁2の後端側の中空部内に嵌合させることにより、このブラケット20によって支柱1に梁2が片持ち支持状態で接続されている。
【0026】
また、支柱1の上端部1a側及びブラケット20の柱側嵌合部20aにはボルト挿通孔21が貫通形成されており、支柱1の上端部1a側から中空部内にブラケット20の柱側嵌合部20aを嵌合した状態で支柱1と柱側嵌合部20aのボルト挿通孔21が連通し、これらボルト挿通孔21にボルト22を挿通して締結することにより、ブラケット20が支柱1に固着されている。
【0027】
また、図5図6に示すように、支柱1は、梁2の延設方向(前方)を向く側面の上端部1a側且つ幅方向略中央に、上端部1aから下端部側に凹み、内面から外面に貫通する切り欠き部8が形成されている。これにより、本実施形態の柱と梁の連結構造Bでは、ブラケット20の柱側嵌合部20aを支柱1に嵌合させると、柱側嵌合部20aが切り欠き部8に嵌り、柱側嵌合部20aの上端部を支柱1の上端部1aと略同じ高さ位置に配設することができる。
【0028】
さらに、本実施形態の柱と梁の連結構造Bは、支柱1の上端部1aに取り付け、支柱1の上端部1aの開口及びブラケット20を閉塞、被覆する柱キャップ23と、梁2を囲繞するように取り付け、支柱1の切り欠き部8の周辺部分と梁2の後端部分との取り合い部10を被覆する柱梁カバー24とを備えている。
【0029】
一方、本実施形態の柱と梁の連結構造Bにおいては、図2から図4に示すように、支柱1に柱側嵌合部20aを嵌合した状態で、切り欠き部8の両側に設けられて切り欠き部8を形成する支柱1の側壁片部1bと前後方向T2で対向するブラケット20の柱側嵌合部の面25が、下方から上方に向かうに従い漸次前後方向T2の中央側に傾斜する傾斜面として形成されている。
【0030】
これにより、支柱1に柱側嵌合部20aを嵌合した状態で、支柱1の切り欠き部8の両側の側壁片部1b、及び梁2の後端と、ブラケット20の傾斜面25との前後方向T2の間に、下方から上方に向かうに従い漸次その幅が大となる隙間Hが設けられている。
【0031】
また、ブラケット20の柱側嵌合部20aの傾斜面25の傾斜角度θ、ひいては支柱1の切り欠き部8の両側の側壁片部1bとブラケット20の傾斜面25との間の隙間Hの大きさが、積雪や強風などによって屋根部7ひいては梁2に大きな荷重が作用することでブラケット20が変位した場合であってもブラケット20の傾斜面25が支柱1の側壁片部1bに当接しないように設定されている。言い換えれば、柱側嵌合部20aの傾斜面25は、ブラケット20に作用する設定最大応力、設定最大変位に応じて設定、形成されている。
【0032】
なお、本実施形態において、梁2は、ブラケット20の梁側嵌合部20bを嵌合させて所定位置に設置した状態で、その後端が支柱1の切り欠き部8(支柱1の前側の側面)と前後方向T2の略同位置に配されるように設けられている。
【0033】
また、本実施形態のブラケット20は、図2及び図3に示すように、柱側嵌合部20aの下端側に、下端から上方に向けて切り欠いた複数のスリット26が形成され、これにより、柱側嵌合部20aの下端側が各スリット26を挟んで周方向に複数分割して形成されている。
【0034】
次に、本実施形態の柱キャップ23は、例えば樹脂製であり、図5及び図7に示すように、天板部23aと、天板部23aの周縁から下方に垂下して周方向に延びる側壁部23bとを備えて形成され、側壁部23bで囲まれた内部に嵌め込むことにより支柱1の上端部1aに着脱可能に固定して取り付けできるように形成されている。
【0035】
また、この柱キャップ23は、支柱1の上端部1aに取り付けた状態で前方を向く一側壁部23bに下端から天板部23aまで凹み、梁2の幅よりも大きな幅で切り欠かれた凹部23cが形成され、支柱1の上端部1aに取り付けるとともに梁2がこの凹部23cに嵌め込まれるように形成されている。
【0036】
さらに、柱キャップ23は、天板部23aの前端側、且つ幅方向両側にそれぞれ、上面から下面に貫通する貫通孔23dが形成されるとともに、天板部23aの下面に各貫通孔23dに連通してナット(不図示)が一体に(ナット部が一体成型して)設けられている。
【0037】
さらに、柱キャップ23は、天板部23aの前端から前方に突出して略方形平板状の係合受部23eが形成されている。また、この係合受部23eは、その幅方向両側部に、突出方向前端に開口し、側端から幅方向中央側に凹み、前端から後端に延びる係合溝23fが形成されている。
【0038】
次に、本実施形態の柱梁カバー24は、例えば樹脂製であり、図5図6図8に示すように、下枠24aと、下枠24aの両端からそれぞれ上方に延出する一対の側枠24bとを備えて略U字状に形成されている。また、柱梁カバー24は、下枠24aから下方向外側に、一対の側枠24bからそれぞれ横方向外側に突出し、周方向に繋がる外装部24cが設けられている。
【0039】
さらに、本実施形態の柱梁カバー24は、各側枠24bの上端から横方向内側に突出する係合部24dが形成されている。また、各側枠24bの上端側には、係合部24dから奥行き厚さ方向外側(前後方向T2後方側)に突出し、上面から下面に貫通する貫通孔24eを備えた固定片24fが一体に設けられている。
【0040】
さらに、本実施形態の柱梁カバー24は、その下端側の外装部24cの内面から突出して係止片24gが設けられている。
【0041】
上記のように構成した柱梁カバー24は、まず、従来のように環状に形成されているのではなくU字状に形成されているため、一対の側枠24bを外側に弾性変形させて拡げ、梁2の下方から梁2を囲繞するように差し込む。そして、支柱1の切り欠き部8の周辺部分と梁2後端部分との取り合い部10側にスライドさせるとともに、柱キャップ23の係合受部23eの係合溝23fに柱梁カバー24の係合部24dが係合することで、柱梁カバー24が所定位置に位置決めされる。
【0042】
また、このとき、柱梁カバー24の下端側に設けられた係止片24gを支柱1の切り欠き部8に係止させることで、柱梁カバー24の下端側が位置決めされて保持される。
【0043】
また、このように柱梁カバー24が位置決めされると、柱梁カバー24の固定片24fの貫通孔24eと、柱キャップ23の天板部23aの貫通孔23d、ナットのネジ孔とが連通し、ボルト27を挿通、螺合することで柱梁カバー24と柱キャップ23が一体に接続される。そして、支柱1に嵌め込んだ柱キャップ23と梁2に嵌め込んだ柱梁カバー24とがボルト27で接続されることで、柱キャップ23と柱梁カバー24がブラケット20に接続されていなくても支柱1や梁2から外れることがなく、またブラケット20に変位が生じてもやはり支柱1や梁2から外れることがない。
【0044】
また、このように柱梁カバー24が所定位置に位置決めして取り付けられると、柱梁カバー24の外装部24cが支柱1の切り欠き部8や柱キャップ23の凹部23cの切断端部に重なり、この外装部24cによって取り合い部10の意匠性が確保される。
【0045】
また、支柱1の上端部1aに取り付けた柱キャップ23によって支柱1の上端部1a側の意匠性も確保される。
【0046】
一方、本実施形態の柱と梁の連結構造Bにおいては、ブラケット20の柱側嵌合部20aの傾斜面25の傾斜角度θ、ひいては支柱1の切り欠き部8の両側の側壁片部1bとブラケット20の傾斜面25との間に所定の隙間Hが設けられている。
【0047】
さらに、従来のように柱キャップ23がブラケット20に接続せず、柱キャップ23によってブラケット20が拘束されていない。
【0048】
このため、積雪や強風などによって屋根部7ひいては梁2に大きな荷重が作用してブラケット20が変位した場合であっても、ブラケット20の傾斜面25が支柱1の側壁片部1bに当接することがない。これにより、従来のように支柱1の切り欠き部8の両側の側壁片部1bに変形や損傷が生じることがなく、また、ブラケット20を変位しないように強固に保持するために柱キャップ23を強固な金属で形成する必要もない。
【0049】
したがって、本実施形態の柱と梁の連結構造Bにおいては、支柱1の切り欠き部8を形成する側壁片部1bと前後方向T2に対向するブラケット20の柱側嵌合部20aの面25が、積雪や強風などで屋根部7ひいては梁2に荷重がかかり、ブラケット20に作用する想定最大応力に応じた角度で傾斜する傾斜面として形成されている。このため、梁2に荷重がかかりブラケット20に変位が生じても、柱側嵌合部20aが支柱1の側壁片部1bに当接することがなく、従来のように柱側嵌合部20aが当接して支柱1に変形、損傷が生じることを確実に防止できる。
【0050】
これにより、従来のように堅牢に形成した柱キャップ23をブラケット20及び支柱1に固着し、ブラケット20を柱キャップ23で押えて動かないように構成する必要がなく、すなわち、支柱1の上端部1aを被覆して外観を確保できればよく、樹脂製などの柱キャップ23を用いることが可能になる。また、柱梁カバー24においてもブラケット20及び支柱1に固着する必要がなく、ブラケット20の変位を許容できるように脂製などの柱梁カバー24を用いることができる。よって、従来と比較し、柱キャップ23や柱梁カバー24のコストの低減、施工性の向上を図ることが可能になる。
【0051】
ここで、本実施形態のように積雪や強風などによって屋根部7ひいては梁2に大きな荷重が作用した際にブラケット20の変位を許容すると、ブラケット20の柱側嵌合部20aの下端が支柱1の内面を押圧し、支柱1の外面に白化が生じるおそれがある。
【0052】
これに対し、本実施形態では、ブラケット20の柱側嵌合部20aの下端側がスリット26を設けることによって周方向に複数分割して形成されている。このため、積雪や強風などによって屋根部7ひいては梁2に大きな荷重が作用してブラケット20が変位し、ブラケット20の柱側嵌合部20aの下端が支柱1の内面を押圧するとともに、柱側嵌合部20aの下端側の分割片が変形する。これにより、柱側嵌合部20aの下端による支柱1の内面への押圧力が小さくなるように制御でき、支柱1の外面に白化が生じるおそれを解消することができる。
【0053】
以上、本発明に係る柱と梁の連結構造の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0054】
例えば、本実施形態では、ブラケット(連結部材)20の柱側嵌合部20aの下端側にスリット26を設けることによって支柱1の白化を防止するようにしているが、柱側嵌合部20aと支柱1の間にゴムなどの介装材を介装したり、柱側嵌合部20aを面取り、R加工するなどして支柱1の白化を防止するようにしてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、本発明に係る柱と梁の連結構造が支柱に梁を片持ち状態で接続するものとして説明を行った。これに対し、例えば、2台用(複数台用)のカーポートなど、屋根部の両側部にそれぞれ配置した一対の支柱に梁を架設する場合(梁の両端を支柱に固定支持する場合)に本発明に係る柱と梁の連結構造を適用しても勿論構わない。そして、この場合においても、本実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0056】
1 支柱
1a 上端部
1b 側壁片部
2 梁
3 母屋
4 垂木
5 屋根パネル
6 従来のブラケット(連結部材)
6a 柱側嵌合部
6b 梁側嵌合部
7 屋根部
8 切り欠き部
9 従来の柱梁カバー
10 取り合い部
11 従来の柱キャップ
15 後枠
16 前枠
17 側枠
20 ブラケット(連結部材)
20a 柱側嵌合部
20b 梁側嵌合部
21 ボルト挿通孔
22 ボルト
23 柱キャップ
23a 天板部
23b 側壁部
23c 凹部
23d 貫通孔
23e 係合受部
23f 係合溝
24 柱梁カバー
24a 下枠
24b 側枠
24c 外装部
24d 係合部
24e 貫通孔
24f 固定片
24g 係止片
25 傾斜面
26 スリット
A 建物外部構築物
B 柱と梁の連結構造
H 隙間
T1 横方向
T2 横方向
T3 上下方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10