(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の無電解金めっき処理方法について説明する。
本発明の無電解金めっき処理方法により得られる金めっき被覆材料は、基材上に、下地合金層と、金めっき層と、を備え、前記下地合金層が、M1−M2−M3合金(ただし、M1は、Ni、Fe、Co、Cu、Zn、およびSnから選択される少なくとも1つの元素、M2は、Pd、Re、Pt、Rh、Ag、およびRuから選択される少なくとも1つの元素、M3は、P、およびBから選択される少なくとも1つの元素である。)であることを特徴とする。
【0015】
<基材>
基材としては、特に限定されないが、鋼、ステンレス鋼、Al、Al合金、Ti、Ti合金、Cu、Cu合金、Ni、Ni合金などが挙げられる。基材の形状としては、特に限定されず、使用用途に応じて適宜選択することができるが、たとえば、線状や板状に加工された導電性の金属部品、板を凹凸状に加工してなる導電性部材、ばね状や筒状に加工された電子機器の部品などの用途に応じて必要な形状に加工したもの用いることができる。また、基材の太さ(直径)や厚み(板厚)は、特に限定されず、使用用途に応じて適宜選択することができる。
【0016】
<下地合金層>
下地合金層は、金めっき層を良好に形成するための下地層であり、M1−M2−M3合金からなる。ここで、M1−M2−M3合金は、互いに異なる元素であるM1、M2、およびM3から構成され、M1は、Ni、Fe、Co、Cu、Zn、およびSnから選択される少なくとも1つの元素であり、また、M2は、Pd、Re、Pt、Rh、Ag、およびRuから選択される少なくとも1つの元素であり、さらに、M3は、P、およびBから選択される少なくとも1つの元素である。
【0017】
なお、下地合金層を形成する方法は特に限定されないが、電解めっき、無電解めっき、スパッタリングなどにより形成することができる。そして、下記に示すように、特に無電解めっきにより形成することが好ましい。
【0018】
M1−M2−M3合金におけるM1は、Ni、Fe、Co、Cu、Zn、およびSnから選択される少なくとも1つの元素であり、これらを単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて、たとえば、Ni−Fe、Ni−Co、Ni−Cuなどを用いてもよい。M1を構成する各元素は、単独で、基材上にめっき層を形成することができるという特性を有する元素であり、いずれも、下地合金層を基材に密着させる作用を有するものである。なお、M1としては、めっき液の自己分解を防止し、めっき液の安定性を高めることができるという点より、Ni、およびCoから選択される少なくとも1つの元素を用いるのが好ましく、Niを用いるのが特に好ましい。
【0019】
また、M1−M2−M3合金におけるM2は、Pd、Re、Pt、Rh、Ag、およびRuから選択される少なくとも1つの元素であり、これらを単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて用いてもよい。M2を構成する各元素は、自己触媒作用を有する元素であり、いずれも、基材上に析出した際に、めっき浴中の還元剤の反応に対する触媒として作用し、金属析出反応を連続的に進行する作用を有するものである。なお、M2としては、コストを抑えることができるという点より、Pd、およびAgから選択される少なくとも1つの元素を用いるのが好ましく、Pdを用いるのが特に好ましい。
【0020】
さらに、M1−M2−M3合金におけるM3は、P、およびBから選択される少なくとも1つの元素であり、これらの元素を単独で用いてもよいし、2つ以上を組み合わせて、たとえば、P−Bを用いてもよい。M3を構成する各元素は、下地合金層を形成するためのめっき浴中の還元剤を構成するメタロイドであり、通常、下地合金層を形成する際に不可避的に下地合金層に取り込まれることとなる。なお、M3としては、めっき液の自己分解を防止し、めっき液の安定性を高めることができるという点より、Pを用いるのが好ましい。
【0021】
また、M1−M2−M3合金における各元素の比率は、M1が20〜50原子%、M2が30〜50原子%、M3が20〜30原子%であることが好ましい。また、M1−M2−M3合金上に適切に金めっき層が形成され、金めっき層における不形成部分やピンホールの発生を防止することができる範囲であれば、M1−M2−M3合金には不可避的に混入してしまう不純物がわずかに含まれていてもよい。不可避的に混入してしまう不純物としては、たとえば、めっき液の自己分解を防止し、めっき液を安定させる安定剤として添加されるPb、Tl、Biなどの重金属が挙げられる。なお、このような安定剤としては、環境負荷軽減の観点から、Biが好ましく用いられる。M1−M2−M3合金の組成比を上記範囲とすることにより、基材上に良好に下地合金層が形成され、かつ、下地合金層上に形成される金めっき層も、ピンホールの発生を低減し、良好に形成することができる。
【0022】
そして、M1−M2−M3合金としては、各元素を任意に組み合わせたものを用いることができるが、めっき液の自己分解を防止し、めっき液の安定性を高めることができるという点より、Ni−Pd−P合金、Co−Ag−P合金が好ましく、Ni−Pd−P合金が特に好ましい。
【0023】
M1−M2−M3合金からなる下地合金層の形成は、M1、M2、およびM3に示す元素を含み、還元剤、錯化剤が添加されためっき浴(下地合金無電解めっき浴)を用いて、基材上にめっきを施すことにより行われる。たとえば、Ni−Pd−P合金からなる下地合金層を形成する場合には、下地合金無電解めっき浴としては、通常用いられるニッケルめっき浴と、パラジウムめっき浴とを混合して得られるものなどを用いることができる。ニッケルめっき浴としては、たとえば、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケルなどのニッケル塩と、次亜リン酸塩などのリンを含む還元剤と、クエン酸などの錯化剤とからなるめっき浴などが挙げられる。パラジウムめっき浴としては、たとえば、塩化パラジウムなどのパラジウム塩と、次亜リン酸塩、亜リン酸塩などのリンを含む還元剤と、チオジグリコール酸などの錯化剤となるめっき浴などが挙げられる。なお、ニッケルめっき浴と、パラジウムめっき浴とを混合して下地合金無電解めっき浴を作製する際においては、ニッケル塩としては塩化ニッケル、パラジウム塩としては塩化パラジウムを用いるのが好ましい。ニッケルめっき浴と、パラジウムめっき浴との混合比率は、Ni−Pd−P合金を構成する各元素の比率に応じて適宜設定すればよい。なお、上記においては、下地合金層を、Ni−Pd−P合金とする場合を例示したが、下地合金層を、Ni−Pd−P合金以外で構成する場合においても、同様に、M1、M2、およびM3の各元素を含み、還元剤、錯化剤が添加されためっき浴を適宜調整してなる下地合金無電解めっき浴を用いればよい。
【0024】
なお、下地合金層は、上述した下地合金無電解めっき浴を用いて、pH4.0〜7.0、浴温30〜50℃、浸漬時間5〜20分の条件で形成することが好ましい。
【0025】
また、下地合金層の厚みは、好ましくは0.01〜1.0μmであり、より好ましくは0.05〜0.2μmである。下地合金層の厚みを上記範囲とすることにより、下地合金層上に、無電解還元めっきにより良好に金めっき層を形成することができる。
【0026】
本発明においては、基材上に下地合金層を形成する際には、直接基材上に形成してもよいが、基材と下地合金層との密着性を向上させるために、改質層を設けてもよい。改質層としては、基材や下地合金層の特性に応じて適宜形成することができるが、下地合金層との密着性を向上させるという観点より、下地合金層を構成するM1−M2−M3合金のM1と同じ元素を含有する層とすることが好ましい。たとえば、下地合金層としてNi−Pd−P合金を採用する場合には、改質層としては、M1に相当する元素であるNiを含有するNi系の層とすることが好ましく、このようなNi系の層を、無電解還元めっきにより形成する場合には、Ni−Pめっき層などが挙げられる。なお、改質層は、1層のみでもよいし、2層以上としてもよく、また、2層以上とする場合には、各層を構成する成分は異なるものであってもよいし、あるいは、同じものであってもよい。また、改質層を形成する方法は特に限定されないが、電解めっき、無電解めっき、スパッタリングなどにより形成することができる。
【0027】
<金めっき層>
金めっき層は、下地合金層上に、直接、非シアン系の金めっき浴を用いて、無電解還元めっき処理を施すことにより形成される層である。
【0028】
本発明においては、上述したように、基材上にM1−M2−M3合金から構成される下地合金層を形成し、この上に、無電解還元めっきにより金めっき層を形成することにより、ピンホールのない良好な金めっき層を形成することができる。そのため、本発明によれば、このような金めっき層が形成された金めっき被覆材料を、電気接点材料などの各種材料に用いた場合に、耐食性および導電性の低下や、はんだ接合する際におけるはんだの剥離の発生を有効に防止することができる。加えて、本発明によれば、下地合金層として、M1−M2−M3合金から構成される層を形成することにより、非シアン系の金めっき浴を用いて、金めっき層を形成することができるため、作業環境や外部環境への負荷を低減することが可能となる。すなわち、シアン系の金めっき浴を用いた場合における、作業環境や外部環境への負荷の問題を生じないものである。
【0029】
金めっき層を形成する際に用いる、非シアン系の金めっき浴としては、無電解還元めっきに通常用いられる非シアン系の金めっき浴、すなわち、金塩として、塩化金酸塩、亜硫酸金塩、チオ硫酸金塩、チオリンゴ酸金塩などを1種以上含有するめっき浴を用いることができる。金めっき層は、上記の金塩を含む非シアン系の金めっき浴を用いて、pH7.0〜8.5、浴温55〜65℃の条件で形成することが好ましい。なお、金めっき層を形成する際における、金めっき浴への浸漬時間は特に限定されず、必要とする金めっき層の膜厚に応じて設定することができる。
【0030】
なお、基材上に金めっき層を形成する方法として、従来より、基材上に、直接、無電解置換金めっき処理を施して金めっき層を形成する方法が用いられている。しかしながら、このような無電解置換金めっき処理を施す方法においては、被めっき材である金属基材が局部的に溶出して、金属基材の表面に凹部が発生してしまう場合があり、これにより、発生した凹部に金が適切に析出せずに、形成される金めっき層の表面にピンホールが発生してしまうという問題がある。また、このように発生したピンホールを被覆するために、無電解置換金めっき処理によって金めっき層を形成した後、さらに無電解還元金めっき処理を施す方法も用いられているが、ピンホールを被覆するためには金めっき層の厚膜化が必要となり、コスト的に不利になるという問題もある。
【0031】
これに対し、本発明の無電解金めっき処理方法によれば、下地合金層として、M1−M2−M3合金から構成される層を形成することにより、無電解置換金めっき処理を施さずに、無電解還元めっき処理により、金めっき層を形成することにより、このようなピンホールの問題を解決できるものである。特に、本発明によれば、下地合金層として、M1−M2−M3合金から構成される層を形成することにより、無電解還元めっき処理により、金めっき層を良好に形成することができるため、上述したピンホールの問題を解決するために、金めっき層を厚膜化する必要もないものである。
【0032】
また、上述した特許文献1(特開2005−54267号公報)において開示されている無電解金めっき処理方法、すなわち、基材上に、無電解還元パラジウムめっき処理を施してパラジウムめっき層を形成した後、パラジウムめっき層上に無電解還元金めっき処理により金めっき層を形成する方法は、金めっき層を形成する際に、シアン系の金めっき浴を用いるものであり、そのため、毒性が高いシアン系の廃液を処理する必要が生じ、作業環境や外部環境への負荷が大きいという問題がある。
【0033】
これに対して、本発明の無電解金めっき処理方法によれば、非シアン系の金めっき浴を用いて金めっき層を形成することができるものであり、作業環境や外部環境への負荷を低減することが可能となる。
【0034】
なお、金めっき層の厚みは、好ましくは1〜200nmであり、より好ましくは5〜100nmである。金めっき層の厚みが薄すぎると、下地合金層上に均一な金めっき層が形成されず、金めっき被覆材料として用いる際に、耐食性、導電性、およびはんだ接合性が低下するおそれがある。一方、金めっき層の厚みが厚すぎると、コスト的に不利になる。
【0035】
本発明の無電解金めっき処理方法によれば、基材上にM1−M2−M3合金から構成される下地合金層を形成し、この上に、無電解還元めっきにより金めっき層を形成するものであるため、ピンホールのない良好な金めっき層を備え、優れた耐食性、導電性、およびはんだ接合性を有した金めっき被覆材料を提供することができる。このような本発明に係る金めっき被覆材料は、コネクタ、スイッチ、もしくはプリント配線基板などに用いられる電気接点材料として好適に用いられるものである。
【0036】
また、このような本発明に係る金めっき被覆材料は、燃料電池の部材である燃料電池用セパレータとして好適に用いられるものである。特に、燃料電池用セパレータは、その表面に燃料ガスや空気の流路として機能する凹凸が形成され、電極で発生した電子を集電する役割を担うものであるため、凹凸部分に良好に金めっき層が形成される必要があり、さらに耐食性、および導電性が要求されるものである。これに対し、本発明に係る金めっき被覆材料は、無電解還元めっきにより金めっき層が形成されるものであるため、凹凸部分に対しても良好に金めっき層が形成され、優れた耐食性、導電性を有するものであるため、このような燃料電池用セパレータとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0038】
<実施例1>
JIS H4000に規定された5000系の5086アルミニウム合金(Si:0.4重量%、Fe:0.5重量%、Cu:0.1重量%、Mn:0.2重量%、Mg:3.5重量%、Zn:0.25重量%、Cr:0.25重量%、Al:残部)上に、無電解めっきにより、表面の算術平均粗さRaが0.1nmであり、厚みが10μmであるNi−P層(Pの含有割合が12重量%)が形成された、総厚1.27mmの基材を準備した。次いで、準備した基材を脱脂した後、水洗し、Ni−Pめっき浴(奥野製薬工業社製、ICPニコロンGM−NP)を用いて、無電解めっきにより、基材上に、厚さ2μmのNi−Pめっき層(Pの含有割合が7重量%)を形成した。
【0039】
次いで、Ni−Pめっき層を形成した基材について、下記に示すPdめっき浴と、Ni−Pめっき浴とを、Pdめっき浴:Ni−Pめっき浴=3:1(体積比)の割合で混合しためっき浴を用いて、40℃、7分間の条件で、めっき処理を施すことにより、Ni−Pめっき層上に、厚さ0.79μmのNi−Pd−P合金層を形成した。なお、めっき浴中におけるパラジウム塩、還元剤、および錯化剤については、従来公知の化合物を用いた。
<Pdめっき浴>
パラジウム塩:Pdめっき浴中におけるPdが0.15重量%となる量
還元剤:1.8重量%
錯化剤:0.63重量%
水:97.2重量%
pH:5.8
<Ni−Pめっき浴>
ニッケル塩(塩化ニッケル):1.8重量%
還元剤(次亜燐酸ナトリウム):2.4重量%
錯化剤:2.4重量%
水:93.2重量%
pH:5.2
【0040】
次いで、Ni−Pめっき層、およびNi−Pd−P合金層を形成した基材について、非シアン系の無電解還元金めっき浴(奥野製薬工業社製、セルフゴールドOTK)を用いて、60℃、4分間の条件で、無電解還元めっき処理を施すことにより、Ni−Pd−P合金層上に、厚さ55nmの金めっき層を形成し、金めっき被覆材料を得た。
【0041】
次いで、得られた金めっき被覆材料について、誘導結合プラズマ発光分析装置(島津製作所社製、ICPE−9000)を用いて測定したところ、Ni−Pd−P合金層の組成は、Ni:Pd:P=34:42:20(原子%)であり、残部が不可避的不純物であった。
【0042】
金めっき層の外観評価、および金の未析出部の確認
そして、このようにして得られた金めっき被覆材料について、目視、および走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ社製、S−4800)にて観察し、得られた金めっき被覆材料の表面について、金めっき層の外観、および金の未析出部の有無を確認した。評価結果を表1に示す。
【0043】
金めっき層の密着性評価
次いで、金めっき被覆材料の金めっき層に対し、密着性の評価を行った。密着性の評価は、具体的には、金めっき被覆材料の金めっき層に粘着テープ(ニチバン社製、ナイスタック強力タイプ)を貼付した後、剥がすことにより剥離試験を実施し、その後、金めっき層の剥離状態を観察して、以下の基準で評価した。評価結果を表1に示す。
○:金めっき層の剥離が確認されなかった。
×:金めっき層の剥離が発生した。
【0044】
<実施例2>
上述したNi−Pd−P合金層に代えて、Ptめっき浴(日本高純度化学社製、IM−PT)と、上述したNi−Pd−P合金層を形成する際に用いたNi−Pめっき浴とを、Ptめっき浴:Ni−Pめっき浴=3:7(体積比)の割合で混合しためっき浴を用いて、35℃、10分間、pH4.0の条件で、めっき処理を施すことにより、Ni−Pめっき層上に、厚さ50nmのNi−Pt−P合金層を形成し、さらに、金めっき層を形成する際の、無電解還元めっき処理における浸漬時間などを変更することにより、厚さ5nmの金めっき層を形成した以外は、実施例1と同様にして金めっき被覆材料を得て、同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0045】
<実施例3>
上述したNi−Pd−P合金層に代えて、Pdめっき浴(奥野製薬工業社製、パラトップ)と、下記に示すCoめっき浴とを、Pdめっき浴:Coめっき浴=1:6(体積比)の割合で混合しためっき浴を用いて、60℃、10分間、pH8.5の条件で、めっき処理を施すことにより、Ni−Pめっき層上に、厚さ50nmのCo−Pd−P合金層を形成し、さらに、金めっき層を形成する際の、無電解還元めっき処理における浸漬時間などを変更することにより、厚さ5nmの金めっき層を形成した以外は、実施例1と同様にして金めっき被覆材料を得て、同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
<Coめっき浴>
コバルト塩(硫酸コバルト):10g/L
還元剤(次亜燐酸ナトリウム):25g/L
錯化剤(クエン酸3ナトリウム):30g/L
錯化剤(酒石酸ナトリウム):30g/L
錯化剤(グリシン):7.58g/L
酢酸鉛:0.3ppm
【0046】
<比較例1>
上述したNi−Pd−P合金層を形成せずに、Ni−Pめっき層上に、直接、非シアン系の無電解還元金めっき浴(奥野製薬工業社製、セルフゴールドOTK)を用いて、無電解還元めっき処理を施した以外は、実施例1と同様にして金めっき被覆材料を得て、同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0047】
<比較例2>
Ni−Pd−P合金層を形成する代わりに、Pdめっき浴(奥野製薬工業社製、パラトップ)を用いて、無電解めっきにより、Ni−Pめっき層上に厚さ0.5μmのパラジウムめっき層を形成し、形成したパラジウムめっき上に、直接、非シアン系の無電解還元金めっき浴(奥野製薬工業社製、セルフゴールドOTK)を用いて、無電解還元めっき処理を施した以外は、実施例1と同様にして金めっき被覆材料を得て、同様に評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1の結果より、本発明の無電解金めっき処理方法を用いて、下地合金層としてNi−Pd−P合金層、Ni−Pt−P合金層、Co−Pd−P合金層を形成し、形成した下地合金層上に、直接、非シアン系の金めっき浴を用いて、無電解還元めっきにより金めっき層を行った実施例1〜3においては、形成された金めっき層は、めっきムラもなく外観が良好であり、金の未析出部も確認されず、さらに密着性も良好であった。一方、このような下地合金層を形成していない比較例1においては、金めっき層が形成されず、そのため、金めっき層の密着性については測定することができなかった。また、下地合金層に代えてパラジウムめっき層を形成した比較例2においては、金めっき層は被覆率が極めて低く、加えて、密着性が低いという結果となった。
【0050】
ここで、実施例1〜3および比較例1,2の表面を走査型電子顕微鏡により観察して得た写真を
図1に示す。なお、
図1(A)は実施例1に、
図1(B)は実施例2に、
図1(C)は実施例3に、
図1(D)は比較例1に、
図1(E)は比較例2にそれぞれ対応する。実施例1〜3については、
図1(A)〜
図1(C)に示すように、金めっき層が均一に形成されていることが確認された。また、比較例1については、
図1(D)に示すように、Ni−Pめっき層上に金めっき層は形成されなかった。比較例2については、
図1(E)に示すように、金めっき層(
図1(E)における白い部分)がムラになって形成され、金の未析出部分が散見された。
【0051】
<実施例4〜6>
金めっき層を形成する際の、無電解還元めっきにおける浸漬時間などを変更して、形成される金めっき層の厚みを、36nm(実施例4)、49nm(実施例5)、および63nm(実施例6)とした以外は、実施例1と同様にして金めっき被覆材料を得た。
【0052】
<比較例3>
比較例3については、Ni−Pd−P合金層を形成せず、Ni−Pめっき層上に、直接、非シアン系の無電解置換金めっき浴(奥野製薬工業社製、フラッシュゴールドNC)を用いて、55℃、1分間の条件で無電解置換めっき処理を施し、次いで、非シアン系の無電解還元金めっき浴(奥野製薬工業社製、セルフゴールドOTK)を用いて、60℃、1分間の条件で無電解還元めっき処理を施し、厚さ35nmの金めっき層を形成した以外は、実施例1と同様にして金めっき被覆材料を得た。
【0053】
<比較例4〜6>
金めっき層を形成する際の、無電解還元めっきにおける浸漬時間などを変更して、形成される金めっき層の厚みを、78nm(比較例4)、132nm(比較例5)、および186nm(比較例6)とした以外は、比較例3と同様にして金めっき被覆材料を得た。
【0054】
金めっき層の耐食性評価
次いで、実施例4〜6、および比較例3〜6においては、得られた金めっき被覆材料に対し、耐食性の評価を行った。耐食性の評価は、具体的には、金めっき被覆材料を縦35mm、横20mmの面積が露出するようにポリイミドテープでマスキングし、90℃の硫酸水溶液(体積80ml、pH:1)に50時間浸漬した後、金めっき被覆材料を取り出し、金めっき被覆材料から硫酸水溶液中に溶出したイオン(Ni、Pd、P)の濃度を誘導結合プラズマ発光分析装置(島津製作所社製、ICPE−9000)により測定することにより行った。結果を
図2に示す。なお、
図2に示す結果は、比較例3における、金めっき層の厚みが35nmであるときのイオン(Ni、Pd、P)溶出濃度を100として、相対値で示している。
【0055】
図2の結果より、本発明の無電解金めっき処理方法を用いた実施例4〜6においては、金めっき層の厚みが薄い場合でも、イオンの溶出を有効に抑制することができ、耐食性に優れる結果となった。一方、下地合金層を形成していない比較例3〜6においては、金めっき層を厚く形成した場合であっても、イオンの溶出を抑制することができず、金めっき層の耐食性に劣る結果となった。