(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来ケーブルの線心束(カッド撚り線)は、個々の絶縁線心に設けられた凸部および凹部を互いに係合させることにより、カッド形状の崩れを防いでいる。ところが、このような凸部および凹部を有する絶縁線心を製造する工程は、通常の(凸部および凹部を有さない)絶縁線心を製造する工程に比べ、凸部および凹部を精度良く形成する必要がある分だけ煩雑となる。更に、個々の絶縁線心の製造工程の煩雑さに加え、凸部と凹部とを正確に係合させながら絶縁線心を撚り合わせる工程も、通常の絶縁線心を撚り合わせる工程に比べ、凸部と凹部との正確な位置合わせが必要な分だけ煩雑となる。このような煩雑さは、線心束の製造コスト(ひいては、通信ケーブルの製造コスト)を高める原因となり得る。
【0006】
一方、従来ケーブルの線心束の内周に囲まれた領域(中空部分)をなくせば、絶縁線心同士の接触面積が増してカッド形状が崩れ難くなるため、上述した凸部および凹部を排除し得る。しかし、同領域(中空部分)をなくすことは、伝送信号の減衰量特性の低下を引き起こすため、好ましくない。このように、従来ケーブルの線心束(カッド撚り線)では、伝送信号の減衰量特性の向上と、カッド形状の崩れの防止(即ち、漏話減衰量特性の向上)の容易さと、の間に二律背反の関係がある。
【0007】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、絶縁線心をカッド撚りした線心束のカッド形状の崩れを出来る限り単純な構造によって防止できると共に伝送信号の減衰量特性にも優れた線心束、及び、その線心束を用いた通信ケーブル、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するため、本発明に係る線心束は下記(1)及び(2)の特徴を有しており、本発明に係る通信ケーブルは下記(3)の特徴を有している。
(1)
絶縁体によって覆われた導体心線である絶縁線心がカッド撚りされた線心束であって、
該線心束は、
該線心束の軸線に直交する断面において、内周及び外周を有する環形状であって、前記外周の形状が正方形又は正方形の少なくとも1つの辺が前記環形状の径方向内側に湾曲した準正方形である環形状を有し、
前記絶縁線心の各々は、
前記断面において、前記正方形又は前記準正方形の隣接する2つの頂点、及び、前記内周上にある2つの頂点、を含む複数の頂点を結んだ形状を有する、
線心束であること。
(2)
上記(1)に記載の線心束において、
前記内周によって囲まれる領域内に空気が存在している、
線心束であること。
(3)
一又は複数の線心束を有する通信ケーブルであって、
前記線心束は、上記(1)又は上記(2)のいずれか1つに記載の線心束である、
通信ケーブルであること。
【0009】
上記(1)の構成によれば、線心束が外力(例えば、線心束の製造時および使用時などに生じる、線心束を径方向に押しつぶす向きの外力)を受けた場合、線心束の断面形状の外周が正方形等であり且つ絶縁線心の断面形状の頂点がその正方形等の頂点に位置するため、外力を絶縁線心同士の接触面だけでなく外周面によっても支えることができる(例えば、
図4を参照。)。よって、従来ケーブルの線心束のような凸部および凹部を要することなく、線心束のカッド形状の崩れを防止できる。更に、線心束は、環形状を有しているため、内周によって囲まれる中空部分に絶縁体よりも誘電率が小さい材料(例えば、空気および発泡ポリエチレン等)を存在させることにより、中空部分が無い場合に比べ、導体心線間の静電容量が低下して伝送信号の減衰量特性が高まる。したがって、本発明の線心束は、線心束のカッド形状の崩れを従来ケーブルの線心束(凸部および凹部の係合構造)よりも単純な構造によって防止できる(換言すると、漏話減衰量特性を向上できる)と共に、伝送信号の減衰量特性にも優れている。
【0010】
上記(2)の構成によれば、安価に入手可能な空気を線心束の内周によって囲まれる領域(中空部分)に存在させることにより、他の材料(例えば、発泡ポリエチレン等)を同領域に存在させる場合に比べ、線心束の製造コスト(ひいては通信ケーブルの製造コスト)を低減できる。
【0011】
上記(3)の構成によれば、上記(1)と同様、本構成の通信ケーブルは、線心束のカッド形状の崩れを従来ケーブルの線心束(凸部および凹部の係合構造)よりも単純な構造によって防止できると共に、伝送信号の減衰量特性にも優れている。更に、上記(2)と同様、本構成の通信ケーブルは、通信ケーブルの製造コストを低減できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、線心束が環形状を有すると共に、その外周形状が正方形または準正方形となるように各絶縁線心を構成することにより、線心束のカッド形状の崩れを出来る限り単純な構造によって防止できる(換言すると、漏話減衰量特性を向上できる)と共に伝送信号の減衰量特性を高めることができる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<線心束および通信ケーブルの構成>
以下、
図1〜
図3を参照しながら、本発明の一実施形態に係る通信ケーブル10及び線心束20の構成について説明する。
【0016】
図1に示すように、通信ケーブル10は、複数の線心束(カッド撚り線)20と、介在部材30と、押え巻きテープ40と、シース50と、を備えている。通信ケーブル10は、例えば、自動車の車載ネットワーク(CAN)の配線材として用いられる。本実施形態において、通信ケーブル10は、3本の線心束20を備えている。なお、通信ケーブル10が備える線心束20の数は必ずしも3本に限られず、通信ケーブル10は、その用途等に応じて定まる任意の数の線心束20を備え得る。
【0017】
図2(a)に示すように、線心束20は、4本の同一形状の絶縁線心21と、押え巻きテープ22と、を備えている。線心束20は、線心束20の軸線に直交する断面(
図2(a)に示す断面)において、内周および外周を有する環形状を有している。より具体的には、線心束20は、この断面において、内周および外周の形状が正方形である環形状(即ち、四角筒形状)を有している。
【0018】
絶縁線心21は、銅、銅合金、及び、アルミニウム合金などの導電性金属を細径化した導体心線23と、導体心線23を被覆する絶縁体24と、から構成されている。絶縁体24は、ポリ塩化ビニル又はポリエチレン等の熱可塑性樹脂であり、押し出し成形等によって導体心線23の全長に亘ってその周囲を覆うように設けられる。絶縁線心21は、線心束20の軸線に直交する断面(
図2(a)に示す断面)において、上述した正方形の隣接する2つの頂点、及び、内周上にある2つの頂点、を含む4つの頂点を結んだ形状(本例においては台形形状)を有する。
【0019】
より具体的には、
図2(b)に示すように、絶縁体24の外周面25(以下「絶縁線心21の外周面25」ともいう。)は、第1平面部25a、第2平面部25b、第3平面部25c及び第4平面部25dを有している。第1平面部25aは、絶縁体24の外周面25の全長に亘り、導体心線23の長さ方向に導体心線23と平行に形成されている。第2平面部25bは、第1平面部25aと同一幅であり、絶縁体24の外周面25の全長に亘り、導体心線23の長さ方向に導体心線23と平行に形成されている。
【0020】
第3平面部25cは、第1平面部25aの幅方向の一端(
図2(c)における点A)と、第2平面部25bの幅方向の一端(点B)と、を繋ぐように設けられている。一方、第4平面部25dは、第1平面部25aの幅方向の他端(点C)と、第2平面部25bの幅方向の他端(点D)と、を繋ぐように設けられている。別の言い方をすると、
図2(c)に示すように、上述した断面において、線心束20の外周の一部である線分25c(第3平面部25c)は、正方形の頂点A,Bを結ぶ直線に相当する。
【0021】
絶縁体24は、
図2(c)に示すように、その断面形状が等脚台形であるように形成されている。より具体的には、第1平面部25aと第2平面部25bとが台形の脚に相当し、第3平面部25cが台形の下底に相当し、第4平面部25dが台形の上底に相当する。第1平面部25aと第2平面部25bとがなす角度θは、90度である。第3平面部25cと第4平面部25dとは、互いに平行である。
【0022】
換言すると、4本の絶縁線心21は、それらが1つに束ねられる(カッド撚りされると)と1本の四角筒形状(断面の内周および外周が正方形である形状)を形成するように、絶縁体24の外周面25の形状が設計されている。より具体的には、絶縁線心21は、その断面形状が、上述した四角筒を4分割した台形形状であるように設計されている。これにより、絶縁線心21が束ねられたとき、絶縁線心21の第1平面部25a及び第2平面部25bが隣接する他の絶縁線心21の第1平面部25a又は第2平面部25bに密着すると共に、絶縁線心21の第3平面部25cが断面が正方形の外周面を形成し、絶縁線心21の第4平面部25dが断面が正方形の内周面を形成することになる。
【0023】
更に、第4平面部25dによって囲まれる領域(四角筒形状の中空部分)には、空気が存在している。換言すると、導体心線23の間に空気層が存在している。
【0024】
押え巻きテープ22は、例えば、ポリエステル等から構成された不織布テープである。押え巻きテープ22は、四角筒形状に束ねられた4本の絶縁線心21の外周面に螺旋状に巻き付けられ、これら絶縁線心21を束ねられた状態のまま固定する。
【0025】
再び
図1を参照すると、介在部材30は、例えば、ポリプロピレン(PP)等から構成される解繊紙である。介在部材30として、通信ケーブル10の配索時などにおいて通信ケーブル10を自在に曲げることが可能なように、柔軟性(可撓性)を有する材料が用いられることが好ましい。介在部材30は、複数の線心束20の間の隙間を埋めるように、通信ケーブル10の全長に亘って設けられている。
【0026】
押え巻きテープ40は、例えば、上述した押え巻きテープ22と同様のポリエステル等から形成される不織布テープである。押え巻きテープ40は、介在部材30の周囲に隙間なく且つ横断面形状が円形状になるように、通信ケーブル10の全長に亘って通信ケーブル10に螺旋状に巻き付けられている。
【0027】
シース50は、例えば、ポリエチレン等の合成樹脂から形成される絶縁性の可撓性チューブである。シース50は、線心束20と同一の長さを有しており、複数の線心束20、介在部材30及び押え巻きテープ40をその内側に収容する。更に、シース50は、その内周面が押え巻きテープ40に密着するように配置されている。
【0028】
<線心束および通信ケーブルの製造方法>
以下、
図3を参照しながら、通信ケーブル10及び線心束20の製造方法について説明する。
【0029】
まず、通信ケーブル10に用いる線心束20を製造する。線心束20に用いられる絶縁線心21は、例えば、押出ダイ(クロスヘッドダイ等)を備えた押出成形機を用い、予熱した導体心線23を引き出しながらその周囲に溶融した熱可塑性樹脂を重ねて絶縁体24を形成することによって製造する。このとき、絶縁体24(即ち、絶縁線心21)の断面形状が上述した台形形状になるように、ダイの形状が予め設定されている。
【0030】
次いで、上述したように製造した絶縁線心21を、
図3(a)に示すように、分線板Pに設けられた4つの台形孔P1〜P4を貫通させた後、環状の部材Qを貫通させる。分線板Pは、
図3(b)に示すように、円板状に形成されており、4つの台形孔P1〜P4が分線板Pの中心Oに対して対称に設けられている。4つの台形孔P1〜P4の各々は、絶縁線心21の断面形状に応じた台形形状に形成されており、それぞれの上底(
図2(c)の25dを参照。)が分線板Pの中心Oを向くようにして配置されている。これにより、絶縁線心21が部材Qを貫通したとき、絶縁線心21の第4平面部25dが互いに向き合うように配置されることになる。
【0031】
次いで、部材Qを通過した絶縁線心21を、部材Qから離れる向きWに向けて引っ張りながら、絶縁線心21の各々の第1平面部25a及び第2平面部25bが、それぞれ隣接する他の絶縁線心21の第1平面部25a又は第2平面部25bに密着すると共に、各絶縁線心21における第3平面部25c及び第4平面部25dがそれぞれ互いに接するように、絶縁線心21を互いに束ねて撚り合わせていく。即ち、4本の絶縁線心21をカッド撚りする。このように撚り合わされた複数の絶縁線心21は、第3平面部25cが互いに連接され且つ第4平面部25dが互いに連接され、四角筒形状を有することになる。その後、押え巻きテープ40を、撚り合わせられた絶縁線心21の外周面に螺旋状に巻き付ける。
【0032】
以上の工程を経て、線心束20が製造される。
【0033】
次いで、線心束20を3本束ねると共に、それらの間に介在部材30を充填しながら線心束20を断面円形状になるように押え巻きテープ40を巻き付けて固定する。その後、押出成形などによって押え巻きテープ40の周囲にシース50を形成する。
【0034】
以上の工程を経て、通信ケーブル10が製造される。
【0035】
<線心束の外力に対する耐性>
以下、
図4及び
図5を参照しながら、上述したように製造された線心束20の外力に対する耐性について説明する。
【0036】
線心束20は、種々の状況下にて、外力を受ける。例えば、線心束20は、上述した製造工程において通信ケーブル10を形成するために束ねられるとき、一般に、ローラを介して処理装置に向けて送出される。このとき、ローラの外周面に沿って線心束20の送出方向が変化する場合などにおいて、線心束20はローラの表面に押し付けられるような外力を受けることになる。また、通信ケーブル10が形成された後であっても、通信ケーブル10が自動車等に配索される場合において、通信ケーブル10が周辺の部材に押し付けられたとき、通信ケーブル10内の線心束20が外力を受けることになる。
【0037】
図4は、このような外力に対する線心束20の耐性を説明するべく、平板100上に置かれた線心束20に対し、平板100に垂直な方向から線心束20を押しつぶすような外力を線心束20に及ぼした場合における、線心束20の断面形状を示す模式図である。
図4(a)〜(c)は従来の線心束90(断面における外周形状が円形)の外力に対する耐性を表し、
図4(d)〜(f)は本実施形態の線心束20の外力に対する耐性を表す。なお、便宜上、
図4においては、線心束20及び線心束90の双方において、押え巻きテープの図示を省略している。
【0038】
まず、
図4(a)に示す従来の線心束90の場合、
図4(b)に示すように、隣接する絶縁線心の接触面の近傍の位置F1に外力を受けた場合、その外力は、絶縁線心91aと絶縁線心91bとの接触面、及び、絶縁線心91cと絶縁線心91dとの接触面を介し、平板100に伝わる。その結果、平板100と線心束90との接点にて外力と逆向きの反力が生じ、その反力が絶縁線心91a,91bの接触面および絶縁線心91c,91dの接触面を介し、外力を受けた位置F1に伝わる。このとき、絶縁線心91a〜91dの各々において、外力と反力とが実質的に釣り合うことになる。そのため、この場合、絶縁線心91a〜91dの位置は実質的に変化せず、線心束90はカッド形状を維持できる。
【0039】
一方、
図4(c)に示すように、絶縁線心の中央周辺の位置F2に外力を受けた場合、絶縁線心間の静摩擦力を外力による摺動方向の力が上回ると、絶縁線心91a,91bの接触面、絶縁線心91a,91cの接触面、絶縁線心91b,91dの接触面、及び、絶縁線心91c,91dの接触面にて、絶縁線心間の滑りが生じる。その結果、カッド形状が崩れる。なお、このとき、外力が平板100に十分に伝わらないため、十分な反力が生じない。そのため、
図4(c)に示す例の場合、カッド形状の崩れは、絶縁線心91b,91cが上下の平板100に接触するまで進行することになる。
【0040】
その結果、
図5に示すように、従来の線心束90を側面から見た場合、外力に対してカッド形状を維持し難い部分(A)と、外力に対してカッド形状を維持し易い部分(B)と、が線心束20の撚りに対応して交互に生じることになる。線心束90の漏話減衰量特性を高める観点において、このようにカッド形状を維持できない部分(A)が生じることは望ましくない。
【0041】
これに対し、
図4(d)に示す本実施形態に係る線心束20の場合、
図4(e)に示すように、隣接する絶縁線心21の接触面の近傍F3に外力を受けた場合、その外力は、絶縁線心21aと絶縁線心21bとの接触面、及び、絶縁線心21cと絶縁線心21dとの接触面を介し、平板100に伝わる。その結果、平板100と線心束20との接点にて外力と逆向きの反力が生じ、その反力が絶縁線心21a,21bの接触面および絶縁線心21c,21dの接触面を介し、外力を受けた位置F1に伝わる。このとき、絶縁線心21a〜21dの各々において、外力と反力とが実質的に釣り合うことになる。そのため、この場合、
図4(b)に示す例と同様、絶縁線心21a〜21dの位置は実質的に変化せず、線心束20はカッド形状を維持できる。
【0042】
更に、
図4(f)に示すように、絶縁線心21の外周面全体(便宜上、位置F4及びF5)に外力を受けた場合、その外力は、絶縁線心21b,21cの外周面を介して直接に平板100に伝わる。その結果、平板100と絶縁線心21b,21cとの接点にて外力と逆向きの反力が生じ、その反力が絶縁線心21b,21cの外周面を介し、位置F4,F5に伝わる。このとき、絶縁線心21a〜21dの各々において、外力と反力とが実質的に釣り合うことになる。そのため、この場合、絶縁線心21a〜21dの位置は実質的に変化せず、線心束90はカッド形状を維持できる。
【0043】
その結果、
図6に示すように、線心束20を側面から見た場合、従来の線心束90(
図5)に比べ、外力に対してカッド形状を維持し難い部分が少ないことになる。よって、線心束20は、従来の線心束90(
図5)に比べ、外力に対して高い耐性を有する(カッド形状を維持できる)ことになる。
【0044】
以上に説明したように、本実施形態によれば、線心束が外力(例えば、
図4を参照。)を受けた場合、線心束の断面形状の外周が正方形であり且つ絶縁線心の断面形状の頂点がその正方形の頂点に位置するため、外力を絶縁線心同士の接触面だけでなく外周面によっても支えることができる。よって、線心束のカッド形状の崩れを防止でき、漏話減衰量特性を維持できる。更に、線心束は、内周によって囲まれる中空部分に空気を存在させることにより、伝送信号の減衰量特性を向上させられる。
【0045】
<他の実施形態>
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用できる。
【0046】
例えば、上述した実施形態の線心束20は、線心束20の軸線に垂直な断面において、外周および内周が正方形である四角筒形状を有している。しかし、本発明の線心束の外周の断面形状は、必ずしも正方形に限定されない。例えば、
図7に示すように、線心束20が、その軸線に直交する断面において、内周及び外周を有する環形状であって、外周の形状が正方形の少なくとも1つの辺が(
図7においては全ての辺が)環形状の径方向内側に湾曲した形状(準正方形)である環形状を有してもよい。線心束20がこのような断面形状を有する場合であっても、上記説明から理解されるように、従来の線心束90に比べてより確実にカッド形状を維持できることになる。
【0047】
更に、例えば、本発明の線心束の内周の断面形状も、必ずしも正方形に限定されない。例えば、
図8に示すように、線心束20が、その軸線に直交する断面において、内周及び外周を有する環形状であって、内周の形状が円形である環形状を有してもよい。線心束20の伝送信号の減衰量特性を高める観点からは、導体心線の間に存在する低誘電率の物体の層(例えば、空気層)の厚さが大きいほど好ましい。よって、例えば、内周の断面形状を
図2(a)に示す正方形よりも面積が大きい円形とすることにより、線心束20の伝送信号の減衰量特性を
図2(a)に示す例よりも向上させられる。更に、同面積が大きいほど、伝送信号の減衰量特性が高まることになる。なお、円形は一つの例に過ぎず、線心束20の内周の断面形状がその他の形状であっても、導体心線の間に存在する低誘電率の物体の層を厚くできる形状であれば、伝送信号の減衰量特性を向上させられることになる。
【0048】
ここで、上述した本発明に係る線心束の実施形態の特徴を下記(1)〜(3)に簡潔に纏めて列記し、上述した本発明に係る通信ケーブルの実施形態の特徴を下記(4)簡潔に纏めて記載する。
(1)
絶縁体(24)によって覆われた導体心線(23)である絶縁線心(21)がカッド撚りされた線心束(20)であって、
該線心束は、
該線心束の軸線に直交する断面において、内周(25d)及び外周(25c)を有する環形状であって、前記外周(25c)の形状が正方形又は正方形の少なくとも1つの辺が前記環形状の径方向内側に湾曲した準正方形である環形状を有し、
前記絶縁線心(21)の各々は、
前記断面において、前記正方形又は前記準正方形の隣接する2つの頂点(A,B)、及び、前記内周上にある2つの頂点(C,D)、を含む複数の頂点を結んだ形状を有する、
線心束。
(2)
上記(1)に記載の線心束において、
前記内周(25d)によって囲まれる領域内に空気が存在している、
線心束。
(3)
一又は複数の線心束を有する通信ケーブル(10)であって、
前記線心束(20)は、上記(1)又は上記(2)のいずれか一項に記載の線心束である、
通信ケーブル。