(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、キャビティ部に突出する鋳抜きピンの先細りテーパ部に一定角度の抜き勾配を形成した場合、先細りテーパ部の全領域において略均一の離型抵抗が作用する。そのため、先細りテーパ部の全領域に作用した離型抵抗が先細りテーパ部の根元に繰り返し作用し、離型抵抗による金属疲労が先細りテーパ部の根元に蓄積される。そして、蓄積された金属疲労によって最終的には先細りテーパ部の根元が折損に至ってしまう。
【0005】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、キャビティ部へ突出する突出部が有するテーパ部に作用する離型抵抗を低減させてテーパ部の根元が折損に至る不具合を抑制した鋳抜きピンおよびそれが挿入された鋳造用金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
本発明の一態様に係る鋳抜きピンは、鋳造用金型に軸線に沿って形成された挿入穴に挿入され、前記挿入穴の形状に対応するように前記軸線に沿って形成された本体部と、前記本体部の先端側に連結されるとともに前記挿入穴からキャビティ部へ突出する突出部とを備え、前記突出部は、基端側の第1位置から先端側の第2位置に向けて漸次外径が小さくなるとともに勾配変化位置において前記軸線に対する傾斜角度が
前記基端側の第1角度から
前記先端側の第2角度に変化する抜き勾配が形成されたテーパ部を有し、D1<L1
<2・D1を満たす鋳抜きピン。ここで、D1:前記第1位置における前記テーパ部の外径、L1:前記第1位置から前記勾配変化位置までの前記軸線に沿った距離である。
【0007】
本発明の一態様に係る鋳抜きピンによれば、鋳造製品を金型から離型する際の曲げ荷重および引っ張り荷重等(離型抵抗)が作用するテーパ部の基端側の第1位置と先端側の第2位置との間の勾配変化位置において、鋳抜きピンが延びる軸線に対する傾斜角度が変化するようにテーパ部に抜き勾配が形成されている。
第1位置から第2位置へ向けて一定の傾斜角度の抜き勾配を形成した鋳抜きピンにおいては、テーパ部の全領域において略均一の離型抵抗が作用し、テーパ部の基端側に金属疲労が過大に蓄積する。一方、本発明の一態様に係る鋳抜きピンによれば、勾配変化位置の基端側または先端側において傾斜角度の大きい領域が形成されるため、テーパ部の一部の領域において離型抵抗が低減されるため、テーパ部の基端側に蓄積される金属疲労が低減する。
【0008】
発明者らによれば、第1位置から当該位置におけるテーパ部の外径D1に相当する距離だけ離間した位置までの領域において、鋳抜きピンの折損が発生する頻度が高いという知見を得た。また、勾配変化位置を、第1位置から当該位置におけるテーパ部の外径D1に相当する距離だけ離間した位置よりも更に先端側に配置することによりテーパ部の基端側に蓄積される金属疲労が低減するという知見を得た。
そこで、本発明の一態様に係る鋳抜きピンは、D1<L1を満たすようにした。ここで、L1は、第1位置から勾配変化位置までの軸線に沿った距離である。
【0009】
本発明の一態様に係る鋳抜きピンにおいては、前記第1角度が前記第2角度より大きいものであってよい。
このようにすることで、テーパ部の勾配変化位置よりも基端側の領域の離型抵抗を低減し、テーパ部の基端側に蓄積される金属疲労によって鋳抜きピンが折損に至る不具合を抑制することができる。
【0010】
本発明の一態様に係る鋳抜きピンにおいては、前記第2角度が前記第1角度より大きいものであってよい。
このようにすることで、テーパ部の勾配変化位置よりも先端側の領域の離型抵抗を低減し、テーパ部の基端側に蓄積される金属疲労によって鋳抜きピンが折損に至る不具合を抑制することができる。
【0011】
本発明の一態様に係る鋳抜きピンにおいては、前記本体部および前記突出部には、前記軸線に沿って延びる有底穴が内部に形成されているものであってもよい。
このようにすることで、鋳抜きピンの内部に形成される有底穴に冷却水を導く冷却パイプを配置して鋳抜きピンの周囲の鋳造製品を冷却し、鋳造製品の凝固を促進することができる。
【0012】
本発明の一態様に係る鋳造用金型は、上記のいずれかに記載の鋳抜きピンが前記挿入穴に挿入されたものである。
本発明の一態様に係る鋳造用金型によれば、キャビティ部へ突出する突出部が有するテーパ部に作用する離型抵抗を低減させてテーパ部の根元が折損に至る不具合を抑制した鋳抜きピンが挿入された鋳造用金型を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、キャビティ部へ突出する突出部が有するテーパ部に作用する離型抵抗を低減させてテーパ部の根元が折損に至る不具合を抑制した鋳抜きピンおよびそれが挿入された鋳造用金型を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
本発明の第1実施形態のダイカスト鋳造用金型200について、図面を参照して説明する。
図1に示す本実施形態のダイカスト鋳造用金型200は、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等の金属の溶湯を金型に射出して製品の鋳造を行うダイカスト鋳造装置に用いられる金型である。
【0016】
ダイカスト鋳造用金型200は、可動型と固定型とを備える。
図1では、ダイカスト鋳造用金型200の固定型のみが示されている。可動型は、油圧シリンダ等の駆動機構(図示略)によって軸線X1方向に固定型に対して近接または離間する方向に移動する部材である。可動型は、駆動機構によって固定型に対して近接した状態で、可動型と固定型との間に、キャビティ部300を形成する。
【0017】
ダイカスト鋳造装置は、ダイカスト鋳造用金型200のキャビティ部300へ溶湯を射出して冷却することにより、キャビティ部300の形状と一致した製品を鋳造する。ダイカスト鋳造装置は、溶湯が冷却されて製品となった後に、駆動機構によって可動型を固定型から離間させ、鋳造された製品を固定型から離型させる。鋳造された製品を取り出す際には、鋳造された製品を可動型から離型させるために、押し出しピン(図示略)を鋳造された製品に突き当てて押し出す。
以上のようにして、ダイカスト鋳造装置は、鋳造された製品を固定型および可動型から離型する。
【0018】
図1に示すように、ダイカスト鋳造用金型200には、可動型の移動方向である軸線X1に沿って固定型に形成される挿入穴210が形成されている。挿入穴210は、軸線X1に直交する平面における断面視が円形となる円筒状の貫通穴である。
図1に示すように、ダイカスト鋳造用金型200には、挿入穴210に挿入された状態で固定型に固定される鋳抜きピン100が設けられている。鋳抜きピン100は、締結ボルトが締結されるボルト穴の下穴等を鋳造製品に形成するために用いられるものである。
【0019】
なお、以上においては、固定型に挿入穴210が形成されているとともに挿入穴210に鋳抜きピン100が固定されるものとしたが、他の態様であってもよい。
例えば、可動型に挿入穴210が形成されているとともに挿入穴210に鋳抜きピン100が固定されていてもよい。
また、例えば、可動型に対して相対的に移動可能な摺動中子(スライドコア)に固定されていてもよい。
【0020】
図1に示すように、鋳抜きピン100は、軸線X1に沿って延びる円柱状に形成されるインナーピン110と、軸線X1に沿って延びる円筒状に形成されるスリーブ120とを有する。鋳抜きピン100は、インナーピン110の外径と略同径の外径を有するスリーブ120をインナーピン110の外側に配置し、これらの部品を組み合わせて形成されている。
【0021】
本実施形態の鋳抜きピン100は、キャビティ部300に突出する突出部20の根元部20aを、スリーブ120とインナーピン110との別体の部材により形成している。
図1に示すスリーブ120とインナーピン110とを一体の部材で形成する場合には、根元部20aに境界部(軸線X1に対する外径が急拡大する部分)が形成される。この境界部は、鋳造製品を金型から離型する際の曲げ荷重および引っ張り荷重等(離型抵抗)により金属疲労が蓄積されると折損に至り易い。
【0022】
一方で、本実施形態の鋳抜きピン100は、スリーブ120とインナーピン110とを別体の部材としているため、境界部を排除した構造とすることができる。そのため、スリーブ120とインナーピン110とを一体の部材で形成する場合に比べ、鋳抜きピン100の根元部20aにおける応力集中部を排除して折損を抑制することができる。インナーピン110およびスリーブ120を構成する材料として、炭素工具鋼にタングステン、モリブデン、クロム、バナジウム等を添加した合金工具鋼(例えば、SKD61)を用いることができる。
【0023】
図1に示すように、インナーピン110の内部には、軸線X1に沿って延びる有底の冷却穴(有底穴)110aが形成されている。冷却穴110aは、
図2に破線で示す円筒状の冷却パイプ130が軸線X1に沿って挿入される穴である。冷却パイプ130から冷却穴110aの底部(鋳抜きピン100の先端側)に流出した冷却水は、冷却パイプ130の外周面と冷却穴110aの内周面との間の間隙を流通して鋳抜きピン100の基端側に戻される(
図2に示す矢印)。なお、
図1に示す鋳抜きピン100は、インナーピン110の内部に配置される冷却パイプ130の図示を省略したものである。
【0024】
次に、本実施形態の鋳抜きピン100の各部について説明する。
図1に示すように、本実施形態の鋳抜きピン100は、挿入穴210の形状に対応するように軸線X1に沿って形成される本体部10と、本体部10の先端側(キャビティ部300側)に連結されるとともに挿入穴210からキャビティ部300へ突出する突出部20と、本体部10および突出部20の軸線X上の位置を位置決めする拡径部(位置決め部)30とを備える。
【0025】
本体部10は、挿入穴210の内径と略同径の外径を有する部分であり、挿入穴210の内周面との間にキャビティ部300から溶湯が侵入しない程度に密接した状態で挿入穴210に挿入されている。本体部10は、基端側(拡径部30側)から先端側(突出部20側)に至るまで軸線X1を中心とした外径が一定となっている。
【0026】
拡径部30は、挿入穴210の基端側に形成された段部220に突き当たるように本体部10よりも外径が大きい部分である。拡径部30も、本体部10と同様に挿入穴210の形状に対応するように軸線X1に沿って円柱状に形成されている。
図1に示すように、拡径部30の先端側の端面30aは、挿入穴210に挿入された状態で、挿入穴210の段部220に突き当てられる。これにより、鋳抜きピン100の本体部10および突出部20の軸線X1上の位置が固定される。
【0027】
次に、鋳抜きピン100の突出部20について
図2および
図3を参照して説明する。
図2に示すように、突出部20は、抜き勾配が形成されたテーパ部21と、テーパ部21の基端側に連結される基端部22と、テーパ部21の先端側に連結される先端部23とを有する。
【0028】
テーパ部21は、軸線X1上において、基端側の位置P1(第1位置)から先端側の位置P2(第2位置)に向けて漸次外径が小さくなる抜き勾配が形成された略円錐台状の部分である。
図2および
図3(
図2に示すテーパ部の勾配変化位置Pc近傍を示す縦断面図)に示すように、テーパ部21の軸線X1に対する傾斜角度は、勾配変化位置Pcにおいて基端側の角度θ1(第1角度)から先端側の角度θ2(第2角度)に変化するようになっている。
【0029】
図3に示す軸線X2は、軸線X1と平行な軸線である。
図3に示すように、勾配変化位置Pcよりも基端側の領域のテーパ部21の外周面(抜き勾配)の傾斜角度は、角度θ1となっている。同様に、勾配変化位置Pcよりも先端側の領域のテーパ部21の外周面(抜き勾配)の傾斜角度は、角度θ2なっている。軸線X2は軸線X1と平行であるため、角度θ1は軸線X1に対するテーパ部21の外周面(抜き勾配)の傾斜角度を示し、角度θ2は軸線X1に対するテーパ部21の外周面(抜き勾配)の傾斜角度を示す。
【0030】
本実施形態において、角度θ1と角度θ2は、以下の条件式の全てを満たす。
θ1>θ2 (1)
0.5°<θ1≦2.0° (2)
0.5°≦θ2<2.0° (3)
以上の条件式(1)〜(3)の全てを満たす角度θ1および角度θ2は、例えば、角度θ1が1.5°であり角度θ2が0.5°である。
【0031】
図2および
図3に示す想像線ILは、位置P1から位置P2までの抜き勾配の傾斜角度を一定とした場合のテーパ部の外周面の位置を示す線である。この場合、テーパ部の外径は、位置P1における外径D1から位置P2における外径D2まで一定の割合で漸次減少する。
一方、実線で示す本実施形態のテーパ部21の外周面の軸線X1に対する傾斜角度は、想像線ILで示す傾斜角度に比べ、勾配変化位置Pcよりも基端側で大きく、勾配変化位置Pcよりも先端側で小さくなっている。
【0032】
図2に示すように、位置P1におけるテーパ部21の外径D1と、位置P1から勾配変化位置Pcまでの軸線X1に沿った距離L1とは、以下の条件式を満たす。
D1<L1<2・D1 (4)
以上の条件式のD1<L1を満たすようにしたのは、発明者らが、以下の知見を得たからである。
・位置P1から外径D1に相当する距離だけ離間した位置までの領域において、鋳抜きピン100の折損が発生する頻度が高い。
・勾配変化位置Pcを、位置P1から外径D1に相当する距離だけ離間した位置よりも更に先端側に配置することによりテーパ部21の基端側に蓄積される金属疲労が低減する。
【0033】
また、条件式(4)のL1<2・D1を満たすようにしたのは、勾配変化位置Pcを位置P1から遠ざけすぎると、位置P2の近傍において内径D3の冷却穴110aの内周面からテーパ部21の外周面までの距離(肉厚)が短くなって薄肉となり、位置P2の近傍において鋳抜きピン100の折損が発生し易くなるからである。
【0034】
基端部22は、キャビティ部300の基端部側の端面と一致する位置P0からテーパ部21の基端部側の位置P1までの部分である。基端部22の外周側はスリーブ120の先端部であり、基端部22の内周側はインナーピン110である。
図2に示すように、基端部22は、位置P0から位置P1に向けて外径が急激に減少する形状となっている。
先端部23は、テーパ部21の先端側の位置P2から鋳抜きピン100の先端と一致する位置P3までの部分である。
図2に示すように、位置P1から位置P3までの距離はL2となっている。
【0035】
<実施例>
次に、以上の条件式(1)〜(4)を満たす鋳抜きピン100を用いて製品を鋳造した場合の実施例と比較例について説明する。本実施例は、鋳抜きピン100が使用開始されてから折損に至るまでに鋳造された製品数を測定した実験例である。
本実施例は、
図2および
図3において、D1=4.5mm,D2=3.9mm,L1=6.0mm,D3=2.0mm,L2=22.4mm,θ1=1.5°,θ2=0.5°とした鋳抜きピン100を用いて行ったものである。
【0036】
また、本実施例は、テーパ部21を構成する材料として内部の硬さがHRC(ロックウェル硬さ)47以上かつHRC49以下に調整され、表面の硬さがHV(ビッカーズ硬さ)1000以上かつHV1200以下に調整された合金工具鋼であるSKD61を用いて行ったものである。実施例に用いたテーパ部21の表面の硬さを向上させる表面処理としては、塩溶剤を用いた窒化処理である塩溶窒化処理を用いた。具体的には、大同DMソリューション株式会社によるPS処理(Prevents Scoring and scuffing処理)を用いて塩溶窒化処理を行った。
【0037】
比較例は、θ1およびθ2をそれぞれ1.0°とした点を除き、本実施例と同様の鋳抜きピンを用いた例である。
すなわち、本実施例では勾配変化位置Pcでテーパ部21の傾斜角度が1.5°から0.5°に変化するのに対して、比較例ではテーパ部21の傾斜角度が位置P1から位置P2に至るまで1.0°で一定である。
本実施例による結果として、鋳抜きピン100が使用開始されてから折損に至るまでに鋳造された製品数が、本実施例では約34000個(鋳造回数約34000回)であったのに対し、比較例では約2000個(鋳造回数約2000回)であった。
このように、本実施形態の鋳抜きピン100を用いた実施例では、使用開始されてから折損に至るまでに鋳造された製品数が、比較例に比べて約17倍となった。
【0038】
以上説明した本実施形態の鋳抜きピン100が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の鋳抜きピン100によれば、鋳造製品を金型から離型する際の曲げ荷重および引っ張り荷重等(離型抵抗)が作用するテーパ部21の基端側の位置P1と先端側の位置P2との間の勾配変化位置Pcにおいて、鋳抜きピン100が延びる軸線X1に対する傾斜角度が角度θ1から角度θ2に変化するようにテーパ部21に抜き勾配が形成されている。
【0039】
位置P1から位置P2へ向けて一定の傾斜角度の抜き勾配を形成した比較例の鋳抜きピンにおいては、テーパ部の全領域において略均一の離型抵抗が作用し、テーパ部の基端側に金属疲労が過大に蓄積する。一方、本実施形態の鋳抜きピン100によれば、勾配変化位置Pcの基端側において傾斜角度の大きい領域が形成され、テーパ部21の基端側の領域において離型抵抗が低減されるため、テーパ部21の基端側に蓄積される金属疲労が低減する。
【0040】
発明者らによれば、位置P1から位置P1におけるテーパ部21の外径D1に相当する距離だけ離間した位置までの領域において、鋳抜きピン100の折損が発生する頻度が高いという知見を得た。また、勾配変化位置Pcを、位置P1から位置P1におけるテーパ部21の外径D1に相当する距離だけ離間した位置よりも更に先端側に配置することによりテーパ部21の基端側に蓄積される金属疲労が低減するという知見を得た。
そこで、本実施形態の鋳抜きピン100は、D1<L1を満たすようにした。ここで、L1は、位置P1から勾配変化位置PCまでの軸線X1に沿った距離である。
【0041】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態のダイカスト鋳造用金型について図面を参照して説明する。
本実施形態のダイカスト鋳造用金型は、第1実施形態のダイカスト鋳造用金型200の変形例であり、以下で特に説明する場合を除いて第1実施形態のダイカスト鋳造用金型200と同様であるものとする。
【0042】
第1実施形態のダイカスト鋳造用金型200は、鋳抜きピン100の突出部20のテーパ部21の軸線に対する傾斜角度が勾配変化位置Pcにおいて角度θ1から角度θ1よりも小さい角度θ2に変化するものであった。
それに対して本実施形態のダイカスト鋳造用金型は、鋳抜きピン100’の突出部20’のテーパ部21’の軸線X1に対する傾斜角度が勾配変化位置Pcにおいて角度θ1’から角度θ1’よりも大きい角度θ2’に変化するものである。
【0043】
図4に示すように、テーパ部21’は、軸線X1上において、基端側の位置P1(第1位置)から先端側の位置P2(第2位置)に向けて漸次外径が小さくなる抜き勾配が形成された略円錐台状の部分である。
図4および
図5(
図4に示すテーパ部の勾配変化位置Pc近傍を示す縦断面図)に示すように、テーパ部21’の軸線X1に対する傾斜角度は、勾配変化位置Pcにおいて基端側の角度θ1’(第1角度)から先端側の角度θ2’(第2角度)に変化するようになっている。
【0044】
図5に示す軸線X3は、軸線X1と平行な軸線である。
図5に示すように、勾配変化位置Pcよりも基端側の領域のテーパ部21’の外周面(抜き勾配)の傾斜角度は、角度θ1’となっている。同様に、勾配変化位置Pcよりも先端側の領域のテーパ部21’の外周面(抜き勾配)の傾斜角度は、角度θ2’なっている。軸線X3は軸線X1と平行であるため、角度θ1’は軸線X1に対するテーパ部21’の外周面(抜き勾配)の傾斜角度を示し、角度θ2’は軸線X1に対するテーパ部21’の外周面(抜き勾配)の傾斜角度を示す。
【0045】
本実施形態において、角度θ1’と角度θ2’は、以下の条件式の全てを満たす。
θ1’<θ2’ (5)
0.5°≦θ1<2.0° (6)
0.5°<θ2≦2.0° (7)
以上の条件式(5)〜(7)の全てを満たす角度θ1’および角度θ2’は、例えば、角度θ1’が0.5°であり角度θ2’が1.5°である。
【0046】
図4および
図5に示す想像線ILは、位置P1から位置P2までの抜き勾配の傾斜角度を一定とした場合のテーパ部の外周面の位置を示す線である。この場合、テーパ部の外径は、位置P1における外径D1から位置P2における外径D2まで一定の割合で漸次減少する。
一方、実線で示す本実施形態のテーパ部21の外周面の軸線X1に対する傾斜角度は、想像線ILで示す傾斜角度に比べ、勾配変化位置Pcよりも基端側で小さく、勾配変化位置Pcよりも先端側で大きくなっている。
【0047】
図4に示すように、位置P1におけるテーパ部21’の外径D1と、位置P1から勾配変化位置Pcまでの軸線X1に沿った距離L1とは、以下の条件式を満たす。
D1<L1<2・D1 (8)
以上の条件式のD1<L1を満たすようにしたのは、発明者らが、以下の知見を得たからである。
・位置P1から外径D1に相当する距離だけ離間した位置までの領域において、鋳抜きピン100’の折損が発生する頻度が高い。
・勾配変化位置Pcを、位置P1から外径D1に相当する距離だけ離間した位置よりも更に先端側に配置することによりテーパ部21’の基端側に蓄積される金属疲労が低減する。
【0048】
また、条件式(8)のL1<2・D1を満たすようにしたのは、勾配変化位置Pcを位置P1から遠ざけすぎると、離型抵抗が低減する領域が狭くなり、テーパ部21の基端側に蓄積される金属疲労が増加してしまうからである。
【0049】
<実施例>
次に、以上の条件式(5)〜(8)を満たす鋳抜きピン100’を用いて製品を鋳造した場合の実施例と比較例について説明する。本実施例は、鋳抜きピン100’が使用開始されてから折損に至るまでに鋳造された製品数を測定した実験例である。
本実施例は、
図4および
図5において、D1=4.5mm,D2=3.9mm,L1=6.0mm,D3=2.0mm,L2=22.4mm,θ1’=0.5°,θ2’=1.5°とした鋳抜きピン100’を用いて行ったものである。
また、本実施例は、テーパ部21’を構成する材料として内部の硬さがHRC(ロックウェル硬さ)47以上かつHRC49以下に調整され、表面の硬さがHV(ビッカーズ硬さ)1000以上かつHV1200以下に調整された合金工具鋼であるSKD61を用いて行ったものである。実験例に用いたテーパ部21’の表面の硬さを向上させる表面処理としては、塩溶剤を用いた窒化処理である塩溶窒化処理を用いた。具体的には、大同DMソリューション株式会社によるPS処理(Prevents Scoring and scuffing処理)を用いて塩溶窒化処理を行った。
【0050】
比較例は、θ1’およびθ2’をそれぞれ1.0°とした点を除き、本実施例と同様の鋳抜きピンを用いた例である。
すなわち、本実施例では勾配変化位置Pcでテーパ部21’の傾斜角度が0.5°から1.5°に変化するのに対して、比較例ではテーパ部21’の傾斜角度が位置P1から位置P2に至るまで1.0°で一定である。
本実施例による結果として、鋳抜きピン100’が使用開始されてから折損に至るまでに鋳造された製品数が、本実施例では約13000個(鋳造回数約13000回)であったのに対し、比較例では約2000個(鋳造回数約2000回)であった。
このように、本実施形態の鋳抜きピン100’を用いた実施例では、使用開始されてから折損に至るまでに鋳造された製品数が、比較例に比べて約6.5倍となった。
【0051】
以上説明した本実施形態の鋳抜きピン100’が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の鋳抜きピン100’によれば、鋳造製品を金型から離型する際の曲げ荷重および引っ張り荷重等(離型抵抗)が作用するテーパ部21’の基端側の位置P1と先端側の位置P2との間の勾配変化位置Pcにおいて、鋳抜きピン100が延びる軸線X1に対する傾斜角度が角度θ1’から角度θ2’に変化するようにテーパ部21’に抜き勾配が形成されている。
【0052】
位置P1から位置P2へ向けて一定の傾斜角度の抜き勾配を形成した比較例の鋳抜きピンにおいては、テーパ部の全領域において略均一の離型抵抗が作用し、テーパ部の基端側に金属疲労が過大に蓄積する。一方、本実施形態の鋳抜きピン100によれば、勾配変化位置Pcの先端側において傾斜角度の大きい領域が形成され、テーパ部21の先端側の領域において離型抵抗が低減されるため、テーパ部21の基端側に蓄積される金属疲労が低減する。
【0053】
発明者らによれば、位置P1から位置P1におけるテーパ部21の外径D1に相当する距離だけ離間した位置までの領域において、鋳抜きピン100’の折損が発生する頻度が高いという知見を得た。また、勾配変化位置Pcを、位置P1から位置P1におけるテーパ部21’の外径D1に相当する距離だけ離間した位置よりも更に先端側に配置することによりテーパ部21の基端側に蓄積される金属疲労が低減するという知見を得た。
そこで、本実施形態の鋳抜きピン100’は、D1<L1を満たすようにした。ここで、L1は、位置P1から勾配変化位置PCまでの軸線X1に沿った距離である。
【0054】
〔他の実施形態〕
以上の説明において、鋳抜きピンは、インナーピン110とスリーブ120との2つの部材を組み合わせたものとしたが、他の態様であってもよい。
例えば、インナーピン110とスリーブ120とにより形成された鋳抜きピン100,100’を単一の部材として形成してもよい。
【0055】
また、以上の説明においては、テーパ部21,21’の抜き勾配の傾斜角度を勾配変化位置Pcのみで変化させるものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、勾配変化位置Pcよりも先端側に1箇所以上の他の勾配変化位置を設け、多段階で抜き勾配の傾斜角度を変化させるようにしてもよい。この場合、位置P1から位置P2に向けて漸次外径が小さくなるように多段階で抜き勾配の傾斜角度を変化させるものとする。