特許第6232060号(P6232060)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6232060セラミックハニカムフィルター中に多孔質プラグを作製する改良された方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232060
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】セラミックハニカムフィルター中に多孔質プラグを作製する改良された方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/85 20060101AFI20171106BHJP
   C04B 37/00 20060101ALI20171106BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20171106BHJP
   B01D 46/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   C04B41/85 D
   C04B37/00 A
   B01D39/20 D
   B01D46/00 302
【請求項の数】9
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-520160(P2015-520160)
(86)(22)【出願日】2013年3月7日
(65)【公表番号】特表2015-524377(P2015-524377A)
(43)【公表日】2015年8月24日
(86)【国際出願番号】US2013029584
(87)【国際公開番号】WO2014003836
(87)【国際公開日】20140103
【審査請求日】2016年2月22日
(31)【優先権主張番号】61/664,896
(32)【優先日】2012年6月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・カイ
(72)【発明者】
【氏名】アシシュ・コティシュ
(72)【発明者】
【氏名】ジャネット・エム・ゴス
(72)【発明者】
【氏名】ポール・シー・ヴォセプカ
【審査官】 今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−245686(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/106265(WO,A1)
【文献】 特開2012−045541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/85
B01D 39/20
B01D 46/00
C04B 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック粒子状物質及び流動性担体を含む、セラミックハニカムプラグ形成ペーストであって、該セラミック粒子状物質が、50マイクロメートル未満の、数にして少なくとも90%の粒子状物質を有しており、該流動性担体は充分な量で存在しているので、プラグ形成ペーストは、充分な流動性があって、これにより流体セラミックハニカム通路の中に挿入され、前記通路内に、該通路を画定する該ハニカムの壁以外のその他のいかなる担持体も無しに維持され、そして、該プラグ形成ペーストが一体として25%超の乾燥及び焼結体積収縮を有する、プラグ形成ペースト。
【請求項2】
該ペーストが、少なくとも5%の乾燥体積収縮を有する、請求項1に記載のプラグ形成ペースト。
【請求項3】
該プラグ形成ペーストが、少なくとも5%の乾燥体積収縮、及び一体として25%超の乾燥及び焼結体積収縮を有する、請求項1に記載のプラグ形成ペースト。
【請求項4】
セラミックハニカム中にプラグを形成する方法であって、
(a)セラミック粒子状物質及び担体流体を含むプラグ形成ペーストを、セラミックハニカムの通路の中に挿入して、スルーホールを有していない初期プラグを形成させること、
(b)前記ペーストの流動性担体を除去することにより、ステップ(a)の前記初期プラグが乾燥プラグを形成すること、及び
(c)加熱して焼結プラグを形成することにより、該ペーストの該セラミック粒子状物質が一つに結合し、焼結プラグが該セラミックハニカムの壁に結合し、該焼結プラグがその中にスルーホールを有すること、
を含む方法。
【請求項5】
該プラグ形成ペーストの該セラミック粒子状物質の一部分が、該セラミックハニカムの通路を画定する多孔質の壁に貫入する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
該乾燥プラグが、その中にスルーホールを有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
通路の一端でプラグを有する少なくとも一つの通路を含むセラミックハニカムであって、前記プラグが、セラミック粒塊を含むスルーホールを有し、少なくとも90%の該粒塊が、数にして約50マイクロメートル未満のサイズを有するセラミックハニカム。
【請求項8】
90%の該粒塊が、15マイクロメートルより小さいサイズを有する、請求項7に記載のセラミックハニカム。
【請求項9】
セラミック粒子状物質及び流動性担体を含む、セラミックハニカムプラグ形成ペーストであって、該セラミック粒子状物質が、50マイクロメートル未満の、数にして少なくとも90%の該粒子状物質を有し、該流動性担体が、体積にして該プラグ形成ペーストの40%〜90%の量で存在し、そして、該プラグ形成ペーストが一体として25%超の乾燥及び焼結体積収縮を有する、プラグ形成ペースト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質のセラミックハニカムフィルター中にプラグを形成する方法に関する。特に本発明は、セラミックハニカムフィルターの背圧を低減させる直通経路を有するプラグに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ディーゼルエンジン、及びガソリンエンジン、例えばガソリン直噴エンジンにより放出される粒子状物質のさらに厳正な規制が、ヨーロッパ及び米国で、可決されたか又は検討されている。これらの規制に適合するためには、粒子状物質フィルターが概して必要とされてきたし、必要であると予想される。
【0003】
これらの粒子状物質フィルターは、複数の相矛盾する既存の要求に適合しなければならない。例えば、フィルターは充分な多孔性(概して55パーセント超の多孔性)を有する必要がある一方で、放出されるマイクロメートルサイズの粒子状物質の大部分を保持(概して、放出される粒子状物質の90パーセント超を捕捉)しなければならない。フィルターはまた、過剰な背圧があまりに迅速に生じないように充分な浸透性がなければならず、その一方で、再生されるまでに大量の煤煙を担持することが可能でなければならない。フィルターは、長期間、腐食性の排気環境に耐性がなければならない。フィルターは、排気系に取り付けられた容器内に設置されるだけの初期強度がなければならない。フィルターは、数千回のサイクルにわたり、フィルター中に捕捉された煤煙の焼去(再生)に由来する熱サイクルに、耐性がある(すなわち、適切な強度を保持する)ことが必要であり、この場合では局所温度は、1600℃という高温に達することがある。これらの厳正な基準から、セラミックフィルターは、ディーゼル粒子状物質フィルターを開発する上での選択肢となっている物質である。
【0004】
焼結コーディエライト(cordierite)のセラミックフィルターは、見込みのあるディーゼル粒子状物質フィルターとして調査されている。コーディエライトは、低コスト、及び自動車排気系における三元触媒の触媒担持体として使用するという理由から調査された。コーディエライトフィルターは、大型トラックで利用するのに使われてきたが、背圧が高いこと、蓄積された灰の掃除が必要になるまでが短寿命であること、及び局所的なホットスポットに起因して熱分解することが悩みであった。
【0005】
つい最近では、炭化ケイ素が、軽負荷ディーゼルエンジンに使用されており、その理由はたいてい、コーディエライトよりも煤煙に耐性がある、及びさらに高い安定性があるというものである。しかしながら、炭化ケイ素は、例えば、高価な炭化ケイ素の微細粉末を用いて高温で焼結させる必要性があることが悩みである。炭化ケイ素は焼結されるため、細孔構造が成長する結果、過剰な背圧が生じるまでの煤煙担持に限度があり、これはちょうど、コーディエライトと同様である。
【0006】
これらのフィルターで発生する大きな圧力降下を解決するために、遮断されない通路、すなわち、スルーホール(through hole)を有するプラグを有するフィルターが適用されており、例えば米国特許第4,464,185号;同第6,790,248号、及び同第7,008,461号;及び国際公開第2011/026071号、及び同第2009/148498号、及び米国特許出願公開第2009/0056546号、及び特開2002119867号公報、及び同第1986062216号公報に記載されている。概して、プラグに孔を創出する方法は、プラグが形成された後に所望の孔を加工するものである。米国特許第6,790,248号では、スラリーをハニカムの通路の内部表面上に少しずつ付着させ、これにより開口を徐々に低減させている。米国特許第7,008,461号では、注入されたペースト上に液体を吹きかけ、部分プラグを形成する方法が記載されている。これらの方法は、以下の問題の一つ又は複数が悩みであり、それらは、加工が複雑である、又はその時間が長いこと、プラグ形成を制御できないこと、及びプラグの接着が不十分であることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、一つ又は複数のスルーホールを有するプラグ(本明細書では「部分プラグ」と称する)を作製する改良された方法を提供するのが望ましく、この方法は、従来技術の一つ又は複数の問題、例えば上に記載の問題のうちの一つを回避するものである。加えて、遮断されていない通路、すなわち従来技術に記載されている部分プラグの粒子状物質の捕捉効率を向上させる部分プラグを形成することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、部分プラグを有する、改良されたセラミックハニカムフィルターを目的としており、部分プラグは、改良された部分プラグを結果として生じる改良されたプラグ形成ペーストから生じるものである。よって、本発明の第1の態様は、セラミック粒子状物質及び流動性担体であり、ここでセラミック粒子状物質は、50マイクロメートル未満である粒子状物質の数が少なくとも90%であり、流動性担体が充分な量で存在する結果、そのようなプラグ形成ペーストは充分な流動性があるので、セラミックハニカム通路の中に挿入され、前記通路に、通路を画定するハニカムの壁以外のその他のいかなる担持体も無しに保持される。第2の態様は、セラミック粒子状物質及び流動性担体を含む、セラミックハニカムプラグ形成ペーストであって、プラグ形成ペーストは、5%〜80%の体積乾燥収縮を有する。第3の態様は、セラミック粒子状物質及び流動性担体を含む、セラミックハニカムプラグ形成ペーストであって、プラグ形成ペーストは、一体として25%〜80%超の体積乾燥及び焼結収縮を有する。そのようなペーストにより、既存の加工設備及び方法を用いてそのようなプラグを容易に製造することができる。加えて、そのような部分フィルターからは意外にも、プラグに所望の接着性、機械的完全性、及び形状が得られ、その結果、向上したセラミックハニカム性能が得られる。例えば、部分プラグの押し出し強度は、完全プラグの押し出し強度の2倍になることがある。
【0009】
本発明の第4態様は、セラミックハニカムにプラグを形成する方法であって、方法は、
(a)セラミック粒子状物質、及び担体流体を含むペーストを、セラミックハニカムの通路の中に挿入して、スルーホールを有さない初期プラグを形成すること、
(b)前記ペーストの流動性担体を除去し、前記ステップ(a)の初期プラグが乾燥プラグを形成すること、及び
(c)加熱して焼結プラグを形成させ、ペーストのセラミック粒子状物質が互いに結合し、そして焼結プラグがセラミックハニカムの壁に結合し、スルーホールが前記焼結プラグ中に存在すること、
を含む。
【0010】
態様4の方法により意外にも実現されるハニカムフィルターが有する部分フィルターは、所望の部分プラグを有し、このプラグは、分圧を減少させ、多様で曲がりくねった経路を有するスルーホールを有しており、この経路は、単純で直行する孔、又はそれほど複雑でないスルーホールと比較して、ろ過効率を向上させると考えられる。
【0011】
本発明の最後の態様は、通路の一端において本発明のペーストから形成されたプラグを有する少なくとも一つの通路を含むセラミックハニカムであり、前記プラグは、中心部分と、中心部分から実質的に通路を画定する壁の表面にまで延びる少なくとも一つの半径方向のスポーク(spoke)とを含むスルーホールを有し、中心部分が有する直径は、前記通路に内接する円によって定義される通路直径の長さの50%未満である。
【0012】
セラミックハニカムフィルターは、流体及びガスをろ過するのに有用ないかなる利用において用いてもよい。特に、それらは、内燃エンジンから生じるガスをろ過する粒子状物質フィルター用に適当である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の乾燥プラグを有するセラミックハニカムの光学顕微鏡写真である。
図2】本発明の焼結プラグを有するセラミックハニカムの光学顕微鏡写真である。
図3】小さい粒塊サイズ、及びハニカム壁への貫入を示す、本発明の焼結プラグの走査型電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
プラグ形成ペースト
本出願人は、部分プラグを用いてハニカムフィルターにプラグ形成する方法が得られるプラグ形成ペーストを見出しており、このペーストは、効率的で、安定であり、均一で、制御可能なものである。このペーストは、流動性担体、及びセラミック粒子状物質を含む。流動性担体は、低温(例えば、250℃未満)での蒸発によって、又は単に空気乾燥によって、又は室温での真空乾燥によって容易に除去できるいかなる液体であってもよい。例は、水、及びいかなる有機液体でもあってもよく、例えばアルコール、脂肪族化合物、グリコール、ケトン、エーテル、アルデヒド、エステル、芳香族化合物、アルケン、アルキン、カルボン酸、カルボン酸塩化物、アミド、アミン、ニトリル、ニトロ、スルフィド、スルホキシド、スルホン、有機金属、又はそれらの混合物が挙げられる。望ましくは、流動性担体は、水、脂肪族化合物、アルケン、又はアルコールである。アルコールはメタノール、プロパノール、エタノール、又はそれらの組合せであってもよい。典型的には、水を使用する。
【0015】
ペーストはまた、セラミック粒子状物質を含む。セラミック粒子状物質(粉末とも称する)の特定の化学は、内燃エンジン、例えばディーゼルエンジンの排気系において粒子状物質フィルターが受ける運転条件に耐性のあるセラミックプラグを作製するのに有用などんなものでもよい。代表的な粉末には、セラミックを形成するセラミック粉末、例えば、酸化物、炭化物、窒化物、及びそれらの組合せが挙げられる。具体的な例では、以下に限定されるものではないが、炭化ケイ素、窒化ケイ素、ムライト、コーディエライト、ベータスポジュメン、リン酸セラミック(例えば、リン酸ジルコニウム)チタン酸アルミニウム、及び加熱時にそのような化合物を形成する前駆物質が挙げられる。セラミックの好ましい例には、シリカ、アルミナ、フッ化アルミニウム、粘土、フルオロトパーズ、ゼオライト、ムライト、コーディエライト、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0016】
セラミック粉末は、典型的には等軸的である(すなわち、2未満のアスペクト比を有する)が、それに限定されるものではない。セラミック粉末は典型的には、粉砕された粉末、又は沈殿工程から形成された粉末に付随する形態を有する。その他のどんな形状を使用してもよいが、プラグがセラミックハニカム通路に挿入された場合に、担体流体の除去、及びセラミック粒子状物質を一つに焼結させた時点で、プラグ中にスルーホールが形成される場合に限る。
【0017】
本発明のプラグ形成ペーストを創出するためには、一態様において、セラミック粒子状物質は、数にして少なくとも90%が50マイクロメートル(すなわち、d90粒子サイズ)未満のサイズである粒子状物質を有していなければならないことが見出された。もし粒子サイズが大きすぎる、又は粒子サイズ分布が広く大きい粒子状物質が多すぎる場合には、ペーストは担体流体の除去、及びプラグの焼結時にスルーホールをうまく形成できない可能性があるものの、必要なずり流動化の挙動を有するペーストは達成されて、ペースト通路の中にペーストが容易に挿入され、その他のいかなる担持体も無しに通路内に保持される。d90サイズは、望ましくは10、15、20、30、及び40マイクロメートルである。しかしながら、d90粒子サイズが小さすぎて、所望の粘度ペーストを実現するのに必要な流動性担体の量が多すぎるということがあるべきではない。これは概して、0.02マイクロメートルのd90サイズに相当している。粒子の一部が上に記載のサイズより大きい可能性がある場合でも、全粒子は前述のサイズ未満であるのが望ましい。
【0018】
概して、少なくとも一部分(例えば、少なくとも10%の粒子状物質)のセラミック粉末が、セラミックハニカムの壁の平均細孔サイズよりも小さいことが望ましい。セラミック粉末がそのようなサイズである場合には、それは有利なことに、壁の細孔に浸透し、壁と部分プラグとの結合を強化する。注目すべきことに、もしもセラミック粉末のサイズが小さすぎ、ペーストが充分な粘度でない場合には、過剰な貫入が生じる結果、所望の部分プラグを実現するためには、望ましくない量の粉末が必要となる、又はペーストを複数回、挿入することになる可能性がある。典型的には、セラミックハニカムの平均細孔サイズ未満のサイズを有する粒子状物質の量は、数にしてセラミック粉末粒子の少なくとも25%、50%、75%、又はさらには80%である。
【0019】
セラミック粉末の粒子サイズは、いかなる技術で測定してもよく、例えば、本明細書に記載のサイズ範囲について当該技術分野で公知のものにより測定してもよい。例示の技術には、例えば、ふるい、光散乱、沈降、及び顕微鏡写真の技術が含まれる。本明細書で言及されるサイズは、等価球面度数の粒子直径であることが理解される。ハニカムの壁の細孔サイズについては、これは、周知の技術、例えば水銀ポロシメトリーを用いて測定してもよい。
【0020】
ペーストを作製する場合には、担体流体の量に必要なのは、粒子を湿潤にすること、及び、ハニカムの通路中に挿入されても、その形状を保持し、ハニカム壁以外のその他のいかなる担持体無しにその場にとどまるのに充分な流動性を粒子に持たせるということである。挿入される、とは、本明細書では、通路内への注入を容易にするために、プラグ形成ペーストに圧力の印加が必要であるという意味である。ペーストには、重力下でそれを通路に単に注ぎこむ以上のものが必要であるということは、理解される。換言すれば、ペーストは、弾性変形する必要がある、又はせん断されて、ポンプにより、又は注入により、又は真空吸引により通路内に送り込むのに充分な流動性を示すようになる必要がある。挿入された時点で、プラグ形成ペーストに必要なのはまた、さらなるいかなる担持体無しでもその形状を維持する、及び液体がそうであるように、単に通路から流出しないことである。概して、必須の粘度が得られる可能性があるのは、プラグ形成ペースト中の担体流体の量が、体積にしてプラグ形成ペーストの約40%〜約95%である場合である。望ましくは、流体の量は、少なくとも45%、50%、55%、又は60%から最高で90%、又は80%である。
【0021】
プラグ形成ペーストはまた、ハニカムの通路の中にいったん注入されると、ずり流動化の挙動を発揮して、ポンプで送ることが可能であってその形状を維持するペーストを実現することが望ましい。「ずり流動化」は、より高いずり速度での粘度が、より低いずり速度での粘度よりも低いことを意味する。例示的には、低いずり速度での粘度(すなわち、0.5rpmで、ブルックフィールド(Brookfield) RVDV−I Prime粘度計の4番の円盤型スピンドルを用いてのもの)は、典型的には少なくとも約50、100、200、350、又はさらには500Pa・sであり、高せん断での粘度(すなわち、50rpmで、同一の4番の円盤型スピンドルを用いてのもの)は、典型的には最高で約10、5、2.5、1、0.5、又はさらには0.1Pa・sである。そのような粘度測定は、本明細書に記載したようなペーストを、本明細書に記載したようなずり速度及び粘度で測定する、粘度計又はレオメーターにより行ってもよい。
【0022】
プラグ形成ペーストは、その他の有用な成分、例えばセラミックペーストを作製する当該技術分野において公知のものを含む有機添加剤を含有してもよい。その他の有用な成分の例には、分散剤、解膠剤、凝集剤、可塑剤、消泡剤、潤滑剤、結合剤、多孔化剤、及び保存剤、例えば、Introduction to the Principles of Ceramic Processing, J. Reed, John Wiley and Sons, NY, 1988の10〜12章に記載のものが挙げられる。有機可塑剤を使用する場合には、それは望ましくは、ポリエチレングリコール、脂肪酸、脂肪酸エステル、又はそれらの組合せである。
【0023】
結合剤の例には、セルロースエーテル、例えば、Introduction to the Principles of Ceramic Processing, J. Reed, John Wiley and Sons, NY, NY, 1988の11章に記載のものが挙げられる。好ましくは、結合剤は、メチルセルロース、又はエチルセルロース、例えば、ダウケミカル社(Dow Chemical Company)からMETHOCEL、及びETHOCELの商標で購入可能なものである。好ましくは、結合剤は、担体液体に溶解する。
【0024】
多孔化剤は、加熱されてセラミック粒子状物質が一つに結合した後に、プラグ内に細孔を創出させるために特に添加される物質である。典型的には多孔化剤は、加熱中に分解、蒸発、又は何等かの方法で揮発し去ってプラグ内に細孔を残すあらゆる粒子状物質である。例としては、小麦粉、有機ポリマー(例えば、ポリオレフィン、ラテックス、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエステル等)、木粉、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン)、炭素粒子状物質(非晶質、又は黒鉛状のもの)、ナッツ殻の粉、又はそれらの組合せが挙げられる。
【0025】
本発明のプラグ形成ペーストは望ましくは、5%〜80%の体積乾燥収縮を有する。もし、乾燥収縮が大きすぎると、プラグは砕けやすくなりすぎる傾向があり得る。もし、乾燥収縮が小さすぎると、プラグはスルーホールを形成しない傾向がある。典型的には、体積乾燥収縮は少なくとも10%、15%、20%、又は25%から、80%、75%、70%、65%、又は60%である。プラグ形成用流体の除去時には、乾燥プラグはスルーホールを有する必要はないが、プラグの中心でわずかに質量の減少を有する可能性があり、これは通路を上から光で照らすことにより容易に視認することができ、この場合、プラグの中心は目視では、より明るくなっている。しかしながら、プラグの焼成収縮及びハニカムの熱膨脹に起因する、ハニカム壁との界面での応力及び亀裂が回避されるように、乾燥プラグ中にスルーホールを有することが望ましい。
【0026】
体積乾燥収縮を決定するには、プラグ形成ペーストから、収縮を測定するのに有用な幾何学的形状を形成させ、そしてその後、この初期形状の寸法(初期体積)を測定し、そしてその後、担体流体を除去して、粒子状物質を互いに接触させ、さらなる収縮が生じないように(典型的には、体積にして担体流体プラグ形成ペーストの約1%未満であれば充分である)し、そしてその後、結果として得られた「乾燥形状」の寸法を測定してもよい。%体積収縮は、単に:
【0027】
【数1】
であり、ここで%Vは%体積収縮;Vinは初期体積;そしてVは乾燥体積である。
【0028】
同様にプラグ形成ペーストは望ましくは、乾燥収縮に関しての記載と同様な焼成収縮を有する。焼成収縮は、上の記載と同一な方法で測定されるが、上の方程式において、Vinが乾燥体積の体積、そしてVが焼結体積の体積であることが異なる。
【0029】
乾燥の後にスルーホールが存在する場合、焼結して焼結プラグを形成させた後に、焼結収縮してスルーホールが形成される必要はないが、もちろん焼結収縮は存在してもよく、例えば、もし所望であればスルーホールを拡大させてもよい。乾燥の後にスルーホールが存在しない場合には、プラグを焼成した後にプラグ中にスルーホールを形成させるには、体積にして5%超の焼結収縮が概して必要である。
【0030】
概して、本発明のペーストの一体としての乾燥及び焼結体積収縮の組合せ(すなわち、前記収縮がともに加わる)は、スルーホールを有効に形成する25%超となるはずであることが見出された。一体としての体積収縮は望ましくは、少なくとも30%、40%、又は%50から最高で85%、80%、又は75%である。
【0031】
プラグ形成ペーストは、当該技術分野で公知のもの等の、スラリー、分散剤、又はペーストを創出するいかなる適切な方法によって作製してもよい。例としては、メディアミリング(例えばボールミリング、又はアトリーションミリング(attrition milling))、リボンブレンディング(ribbon blending)、垂直スクリューミキシング(screw mixing)等が挙げられる。
【0032】
ハニカムのプラグ形成
本発明のプラグ形成ペーストを用いて、セラミックハニカムにプラグ形成する場合には、ペーストはセラミックハニカムの通路内に挿入される。セラミックハニカムは、いかなる適切な多孔質のセラミックでもよく、例えば、ディーゼル煤煙ろ過に関して当該技術分野で公知のもの等であってもよい。代表的なセラミックには、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素及び窒化アルミニウム、酸窒化ケイ素及び炭窒化ケイ素、ムライト、コーディエライト、ベータスポジュメン、チタン酸アルミニウム、ストロンチウムケイ酸アルミニウム、リチウムケイ酸アルミニウムが挙げられる。好ましい多孔質のセラミック体には、炭化ケイ素、コーディエライト、及びムライト、又はそれらの組合せが挙げられる。炭化ケイ素は、米国特許第6,669,751B1号、及び欧州特許出願公開第1142619A1号、国際公開第2002/070106A1号に記載されている好ましいものである。その他の適切な多孔質体は、米国特許第4,652,286号;同第5,322,537号;国際公開第2004/011386A1号;同第2004/011124A1号;米国特許出願公開第2004/0020359A1号、及び国際公開第2003/051488A1号に記載されている。
【0033】
ムライトは、好ましくは針状微細構造を有するムライトである。そのような針状セラミック多孔質体の例には、米国特許第5,194,154号;同第5,173,349号;同第5,198,007号;同第5,098,455号;同第5,340,516号;同第6,596,665号、及び同第6,306,335号;米国特許出願公開第2001/0038810号;及び国際公開第03/082773号に記載されるものが挙げられる。
【0034】
ハニカムを構成するセラミックは、概して、約30%〜85%の多孔性を有する。好ましくは、多孔質のセラミックは、少なくとも約40%、より好ましくは少なくとも約45%、さらに好ましくは少なくとも約50%、そして最も好ましくは少なくとも約55%から、好ましくは最高で約80%、より好ましくは最高で約75%、そして最も好ましくは最高で約70%の多孔性を有する。
【0035】
セラミックハニカムは、モノリシックなセラミックハニカム、又は、いくつかのさらに小さな互いに強固に結合したハニカム(セグメント化したハニカム)から構成されるハニカムであってもよい。モノリシックなハニカム、及びセグメント化したハニカムを構成するハニカムのセグメントは、いかなる有用な、量、サイズ、配置、及び形状であってもよく、例えばセラミック熱交換器、触媒、及びフィルター技術において周知のものであってもよく、その例が米国特許第4,304,585号;同第4,335,783号;同第4,642,210号;同第4,953,627号;同第5,914,187号;同第6,669,751号;及び同第7,112,233号;欧州特許第1508355号;同第1508356号;同第1516659号、及び特開6−47620号公報に記載されている。加えて、モノリシックなハニカム、又はハニカムセグメントは、有用なサイズ及び形状を有する通路を有していてもよく、これらは、ちょうど言及した技術、及び米国特許第4,416,676号、及び同第4,417,908号に記載されているとおりである。壁の厚さは、有用ないかなる厚さでもよく、例えば、前述の及び米国特許第4,329,162号に記載されている。
【0036】
ペーストは、セラミックハニカムの通路端の中に、ペーストを挿入して初期プラグを形成させるいかなる有用な方法によって挿入されてもよく、方法としては、例えば、圧力下でノズルを通じて注入すること、所望の通路へ向けマスク中に開けた開口を用い、一端をマスクすること、そしてその後、マスク中の孔を通して、通路内にペーストを圧力により押し込む、又は真空により引き込むこと、を含む。そのような方法のさらなる記載は、以下の諸特許、米国特許第4,559,193号;同第4,557,962号;同第4,715,576号;及び同第5,021,204号;米国特許出願公開第2007/0210485号、及び同第2008/0017034号、及び欧州特許公開第1586431号に記載されている。
【0037】
ここまでに記載したとおり、プラグ形成ペーストのセラミック粒子状物質の少なくとも一部分を壁に貫入させることが望ましい。セラミック粒子状物質がハニカム壁の全厚さに貫入することがあるとしても、典型的には、粒子が、約50%、40%、30%、20%、10%、又は5%からわずかのパーセントだけが貫入しているのが望ましく、これによりプラグの結合は、ハニカム壁内への貫入がない場合と比較して強化される。
【0038】
初期プラグは、プラグ中にスルーホールを有することがあるが、初期プラグはいかなるスルーホールも有さないのが好ましい。いったん、ペーストが通路端の中に挿入されて、初期プラグが形成されると、担体流体は、その後、除去される。担体流体は適切な方法で除去されてもよく、その方法は、例えば蒸発であり、周囲条件下で、流動するガス下での蒸発により、加熱、真空、それらの組合せ、又は当該技術分野で公知のその他の有用なあらゆる方法により実行されてもよい。担体流体の除去は、加熱してペースト中に存在する可能性のあるあらゆる有機添加剤を除去する間、又は加熱してペーストのセラミック粒子状物質を一つに、そしてハニカム壁に結合させる時にも生じる。結合は本明細書では、セラミック粒子状物質を一つに焼結(イオン結合、共有結合、又は組合せ)させ、セラミックハニカム壁に結合させることを意味する。
【0039】
例示的には、担体流体の除去時には、乾燥プラグ10が、ハニカム壁40の一端においてその壁により画定される通路30の中に形成される。乾燥プラグ10はスルーホール20を有し、そのようなスルーホール20は、もし存在するのであれば、初期プラグ中のいかなるスルーホールよりも大きい。もしスルーホールが初期プラグ中に存在しないのであれば、乾燥プラグ10は典型的には担体流体の除去時にスルーホールを有する。プラグ内の単なる多孔性はスルーホールでなく、スルーホール20は、図1に示すとおりプラグの一端から他端への目視によって明瞭な経路であることが理解される。
【0040】
乾燥プラグが形成された後には、乾燥プラグを有するハニカムを加熱して、焼結させる、又はプラグ形成ペーストのセラミック粒子状物質を一つに、そしてセラミックハニカム壁に結合させる。時間、温度、及び雰囲気は、特定のセラミックハニカム、及びプラグ形成ペーストに使用されるセラミック粒子状物質に応じて、いかなる適切なものであってもよい。加熱して乾燥プラグを焼結させるのに先立って、個別の加熱を実行して、あらゆる有機添加剤を除去してもよい。有機添加剤はまた、加熱して乾燥プラグを焼結させ焼結プラグを形成する際、同一の加熱サイクル中で除去してもよい。
【0041】
概して、加熱して焼結プラグを形成するのは、それほど高温ではなく、セラミックハニカム構造の垂下、又はその他の望ましくない特性が生じる(例えば、多孔性の閉鎖、亀裂等が生じる)ことはない。典型的には、温度は、少なくとも約600℃、650℃、700℃、750℃、又は800℃から、最高で約2000℃、1800℃、1600℃、1500℃、又は1400℃である。雰囲気は、流動する、又は静的な空気、真空、不活性ガス、反応性ガス、過圧のガス、又はそれらの組合せである。その温度での時間は、あらゆる有用な時間、例えば2〜3分から数日であり得る。
【0042】
プラグの多孔性は、スルーホールを無視すれば、有用なあらゆる多孔性、又はさらには完全に緻密であってもよい。好ましくは、多孔性は、セラミックハニカムついて上に記載のとおりである。
【0043】
プラグは望ましくは、セラミック粒塊であって、粒塊の少なくとも90%は、数にして約50マイクロメートル未満のサイズを有する(50マイクロメートル未満のd90)。さらに望ましくは、粒塊の少なくとも90%が、約20、15、又は10マイクロメートル未満のサイズを有する。100%の粒塊が前述のサイズ未満であることも望ましい。これはまた、一部分(すなわち、少なくとも数にして約10%)の粒塊がもし非対称(2超のアスペクト比)である場合には望ましい。望ましくは、少なくとも25%、50%、75%、90%、又はさらにすべてのセラミック粒塊が非対称である。そのような非対称粒塊(例えば針状、又は小皿状微粒子)は、粒子状物質のろ過効率をさらに向上させると考えられる。
【0044】
粒塊サイズ及びアスペクト比(微細構造)は、既知の方法、例えば研磨断面での顕微鏡法によって決定してもよい。例えば、平均のムライト粒塊サイズは、焼結プラグの破砕面の研磨断面の走査型電子顕微鏡写真(SEM)から決定してもよく、この場合、平均の粒塊サイズは、アンダーウッド(Underwood)によるQuantitative Stereology, Addison Wesley, Reading, MA, (1970)に記載されている切片法により決定してもよい。
【0045】
焼結プラグを形成する際には、もしも乾燥プラグ中に何も存在しない場合、又は焼結プラグスルーホールの全面積が、通路を見おろして乾燥プラグスルーホールの全面積よりも大きい場合には、焼結プラグを収縮させてスルーホールが形成されるようにする。スルーホールの全面積は、既知の画像分析技術(黒ピクセル)により決定してもよい。概して、焼結プラグ中のスルーホールの面積は、もし存在するならば、乾燥プラグ中のスルーホール中の面積よりも少なくとも約10%大きい。面積は、15%、20%、30%、又はさらには50%大きくてもよい。面積のそのような減少は、プラグ形成ペーストについて上に記載の焼成収縮に伴うものである。
【0046】
セラミックハニカムは、概して、本明細書に記載の少なくとも一つの部分焼結プラグを有する。好ましくは、ハニカムの各端に存在するプラグの、少なくとも10%、25%、50%、75%、90%、又はすべてが、そのような部分プラグである。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
セラミック粒子状物質及び流動性担体を含む、セラミックハニカムプラグ形成ペーストであって、該セラミック粒子状物質が、50マイクロメートル未満の、数にして少なくとも90%の粒子状物質を有しており、該流動性担体は充分な量で存在しているので、該プラグ形成ペーストは、充分な流動性があって、これにより流体セラミックハニカム通路の中に挿入され、前記通路内に、該通路を画定する該ハニカムの壁以外のその他のいかなる担持体も無しに維持される、プラグ形成ペースト。
項2.
該ペーストが、少なくとも5%の体積乾燥収縮を有する、項1に記載のプラグ形成ペースト。
項3.
該プラグ形成ペーストが、一つ又は複数の有機添加剤を含む、項1に記載のプラグ形成ペースト。
項4.
該有機添加剤が、界面活性剤、多孔化剤、結合剤、又はそれらの組合せである、項3に記載のプラグ形成ペースト。
項5.
該流動性担体の量が、体積にして、該プラグ形成ペーストの少なくとも40%〜90%である、項1に記載のプラグ形成ペースト。
項6.
前記プラグ形成ペーストがずり流動化する、項1に記載のプラグ形成ペースト。
項7.
該プラグ形成ペーストが、少なくとも5%の体積焼結収縮、及び一体として25%超の体積乾燥及び焼結収縮を有する、項2に記載のプラグ形成ペースト。
項8.
100%の該セラミック粒子状物質粒子が50マイクロメートル未満である、項1に記載のプラグ形成ペースト。
項9.
セラミックハニカム中にプラグを形成する方法であって、
(a)セラミック粒子状物質及び担体流体を含むプラグ形成ペーストを、セラミックハニカムの通路の中に挿入して、孔を有していない初期プラグを形成させること、
(b)前記ペーストの流動性担体を除去することにより、ステップ(a)の前記初期プラグが乾燥プラグを形成すること、及び
(c)加熱して焼結プラグを形成することにより、該ペーストの該セラミック粒子状物質が一つに結合し、焼結プラグが該セラミックハニカムの壁に結合し、該焼結プラグがその中にスルーホールを有すること、
を含む方法。
項10.
該プラグ形成ペーストの該セラミック粒子状物質の一部分が、該セラミックハニカムの通路を画定する多孔質の壁に貫入する、項9に記載の方法。
項11.
該乾燥プラグが、その中にスルーホールを有する、項9に記載の方法。
項12.
該焼結プラグの該焼結スルーホールが、該乾燥プラグのスルーホールよりも大きな面積を有する、項11に記載の方法。
項13.
項9に記載の方法により形成されるセラミックハニカム。
項14.
通路の一端でプラグを有する少なくとも一つの通路を含むセラミックハニカムであって、前記プラグが、セラミック粒塊を含むスルーホールを有し、少なくとも90%の該粒塊が、数にして約50マイクロメートル未満のサイズを有するセラミックハニカム。
項15.
該粒塊の少なくとも一部分が、2超のアスペクト比を有する、項14に記載のセラミックハニカム。
項16.
90%の該粒塊が、15マイクロメートルより小さいサイズを有する、項15に記載のセラミックハニカム。
項17.
セラミック粒子状物質及び流動性担体を含む、セラミックハニカムプラグ形成ペーストであって、該セラミック粒子状物質が、50マイクロメートル未満の、数にして少なくとも90%の該粒子状物質を有し、該流動性担体が、体積にして該プラグ形成ペーストの40%〜90%の量で存在する、プラグ形成ペースト。
項18.
セラミック粒子状物質及び流動性担体を含む、セラミックハニカムプラグ形成ペーストであって、該プラグ形成ペーストが5%〜80%の体積乾燥収縮を有するプラグ形成ペースト。
項19.
セラミック粒子状物質及び流動性担体を含む、セラミックハニカムプラグ形成ペーストであって、該プラグ形成ペーストが、一体として25%〜80%超の体積乾燥及び焼結収縮を有するプラグ形成ペースト。
項20.
該プラグ形成ペーストが、一体として25%超の体積乾燥及び焼結収縮を有する、項9に記載の方法。
【実施例】
【0047】
実施例1:
42.8wt%のM200ムライト前駆物質(Al/Si比が4の、M200アルミナ及びシリカ混合物、セラミックテクニーク&アンデュストリエル社(Ceramiques Techniques & Industrielles S. A.)、フランス、サランドル、から購入可能)、0.9wt%のメチルセルロース(METHOCEL A15LV、ダウケミカル社(Dow Chemical Company)、ミシガン州、ミッドランド、から購入可能)、及び56.3wt%の水をしばらく混合して、均一なプラグ形成用マッド材を作製した。
【0048】
プラグ形成用マッド材の挿入は、ノズルを通じて圧力下で、ムライトセラミックハニカムの各端から通路内に市松模様状に注入することにより行った(ハニカムはダウケミカル社、ミシガン州、ミッドランドから、AERIFYフィルターの商標で購入可能なものである)。初期プラグには孔はなかった。加えて、ハニカムにプラグ形成するために、マッド材をテフロン(登録商標)のモールド(148mm×63mm×6.5mm)に入れて成型して棒を形成させ、これを用いてマッド材の体積乾燥及び焼成収縮を測定した。乾燥及び焼結プラグを形成させる以下に記載のものと同一の方法で、棒を乾燥させ加熱してプラグを焼結させた。
【0049】
初期プラグ及び成型した棒を、空気中におけるオーブン中、80℃で12時間、乾燥させた。乾燥(担体流体である「水」の除去)時には、初期プラグを有するハニカムは、スルーホールを有する乾燥プラグを有していた。乾燥プラグを有するハニカムを1400℃の温度に、空気中で6時間、加熱して、アルミナ及びシリカ粒子状物質を反応させてムライト粒塊を形成させたが、これらの粒塊は一つに結合し、よって焼結プラグを形成する。焼結プラグは、目視により面積が乾燥プラグ中のスルーホールよりも大きいスルーホールを有していた。
【0050】
ハニカム中に形成された焼結プラグを図3に示す。この図から、粒子状物質がハニカムの壁に貫入している(顕微鏡写真の右側の針状粒塊)こと、及び粒塊サイズがハニカム壁の多孔性よりも小さいことが明らかである。直線切片法により測定された、数にしてd50、及びd90粒塊サイズはそれぞれ2、及び5マイクロメートルであった。プラグ形成ペーストの特性、及びハニカム中に形成された乾燥及び焼成プラグの性質を表1に示す。焼結プラグの押し出し強度は、プラグの単位mm長さあたり11MPaであった。押し出し強度の測定は、1.2mm直径の円形金属ピンを押してプラグに通し、それを実行するのに必要な力を測定することにより行った。
【0051】
煤煙ろ過効率の評価については、3.1インチ×3.1インチ×8インチのセグメントを、プラグマッド材を用いてプラグ形成し、1400℃に焼成した。プラグ形成したフィルターをその後、煤煙ろ過効率、及び圧力低下に関して、様々な煤煙担持においてコンバッションリミテッド社(Cambustion Limited)、英国、ケンブリッジ、から購入可能な、DPG DPF Testing Systemを用いて評価した。孔を有さない標準プラグでプラグ形成された、もとの3.1インチ×3.1インチ×8インチのセグメントを、ウォールフロー(wall flow)型フィルター中の煤煙蓄積率を測定するための対照として使用した。これらの単一セグメントに対しては、プログラム化された煤煙担持率5g/時間を使用したが、これは、典型的には実際の煤煙担持率である8〜10g/時間の煤煙を生じるものである。ろ過効率は、以下の式:
ろ過効率=部分フィルターセグメント中の実際の煤煙の蓄積×100/もとのウォールフロー型フィルターセグメントでの煤煙蓄積率
により測定することができる。
本実施例におけるプラグペーストを用いてプラグ形成したセグメントのろ過効率は63%であった。
【0052】
実施例2:
本実施例では、40.0wt%のM200ムライト前駆物質、0.9wt%のメチルセルロース(METHOCEL A15LV、ダウケミカル社、ミシガン州、ミッドランド、から購入可能)、及び59.1wt%の水を良く混合して均一なプラグ形成用マッド材を形成したことを除き、すべて実施例1に関して記載されているのと同一である。換言すれば、水の量を増加させ、セラミック粒子状物質の量を減少させた。乾燥プラグ及び焼結プラグは、実施例1の乾燥プラグ及び焼結プラグよりも大きいスルーホールを有していた。
【0053】
プラグ形成ペーストの特性、及びハニカム中に形成された乾燥及び焼成プラグの性質を表1に示す。焼結プラグの押し出し強度は、プラグのmm長さあたり9MPaであった。
【0054】
実施例3:
本実施例では、38.7wt%のM200ムライト前駆物質、0.9wt%のメチルセルロース、及び59.1wt%の水を良く混合して均一なプラグ形成用マッド材を形成したことを除き、すべて実施例1に関して記載されているのと同一である。換言すれば、実施例1及び2と比較して水の量を増加させ、セラミック粒子状物質の量を減少させた。乾燥プラグ及び焼結プラグは、実施例1及び2の乾燥プラグ及び焼結プラグよりも、大きなスルーホールを有していた。本実施例の乾燥プラグを図1に示す。見てわかるとおり、乾燥プラグは、スルーホールを有する。本実施例の焼結プラグを図2に示す。図1及び2の目視比較から、焼結プラグ中のスルーホールサイズは、乾燥プラグ中のスルーホールよりも大きいことは明らかである。
【0055】
プラグ形成ペーストの特性、及びハニカム中に形成された乾燥及び焼成プラグの性質を表1に示す。焼結プラグの押し出し強度は、プラグのmm長さあたり7MPaであった。
【0056】
実施例4:
本実施例では、20.0wt%のM200ムライト前駆体物質、5.3wt%のメチルセルロース、及び74.7wt%の水を良く混合して均一なプラグ形成用マッド材を形成させたことを除き、すべて実施例1に関して記載されているのと同一である。換言すれば、実施例1〜3と比較して水の量を増加させ、セラミック粒子状物質の量を減少させた。乾燥プラグ及び焼結プラグは、実施例1〜3の乾燥プラグ及び焼結プラグよりもより大きなスルーホールを有していた。
【0057】
プラグ形成ペーストの特性、及びハニカム中に形成された乾燥及び焼成プラグの性質を表1に示す。本実施例におけるプラグペーストを用いてプラグ形成したセグメントのろ過効率は33%であった。
【0058】
実施例5:
本実施例では、15.4wt%のM200ムライト前駆物質、6.0wt%のメチルセルロース、及び78.6wt%の水を良く混合して均一なプラグ形成用マッド材を形成したことを除き、すべて実施例1に関して記載されているのと同一である。換言すれば、実施例1〜4と比較して水の量を増加させ、セラミック粒子状物質の量を減少させた。乾燥プラグ及び焼結プラグは、実施例1〜4の乾燥プラグ及び焼結プラグよりも大きなスルーホールを有していた。
【0059】
プラグ形成ペーストの特性、及びハニカム中に形成された乾燥及び焼成プラグの性質を表1に示す。本実施例におけるプラグペーストを用いてプラグ形成したセグメントのろ過効率は18%であった。
【0060】
実施例6:
本実施例では、50.3wt%のM100ムライト前駆物質(M100粉末、セラミックテクニーク&アンデュストリエル社、フランス、サランドルから購入可能)、1.1wt%のメチルセルロース(METHOCEL A15LV、ダウケミカル社、ミシガン州、ミッドランド、から購入可能)、及び48.6wt%の水を良く混合して均一なプラグ形成用マッド材を形成させたことを除き、すべて実施例1に関して記載されているのと同一である。M100ムライト前駆物質は、以下の物質の混合物である:25.35wt%のボールミリングした粘土(EUBC01 Hywite Alum、セラミックテクニーク&アンデュストリエル社、フランス、サランドルから購入可能)、46.40wt%アルミナ粉末(CTIKA01、セラミックテクニーク&アンデュストリエル社、フランス、サランドルから購入可能)、及び25.35wt%のカオリン粉末(EUBC03 Argical−C 88R、セラミックテクニーク&アンデュストリエル社、フランス、サランドルから購入可能)、0.30wt%の酸化鉄(Fe−601、アトランティックエクイップメントエンジニアーズ社(Atlantic Equipment Engineers)、ニュージャージー州、ベルゲンフィールド、から購入可能)、2.60wt%の原料タルク(WC&D 原料タルク MB50−60、アプライドセラミックス社(Applied Ceramics)、ジョージア州、アトランタ、から購入可能)。ムライト前駆物質の化学組成は、69.7wt%のAl、27.3wt%のSiO、1.0wt%のMgO、1.0wt%のFe、0.6wt%のTiO、0.3wt%のKO、及び0.1wt%のCaOである。
【0061】
焼結プラグは、目視によって、乾燥プラグにおけるスルーホールよりも面積が大きいスルーホールを有していた。プラグ形成ペーストの特性、及びハニカム中に形成された乾燥及び焼成プラグの性質を表1に示す。焼結プラグの押し出し強度は、プラグのmm長さあたり8MPaであった。
【0062】
比較実施例1:
本実施例では、57.3wt%のムライト粉末(MULCOA 70、325メッシュ粉末で、C.E.ミネラルズ社(C. E. Minerals)、ペンシルバニア州、キングオブプロシア、のもの)、5.2wt%のナッツ粉末多孔化剤(WF−7クルミ殻粉でアグラシェル社(Agrashell Inc.)、カリフォルニア州、ロサンゼルス、のもの)、1.3wt%のメチルセルロース(METHOCEL A15LV、ダウケミカル社、ミシガン州、ミッドランド、から購入可能)、及び36.2wt%の水を良く混合して、均一なプラグ形成マッド材を作製したことを除き、すべて実施例1に関して記載されているのと同一である。
【0063】
初期プラグ、乾燥プラグ、及び焼結プラグは、いかなるスルーホールも有していなかった。プラグ形成ペーストの特性、及びハニカム中に形成された乾燥及び焼成プラグの性質を表1に示す。焼結プラグの押し出し強度は、プラグのmm長さあたり3MPaであった。本実施例におけるプラグペーストを用いてプラグ形成したセグメントのろ過効率は99%であった。
【0064】
比較実施例2:
本実施例では、55.1wt%のムライト粉末(MULCOA 70、325メッシュ粉末で、C.E.ミネラルズ社(C. E. Minerals)、ペンシルバニア州、キングオブプロシア、のもの)、5.8wt%のM200ムライト前駆物質(M200アルミナ及びシリカの混合物、セラミックテクニーク&アンデュストリエル社、フランス、サランドルから購入可能)、6.7wt%のナイロン12粉末(Vestosint 2155 Natural、エボニックデグーサ社(Evonik Degussa Corporation)、ペンシルバニア州、リースポート、から購入可能)、1.1wt%のメチルセルロース(METHOCEL A15LV、ダウケミカル社、ミシガン州、ミッドランド、から購入可能)、及び31.4wt%の水を良く混合して均一なプラグ形成マッド材を作製したことを除き、すべて実施例1に関して記載されているのと同一である。
【0065】
初期プラグ、乾燥プラグ、及び焼結プラグは、いかなるスルーホールも有していなかった。プラグ形成ペーストの特性、及びハニカム中に形成された乾燥及び焼成プラグの性質を表1に示す。焼結プラグの押し出し強度は、プラグのmm長さあたり5MPaであった。本実施例におけるプラグペーストを用いてプラグ形成したセグメントのろ過効率は99%であった。
【0066】
表1のデータ及び図から、本発明のプラグ形成ペーストは、所望の形態(複雑な曲がりくねった経路)を有するスルーホールを、効率的、且つ効果的に、作製する能力があることは明らかである。加えて、本実施例の焼結プラグの押し出し強度は、これらのプラグがスルーホールを有しているにもかかわらず、比較実施例のプラグのものと少なくとも同一である。
【0067】
【表1】
図1
図2
図3