(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記試料調製部は、前記第1アリコートに含まれる赤血球を溶血させずに前記第1測定試料を調製し、前記第2アリコートに含まれる赤血球を溶血させて前記第2測定試料を調製するように構成されている、
請求項1に記載の尿検体分析装置。
前記情報処理部は、第1蛍光信号に基づいて、前記第2アリコートに含まれる少なくとも白血球および上皮細胞を分類し、第2蛍光信号に基づいて、前記第2アリコートに含まれる精子および真菌を分類するように構成されている、
請求項5又は6に記載の尿検体分析装置。
前記情報処理部は、前記第1測定試料の蛍光信号と第1測定試料の散乱光信号に基づいて、前記第1アリコートに含有される赤血球と円柱とを区別して検出するように構成されている、
請求項8に記載の尿検体分析装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
尿中有形成分の分析結果は腎及び尿路のどの部位に異常が発生しているかを推定するために用いられており、尿中有形成分の分析は重要なスクリーニング検査として広く実施されている。このため、尿中有形成分分析装置のさらなる分析精度の向上が望まれている。
【0006】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、尿中有形成分を高精度に分析可能な尿検体分析装置及び尿検体分析方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の第1の態様の尿検体分析装置は、尿検体から第1アリコートと第2アリコートとを分取する検体分取部と、前記第1アリコートと赤血球を染色する第1染色色素を混合して第1測定試料を調製し、前記第2アリコートと核酸を染色する第2染色色素を混合して第2測定試料を調製する試料調製部と、前記試料調製部によって調製された前記第1測定試料
及び前記第2測定試料のそれぞれが通流するフローセル、前記フローセルを流れる前記第1測定試料及び前記第2測定試料のそれぞれに光を照射する光源、並びに、前記第1測定試料及び前記第2測定試料のそれぞれに含まれる粒子から発せられ
た蛍光を
受光して蛍光信号を出力する蛍光受光部を含む測定部と、前記
蛍光受光部によって
受光された前記第1測定試料の蛍光
の信号に基づいて、前記第1アリコートに含有される赤血球を少なくとも検出し、前記
蛍光受光部によって
受光された前記第2測定試料の蛍光
の信号に基づいて、前記第2アリコートに含有される白血球を少なくとも検出する情報処理部と、を備え、
前記測定部は、前記蛍光受光部によって受光した蛍光の信号を増幅することが可能であり、前記情報処理部は、低増幅率で増幅した蛍光信号に基づいて、前記第2アリコートに含まれる白血球を検出し、高増幅率で増幅した蛍光信号に基づいて、前記第2アリコートに含まれる白血球よりも小径の尿中粒子を検出するように構成されている。
【0008】
尿中の細胞は、糸球体を通過する際に損傷を受けたり、尿管内を通過する際の浸透圧変化によって変形したりするため、細胞の形態に基づいて尿中の細胞を高精度に分析することは困難である。上記のような構成では、赤血球を染色する第1染色色素を用いて調製された第1測定試料から、少なくとも赤血球を検出し、核酸を染色する第2染色色素を用いて調製された第2測定試料から、少なくとも白血球を検出するため、各細胞の形態のばらつきの影響を受けることなく、各細胞特有の核酸量及び膜染色性等を利用して、高精度に尿中の粒子及び細胞を検出することが可能となる。
また、尿中粒子は、その種類に応じてサイズが様々であり、核酸量も異なっている。上記構成とすることにより、かかる尿中粒子を、それぞれの核酸量に合わせた増幅率の蛍光信号を使用することで、高精度に分類することが可能となる。
【0009】
上記態様において、前記試料調製部は、前記第1アリコートに含まれる赤血球を溶血させずに前記第1測定試料を調製し、前記第2アリコートに含まれる赤血球を溶血させて前記第2測定試料を調製するように構成されていてもよい。これにより、第1測定試料では赤血球が溶血されずに尿中の粒子が染色されるため、蛍光に基づいて少なくとも尿中の赤血球を高精度に検出することが可能である。また、第2測定試料では赤血球が溶血されるため、赤血球が存在することによる誤検出が防止され、より高精度に少なくとも白血球を検出することが可能となる。
【0010】
上記態様において、前記情報処理部は、
前記蛍光受光部によって受光された前記第1測定試料の蛍光
の信号に基づいて、前記第1アリコートに含有される赤血球と他の核酸を含有しない尿中粒子とを区別して検出するように構成されていてもよい。尿に含有される赤血球と他の核酸を含有しない粒子にはそれぞれ、赤血球を染色するための染色色素による染色度合いに違いがある。このため、上記構成とすることにより、これらの粒子を高精度に検出することが可能となる。
【0011】
上記態様において、前記情報処理部は、
前記蛍光受光部によって受光された前記第2測定試料の蛍光
の信号に基づいて、前記第2アリコートに含有される白血球と他の核酸を含有する尿中粒子とを区別して検出するように構成されていてもよい。尿に含有される白血球と他の核酸を含有する粒子とにはそれぞれ核酸量に違いがある。このため、上記構成とすることにより、第2測定試料の蛍光を使用して、白血球と他の核酸を含有する尿中粒子とを細胞を高精度に区別して検出することが可能となる。また、上皮細胞のように変形・損傷を受けやすい細胞であっても、第2測定試料の蛍光に基づいて高精度に検出することができる。
【0014】
上記態様において、前記測定部は、前記蛍光受光部によって受光した蛍光の信号を、少なくとも、第1感度と、第1感度より高い第2感度と、第1及び第2感度より高い第3感度で増幅することが可能であり、前記情報処理部は、第1感度で増幅した第1蛍光信号に基づいて、前記第2測定試料中の白血球を検出し、第2感度で増幅した第2蛍光信号に基づいて、前記第2測定試料中の精子または真菌を検出し、第3感度で増幅した第3蛍光信号に基づいて、前記第2測定試料中の細菌を検出するように構成されていてもよい。
【0015】
上記態様において、前記測定部は、前記第2測定試料が前記フローセルを通流している第1の期間において、前記第1および第2蛍光信号を
前記第2測定試料から取得し、前記第1の期間よりも前又は後の第2の期間において、前記第3蛍光信号を
前記第2測定試料から取得するように構成されていてもよい。
【0016】
上記態様において、前記情報処理部は、第1蛍光信号に基づいて、前記第2アリコートに含まれる少なくとも白血球および上皮細胞を分類し、第2蛍光信号に基づいて、前記第2アリコートに含まれる精子および真菌を分類するように構成されていてもよい。
【0017】
上記態様において、
前記測定部は、前記フローセルを流れる測定試料中の粒子から発せられた散乱光を受光して散乱光信号を出力する散乱光受光部を含み、前記情報処理部は、前記蛍光受光部を介して得た第1測定試料の蛍光信号と、前記散乱光受光部を介して得た第1測定試料の散乱光信号とに基づいて、前記第1アリコートに含有される尿中粒子を、赤血球と、核酸を含有しない他の尿中粒子とに分類するように構成されていてもよい。
【0018】
上記態様において、前記情報処理部は、前記第1測定試料の蛍光信号と第1測定試料の散乱光信号に基づいて、前記第1アリコートに含有される赤血球と円柱とを区別して検出するように構成されていてもよい。
【0019】
上記態様において、前記情報処理部は、前記第2測定試料の蛍光信号と第2測定試料の散乱光信号に基づいて、前記第
2アリコートに含有される白血球と上皮細胞とを区別して検出するように構成されていてもよい。
【0020】
上記態様において、前記情報処理部は、蛍光信号から少なくとも蛍光強度を取得することが可能であり、散乱光信号から少なくとも散乱光強度を取得することが可能であり、前記第1測定試料の粒子のうち、蛍光強度と散乱光強度とによって定まる第1の範囲に属する粒子を赤血球として分類するように構成されていてもよい。
【0021】
上記態様において、前記情報処理部は、蛍光信号から少なくとも蛍光パルス面積と蛍光パルス幅を取得することが可能であり、前記第1測定試料の粒子のうち、蛍光パルス面積と蛍光パルス幅とによって定まる第2の範囲に属する粒子を円柱として分類するように構成されていてもよい。
【0022】
上記態様において、
前記測定部は、前記フローセルを流れる測定試料中の粒子から発せられた散乱光を受光して散乱光信号を出力する散乱光受光部を含み、前記情報処理部は、第1蛍光信号から少なくとも蛍光パルス面積を取得することが可能であり、散乱光信号から少なくとも散乱光パルス幅を取得することが可能であり、前記第2測定試料の粒子のうち、第1蛍光信号の蛍光パルス面積と散乱光パルス幅とによって定まる第3の範囲に属する粒子を白血球として分類するように構成されていてもよい。
【0023】
上記態様において、前記情報処理部は、前記第2測定試料の粒子のうち、第1蛍光信号の蛍光パルス面積と散乱光パルス幅とによって定まる第4の範囲に属する粒子を上皮細胞として分類するように構成されていてもよい。
【0024】
上記態様において、
前記測定部は、前記フローセルを流れる測定試料中の粒子から発せられた散乱光を受光して散乱光信号を出力する散乱光受光部を含み、前記情報処理部は、第2蛍光信号から少なくとも蛍光強度を取得することが可能であり、散乱光信号から少なくとも散乱光強度を取得することが可能であり、前記第2測定試料の粒子のうち、第2蛍光信号の蛍光強度と散乱光パルス幅とによって定まる第5の範囲に属する粒子を精子として分類するように構成されていてもよい。
【0025】
上記態様において、前記情報処理部は、前記第2測定試料の粒子のうち、第2蛍光信号の蛍光強度と散乱光パルス幅とによって定まる第6の範囲に属する粒子を真菌として分類するように構成されていてもよい。
【0026】
上記態様において、前記情報処理部は、第3蛍光信号から少なくとも蛍光強度を取得することが可能であり、前記散乱光受光部から出力された散乱光信号から少なくとも散乱光強度を取得することが可能であり、前記第2測定試料の粒子のうち、第3蛍光信号の蛍光強度と散乱光強度とによって定まる第7の範囲に属する粒子を細菌として分類するように構成されていてもよい。
【0027】
また、本発明の第2の態様の尿検体分析装置は、
尿検体と、核酸を染色する染色色素とを混合して測定試料を調製する試料調製部と、試料調製部によって調製された測定試料が通流するフローセル、フローセルを流れる測定試料に光を照射する光源、及び、測定試料に含まれる粒子から発せられた蛍光を受光して蛍光信号を出力する蛍光受光部を含み、蛍光受光部によって受光した蛍光の信号を増幅することが可能な測定部と、測定部によって低増幅率で増幅した蛍光信号に基づいて、測定試料に含まれる白血球を検出し、高増幅率で増幅した蛍光信号に基づいて、測定試料に含まれる白血球よりも小径の尿中粒子を検出する情報処理部と、を備える。
【0030】
また、本発明の第3の態様の尿検体分析方法は、尿検体から第1アリコートと第2アリコートとを分取し、前記第1アリコートと赤血球を染色する第1染色色素を混合して第1測定試料を調製し、調製された前記第1測定試料から発せられる第1蛍光を
受光し、
受光した前記第1蛍光の
信号に基づいて、前記第1アリコートに含有される少なくとも赤血球を検出し、前記第2アリコートと核酸を染色する第2染色色素を混合して第2測定試料を調製し、調製された前記第2測定試料から発せられる第2蛍光を
受光し、
受光した前記第2蛍光の信号を低増幅率で増幅し、低増幅率で増幅された
蛍光信号に基づいて、前記第2アリコートに含有される白血球を検出
し、
受光した前記第2蛍光の信号を高増幅率で増幅し、高増幅率で増幅された蛍光信号に基づいて、前記第2アリコートに含有される白血球よりも小径の尿中粒子を検出する。
【0031】
これにより、上述の本発明の第1の態様の尿検体分析装置と同様の効果を奏する。
【0032】
また、本発明の第4の態様の尿検体分析方法は、
尿検体と、核酸を染色する染色色素とを混合して測定試料を調製し、調製された測定試料から発せられる蛍光を受光し、受光した蛍光の信号を低増幅率で増幅し、低増幅率で増幅された蛍光信号に基づいて、測定試料に含有される白血球を検出し、受光した蛍光の信号を高増幅率で増幅し、高増幅率で増幅された蛍光信号に基づいて、測定試料に含有される白血球よりも小径の尿中粒子を検出する。
【0033】
これにより、上述の本発明の第2の態様の尿検体分析装置と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、尿中有形成分をそれぞれの特性に応じて高精度に分析することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0037】
<尿検体分析装置の構成>
本実施の形態では、尿中の有形成分を分析するための尿検体分析装置について説明する。本実施の形態に係る尿検体分析装置は、尿検体を装置内部に取り込み、尿中有形成分(赤血球、白血球、上皮細胞、円柱、細菌等)を分析する。
【0038】
図1は、本実施の形態に係る尿検体分析装置の構成を示す外観斜視図である。
図1において、尿検体分析装置100は、測定ユニット10と、情報処理部13とを備えている。測定ユニット10は、測定試料を調製するための試料調製部2と、サンプルラック(試験管立て)3を移送するラックテーブル4と、測定試料から有形成分の情報を検出するための光学検出部5と、回路部14とを備えている。筐体側面にはアーム15を介して支持台16が取り付けられ、その上に情報処理部13が設置されている。情報処理部13は、測定ユニット10の回路部14とデータ通信可能に接続されている。
【0039】
図2は前記試料調製部2及び光学検出部5の概略機能構成を示す図である。図において、試験管Tに入った尿検体は、吸引管17を用いて図示しないシリンジポンプにより吸引される。吸引された尿検体は、検体分取部1によって試料調製部2へ分注される。本実施の形態における試料調製部2は反応槽2uと反応槽2bとを備えている。検体分取部1は、尿検体を定量して、反応槽2u及び反応槽2bのそれぞれにアリコートを分配する。
【0040】
反応槽2uにおいて、分配されたアリコートは、希釈液19u及び染色液18uと混合される。これにより、当該染色液18uに含まれる色素により検体中の有形成分が染色される。この反応槽2uにおいて調製された混合物は、尿中の赤血球、円柱、結晶、粘液糸などの核酸を有さない粒子を分析するために用いられる。以下では、反応槽2uにおいて調製された混合物を第1測定試料と呼ぶ。また、赤血球、円柱、結晶、粘液糸など、粒子の基本構造として核酸を有さない粒子を無核成分と呼ぶ。
【0041】
一方、反応槽2bにおいて、分配されたアリコートは、希釈液19b及び染色液18bと混合される。これにより、当該染色液18bに含まれる色素により検体中の有形成分が染色される。この反応槽2bにおいて調製された混合物は尿中の白血球、上皮細胞、真菌、精子、トリコモナス、細菌などの核酸を有する細胞を分析するために用いられる。以下では、反応槽2bにおいて調製された混合物を第2測定試料と呼ぶ。また、白血球、上皮細胞、真菌、精子、トリコモナス、細菌など、粒子の基本構造として核酸を有する尿中の粒子を有核成分と呼ぶ。この意味で、細菌および精子は核を持たないが、核酸を含有しているため有核成分に属するものとする。
【0042】
反応槽2u,2bからは、光学検出部5のフローセル51へとチューブが延設されており、反応槽2u,2bにおいて調製された測定試料がフローセル51へと供給可能となっている。上記のようにして調製された2種類の測定試料のうち、先に反応槽2uの第1測定試料が光学検出部5に送液され、その後、反応槽2bの第2測定試料が光学検出部5に送液される。光学検出部5に送液された第1および第2測定試料は、フローセル51においてシース液に包まれた細い流れを形成し、そこに、レーザ光が照射される。このような動作は、後述のマイクロコンピュータ11(制御装置)の制御により、図示しないポンプ及び電磁弁等を動作させることにより、自動的に行われる。
【0043】
無核成分を染色するための染色液18uとしては、核酸よりも細胞膜の脂質およびタンパク質に結合しやすい蛍光色素が選ばれる。このような色素としては、シアニン系、スチリル系、アクリジン系色素のうち赤血球の形態に影響を及ぼさない色素が好ましい。無核有形成分を染色する色素としては、脂溶性カルボシアニン色素が好ましく、特にインドカルボシアニン色素、オキサカルボシアニン色素等が好ましい。具体的なインドカルボシアニン色素としては、DiI(1,1‘-dioctadecyl-3,3,3’,3‘-tetramethylindocarbocyanine perchlorate), DiD(1,1’-dioctadecyl-3,3,3‘,3’- tetramethylindodicarbocyanine), DiR(1,1’-dioctadecyltetramethyl indotricarbocyanine Iodide)等が挙げられる。 オキサカルボシアニン色素としてはDiOC2(3)(3,3′-diethyloxacarbocyanine iodide), DiOC3(3)(3,3-Dipropyloxacarbocyanine iodide), DiOC4(3)(3,3′-Dibutyloxacarbocyanine iodide), DiOC5(3)(3,3-Dipentyloxacarbocyanine iodide)等が挙げられる。本実施形態で用いられる無核成分を染色する色素としては、DiOC3(3)(3,3-Dipropyloxacarbocyanine iodide)が特に好ましい。
【0044】
希釈液19uは緩衝剤を主成分とする試薬である。希釈液19uは、赤血球を溶血させずに安定した蛍光信号を得ることができるように浸透圧補償剤を含有している。希釈液19uの浸透圧は、分類測定に適するような浸透圧となるよう100〜600mOsm/kgに調整されている。尿検体と染色液18uと希釈液19uとが混合されることにより、無核成分の細胞膜又はタンパク質が染色される。
【0045】
有核成分を染色するための染色液18bとしては、脂質およびタンパク質よりも核酸に結合しやすい蛍光色素が選ばれる。より詳細に説明すると、染色液18bには、核酸を特異的に染色するためのインターカレータや副溝(minor groove)に結合する色素が含有されている。前記インターカレータとしては、シアニン系、アクリジン系、phenanthridium系の公知の色素が挙げらる。例えば、シアニン系のインターカレータとしては、SYBR Green I、Thiazole orangeが挙げられる。アクリジン系のインターカレータとしては、Acridin orangeが挙げられる。 phenanthridium系のインターカレータとしてはpropidium Iodide、 Ethidium bromideが挙げられる。副溝に結合する色素としてはDAPI、Hoechstの公知の色素が挙げられる。例えば、Hoechetの副溝に結合する色素としては、Hoechst 33342、Hoechst 33258が挙げられる。本実施形態において、シアニン系のインターカレータが好ましく、特に、SYBR Green I、Thiazole orangeが好ましい。
【0046】
希釈液19bは、細胞膜に損傷を与えることにより染色液18bの膜通過を進行させるとともに、赤血球を溶血させ赤血球破片等の夾雑物を収縮させるためのカチオン系界面活性剤を含有している。希釈液19bは、カチオン系界面活性剤ではなく、ノニオン系界面活性剤が含有してもよい。尿検体と染色液18bと希釈液19bとが混合されることにより、核酸を有する尿中の有形成分がその構成及び特性に応じた程度で染色される。
【0047】
上述のように、希釈液19bには、溶血作用を有する界面活性剤が含有されている。したがって、尿検体に含まれる赤血球を溶血させることができ、赤血球が多量に含まれる尿検体であっても、高精度に無核成分を測定することが可能である。また、有核成分の測定では、溶血作用を有する試薬を使用することで細胞膜にダメージが与えられるため、核酸の染色を効率的に行うことが可能である。このことも、有核成分の測定精度向上に寄与する。
【0048】
本実施の形態の尿検体分析装置100は、1つの尿検体から、尿中の無核成分を測定するための第1測定試料と、尿中の有核成分を測定するための第2測定試料を調製する。尿検体分析装置100は、第1測定試料を用いて赤血球等の無核成分を測定し、第2測定試料を用いて白血球等の有核細胞を測定する。第1測定試料は、細胞膜の脂質またはタンパク質を染色しやすい蛍光色素を含んでいる。第2測定試料は、核酸を染色しやすい蛍光色素を含んでいる。よって、本実施形態によれば、細胞の特性、つまり核酸量及び膜染色性に応じた染色度合いの相違を利用して、細胞の形態のばらつきの影響を受けることなく、高精度な尿中粒子の分類ないしは識別が可能である。尿中粒子は、糸球体を通過する際に損傷を受けたり、尿管内を通過する際の浸透圧変化によって変形したりすることがあるが、本実施形態によれば、染色性の違いを利用することで、粒子の形態変化の影響を受けることなく高精度に分析することができる。
【0049】
本実施形態では、1つの光学検出部5を、第1測定試料の測定と第2測定試料の測定とで共用している。これにより装置構成を簡略化することができ、装置を小型化することができる。
【0050】
図3は、光学検出部5の構成を示す図である。コンデンサレンズ52は、半導体レーザの光源53から放射されたレーザ光をフローセル51に集光する。集光レンズ54は測定試料中の有形成分から発せられる前方散乱光をフォトダイオードである第1散乱光受光部55に集光する。他の集光レンズ56は前記有形成分から発せられる側方散乱光と蛍光とをダイクロイックミラー57に集光する。ダイクロイックミラー57は、側方散乱光をフォトマルチプライヤである第2散乱光受光部58へ反射し、蛍光をフォトマルチプライヤである蛍光受光部59の方へ透過させる。第1散乱光受光部55、第2散乱光受光部58及び蛍光受光部59は光信号を電気信号に変換し、それぞれ、前方散乱光信号(以下、「FSC」という)、側方散乱光信号(以下、「SSC」という)及び蛍光信号(以下、「FL」という)を出力する。第1散乱光受光部55、蛍光受光部59および第2散乱光受光部58は、駆動電圧を切り替えることにより、光電変換する際の増幅率、すなわち受光感度を低感度と高感度とで切り替えることができる。受光感度の切り替えは、後述のマイクロコンピュータ11により行われる。
【0051】
なお、光源として、前記半導体レーザ光源に代えてガスレーザ光源を用いることもできるが、低コスト、小型、且つ低消費電力である点より半導体レーザ光源を採用するのが好ましい。
【0052】
図4は、尿検体分析装置100の構成を示すブロック図である。図において、測定ユニット10は、前述した検体分取部1、試料調製部2及び光学検出部5と、この光学検出部5の出力信号を増幅する増幅回路50と、増幅回路50からの出力信号に対してフィルタ処理を行うフィルタ回路6と、フィルタ回路6の出力信号(アナログ信号)をディジタル信号に変換するA/Dコンバータ7と、ディジタル信号に対して所定の波形処理を行うディジタル信号処理回路8と、ディジタル信号処理回路8に接続されたメモリ9と、試料調製部2、増幅回路50、及びディジタル信号処理回路8と接続されたマイクロコンピュータ11と、マイクロコンピュータ11に接続されたLANアダプタ12とを備えている。情報処理部13は、このLANアダプタ12を介して測定ユニット10とLANケーブルにて接続されており、この情報処理部13により、測定ユニット10で取得された測定データの解析が行われる。光学検出部5、増幅回路50、フィルタ回路6、A/Dコンバータ7、ディジタル信号処理回路8及びメモリ9は、測定試料を測定し、測定データを生成する測定部10aを構成している。
【0053】
光学検出部5は、FSC、SSC、FLの各信号をプリアンプによって増幅する。増幅された各信号は、信号チャンネルを介して増幅回路50に入力される。FSCの信号チャンネルは、FSCを増幅するためのメインアンプ(FSCアンプ)に接続されている。SSCの信号チャンネルは、SSCを増幅するためのメインアンプ(SSCアンプ)に接続されている。FLの信号チャンネルは、プリアンプと増幅回路50の間で二つに分岐している。一方の信号チャンネルは、増幅回路50の高増幅率のメインアンプに接続されている。他方の信号チャンネルは、低増幅率のメインアンプに接続されている。したがって、一つの粒子に対応するFLから、高増幅率で増幅されたFLHと、低増幅率で増幅されたFLLとが取り出される。以下、高増幅率のメインアンプをFLHアンプと呼び、FLHアンプに入力されるFLを「FLH」と呼ぶ。また、低増幅率のメインアンプをFLLアンプと呼び、FLLアンプに入力されるFLを「FLL」と呼ぶ。
【0054】
増幅回路50は、FSC、SSC、FLH、FLLの4種類の信号を、設定されたゲインに応じて増幅する。増幅回路50は、異なる複数のゲインを設定することが可能である。マイクロコンピュータ11は、増幅回路50の各プリアンプのゲインを個別かつ段階的に調節することが可能である。ゲインは、Lowレベルと、Middleレベルと、Highレベルの3段階がある。Highレベルが最もゲインが高く、Lowレベルが最もゲインが低い。
【0055】
図5は、情報処理部13の構成を示すブロック図である。情報処理部13は、パーソナルコンピュータによって構成されており、本体400と、入力部408と、表示部409とを備えている。本体400は、CPU401と、ROM402と、RAM403と、ハードディスク404と、読出装置405と、入出力インターフェース406と、画像出力インターフェース407と、通信インターフェース410とを有する。
【0056】
CPU401は、ROM402に記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM402にロードされたコンピュータプログラムを実行する。RAM403は、ROM402およびハードディスク404に記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、RAM403は、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU401の作業領域としても利用される。
【0057】
ハードディスク404には、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムなど、CPU401に実行させるための種々のコンピュータプログラムおよびコンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。すなわち、ハードディスク404には、測定ユニット10から与えられた測定データを解析し、分析結果を出力するためのコンピュータプログラムがインストールされている。
【0058】
読出装置405は、CDドライブまたはDVDドライブ等によって構成されており、記録媒体に記録されたコンピュータプログラムおよびデータを読み出すことができる。入出力インターフェース406には、マウス及びキーボードからなる入力部408が接続されており、ユーザが入力部408を使用することにより、情報処理部13にデータが入力される。画像出力インターフェース407は、液晶パネル等で構成された表示部409に接続されており、画像データに応じた映像信号を、表示部409に出力する。表示部409は、入力された映像信号をもとに、画像を表示する。また、情報処理部13は、通信インターフェース410を介して測定ユニット10に接続されており、通信インターフェース410により、測定ユニット10に対してデータの送受信が可能となる。
【0059】
<尿検体分析装置の動作>
以下、本実施の形態に係る尿検体分析装置の動作について説明する。
【0060】
図6は、尿検体分析装置100の検体測定処理の手順を示すフローチャートである。まず、ユーザからの測定実行の指示が情報処理部13の入力部408を介して入力される(ステップS101)。この指示を受けて、CPU401は、測定ユニット10に測定開始を指示する指示データを送信する(ステップS102)。測定ユニット10が指示データを受信すると(ステップS103)、マイクロコンピュータ11が測定試料調製処理(ステップS104)と、無核成分測定処理(ステップS105)と、有核成分測定処理(ステップS106)とを実行する。
【0061】
図7は、測定試料調製処理の手順を示すフローチャートである。測定試料調製処理では、まず、マイクロコンピュータ11が検体分取部1を制御して、吸引管17に試験管Tから尿検体を所定量吸引させる。マイクロコンピュータ11が検体分取部1を制御して、反応槽2uと反応槽2bとにそれぞれ所定量の尿検体のアリコートを分注させる(ステップS201,S202)。
【0062】
マイクロコンピュータ11は、試料調製部2を制御して、次のステップS203〜S207を実行する。ステップS203及びステップS204では、反応槽2uに、所定量の希釈液19u及び染色液18uが定量されて分注される(ステップS203及びステップS204)。ステップS205及びステップS206では、反応槽2bに、所定量の希釈液19b及び染色液18bが定量されて分注される(ステップS205及びステップS206)。反応槽2u及び反応槽2bは、それぞれ図示しないヒータによって所定温度になるように加温されており、この状態でプロペラ状の攪拌具(図示せず)により各槽内の混合物の攪拌が行われる(ステップS207)。これにより、反応槽2uにおいて無核成分測定用の第1測定試料が調製され、反応槽2bにおいて有核成分測定用の第2測定試料が調製される。ステップS207の処理が終了すると、マイクロコンピュータ11は、メインルーチンへ処理をリターンする。
【0063】
図8は、無核成分測定処理の手順を示すフローチャートである。無核成分測定処理では、まず、マイクロコンピュータ11が、光学検出部5の受光感度及び増幅回路50のゲインを無核成分測定用の第1設定値で設定する(ステップS301)。
【0064】
第1設定値および後述する第2および第3設定値は、それぞれ、光学検出部5の各受光部の受光感度の値と、増幅回路50のゲインの値を含んでいる。以下では、前者を「受光感度」と呼び、後者を「ゲイン」と呼んで区別する。両者の積によって信号の増幅率が決まる。以下では、受光感度とゲインの積により定まる値を「増幅率」と呼ぶ。
【0065】
第1設定値が設定されると、光学検出部5の受光感度が低感度に設定される。さらに、FSCアンプのゲインがMiddleレベルに設定される。FLLアンプは、Middleレベルに設定される。FLHアンプは、Lowレベルに設定される。第1設定値によって定まるFLHの増幅率は、後述する第3設定値によって定まるFLH2の増幅率に比べて低い。
【0066】
マイクロコンピュータ11は、図示しないコンプレッサを駆動して、フローセル51へシース液を送液させる(ステップS302)。このようにフローセル51へのシース液供給が継続されている状態で、マイクロコンピュータ11は、反応槽2uから第1測定試料をフローセル51に供給させる(ステップS303)。
【0067】
これにより、フローセル51にシース液と第1測定試料とが同時に供給され、前記フローセル51においてシース液に包まれた第1測定試料の試料流が形成される。このようにして形成された試料流に光源53からのレーザビームが照射され(ステップS304)、フローセル51にビームスポットが形成される。フローセル51のビームスポットを粒子が通過すると、光源53からの光が粒子に照射され、粒子から前方散乱光、蛍光及び側方散乱光が発生する。前方散乱光、蛍光、及び側方散乱光のそれぞれは、第1散乱光受光部55、蛍光受光部59及び第2散乱光受光部58により受光されて電気信号に変換される(ステップS305)。したがって、フローセル51を粒子が通過する度に、第1散乱光受光部55、第2散乱光受光部59及び蛍光受光部58の出力信号がパルス状に変化する。
【0068】
第1散乱光受光部55及び第2散乱光受光部58の受光レベルに応じた電気信号は、FSC及びSSCとして出力される。蛍光受光部59の受光レベルに応じた電気信号は、FLHおよびFLLの2つの信号として出力される。このとき、ステップS301において設定された第1設定値によって定まる受光感度(低感度)で、FSC、SSC、FLHおよびFLLが出力される。出力された信号は、第1設定値によって定まるゲインで、増幅回路50のメインアンプにより増幅される。
【0069】
これにより、第1測定試料の各粒子から、低感度蛍光信号(以下、FLLという)と、高感度蛍光信号(以下、FLHという)と、FSCと、SSCの4種類の光学信号が取得される。
【0070】
第1設定値が設定された増幅回路50によって増幅されたFSC、FLL、FLH及びSSCは、フィルタ回路6によってフィルタ処理が施される。これらは、A/Dコンバータ7によってディジタル信号に変換され、ディジタル信号処理回路8によって所定の信号処理が施される。
【0071】
ディジタル信号処理回路8は、信号処理によって光学信号(FSC、SSC、FLL、FLH)から、解析処理に使用するパラメータを抽出する。解析用パラメータには、前方散乱光強度(以下、「FSCP」という)、前方散乱光信号のパルス幅(以下、「FSCW」という)、側方散乱光強度(以下、「SSCP」という)、低感度蛍光強度(以下、「FLLP」という)、低感度蛍光信号のパルス幅(以下、「FLLW」という)、低感度蛍光信号のパルス面積(以下、「FLLA」という)、高感度蛍光強度(以下、「FLHP」という)、高感度蛍光信号のパルス幅(以下、「FLHW」という)、高感度蛍光信号のパルス面積(以下、「FLHA」という)が含まれる。
【0072】
図9A〜
図9Cに基づいて、解析用パラメータの抽出について説明する。解析用パラメータは、各光学信号について、「強度」、「パルス幅」および「パルス面積」の3種類がある。強度はPで表される。パルス幅はWで表される。パルス面積はAで表される。上述したように、粒子がフローセル51を通過する度に、各受光部から出力される電気信号は、粒子の特性に応じてパルス状に変化する。FSCP、SSCP、FLLP、及びFLHPなどの光学信号の強度は、それぞれ、
図9Aに示すようなパルスのピークの高さPとして得られる。FSCW、FLLW、及びFLHWなどの光学信号のパルス幅は、それぞれ、
図9Bに示すように、パルスが所定の閾値を超えたときの時刻T1から閾値を下回った時刻T2までの間隔Wとして得られる。FLLA、及びFLHAなどの光学信号のパルス面積は、
図9Cに示すように、信号のパルス波形線L1と、パルスの両側において光学信号強度が所定の閾値を取るときの時刻を示す直線L2,L3と、光学信号強度の値が0を示す直線L4とで囲まれる領域(図中斜線を付した領域)PAの面積、すなわち、信号強度の時間積分値として得られる。
【0073】
なお、ここに示した解析用パラメータの抽出方法は一例に過ぎず、異なる抽出方法を用いることができる。パルス面積は、パルスの時間曲線下面積を反映する値であれば近似値であってもよく、時間積分値には限られない。例えば、パルス面積は、パルス幅とピークの高さの積であってもよいし、パルス幅とピークの高さから求めた三角形の面積であってもよい。また、時間積分値を抽出する形態において、底辺は強度が0の直線でなくてもよく、適宜設定できる。例えば、
図9Cに示した所定の閾値を底辺としてもよいし、あるいは、シース液のみをフローセル51に流したときのパルスの値を基準値として、それを底辺としてもよい。
【0074】
再び
図8を参照する。上記のようにして光学信号から抽出されたパラメータは、測定データとしてメモリ9に格納される(ステップS306)。以上の処理を完了すると、マイクロコンピュータ11は、処理をメインルーチンへリターンする。
【0075】
図10は、有核成分測定処理の手順を示すフローチャートである。有核成分測定処理では、まず、マイクロコンピュータ11が、光学検出部5の受光感度及び増幅回路50のゲインを第2設定値で設定する(ステップS311)。この第2設定値は、白血球、上皮細胞、真菌等の有核成分を測定するための設定値である。
【0076】
第2設定値が設定されると、光学検出部5の受光感度が低感度に設定される。さらに、FSCアンプはLowレベルに設定される。FLLアンプは、Lowレベルに設定される。FLHアンプは、Middleレベルに設定される。第2設定値によって定まるFLHの増幅率は、後述する第3設定値によって定まるFLH2の増幅率に比べて低い。
【0077】
次に、マイクロコンピュータ11は、図示しないコンプレッサを駆動して、フローセル51へシース液を送液させる(ステップS312)。このようにフローセル51へのシース液供給が継続されている状態で、マイクロコンピュータ11は、反応槽2bから第2測定試料をフローセル51に供給させる(ステップS313)。
【0078】
これにより、フローセル51にシース液と第2測定試料とが同時に供給され、前記フローセル51においてシース液に包まれた第2測定試料の試料流が形成される。そして、このようにして形成された試料流に光源53からのレーザビームが照射される(ステップS314)。これにより有核細胞の前方散乱光、蛍光及び側方散乱光が発生する。前方散乱光、蛍光、及び側方散乱光のそれぞれは、第1散乱光受光部55、蛍光受光部59及び第2散乱光受光部58により受光されて電気信号に変換される(ステップS315)。
【0079】
光学検出部5は、第2設定値によって定まる受光感度でFSC、FLH、FLL及びSSCを出力する。これらの出力信号は、第2設定値によって定まるゲインで増幅回路50により増幅される。
【0080】
これにより、第2測定試料の粒子から、低感度蛍光信号FLLと、第1高感度蛍光信号(以下、「FLH1」という)と、FSCと、SSCの4種類の光学信号が取得される。
【0081】
増幅された信号は、フィルタ回路6によってフィルタ処理が施される。信号は、A/Dコンバータ7によってディジタル信号に変換され、ディジタル信号処理回路8によって所定の信号処理が施される。かかる信号処理により、FSCのピーク値がFSCPとして抽出される。FSCのパルス幅がFSCWとして抽出される。SSCのピーク値がSSCPとして抽出される。FLLのピーク値がFLLPとして抽出される。FLLのパルス幅がFLLWとして抽出される。FLLのパルス面積がFLLAとして抽出される。FLH1のピーク値が第1高感度蛍光強度(以下、「FLHP1」という)として抽出される。FLH1のパルス幅が第1高感度蛍光パルス幅(以下、「FLHW1」という)として抽出される。FLH1のパルス面積が第1高感度蛍光パルス面積(以下、「FLHA1」という)として抽出される。抽出されたパラメータのデータは、測定データとしてメモリ9に格納される(ステップS316)。
【0082】
第2測定試料がフローセル51に供給され始めてから所定時間が経過すると、マイクロコンピュータ11は、光学検出部5の受光感度および増幅回路50のゲインを第3設定値に変更する(ステップS317)。この第3設定値は、細菌を測定するための設定値である。
【0083】
第3設定値が設定されると、光学検出部5の受光感度が高感度に設定される。さらに、FSCアンプは、Highレベルに設定される。FLHアンプは、Highレベルに設定される。FLLアンプは使用されない。
【0084】
第3設定値における蛍光受光部59の受光感度(高感度)は、第2設定値における蛍光受光部59の受光感度(低感度)の5倍である。これは、細菌は他の有核細胞に比べてサイズが小さく、蛍光量が有核細胞測定の場合に比べて低いためである。第3設定値における蛍光受光部59の受光感度を第2設定値における受光感度よりも高くすることで、細菌に適した受光感度となり、細菌から発せられる微量の蛍光を高精度に検出することができる。また、第3設定値におけるFSCアンプのゲインをHighレベルとすることで、微小な細菌を高精度に検出することができる。
【0085】
光学検出部5および増幅回路50が第3設定値で設定された状態で、第2測定試料の測定が行われる(ステップS318)。これにより、第3設定値によって定まる受光感度で光学検出部5から信号が出力され、出力された信号が第3設定値によって定まるゲインで増幅回路50により増幅される。第3設定値が設定された状態で光学検出部5から出力されたFLHは、増幅回路50のFLHアンプで増幅され、第2高感度蛍光信号(以下、「FLH2」という)として取得される。
【0086】
これにより、第2測定試料の粒子から、第2高感度蛍光信号FLH2と、FSCの2種類の光学信号が取得される。
【0087】
増幅回路50にて増幅されたFSCおよびFLH2は、フィルタ回路6によってフィルタ処理が施された後、A/Dコンバータ7によってディジタル信号に変換され、ディジタル信号処理回路8によって所定の信号処理が施される。かかる信号処理により、FSCのピークがFSCPとして抽出される。FSCのパルス幅がFSCWとして抽出される。SSCのピーク値がSSCPとして抽出される。FLH2のピーク値が第2高感度蛍光強度(以下、「FLHP2」という)として抽出される。FLH2のパルス幅が第2高感度蛍光パルス幅(以下、「FLHW2」という)として抽出される。FLH2のパルス面積が第2高感度蛍光パルス面積(以下、「FLHA2」という)として抽出される。抽出されたパラメータのデータは、測定データとしてメモリ9に格納される(ステップS319)。以上の処理を完了すると、マイクロコンピュータ11は、処理をメインルーチンへリターンする。
【0088】
有核成分測定処理の後、マイクロコンピュータ11は、無核成分測定処理及び有核成分測定処理によって生成された測定データを情報処理部13へ送信し(ステップS107)、処理を終了する。
【0089】
情報処理部13が測定データを受信すると(ステップS108)、CPU401は、測定データ解析処理を実行し(ステップS109)、尿検体の分析結果を生成して、当該分析結果をハードディスク404に格納する。
図11は、測定データ解析処理の手順を示すフローチャートである。測定データ解析処理には、第1無核成分分類処理(ステップS401)と、第2無核成分分類処理(ステップS402)と、第1有核成分分類処理(ステップS403)と、第2有核成分分類処理(ステップS404)と、細菌検出処理(ステップS405)とが含まれる。
【0090】
第1無核成分分類処理S401では、第1測定試料を測定することによって得られたFSC及びFLHを使用して、赤血球と結晶とが検出され、計数される。赤血球及び結晶は、円柱及び粘液糸等よりも染まりにくく、蛍光量が少ないため、FLHを用いて検出される。
図12は、FLHP−FSCP空間における赤血球及び結晶の分布を示す図である。
図12の横軸はFLHPを示し、縦軸はFSCPを示している。図に示すように、赤血球の分布領域R11と、結晶の分布領域R12とは、FLHPにおいて差異が認められる。これは、結晶と赤血球とで色素による染まり易さが異なるためである。したがって、赤血球と結晶とは、FLHPに基づいて分類される。第1無核成分分類処理では、図に示す領域R11に含まれる粒子が赤血球として検出され、計数される。また、図に示す領域R12に含まれる粒子が結晶として検出され、計数される。
【0091】
図13A乃至
図13Bに、第1無核成分分類処理S401における具体的な検出結果を示す。
図13Aは、赤血球の検出結果の一例を示すスキャッタグラムであり、
図13Bは、結晶の検出結果の一例を示すスキャッタグラムである。なお、
図13Aは、赤血球を含む検体を測定した結果を示しており、
図13Bは、結晶を含む検体を測定した結果を示している。
【0092】
第2無核成分分類処理S402では、第1測定試料を測定することによって得られたFLLを使用して、円柱と粘液糸とが検出され、計数される。円柱及び粘液糸は、赤血球及び結晶よりも染まり易く、蛍光量が多いため、FLLを用いて検出される。
図14は、FLLW−FLLA空間における円柱及び粘液糸の分布を示す図である。図の横軸はFLLWを示し、縦軸はFLLAを示している。図に示すように、FLLW−FLLA領域において、円柱と粘液糸とは別々の領域R21及びR22のそれぞれに出現している。これは、円柱と粘液糸とで染まり易さ及び染色される基質の太さが異なるためである。したがって、円柱と粘液糸とは、FLLW及びFLLAに基づいて分類される。第2無核成分分類処理では、図に示す領域R21に含まれる粒子が円柱として検出され、計数される。また、図に示す領域R22に含まれる粒子が粘液糸として検出され、計数される。
【0093】
図15A乃至
図15Bに、第2無核成分分類処理S402における具体的な検出結果を示す。
図15Aは、円柱の検出結果の一例を示すスキャッタグラムであり、
図15Bは、粘液糸の検出結果の一例を示すスキャッタグラムである。なお、
図15Aは、円柱を含む検体を測定した結果を示しており、
図15Bは、粘液糸を含む検体を測定した結果を示している。
【0094】
次に、第1有核成分分類処理、第2有核成分分類処理、及び細菌検出処理により、尿中の核酸を有する細胞が分類される。
【0095】
第1有核成分分類処理S403では、第2測定試料を測定することによって得られたFSC及びFLLを使用して、異型細胞と白血球と上皮細胞とが検出され、計数される。異型細胞、白血球、及び上皮細胞は、精子、トリコモナス、真菌等よりも核酸量が大きく、蛍光量が大きいため、FLLを用いて検出される。
図16は、FLLA−FSCW空間における白血球、異型細胞、及び上皮細胞の分布を示す図である。図の横軸はFLLAを示し、縦軸はFSCWを示している。図に示すように、白血球及び上皮細胞と、異型細胞とにはFLLAにおいて差異が認められる。これは、白血球と上皮細胞とには核酸量に概ね差異がなく、異型細胞の方が白血球及び上皮細胞よりも核酸量が多いためである。また、白血球と上皮細胞とは、FSCWにおいて差異が認められる。これは、上皮細胞は白血球よりもサイズが大きいためである。したがって、白血球、上皮細胞、及び異型細胞は、FLLA及びFSCWに基づいて分類される。第1有核成分分類処理では、図に示す領域R31に含まれる粒子が異型細胞として検出され、計数される。また、図に示す領域R32に含まれる粒子が白血球として検出され、計数される。さらに、図に示す領域R33に含まれる粒子が上皮細胞として検出され、計数される。
【0096】
図17A乃至
図17Cに、第1有核成分分類処理S403における具体的な検出結果を示す。
図17Aは、白血球の検出結果の一例を示すスキャッタグラムであり、
図17Bは、上皮細胞の検出結果の一例を示すスキャッタグラムであり、
図17Cは、異型細胞の検出結果の一例を示すスキャッタグラムである。なお、
図17Aは、白血球を含む検体を測定した結果を示しており、
図17Bは、上皮細胞を含む検体を測定した結果を示しており、
図17Cは、異型細胞を含む検体を測定した結果を示している。
【0097】
第2有核成分分類処理S404では、第2測定試料を測定することによって得られたFSC及びFLH1を使用して、精子とトリコモナスと真菌とが検出され、それぞれの計数値が求められる。
図18は、FLHP1−FSCP空間における精子、トリコモナス、及び真菌の分布を示す図である。精子、トリコモナス、及び真菌は、白血球、上皮細胞、及び異型細胞よりも核酸量が少なく、蛍光量が小さいため、FLH1を用いて検出される。図の横軸はFLHP1を示し、縦軸はFSCPを示している。図に示すように、精子と真菌とトリコモナスとは、FLHP1−FSCP空間における分布領域が異なっている。これは、精子と真菌とトリコモナスとが、核酸量およびサイズにおいて互いに異なっているためである。したがって、精子、トリコモナス、及び真菌は、FLHP1及びFSCPに基づいて分類される。第2有核成分分類処理では、図に示す領域R41に含まれる粒子が精子として検出され、計数される。また、図に示す領域R42に含まれる粒子が真菌として検出され、計数される。さらに、図に示す領域R43に含まれる粒子がトリコモナスとして検出され、計数される。
【0098】
図19A乃至
図19Cに、第2有核成分分類処理S404における具体的な検出結果を示す。
図19Aは、真菌の検出結果の一例を示すスキャッタグラムであり、
図19Bは、トリコモナスの検出結果の一例を示すスキャッタグラムであり、
図19Cは、精子の検出結果の一例を示すスキャッタグラムである。なお、
図19Aは、真菌を含む検体を測定した結果を示しており、
図19Bは、トリコモナスを含む検体を測定した結果を示しており、
図19Cは、精子を含む検体を測定した結果を示している。
【0099】
細菌検出処理S405では、第2測定試料を測定することによって得られたFSC及びFLH2を使用して、細菌が検出され、計数される。細菌は、白血球等の他の有核細胞に比べて非常にサイズが小さく、また核酸量も少ないため、蛍光量が非常に小さい。このため、細菌はFLH2を用いて検出される。
図20は、FLHP2−FSCP空間における細菌の分布を示す図である。図の横軸はFLHP2を示し、縦軸はFSCPを示している。図に示すとおり、所定の領域R5に細菌が出現する。領域R5よりもさらに蛍光強度の高い領域には、白血球等の他の有核細胞が出現する(図示せず)。また、領域R5よりも蛍光強度の低い領域には、核酸を有しない夾雑物が出現する(図示せず)。細菌検出処理では、図に示す領域R5に含まれる粒子が細菌として検出され、計数される。
【0100】
図21に、細菌検出処理S405における具体的な検出結果を示す。
図21は、細菌の検出結果の一例を示すスキャッタグラムである。なお、
図21は、細菌を含む検体を測定した結果を示している。
【0101】
CPU401は、測定データ解析処理を終了すると、処理をメインルーチンへリターンする。
【0102】
CPU401は、上記のような測定データ解析処理によって得られた分析結果を表示部409に表示して(ステップS110)、処理を終了する。
【0103】
(その他の実施の形態)
なお、上述した実施の形態においては、第1測定試料から赤血球、円柱、結晶、及び粘液糸を検出する構成を例示したが、これに限定されるものではない。核酸を有さない粒子として少なくとも赤血球を検出する構成であればよい。赤血球に加えて、円柱、結晶または粘液糸を検出することは任意である。
【0104】
また、上述した実施の形態においては、第2測定試料から白血球、上皮細胞、異型細胞、精子、トリコモナス、真菌及び細菌を検出する構成について述べたが、これに限定されるものではない。核酸を有する細胞として少なくとも白血球を検出する構成であればよい。白血球に加えて、上皮細胞、異型細胞、精子、トリコモナス、真菌または細菌を検出することは任意である。
【0105】
また、上述した実施の形態においては、第2測定試料から、FLL、FLH1、及びFLH2の3つの感度の蛍光信号を取得し、これらを用いて、核酸を有する細胞を白血球、上皮細胞、異型細胞、精子、トリコモナス、真菌及び細菌に分類する構成について述べたが、これに限定されるものではない。2種類の感度の蛍光信号を取得し、核酸を有する細胞を複数種類に分類する構成であってもよいし、1つの蛍光信号から核酸を有する細胞を複数種類に分類する構成であってもよい。
【0106】
また、上述した実施の形態においては、蛍光受光部59の感度と、増幅回路50の増幅率の両方を切り替えて、複数の感度の蛍光信号を得る構成について述べたが、これに限定されるものではない。例えば、増幅回路50の増幅率は切り替えずに、蛍光受光部59の感度を切り替えて、複数の感度の蛍光信号を取得する構成であってもよいし、蛍光受光部59の感度は切り替えずに、増幅回路50の増幅率を切り替えて、複数の感度の蛍光信号を取得する構成であってもよい。
【0107】
また、上述した実施の形態においては、染色液と希釈液とが別液である例を示したが、これらは一液にまとめてよい。
【0108】
また、上述した実施の形態においては、検体分取部1がピペッティングによって検体を定量吸引して、反応槽2uと反応槽2bとに検体のアリコートを分配する構成について述べたが、これに限定されるものではない。吸引した検体をサンプリングバルブによって定量し、定量されたアリコートを反応槽2uと反応槽2bとに供給する構成とすることも可能である。
【0109】
また、上述した実施の形態においては、測定試料調製処理、無核成分測定処理、有核成分測定処理、及び測定データ解析処理をこの順序で実行する構成について述べたが、この順序は一例であり、他の順序で上記処理を実行することも可能である。例えば、第1測定試料を調製した後、無核成分測定処理を実行し、さらに第1無核成分分類処理及び第2無核成分分類処理を実行し、その後に、第2測定試料を調製し、有核成分測定処理を実行し、第1有核成分分類処理、第2有核成分分類処理、及び細菌検出処理を実行する構成とすることも可能である。また、有核成分測定処理における第2設定値を用いた第2測定試料の測定と、第3設定値を用いた第2測定試料の測定の順序も変更可能である。
【0110】
また、上述した実施の形態においては、情報処理部13によって測定データの解析を行う構成につて述べたが、これに限定されるものではない。測定ユニット10のマイクロコンピュータ11によって測定データを解析する構成とすることも可能である。