【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、添付の請求項に従う発明により解決される。
【0008】
本発明は、下記に寄与する。
(i)自身についての予測される動きと他の実在物についての予測される動きとの間の関係を調べることによって交通シーンを評価すること、
(ii)上記動きに関連したリスク要因を推定すること、
(iii)実在物自身の挙動のために、動きを評価して関連するリスク要因を評価すること、
(iv)これら全てに基づいて、自身の挙動についてのプランニングを行うこと
【0009】
本発明の利点は、そのアプローチの汎用性にある。これにより得られるシーン分析の手法は、高速道走行や交差点緩和(intersection mitigation)などの全く異なる種類の交通シーンに同様に適用できるものであり、関連する実在物の数が増加した場合にも良好に調整を行う。これらは、現在行われているアプローチにはない特性である。
【0010】
本発明の目的は、交通シーンにおいて発生する事象を運動リスクや効率の観点から評価するシーン分析であって関与する実在物の数が多い(>3)場合でも適度な計算負荷で処理することができ、且つ種々の交通コンテキストにも修正を要せず適用することのできるシーン分析を行うための方法及び当該分析を行うシステムを備えた乗り物を提供することである。このコンテキストにおける実在物には、車両や歩行者等の他の交通参加者が含まれるほか、交通標識や道路障壁等の交通基盤要素も含まれる。本発明の一つの重要な特徴は、時間リスクマップ(temporal risk map)を生成し、これらのリスクマップ内で将来挙動の選択肢を計画し及び評価することである。時間リスクマップは、時間又は意図する自車両軌道に沿った走行距離を一つの軸として(時間と距離とは相互に変換することができる)、異なる時間期間についての予測される高リスクゾーンを明示的に表したものである。これにより、標準的な最適化アルゴリズムや計画アルゴリズムを少ない計算コストで用いることができる、という利点を生ずる。
【0011】
本発明が対象とする用途は、(i)交通参加者である自分自身に関連する他の複数の交通実在物についての様々な動きを予測し、当該予測された動きに関連するリスク及び効率に応じた優先度で警告を行う、警告支援システムである。
【0012】
第2の領域は半自動運転の分野(ii)であって、警告システムに代わり、交通参加者である自分自身についての動作が、提案され、支援され、又は準備され得る。これは、本発明の方法の自然な出力である。リスクと効率の評価は、常に、自身について予測される可能性のある軌道の選択肢のセットに関連して生ずるものだからであり、又は、望ましいリスク+効率の尺度を持つ新しい軌道が算出され、挙動の間にそれら軌道の一つを実現すべく自身のアクションが選択され得るからである。
【0013】
第3の領域は完全自律型運転の分野(iii)であり、低リスクで高効率な望ましい軌道が予測され又は算出されて選択され、これらの軌道を用いて、自動運転動作を実行するための制御システムがガイドされ得る。
【0014】
これらは全て、シーン分析とその後の警告動作及び支援動作とが、例えば隣接する自動車の近接度合や速度といった暗示的な重要性基準に依拠して評価されるのではなく、予測されるリスク及び効率の観点での当該自動車自身の挙動についての具体的な実用尺度を用いて評価される、という利点を提供する。
【0015】
警告を出力するため、又は自律型又は半自律型の運転を実行するため、リスクマップの分析に基づいて制御信号が生成される。この信号は、運転者警告に用いることのできる、意図する走行経路についてのリスクに関する情報を含むか、又は車両を自律的に加速又は減速させるためにモータ管理システムやブレーキシステムなどの車両制御システムが行うべき動作に関する情報を含む。
【0016】
本発明と従来技術のアプローチとの相違点を、
図1に示す。図示左側は従来のアプローチを示している。自車両の軌道と一の他の交通参加者の軌道とが予測され、一つの交点が特定される。この交点は、それらの車両がその交点を異なる時刻で通過するかもしれないということを無視して、高衝突リスクに関連付けられる。
【0017】
図1の右側には、本発明の一の態様が示されている。ここでも、この単純な交通シーンにおける2つの車両の軌道が予測されている。ただし、従来アプローチとは異なり、リスクは、様々な時刻(自車両軌道の異なる位置に対応する)と、他の交通参加者の軌道における対応するポイントと、について評価される。見て判るとおり、自車両軌道上には顕著なリスクを示していると考えられる3つのポイントが存在し、これらのポイントは全てその軌道上の交点に達する前の位置に存在している。これら3つのポイントのうちの中央の位置に最も高いリスクがあると認識される。
【0018】
〔定 義〕
〈リスク〉
用語「リスク」は、何らかのクリティカルなイベント(事故など)が将来に起こるであろう確率に、それがもたらすコスト又は利益を乗じて得られる数学的評価値であるとする、技術的プロセスについてのウィキペディアの定義に非常に近いものである。したがって、確率論的には、リスク計算は、2つの項に分解できる。一つは、クリティカルイベントが発生したときの状態がもたらすその瞬間におけるコスト又は利益(下記に示す式においては、事故についての「ダメージ」として表現される)を表す項であり、もう一つは、時刻tにおける状態から予測を開始した場合の、将来の時刻t+sにおいてクリティカルイベントが起こる確率を表す項である:
【数1】
【0019】
ダメージ項(“=”符号の後ろの第1の項)は、最新技術のモデルを用いて定式化することができる。例えば、アクシデントが発生する場合、そのアクシデントの激しさは、衝突の瞬間における速度、方向、質量等を考慮して計算することができる。
【0020】
この式の最後の項は、将来におけるイベント発生確率(将来イベント発生確率、future event probability)を表しており、本発明では、これを扱うための種々の方法を提示している。例えば、生存確率(survival probability)計算、特殊なリスク表現特徴量(TCE(最接近時刻、Time of Closest Encounter)、TTCE(最接近余裕時間、Time to Closest Encounter)、PCE(最接近位置、Point of Closest Encounter)、DCE(最接近余裕距離、Distance to Closest Encounter)等)、予測された軌道についてのリスク評価、将来の車両走行についての様々な選択肢に関するリスクを表現したリスクマップ、を用いる方法が提示される(これらの用語については、以下に示す定義を参照されたい)。
【0021】
将来イベント発生確率と生存確率(後述)との関係は、次のように理解することができる:時刻tから開始して、期間 [t,t+s[ の前にクリティカルイベントに関与しなかった(即ち、「生き残った」)車両のみが、時刻t+sにおける将来イベントに関与し得るので、将来イベント発生確率は、その期間についての生存確率に、時刻t+sの将来におけるイベント発生確率を乗じたものである。すなわち、
【数2】
である。これは、まさに本アプローチを定式化したものであり、これを用いて将来イベント発生確率を次式により算出することができる(「生存確率」の定義については後述する)。
【数3】
リスクの式と後述する生存確率の式とにより、将来リスクの評価と低リスクな将来挙動の生成とに必要なリスクマップを構築することが可能となる。
【0022】
〈場面(Situation)〉
ある時間期間内での、相互に作用しあうシーン要素(車両、他の物体、構造物)とそれらの動き(操縦オプション、状態変化)との、プロトタイプの組み合わせである。相互に作用しあう要素の様々な個別の挙動/操縦の選択肢を表現する場面(複数)は、特に重要である。例えば、未だ動いてはいない正面が対向している2台の自動車で構成される交差点場面のような、類似するエビデンス(シーン要素、動き)で構成されるシーンでは、双方が直進する、一方が転回する、双方が転回する等の異なる場面を生じさせ得る。
【0023】
〈場面仮説(Situation Hypothesis)〉
表現及び分類を目的にシステムプロトタイプとして用いられる場面の表現。シーン内に、或る場面を特定する、必要とされるシーン要素及び動きが存在すれば、そのシーンはその場面と同じものである(一致している)とする。場面分析は、シーンを場面クラスに分離するのに重要である。場面クラスは、状態と動きのクラス間の変動性が、クラス内の変動性に比べて低くなっているべきである。分類を目的とする場面分析は、標準的な分類方法及び機械学習方法、例えばニューラルネットワーク(Neural Networks)、サポートベクタマシン(Support Vector Machines)、ベイジアン信念ネット(Bayesian Belief Nets)等を用いて、最先端の技術手段により行うことができる。
【0024】
〈軌 道〉
離散的又は連続的な時刻にわたる状態ベクトル(シーン要素についての選択された状態を定量化する数値リスト)の集合。特に、移動物体を分析する場合、中心となるのは力学的状態(位置、速度、加速度、方向、その他)であり、軌道は、物体が空間を移動するにつれて生成されるラインとして表現され得る。
【0025】
〈予測軌道〉
現在の及び又は過去の状態(単数又は複数)から状態ベクトルを外挿したもの。これは、予測モデル(例えば、カーブ内で或る速度と転回速度とを持つ自動車は、その速度と転回速度とを維持すると仮定される)、プロトタイプ軌道セグメントとの比較、時系列分析等の、様々な先端技術の方法により、行うことができる。予測軌道においては、交通基盤(インフラストラクチャ、infrastructure)も重要である:通常、我々は、例えばレーンがどこにあるかを知っていれば、「車はおそらくそのレーンに沿って走行し続けるだろう」というような単純な予測モデルを用いる。
【0026】
〈軌道の比較〉
本発明では、例えば2つの軌道に対して、共通の時刻から開始し、時間経過に沿って状態ベクトルを比較することで行われる。各時刻に対し、2つの軌道の状態を用いて瞬間リスク指標(momentary risk indicator)が算出される。瞬間リスク指標は、正にその時間的な瞬間における、それらの特定の状態についてのリスク確率を定量化したものである。例えば、或る時刻において、関連する要素(複数)の空間的広がりが互いに接している(距離0)場合、衝突確率は1であると言う。そして、衝突の際の角度や関連する速度及び質量などの、その瞬間における更なる状態を用いて、衝突リスクを算出することができる。
【0027】
〈生存確率〉
本発明の一の主要なコンポーネントは、将来の様々な時刻におけるイベントのリスクを算出することである。当該算出されたリスクは、予測時間の限られた期間についてのリスク関数となる。将来リスクは、いわゆる「生存関数」を用いて算出することができ、これにより、遠くの将来に存在するイベントほど、その確率は低くなるという効果を考慮する。生存確率は、例えば、一の交通参加者の状態及び他の交通参加者の状態が予測された軌道に従って展開する間、当該一の交通参加者が、或る時間期間に高リスクのイベントに関与することなく、当該時間期間を「生き残る」ことがどの程度確からしいかを表す。数学形式で、生存関数の例を示す。関連するシーン要素の軌道から、特定の時間的瞬間を考える。自車両が高リスクイベントに関与する確率は、瞬間イベント発生速度
【数4】
により定量化することができる。瞬間イベント発生速度は、イベント発生間隔の平均時間の逆数であり、(現在の又は予測された)その瞬間における状態に依存する。したがって、時刻tにおける任意の微小時間期間でのイベント発生確率は、その時刻における状態に依存し、次式で与えられる。
【数5】
【0028】
等価な複数の自車両の統計的な集合を見たとすれば、我々は、「それらのうちの何台の車両が、予測時間の或る時間期間の間、事故に関与することなく走行することができるだろうか?」を問うだろう。任意の時刻tから開始し、予測時間期間を微小期間に区切ると、第1の微小期間においては、上記複数の車両のうちの或る部分が事故に関与し、残りの部分は「生き残る」。生き残った車両のうちのいくつかは、第2の微小期間において事故に関与する...等々、となる。これを数学的に表現すると、開始時刻tから将来時刻t+sまでの間に1から0へ向かって減少する関数となる。そして、この関数は、時刻tからt+sまでの間の、その交通場面に関連するシーン要素(複数)の状態の経時変化に依存する生存確率(次式)を表わしている。
【数6】
【0029】
生存確率を得れば、これを将来瞬間イベント発生速度(instantaneous future event rate)と組み合わせることにより、将来イベントの発生確率を次式のように算出することができる。
【数7】
【0030】
複数の瞬間イベント発生速度を加算することで、複数のリスク要因を組み込むことができ、生存関数と将来イベントの全体的な発生確率が同様の方法で算出され得る。これにより、複数のリスクを容易に考慮することが可能となり、将来についてのリスク確率の算出が容易となる。
【0031】
〈最接近時刻(TCE、Time-of-Closest-Encounter)、最接近余裕時間(TTCE、Time-To-Closest-Encounter)、最接近点(PCE、Position-of-Closest-Encounter)、最接近距離(DCE、Distance-of-Closest-Encounter)〉
シーン要素(複数)の軌道を比較することによって算出される特徴量又は指標であり、将来リスクとリスクマップの算出に関連するものである。2つの軌道間のTCEは、2つの軌道が互いに最も接近する絶対時刻であり、PCEは、これが発生した場所の自車両軌道上の位置である。
図4の図示左上に、このことが、2つの軌道例(例えば、自車両軌道が緑、他車両軌道が赤である)について示されている。DCEは、その時間的瞬間におけるそれら2つのシーン要素間の距離、TTCEは、任意の時刻(例えば、現在)からTCEまでの(相対的な)時間長さである(DCE及びTTCEについては、
図4の図示上部中央を参照されたい)。これらの特徴量は、将来リスク(複数)が極大となる位置やそれらの形を表すものであるので、リスクマップ構築の近道である。