特許第6232016号(P6232016)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスエルエム ソルーションズ グループ アーゲーの特許一覧

<>
  • 特許6232016-鉄合金材料を含む部品の製造方法 図000003
  • 特許6232016-鉄合金材料を含む部品の製造方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232016
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】鉄合金材料を含む部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 3/16 20060101AFI20171106BHJP
   B22F 3/105 20060101ALI20171106BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20171106BHJP
   C22C 38/38 20060101ALI20171106BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20171106BHJP
   B33Y 70/00 20150101ALI20171106BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20171106BHJP
【FI】
   B22F3/16
   B22F3/105
   C22C38/00 304
   C22C38/38
   B33Y10/00
   B33Y70/00
   B33Y80/00
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-167606(P2015-167606)
(22)【出願日】2015年8月27日
(65)【公開番号】特開2016-65304(P2016-65304A)
(43)【公開日】2016年4月28日
【審査請求日】2015年10月7日
(31)【優先権主張番号】14182482.1
(32)【優先日】2014年8月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514298748
【氏名又は名称】エスエルエム ソルーションズ グループ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ニーンドルフ
(72)【発明者】
【氏名】ハンス ユルゲン マイアー
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン ブレンネ
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ シャーパー
(72)【発明者】
【氏名】グイド グルンドマイアー
(72)【発明者】
【氏名】ディーター シュヴァルツェ
【審査官】 田口 裕健
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−184700(JP,A)
【文献】 特開2001−254151(JP,A)
【文献】 特開2006−249491(JP,A)
【文献】 特開2014−105373(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0198320(US,A1)
【文献】 特開平03−232942(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00− 8/00
C22C 38/00−38/60
B33Y 10/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄合金材料を含む部品の製造方法であって、
プレアロイ粉末を、重量%で、0.01から1%のC、9から30%のMn、6%以下のAl、及び、0.05から6.0%のSiを含み、任意選択で2%以下の含有量のCr、2%以下の含有量のCu、2%以下の含有量のTi、2%以下の含有量のCo、2%以下の含有量のZr、2%以下の含有量のV、2%以下の含有量のNb、2%以下の含有量のTa、及び、0.2%以下の含有量のBのうち少なくとも一つを含み、残部はFe及び不可避的不純物からなるように用意する工程と、
元素のAgの粉末、元素のAuの粉末、元素のPdの粉末、及び、元素のPtの粉末のうち少なくとも一つを、前記プレアロイ粉末に混合して、Ag、Au、Pd、及び、Ptのうち少なくとも一つを0.1から20%含む粉末の混合物を製造する工程と、
粉末塗布手段(14)によって、キャリア(16)上に前記粉末の混合物を塗布する工程と、
照射手段(18)によって、前記キャリア(16)上に塗布された前記粉末の混合物を電磁放射線又は粒子放射線で選択的に照射して、累積的な積層造形法により前記粉末の混合物から部品を製造する工程とを有することを特徴とする方法。
【請求項2】
元素のAgの粉末、元素のAuの粉末、元素のPdの粉末、及び、元素のPtの粉末のうち少なくとも一つを、前記プレアロイ粉末に混合して、Ag、Au、Pd、及び、Ptのうち少なくとも一つを15%以下含む粉末の混合物を製造することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
元素のAgの粉末、元素のAuの粉末、元素のPdの粉末、及び、元素のPtの粉末のうち少なくとも一つを、前記プレアロイ粉末に混合して、Ag、Au、Pd、及び、Ptのうち少なくとも一つを0.5%以上含む粉末の混合物を製造することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記粉末塗布手段(14)と照射手段(18)の作動は、電磁放射線又は粒子放射線で照射される際に、複数の局所的な融液溜まりが前記粉末の混合物内に形成され、かつ、前記複数の局所的な融液溜まり内の融液が7×10K/sの凝固速度で凝固するように制御されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記製造された部品を、200℃から1100℃の温度で、1分から24時間、不活性雰囲気で熱処理することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
鉄合金材料であって、
重量%で、0.01から1%のC、9から30%のMn、6%以下のAl、0.05から6.0%のSi、及び、0.1から20%のAgを含み、任意選択で2%以下の含有量のCr、2%以下の含有量のCu、2%以下の含有量のTi、2%以下の含有量のCo、2%以下の含有量のZr、2%以下の含有量のV、2%以下の含有量のNb、2%以下の含有量のTa、及び、0.2%以下の含有量のBのうち少なくとも一つを含み、残部はFe及び不可避的不純物からなるものであり、
前記鉄合金材料のミクロ組織において、Agは鉄合金基質内に均等に分散した、30から50μmの粒径を有するAg粒子の形態で存在するものであることを特徴とする鉄合金材料。
【請求項7】
前記鉄合金材料のAg含有量は、15%以下であることを特徴とする請求項6に記載の鉄合金材料。
【請求項8】
前記鉄合金材料のAg含有量が、0.5%以上であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の鉄合金材料。
【請求項9】
前記鉄合金材料のミクロ組織において、前記鉄合金材料の塑性変形の際に、双晶誘起塑性及び変態誘起塑性の少なくともいずれか一方を示す鉄合金基質が存在するものであることを特徴とする請求項6から請求項のいずれか一項に記載の鉄合金材料。
【請求項10】
部品であって、
求項6から請求項のいずれか一項に記載の鉄合金材料を含む医療用の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄合金材料を含む部品の製造方法、鉄合金材料、及び部品、特には、鉄合金材料を含む移植物(インプラント)の部品に関する。
【背景技術】
【0002】
医療用の移植物は、現代の外科技術において重要な役割を果たしている。限られた期間だけ患者の体内の所定の位置で機能することを意図された移植物は、経時的に生体内の環境によって分解される、生物分解性又は生物腐食性の材料から作製され得る。従って、患者の体から移植物を取り除く追加の外科的処置を避けることができる。式Fe−Mn−Xで表される生体腐食性の鉄合金が、EP 2 087 915 A2に開示されている。この鉄合金においては、Mnの含有量は5から30重量%である。XはPt、Pd、Ir、Rh、Re、Ru、及びOsのグループから選択される少なくとも一つの元素であり、合金内に0から20重量%の含有量で存在する。
【0003】
粉末層融解は、粉末の、特に、金属、及び/又は、セラミックの原材料を複雑な形状の三次元ワークピースに加工することができる累積的な積層プロセスである。このために、原材料粉末の層がキャリア上に塗布され、製造されるワークピースの所望の幾何学的形状に依存して、位置選択的な方法でレーザー放射される。粉末層の中に浸透したレーザー放射は、原材料粉末粒子を加熱し、その結果として、融解又は焼結を引き起こす。さらに、ワークピースが所望の形状と大きさになるまで、原材料粉末の複数の層が、既にレーザー処理された、キャリア上の層に連続的に塗布される。粉末層融解プロセスによって、粉末の原材料から成形体を製造する装置については、例えば、EP 1 793 979 B1に記載されている。粉末層融解は、CADデータに基づいて、試作品、工具、交換部品、高価値部品又は医療人工器官の製造のために使用され得る。
【0004】
Materials Characterization 85 (2013) 57〜63ページの「レーザー選択溶融によって処理された双晶誘起塑性を示す鋼−添加により製造される高性能材料」という表題のT.Niendrof及びF.Brenneによる論文には、粉末層融解により双晶誘起塑性(TWIP)を示すオーステナイトの高マンガン鋼の処理について記載されている。双晶誘起塑性を示す鋼においては、塑性変形により鋼のミクロ組織内に双晶構造が形成され、その結果として、高い強度、良好な延性、及び並外れた歪硬化で特徴付けられる優れた機械的特性を生ずる。さらに、オーステナイトの高マンガン鋼は、変態誘起塑性(TRIP)も示してもよく、すなわち、これらの鋼の塑性変形によりオーステナイトからマルテンサイトへのミクロ組織の変態を生じてもよく、向上した機械的特性につながる。粉末層融解により処理されたTWIP鋼は、従来法で処理されたTWIP鋼と類似の機械的諸特性を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、生体腐食性の鉄合金材料を含む部品、特に移植物の部品を製造する効果的かつ効率的な方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、コスト効率の良い生体腐食性の鉄合金材料とそのような鉄合金材料を含む部品、特に移植物の部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的は、請求項1に記載の鉄合金材料の製造方法、請求項に記載の鉄合金材料、及び請求項10に記載の部品によって達成される。
【0007】
鉄合金材料を含む部品の製造方法において、プレアロイ粉末が用意される。プレアロイ粉末は、いかなる適切な粒子の大きさ、又は、粒子の大きさの分布であってもよい。しかしながら、100μm未満の粒子の大きさのプレアロイ粉末を処理することが好ましい。例えば、アルゴン不活性雰囲気でスプレーエアレーションにより製造され、約40μmの平均粒子直径を有するプレアロイ粉末が使用されてもよい。プレアロイ粉末は、重量%で、0.01から1%のC、0.01から30%のMn、6%以下のAl、及び0.05から6.0%のSiを含み、残りとしてFeと、例えばP及び/又はSのような通常の混入物質を含む。好ましい実施態様において、プレアロイ粉末は、重量%で、0.04から1%のC、9から24%のMn、0.05から4%のAl、及び0.05から6.0%のSiを含み、残りとしてFeと通常の混入物質を含む。しかしながら、Alを全く含まないプレアロイを使用することも考えられる。
【0008】
プレアロイにおいては、合金元素Mnは、特に9%以上の含有量で添加される時に、生体内の環境での腐食速度を増加させ、それにより、そのプレアロイは純粋な鉄より生体腐食性の材料として用いるのにより好適になる。さらに、Mnはオーステナイトの安定剤として作用し、プレアロイのミクロ組織内に面心立方のγ鉄を形成することを促進する。強磁性のα鉄と比較して、常磁性のγ鉄は従来の磁気共鳴(MR)装置の磁界と干渉せず、それにより、プレアロイを移植物の材料として使用することを意図している場合は、プレアロイのミクロ組織内の主要な相とされるべきである。さらに、プレアロイ内の複数の合金元素は、プレアロイが双晶誘起塑性及び変態誘起塑性の少なくとも一方を示すことができる積層欠陥エネルギーを有する混合された結晶構造を持つように、選択され、添加される。
【0009】
合金元素Cの添加は、積層欠陥エネルギーの線形の増加をもたらす。さらに、Cはプレアロイの強度のみならず、双晶が形成されるそばで起こる変形のメカニズムにも影響を与える。加えて、CはMnと同様にオーステナイトの安定剤として作用する。合金元素Alの添加も、積層欠陥エネルギーの線形の増加をもたらす。さらに、Alはフェライト安定剤として作用し、プレアロイのミクロ組織内に体心立方のα鉄を形成することを促進する。最後に、Alは水素誘起の脆化と遅効性の亀裂を防ぐ作用をする。
【0010】
Siがプレアロイに添加される時、積層欠陥エネルギーは最初はSi含有量の増加につれて増加するが、さらにSiを添加した時は、元の状態へ減少する。SiはAlと同様にフェライト安定剤として作用し、合金の強度と損耗耐性の両方を向上させる。最後に、Siには鉄炭化物の形成を防ぐ作用があり、それにより、冶金学的方法による半仕上げの製品の加工特性を高める。
【0011】
元素のAgの粉末、元素のAuの粉末、元素のPdの粉末、及び、元素のPtの粉末のうち少なくとも一つをプレアロイ粉末に混合して、Ag、Au、Pd、及び、Ptのうち少なくとも一つを0.1から20%含む粉末の混合物を製造する。本発明の方法の特に好ましい実施態様においては、元素のAgの粉末が0.1から20%の含有量でプレアロイ粉末に添加される。プレアロイ粉末と同様に、元素のAgの粉末、元素のAuの粉末、元素のPdの粉末、及び元素のPtの粉末のうち少なくとも一つは、どのような適切な粒子の大きさ又は粒子の大きさの分布であってもよい。しかしながら、100μm未満の粒子の大きさの粉末を処理することが好ましい。
【0012】
プレアロイ粉末と、元素のAgの粉末、元素のAuの粉末、元素のPdの粉末、及び、元素のPtの粉末のうち少なくとも一つを含む粉末の混合物は、粉末塗布手段によってキャリア上に塗布される。キャリアはプロセスチャンバー内に配置され、粉末の混合物が塗布される表面を備えた、しっかりと固定されたキャリアでもよい。しかしながら、好ましくは、キャリアは垂直方向に変位可能に設計される。キャリアを収容するプロセスチャンバーは、プロセスチャンバー内を制御された雰囲気、特に不活性の雰囲気に維持可能とするために、雰囲気に対して、すなわち、プロセスチャンバーを取り囲む環境に対して密封可能とされてもよい。
【0013】
最後に、照射手段によって、キャリア上に塗布された粉末の混合物を電磁放射線又は粒子放射線で選択的に照射して、累積的な積層造形法により粉末の混合物から部品を製造する。照射手段は、好ましくは、粉末粒子の位置選択的な溶融を引き起こす、粉末の混合物上への放射線を照射するように適合される。照射手段は、少なくとも一つの放射源、特にレーザー光源、及び、放射源によって放出される放射ビームを誘導及び/又は処理する少なくとも一つの光学ユニットを備えてもよい。光学ユニットは、例えば、対物レンズ、特にf−θレンズ、及びスキャナ部のような光学要素を有していてよく、スキャナ部は回折光学素子と屈折鏡を有することが好ましい。
【0014】
キャリア上に塗布された粉末層を電磁放射線又は粒子放射線で選択的に照射することによって、部品の第1の層がキャリア上に形成される。部品の作製に使用される累積的な積層造形法は、さらに、部品の既に作製された層の高さを相殺するようにキャリアを繰り返し垂直方向に変位させる工程と、その部品の既に作製された層が粉末によって被覆されるようにキャリア上にさらに粉末の層を塗布する工程と、部品のさらに上の層を作製するように、部品の既に作製された層の上に塗布された粉末の層を選択的に照射する工程を含んでもよい。
【0015】
本発明の方法では、部品はプレアロイ粉末と、元素のAgの粉末、元素のAuの粉末、元素のPdの粉末、及び元素のPtの粉末のうち少なくとも一つを含む粉末の混合物から、たとえ部品が複雑な形状をしていても非常に効率的な方法で作製されることができる。粉末塗布手段と照射手段の制御は、作製される部品のCADデータに基づいて行われる。これらのCADデータは、例えば、MRデータ、コンピュータ断層撮影(CT)データ等のような通常の診断データから取り出すことができる。このように、本発明の方法は個別に設計された移植物を製造するのに特に好適である。
【0016】
本発明の方法によって作製される部品は、完全に、上述の粉末の混合物を照射して作製される鉄合金材料から構成されてもよい。しかしながら、部品が部分的に鉄合金材料から作製され、その部品が他の金属又は非金属材料も含むことも考えられる。これらの材料は、累積的な積層造形法で処理されてもよいし、又は、鉄合金材料よりなる部品に他の適切な結合方法によって結合されてもよい。
【0017】
本発明の方法によって製造される部品は、部品作製に使用されるプレアロイ粉末の組成により、変形の際に、双晶誘起塑性及び変態誘起塑性の少なくとも一方を示し、それにより優れた機械的特性を示す鉄合金材料から構成される。さらに、Ag、Au、Pd、及びPtのうち少なくとも一つを添加することにより、生体内の環境での材料の腐食速度を著しく向上させることができる。6.5のpHで0.9%のNaCl水溶液内で7日間実施した腐食試験では、5重量%のAgを添加したプレアロイの質量損失が2.3mg/cm試料表面/日であるのに比べて、(Feと通常の混入物質の他に)重量%で、0.6のC、22.4%のMn、0.25%のV、0.2%のCr、及び0.25%のSiを含む鉄プレアロイでは1.7mg/cm試料表面/日であることが明らかになった。このように、部品は生体腐食性の移植物の部品として特に好適である。
【0018】
AuやPtが生体内の環境で材料の腐食速度を向上させるのに効果的である一方で、これらの合金元素はどちらかと言えば高価である。しかしながら、本発明による累積的な積層造形法では、AuやPtのような高価な原材料を含む部品であっても手頃な価格で製造できるように、部品を原材料を節約する方法で作製可能にする。PdはAuやPtより安価であるが、生体内に放出される時は、その毒性に関して全く問題がないわけではないかもしれない。AgはAuほど高価ではない。しかしながら、液体の鉄への不溶性から、鉄合金材料を含むAgは従来の鋳造方法では製造することができない。しかしながら、驚くべきことに、上述した鉄合金材料と添加物としてAgを含む材料を、本発明による累積的な積層造形法によって製造することができる。このように、本発明の方法を、優れた機械的特性のみならず、望ましい生体腐食特性を備え、かつ、従来の冶金学的方法によっては製造することができない生体腐食性の材料を製造するために用いることができる。
【0019】
鉄合金材料を含む部品の製造方法の好ましい実施態様において、プレアロイ粉末は、さらに、2%以下の含有量のCr、2%以下の含有量のCu、2%以下の含有量のTi、2%以下の含有量のCo、2%以下の含有量のZr、2%以下の含有量のV、2%以下の含有量のNb、2%以下の含有量のTa、及び、0.2%以下の含有量のBのうち少なくとも一つを含む。どの場合でも、合金元素の添加は、プレアロイのTWIP効果が室温で維持されるように適合されねばならない。さらに、合金元素の生体適合性が考慮されねばならず、Ti、Zr、Nb、及びTaはこの点において特に好適である。
【0020】
鉄合金材料を含む部品の製造方法において、元素のAgの粉末、元素のAuの粉末、元素のPdの粉末、及び、元素のPtの粉末のうち少なくとも一つを、プレアロイ粉末に混合して、Ag、Au、Pd、及び、Ptのうち少なくとも一つを20%以下、好ましくは15%以下、特に10%以下、とりわけ5%以下含む粉末の混合物を製造してもよい。それに加えて、又は、それに代わり、元素のAgの粉末、元素のAuの粉末、元素のPdの粉末、及び、元素のPtの粉末のうち少なくとも一つを、プレアロイ粉末に混合して、Ag、Au、Pd、及び、Ptのうち少なくとも一つを0.5%以上、特に1%以上、とりわけ2%以上含む粉末の混合物を製造してもよい。
【0021】
プレアロイ粉末に混合される元素のAgの粉末、元素のAuの粉末、元素のPdの粉末、及び、元素のPtの粉末のうち少なくとも一つの適切な量は、作製される鉄合金材料部品の所望の特性に依存して調整されるべきである。一面において、添加物Ag、Au、Pd、及び/又はPtの含有量は、作製する部品の所望の高い生体腐食速度を提供するために、十分に高くするべきである。他の面において、過剰のAg、Au、Pd、及び/又はPtは、もし生体内で部品が劣化する際に放出されるAg、Au、Pd、及び/又はPtの量が許容閾値を超えるならば、部品の生体適合性に影響を与える可能性がある。さらに、作製される鉄合金材料のミクロ組織内に存在するAg、Au、Pd、及び/又はPtの量は、プレアロイの所望の双晶誘起塑性及び/又は変態誘起塑性の挙動が影響を受けないことを確実にするために、十分に少なくするべきである。
【0022】
鉄合金材料を含む部品の製造方法の特に好ましい実施態様において、粉末塗布手段と照射手段の作動は、電磁放射線又は粒子放射線で照射される際に、複数の局所的な融液溜まりが粉末の混合物内に形成されるように制御される。融液溜まりの中では、プレアロイと元素のAg、元素のAu、元素のPd、及び、元素のPtのうち少なくとも一つは液体状態である。融液溜まりの大きさは、粉末の混合物を照射する放射ビームの大きさとエネルギーに依存し、通常は放射ビームのスポットの直径より大きい。粉末の混合物を照射する放射ビームの典型的なスポットの直径は100μm以下である。しかしながら、どのような場合においても、融液溜まりの大きさは、製造される部品の大きさと比較して遥かに小さい。その結果として、融液溜まり内の液体の金属は、高い凝固速度で凝固する。好ましくは、粉末塗布手段と照射手段の作動は、複数の局所的な融液溜まり内の融液が約7×10K/sまでの凝固速度で凝固するように制御される。
【0023】
プレアロイより高い密度を持つことにより、元素の添加物は融液溜まりの表面に「浮遊」することはなく、その代わりに、融液溜まりの底の方向に、すなわち、製造される部品の既に形成された複数の層の方向に、重力駆動で沈む。しかしながら、融液溜まり内の液体金属の高い凝固速度により、融液は元素の添加物の堆積物が融液溜まりの底に形成される前に凝固する。従って、融液が凝固する際に、液体の元素の添加物は、元素の添加物が低い溶解性を持つ、又は、Agのように液体のFeに完全に不溶性である場合であっても、プレアロイの融液内にほとんど均等に分布する。このようにして、結果として得られる鉄合金材料内で、ミクロ組織が得られ、元素の添加物は鉄合金基質内で精密に分散され、均等に分布する。
【0024】
製造された部品は、その機械的特性を改変するために、熱処理されてもよい。例えば、不活性雰囲気、特には真空中で、1050℃の温度で、1時間の熱処理が、材料の平均グレイン(結晶)サイズを増すのに有効である。その結果として、降伏強度が下がる。しかしながら、TWIP効果は材料の顕著な強化とそれによる破壊ひずみの増加につながる。熱処理の時間と温度を適切に変更することにより、降伏強度と破壊ひずみが調整され得る。さらに、熱処理は回復及び/又は再結晶化を促進するために実行されてもよい。従って、200℃から1100℃の温度で、1分から24時間の熱処理が必要に応じて行われてもよい。
【0025】
本発明による鉄合金材料は、重量%で、0.01から1%のC、0.01から30%のMn、6%以下のAl、0.05から6.0%のSi、及び、0.1から20%のAgを含み、残りとしてFeと、例えばP及び/又はSのような通常の混入物質を含む。好ましい実施態様において、鉄合金材料は、重量%で、0.04から1%のC、9.0から24.0%のMn、0.05から4%のAl、0.05から6.0%のSi、0.1から20%のAgを含み、残りとしてFeと通常の混入物質を含む。しかしながら、Alを全く含まないプレアロイを使用することも考えられる。Fe融液内への液体Agの不溶性により、本発明による鉄合金材料は、従来の冶金学的な方法では製造することができない。しかしながら、驚くべきことに、上述の累積的な積層造形法を用いることによって、鉄合金材料を製造することが可能になる。
【0026】
鉄合金材料は、好ましくは、さらに、2%以下の含有量のCr、2%以下の含有量のCu、2%以下の含有量のTi、2%以下の含有量のCo、2%以下の含有量のZr、2%以下の含有量のV、2%以下の含有量のNb、2%以下の含有量のTa、及び、0.2%以下の含有量のBのうち少なくとも一つを含む。
【0027】
鉄合金材料のAg含有量は、好ましくは、15%以下、特に10%以下、とりわけ5%以下である。それに加えて、又は、それに代えて、鉄合金材料のAg含有量は、0.5%以上、特に1%以上、とりわけ2%以上でもよい。
【0028】
鉄合金材料のミクロ組織において、好ましくは、Agは鉄合金基質内に分散したAg粒子の形態で存在する。Ag粒子は、30から50μmの範囲の粒子の大きさでもよい。一般的に、高い腐食速度を達成するために、Ag粒子は大きさが小さく、鉄合金材料基質内部に精密に分布されるべきである。それに加えて、又は、それに代えて、鉄合金材料のミクロ組織において、鉄合金材料の塑性変形の際に、双晶誘起塑性及び変態誘起塑性の少なくともいずれか一方を示す鉄合金基質が存在する。その結果として、鉄合金材料は優れた機械的諸特性を示す。
【0029】
本発明による部品は、上述の鉄合金材料を含む。部品は完全に鉄合金材料から構成されてもよい。しかしながら、部品は一部分だけが鉄合金材料から構成されることも考えられる。部品は、特には生体内に移植することを意図した移植物の部品である。好ましくは、部品は生体内の環境に晒されたときに、腐食し、経時的に分解する生体腐食性の部品である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
本発明の好ましい実施態様が、以下で添付の図面を参照してより詳細に説明される。
【0031】
図1】累積的な積層造形法による、鉄合金材料を含む部品の製造装置を示す概略図である。
図2】鉄合金材料のミクロ組織のSEM/BSE顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、累積的な積層造形法により部品を製造する装置10を示している。装置10は、プロセスチャンバー12を備える。プロセスチャンバー12内に配置される粉末塗布手段14は、キャリア16上に原材料粉末を塗布する機能を持つ。プロセスチャンバー12は、雰囲気に対して、すなわち、プロセスチャンバー12を取り囲む環境に対して密封可能とされる。キャリア16は、部品がキャリア16上の原材料粉末から層状に積み上げられる際、部品の製造高さが増すにつれて、キャリア16が垂直方向における下方向に移動させられることができるように、垂直方向に変位可能に設計される。
【0033】
装置10が鉄合金材料を含む部品を製造するために使用される場合は、粉末塗布手段14には、Ag、Au、Pd、及び、Ptのうち少なくとも一つを0.1から20%含む粉末の混合物を製造するように、元素のAgの粉末、元素のAuの粉末、元素のPdの粉末、及び、元素のPtの粉末のうち少なくとも一つをプレアロイ粉末に混合することによって得られる粉末の混合物が供給される。必要なら、Ag、Au、Pd、及び、Ptのうち少なくとも一つを15%以下、特に10%以下、とりわけ5%以下含む粉末の混合物が製造されてもよい。さらに、Ag、Au、Pd、及び、Ptのうち少なくとも一つを0.5%以上、特に1%以上、とりわけ2%以上含む粉末の混合物を製造することが考えられる。
【0034】
プレアロイ粉末は、重量%で、0.01から1%のC、0.01から30%のMn、6%以下のAl、及び、0.05から6.0%のSi、残りとしてFeと通常の混入物質を含む。必要ならば、プレアロイ粉末は、さらに、2%以下の含有量のCr、2%以下の含有量のCu、2%以下の含有量のTi、2%以下の含有量のCo、2%以下の含有量のZr、2%以下の含有量のV、2%以下の含有量のNb、2%以下の含有量のTa、及び、0.2%以下の含有量のBのうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0035】
装置10は、さらに、キャリア16上に塗布された原材料粉末をレーザー放射で選択に照射する照射手段18を備えている。照射手段18によって、キャリア18上に塗布された原材料粉末は、製造される部品の所望の幾何学的形状に依存して位置選択的な方法でレーザー放射されてもよい。照射手段18は密封可能なハウジング20を備えている。放射源24によって供給される放射ビーム22、特に、例えば、約1070から1080nmの波長のレーザー光を放出するダイオード励起イッテルビウムファイバーレーザーを備えることができるレーザー光源によって供給されるレーザービームが、開口部26を通してハウジング20の中に向けられる。
【0036】
照射手段18は、さらに、放射ビーム22を誘導し、処理する光学ユニット28を備えている。光学ユニット28は、放射ビーム22を広げるビームエキスパンダー、スキャナ、及び複数の対物レンズを備えていてよい。その代わりに、光学ユニット28は集束光学部品とスキャナ部を含むビームエキスパンダーを有していてもよい。スキャナ部により、ビーム路の方向とビーム路に垂直な面内の両方の放射ビーム22の焦点の位置は、変化され、調整されることができる。スキャナ部は、ガルバノメータースキャナの形式で設計されてよいし、対物レンズはf−θ対物レンズでもよい。照射手段18の作動と粉末塗布手段14の作動は、制御ユニット38によって制御される。
【0037】
装置10の作動中に、製造される部品の第1の層が、キャリア16上に塗布された原材料粉末層を放射ビーム22で選択的に照射することによりキャリア16上に作製される。放射ビーム22は、製造する部品のCADデータに従ってキャリア16上に塗布された原材料粉末層の上方に向けられる。製造する部品の第1の層が完成した後、キャリア16は、粉末塗布手段14によって後続の粉末層を塗布することができるように、垂直方向の下方に移動される。その後、その後続の粉末層は照射手段18によって照射される。このように、一層ごとに、部品はキャリア16上に積み上げられる。
【0038】
装置10が鉄合金材料を含む部品を製造するために作動される場合は、粉末塗布手段14と照射手段18の作動は、制御ユニット38によって、放射ビーム22が照射される際に、放射ビーム22からのエネルギー投入により、複数の局所的な融液溜まりがキャリア16上に塗布された粉末の混合物内に形成されるように制御される。典型的には100μm以下の直径を有する放射ビームのスポットの直径よりも通常は大きい融液溜まりの内部では、プレアロイと元素のAg、元素のAu、元素のPd、及び、元素のPtのうちの少なくとも一つが共に液体状態で存在するが、約7×10K/sまでの高い凝固速度で凝固する。
【0039】
プレアロイより高い密度を持つことにより、元素の添加物は融液溜まりの表面に「浮遊」することはなく、その代わりに、融液溜まりの底の方向に、重力駆動で沈む。しかしながら、融液溜まり内の液体金属の高い凝固速度により、融液は元素の添加物の堆積物が融液溜まりの底に形成される前に凝固する。従って、融液が凝固する際に、液体の元素の添加物は、元素の添加物が低い溶解性を持つ、又は、Agのように液体のFeに完全に不溶性である場合であっても、プレアロイの融液内にほとんど均等に分布する。このようにして、結果として得られる鉄合金材料内で、ミクロ組織が得られ、元素の添加物は鉄合金基質内で精密に分散され、均等に分布する。特に、鉄合金材料のミクロ組織において、元素の添加物は鉄合金基質内に分散された粒子の形態で存在する。例えば、粒子は30から50μmの範囲の大きさであってもよい。
【0040】
プレアロイ基質の組成により、鉄合金材料は、変形の際に、双晶誘起塑性及び/又は変態誘起塑性を示す。その結果として、鉄合金材料は、優れた機械的諸特性を示す。さらに、鉄合金材料のミクロ組織内にAg、Au、Pd、及びPtの少なくとも一つが存在することにより、鉄合金材料は、生体内の環境に晒された時に高い腐食速度を示す。従って、部品は生体内に移植される生体腐食性の移植物の部品として使用するのに特に適しており、生体内の環境に晒されたときに、腐食し、経時的に分解する。
【実施例】
【0041】
(実施例)
累積的な積層造形法により鉄合金材料を製造するために、40μmの平均粒子直径を有するプレアロイ粉末が、アルゴン不活性ガス雰囲気でスプレーエアレーションにより製造された。プレアロイ粉末の組成は火花(スパーク)スペクトル測定法によって調べられ、重量%で、Cが0.6%、Mnが22.4%、Vが0.25%、Crが0.2%、及び、Siが0.25%、残りがFeと通常の混入物質であると決定された。
【0042】
プレアロイ粉末には、25から63μmの粒子直径を有する元素のAgの粉末がドラムフープ(hoop)攪拌機内で混合された。Agの粉末は、アルゴン不活性ガス雰囲気でスプレーエアレーションにより得られた。Agを1重量%、2重量%、及び5重量%含む3つの粉末の混合物が得られた。粉末の混合物は、400Wの最大出力を備えるイットリウムファイバーレーザーを用いた、SLM(登録商標)AutoFabソフトウエア(マーカム エンジニアリング ゲーエムベーハー)と組み合わせたSLM(登録商標)250HL装置(エスエルエム ソルーションズ ゲーエムベーハー)を使用してアルゴン雰囲気内で処理された。累積的な積層造形法により粉末の混合物から製造された鉄合金材料のミクロ組織はSEM/BSEによって調べられた。腐食テストは、6.5のpHで0.9%のNaCl水溶液内で7日間実施された。材料の機械的特性は、5μmのサンドペーパーで研磨された8×3×1.5mmの大きさの試料を用いて調べられた。油圧制御の評価装置が20μm/sの変位速度で作動された。
【0043】
Agを1重量%含む粉末の混合物から累積的な積層造形法により製造される鉄合金材料のミクロ組織を図2に示す。鉄合金材料のミクロ組織内において、Agは鉄合金基質内にほとんど精密に分散された粒子の形態で存在する。粒子は30から50μmの範囲の大きさを有する。
【0044】
さらに、鉄合金材料は、鉄合金基質の組成により、変形の際に、変態誘起塑性を示すことが確認された。雰囲気温度での材料の機械的特性を、以下の表1にまとめて示す。
【0045】
【表1】
【0046】
鉄合金材料のミクロ組織内にAgが存在することで高い腐食速度につながる。腐食試験により、5重量%のAgを添加したプレアロイの質量損失が2.3mg/cm試料表面/日であったのに比べ、鉄プレアロイでは1.7mg/cm試料表面/日であることが明らかになった。従って、鉄合金材料は生体腐食性の移植物の部品を製造するのに特に適している。
図1
図2