(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(B)エチレン性二重結合を有するアミド又は前記誘導体が、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン及びN−メタアクリロイルモルホリンの少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の活性エネルギー線硬化性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を構成する各成分、同組成物を活性エネルギー線照射により硬化させることによって得られる硬化物(成形体)について説明する。
【0019】
[(A)複数のアクリレート基又はメタクリレート基を有する樹脂]
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれる、複数の(メタ)アクリレート基を有する樹脂は、その重量平均分子量が、1,000〜20,000の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量が1,000未満であると、複数の(メタ)アクリレート基を有する樹脂によって得られる硬化物の架橋密度が高くなり、樹脂の硬化収縮も大きくなるため、硬化物の反りも大きくなる。一方、重量平均分子量が20,000を超えると、粘度が高くなり、本発明の用途では使用できなくなるため、好ましくない。
【0020】
また、官能基数が大きいと架橋密度が高くなるため、硬化物の反りが大きくなり、強靭性も低下する傾向とある。そのため、複数の(メタ)アクリレート基を有する樹脂の中でも、二官能(メタ)アクリレート樹脂、三官能(メタ)アクリレート樹脂が好ましい。
【0021】
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタアクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0022】
上記(A)複数の(メタ)アクリレート基を有する樹脂としては、複数の(メタ)アクリレート基を有するウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等を挙げることができる。低反り性、密着性及び耐磨耗性を高いレベルで得ることができることから、複数の(メタ)アクリレート基を有する樹脂はウレタン樹脂であることが好ましい。
【0023】
ウレタン樹脂の例としては、二官能では新中村化学工業(株)製のU−108A、UA−112P、UA−5201、UA−512、UA−412A、UA−4200、UA−4400、UA−340P、UA−2235PE、UA−160TM、UA−122P、UA−512、UA−W2、UA−7000、UA−7100;サートマー(株)製のCN962、CN963、CN964、CN965、CN980、CN981、CN982、CN983、CN996、CN9001、CN9002、CN9788、CN9893、CN978、CN9782、CN9783;東亞合成化学工業(株)製のM−1100、M−1200、M−1210、M−1310、M−1600;根上工業(株)製のUN−9000PEP、UN−9200A、UN−7600、UN−333、UN−1255、UN−6060PTM、UN−6060P、SH−500B;共栄社化学(株)製AH−600、AT−600;ダイセル・サイテック(株)製のエベクリル280、エベクリル284、エベクリル402、エベクリル8402、エベクリル8807、エベクリル9270等を挙げることができる。
【0024】
三官能の例としては、サートマー(株)製のCN929、CN944B85、CN989、CN9008;ダイセル・サイテック(株)製のエベクリル264、エベクリル265、エベクリル1259、エベクリル8201、KRM8296、エベクリル294/25HD、エベクリル4820等が挙げられる。四官能以上では新中村化学工業(株)製のU−6HA、U−6H、U−15HA、UA−32P、U−324A、UA−7200;サートマー(株)製のCN968、CN9006、CN9010;根上工業(株)製のUN−3320HA、UN−3320HB、UN−3320HC、UN−3320HS、UN−904、UN−901T、UN−905、UN−952;ダイセル・サイテック(株)製のエベクリル1290、エベクリル1290K、KRM8200、エベクリル5129、エベクリル8210、エベクリル8301、エベクリル8405等を挙げることができる。
【0025】
これらの複数の(メタ)アクリレート基を有するウレタン樹脂は、単独あるいは2種以上を混合して用いても良い。
【0026】
[(B)エチレン性二重結合を有するアミド及びアミドの誘導体]
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれる(B)エチレン性二重結合を有するアミド及びアミドの誘導体としては、例えばN−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−1−メチル−2−メトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−モルホリノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロポキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N−(3−ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド等の脂肪族感光性アミド化合物;N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン等の環状感光性アミド化合物等を挙げることができる。(メタ)アクリロイル基を有する感光性アミド化合物が好ましく、特に、N−(2−ヒドロキシエチル)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)メタアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−メタクリロイルモルホリンが透明性の点から好ましい。
【0027】
このような(B)エチレン性二重結合を有するアミド及びアミドの誘導体から選択される少なくとも1種は、(A)複数の(メタ)アクリレート基を有する樹脂100質量部に対して、15〜200質量部、さらに20〜100質量部の割合で含まれることが好ましい。(B)エチレン性二重結合を有するアミド及びアミドの誘導体から選択される少なくとも1種の配合量が15質量部未満であると硬化物の密着性が不十分となる場合があり、一方200質量部を超えると硬化物の脆性が顕著となる場合があり好ましくない。
【0028】
[(C)炭素−炭素二重結合を含まない環状骨格を有する二官能(メタ)アクリレート]
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物に含まれる(C)炭素−炭素二重結合を含まない環状骨格を有する二官能(メタ)アクリレートは、二重結合を含まないことにより、反りを防止し、環状骨格を有することにより耐磨耗性を強化することができる。その重量平均分子量は、150〜2,000の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量が150未満であると、複数の(メタ)アクリレート基を有するウレタン樹脂との間でもたらされる架橋密度が高くなり、樹脂の硬化収縮が大きくなるため、硬化成形物の反りも大きくなる。重量平均分子量が2,000を超えると、粘度が高くなり、作業性が低下し好ましくない。
【0029】
上記(C)炭素−炭素二重結合を有さない環状骨格を有する二官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデ
カンジメタノールジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、水素化ヘキサフルオロビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビス(2−(メタ)アクリロイルオキシ)ヘキサヒドロフタル酸等の脂環骨格を有する二官能(メタ)アクリレート;5−エチル−2−(2−ヒドロキシ−1,1ジメチルエチル)−5−(ヒドロキシメチル)−1,3−ジオキサンジアクリレート、1,4−ジ(メタ)アクリロイルピペラジン等の複素環骨格を有する二官能(メタ)アクリレート;さらにはこれら二官能(メタ)アクリレートのエチレンオキシド、プロピレンオキシド、カプロラクトン等による変性物を挙げることができる。これらの中では、架橋密度が比較的高く、樹脂の硬化収縮を抑制できる、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデ
カンジメタノールジ(メタ)アクリレート、水素化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、水素化ヘキサフルオロビスフェノール、Aジ(メタ)アクリレート特にシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデ
カンジメタノールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0030】
このような(C)炭素−炭素二重結合を有さない環状骨格を有する二官能(メタ)アクリレートは、複数の(メタ)アクリレート基を有するウレタン樹脂100質量部に対して、5〜100質量部、さらに10〜50質量部の割合で含まれることが好ましい。(C)炭素−炭素二重結合を有さない環状骨格を有する二官能(メタ)アクリレートの配合量が、5質量部未満であると硬化物の耐磨耗性が不十分となる場合があり、一方100質量部を超えると硬化物の脆性が顕著となる場合があり好ましくない。
【0031】
[(D)光重合開始剤]
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に含まれる(D)光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテル等のベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p−メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−アミノアントラキノン等のアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p−ジメチル安息香酸エチルエステル等の安息香酸エステル類;
ジフェニルジスルフィド
、2−ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。
【0032】
これらの(D)光重合開始剤は、1種もしくは2種以上を組み合わせて用いることができる。この(D)光重合開始剤は、(A)複数の(メタ)アクリレート基を有する樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部、さらに0.3〜5質量部の割合で含まれることが好ましい。
【0033】
[(E)エチレン性二重結合を含まないポリマー]
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、さらに(E)エチレン性二重結合を含まないポリマーを含んでいる。(E)エチレン性二重結合を含まないポリマーは、エチレン性二重結合を含まない限りどのようなポリマーでも良く、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でも良いが、作業性の点から熱可塑性樹脂が好ましい。本発明のエチレン性二重結合を含まないポリマーはエチレン性二重結合を有するアミド及びアミドの誘導体から選択される少なくとも一種に溶解することが必要である。エチレン性二重結合を含まないポリマーである熱可塑性樹脂の例としては、ポリオレフィン(例、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリペンテン、ポリメチルペンテン)、ポリエチレン共重合体(例、エチレン・酢酸ビニル共重合体)、ポリスチレン、ポリスチレン共重合体(例、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・ブタジエン・アクリロニトリル共重合体)、ポリビニルアセタール(例、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール)、ポリアセタール、アクリル樹脂(例、(メタ)アクリレート単独重合体、(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリレートブロック共重合体、(メタ)アクリレート・スチレン共重合体)、セルロース系樹脂(例、硝酸セルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、エチルセルロース)、ポリエステル系樹脂(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアルキレンオキシド(例、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド)、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリビニルイソブチルエーテル、ポリビニルカルバソール等を挙げることができる。熱可塑性樹脂以外の熱硬化性樹脂等も上記溶解条件を満たせば使用しても良い。
【0034】
上記(E)エチレン性二重結合を含まないポリマーは、極性基を有するポリマー(熱可塑性樹脂)であることが好ましい。このようなポリマーは二官能アクリレート及び二官能メタクリレートに溶解しやすく、他の成分との相溶性にも優れていて好ましい。このような極性基としては、エステル基(結合)、エーテル基(結合)、ヒドロキシル基、ウレタン基(結合)を挙げることができる。特に、エステル基(結合)、エーテル基(結合)、ヒドロキシル基が好ましい。一般に、これらの基は、ポリマーの繰り返し単位(好ましくは繰り返し単位の50%以上)に含まれる。
【0035】
このような極性基を有するポリマーとしては、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアセタール(例、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール)、ポリアセタール、アクリル樹脂(例、(メタ)アクリレート単独重合体、(メタ)アクリレート共重合体、(メタ)アクリレートブロック共重合体、(メタ)アクリレート・スチレン共重合体)、セルロース系樹脂(例、硝酸セルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、エチルセルロース)、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアルキレンオキシド(例、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド)、ポリウレタン、ポリビニルイソブチルエーテルを挙げることができる。中でも、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール、セルロース樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0036】
好ましいアクリル樹脂としては、アルコール残基が炭素原子数1〜10個のアルキルの(メタ)アクリル酸エステル(例、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等)の単独重合体、共重合体及びブロック共重合体を挙げることができる。ヒドロキシ基、アミノ基、カルボン酸基等の極性基を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等を少量使用することもできる。
【0037】
特に、上記モノマーの共重合体、ブロック共重合体が好ましく、なかでもメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレートの共重合体、特にブロック共重合体(例えば、PMMA−b−PBA−b−PMMA;b=ブロック)が好ましい。
【0038】
好ましいポリビニルアセタールとしては、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラールを挙げることができ、特にポリビニルブチラールが好ましい。
【0039】
好ましいセルロース樹脂としては、硝酸セルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、エチルセルロースを挙げることができ、特に、酢酸プロピオン酸セルロース(セルロースアセテートプロピオネート)、酢酸酪酸セルロース(セルロースアセテートブチレート)が好ましい。
【0040】
好ましいこれらのポリマーの市販品としては、例えば、ポリビニルブチラールとしてエスレックBL−1H(積水化学工業(株)製)、セルロース樹脂であるセルロースアセテートプロピオネートとしてCAP504−0.2(イーストマンケミカル社製)、アクリル樹脂であるアクリルモノマーのブロック共重合体としてナノストレングスM53(アルケマ社製)、フェノキシ樹脂としてPKHB(インケム社製)、ポリエステル樹脂としてバイロン220(東洋紡(株)製)等を挙げることができる。
【0041】
本発明の硬化組成物の上記(E)エチレン性二重結合を含まないポリマー以外の成分と優れた相溶性を示す当該(E)エチレン性二重結合を含まないポリマーは、本発明の硬化性組成物の硬化物に伸張性、強靱性を付与することができる。このため、硬化性樹脂組成物の膜をフィルム上に形成し、得られた積層物をさらに成形する場合でも、その成形時又は成形後に硬化性樹脂組成物の膜のワレ、剥離等の発生が見られない。従って、本発明の硬化性組成物の硬化物は二次加工性においても優れたものが得られることが確認された。
【0042】
本発明の(E)エチレン性二重結合を含まないポリマーは、本発明の硬化組成物の他の成分との相溶性を確保する観点から、その数平均分子量が1,000〜100,000の範囲にあることが好ましく、3,000〜50,000の範囲にあることがより好ましく、5,000〜50,000の範囲にあることがさらに好ましい。数平均分子量は、1,000未満の場合は、硬化性組成物の硬化物に伸張性、強靱性を付与することが難しく、一方、100,000を超えると硬化組成物の他の成分との相溶性が不十分となるおそれがある。
【0043】
また同様に相溶性の観点から、(E)エチレン性二重結合を含まないポリマーは、前記ウレタン樹脂100質量部に対して1〜10質量部、特に2〜7質量部の割合で含まれることが好ましい。含有量は、
1質量部未満の場合は、硬化性組成物の硬化物に伸張性、強靱性を付与することが難しく、一方、10質量部を超えると硬化組成物の他の成分との相溶性が不十分となるおそれがある。
【0044】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、さらに硬化物の密着性、機械的強度、線膨張係数などの特性を向上させる目的で、必要により無機充填材を配合することができる。無機充填
材として、例えば、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、酸化ケイ素粉、微粉状酸化ケイ素、無定形シリカ、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、雲母粉等の公知慣用の無機充填
材が使用できる。無機充填
材は前記ウレタン樹脂100質量部に対して10〜100質量部で含まれことが好ましい。
【0045】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、特性を損なわない範囲内で、組成物の粘度を調整するため、有機溶剤を配合しても良い。有機溶剤としては、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、及び上記グリコールエーテル類の酢酸エステル化物などのエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤などが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて使用することができる。
【0046】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物には、さらに必要に応じてフタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、アイオジン・グリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、ナフタレンブラックなどの公知慣用の着色剤、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、t−ブチルカテコール、ピロガロール、フェノチアジン等の公知慣用の光重合禁止剤、微粉シリカ、有機ベントナイト、モンモリロナイトなどの公知慣用の増粘剤、シリコーン系、フッ素系、高分子系などの消泡剤及びレベリング剤から選択される少なくとも1種、イミダゾール系、チアゾール系、トリアゾール系等のシランカップリング剤などのような公知慣用の添加剤類を配合することができる。
【0047】
本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、1〜50dPa・sの粘度を有することが好ましい。この粘度は、複数の(メタ)アクリレート基を有するウレタン樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは10〜50質量部の範囲内で反応性希釈剤の量を調節することにより提供することができる。反応性希釈剤量が1質量部以下では粘度が高く作業性が低下する場合があり、一方、100質量部以上では硬化物の架橋密度が低下し、十分な耐磨耗性が得られなくなる場合があるので好ましくない。この反応性希釈剤は、前記のエチレン性二重結合を有するアミド及びアミドの誘導体、炭素−炭素二重結合を含まない環状骨格を有する二官能アクリレート及び二官能メタクリレート以外の成分として使用される。
【0048】
反応性希釈剤には公知慣用のものを用いることができる。例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート類;イソボロニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、N−アクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリジノン等の環状骨格を有する単官能感光性モノマー類;エチレングリコール、メトキシテトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコールのモノ又はジアクリレート類;N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート等のアミノアルキルアクリレート類;ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリス−ヒドロキシエチルイソシアヌレート等の多価アルコール又はこれらのエチレオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物等の多価アクリレート類;フェノキシアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、及びこれらのフェノール類のエチレンオキサイド付加物もしくはプロピレンオキサイド付加物等のアクリレート類;グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート等のグリシジルエーテルのアクリレート類;及びメラミンアクリレート、及び上記アクリレートに対応する各メタクリレート類等から選択される少なくとも一種を挙げることができる。これらの中で、特に分子中に1個のエチレン性不飽和基を有する化合物である単官能(メタ)アクリレート化合物が、希釈効果が高く好ましい。
【0049】
本発明にかかる活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、下記の塗布方法で基材などに塗布後、活性エネルギー線を照射し、硬化する。なお、この硬化物又は成形物は、反り防止の点から、デュロメータ硬さDタイプが75°以上であることが好ましい。
【0050】
塗布方法は、ディップコート法、フローコート法、ロールコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、カーテンコート法、グラビア印刷法、オフセット印刷法等の任意の方法を適用することができる。
【0051】
活性エネルギー線は、一般に紫外線及び電子線を意味する。紫外線の照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプ等を使用することができる。その他、紫外線領域のレーザー光線等も利用することができる。
【0052】
次に、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いて成形体を得る方法について説明する。例えば、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を凹版に充填し、充填した樹脂組成物を活性エネルギー線により硬化させ、その後得られた硬化物を凹部から取り出すことにより成形品を得ることができる。
【0053】
まず、
図1に示すように、表面に凹部2が形成された金型1を用意する。金型1には、一般に、ステンレス等の金属製のものが用いられる。
【0054】
次に、
図2に示すように、金型1の凹部2に本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物3を充填する。金型1の凹部2への活性エネルギー線硬化性樹脂組成物3の充填は、一般に、ドクターナイフ等を用いて行われる。
【0055】
その後、
図3に示すように、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物3の表面に基材4を載置し、その上部の光源5から基材4に紫外線を照射し、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させる。一般的に、基材には紫外線を透過する透明なポリエチレンテレフタレート或いはポリカーボネート製のフィルムが用いられる。
【0056】
続いて、
図4に示すように、基材4と樹脂組成物3の硬化物との積層体6を金型1から離型し成形物を得る。
図1から
図4の一連の工程は、専用の装置を用いることにより、連続的に成形品を製造することができる。
【0057】
得られた成形体は、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物3を用いているので、反りがなく、表面の
擦傷性、摩耗性が良好で、硬化物の基材への密着性に優れたものである。
【0058】
本発明の硬化物の伸びは、実施例に記載された試験方法により、5%以上、特に7%以上であることが好ましい。
【0059】
次に、本発明の成形体をさらに成形する工程、即ち二次加工(一般にインモールド成形と言われる)工程について説明する。
【0060】
図5に示すように、基材14と活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物13との積層体16を、金型11Aに載置し、その上から対の金型11Bに加熱下に押圧し(
図6)、得られた成形体17を取り出す(
図7)。押圧は100℃〜200℃において、数秒〜数分で行うことが好ましい。例えばPETフィルムを用いた場合、180℃で数秒間行う必要がある。
【0061】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物13は、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いるので、更なる上記二次加工においても、硬化物13は基材への密着性を保持すると共に、強靱性も獲得していることから硬化物13に亀裂が入ったり、基材との剥離が起こったりするようなことはない。
【0062】
以上より、本発明の硬化性組成物から得られた硬化物は反りを生じることなく、高温高湿下においてもの高い密着性及び優れた耐磨耗性を示し、さらに硬化後の成形等の二次加工性においても優れたものであると言える。このような本発明の硬化物は、上記特性が要求される成形品の分野、例えば携帯電話のボタン、各種ケースに特に有用である。また本発明の硬化性組成物は、UV成形品材料、光造形用材料、3Dインクジェット用材料などの用途に有用である。なお、本発明の重量平均分子量及び数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー (Gel Permeation Chromatography:GPC)により標準ポリスチレンを用いて測定したものである。
【実施例】
【0063】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記の実施例に限定されるものではないことはもとよりである。
【0064】
[実施例1〜7及び比較例1〜6]
(活性エネルギー線硬化性樹脂組成物の調製)
上述の通り作製した樹脂に、表1と表2に示す成分を同表に示す組成で配合し、80℃で攪拌して溶解させ、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を調製した。
【0065】
【表1】
【0066】
なお、表1の成分は次の通りである。
【0067】
EBECRYL 8807:脂肪族二官能ウレタンアクリレート(ダイセル・サイテック社製)
KAYARAD RM−1001:N−アクリロイルモルホリン(日本化薬(株)製)
ライトアクリレートIB−XA:イソボロニルアクリレート(共栄社化学(株)製)
アロニックスM−5700:2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(東亞合成(株)製)
NKエステルA−DCP:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(新中村化学工業(株)製)
CD406:シクロヘキサンジメタノールジアクリレート(サートマー(株)製)
ネオマーBA−641:エチレンオキシド4モル付加ビスフェノールA型ジアクリレート(三洋化成工業(株)製)
イルガキュア184:1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン(チバ・ジャパン社製)
エスレックBL−1H:ポリビニルブチラール樹脂(数平均分子量:20,000;積水化学工業(株)製;この樹脂10質量部はN−アクリロイルモルホリン90質量部に80℃で溶解可能であった)
CAP504−0.2:セルロースアセテートプロピオネート(数平均分子量:15,000;イーストマンケミカル社製;この樹脂10質量部はN−アクリロイルモルホリン90質量部に80℃で溶解可能であった)、
ナノストレングスM51:アクリルモノマーのブロック共重合体((PMMA−b−PBA−b−PMMA;b=ブロック)(数平均分子量:約10,000;アルケマ社製);この樹脂10質量部はN−アクリロイルモルホリン90質量部に80℃で溶解可能であった)
ナノストレングスM53:アクリルモノマーのブロック共重合体((PMMA−b−PBA−b−PMMA;b=ブロック)(数平均分子量:約50,000;アルケマ社製));この樹脂10質量部はN−アクリロイルモルホリン90質量部に80℃で溶解可能であった)
PKHB:フェノキシ樹脂(数平均分子量;約9,500;インケム社製);この樹脂10重量部はN−アクリロイルモルホリン90質量部に80℃で溶解可能であった)
バイロン220:ポリエステル樹脂(数平均分子量:約3,000;東洋紡(株)製)この樹脂10重量部はN−アクリロイルモルホリン90質量部に80℃で溶解可能であった)
【0068】
こうして調製した活性エネルギー線硬化性樹脂組成物について、密着性、反り、RCA磨耗性、伸び及び光造型時の成形性(クラックの有無)を以下の評価方法で評価した。その結果を表2に示す。
【0069】
(反り試験用硬化塗膜作製方法)
樹脂組成物を縦2cm、横2cm、深さ1mmのテフロン(登録商標)製の型に注ぎ、その上を易接着処理済PETフィルムで覆い、UVコンベア炉(メタルハライドランプ、80W、3灯)を用いて積算光量1000mJ/cm
2で露光し、離型して硬化塗膜を得た。
【0070】
(反り試験)
上記方法にて作製した硬化塗膜を、反りを生じた辺が上を向くように平らな台に置き、反りのある一辺を指で台に押さえつけて、反対側の浮き上がった辺の台からの高さを読み取り、反りの大きさを測定した。
○:硬化塗膜の反りが5mm未満
△:硬化塗膜の反りが5mm以上10mm未満
×:硬化塗膜の反りが10mm以上
【0071】
[試験方法]
(密着性及びRCA磨耗性試験用硬化物作製方法)
樹脂組成物を、バーコーターを用いて易接着処理済PETに50μmの厚みで塗布し、上から未処理PETで覆い、UVコンベア炉(高圧水銀灯、80W、3灯)を用いて露光量1000mJ/cm
2で露光し、未処理PETを剥がして硬化塗膜を得た。
【0072】
(密着性試験)
上記の方法で作製した硬化塗膜を85℃85%RHの恒温槽に10日間保管し、その後取り出して室温に戻す。室温に戻ったら、JIS K 5600−5−6に従って碁盤目状にクロスカットを入れ、次いでセロハン粘着テープによるピーリングテスト後の碁盤目の残り数を以下の基準で評価した。
○:碁盤目の残り数が70以上100以下
△:碁盤目の残り数が30以上70未満
×:碁盤目の残り数が0以上30未満
【0073】
(RCA磨耗試験)
上記の方法で作製した硬化塗膜をNORMAN TOOL,INC.(株)製RCA磨耗試験機及びRCA磨耗試験機用専用磨耗紙を用いて175gの荷重で50回磨耗し、その後の硬化塗膜表面の磨耗度合いを光学顕微鏡で観察した。
○:ほぼ磨耗していない
△:若干の磨耗あり
×:明らかな磨耗あり
【0074】
(伸び評価用試験片作製条件)
各透明性紫外線硬化型組成物を硬化後の膜厚が約100μmとなるように未処理PETフィルム上にバーコーターで塗布し、さらに上から未処理PETフィルムで覆い、UVコンベア炉(高圧水銀灯、80W、3灯)を用いて露光量1000mJ/cm
2で露光し、未処理PETフィルムを剥がして試験片を得た。
【0075】
(伸び評価法)
得られた試験片を10mm幅に切り出し、島津製作所(株)製オートグラフAG−X、引張り速度1mm/minで引張り、試験片が破断した際の伸びを測定した(常温)。
○:伸び率が7%以上
×:伸び率が5%未満
【0076】
(光造型時の成形性(クラックの有無)評価用試験片作製条件)
ソリッドクリエーターSCS−300P(ソニーマニュファクチュアリングシステムズ社製)を使用し、照射面(液面)におけるレーザーパワー100mW 、各組成において硬化深さが0.2mmとなる走査速度の条件で、各液状樹脂組成物に対して選択的にレーザー光を照射して、硬化樹脂層(厚さ0.10mm)を形成する工程を繰り返すことにより、直径1cm、高さ1cmの円柱状成型体 を製造した。
【0077】
(成形性(クラックの有無)評価法)
得られた成型体について、(株)キーエンス社製デジタルマイクロスコープSPZT-50Pを用いた観察を実施し、成型体中のクラックの有無を確認した。
○:クラック無し
×:クラック有り
【0078】
【表2】
【0079】
表2に示す結果から明らかなように、実施例1〜7は、反り、密着性、耐磨耗性、伸び、成形性のいずれの特性においても優れている。エチレン性二重結合を含まないポリマーを含有しない以外実施例と同様の組成を有する比較例1、2は伸びにおいてのみ不十分な性能を示している。比較例1、2では、エチレン性二重結合を含まないポリマーを含まないため、膜の強靱性が劣っているため十分な伸びが得られなかったと考えられる。
【0080】
エチレン性二重結合を含まないポリマーを含有しないことに加えて、硬化成分においても異なる組成を有する比較例3〜6は、反り、密着性、耐磨耗性、伸びの2つ以上の性能が不十分である。詳細には、比較例3は、感光性アミド及び感光性アミドの誘導体から選択される少なくとも一種を含有するため密着性は良好であるが、二重結合を含まない環状骨格を有する二官能(メタ)アクリレートを含有しないため耐磨耗性が劣り、反りにも問題がある。比較例4は、感光性アミド及び感光性アミドの誘導体から選択される少なくとも一種と、二重結合を含まない環状骨格を有する二官能(メタ)アクリレートを含有しないため、ほぼ全ての特性が劣っていた。比較例5は、感光性アミド及び感光性アミドの誘導体から選択される少なくとも一種を含んでいないが、極性基である水酸基を有する感光性モノマーを含むため密着性は高いが、二重結合を含まない環状骨格を有する二官能(メタ)アクリレートを含有しないため耐磨耗性が劣り、反りにも問題がある。比較例6は、反り、密着性が良好であるが、環状骨格を有する二官能(メタ)アクリレートが二重結合を含むため、耐磨耗性に劣っていた。成形性に関しては、エチレン性二重結合を含まないポリマーを含有しない比較例1〜6では、いずれもクラックが観察されたのに対し、実施例1〜7ではクラックは確認されなかった。
【0081】
従って、本発明の硬化性組成物を使用した硬化物のみ全ての性能において優れたものとなっている。