特許第6231990号(P6231990)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6231990超臨界CO2ポンプ−高圧バッファ用のドライガスシール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231990
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】超臨界CO2ポンプ−高圧バッファ用のドライガスシール
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/08 20060101AFI20171106BHJP
   F04D 29/10 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   F04D29/08 F
   F04D29/10 A
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-543863(P2014-543863)
(86)(22)【出願日】2012年11月27日
(65)【公表番号】特表2015-501903(P2015-501903A)
(43)【公表日】2015年1月19日
(86)【国際出願番号】EP2012073720
(87)【国際公開番号】WO2013083437
(87)【国際公開日】20130613
【審査請求日】2015年11月18日
(31)【優先権主張番号】CO2011A000057
(32)【優先日】2011年12月5日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】505347503
【氏名又は名称】ヌオーヴォ ピニォーネ ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】デル・ヴェスコヴォ,カルロ
(72)【発明者】
【氏名】リパ,ドナート・アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】シアンカレポーレ,マウリジオ
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−013645(JP,A)
【文献】 特開2010−159634(JP,A)
【文献】 特開2002−022875(JP,A)
【文献】 特開2011−231880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/08
F04D 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
停止運転状態中の、ポンプ又は遠心圧縮機と関連する、ドライガスシールの安全な使用状態を保証するためのシステムであって、
前記ポンプ又は遠心圧縮機から排出されて前記ドライガスシールに注入されるバリア流体のバリア流体圧力が予め設定された下限以下に降下したとき及び前記ポンプ又は遠心圧縮機が前記停止運転状態において調定圧力に曝されたときを判別するためのバリア流体圧力検出器と、
前記ドライガスシールの一次シールと二次シールの間のチャンバに接続された制御可能弁であって、フレアセーフ領域へのベントと関連する前記制御可能弁と、
前記チャンバ内に注入される中間バッファガスの圧力を昇圧させように構成されたブースタ圧縮機と、
前記バリア流体圧力に基づいて前記制御可能弁及び前記ブースタ圧縮機を作動させるように構成された制御システムと、
を含み、
前記ブースタ圧縮機は、前記バリア流体圧力が予め設定された圧力以下に降下したときに前記中間バッファガス圧力を前記予め設定された圧力まで昇圧させる、
システム。
【請求項2】
前記制御可能弁は、前記ドライガスシールに接続されたフレア管と関連している、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記バリア流体は二酸化炭素である、請求項1又は請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記中間バッファガスは窒素である、請求項1から3のいずれかに記載のシステム。
【請求項5】
前記中間バッファガスは乾燥空気である、請求項1から3のいずれかに記載のシステム。
【請求項6】
前記中間バッファガスの予め設定された圧力は、前記ドライガスシールと関連したシールされる領域の圧力よりも小さい、請求項1から5のいずれかに記載のシステム。
【請求項7】
前記中間バッファガスの予め設定された圧力は、前記ドライガスシールと関連したシールされる領域の圧力よりも大きい、請求項1から5のいずれかに記載のシステム。
【請求項8】
液化ガスポンプ又は遠心圧縮機が過渡運転状態にあるときに前記液化ガスポンプ又は遠心圧縮機と関連するドライガスシールの安全な使用状態を保証するための方法であって、
予め設定された値を下回るバリア流体圧力を検出するステップと、
前記ドライガスシールに接続された弁を閉鎖するステップと、
前記バリア流体圧力が予め設定された圧力以下に降下したときに、中間バッファガスと関連するブースタ圧縮機を始動し、前記中間バッファガスの圧力を予め設定された値に維持するステップと、
を含み、
前記バリア流体は前記液化ガスポンプ又は遠心圧縮機から排出されて前記ドライガスシールに注入され、
前記中間バッファガスは、前記ドライガスシールの一次シールと二次シールの間のチャンバに注入される、
方法。
【請求項9】
液化ガスポンプ又は遠心圧縮機と関連するドライガスシールを保護するためのシステムであって、
前記ドライガスシール内に注入されるバリア流体と関連する圧力が所定の下限以下に降下したときを検出する手段と、
前記ドライガスシールからフレアセーフ領域への流れを調整する手段と、
前記ドライガスシールの一次シールと二次シールの間のチャンバに注入される中間バッファガスの圧力を変化させる手段と、
一次及び二次シール間のチャンバ内の圧力を測定する手段と、
前記圧力測定手段と予め設定された圧力値に基づいて、前記流れ調整手段及び前記圧力変化手段を制御する手段と、
を含み、
前記圧力変化手段は、前記バリア流体と関連する圧力が予め設定された圧力以下に降下したときに前記中間バッファガス圧力を前記予め設定された圧力まで昇圧させる、
システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、圧縮機、ポンプ用のドライガスシールに関し、より詳細には、停止状態中の一次ドライガスシールの健全性の保護に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機軸シールへのドライガスシールの適用は、様々な理由から近年劇的に増加している。遠心圧縮機にドライガスシールを使用することによって提供される利点には、圧縮機の信頼性とそれに伴う予定外の休止時間の削減の向上、圧縮機の中に漏れるシールオイルとそれに伴うプロセス汚染の除去、シールオイルに混入し、脱気タンクによる酸性シールオイルの再生を必要とするプロセスガスの除去、酸性シールオイルの交換及び処理費用の排除、ドライガスシールの効率の向上に基づく運転費の削減、単純なドライガスシールシステムに対する維持費の削減、及びプロセスガスの排出削減がある。
【0003】
ドライガスシールの設置は、液化ガスと関連する遠心ポンプにも取り入れることが可能である。遠心圧縮機及びポンプの稼働状態でのドライガスシールの多くの利点は、スタートアップ、シャットダウン、及び低速アイドルの過渡期のような他の運転状態の遠心圧縮機及びポンプにドライガスシールを使用することに関連する問題をわからなくする。ドライガスシールがこれらの期間に問題になるのは、粒状又は液状物質によるドライガスシールの汚染を防ぐためにより高い吸気圧力バリアガスを必要とするからである。この汚染は、例えば、未処理のプロセスガスや軸受潤滑油から起こる可能性がある。
【0004】
ドライガスシールを利用した典型的な遠心圧縮機は、圧縮機の高圧吐出部からのプロセスガスの一部を迂回させてから、濾過し乾燥させてガスの圧力を低下させることになる。そして、クリーンで乾燥したバリアガスが、圧縮機の吸気圧力よりも若干高い圧力で一次シールの上流に注入される。高圧のバリアガスは、汚染物質が回転しているドライガスシール面の狭い公差範囲に浸潤して、ドライガスシールリングの早期故障を引き起こす可能性がある、未処理のプロセスガスのドライガスシールへの侵入を防ぐ。
【0005】
運転過渡期の間、圧縮機の吐出部からのプロセスガスの圧力は、圧縮機の吸気圧力と等しくなる点まで低下する。従って、圧縮機の吐出部からの流れをバリア流体として使用することは不可能になる。シールチャンバにおいて、一次シールの上流には、圧縮機又はポンプの吸気圧力に非常に近い圧力が存在する。一次シールの下流には、バッファ流体(一般的に、4〜7バールの圧力で利用可能な窒素又は空気)によってもたらされた圧力が存在する。更に、高圧で未処理のプロセスガスは、一次ドライガスシールを透過して、粒状及び液状汚染物質を運搬する。この問題は、プロセスフローとしての二酸化炭素(CO2)によって強調される。ドライガスシールリングの狭い公差範囲を通る二酸化炭素(CO2)の膨張によって、シールリング上に氷が形成されることがある。その後、圧縮機が正常運転状態に戻ると、ドライガスシールリング間の汚染物質が、ドライガスシールの早期摩耗及び故障を引き起こすことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第1326037号公報
【発明の概要】
【0007】
この問題を解決するための従来の試みは、プロセス流体用のブースタを設けて、バリアガスを圧縮機又はポンプの正常運転中に与えられた状態に維持することに焦点を合わせていた。この解決策には、濾過及び加熱に関するプロセス流体の同様の処理がドライガスシールの汚染を防ぐことが必要である。従って、過渡運転状態中のドライガスシールを通しての、プロセス流体の逆流、及びそれに伴う汚染を防ぐためのシステム及び方法に対する市場圧力が高まっている。
【0008】
これらの例示的実施形態の説明によるシステム及び方法は、ポンプの吐出部からの流体圧力がドライガスシールによってシールされる領域の吸気圧力と等しくなる運転状態(即ち、スタートアップ、シャットダウン及び低速アイドル)中の中間バッファガスの圧力を昇圧させるための小型の二次圧縮機を設けることによって、上記の要求に応えている。単純制御システムが、ドライガスシール内のバリアガス圧力の降下を検出する(即ち、トリガ信号は、単にターボ機械の「非稼働」状態であってよいがこれに限らない)と共に、ドライガスシールとフレアセーフ領域の間の弁を閉鎖し、ドライガスシールによってシールされる領域のプロセス流体の圧力に基づいて予め設定された圧力まで中間バッファガスを昇圧させるように二次圧縮機を始動することによってドライガスシールをアイシングから保護する。
【0009】
停止状態中のドライガスシールの安全な使用状態を保証するためのシステムの例示的実施形態によれば、バリア流体圧力測定システムが、バリア流体圧力の降下を検出する。本例示的実施形態には、一次及び二次シール間のチャンバをフレアと接続する弁が続く。更に、本例示的実施形態には、一次及び二次シール間のチャンバ内に注入される中間バッファガスの圧力を昇圧させるためのブースタ圧縮機が続く。次に、本例示的実施形態は、一次及び二次シール間の測定圧力に基づいてブースタ圧縮機を作動させるための制御システムを備えている。
【0010】
別の例示的実施形態によれば、ポンプが過渡運転状態である時に液化ガスポンプ上に設置されたドライガスシールの安全な使用状態を保証するための方法が提示される。この例示的な方法の実施形態の第1のステップを続けると、本方法は、予め設定された値を下回るバリアガス圧力を検出する。この例示的な方法の実施形態の次のステップにおいて、本方法は、ドライガスシールに接続された弁を閉鎖する。更に、この例示的な方法の実施形態では、中間バッファガスと関連するブースタ圧縮機を始動し、上記チャンバ圧力を予め設定された値に維持する。
【0011】
更なる例示的実施形態では、液化ガスポンプドライガスシール保護システムが説明される。本例示的実施形態は、バリア流体の圧力が下限以下に降下した時を検出する手段を含む。本例示的実施形態は、ドライガスシールからフレアセーフ領域への流れを調整する手段を更に含む。引き続き本例示的実施形態には、ドライガスシール内に注入された中間バッファガスの圧力を上昇させる手段が含まれる。引き続き本例示的実施形態には、バッファガスの圧力を測定する手段が含まれる。次に本例示記的実施形態には、圧力測定手段と予め設定された圧力値に基づいて、流れ調整手段及び圧力上昇手段を制御する手段が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
添付図面は、例示的実施形態を示している。
図1】運転状態のドライガスシールと関連のガスサポートシステムの従来技術の断面図である。
図2】停止状態のドライガスシールと関連のガスサポートシステムの従来技術の断面図である。
図3】運転状態のドライガスシールと関連のガスサポートシステムの例示的実施形態の断面図である。
図4】停止状態のドライガスシールと関連のガスサポートシステムの例示的実施形態の断面図である。
図5】ポンプが運転状態にある時に一次ドライガスシールを通るガス漏れ流を示す例示的実施形態の圧力−エンタルピー図である。
図6】ポンプが停止状態にある時に一次ドライガスシールを通るガス漏れ流を示す従来技術の圧力−エンタルピー図である。
図7】ポンプが停止状態にある時に一次ドライガスシールを通るガス漏れ流を示す例示的実施形態の圧力−エンタルピー図である。
図8】一次ドライガスシールの汚染を防ぐために一次及び二次ドライガスシール間のチャンバ内で十分な圧力を維持するための方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
例示的実施形態の以下の詳細な説明は、添付図面を参照する。異なる図面の同じ参照番号は同じ又は類似の要素を特定する。また、以下の詳細な説明は本発明を限定しない。その代わりに、本発明の技術的範囲は添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0014】
図1に目を向けると、二酸化炭素(CO2)ポンプ用のドライガスシール(DGS)システム100の従来技術の例示的実施形態の詳細図が示されている。なお、この例示的実施形態では、例示的な二酸化炭素(CO2)の代わりに超臨界状態のあらゆる流体をバリア流体として使用することができる。この例示的実施形態は、運転状態中のドライガスシールの挙動を表し、シールされる関連領域を備えたCO2ポンプ102と、ドライガスシールの一次(内側)シール104と、ドライガスシールの二次(外側)シール106と、プロセス流体フィルタ108と、プロセス流体加熱器110と、フレアセーフ領域への流れを制御するための弁及び制御要素112と、中間バッファガスフィルタ114と、中間バッファガス116と、バリア流体118と、減圧弁120と、一次ドライガスシールチャンバ122と、二次ドライガスシールチャンバ124とを含む。
【0015】
全体的に、この例示的な従来技術の実施形態は、バリア流体として使用されているポンプ吐出部からのプロセス流体として、例えば、二酸化炭素を示している。バリア流体の圧力は弁120によって低下させられ、バリア流体は加熱器110によって加熱される。引き続きこの例示的な従来技術の実施形態では、バリア流体は、フィルタ108によって濾過され、一次ドライガスシールチャンバ122内に注入される。この例示的実施形態では、バリア流体の圧力がポンプの吸気圧力よりも高いため、未処理のプロセスガスの一次シール104への侵入が防がれる。
【0016】
引き続きこの例示的実施形態では、二酸化炭素(CO2)バリア流体が、一部は内部ラビリンスを通ってポンプに流れ込み、一部は一次ドライガスシールを通って一次ベントに流れる。次にこの例示的実施形態では、ポンプに流れ込んだ二酸化炭素(CO2)が、二酸化炭素(CO2)の臨界圧力よりも高い吸気圧力に達するため、アイシング又はフラッシングに見舞われなくなる。更にこの例示的実施形態では、一次シールを通って一次ベントに流れる二酸化炭素(CO2)は、P1からバッファガスによってもたらされる値(通常は、4〜7バールのN2/空気)まで膨張する。なお、この例示的実施形態では、二酸化炭素(CO2)バリア流体の温度は、膨張中、アイシング又はフラッシングのリスクを避けるために、加熱器によって、十分に高い値に維持しなければならない。
【0017】
引き続きこの例示的実施形態では、中間バッファガス116(例えば、窒素又は乾燥空気)がフィルタ114によって濾過され、二次ドライガスシールチャンバ124内に注入される。なお、この例示的実施形態では、窒素又は空気以外の気体をバッファガスとして使用することができる。この例示的実施形態では、中間バッファガス116の圧力は、一次シール104を通過するバリアガスの圧力よりも高く、バリアガスが二次シール106に到達するのを防ぐ。この例示的実施形態では、二次ドライガスシールチャンバ124内のバリアガス118と中間バッファガス116の混合気が弁112を通過し、フレアセーフ領域に流れる。
【0018】
次に図2に目を向けると、二酸化炭素(CO2)ポンプ用のドライガスシール(DGS)システム200の従来技術の例示的実施形態の詳細図が示されている。従来技術の例示的実施形態は、過渡(例えば、停止)状態中のドライガスシールの挙動を表し、シールされる関連領域を備えたCO2ポンプ202と、ドライガスシールの一次(内側)シール204と、ドライガスシールの二次(外側)シール206と、プロセス流体フィルタ208と、プロセス流体加熱器210と、フレアセーフ領域への流れを制御するための弁及び制御要素212と、中間バッファガスフィルタ214と、中間バッファガス216と、バリア流体218と、減圧弁220と、一次ドライガスシールチャンバ222と、二次ドライガスシールチャンバ224とを含む。
【0019】
引き続きこの従来技術の例示的実施形態では、CO2ポンプが停止状態にあるため、ポンプからの吐出圧力はシールされる領域202内の圧力と等しくなる。ポンプが停止状態にある時、ポンプ内の圧力が吸気圧力と非常に近い、「調定圧力」として知られる、一定の値に到達する。なお、この従来技術の例示的実施形態では、停止状態の結果、ポンプ吐出部からのプロセス流体が、未処理のプロセス流体のシールされる領域202から一次シール204内への流れを防ぐためのバリア流体としての機能を果たさなくなることがある。更にこの従来技術の例示的実施形態では、未処理のプロセス流体が加熱又は濾過されないため、汚染物質が一次シール204に入って、一次シール204内にアイシングが発生する可能性がある。なお、更にこの従来技術の例示的実施形態では、未処理のプロセス流体の圧力が中間バッファガス216の圧力よりも大きいため、中間バッファガス216が一次ガスシール204を通る未処理のプロセス流体の流れを防ぐことができない。
【0020】
続いて図3では、二酸化炭素(CO2)ポンプ用のドライガスシール(DGS)システム300の例示的実施形態の詳細図が示されている。本例示的実施形態は、運転(例えば、稼働)状態中のドライガスシールの挙動を表し、シールされる関連領域を備えたCO2ポンプ302と、ドライガスシールの一次(内側)シール304と、ドライガスシールの二次(外側)シール306と、フレア弁312と、フレアセーフ領域への流れを制御するための制御要素と、中間バッファガスフィルタ314と、中間バッファガス316と、バリア流体318と、一次ドライガスシールチャンバ322と、二次ドライガスシールチャンバ324と、ブースタ圧縮機326と、ブースタ圧縮機326の吐出弁328と、ブースタ圧縮機326の吸気弁330と、ブースタ圧縮機326のバイパス弁332とを含む。
【0021】
非限定的な例示的実施形態では、ポンプが稼働状態にある時は、シールされる領域302内の圧力が、ポンプ吐出部から供給されたバリア流体318の圧力よりも低くなり、バリア流体圧力がシールされる領域の圧力よりも高い時は、フレア弁312とブースタ圧縮機326のバイパス弁332が開放し、ブースタ圧縮機326の吐出弁328とブースタ圧縮機326の吸気弁330が閉鎖して、ブースタ圧縮機326が作動停止する。引き続き本例示的実施形態では、バリア流体の圧力が、プロセス流体が一次シール304を通って流れないようにし、一次シール304の汚染及びアイシングを防ぐ。
【0022】
次に図4に目を向けると、二酸化炭素(CO2)ポンプ用のドライガスシール(DGS)システム400の例示的実施形態の詳細図が示されている。本例示的実施形態は、過渡(例えば、停止)状態中のドライガスシールの挙動を表し、シールされる関連領域を備えたCO2ポンプ402と、ドライガスシールの一次(内側)シール404と、ドライガスシールの二次(外側)シール406と、弁412と、フレアセーフ領域への流れを制御するための制御要素と、中間バッファガスフィルタ414と、中間バッファガス416と、バリア流体418と、一次ドライガスシールチャンバ422と、二次ドライガスシールチャンバ424と、ブースタ圧縮機426と、ブースタ圧縮機426の吐出弁428と、ブースタ圧縮機426の吸気弁430と、ブースタ圧縮機426のバイパス弁432とを含む。
【0023】
非限定的な例示的実施形態では、ポンプ又は圧縮機の「非稼働」(トリップ、シャットダウン、スタートアップ、加圧停止等の)状態において、ポンプ内の圧力は均一で、調定圧力と等しく、バリア流体として使用することができなくなる。本例示的実施形態の状態では、フレア弁412とブースタ圧縮機426のバイパス弁432が閉鎖され、ブースタ圧縮機426の吐出弁428とブースタ圧縮機426の吸気弁430が開放されて、ブースタ圧縮機426が作動する。なお、本例示的実施形態では、ブースタ圧縮機が、二次ドライガスシールチャンバ424内に注入される中間バッファガス416の圧力を、シールされる領域402内の圧力をほんの少し下回る所定の圧力(P3)まで上昇させる。引き続き本例示的実施形態では、中間バッファガスの上昇した圧力が、一次シール404を通るプロセスガスの流れを減少させ、一次シール404の汚染及びアイシングを防ぐ。本例示的実施形態のブースタ圧縮機426は不連続的に作動し、オン/オフサイクルを実行する。次に、本例示的実施形態のブースタ圧縮機426がオンにされて、二次シールチャンバ424内の圧力が圧力P3に達するまで上昇し、ブースタ圧縮機426がオフにされる。本例示的実施形態では引き続き、二次シール406を通るバッファガスの漏れのため、二次シールチャンバ424内の圧力がゆっくりと降下する。引き続き本例示的実施形態では、一次シール404と二次シール406の間のチャンバ424内の圧力が所定の値(P3−dP3)以下に降下すると、ブースタ圧縮機426がオンにされる。なお、更に本例示的実施形態では、ポンプが運転状態に戻り、バリア流体418がシールされる領域402の圧力以上に上昇すると、ブースタ圧縮機426が最終的にオフにされる。
【0024】
次に図5を見てみると、圧力−エンタルピー図500において、ポンプが稼働状態にある時の、制御弁120を通るバリア流体の減圧、加熱器110によるバリア流体の温度上昇、及び一次シールから一次ベントへの被処理漏れ流の膨張が示されている。本例示的実施形態における温度は、膨張中のフラッシング及びアイシングを避けるのに十分な高さである。
【0025】
続いて図6を参照すると、停止運転状態にある従来技術の例示的実施形態のドライガスシールシステムの二酸化炭素圧力−エンタルピー図600が示されている。この従来技術の例示的実施形態は、停止状態中の一次シール604を通して生じる圧力差602を示している。この従来技術の例示的実施形態の別の側面では、エンタルピー図600は、一次シールを通る未処理の二酸化炭素の漏れ流の膨張604を示しており、二酸化炭素に関する図の三重点606及び二相領域を横断している。従って、この従来技術の例示的実施形態は、一次シールの中及び周囲でアイシングが発生することになり、一次シールの早期故障を招くことになることを示している。
【0026】
次に図7に目を向けると、停止運転状態にあるドライガスシールシステムの二酸化炭素圧力−エンタルピー図700の例示的実施形態が示されている。本例示的実施形態は、停止状態中の一次シールを通して生じる圧力差702を示している。本例示的実施形態の別の側面では、エンタルピー図700は、一次シールを通る未処理の二酸化炭素の漏れ流の膨張704を示しており、二酸化炭素に関する図の三重点706も二相領域も横断していない。従って、本例示的実施形態は、一次シールの中及び周囲でアイシングが発生しないことを示している。
【0027】
続いて図8を参照すると、ポンプ又は圧縮機が停止状態にある時の、ドライガスシールの安全な使用状態を保証すると共に、フラッシング及び/又はアイシングを防ぐための例示的な方法の実施形態800が示されている。この例示的な方法の実施形態はステップ802で始まり、一次シールの上流のチャンバ内のバリア流体の圧力が測定される。この例示的な方法の実施形態では、測定されたバリア流体圧力が予め設定された値と比較され、測定されたバリア流体圧力が予め設定された値を下回る場合は表示が生成される。
【0028】
次に、例示的な方法の実施形態のステップ804では、バリア流体圧力が予め設定された値を下回る表示が提示された場合、ドライガスシールに関連する弁とフレアセーフ領域が閉鎖される。この例示的な方法の実施形態の1つの態様では、弁は、二次シールを通過しない限り、一次シールと二次シールの間のチャンバからのガスの流出を防ぐ。この例示的な方法の実施形態の別の態様では、弁を閉鎖することによって、所望の圧力を維持するために必要な中間バッファガスの量を減少させる。更にこの例示的な方法の実施形態では、中間バッファガスは、窒素又は乾燥空気であってよいがこれに限らない。
【0029】
次に例示的な方法の実施形態のステップ806では、ブースタ圧縮機が始動されて、一次シールと二次シールの間のチャンバ内に注入される中間バッファガスの圧力を昇圧させる。この例示的な方法の実施形態の別の態様では、ブースタ圧縮機は、ドライガスシールによってシールされる領域内のプロセス流体の圧力の値に近い、チャンバ圧力に対して予め設定された値に基づいて、圧力を維持するように作動する。引き続きこの例示的な方法の実施形態では、予め設定された値を、ドライガスシールによってシールされる領域内のプロセス流体の圧力の変化に基づいて、動的に変化させることができる。なお、この例示的な方法の実施形態では、プロセス流体は二酸化炭素であってよいがこれに限らない。
【0030】
引き続きこの例示的な方法の実施形態では、ステップ808において、一次シールと二次シールの間のチャンバ内の圧力の上昇が、圧力が規定圧力(P3)に達するまで監視される。次に、この例示的な方法の実施形態のステップ810では、圧力が圧力P3に達すると、ブースタ圧縮機がオフにされる。更に、この例示的な方法の実施形態のステップ812では、圧力が規定の低閾値に下がるまで監視されて、本方法はステップ806に戻り、ブースタ圧縮機を再始動する。なお、この例示的な方法の実施形態は、ポンプ/圧縮機が稼働状態に戻るまでサイクルをこのようにして継続する。
【0031】
開示した例示的実施形態は、少なくとも、ドライガスシールの一次シールを通って膨張するプロセス流体によって引き起こされるアイシング状態からドライガスシールを保護するためのシステム及び方法を提供する。この説明は、本発明を限定するようには意図されていないことを理解されたい。それとは逆に、例示的実施形態は、特許請求の範囲によって定義される本発明の技術的思想及び技術的範囲に含まれる代替例、変形例、及び等価物を対象として含むように意図されている。更に、例示的実施形態の詳細な説明では、特許請求する発明の包括的理解を提供するために、多くの具体的な詳細が記載されている。しかしながら、当業者であれば、そのような具体的な詳細なしで様々な実施形態を実施できることを理解するであろう。
【0032】
それらの実施形態では、本発明の例示的実施形態の特徴及び要素が特定の組み合わせで説明されているが、各々の特徴又は要素は、実施形態のその他の特徴及び要素なしで単独で、或いは本明細書で開示されたその他の特徴及び要素の有無にかかわらず様々な組み合わせで用いることができる。
【0033】
本明細書は、開示された本発明の実施例を使用して、あらゆる装置又はシステムを製作且つ使用すること及びあらゆる組み込まれた方法を実行することを含む本発明の実施を当業者が行うのを可能にする。本発明の特許性がある技術的範囲は、特許請求の範囲によって定義され、当業者が想到するその他の実施例を含むことができる。そのようなその他の実施例は、特許請求の範囲の技術的範囲内に属するものとする。
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