(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231998
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】ガスケット一体型セラミックオリフィスプレート
(51)【国際特許分類】
G01F 1/42 20060101AFI20171106BHJP
F16L 55/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
G01F1/42 A
G01F1/42 D
F16L55/00 K
【請求項の数】15
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-559556(P2014-559556)
(86)(22)【出願日】2014年1月24日
(86)【国際出願番号】JP2014000350
(87)【国際公開番号】WO2014119265
(87)【国際公開日】20140807
【審査請求日】2016年5月12日
(31)【優先権主張番号】特願2013-18039(P2013-18039)
(32)【優先日】2013年2月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100129540
【弁理士】
【氏名又は名称】谷田 龍一
(74)【代理人】
【識別番号】100082474
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 丈夫
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 正明
(72)【発明者】
【氏名】土肥 亮介
(72)【発明者】
【氏名】池田 信一
(72)【発明者】
【氏名】西野 功二
【審査官】
山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−151698(JP,A)
【文献】
特開昭61−041098(JP,A)
【文献】
特開平08−061416(JP,A)
【文献】
特開2009−115138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/42
G01F 15/00
G01F 15/12
F16L 55/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスの流量制御を行うのに用いるガスケット一体型セラミックオリフィスプレートであって、前記ガスケット一体型セラミックオリフィスプレートは、嵌合用突部を備え且つ中心部に貫通状の通路を設けたステンレス材製の第1のオリフィスベースと、嵌合用凹部を備え且つ中心部に前記第1のオリフィスベースの通路に連通する貫通状の通路を設けたステンレス材製の第2のオリフィスベースとを組合せ、前記第1のオリフィスベースと前記第2のオリフィスベースの端面間にセラミック製オリフィスプレートを気密状に挿着すると共に、前記第1のオリフィスベース及び前記第2のオリフィスベースの其々の外側端面をガスケットのシール面としたことを特徴とするガスケット一体型セラミックオリフィスプレート。
【請求項2】
前記第1及び第2のオリフィスベースのうちの一方のオリフィスベースの外径を他方のオリフィスベースの外径よりも大径とすると共に、当該一方のオリフィスベースの内側端面の外周縁部分をシール面とした請求項1に記載のガスケット一体型セラミックオリフィスプレート。
【請求項3】
前記セラミック製オリフィスプレートを、前記第1のオリフィスベースの通路及び前記第2のオリフィスベースの通路に連通するオリフィスを中心に有し、前記第1のオリフィスベースの嵌合用突部と前記第2のオリフィスベースの嵌合用凹部との間に気密状に挿着した請求項1に記載のガスケット一体型セラミックオリフィスプレート。
【請求項4】
前記セラミック製オリフィスプレートをジルコニアを含有するセラミック製とし、その厚みを500〜1000μm、孔径を10〜500μmとすると共に、前記嵌合用突部を前記嵌合用凹部内へ6〜10kNの圧入力により圧入し、前記嵌合用突部と前記嵌合用凹部との間に前記セラミック製オリフィスプレートを気密状に挿着した請求項3に記載のガスケット一体型セラミックオリフィスプレート。
【請求項5】
円形状の前記セラミック製オリフィスプレートの両面を研磨鏡面とすると共に、該セラミック製オリフィスプレートに当接する前記嵌合用突部及び前記嵌合用凹部の接触面を研磨鏡面とした請求項4に記載のガスケット一体型セラミックオリフィスプレート。
【請求項6】
ガスの流量制御を行うのに用いるガスケット一体型セラミックオリフィスプレートであって、前記ガスケット一体型セラミックオリフィスプレートは、内側端面に嵌合用突部を備え中心部に貫通状の通路を有するステンレス材製の第1のオリフィスベースと、内側端面に嵌合用凹部を備え中心部に貫通状の通路を有するステンレス材製の第2のオリフィスベースと、中心部に前記第1及び第2のオリフィスベースの通路に連通する貫通状の通路を有し、一端面に前記第1のオリフィスベースの嵌合用突部が気密状に嵌合される嵌合用凹部を備えると共に、他端面に前記第2のオリフィスベースの嵌合用凹部に気密状に嵌合される嵌合用突部を備えたステンレス材製の中間オリフィスベースと、前記第1のオリフィスベースと前記中間オリフィスベースとの間に気密状に挿着され中心部にオリフィスが形成された第1のセラミック製オリフィスプレートと、前記中間オリフィスベースと前記第2のオリフィスベースとの間に気密状に挿着され中心部にオリフィスが形成された第2のセラミック製オリフィスプレートとを備え、流体通路に配設されて前記第1及び第2のオリフィスベースの外側端面を夫々シール面とすると共に、前記第1及び第2のオリフィスベースのうちの一方のオリフィスベースの外径を他方のオリフィスベース及び前記中間オリフィスベースの外径よりも大径にして該一方のオリフィスベースの内側端面の外周縁部分をシール面とし、又、前記中間オリフィスベースに該中間オリフィスベースの通路に連通する分流通路を形成したことを特徴とするガスケット一体型セラミックオリフィスプレート。
【請求項7】
前記第1のセラミック製オリフィスプレートを、中心部に前記第1のオリフィスベースの通路及び前記中間オリフィスベースの通路に連通するオリフィスを有し、前記第1のオリフィスベースの嵌合用突部と前記中間オリフィスベースの嵌合用凹部との間に気密状に挿着した請求項6に記載のガスケット一体型セラミックオリフィスプレート。
【請求項8】
前記第2のセラミック製オリフィスプレートを、中心部に前記中間オリフィスベースの通路及び凹形の前記第2のオリフィスベースの通路に連通するオリフィスを有し、前記中間オリフィスベースの嵌合用突部と凹形の前記第2のオリフィスベースの嵌合用凹部との間に気密状に挿着した請求項6に記載のガスケット一体型セラミックオリフィスプレート。
【請求項9】
前記第1のセラミック製オリフィスプレートをジルコニアを含有するセラミック製とし、その厚みを500〜1000μm、孔径を10〜500μmとすると共に、前記第1のオリフィスベースの嵌合用突部を前記中間オリフィスベースの嵌合用凹部内へ6〜10kNの圧入力により圧入し、前記第1のオリフィスベースの嵌合用突部と前記中間オリフィスベースの嵌合用凹部との間に前記第1のセラミック製オリフィスプレートを気密状に挿着した請求項7に記載のガスケット一体型セラミックオリフィスプレート。
【請求項10】
前記第2のセラミック製オリフィスプレートをジルコニアを含有するセラミック製とし、その厚みを500〜1000μm、孔径を10〜500μmとすると共に、前記中間オリフィスベースの嵌合用突部を前記第2のオリフィスベースの嵌合用凹部内へ6〜10kNの圧入力により圧入し、前記中間オリフィスベースの嵌合用突部と前記第2のオリフィスベースの嵌合用凹部との間に前記第2のセラミック製オリフィスプレートを気密状に挿着した請求項8に記載のガスケット一体型セラミックオリフィスプレート。
【請求項11】
前記第1及び第2のオリフィスプレートのうち、上流側に位置するオリフィスプレートのオリフィスを下流側に位置するオリフィスプレートのオリフィスより小径にした請求項6に記載のガスケット一体型セラミックオリフィスプレート。
【請求項12】
円形状の前記第1及び第2のセラミック製オリフィスプレートの其々の両面を研磨鏡面とすると共に、該第1及び第2のセラミック製オリフィスプレートに当接する前記第1のオリフィスベースの嵌合用突部及び前記第2のオリフィスベースの嵌合用凹部の接触面を研磨鏡面とした請求項6に記載のガスケット一体型セラミックオリフィスプレート。
【請求項13】
ガスの流量制御を行うのに用いるガスケット一体型セラミックオリフィスプレートであって、前記ガスケット一体型セラミックオリフィスプレートは、両側面に嵌合用凹部を備え且つ中心部に貫通状の通路を有するステンレス材製の第3のオリフィスベースと、嵌合用突部を備え且つ中心部に貫通状の通路を有すると共に、前記両嵌合用凹部内へ対向状に挿入するステンレス材製の第4のオリフィスベース及び第5のオリフィスベースと、前記第3のオリフィスベースの通路内へ装着したセラミック製オリフィスプレートとを備え、前記嵌合用凹部内へ圧入した前記第4及び第5のオリフィスベースの先端面間で、前記第3のオリフィスベースの通路内へ装着した前記セラミック製オリフィスプレートを気密状に挟着すると共に、前記第4及び第5のオリフィスベースの外側端面をガスケットのシール面としたことを特徴とするガスケット一体型セラミックオリフィスプレート。
【請求項14】
前記第4及び第5のオリフィスベースの前記嵌合用突部の外周面に環状突起を設けると共に、該嵌合用突部の先端面に環状突起を設け、前記嵌合用突部の外周面の環状突起により前記嵌合用突部と前記嵌合用凹部との間の気密性を高めると共に、前記嵌合用突部の先端面の環状突起により前記嵌合用突部と前記セラミック製オリフィスプレートとの間の気密性を高める構成とした請求項13に記載のガスケット一体型セラミックオリフィスプレート。
【請求項15】
前記セラミック製オリフィスプレートを厚い円盤状のジルコニアを含有するセラミック製とすると共に、前記両嵌合用突部を前記両嵌合用凹部内へ6〜10kNの圧入力により圧入し、前記両嵌合用突部の先端面間に前記セラミック製オリフィスプレートを気密状に挿着した請求項13に記載のガスケット一体型セラミックオリフィスプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御装置等に使用するガスケット一体型オリフィスプレートの改良に関する。より具体的には、金属薄板製オリフィスプレートに代えて高精度な孔径を有するセラミック薄板製オリフィスプレートを用いた高耐食性のガスケット一体型セラミックオリフィスプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従前から、オリフィスプレートとしては、金属薄板に機械加工等によってオリフィスを穿設し、このオリフィスを穿設した金属薄板を、配管路の継手部や機器と管路の接続部等の適宜箇所に於いて管路内へ挟み込み、直接にこれを締付け固定する構造のものが多く使用されて来た。
しかし、上記のように直接に締付け固定する形式のオリフィスプレートは、締付け時に金属薄板が変形することがあるため、金属薄板の厚さを大幅に小さくすることができない。そのため、所望の形態及び孔径を得やすい薄板を用いて、高精度な流量特性のオリフィスプレートを容易に製造することができないと云う問題がある。
【0003】
本願出願人は、先に、嵌合用突部を有するオリフィスベースと嵌合用凹部を有するオリフィスベースの内側端面の間に厚さ500〜1000μmの極薄金属板を気密状に挟着すると共に、両オリフィスベースの外側端面をガスケットのシール面とした構成のガスケット一体型オリフィスプレートを開発し、これを公開している(特開2007−057474号、特開2010−151698号)。
【0004】
図16乃至
図18は、上記極薄金属板を用いたガスケット一体型オリフィスプレート38の一例を示すものであり、嵌合用突部38a
1を備えたオリフィスベース38aと嵌合用凹部38b
1を備えたオリフィスベース38bとを組合せ、両者の内側端面間に金属薄板製のオリフィスプレート38cを気密状に挟着すると共に、両オリフィスベース38a、38bの両端面38a
3、38b
3または38a
4、38b
4をガスケットのシール面としたものである。
【0005】
また、
図18は、嵌合用凹部38b
1を備えたオリフィスベース38bの外径を嵌合用突部38a
1を備えたオリフィスベース38aの外径よりも大とすると共にその外周部の内側端面38dをもシール面としたものである。
【0006】
即ち、当該ガスケット一体型オリフィスプレート38は、例えば
図18に示すように、バルブボディ7の下流側端面に形成したオリフィス収納用凹所7c内へ挿入され、出口側ブロック10をバルブボディ7へ押し圧固定することにより、各シール面38a
3,38b
3,38dにてガスケット一体型オリフィスプレートの機密性が保持されている。
尚、
図18に於いて、7d、7e、10dは各シール面へ食い込んでシール機能を高めるための環状突起である。
【0007】
上記
図16及び
図18のガスケット一体型オリフィスプレート38は、オリフィスプレート38cを両オリフィスベース38a、38b間に気密状に嵌合挟着させる構成としているため、極薄い金属プレート或いは金属皮膜であっても変形等を生ずることなく両オリフィスベース38a、38b間に挟持することがでる。そのため、高精度なオリフィスを有するオリフィスプレート38cの使用が可能になると共に、両オリフィスベースの外側端をシール面として利用することにより、ガスケット一体型オリフィスプレート38そのものをガスケットとして緊密に管路等へ締込み固定することができ、優れた実用的効用を奏するものである。
【0008】
また、
図18のガスケット一体型オリフィスプレート38は、凸形のオリフィスベース38aの外側端面38a
3と凹形のオリフィスベース38bの外側端面38b
3及び内側端面の外周部38dを夫々シール面としているため、ガスケット一体型オリフィスプレートを緊密に流体通路に締め込み固定することができると共に、三個所のシール面に依ってより高いシール性が得られ、加えて、前記シール面38dによりオリフィスプレート38cのシール部からの外部へのリークを完全に防止することができる等の優れた効用が得られる。
【0009】
上述のように、
図16〜
図18のガスケット一体型オリフィスプレート38は、多くの優れた効用を奏するものであるが、未だ多くの解決すべき問題が残されている。その中でも、金属製オリフスプレート38cの腐食によってオリフィスの形態が変化することにより、流量特性が変動するのを防止することが緊急の課題となっている。
【0010】
即ち、上記ガスケット一体型オリフィスプレート38では、オリフィスの径寸法や孔形状の精度を高めるため、厚さ30〜1000μmの極薄金属板(例えば、SUS316L-P(Wメルト)や不純物の少ないNKクリーンZ等)を用い、内径10〜500μmの円形孔を形成するようにしている。
そのため、オリフィスプレート38cが流体の接触流動により比較的容易に腐食若しくは浸食されることになり、特に、流体がオゾン含有ガスや塩素含有ガス、臭化水素含有ガス等の腐食性ガスの場合には、オリフィスの径や形態が大きく変化することになり、流量制御装置等に用いるガスケット一体型オリフィスプレート38の場合には、流量制御装置の流量制御精度が大幅に低下する等の不都合が生じることになる。
【0011】
また、ガスケット一体型オリフィスプレート38の交換頻度が必然的に増すことになり、その交換に多くの手数を必要として補修コストの高騰を招くと云う問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−057474号公報
【特許文献2】特開2010−151698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従前のガスケット一体型オリフィスプレートに於ける上述のような問題、即ち、(I)所定の孔径及び形態を有する流量特性の安定したオリフィスを得るため、極薄金属板製オリフィスプレートを使用する構成としている。そのため、オリフィスプレートの耐食性が相対的に低く、腐食性ガスの場合には、ガスケット一体型オリフィスプレートの交換頻度が大幅に高くなると共に、流量制御装置等に用いた場合には、高精度な流量制御が行なえないこと、(II) ガスケット一体型オリフィスプレートの交換頻度が増すことにより、補修コストの高騰を招くこと、等の問題を解決せんとするものであり、金属薄板製オリフィスプレートに代えてセラミック製オリフィスプレートを用いることにより、オリフィスプレートの耐食性を大幅に高めて高精度で安定した流量特性が得られ、且つ流体通路内へ簡単にリークフリーで挿着固定することができ、しかも、安価に製造できるようにしたガスケット一体型オリフィスプレートを提供することを発明の主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明に係るガスケット一体型セラミックオリフィスプレートは、第1の側面として、
ガスの流量制御を行うのに用いるガスケット一体型セラミックオリフィスプレートであって、前記ガスケット一体型セラミックオリフィスプレートは、嵌合用突部を備え且つ中心部に貫通状の通路を設けた
ステンレス材製の第1のオリフィスベースと、嵌合用凹部を備え且つ中心部に前記第1のオリフィスベースの通路に連通する貫通状の通路を設けた
ステンレス材製の第2のオリフィスベースとを組合せ、前記第1のオリフィスベースと前記第2のオリフィスベースの端面間にセラミック製オリフィスプレートを気密状に挿着すると共に、前記第1のオリフィスベース及び前記第2のオリフィスベースの其々の外側端面をガスケットのシール面としている。
【0015】
前記第1及び第2のオリフィスベースのうちの一方のオリフィスベースの外径を他方のオリフィスベースの外径よりも大径とすると共に、当該一方のオリフィスベースの内側端面の外周縁部分をシール面としてもよい。
【0016】
前記セラミック製オリフィスプレートを、前記第1のオリフィスベースの通路及び前記第2のオリフィスベースの通路に連通するオリフィスを中心に有し、前記第1のオリフィスベースの嵌合用突部と前記第2のオリフィスベースの嵌合用凹部との間に気密状に挿着してもよい。
【0017】
前記セラミック製オリフィスプレートを、ジルコニアを含有するセラミック製とし、その厚みを500〜1000μm、孔径を10〜500μmとすると共に、前記嵌合用突部を前記嵌合用凹部内へ6kN〜10kNの圧入力により圧入し、前記嵌合用突部と前記嵌合用凹部との間に前記セラミック製オリフィスプレートを気密状に挿着してもよい。
【0018】
円形状の前記セラミック製オリフィスプレートの両面を研磨鏡面とすると共に、該セラミック製オリフィスプレートに当接する前記嵌合用突部及び前記嵌合用凹部の接触面を研磨鏡面としてもよい。
【0019】
また、本発明に係るガスケット一体型セラミックオリフィスプレートは、第2の側面として、
ガスの流量制御を行うのに用いるガスケット一体型セラミックオリフィスプレートであって、前記ガスケット一体型セラミックオリフィスプレートは、内側端面に嵌合用突部を備え中心部に貫通状の通路を有する
ステンレス材製の第1のオリフィスベースと、内側端面に嵌合用凹部を備え中心部に貫通状の通路を有する
ステンレス材製の第2のオリフィスベースと、中心部に前記第1及び第2のオリフィスベースの通路に連通する貫通状の通路を有し、一端面に前記第1のオリフィスベースの嵌合用突部が気密状に嵌合される嵌合用凹部を備えると共に、他端面に前記第2のオリフィスベースの嵌合用凹部に気密状に嵌合される嵌合用突部を備えた
ステンレス材製の中間オリフィスベースと、前記第1のオリフィスベースと前記中間オリフィスベースとの間に気密状に挿着され中心部にオリフィスが形成された第1のセラミック製オリフィスプレートと、前記中間オリフィスベースと前記第2のオリフィスベースとの間に気密状に挿着され中心部にオリフィスが形成された第2のセラミック製オリフィスプレートとを備え、流体通路に配設されて前記第1及び第2のオリフィスベースの外側端面を夫々シール面とすると共に、前記第1及び第2のオリフィスベースのうちの一方のオリフィスベースの外径を他方のオリフィスベース及び前記中間オリフィスベースの外径よりも大径にして該一方のオリフィスベースの内側端面の外周縁部分をシール面とし、又、前記中間オリフィスベースに該中間オリフィスベースの通路に連通する分流通路を形成している。
【0020】
前記第2のセラミック製オリフィスプレートを、中心部に前記第1のオリフィスベースの通路及び前記中間オリフィスベースの通路に連通するオリフィスを形成し、前記第1のオリフィスベースの嵌合用突部と前記中間オリフィスベースの嵌合用凹部との間に気密状に挿着してもよい。
【0021】
前記第2のセラミック製オリフィスプレートを、中心部に前記中間オリフィスベースの通路及び前記第2のオリフィスベースの通路に連通するオリフィスを形成し、前記中間オリフィスベースの嵌合用突部と凹形の前記第2のオリフィスベースの嵌合用凹部との間に気密状に挿着してもよい。
【0022】
前記第1のセラミック製オリフィスプレートをジルコニアを含有するセラミック製とし、その厚みを500〜1000μm、孔径を10〜500μmとすると共に、前記第1のオリフィスベースの嵌合用突部を前記第2のオリフィスベースの嵌合用凹部内へ6〜10kNの圧入力により圧入し、前記第1のオリフィスベースの嵌合用突部と前記中間オリフィスベースの嵌合用凹部との間に前記第1のセラミック製オリフィスプレートを気密状に挿着してもよい。
【0023】
前記第2のセラミック製オリフィスプレートをジルコニアを含有するセラミック製とし、その厚みを500〜1000μm、孔径を10〜500μmとすると共に、前記中間オリフィスベースの嵌合用突部を前記第2のオリフィスベースの嵌合用凹部内へ6〜10kNの圧入力により圧入し、前記中間オリフィスベースの嵌合用突部と前記第2のオリフィスベースの嵌合用凹部との間に前記第2のセラミック製オリフィスプレートを気密状に挿着するようにしたものである。
【0024】
本発明の前記第2の側面において、前記第1及び第2のオリフィスプレートのうち、上流側に位置するオリフィスプレートのオリフィスを下流側に位置するオリフィスプレートのオリフィスより小径としてもよい。
【0025】
本発明の前記第2の側面において、円形状の前記第1及び第2のセラミック製オリフィスプレートの其々の両面を研磨鏡面とすると共に、該第1及び第2のセラミック製オリフィスプレートに当接する前記第1のオリフィスベースの嵌合用突部及び前記第2のオリフィスベースの嵌合用凹部の接触面を研磨鏡面としてもよい。
【0026】
更に、本発明に係るガスケット一体型セラミックオリフィスプレートは、第3の側面として、
ガスの流量制御を行うのに用いるガスケット一体型セラミックオリフィスプレートであって、前記ガスケット一体型セラミックオリフィスプレートは、両側面に嵌合用凹部を備え且つ中心部に貫通状の通路を有する
ステンレス材製の第3のオリフィスベースと、嵌合用突部を備え且つ中心部に貫通状の通路を有すると共に、前記両嵌合用凹部内へ対向状に挿入する
ステンレス材製の第4のオリフィスベース及び第5のオリフィスベースと、前記第3のオリフィスベースの通路内へ装着したセラミック製オリフィスプレートとを備え、前記嵌合用凹部内へ圧入した前記第4及び第5のオリフィスベースの先端面間で、前記第3のオリフィスベースの通路内へ装着した前記セラミック製オリフィスプレートを気密状に挟着すると共に、前記第4及び第5のオリフィスベースの外側端面をガスケットのシール面としている。
【0027】
本発明の前記第3の側面において、前記第4及び第5のオリフィスベースの前記嵌合用突部の外周面に環状突起を設けると共に、前記嵌合用突部の先端面に環状突起を設け、前記嵌合用凸部の外周面の環状突起により前記嵌合用突部と前記嵌合用凹部との間の気密性を高めると共に、前記嵌合用突部の先端面の環状突起により前記嵌合用突部と前記セラミック製オリフィスプレートとの間の気密性を高める構成としてもよい。
【0028】
本発明の前記第3の側面において、前記セラミック製オリフィスプレートを厚い円盤状のジルコニアを含有するセラミック製とすると共に、前記両嵌合用突部を前記両嵌合用凹部内へ6〜10kNの圧入力により圧入し、前記両嵌合用突部の先端面間に前記セラミック製オリフィスプレートを気密状に挿着してよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の第1の側面では、セラミック製オリフィスプレートを第1のオリフィスベースと第2のオリフィスベースとの間に気密状に嵌合密接させることにより、ガスケット一体型セラミックオリフィスプレートを構成している。その結果、セラミック製オリフィスプレートの耐食性が大幅に向上すると共に、極薄いセラミック製オリフィスプレートであっても、変形等を生ずることなしに両オリフィスベース間に挟持することができ、高精度なオリフィスを有するガスケット一体型セラミックオリフィスプレートを形成することが出来る。
また、前記第1及び第2のオリフィスベースの外側端面、又は、前記第1及び第2のオリフィスベースの外側端面と前記第1及び第2のオリフィスベースの一方のオリフィスベースの内側端面外周部をシール面として利用することにより、オリフィスベースをガスケットとして緊密に管路等へ締込み固定することができる。
【0030】
また、本発明の第1の側面の一実施形態では、第1のオリフィスベースの嵌合用突部と第2のオリフィスベースの嵌合用凹部の間に厚み500〜1000μm、孔径10〜500μmのセラミック製オリフィスプレートを挿着し、前記嵌合用突部を前記嵌合用凹部内へ6kN〜10kNの圧入力により圧入し、両者の間にセラミック製オリフィスプレートを気密に挟持すると共に、該セラミック製オリフィスプレートの両面及びセラミック製オリフィスプレートに当接する嵌合用突部と嵌合用凹部の接触面を夫々研磨鏡面とする構成としている。
その結果、高精度なオリフィスを有する耐食性に優れたガスケット一体型セラミックオリフィスプレートが容易に製作できると共に、セラミック製オリフィスプレートと嵌合用突部及び嵌合用凹部の接触面や、嵌合用突部と嵌合用凹部の接触面からのリークをほぼ皆無にしたガスケット一体型セラミックオリフィスプレートの製作が可能となる。
【0031】
更に、本発明の第2の側面では、第1のオリフィスベースと第2のオリフィスベースの間に、一端面に前記第1のオリフィスベースの嵌合用突部に嵌合される嵌合用凹部を、また、他端面に前記第2のオリフィスベースの嵌合用凹部に嵌合される嵌合用突部を夫々備えた中間オリフィスベースを設け、前記第1のオリフィスベースの嵌合用突部と前記中間オリフィスベースの嵌合用凹部との間に第1のセラミック製オリフィスプレートを、また、前記第2のオリフィスベースの嵌合用凹部と前記中間オリフィスベースの嵌合用突部との間に第2のセラミック製オリフィスプレートを設けると共に、前記中間オリフィスベースの通路に連通する分流通路を形成した構成としている。
その結果、第1のセラミック製オリフィスプレートと第2のセラミック製オリフィスプレートの其々の孔径を違えると共に、前記通路への流体供給を制御することにより、複数の流量特性を有するガスケット一体型セラミックオリフィスプレートとすることができる。
【0032】
本発明の第3の側面では、両側面に嵌合用凹部を備え且つ中心部に貫通状の通路を有する第3のオリフィスベースと、嵌合用突部を備え且つ中心部に貫通状の通路を有すると共に、前記両嵌合用凹部内へ対向状に挿入する第4のオリフィスベース及び第5のオリフィスベースと、前記第3のオリフィスベースの通路内へ装着したセラミック製オリフィスプレートとからガスケット一体型セラミックオリフィスプレートを形成しているため、2種類の部材でもって比較的厚いセラミックプレートを用いたガスケット一体型セラミックオリフィスプレートを形成することができ、構造の簡素化及び製造コストの引下げが可能となる。
【0033】
加えて、本発明のガスケット一体型セラミックオリフィスプレートは、これを圧力式流量制御装置等に使用したときにはオリフィスプレートの交換が極めて容易に行えると共に、オリフィスプレートの取付における気密性の確保や変形防止が略完全に行えると共に、セラミック製オリフィスプレートが高耐食性であるため、高精度な流量制御が行える。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明係るガスケット一体型セラミックオリフィスプレートの一実施形態を示す断面図である。
【
図2】
図1のガスケット一体型セラミックオリフィスプレートの組立て前の構成を示す断面図である。
【
図3】本発明に係るガスケット一体型セラミックオリフィスプレートの第2実施形態を示す断面図である。
【
図4】
図2のガスケット一体型セラミックオリフィスプレートの組立て前の構成を示す断面図である。
【
図5】
図2のガスケット一体型セラミックオリフィスプレートを使用した圧力式流量制御装置の断面図である。
【
図6】
図5のガスケット一体型セラミックオリフィスプレートの取付部の部分断面図である。
【
図7】リーク試験用のガスケット一体型セラミックオリフィスプレートの拡大断面図である。
【
図9】リーク試験後に分解したオリフィスベースの嵌合用突部の端面の状態を示す拡大写真である。
【
図10】リーク試験後に分解したオリフィスベースの嵌合用凹部の底面の状態を示す拡大写真である。
【
図11】リーク試験後に分解したセラミックオリフィスプレートの表面状態を示す拡大写真である。
【
図12】使用前のセラミックオリフィスプレートの鏡面研磨後の窪みの状態を示す拡大写真である。
【
図13】使用前の鏡面研磨後に選別した材料窪みの無いセラミックオリフィスプレートの拡大写真である。
【
図14】本発明に係るガスケット一体型セラミックオリフィスプレートの第3実施形態を示す断面図である。
【
図15】本発明係るガスケット一体型セラミックオリフィスプレートの第3実施形態の組立て前の構成を示す断面図である。
【
図16】従来のガスケット一体型オリフィスプレートの断面図である。
【
図17】従来のガスケット一体型オリフィスプレートの組立て前の断面図である。
【
図18】従来のガスケット一体型オリフィスプレートの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び
図2は、本発明に係るガスケット一体型セラミックオリフィスプレートの第1実施形態を示す。また、
図3及び
図4は、本発明に係るガスケット一体型セラミックオリフィスプレートの第2実施形態を示すものである。更に、
図5は、
図3のガスケット一体型セラミックオリフィスプレートを用いた圧力式流量制御装置を示すものであり、
図6は、
図5のガスケット一体型セラミックオリフィスプレートの挿着部の部分拡大図である。
【0036】
尚、
図1に示した第1実施形態のガスケット一体型セラミックオリフィスプレート1と、
図3に示した第2実施形態のガスケット一体型セラミックオリフィスプレート1とは、下流側の第2のオリフィスベース3の形態が若干異なるだけである。また、
図1の第1実施形態のガスケット一体型セラミックオリフィスプレート1及び
図3のガスケット一体型セラミックオリフィスプレート1は、オリフィスプレート4の材質が異なる点を除いてその他の構成が、従前の
図15及び
図17に示したガスケット一体型オリフィスプレートと実質的に同じである。
従って、ここでは、
図3及び
図4に記載の第2実施形態のガスケット一体型セラミックオリフィスプレート1に基づいて、本願発明の実施形態を説明する。
【0037】
ガスケット一体型セラミックオリフィスプレート1は、
図1乃至
図4に示す如く、中心部に貫通状の通路2aを有し、内側端面に嵌合用突部2bを備えた凸形の第1のオリフィスベース2と、第1のオリフィスベース2より大径で中心部に貫通状の通路3aを有し、内側端面に嵌合用凹部3bを備えた凹形の第2のオリフィスベース3と、中心部にオリフィス(図示省略)を形成したセラミック製オリフィスプレート4とから成り、凸形の第1のオリフィスベース2と凹形の第2のオリフィスベース3とを組み合わせ、両オリフィスベース2、3間にセラミック製オリフィスプレート4を気密に挿着固定すると共に、両オリフィスベース2、3の両外側端面及び片方の第2のオリフィスベース3の内側端面をガスケット一体型オリフィスプレート1のシール面2c、3c、3dとし、セラミック製オリフィスプレート4のシール部からの外部へのリークを防止する構成としたものである。
【0038】
具体的には、凸形の第1のオリフィスベース2は、
図4に示す如く、ステンレス材(SUS316L−P(Wメルト))により縦断面形状が凸形の短い円柱状に形成されており、その中心部には内周面が段付に形成された貫通状の通路2aが形成されている。
又、凸形の第1のオリフィスベース2の内側端面(凹形の第2のオリフィスベース3に対向する端面)には、外周面が段付に形成された筒状の嵌合用突部2bが通路2aと同心状に突出形成されている。この嵌合用突部2bの大径側の外周面及び嵌合用突部2bの端面には、凹形の第2のオリフィスベース3との組合時にシール機能を発揮する環状突起2d,2d′(
図4参照)が夫々形成されている。
更に、凸形の第1のオリフィスベース2は、環状に形成された外側端面がガスケット一体型セラミックオリフィスプレート1のシール面2cとしての機能を果たすようになっている。
【0039】
凹形の第2のオリフィスベース3は、
図4に示す如く、ステンレス材(SUS316L−P(Wメルト))により縦断面形状が凹形の厚肉円盤状に形成されており、その中心部には凸形の第1のオリフィスベース2の通路2aに連通する貫通状の通路3aが形成されている。
又、凹形の第2のオリフィスベース3の内側端面(凸形のオリフィスベース2に対向する端面)には、凸形の第1のオリフィスベース2の嵌合用突部2bが気密状に嵌合される嵌合用凹部3bが通路3aと同心状に形成されている。この嵌合用凹部3bの内周面は、凸形の第1のオリフィスベース2の嵌合用突部2bが気密状に嵌合されるように段付の内周面に形成されている。この嵌合用凹部3bの端面には、凸形の第1のオリフィスベース2との組合時に、セラミック製オリフィスプレート4を、第1のオリフィスベース2の環状突起2d′との間で狭持してシール機能を発揮するよう配置された環状突起3f(
図4参照)が形成されている。
【0040】
更に、嵌合用突部2bを受入れる嵌合用凹部3bを設けた第2のオリフィスベース3の外側端面には、円形の凹所3eが通路3aと同心状に形成されており、凹形の第2のオリフィスベース3の外側端面に形成した凹所3eの底面がガスケット一体型オリフィスプレート1のシール面3cとしての機能を果たすようになっている。凹所3eは、ガスケット一体型オリフィスプレート1の位置合わせ(軸心合わせ)を容易にすると共に、シール面3cを保護するためのものである。
【0041】
尚、後述するセラミック製オリフィスプレート4に当接する嵌合用突部2b及び嵌合用凹部3bの底面は、電解研磨等により所謂研磨鏡面に仕上げられている。
また、第2実施形態の場合は、第1のオリフィスベース2、第2のオリフィスベース3のうち、下流側に位置する第2のオリフィスベース3は、その外径が上流側に位置する第1のオリフィスベース2の外径よりも大径に形成されており、下流側に位置する第2のオリフィスベース3の内側端面の外周縁部分がガスケット一体型オリフィスプレート1のシール面3dとしての機能を果たすようになっている。
【0042】
上記第2実施形態に於いては、下流側に位置する凹形の第2のオリフィスベース3の外径を上流側に位置する凸形の第1のオリフィスベース2の外径よりも大径に形成し、凹形の第2のオリフィスベース3の内側端面の外周縁部分をガスケット一体型オリフィスプレート1のシール面3dとするようにしているが、第2のオリフィスベース3の外径を第1のオリフィスベース2の外径と同径として、シール面3dを省略することも可能であり、当該構成としたものが、
図1及び
図2に示した第1実施形態のガスケット一体型セラミックオリフィスプレートである。
【0043】
セラミック製オリフィスプレート4は、ジルコニアを含有するセラミック材により極薄の円形板に形成されており、その中心部には第1のオリフィスベース2,第2のオリフィスベース3の通路2a,3aに連通する所望の内径のオリフィス(図示省略)が形成されている。このセラミック製オリフィスプレート4の大きさは、凹形の第2のオリフィスベース3の嵌合用凹部3bの小径部分に収容できる大きさに設定されている。
尚、セラミック製オリフィスプレート4の形状は、円形であっても、或いは他の形状であっても良い。
【0044】
尚、本第1及び第2実施形態においては、セラミック製オリフィスプレート4の厚みを500〜1000μm、孔径(オリフィス径)を10〜500μmとすると共に、その両外表面は、ラッピング研磨等により鏡面に研磨仕上げされており、嵌合用突部2bを嵌合用凹部3b内へ6kN〜10kNの圧入力で圧入することにより、嵌合用突部2bと嵌合用凹部3b間に挟持されている。
【0045】
具体的には、凹形の第2のオリフィスベース3の嵌合用凹部3b内にセラミック製オリフィスプレート4を収容し、凸形の第1のオリフィスベース2の嵌合用突部2bを凹形の第2のオリフィスベース3の嵌合用凹部3b内へ推力約9kNのプレス機により圧入して両オリフィスベース2、3を気密状に一体化することにより、ガスケット一体型セラミックオリフィスプレートが形成されている。
このとき、嵌合用突部2bの外周面が嵌合用凹部3bの内周面に気密状に密接すると共に、セラミック製オリフィスプレート4の両面が第1のオリフィスベース2の環状突起2d′と第2のオリフィスベース3の環状突起3fの間で狭持されることによって両オリフィスベース2,3の内側端面間にセラミック製オリフィスプレート4が挿着保持されるため、より良好なシール性が確保されることになる。また、オリフィスベース2の外周面にある環状突起2dによって、更に気密状に挿着保持することになる。
【0046】
図5は、上記第2実施形態に係るガスケット一体型セラミックオリフィスプレート1を圧力式流量制御装置へ適用した例を示すものであり、当該圧力式流量制御装置は、圧電素子駆動式のコントロール弁6と、コントロール弁6のボディ7の上流側にボルト(図示省略)により締め付け固定され、ボディ7の上流側の流体通路7aに連通する入口側流体通路8aを形成した入口側ブロック8と、ボディ7と入口側ブロック8との間に介設され、両者間をシールするガスケット型フィルタ9と、コントロール弁6のボディ7の下流側にボルト(図示省略)により締め付け固定され、ボディ7の下流側の流体通路7bに連通する出口側流体通路10aを形成した出口側ブロック10と、ボディ7と出口側ブロック10との間に介設され、両者間をシールする流量制御用のガスケット一体型セラミックオリフィスプレート1と、コントロール弁6のボディ7に配設され、ガスケット一体型セラミックオリフィスプレート1の上流側の圧力を検出する圧力センサー11と、コントロール弁6を制御する制御回路12等から構成されており、ガスケット一体型セラミックオリフィスプレート1の上流側圧力によりオリフィスを通過する流量を演算しながらコントロール弁6の開閉調整をして、セラミックオリフィスプレートのオリフィスを通過する流体流量を制御するものである。
尚、
図5に示した圧力式流量制御装置そのものは公知であるため、ここではその詳細な説明を省略する。
【0047】
前記ガスケット一体型セラミックオリフィスプレート1は、コントロール弁6のボディ7の下流側端面と出口側ブロック10の上流側端面とに形成されたオリフィス収納用凹所7c、10b内に収容されており、ボディ7と出口側ブロック10とを締め付け固定することにより、ガスケット一体型セラミックオリフィスプレート1がオリフィス収納用凹所7c、10b内に、気密に収容固定されている。
【0048】
即ち、
図6に示す如く、ボディ7の下流側端面に形成したオリフィス収納用凹所7cは、内径が途中で変わる段付の凹所に形成されており、オリフィス収納用凹所7cの内径が小さい部分の底面には、第1のオリフィスベース2の外側端面に形成したシール面2cに密接状態で食い込んでシールする環状突起7dが形成されている。また、オリフィス収納用凹所7cの内径が大きい部分の底面には、第2のオリフィスベース3の内側端面に形成したシール面3dに密接状態で食い込んでシールする環状突起7eが形成されている。
【0049】
また、出口側ブロック10の上流側端面に形成したオリフィス収納用凹所10bは、出口側流体通路10aの入口側を囲む環状の凹所に形成されており、当該オリフィス収納用凹所10bの底面には、凹形の第2のオリフィスベース3に形成した円形の凹所3eに挿入される環状のガスケット押え用突出部10cが形成されている。
尚、このガスケット押え用突出部10cの端面には、凹形の第2のオリフィスベース3の外側端面に形成したシール面3cに密接状態で食い込んでシールする環状突起10dが形成されており、このガスケット押え用突出部10cを凹形の第2のオリフィスベース3の凹所3eに挿入することにより、ガスケット一体型セラミックオリフィスプレート1の位置合わせが容易に行える。
【0050】
尚、
図6に於いては、第1のオリフィスベース2のシール面2cと第2のオリフィスベース3のシール面3cとの距離、第1のオリフィスベース2のシール面2cと第2のオリフィスベース3のシール面3dとの距離、オリフィスベース3のシール面3cとシール面3dとの距離、ボディ7のオリフィス収納用凹所7cの小内径部の底面の深さ及び大内径部の底面の深さ、オリフィス収納用凹所10bの底面のガスケット押え用突出部10cの高さ等は、ボディ7と出口側ブロック10とをボルトにより締め付け固定したときに、
図6に於けるA面が先に当たってシールした後、B面が当たってシールするようになっている。
また、A面とセラミック製オリフィスプレート4のシール部のリーク量が1×10
−4Pa・m
3/sec以下に、外部リークとなるB面とC面のリーク量が1×10
−10Pa・m
3/sec以下になるように夫々設定されている。
【0051】
[リーク試験]
先ず、セラミック製オリフィスプレート4と嵌合用突部2b等の金属端面間のリーク特性を主として調査するため、リーク試験に供するガスケット一体型セラミックオリフィスプレート1として、
図7(a)の如きガスケット一体型セラミックオリフィスプレートを製作した。
【0052】
即ち、当該試験用のガスケット一体型セラミックオリフィスプレートは、
図7(b)に示すように、嵌合用突部2bを有する二つの第4のオリフィスベースB1及び第5のオリフィスベースB2と、両側面に嵌合用凹部3bを夫々設けた第3のオリフィスベースAと、セラミック製オリフィスプレート4とを組合せて一体化することにより形成されている。具体的には、第4、第5のオリフィスベースB1,B2の嵌合用突部2b、2bを第3のオリフィスベースAの両側面の嵌合用凹部3b、3b内へ圧入し、セラミック製オリフィスプレート4の両側面を嵌合用突部2b、2b間で挟着することにより、嵌合用突部2b、2b間にセラミック製オリフィスプレート4を気密に保持すると共に、嵌合用突部2bの外周面と嵌合用凹部3bの内周面間を気密に圧接する構成としている。
【0053】
尚、
図7において、Cはリーク検出孔であり、また、試験用オリフィスの両外表面間の全長は8.8mm、オリフィスベースの直径は10mm、セラミック製オリフィスプレート4の直径3.5mm、セラミック製オリフィスプレート4の厚さ1.5mm、オリフス径は100μmに設定されている。
また、
図7に於ける2d、2d’は嵌合用突部2bの外周面に設けた環状突起であり、嵌合用突部2bを嵌合用凹部3b内へ圧入したときに、環状突起2d’は嵌合用突部2bの外周面と嵌合用凹部3bの内周面間の気密性を、また、環状突起2d’は嵌合用突部2bの端面とセラミック製オリフィスプレート4の側面間の気密性を、夫々高める作用をする。
【0054】
更に、
図7のリーク試験用のガスケット一体型セラミックオリフィスプレートの製作に際しては、第4、第5のオリフィスベースB1、B2の嵌合用突部2b及び第3のオリフィスベースAの嵌合用凹部3bの形態は、
図1乃至
図4の場合と同一とし、且つ嵌合用突部2bを嵌合用凹部3b内へ圧入する推力を7kN、8kN、9kNとした3種類のリーク試験用ガスケット一体型セラミックオリフィスプレートを作成した。
【0055】
次に、
図8に示すように、リーク試験用ガスケット一体型セラミックオリフィスプレートをリーク検査冶具Lにセットし、リーク検査冶具Lのボルト締付機構(図示省略)を調整することにより、リーク試験用ガスケット一体型オリフィスプレートに加えるボルト締付トルクを変化させ、各ボルト締付トルクにおける各リーク検出孔からのリークレベルを測定した。
【0056】
下記の表1は、リーク試験の結果を示すものであり、ボルト締付トルク(kgf・cm)を増加させても、リークレベルは何れも10
−5Pa・m
3/sec〜10
−8Pa・m
3/sec程度となり、且つリーク試験用ガスケット一体型オリフィスプレートのリークレベルが不安定であって、実用に供することが不可能であることが判明した。
尚、オリフィスベースBの嵌合用突部2bやオリフィスベースAの嵌合用凹部3bの内・外表面やセラミック製オリフィスプレート4と当接する端面は、精密機械加工により表面粗さが鏡面研磨のレベルに仕上げられており、且つセラミック製オリフィスプレート4の外表面も精密研磨加工により表面粗さが鏡面研磨のレベルに仕上げられている。
【0058】
次に、リークレベルの高い原因を探るため、試験に供したガスケット一体型セラミックオリフィスプレートを分解し、シール部分をマイクロスコープにより拡大観察すると共にSEM観察をも併せて行ない、その結果から、第3のオリフィスベースAの嵌合用突部2bや第4、第5のオリフィスベースB1、B2の嵌合用凹部3bの研磨精度が低いこと、セラミック製オリフィスプレート4の外表面の研磨精度が低いこと、及びセラミック製オリフィスプレート4の研磨面に素材窪みが存在すること等が、リークレベルの高い主原因であることを見出した。
【0059】
図9及び
図10は、セラミック製オリフィスプレート4に当接する第3のオリフィスベースAの嵌合用突部2bの端面及び第4、第5のオリフィスベースB1、B2の嵌合用凹部3bの底面を示すものであり、何れも端面の研磨不良が高リークレベルの原因であることが判明した。
また、
図11及び
図12は、セラミック製オリフィスプレート4の外表面の状態を示すものであり、セラミック製オリフィスプレート4に始めから存在する大きな材料窪みが高リークレベルの原因であることが判明した。尚、この材料窪みは、
図12からも明らかなように相当に深いものであり、セラミック製オリフィスプレート4の外表面の研磨精度を高めても完全に除去することの困難なものが、多数存在することが判明した。
【0060】
そこで、本発明の発明者等は、第1のオリフィスベース2の嵌合用突部2bや第2のオリフィスベース3の嵌合用凹部3bの内・外表面を、電解研磨等によって鏡面に仕上げると共に、セラミック製オリフィスプレート4は、ラッピング研磨等によってその外表面を鏡面とした後、更に、マイクロスコープ等による拡大観察により材料窪みの存否を確認し、材料窪みの無いセラミック製オリフィスプレート4を選別使用することにした。
図13は、拡大観察により材料窪みの存否を確認した後の選別されたセラミック製オリフィスプレート4を示すものである。
【0061】
下記の表2は、上記のようにして鏡面研磨をした第1、第2のオリフィスベース2、3、及び鏡面研磨と材料窪みの有無を選別したセラミック製オリフィスプレート4を用いて製作した試験用ガスケット一体型セラミックオリフィスプレートについてのリーク試験の結果を示すものである。
尚、試験に供したガスケット一体型セラックオリフィスプレートは3種類であり、何れの圧入力によりセラミック製オリフィスプレート4を挟込み固定したものである。
【0063】
表2からも明らかなように、何れの試験用ガスケット一体型セラミックオリフィスプレートにあっても、リークレベルが安定しており、且つリークレベル自体が許容される範囲内にあり、実用に供することが可能であることが判明した。
【0064】
[第3実施形態]
図14及び
図15は、本願発明に係るガスケット一体型セラミックオリフィスプレートの第3実施形態を示すものであり、中間オリフィスベース5を用いている点のみが、
図1乃至
図4に示した第1及び第2実施形態に係るガスケット一体型セラミックオリフィスプレートと異なるだけであり、その他の構成は殆ど同じである。
【0065】
当該第3実施形態に係るガスケット一体型セラミックオリフィスプレート1は、中心部に貫通状の通路2aを有し、内側端面に嵌合用突部2bを備えた第1のオリフィスベース2と、中心部に貫通状の通路3aを有し、内側端面に嵌合用凹部3bを備えた第2のオリフィスベース3と、中心部に貫通状の通路5aを有し、一端面に嵌合用凹部5bを備えていると共に他端面に嵌合用突部5cを備えた中間オリフィスベース5と、中心部にオリフィス(図示省略)を形成した小流量用及び大流量用の二枚の第1及び第2のセラミック製オリフィスプレート4′,4″とから構成されており、第1のオリフィスベース2と中間オリフィスベース5と第2のオリフィスベース3とを組合せ、第1のオリフィスベース2と中間オリフィスベース5との間及び第2のオリフィスベース3と中間オリフィスベース5との間に第1及び第2のオリフィスプレート4′,4″を夫々気密状に挿着すると共に、両第1、第2のオリフィスベース2,3の外側端面及び第2のオリフィスベース3の内側端面を夫々シール面2c,3c,3dとし、両第1、第2のセラミック製オリフィスプレート4′,4″のシール部からの外部へのリークを防止できるようにしたものである。尚、
図15において、2d’,3f及び5fは環状突起である。
【0066】
又、このガスケット一体型セラミックオリフィスプレート1は、中間オリフィスベース5に当該中間オリフィスベース5の通路5aに分岐状に連通する分流通路5dを形成し、第1のオリフィスベース2と中間オリフィスベース5との間に小流量用の第1のセラミック製オリフィスプレート4′を気密状に挿着すると共に、第2のオリフィスベース3と中間オリフィスベース5との間に大流量用の第2のセラミック製オリフィスプレート4″を挿着することにより、複数の流量調整範囲を有する構成としたものである。
【0067】
具体的には、第1のオリフィスベース2は、
図15に示す如く、ステンレス材(SUS316L−P(Wメルト))により縦断面形状が短い円柱状に形成されており、その中心部には内周面が段付に形成された貫通状の通路2aが形成されている。
又、第1のオリフィスベース2の内側端面(中間オリフィスベース5に対向する端面)には、外周面が段付に形成された筒状の嵌合用突部2bが通路2aと同心状に突出形成されている。この嵌合用突部2bの大径側の外周面及び嵌合用突部2bの端面には、中間オリフィスベース5との組合せ時にシール機能を発揮する環状突起2d,2d′が夫々形成されている。更に、第1のオリフィスベース2は、環状に形成された外側端面がガスケット一体型セラミックオリフィスプレート1のシール面2cとしての機能を果たすようになっている。
【0068】
第2のオリフィスベース3は、
図15に示す如く、ステンレス材(SUS316L−P(Wメルト))により縦断面形状が凹形の厚肉円盤状に形成されており、その中心部には貫通状の通路3aが形成されている。
又、凹形の第2のオリフィスベース3の内側端面には、中間オリフィスベース5の嵌合用突部5cが気密状に嵌合される嵌合用凹部3bが通路3aと同心状に形成されている。この嵌合用凹部3bの内周面は、中間オリフィスベース5の嵌合用突部5cが気密状に嵌合されるように段付の内周面に形成されている。
【0069】
更に、凹形の第2のオリフィスベース3の外側端面には、円形の凹所3eが通路3aと同心状に形成されており、凹形の第2のオリフィスベース3の外側端面に形成した凹所3eの底面がガスケット一体型セラミックオリフィスプレート1のシール面3cとしての機能を果たすようになっている。前記凹所3eは、ガスケット一体型セラミックオリフィスプレート1の位置合わせ(軸心合わせ)を容易にすると共に、シール面3cを保護するためのものである。
【0070】
前記中間オリフィスベース5は、
図15に示す如く、ステンレス材(SUS316L−P(Wメルト))により第1のオリフィスベース2の外径と同じ径の円柱状に形成されており、その中心部には第1のオリフィスベース2の通路2a及び第2のオリフィスベース3の通路3aに連通する貫通状の通路5aが形成されている。
又、中間オリフィスベース5の一端面には、第1のオリフィスベース2の嵌合用突部2bが気密状に嵌合される嵌合用凹部5bが通路5aと同心状に形成されている。この嵌合用凹部5bの内周面は、第1のオリフィスベース2の嵌合用突部2bが気密状に嵌合されるように段付の内周面に形成されている。
【0071】
更に、中間オリフィスベース5の他端面には、第2のオリフィスベース3の嵌合用凹部3bに気密状に嵌合される外周面が段付に形成された筒状の嵌合用突部5cが通路5aと同心状に突出形成されている。この嵌合用突部5cの大径側の外周面及び嵌合用突部5cの端面には、第2のオリフィスベース3との組合せ時にシール機能を発揮する環状突起5e,5e′が夫々形成されている。
加えて、中間オリフィスベース5の周壁部分には、中間オリフィスベース5の通路5aに分岐状に連通する分流通路5dが形成されている。
【0072】
前記小流量用及び大流量用の第1、第2のセラミック製オリフィスプレート4′,4″は、第1及び第2実施形態の場合と同じ材質を用いて、同じ形態に形成されていることは勿論であり、 両第1、第2オリフィスプレート4′,4″の外観形状は、円形であっても、或いは他の形状であっても良い。
【0073】
上記本発明に係るガスケット一体型セラミックオリフィスプレートは、セラミック製オリフィスプレートを使用しているために耐食性に優れ、腐食性ガス管路等に使用した場合でも、安定した流量制御特性等を発揮することができるうえ、セラミック製オリフィスプレートと金属端面間の気密性も、実用に十分耐えるだけのシールレベルを確保することができ、優れた実用的効用を奏するものである。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本願発明は、圧力式流量制御装置のみならず、腐食性流体を取り扱うあらゆる管路や機器類に使用することができるものである。
【符号の説明】
【0075】
1 ガスケット一体型セラミックオリフィスプレート
2 第1のオリフィスベース
2a オリフィスベースの通路
2b オリフィスベースの嵌合用突部
2c オリフィスベースのシール面
2d 環状突起
2d’ 環状突起
3 第2のオリフィスベース
3a オリフィスベースの通路
3b オリフィスベースの嵌合用凹部
3c オリフィスベースのシール面
3d オリフィスベースのシール面
3e 凹部
3f 環状突起
4 セラミック製オリフィスプレート
4′ 小流量用の第1のセラミック製オリフィスプレート
4″ 大流量用の第2のセラミック製オリフィスプレート
5 中間オリフィスベース
5a 中間オリフィスベースの通路
5b 中間オリフィスベースの嵌合用凹部
5c 中間オリフィスベースの嵌合用突部
5d 中間オリフィスベースの分流通路
5e 環状突起
5e’ 環状突起
5f 環状突起
6 コントロール弁
7 コントロール弁のボディ
7a 流体通路
7b 流体通路
7c オリフィス収納凹所
7d 環状突起
7e 環状突起
8 入口ブロック
9 フィルタ
10 出口ブロック
10a 通路
10b オリフィス収納用凹所
10c ガスケット押え用突出部
10d 環状突起
11 圧力センサー
12 制御回路
A 第3のオリフィスベース
B1 第4のオリフィスベース
B2 第5のオリフィスベース
C リーク検出孔
D リーク検出孔
E リーク検出孔
L リーク検査冶具