(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、地下から地表に噴出する天然ガスには、生産に随伴した随伴ガスが含まれている。このような随伴ガスには、温室効果ガスであるCO
2を含む酸性ガスが含まれているため、天然ガス精製プラントにて天然ガスからCO
2を分離・回収し、精製したものを精製天然ガスとして製品化工程に進めている。
【0003】
このような精製プロセスとしては、未精製の天然ガスを脱水した後、圧縮・冷却して深冷分離し、CO
2リッチガスを液化炭酸ガスとして回収し、CO
2を分離した炭化水素がリッチなガスを更に圧縮して、高分子分離膜による膜分離によりCO
2濃度が10vol%以下の精製天然ガスを回収するプロセスが開示されている(特許文献1)。
【0004】
また、未精製の天然ガスを脱水した後、一段目で高分子分離膜にて膜分離し、圧縮・冷却して深冷分離によりCO
2リッチガスを液化炭酸ガスとして回収し、CO
2を分離したCH
4リッチガスを更に二段目の膜分離のスイープガスとして使用するプロセスが開示されている(特許文献2)。なお、特許文献1及び2では、分離膜を透過したCO
2リッチガスを、深冷分離や前段の膜分離に循環させている。
【0005】
しかし、上記のような例では、要求される製品品質(例えばCO
2濃度が2vol%以下)の精製天然ガスを達成するために、莫大な膜面積が必要となり、これにより、装置やシステムの構造が大型化し、膨大なエネルギを消費するおそれがある。このため、現実的には、必要な膜面積以下の膜分離によってCO
2を分離した後、別途プロセスにて製品品質までCO
2濃度を低下させている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記事情に対して、本発明は、装置及びシステムの構成をコンパクト化し、エネルギ消費を低減するとともに、天然ガスを良好な品質で精製する天然ガス精製装置及びシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、本発明に係る天然ガス精製装置は、分離膜を有する第1の分離膜ユニットと、該分離膜ユニット後段に設けられ、分離膜を有してアミン液が流通する第2の分離膜ユニットとを備え、前記第1及び第2の分離膜ユニットにCO
2を含有する未精製天然ガスを通して、前記分離膜によりCO
2リッチガスを分離するとともに、前記第2の分離膜ユニットを流通するアミン液によりCO
2を吸収して、前記未精製ガスを精製することを特徴としている。
【0009】
このような構成であれば、第2の分離膜ユニットの二次側にCO
2を吸収するアミン液を流通させることによって、未精製天然ガス中のCO
2を分離・吸収して回収するとともに、第2の分離膜ユニットの二次側のCO
2分圧を低下して、分離膜表裏のCO
2分圧差(推進力)を確保する。その結果、天然ガス精製装置の膜面積を削減することができる。また、第1及び/又は第2の分離膜ユニットに要する負荷又は膜面積を適宜変更することによって、装置の設備費又はランニングコストを低減できる。
【0010】
なお、本明細書及び特許請求の範囲にて、未精製天然ガスは、随伴ガス等であり、メタン(CH
4)等の炭化水素、二酸化炭素(CO
2)、二硫化水素(H
2S)等を含む精製前の天然ガスをいう。分離膜の表裏面のうち、天然ガス等の流体を供給する面側を装置又は分離膜の一次側、その裏面側を二次側ともいう。また、流体の流れの前流側を前段、後流側を後段ともいう。
【0011】
また、前記第1及び第2の分離膜ユニットのCO
2/CH
4選択性を100以上とし、透過係数値を1.0×10
−3Ncc/(cm
2・s・cmHg)以上とすることが好適である。
【0012】
このような構成であれば、天然ガス精製装置の膜面積を著しく削減できるとともに、CO
2濃度を2vol%以下まで精製した製品品質の精製天然ガスを得ることができる。なお、本明細書及び特許請求の範囲にて、CO
2/CH
4選択性は、分離膜の一次側のCO
2濃度を50%とした場合の、二次側のCO
2濃度/二次側のCH
4濃度である。
【0013】
また、本発明は、別の側面から天然ガス精製システムである。該天然ガス精製システムは、前記天然ガス精製装置と、前記第2の分離膜ユニットを流通したアミン液からCO
2を分離・回収して再生するとともに、回収したCO
2を前記分離膜により分離したCO
2リッチガスに送る再生塔とを備えることを特徴としている。
【0014】
前記構成のシステムであれば、前記第2の分離膜ユニットを流通するアミン液が吸収したCO
2を前記システム内にて分離し、前記天然ガス精製装置を透過したCO
2リッチガスに合流させて、液化炭酸ガスとして効率よく回収できる。
【0015】
また、本発明に係る天然ガス精製システムは、別の形態にて、前記第1の分離膜ユニットを透過したCO
2リッチガスを液化炭酸ガスとして回収するとともに、CH
4リッチガスを分離して前記第2の分離膜ユニットの前段に再送する気液分離装置を更に備える構成とすることができる。
【0016】
このような形態であれば、前記天然ガス精製装置を透過したCO
2リッチガスからCO
2を分離して濃度を高め、液化炭酸ガスとして回収できる。更に、このCO
2リッチガスに含まれるCH
4を分離して前記天然ガス精製装置に再送し、効率よくリサイクルできる。
【0017】
また、本発明に係る天然ガス精製システムは、別の形態にて、前記天然ガス精製装置の前段に設けられ、前記未精製天然ガス中のH
2Sを吸着し、吸着したH
2Sを脱着・回収するH
2S吸着塔を更に備える構成とすることができる。
【0018】
このような形態であれば、未精製天然ガス中のH
2S濃度を天然ガス精製装置の前段で低下させて、ガス中のH
2Sにより分離膜が劣化することを防ぐとともに、H
2Sとアミン液が反応した熱安定性のアミン塩により、アミン液のCO
2吸収効率が低下することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、装置及びシステムの構成をコンパクト化し、エネルギ消費を低減するとともに、天然ガスを良好な品質で精製する天然ガス精製装置及びシステムが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る天然ガス精製装置及びシステムについて、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施の形態によって限定されるものではない。
【0022】
[天然ガス精製装置]
図1に、本発明に係る天然ガス精製装置の一実施の形態を概念的に示す。図示の天然ガス精製装置10は、第1の分離膜ユニット11と、第2の分離膜ユニット12とを少なくとも備える。第1及び第2の分離膜ユニット11、12間は、気密性を有し、少なくともCH
4等の炭化水素及びCO
2を含む天然ガスを流通可能な部材、例えば配管等により連結されている。
【0023】
第1の分離膜ユニット11は、天然ガス精製装置10内の前段に設け、分離膜に未精製天然ガスを供給することによって、前記分離膜を透過したCO
2をCO
2リッチガスとして分離し、これによりCO
2濃度の低下したCH
4リッチガスを通過させる。
第1の分離膜ユニット11を通過したガスを、更に、その後段に設けた第2の分離膜ユニット12の分離膜に供給する。ここで、第2の分離膜ユニット12の内部には、分離膜の二次側にスイープ液としてアミン液が流通している。これによって、前記分離膜を透過したCO
2を吸収するとともに、第2の分離膜ユニット12の分離膜の二次側のCO
2分圧を低下させて、分離膜表裏のCO
2分圧差を確保する。その結果、製品品質まで未精製天然ガスを精製するために必要な膜面積を、小さくすることができる。
【0024】
このように、天然ガス精製装置10にCO
2を含有する未精製天然ガスを通すことによって、第1の分離膜ユニット11の分離膜を透過したCO
2リッチガスを回収するとともに、第2の分離膜ユニット12の分離膜を透過したCO
2をアミン液により吸収する。
図1に示すように、例えば、CO
2濃度が45.5vol%の未精製天然ガスであれば、第1の分離膜ユニット11を透過するとCO
2濃度が10vol%以下となり、続く第2の分離膜ユニット12を透過すると2vol%以下とすることができる。
【0025】
第1の分離膜ユニット11は、CO
2/CH
4選択性が100以上であり、透過係数値が1.0×10
−3Ncc/(cm
2・s・cmHg)以上の分離膜を備えればよく、特に限定されない。
このような分離膜としては、一例として、IZA(International Zeolite Association)が定める規定コードにて表される、DDR型、CHA型等のゼオライトからなる無機分離膜が挙げられる。この場合、実用的な観点より、高分子分離膜よりも天然ガス精製装置10の膜面積を削減することができる。
【0026】
第2の分離膜ユニット12は、CO
2を分離する分離膜を備え、外部から供給したアミン液がスイープ液として内部を流通するものである。なお、第2の分離膜ユニット12の分離膜は、第1の分離膜11の分離膜と同一とすることができる。
また、第2の分離膜ユニット12を流通するアミン液は、少なくともCO
2を吸収可能なスイープ液であればよく、特に限定されない。
このようなアミン液としては、一例として、モノエタノールアミン(MEA)、立体障害アミンであるKS−1(登録商標)、KS−2(登録商標)、KS−3(登録商標)等が挙げられる。
【0027】
続いて、
図2(a)及び(b)を参照し、本実施の形態の作用効果について更に説明する。
【0028】
図2(a)は、代表的な高分子分離膜を備えた分離膜ユニットの性能と、代表的な無機分離膜を備えた分離膜ユニットの性能とを仮定し、各分離膜ユニットの膜面積(m
2)に対するCO
2濃度(vol%)の変化を試算した結果を示す。
なお、各分離膜ユニットに対するガス処理量、圧力、CO
2:CH
4比等の受入条件は同一とし、高分子と無機分離膜のCO
2/CH
4選択性は、高分子分離膜を30とし、無機分離膜を100としている。また、高分子分離膜の透過係数を0.10×10
−3Ncc/(cm
2・s・cmHg)とし、無機分離膜の透過係数を1.0×10
−3Ncc/(cm
2・s・cmHg)としている。
【0029】
図2(a)に示すように、代表的高分子分離膜を採用した分離膜ユニットの場合、CO
2濃度を8vol%以下とするための膜面積は130000m
2程度であり、CO
2濃度を2vol%以下とするための膜面積は300000m
2程度である。
これに対して、代表的無機分離膜を採用した分離膜ユニット11の場合、CO
2濃度を8vol%以下とするための膜面積は12000m
2程度であり、CO
2濃度を2vol%以下とするための膜面積は80000m
2程度である。
このように、代表的無機分離膜を採用した第1の分離膜ユニット11のほうが、要求される製品品質の精製天然ガスを得るための膜面積を著しく削減できることがわかる。
【0030】
続いて、
図2(b)は、代表的無機分離膜を有する第1の分離膜ユニット11からなる天然ガス精製装置の性能と、代表的無機分離膜を有する第1及び第2の分離膜ユニット11、12とからなる天然ガス精製装置10の性能とを仮定し、膜面積(m
2)に対するCO
2濃度(vol%)の変化を試算した結果である。なお、各天然ガス精製装置の受入条件、無機分離膜のCO
2/CH
4選択性及び透過係数は、
図2(a)に示す条件と同一としている。
図2(b)に示すように、分離膜ユニット11のみを備えた天然ガス精製装置の場合、CO
2濃度を2vol%以下とするための膜面積は80000m
2程度である。
これに対して、分離膜ユニット11、12を備えた天然ガス精製装置10の場合、CO
2濃度を2vol%以下とするための膜面積は18000m
2程度である。
このように、第2の分離膜ユニット12を更に備えた天然ガス精製装置10のほうが、要求される製品品質の精製天然ガスを得るための膜面積を削減できることがわかる。
【0031】
以上のように、本実施の形態によれば、第2の分離膜ユニット12に流通するアミン液により、第2の分離膜ユニット12の二次側のCO
2分圧を低下できる。これにより、第2の分離膜ユニット12の分離膜表裏のCO
2分圧差(推進力)を確保し、第1及び第2の分離膜ユニット11、12を流通するガスの透過速度を確保する。したがって、天然ガス精製装置の一次側を流通するガスのCO
2分圧が低下しても、分離膜の膜面積を増大させる必要はなくなり、天然ガス精製装置の膜面積を著しく削減することができる。更には、装置をコンパクト化でき、装置の運転の容易性を向上することもできる。
また、本実施の形態によれば、第1及び/又は第2の分離膜ユニット11、12に要する負荷又は膜面積を、適宜変更することによって、設備費又はランニングコストを低減することも可能とする。前記負荷としては、例えば、第1の分離膜ユニット11又は第2の分離膜ユニット12のCO
2の透過量である。
例えば、第1の分離膜ユニット11のCO
2の透過量を上げれば、ランニングコストを抑制することができ、他方で、第2の分離膜ユニット12のCO
2の透過量を下げれば、設備費を抑制することができる。また、例えば、第1の分離膜ユニット11の膜面積を増やせば、エネルギコスト等のランニングコストを削減でき、第2の分離膜ユニット12の膜面積を増やせば、第1の分離膜ユニット11等の設備費を削減できる。
【0032】
[天然ガス精製システム](第一実施の形態)
以上の構成の天然ガス精製装置10を備えた天然ガス精製システムの第一実施の形態について、
図3を参照して説明する。図示の天然ガス精製システム100は、天然ガス精製装置10の他に、再生塔113と、圧縮機114、115と、気液分離器116とを少なくとも備える。
【0033】
再生塔113は、第2の分離膜ユニット12からラインL
8を経て導出したCO
2を吸収したアミン液から加熱によりCO
2を分離・回収し、ラインL
9及びポンプP
1を通じて第2の分離膜ユニット12にCO
2を放散したアミン液を還流するものである。
一方、第1の分離膜ユニット11を透過したCO
2リッチガスは、ラインL
6を通じて、回収する。ここで、再生塔113にて分離・回収したCO
2リッチガスも、ラインL
10から圧縮機114を経て、ラインL
6のガスに合流する。なお、ラインL
6のCO
2リッチガスは、用途に応じて、図示しない圧縮機により更に圧縮してもよい。
【0034】
また、天然ガス精製システム100では、未精製天然ガスをラインL
1の圧縮機115にて昇圧し気液分離器116に送る。気液分離器116では、未精製天然ガスから液相の水と炭素数2〜5の炭化水素を含んだLNG(Liquefied Natural Gas)用の油とを分離し、ラインL
3及びL
4を通じて回収する。水と油を分離した気相のガスを、ラインL
2から天然ガス精製装置10に送る。
このようにして、天然ガス精製装置10の前段にてLNG成分を回収し、後段にて液相のCO
2を回収する。なお、未精製天然ガス中の水分量が多く、例えば水分量が50ppm以上である場合、任意選択的に、ラインL
2に図示しない脱水装置を設け、天然ガスの精製に適した水分量まで脱水してもよい。
【0035】
本実施の形態によれば、第2の分離膜ユニット12の分離膜の二次側にてアミン液が吸収したCO
2を再生塔113にて分離・回収し、天然ガス精製装置10を透過したCO
2リッチガスに合流させることによって、液化炭酸ガスを効率よく回収できる。また、CO
2を分離したアミン液を再生アミン液として、第2の分離膜ユニット12に還流してリサイクルする。更に、第一実施の形態と同様に、第1及び/又は第2の分離膜ユニット11、12に要する膜面積又は負荷を、適宜変更することによって、システムの設備費又は吸収液再生等のランニングコストの低減も可能とする。更にまた、システムをコンパクト化でき、システムの運転の容易性を向上することもできる。
【0036】
ここで、
図4を参照して、上述した分離膜ユニット11、12の配置及び数に関し、より具体的な形態について、更に詳細に説明する。
図4に示すように、第1の分離膜ユニット11と第2の分離膜ユニット12とは、実用的な観点より、未精製天然ガスの流通方向に直列又は並列に複数配置することができる。
【0037】
先ず、第1の分離膜ユニット11と第2の分離膜ユニット12とは、要求される製品品質に応じて、ラインL
2とラインL
8との間に直列に複数配置できる。
分離膜ユニットを直列に複数配置することにより、通過するガスの流速を所定の程度維持できるため、装置の性能を向上させ、要求される製品品質を満たすことができる。
なお、直列に複数配置する分離膜ユニットの数は、流速と要求される製品品質とにより決定できる。前記流速としては0.1m/s以上であり、1m/s以上が好ましい。
【0038】
また、第1の分離膜ユニット11と第2の分離膜ユニット12とは、その容量に応じて、ラインL
2とラインL
8との間に並列に複数配置することができる。
分離膜ユニットを並列に複数配置することにより、分離膜ユニットと同一構成の予備ユニットを設けることができる。これにより、装置及び/又はシステムを停止せずに、予備ユニットを使用することにより、性能が低下した分離膜ユニットを交換することができる。例えば、図中では、ラインL
2から分岐した複数のラインL
21のうちの一つの開閉弁11aを閉じ、直列方向に連結した一つの分離膜ユニット11、12に対する未精製天然ガスの流通を停止している。なお、開閉弁11aは、手動弁でも自動開閉弁でもよい。
開閉弁11aを閉じていない分離膜ユニットを稼働する間、性能が低下した分離膜ユニットの分離膜交換を実施することができる。予備ユニットは、予め配置して待機しておき、性能が低下した分離膜ユニットと切替えてもよく、処理量の増加又は減少に伴い稼働又は停止してもよい。停止した分離膜ユニットには、適宜、部品交換等の再利用の処置を実施できる。
稼働中の各分離膜ユニット11、12にて分離したCO
2リッチガスは、透過ガスヘッダーとなる各ラインL
61、L
71からL
6、L
7を通じて排出する。また、各分離膜ユニット11、12の分離膜を通過したCH
4リッチガスは、ラインL
51、L
81及びL
8を通じて排出する。
なお、並列に複数配置する分離膜ユニットの数は、処理するガス量に応じて決定できる。
【0039】
更に、
図5(a)及び(b)を参照して、上述した分離膜ユニット11、12のより具体的な形態について、より詳細に説明する。
図5(a)は、本発明に係る天然ガス精製装置を適用する分離膜ユニットの構成を示した模式図であり、
図5(b)は、分離膜ユニットのA−A線断面図である。
【0040】
図5(a)に示すように、分離膜ユニット11、12として採用することができる分離膜ユニットは、ベッセル1に管状の分離膜3を複数格納した形態とすることができる。
未精製天然ガスは、図示しない流入口からベッセル1の外壁との管板4aにて仕切られた上部チャンネル2aに流入し、分離膜3の一次側、すなわち分離膜3の管内に入る。
そして、未精製天然ガスは分離膜3の一次側を通過しながら、この未精製天然ガスに含まれるCO
2は分離膜3の一次側から二次側へ透過する。これにより、未精製天然ガスを、主にCH
4を含むCH
4リッチガスとCO
2リッチガスとに分離する。
CH
4リッチガスは、ベッセル1の外壁と管板4bにて仕切られた下部チャンネル2bを通って図示しない流出口からラインに排出する。他方で、未精製天然ガスから分離したCO
2は、分離膜3の外側と外壁1と管板4a、4bとの間に形成された少なくとも気密性を有する内室5、更に図示しない流出用の流路を経てラインに排出する。
なお、分離膜ユニット12を図示の分離膜ユニットに適用する場合、内室5は、気密且つ水密性を有しており、図示しない流出入用の流路を経てアミン液が流通する。
【0041】
なお、
図5(b)に示すように、本実施の形態では、ベッセル1に9本の分離膜3を配置している。ベッセル1に収納する分離膜3の数は、特にこれに限定されるものではない。また、分離膜3の各々は、ベッセル1の断面の中心に対して互いに対称に、且つ、互いに略等間隔となる位置に配置している。これにより、分離膜3によるCO
2の分離と、内室5でのCO
2の流通及びアミン液による吸収とを効率よく行うことができる。もっとも、ベッセル1に対する分離膜3の位置は、特にこれに限定されるものではない。
【0042】
更にまた、第一実施の形態に係る天然ガス精製システム100(
図3)は、
図6に示すH
2S吸着塔117を含む構成とすることができる。
【0043】
図6に示す形態では、内部に未精製天然ガス中のH
2Sを吸着するためのH
2S吸着剤をそれぞれ備えた2つのH
2S吸着塔117、117を備えている。また、2つのH
2S吸着塔117、117は並列して配置され、開閉弁117a〜117cをそれぞれ備えている。開閉弁117a〜117cは、手動弁でも自動開閉弁でもよい。
本実施の形態では、H
2S吸着用の吸着塔117と、H
2S脱着・回収用の2つの吸着塔117を設けることにより、稼働中のシステムにて未精製天然ガスからH
2Sの吸着と、H
2S吸着剤の再生とを同時に実施する。
一方の吸着塔117では、開閉弁117a、117bを開き、開閉弁117cを閉じながら、未精製天然ガスをそれぞれラインL
11〜L
12を通じて通過させることによって、H
2SをH
2S吸着剤に吸着し、未精製天然ガス中のH
2S濃度を低下する。
それと同時に、他方の吸着塔117では、開閉弁117a、117bを閉じ、開閉弁117cを開くことによって、H
2SをH
2S吸着剤にから脱着して、脱着H
2SガスとしてラインL
13を通じて回収し、H
2S吸着剤を再生する。H
2S吸着剤を再生した吸着塔117は、H
2S吸着用の吸着塔117として用いることができる。
吸着塔117は、少なくとも1つ以上あればよく、特に限定されない。2つ以上であれば、H
2S脱着・回収用の吸着塔を少なくとも1つ設けることができるため、システムを停止することなく、未精製天然ガス中のH
2Sを継続的に吸着することができる。
【0044】
このような形態であれば、未精製天然ガス中のH
2S濃度を天然ガス精製装置10の前段にて低下させることができる。これにより、未精製天然ガス中に含まれるH
2Sによって天然ガス精製装置10の分離膜が劣化することを防ぐことができる。よって、H
2Sの存在により、第1及び第2の分離膜ユニット11、12からなる天然ガス精製装置10の性能、曳いては天然ガス精製装置10を備えた天然ガス精製システムの性能が低下することを防ぐことができる。更に、H
2Sとアミン液が反応して熱安定性のアミン塩となり、第2の分離膜ユニット12でのアミン液のCO
2吸収効率や再生塔113での再生効率が低下することを防ぐことができる。
【0045】
[天然ガス精製システム](第二実施の形態)
続いて、本発明に係る天然ガス精製システムの第二実施の形態について、
図7を参照して説明する。図示の天然ガス精製システム200は、
図3の形態のシステム100と比較して、圧縮機219と、冷却器220と、気液分離器221とを更に備えている。
【0046】
第1の分離膜ユニット11を透過したCO
2リッチガスには、CO
2とともにCH
4が含まれている。
このため、気液分離装置221は、第1の分離膜ユニット11にて分離し、ラインL
14の圧縮機219及び冷却器220にて二相流体としたCO
2リッチガスから気相のCH
4リッチガスを分離し、ラインL
15及びL
5を通じて第2の分離膜ユニット12の一次側に送る。また、液相のCO
2をラインL
16及びポンプP
2通じて回収する。
また、第1の分離膜ユニット11を透過したラインL
14のCO
2リッチガスには、圧縮機114からのCO
2リッチガスをラインL
10から合流させる。
なお、第二実施の形態の他の構成要素は、
図3について説明した第一実施の形態と実質的に同様であり、同一番号を付した構成要素は、実質的に同様の作用効果を持つ。また、本実施の形態に係る天然ガス精製システム200(
図7)にも、第一実施の形態と同様に、
図4に示す分離膜ユニット11、12の構成、
図5(a)〜(b)に示す分離膜ユニット11、12の構成や
図6に示すH
2S吸着塔117を含む構成を採用することができる。
【0047】
本実施の形態によれば、第一実施の形態と同様の効果を奏するとともに、天然ガス精製装置10を透過したガスから気液分離装置221にてCO
2濃度を高めた液化炭酸ガスを回収できる。更に、前記CO
2リッチガスから気液分離装置221にてCH
4リッチガスを分離し、天然ガス精製装置10に再送して、効率よくリサイクルできる。
【0048】
(変形例)
なお、前述の天然ガス精製装置及びシステムの実施の形態では、第1の分離膜ユニット11と第2の分離膜ユニット12とを備える構成の天然ガス精製装置10を例示した。本発明はこれに限定されない。
図2(a)にて説明したように、本発明によれば、第1の分離膜ユニット11のみで必要な製品品質の精製天然ガスを得ることができる。したがって、要求される目的又は用途に応じて、第1の分離膜ユニット11のみを天然ガス精製装置としてシステムに組み込んでもよい。
【0049】
このようなシステムの一例として、第1の分離膜ユニット11のみからなる天然ガス精製装置310を組み込んだ天然ガス精製システム300を
図8に示す。図示のシステムでは、天然ガス精製装置310の通過ガスを製品品質の精製天然ガスとするとともに、分離膜の透過ガスを圧縮・冷却して気液分離し、液化炭酸ガスを回収するとともに、CH
4リッチガスを天然ガス精製装置310に再送してリサイクルする。
図8のようなシステムであれば、吸収液を用いた吸収法を用いずに、製品品質の精製天然ガスを得ることができるため、吸収液の使用が困難な海上プラントにて利点がある。更に、例えば、Selexol法(冷エチレングリコール吸収)による天然ガス精製装置又はシステムと比較すると、吸収液を再生する際の脱圧操作を必須とすることもなく、エネルギ消費を抑制でき、且つ、製品品質の精製天然ガスを得ることができる。
【0050】
また、前述の天然ガス精製装置及びシステムの実施の形態では、第1の分離膜ユニット11と第2の分離膜ユニット12とを直列及び/又は並列に複数配置して、天然ガス精製システムに適用する構成を例示した。本発明はこれに限定されない。
図2(a)にて説明したように、本発明に係る天然ガス精製装置によれば、第1の分離膜ユニット11のみで、膜面積を低下させるとともに、製品品質の精製天然ガスを得ることができる。したがって、第1の分離膜ユニット11のみを直列及び/又は並列に複数配置して、本発明に係る天然ガス精製システムに適用できることはもちろんである。