(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[全体構成]
図1は、本発明の実施形態の例である、自動ドア装置101の全体構成を示す概略図である。
自動ドア装置101は、扉102a、102bと、扉102a、102bを開閉駆動する開閉機構103と、開閉機構103を駆動するモータ104と、モータ104を駆動制御するモータ駆動制御装置105と、モータ駆動制御装置105に接続される光電スイッチ106等の人感センサよりなる。人感センサは赤外線スイッチ等も利用可能であるが、本発明に直接的には関係しないので、詳細な説明は割愛する。
なお、これ以降、扉102a及び102bは、特に区別しない場合、扉102と総称する。
【0010】
モータ104は周知のブラシレス三相交流モータである。モータ104には回転角位相を検出するための、
図2で後述する3個のホール素子206が内蔵されている。ホール素子206はモータ104の回転に伴ってパルスを出力する、位置センサとしての機能を有する。
モータ駆動制御装置105は、交流電源107から電力の供給を受けて、PWM制御にて周波数及び電圧を可変した三相交流をモータ104に供給して、モータ104の回転速度を制御する。
図1中、モータ駆動制御装置105は、モータ104の回転速度制御に際し、人感センサと、ホール素子206以外にはセンサ類の情報を取得しない。
【0011】
[モータ駆動制御装置105]
図2は、モータ駆動制御装置105と、モータ104の構成と接続関係を示すブロック図である。
交流電源107には周知のダイオードブリッジ201が接続される。交流電源107から生じる交流電圧はダイオードブリッジ201で全波整流された後、コンデンサC202によって脈流成分が平滑化され、直流電圧に変換される。
この直流電圧はインバータ203に供給され、三相交流ブラシレスモータであるモータ104を回転駆動する。インバータ203は周知のインテリジェントパワーモジュールである。インバータ203は、マイコンよりなる制御部204によって制御される。また、インバータ203には短絡検出部205が接続されている。
モータ104には、u相を検出するホール素子206u、v相を検出するホール素子206v、及びw相を検出するホール素子206wが内蔵されており、制御部204に位置情報を供給する。これ以降、ホール素子206u、206v及び206wを区別しない時はホール素子206と総称する。
【0012】
図3は、インバータ203及び短絡検出部205の回路図である。
プラス側電源端子には、P側U相IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)301PU、P側V相IGBT301PV及びP側W相IGBT301PWのコレクタがそれぞれ接続されている。
P側U相IGBT301PUのエミッタには、N側U相IGBT301NUのコレクタが接続されている。同様に、P側V相IGBT301PVのエミッタにはN側V相IGBT301NVのコレクタが、P側W相IGBT301PWのエミッタにはN側W相IGBT301NWのコレクタが接続されている。
P側U相IGBT301PUのエミッタとN側U相IGBT301NUのコレクタとの接続点は、モータ104のu相端子に接続される。同様に、P側V相IGBT301PVのエミッタとN側V相IGBT301NVのコレクタとの接続点は、モータ104のv相端子に、P側W相IGBT301PWのエミッタとN側W相IGBT301NWのコレクタとの接続点は、モータ104のw相端子に接続される。すなわち、P側U相IGBT301PUのエミッタとN側U相IGBT301NUのコレクタとの接続点、P側V相IGBT301PVのエミッタとN側V相IGBT301NVのコレクタとの接続点及びP側W相IGBT301PWのエミッタとN側W相IGBT301NWのコレクタとの接続点から、三相交流が生成される。
【0013】
P側U相IGBT301PUのゲート、P側V相IGBT301PVのゲート及びP側W相IGBT301PWのゲートは、P側ゲート駆動回路302Pに接続される。すなわち、P側U相IGBT301PU、P側V相IGBT301PV及びP側W相IGBT301PWは、P側ゲート駆動回路302Pによってオンオフ制御される。
N側U相IGBT301NUのゲート、N側V相IGBT301NVのゲート及びN側W相IGBT301NWのゲートは、N側ゲート駆動回路302Nに接続される。すなわち、N側U相IGBT301NU、N側V相IGBT301NV及びN側W相IGBT301NWは、N側ゲート駆動回路302Nによってオンオフ制御される。
N側U相IGBT301NUのエミッタとマイナス側電源端子との間には、U相シャント抵抗R303Uが接続されている。同様に、N側V相IGBT301NVのエミッタとマイナス側電源端子との間には、V相シャント抵抗R303Vが、N側W相IGBT301NWのエミッタとマイナス側電源端子との間には、W相シャント抵抗R303Wが接続されている。
【0014】
N側U相IGBT301NUのエミッタとU相シャント抵抗R303Uの接続点は、U相コンパレータ304Uのマイナス側入力端子が接続されている。同様に、N側V相IGBT301NVのエミッタとV相シャント抵抗R303Vの接続点は、V相コンパレータ304Vのマイナス側入力端子が、N側W相IGBT301NWのエミッタとW相シャント抵抗R303Wの接続点は、W相コンパレータ304Wのマイナス側入力端子が接続されている。
U相コンパレータ304Uのプラス側入力端子、V相コンパレータ304Vのプラス側入力端子、W相コンパレータ304Wのプラス側入力端子には、それぞれ参照電圧源305が接続されている。U相コンパレータ304Uの出力端子、V相コンパレータ304Vの出力端子、W相コンパレータ304Wの出力端子は、それぞれNNANDゲート306の入力端子に接続されている。U相コンパレータ304U、V相コンパレータ304V及びW相コンパレータ304Wの何れか一つでも論理が偽(低電位)になった場合、NANDゲート306の論理が真(高電位)になり、保護回路307がこれを検出して、N側ゲート駆動回路302Nを停止制御する。
また、保護回路307の出力信号は、制御部204に出力される。
【0015】
[制御部204]
図4は、制御部204のハードウェア構成を示すブロック図である。
周知のマイコンよりなる制御部204は、CPU401、ROM402、RAM403、第一シリアルインターフェース(
図3A中「シリアルI/F」と略記、以下「シリアルI/F」と略す)404、そして第二シリアルI/F405が、バス406に接続されている。
第一シリアルI/F404には、モータ104に内蔵されているホール素子206と、インバータ203の保護回路307の出力信号が供給される。
第二シリアルI/F405には、インバータ203のP側ゲート駆動回路302P及びN側ゲート駆動回路302Nが接続される。
図4中、「u+」、「v+」及び「w+」の端子はP側ゲート駆動回路302Pへ、「u−」、「v−」及び「w−」の端子はN側ゲート駆動回路302Nへ、それぞれ接続される。
【0016】
図5は、制御部204のソフトウェア機能を示すブロック図である。
ホール素子206からのパルスは、カウンタ501と速度算出部502に入力される。カウンタ501は、3個のホール素子206からのパルスを計数する。カウンタ501の値は、モータ104の回転量、転じて自動ドア装置101における扉102の移動量に相当する。
速度算出部502は、図示しないシステムクロック等でホール素子206からのパルスの周期を測定し、モータ104の回転速度を算出する。
【0017】
速度算出部502が出力する速度情報と、カウンタ501が出力する計数値は、速度制御部503に入力される。速度制御部503は、現在のモータ104の移動量に対する目標速度を速度プロファイル510から得て、これに対する現在のモータ104の速度を比較して、モータ104の速度を目標速度に追従するように制御するための演算を行う。そして、速度制御部503が演算した制御情報はPWM制御部504に送られ、インバータ203を制御する。
速度制御部503は、図示しない速度電圧対応テーブルを内蔵する。速度制御部503は、目標速度に対して、目標速度に対応する電圧を出力するための情報を、PWM制御部504に与える。
【0018】
速度制御部503は、扉102を開ける時と閉める時、そして異常状態に基づいて緊急停止を行う時に稼働する。状態制御部505は、光電スイッチ106等の人感センサと、インバータ203の保護回路307から得られる短絡検出結果を受けて、速度制御部503に対する指示を実行する。また、状態制御部505はこの他にも、プロファイル演算部506、第一衝突検出部507、第二衝突検出部508及び停止検出部509に対して指示を行うと共に、第一衝突検出部507、第二衝突検出部508及び停止検出部509から検出結果を得る。
【0019】
プロファイル演算部506は、状態制御部505から演算指示を受けた時点の、カウンタ501の計数値から目標計数値までの速度プロファイル510と、
図7にて後述する、速度プロファイル510に基づくトルクリミット電圧プロファイル511及び衝突検出速度プロファイル512を算出する。
【0020】
第一衝突検出部507は、タイマを内蔵し、所定時間以内にホール素子206のパルスが来ていないことを検出すると、扉102が何らかの障害物に衝突したと判断し、その旨の判定結果を出力する。
停止検出部509は、タイマを内蔵し、所定時間以内にホール素子206のパルスが来ていないことを検出すると、扉102が停止位置に衝突したと判断し、その旨の判定結果を出力する。
【0021】
第二衝突検出部508は、速度算出部502から得たモータ104の現在速度が、カウンタ501から得たモータ104の現在位置から衝突検出速度プロファイル512に定められたモータ104の速度下限値未満であれば、扉102が何らかの障害物に衝突したと判断し、その旨の判定結果を出力する。
【0022】
[状態遷移]
図6は、自動ドア装置101の状態遷移図である。
閉状態S601は、扉102が閉じている状態である。この閉状態S601において、制御部204は人感センサによる人の存在の有無を確認し続ける(S602)。
閉状態S601において、人感センサが人の存在を検出したら(S603)、制御部204は閉状態S601から扉102の開放駆動制御を行う、開動作状態S604に移行する。この開動作状態S604において、制御部204は
図7で後述する速度プロファイル510及び衝突検出速度プロファイル512に基づき、扉102に対する衝突の検出(S605)及び停止の検出(S606)を続ける。
開動作状態S604において、扉102の停止を検出したら(S607)、制御部204はオープンタイマを起動して(S608)、扉102を開放し続ける、開状態S609に移行する。この開状態S609において、制御部204はオープンタイマのカウントを行う(S610)と共に、人感センサが人の存在を検出したら(S611)、オープンタイマをリセットする(S612)。つまり、扉102が開いた状態において、人が扉102近辺に存在し続ける限り、扉102は開いた状態を維持する。
【0023】
開状態S609において、オープンタイマが所定時間を計時したら(S613)、制御部204は開状態S609から扉102の閉鎖駆動制御を行う、閉動作状態S614に移行する。この閉動作状態S614において、制御部204は開動作状態S604と同様の、
図7で後述する速度プロファイル510及び衝突検出速度プロファイル512に基づき、扉102に対する衝突の検出(S615)及び停止の検出(S616)を続ける。また、閉動作状態S614ではこれに加え、人感センサによる人の存在の有無(S617)を確認し続ける。
閉動作状態S614において、扉102の停止を検出したら(S618)、制御部204は扉102が閉じている状態の閉状態S601に移行する。
【0024】
開動作状態S604において、扉102の衝突を検出したら(S619)、制御部204は第一の緊急停止動作状態S620に移行する。この第一の緊急停止動作状態S620において、制御部204は扉102の停止の検出を続ける(S621)。
第一の緊急停止動作状態S620において、扉102の停止を検出したら(S622)、制御部204はオープンタイマを起動して(S623)、扉102を緊急停止位置に留め続ける、第一の緊急停止状態S624に移行する。この第一の緊急停止状態S624において、制御部204はオープンタイマのカウントを行う(S625)と共に、人感センサが人の存在を検出したら(S626)、オープンタイマをリセットする(S627)。つまり、扉102が緊急停止位置で停止している状態において、人が扉102近辺に存在し続ける限り、扉102は緊急停止位置に留まり続ける。
第一の緊急停止状態S624において、オープンタイマが所定時間を計時したら(S628)、制御部204は第一の緊急停止状態S624から扉102の閉鎖駆動制御を行う、閉動作状態S614に移行する。
【0025】
閉動作状態S614において、人感センサが人の存在を検出したか、または扉102の衝突を検出したら(S629)、制御部204は第二の緊急停止動作状態S630に移行する。この第二の緊急停止動作状態S630において、制御部204は扉102の停止の検出を続ける(S631)。
第二の緊急停止動作状態S630において、扉102の停止を検出したら(S632)、制御部204は1秒タイマを起動して(S633)、扉102を緊急停止位置に留め続ける、第二の緊急停止状態S634に移行する。この第二の緊急停止状態S634において、制御部204は1秒タイマのカウントを行う(S635)。
第二の緊急停止状態S634において、1秒タイマが1秒を計時したら(S636)、制御部204は第二の緊急停止状態S634から扉102の開放駆動制御を行う、開動作状態S604に移行する。
【0026】
[速度プロファイル510]
図7は、速度プロファイル510と、衝突検出速度プロファイル512と、トルクリミット電圧プロファイル511を示す図である。
図7は扉102を閉状態S601から開状態S609に至るまでの速度プロファイル510等を示す図であり、横軸は左から右へ、カウンタ501の計数値が0から所定の値まで増大する。しかしながら、この
図7に示す速度プロファイル510等は、扉102を開状態S609から閉状態S601に至るまでの速度プロファイル510等も全く同じである。その際、横軸は左から右へ、カウンタ501の計数値の最大値から0まで減少する。
【0027】
速度プロファイル510は、周知のいわゆる台形速度制御に準ずる。すなわち、加速期間、高速期間、減速期間を有する。本実施形態の制御部204は、減速期間に加えて、モータ104を低速度で駆動する低速期間を設けている。
モータ104が停止状態である位置p0から、モータ104が最高速度に至る位置p1までは、一定の加速度でモータ104の回転速度が増加する加速期間である。
モータ104が最高速度に至った位置p1から位置p2までは、モータ104の回転速度が最高速度を維持したまま推移する高速期間である。
位置p2から、モータ104が低速度に至る位置p3までは、一定の加速度でモータ104の回転速度が減少する減速期間である。
モータ104が低速速度に至った位置p3から位置p4までは、モータ104の回転速度が低速速度を維持したまま推移する低速期間である。
【0028】
このような速度プロファイル510に対し、一定の速度差を以って、位置p0からp2まで、衝突検出速度プロファイル512が設けられている。すなわち、モータ104の位置に対し、現在のモータ104の回転速度がこの衝突検出速度プロファイル512に定義される衝突検出回転速度未満であった場合には、扉102が何らかの障害物に衝突したと判断する。この、衝突検出速度プロファイル512に基づく衝突検出処理を実施する機能が、第二衝突検出部508である。
【0029】
衝突検出速度プロファイル512は、速度プロファイル510から所定の速度差を差し引いて作成されるが、これだけではモータ104の位置p0から所定の位置(
図7中の位置P701)まで、衝突検出速度プロファイル512が0以下の値になってしまう位置が生じてしまう。そこで、モータ104が停止状態である位置p0からモータ104の回転速度が所定の回転速度に至るまでは、モータ104が回転しているか否かを検出するためのタイマを別途設ける。この、タイマを用いたモータ104の衝突検出処理を実施する機能が、第一衝突検出部507である。
【0030】
衝突検出速度プロファイル512が設定されている範囲は、位置p0から位置p2までである。これ以降の位置p2から位置p4までは、扉102が何らかの障害物に衝突したとしても、衝突とは検出せずに、扉102が停止したものとして扱う。この、タイマを用いたモータ104の停止検出処理を実施する機能が、停止検出部509である。
【0031】
このような速度プロファイル510に対し、一定の速度差に相当する電圧差を以って、位置p1からp4まで、トルクリミット電圧プロファイル511が設けられている。すなわち、速度制御部503は、モータ104の現在位置に対し、現在モータ104に与えている電圧がこのトルクリミット電圧プロファイル511に定義される電圧を超えないように、PWM制御部504へ制御情報を出力する。
例えば、モータ104が高速速度において50Vで駆動される場合、トルクリミット電圧はモータ104の最大許容電圧未満の、例として70Vと設定する。
もし、トルクリミット電圧プロファイル511を設けないと、モータ104が経年劣化によって、印加される電圧に対して期待する速度を得られなくなると、速度制御部503は際限なくモータ104に高い電圧を印加してしまい、モータ104が焼損する虞がある。トルクリミット電圧プロファイル511を設定することで、このような事故を防止できる。
【0032】
一例として、扉102が閉位置にある時にカウンタ501の計数値が0であり、扉102が開位置にある時にカウンタ501の計数値が3000であるものとする。
扉102が閉位置から開位置へ開く、
図6における開動作状態S604において、先ず、プロファイル演算部506は、制御モードの判定の際に必要になる、カウンタ501の計数値を演算する。
前述の通り、モータ104は加速期間(p0〜p1)、高速期間(p1〜p2)、減速期間(p2〜p3)、低速期間(p3〜p4)の順で制御モードが変わる。このうち、高速期間の終了位置かつ減速期間の開始位置であるp2と、低速期間の終了位置、すなわち扉102の停止位置であるp4は固定値であり、ROM402に記憶されている。また、低速期間の開始位置であるp3は、実際には制御の動作中、考慮しない。つまり、速度制御部503はp3における速度のみを見ている。
プロファイル演算部506は、最初に、現在のカウンタ501の計数値(p0)から、予めROM402に記憶されている加速度に基づいて、加速期間の終了位置であるp1を算出する。こうして、プロファイル演算部506はp0、p1、p2及びp4から速度プロファイル510を作成する。そして、作成した速度プロファイル510から、プロファイル演算部506は衝突検出速度プロファイル512及びトルクリミット電圧プロファイル511を作成する。但し、速度制御部503が速度制御を開始すると、プロファイル演算部506は速度算出部502から得られた現在のモータ104の速度から、速度プロファイル510の、加速期間の終了位置であるp1を更新し、これに基づいて衝突検出速度プロファイル512をリアルタイムで更新する。このように衝突検出速度プロファイル512を更新し続けることで、モータ104や開閉機構103の劣化によって、扉102の速度が低下した状態を、第二衝突検出部508が衝突であると誤検出することを防止できる。
通常の開動作状態S604では、プロファイル演算部506は加速期間をカウンタ501の係数値が0から150、高速期間をカウンタ501の係数値が151から2700、減速期間をカウンタ501の係数値が2701から2850、低速期間をカウンタ501の係数値が2851から3000と算出する。そして、これらp0〜p4に基いて、速度プロファイル510、トルクリミット電圧プロファイル511及び衝突検出速度プロファイル512を演算する。
但し、扉102が閉動作状態S614の途中で衝突を検出して(S629)、再び開動作状態S604に移行する場合、カウンタ501の初期値p0は「0」ではない、扉102の現在位置の値になる。この時、プロファイル演算部506はカウンタ501の初期値(p0)を以って速度プロファイル510、トルクリミット電圧プロファイル511及び衝突検出速度プロファイル512を演算する。
【0033】
以上、
図7にて説明した制御部204によるモータ104の速度制御は、ホール素子206が出力するパルス信号のみを用いている。電流を検出するためのU相シャント抵抗R303U、V相シャント抵抗R303V及びW相シャント抵抗R303Wは、モータ104に異常電流が流れたか否かを検出するのみであり、速度制御には全く用いていない。
【0034】
[動作]
図8は、制御部204によるモータ104の速度制御を示すフローチャートである。
図6における開動作状態S604の詳細である。
処理を開始すると(S801)、状態制御部505はプロファイル演算部506に速度プロファイル510、衝突検出速度プロファイル512及びトルクリミット電圧プロファイル511の演算を指示する。プロファイル演算部506は状態制御部505の命令に従い、現在のカウンタ501の計数値から、速度プロファイル510、衝突検出速度プロファイル512及びトルクリミット電圧プロファイル511を算出する(S802)。そして、状態制御部505は第一衝突検出部507に内蔵されている衝突検出タイマを起動して(S803)、速度制御部503にモータ104の速度制御を指示する。速度制御部503は状態制御部505の命令に従い、モータ104の速度制御を実行する(S804)。
【0035】
速度制御部503は、カウンタ501から得られるモータ104の現在位置情報と、速度算出部502から得られるモータ104の回転速度と、速度プロファイル510を参照して、速度制御を行う。そして、状態制御部505は第一衝突検出部507のカウンタ501がモータ104の停止を検出したか否かを確認する(S805)。第一衝突検出部507が、モータ104が停止状態であると判定したならば(S805のYES)、状態制御部505は内部のステータス情報を「緊急停止」に書き換える(S806)。そして速度制御部503は緊急停止処理を実行して(S807)、処理を停止する(S808)。
【0036】
ステップS805において、第一衝突検出部507が、モータ104が停止状態でないと判定したならば(S805のNO)、状態制御部505は次に、第二衝突検出部508がモータ104の停止を検出したか否かを確認する(S809)。第二衝突検出部508が、モータ104が停止状態であると判定したならば(S809のYES)、状態制御部505は内部のステータス情報を「緊急停止」に書き換える(S806)。そして速度制御部503は緊急停止処理を実行して(S807)、処理を終了する(S808)。
【0037】
ステップS809において、第二衝突検出部508が、モータ104が停止状態でないと判定したならば(S809のNO)、状態制御部505は次に、現在の扉102の位置、すなわちカウンタ501の計数値が、位置p2に至ったか否かを確認する(S810)。未だ扉102の位置が位置p2に至っていないのであれば(S810のNO)、状態制御部505は再度ステップS805から衝突検出処理を繰り返す。
ステップS805からS810までは、加速期間と高速期間の処理である。すなわち、第一衝突検出部507と第二衝突検出部508が動作して、この期間における扉102の衝突を検出すると、緊急停止処理(S806及びS807)を行う。
【0038】
ステップS810において、扉102の位置(カウンタ501の計数値)が位置p2に至ったならば(S810のYES)、状態制御部505は第一衝突検出部507のタイマを停止して、停止検出部509のタイマを起動する(S811)。
状態制御部505は次に、停止検出部509がモータ104の停止を検出したか否かを確認する(S812)。停止検出部509が、モータ104が停止状態であると判定したならば(S812のYES)、状態制御部505は内部のステータス情報を「停止」に書き換える(S813)。そして速度制御部503は停止処理を実行して(S814)、処理を終了する(S808)。
【0039】
ステップS812において、停止検出部509が、モータ104が停止状態でないと判定したならば(S812のNO)、状態制御部505は次に、現在の扉102の位置、すなわちカウンタ501の計数値が最大値、すなわち位置p4に至ったか否かを確認する(S815)。未だ扉102の位置が位置p4に至っていないのであれば(S815のNO)、状態制御部505は再度ステップS812から停止検出処理を繰り返す。
ステップS815において、扉102の位置(カウンタ501の計数値)が位置p4に至ったならば(S815のYES)、状態制御部505は内部のステータス情報を「停止」に書き換える(S813)。そして速度制御部503は停止処理を実行して(S814)、処理を停止する(S808)。
ステップS811からS815までは、減速期間と低速期間の処理である。すなわち、停止検出部509が動作して、この期間における扉102の衝突を検出すると、停止処理(S813及びS814)を行う。
【0040】
図8に示すフローチャートは、
図6における開動作状態S604を詳述したものであるが、閉動作状態S614でも同様の処理になる。但し、閉動作状態S614の場合、人感センサの検出処理がステップS805からS810の間に含まれる。また、ステップS815はカウンタ501が最小値に至ったか否かを検証することとなる。
【0041】
本実施形態においては、自動ドア装置101を開示した。
制御部204は、公知の正弦波駆動制御によるモータ104のPWM制御を行う。但し、その制御の根拠となる信号はモータ104に内蔵されるホール素子206のみである。速度プロファイル510を作成したら、速度プロファイル510の下限値となる衝突検出速度プロファイル512と、速度プロファイル510の上限値に相当するトルクリミット電圧プロファイル511を作成する。
制御部204は、扉102の位置が減速期間に至るまでは、モータ104の回転速度が衝突検出速度プロファイル512で規定する回転速度を下回った場合に、モータ104が何らかの物体に衝突したものとして、緊急停止処理を行う。
一方で、扉102の位置が減速期間に至ったら、ホール素子206の信号が一定時間以内に来なかった場合に、扉102が停止位置に至ったものとして、制御部204は扉102の停止処理を行う。つまり、制御部204は仮に減速期間において扉102が何らかの異物に衝突したとしても、それを異物に衝突したものとは扱わず、あくまでも停止処理とする。
更に、制御部204は、モータ104や開閉機構103の経年劣化を考慮して、モータ104に印加する電圧がトルクリミット電圧プロファイル511を超えないようにPWM制御を行う。
このように、制御における「速度の下限」と「電圧の上限」を定めることで、本実施形態の自動ドア装置101は、簡素な制御でありながら、安全性を担保できる。
【0042】
本実施形態の自動ドア装置101は、正弦波駆動制御を採用しながら、ホール素子206から得られる情報だけで扉102の衝突や停止位置を検出するため、制御に要する演算量は少なく、また安全性を確保するためのセンサの増設も不要である。また、制御部204は、モータ104には常にトルクリミット電圧プロファイル511で規定された最大電圧以上の電圧は印加されないように制御を行うため、モータ104が焼損するような事故が極めて起き難い。
【0043】
更に、トルクリミット電圧プロファイル511を設けることで、モータ104や開閉機構103の経年劣化が容易に把握できる。また、衝突検出速度プロファイル512は、モータ104や開閉機構103等の故障や不具合の検出にも役立つ。制御部204をインターネットに接続して、保守サービスを行う業者のサーバと通信を行うことで、瞬時かつリアルタイムにこれら不具合の情報を把握して、迅速な保守サービスを提供することも可能である。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、他の変形例、応用例を含む。
例えば、上記した実施形態は本発明をわかりやすく説明するために装置及びシステムの構成を詳細且つ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることは可能であり、更にはある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
また、上記の各構成、機能、処理部等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計するなどによりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行するためのソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の揮発性あるいは不揮発性のストレージ、または、ICカード、光ディスク等の記録媒体に保持することができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。