【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的は、請求項1に記載の鉄合金材料の製造方法、請求項
6に記載の鉄合金材料、及び請求項
10に記載の部品によって達成される。
【0007】
鉄合金材料を含む部品の製造方法において、プレアロイ粉末が用意される。プレアロイ粉末は、いかなる適切な粒子の大きさ、又は、粒子の大きさの分布であってもよい。しかしながら、100μm未満の粒子の大きさのプレアロイ粉末を処理することが好ましい。例えば、アルゴン不活性雰囲気でスプレーエアレーションにより製造され、約40μmの平均粒子直径を有するプレアロイ粉末が使用されてもよい。プレアロイ粉末は、重量%で、0.01から1%のC、0.01から30%のMn、6%以下のAl、及び0.05から6.0%のSiを含み、残りとしてFeと、例えばP及び/又はSのような通常の混入物質を含む。好ましい実施態様において、プレアロイ粉末は、重量%で、0.04から1%のC、9から24%のMn、0.05から4%のAl、及び0.05から6.0%のSiを含み、残りとしてFeと通常の混入物質を含む。しかしながら、Alを全く含まないプレアロイを使用することも考えられる。
【0008】
プレアロイにおいては、合金元素Mnは、特に9%以上の含有量で添加される時に、生体内の環境での腐食速度を増加させ、それにより、そのプレアロイは純粋な鉄より生体腐食性の材料として用いるのにより好適になる。さらに、Mnはオーステナイトの安定剤として作用し、プレアロイのミクロ組織内に面心立方のγ鉄を形成することを促進する。強磁性のα鉄と比較して、常磁性のγ鉄は従来の磁気共鳴(MR)装置の磁界と干渉せず、それにより、プレアロイを移植物の材料として使用することを意図している場合は、プレアロイのミクロ組織内の主要な相とされるべきである。さらに、プレアロイ内の複数の合金元素は、プレアロイが双晶誘起塑性及び変態誘起塑性の少なくとも一方を示すことができる積層欠陥エネルギーを有する混合された結晶構造を持つように、選択され、添加される。
【0009】
合金元素Cの添加は、積層欠陥エネルギーの線形の増加をもたらす。さらに、Cはプレアロイの強度のみならず、双晶が形成されるそばで起こる変形のメカニズムにも影響を与える。加えて、CはMnと同様にオーステナイトの安定剤として作用する。合金元素Alの添加も、積層欠陥エネルギーの線形の増加をもたらす。さらに、Alはフェライト安定剤として作用し、プレアロイのミクロ組織内に体心立方のα鉄を形成することを促進する。最後に、Alは水素誘起の脆化と遅効性の亀裂を防ぐ作用をする。
【0010】
Siがプレアロイに添加される時、積層欠陥エネルギーは最初はSi含有量の増加につれて増加するが、さらにSiを添加した時は、元の状態へ減少する。SiはAlと同様にフェライト安定剤として作用し、合金の強度と損耗耐性の両方を向上させる。最後に、Siには鉄炭化物の形成を防ぐ作用があり、それにより、冶金学的方法による半仕上げの製品の加工特性を高める。
【0011】
元素のAgの粉末、元素のAuの粉末、元素のPdの粉末、及び、元素のPtの粉末のうち少なくとも一つをプレアロイ粉末に混合して、Ag、Au、Pd、及び、Ptのうち少なくとも一つを0.1から20%含む粉末の混合物を製造する。本発明の方法の特に好ましい実施態様においては、元素のAgの粉末が0.1から20%の含有量でプレアロイ粉末に添加される。プレアロイ粉末と同様に、元素のAgの粉末、元素のAuの粉末、元素のPdの粉末、及び元素のPtの粉末のうち少なくとも一つは、どのような適切な粒子の大きさ又は粒子の大きさの分布であってもよい。しかしながら、100μm未満の粒子の大きさの粉末を処理することが好ましい。
【0012】
プレアロイ粉末と、元素のAgの粉末、元素のAuの粉末、元素のPdの粉末、及び、元素のPtの粉末のうち少なくとも一つを含む粉末の混合物は、粉末塗布手段によってキャリア上に塗布される。キャリアはプロセスチャンバー内に配置され、粉末の混合物が塗布される表面を備えた、しっかりと固定されたキャリアでもよい。しかしながら、好ましくは、キャリアは垂直方向に変位可能に設計される。キャリアを収容するプロセスチャンバーは、プロセスチャンバー内を制御された雰囲気、特に不活性の雰囲気に維持可能とするために、雰囲気に対して、すなわち、プロセスチャンバーを取り囲む環境に対して密封可能とされてもよい。
【0013】
最後に、照射手段によって、キャリア上に塗布された粉末の混合物を電磁放射線又は粒子放射線で選択的に照射して、累積的な積層造形法により粉末の混合物から部品を製造する。照射手段は、好ましくは、粉末粒子の位置選択的な溶融を引き起こす、粉末の混合物上への放射線を照射するように適合される。照射手段は、少なくとも一つの放射源、特にレーザー光源、及び、放射源によって放出される放射ビームを誘導及び/又は処理する少なくとも一つの光学ユニットを備えてもよい。光学ユニットは、例えば、対物レンズ、特にf−θレンズ、及びスキャナ部のような光学要素を有していてよく、スキャナ部は回折光学素子と屈折鏡を有することが好ましい。
【0014】
キャリア上に塗布された粉末層を電磁放射線又は粒子放射線で選択的に照射することによって、部品の第1の層がキャリア上に形成される。部品の作製に使用される累積的な積層造形法は、さらに、部品の既に作製された層の高さを相殺するようにキャリアを繰り返し垂直方向に変位させる工程と、その部品の既に作製された層が粉末によって被覆されるようにキャリア上にさらに粉末の層を塗布する工程と、部品のさらに上の層を作製するように、部品の既に作製された層の上に塗布された粉末の層を選択的に照射する工程を含んでもよい。
【0015】
本発明の方法では、部品はプレアロイ粉末と、元素のAgの粉末、元素のAuの粉末、元素のPdの粉末、及び元素のPtの粉末のうち少なくとも一つを含む粉末の混合物から、たとえ部品が複雑な形状をしていても非常に効率的な方法で作製されることができる。粉末塗布手段と照射手段の制御は、作製される部品のCADデータに基づいて行われる。これらのCADデータは、例えば、MRデータ、コンピュータ断層撮影(CT)データ等のような通常の診断データから取り出すことができる。このように、本発明の方法は個別に設計された移植物を製造するのに特に好適である。
【0016】
本発明の方法によって作製される部品は、完全に、上述の粉末の混合物を照射して作製される鉄合金材料から構成されてもよい。しかしながら、部品が部分的に鉄合金材料から作製され、その部品が他の金属又は非金属材料も含むことも考えられる。これらの材料は、累積的な積層造形法で処理されてもよいし、又は、鉄合金材料よりなる部品に他の適切な結合方法によって結合されてもよい。
【0017】
本発明の方法によって製造される部品は、部品作製に使用されるプレアロイ粉末の組成により、変形の際に、双晶誘起塑性及び変態誘起塑性の少なくとも一方を示し、それにより優れた機械的特性を示す鉄合金材料から構成される。さらに、Ag、Au、Pd、及びPtのうち少なくとも一つを添加することにより、生体内の環境での材料の腐食速度を著しく向上させることができる。6.5のpHで0.9%のNaCl水溶液内で7日間実施した腐食試験では、5重量%のAgを添加したプレアロイの質量損失が2.3mg/cm
2試料表面/日であるのに比べて、(Feと通常の混入物質の他に)重量%で、0.6のC、22.4%のMn、0.25%のV、0.2%のCr、及び0.25%のSiを含む鉄プレアロイでは1.7mg/cm
2試料表面/日であることが明らかになった。このように、部品は生体腐食性の移植物の部品として特に好適である。
【0018】
AuやPtが生体内の環境で材料の腐食速度を向上させるのに効果的である一方で、これらの合金元素はどちらかと言えば高価である。しかしながら、本発明による累積的な積層造形法では、AuやPtのような高価な原材料を含む部品であっても手頃な価格で製造できるように、部品を原材料を節約する方法で作製可能にする。PdはAuやPtより安価であるが、生体内に放出される時は、その毒性に関して全く問題がないわけではないかもしれない。AgはAuほど高価ではない。しかしながら、液体の鉄への不溶性から、鉄合金材料を含むAgは従来の鋳造方法では製造することができない。しかしながら、驚くべきことに、上述した鉄合金材料と添加物としてAgを含む材料を、本発明による累積的な積層造形法によって製造することができる。このように、本発明の方法を、優れた機械的特性のみならず、望ましい生体腐食特性を備え、かつ、従来の冶金学的方法によっては製造することができない生体腐食性の材料を製造するために用いることができる。
【0019】
鉄合金材料を含む部品の製造方法の好ましい実施態様において、プレアロイ粉末は、さらに、2%以下の含有量のCr、2%以下の含有量のCu、2%以下の含有量のTi、2%以下の含有量のCo、2%以下の含有量のZr、2%以下の含有量のV、2%以下の含有量のNb、2%以下の含有量のTa、及び、0.2%以下の含有量のBのうち少なくとも一つを含む。どの場合でも、合金元素の添加は、プレアロイのTWIP効果が室温で維持されるように適合されねばならない。さらに、合金元素の生体適合性が考慮されねばならず、Ti、Zr、Nb、及びTaはこの点において特に好適である。
【0020】
鉄合金材料を含む部品の製造方法において、元素のAgの粉末、元素のAuの粉末、元素のPdの粉末、及び、元素のPtの粉末のうち少なくとも一つを、プレアロイ粉末に混合して、Ag、Au、Pd、及び、Ptのうち少なくとも一つを20%以下、好ましくは15%以下、特に10%以下、とりわけ5%以下含む粉末の混合物を製造してもよい。それに加えて、又は、それに代わり、元素のAgの粉末、元素のAuの粉末、元素のPdの粉末、及び、元素のPtの粉末のうち少なくとも一つを、プレアロイ粉末に混合して、Ag、Au、Pd、及び、Ptのうち少なくとも一つを0.5%以上、特に1%以上、とりわけ2%以上含む粉末の混合物を製造してもよい。
【0021】
プレアロイ粉末に混合される元素のAgの粉末、元素のAuの粉末、元素のPdの粉末、及び、元素のPtの粉末のうち少なくとも一つの適切な量は、作製される鉄合金材料部品の所望の特性に依存して調整されるべきである。一面において、添加物Ag、Au、Pd、及び/又はPtの含有量は、作製する部品の所望の高い生体腐食速度を提供するために、十分に高くするべきである。他の面において、過剰のAg、Au、Pd、及び/又はPtは、もし生体内で部品が劣化する際に放出されるAg、Au、Pd、及び/又はPtの量が許容閾値を超えるならば、部品の生体適合性に影響を与える可能性がある。さらに、作製される鉄合金材料のミクロ組織内に存在するAg、Au、Pd、及び/又はPtの量は、プレアロイの所望の双晶誘起塑性及び/又は変態誘起塑性の挙動が影響を受けないことを確実にするために、十分に少なくするべきである。
【0022】
鉄合金材料を含む部品の製造方法の特に好ましい実施態様において、粉末塗布手段と照射手段の作動は、電磁放射線又は粒子放射線で照射される際に、複数の局所的な融液溜まりが粉末の混合物内に形成されるように制御される。融液溜まりの中では、プレアロイと元素のAg、元素のAu、元素のPd、及び、元素のPtのうち少なくとも一つは液体状態である。融液溜まりの大きさは、粉末の混合物を照射する放射ビームの大きさとエネルギーに依存し、通常は放射ビームのスポットの直径より大きい。粉末の混合物を照射する放射ビームの典型的なスポットの直径は100μm以下である。しかしながら、どのような場合においても、融液溜まりの大きさは、製造される部品の大きさと比較して遥かに小さい。その結果として、融液溜まり内の液体の金属は、高い凝固速度で凝固する。好ましくは、粉末塗布手段と照射手段の作動は、複数の局所的な融液溜まり内の融液が約7×10
6K/sまでの凝固速度で凝固するように制御される。
【0023】
プレアロイより高い密度を持つことにより、元素の添加物は融液溜まりの表面に「浮遊」することはなく、その代わりに、融液溜まりの底の方向に、すなわち、製造される部品の既に形成された複数の層の方向に、重力駆動で沈む。しかしながら、融液溜まり内の液体金属の高い凝固速度により、融液は元素の添加物の堆積物が融液溜まりの底に形成される前に凝固する。従って、融液が凝固する際に、液体の元素の添加物は、元素の添加物が低い溶解性を持つ、又は、Agのように液体のFeに完全に不溶性である場合であっても、プレアロイの融液内にほとんど均等に分布する。このようにして、結果として得られる鉄合金材料内で、ミクロ組織が得られ、元素の添加物は鉄合金基質内で精密に分散され、均等に分布する。
【0024】
製造された部品は、その機械的特性を改変するために、熱処理されてもよい。例えば、不活性雰囲気、特には真空中で、1050℃の温度で、1時間の熱処理が、材料の平均グレイン(結晶)サイズを増すのに有効である。その結果として、降伏強度が下がる。しかしながら、TWIP効果は材料の顕著な強化とそれによる破壊ひずみの増加につながる。熱処理の時間と温度を適切に変更することにより、降伏強度と破壊ひずみが調整され得る。さらに、熱処理は回復及び/又は再結晶化を促進するために実行されてもよい。従って、200℃から1100℃の温度で、1分から24時間の熱処理が必要に応じて行われてもよい。
【0025】
本発明による鉄合金材料は、重量%で、0.01から1%のC、0.01から30%のMn、6%以下のAl、0.05から6.0%のSi、及び、0.1から20%のAgを含み、残りとしてFeと、例えばP及び/又はSのような通常の混入物質を含む。好ましい実施態様において、鉄合金材料は、重量%で、0.04から1%のC、9.0から24.0%のMn、0.05から4%のAl、0.05から6.0%のSi、0.1から20%のAgを含み、残りとしてFeと通常の混入物質を含む。しかしながら、Alを全く含まないプレアロイを使用することも考えられる。Fe融液内への液体Agの不溶性により、本発明による鉄合金材料は、従来の冶金学的な方法では製造することができない。しかしながら、驚くべきことに、上述の累積的な積層造形法を用いることによって、鉄合金材料を製造することが可能になる。
【0026】
鉄合金材料は、好ましくは、さらに、2%以下の含有量のCr、2%以下の含有量のCu、2%以下の含有量のTi、2%以下の含有量のCo、2%以下の含有量のZr、2%以下の含有量のV、2%以下の含有量のNb、2%以下の含有量のTa、及び、0.2%以下の含有量のBのうち少なくとも一つを含む。
【0027】
鉄合金材料のAg含有量は、好ましくは、15%以下、特に10%以下、とりわけ5%以下である。それに加えて、又は、それに代えて、鉄合金材料のAg含有量は、0.5%以上、特に1%以上、とりわけ2%以上でもよい。
【0028】
鉄合金材料のミクロ組織において、好ましくは、Agは鉄合金基質内に分散したAg粒子の形態で存在する。Ag粒子は、30から50μmの範囲の粒子の大きさでもよい。一般的に、高い腐食速度を達成するために、Ag粒子は大きさが小さく、鉄合金材料基質内部に精密に分布されるべきである。それに加えて、又は、それに代えて、鉄合金材料のミクロ組織において、鉄合金材料の塑性変形の際に、双晶誘起塑性及び変態誘起塑性の少なくともいずれか一方を示す鉄合金基質が存在する。その結果として、鉄合金材料は優れた機械的諸特性を示す。
【0029】
本発明による部品は、上述の鉄合金材料を含む。部品は完全に鉄合金材料から構成されてもよい。しかしながら、部品は一部分だけが鉄合金材料から構成されることも考えられる。部品は、特には生体内に移植することを意図した移植物の部品である。好ましくは、部品は生体内の環境に晒されたときに、腐食し、経時的に分解する生体腐食性の部品である。